(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出手段からの信号に基づいて非常事態の発生を判断して非常信号を送出する監視装置と、所定周期のビーコンと前記非常信号に基づく警報信号とを送出する無線通信手段を有する中継器と、前記警報信号に基づいて所定の発光周期でフラッシュ発光する1以上の警報装置と、を具備する警報システムおよび警報装置において、
前記中継器は、前記発光周期毎の計時を繰り返し、所定回数一巡するごとに前記ビーコンを送出させることによって前記所定周期を前記発光周期の所定の整数倍とすると共に自機の制御時期を律する計時手段を有し、
前記警報装置は、前記発光周期毎の計時を繰り返し、前記ビーコンに基づいて初期値からの計時を行うことによってすべてが同じ計時を行うように同期し、所定の計時値に基づいて前記フラッシュ発光の時期を定めると共に自機の制御時期を律する計時手段を有し、
前記中継器と前記警報装置は、共通の計時を行う前記計時手段で定まる前記ビーコンの送出時期と前記フラッシュ発光の時期とを除いた所定の期間に、自機に備わる無線通信手段に通信スロットを形成せしめ、該通信スロットを介して前記ビーコン以外の信号の無線通信を行う
ことを特徴とする警報システムおよび警報装置。
前記警報装置は、非常事態を検出する検出手段が有する無線通信手段との間で無線通信する無線通信手段を更に備え、前記検出手段から非常事態を検出した旨の非常事態検出信号を受信したとき、前記通信スロットを介して非常事態検出信号を送出し、
前記中継器は、前記非常事態検出信号を直接または通信経路に介在する前記警報装置を中継して受信すると、前記非常事態検出信号を前記監視装置に向けて送出し、
前記非常事態検出信号を受信した前記監視装置は、非常事態の発生を判断して非常信号を送出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の警報システムおよび警報装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、平常時は消灯し、火災時にフラッシュ光を発する警報装置は、その発光周期を各警報装置自体で制御するものであった。
【0008】
そのような警報装置を、自動火災報知設備の警報音響装置のように所定の間隔で多数設置し、火災発生時に同時に作動させると、多数の警報装置それぞれがバラバラのタイミングで発光することになる。このような人工的な強い光刺激は、人に光刺激性癲癇などの光過敏性発作を引き起こす場合があることが知られている(例えば、平成9年12月16日に某民間テレビ放送局が放送した、強い光刺激シーンのあるテレビアニメの視聴者が光過敏性発作などを起こした事件は大きく報道され、周知である)。
【0009】
一方、従来の無線式自動火災報知設備は、無線中継拠点に設けられた中継器に電波が到達しない位置へ無線式火災感知器が配設された場合、これらの間の無線通信を行うため、この間に専用の中継装置を更に設ける必要があった。この中継装置としての機能を、所定の間隔で多数設置される前記警報装置に設けることができれば、設置すべき装置を削減することができる。しかしながら、警報装置はフラッシュ発光に伴う電源変動やノイズを発生し、安定的に無線通信を行う上での難点を有していた。
【0010】
この発明は、光過敏性発作を引き起こすことなく聴覚障害がある人にも火災発生を知らせて避難を促すことができるフラッシュ光を用いた無線式の警報システムおよび警報装置を得ることを目的とする。また、前記警報装置が無線式自動火災報知設備の中継装置として安定的に利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)この発明は、検出手段からの信号に基づいて非常事態の発生を判断して非常信号を送出する監視装置と、所定周期のビーコンと前記非常信号に基づく警報信号とを送出する無線通信手段を有する中継器と、前記警報信号に基づいて所定の発光周期でフラッシュ発光する1以上の警報装置と、を具備する警報システムおよび警報装置において、前記中継器は、前記発光周期毎の計時を繰り返し、所定回数一巡するごとに前記ビーコンを送出させることによって前記所定周期を前記発光周期の所定の整数倍とすると共に自機の制御時期を律する計時手段を有し、前記警報装置は、前記発光周期毎の計時を繰り返し、前記ビーコンに基づいて初期値からの計時を行うことによってすべてが同じ計時を行うように同期し、所定の計時値に基づいて前記フラッシュ発光の時期を定めると共に自機の制御時期を律する計時手段を有し、前記中継器と前記警報装置は、共通の計時を行う前記計時手段 で定まる前記ビーコンの送出時期と前記フラッシュ発光の時期とを除いた所定の期間に、自機に備わる無線通信手段に通信スロットを形成せしめ、該通信スロットを介して前記ビーコン以外の
信号の無線通信を行うことを特徴とする。
(2)また、この発明は、(1)において、前記中継器および前記警報装置は、複数の前記通信スロットで形成された通信スロット群によって前記ビーコン以外の信号を無線通信するものであり、前記警報装置は、前記ビーコンを受信すると前記発光周期に等しい時間差で前記ビーコンを再送し、前記通信スロット群を介して信号を受信すると前記通信スロット群内の後続する通信スロットで受信した信号を再送することを特徴とする。
(3)また、この発明は、(1)または(2)において、前記警報装置は、非常事態を検出する検出手段が有する無線通信手段との間で無線通信する無線通信手段を更に備え、前記検出手段から非常事態を検出した旨の非常事態検出信号を受信したとき、前記通信スロットを介して非常事態検出信号を送出し、前記中継器は、前記非常事態検出信号を直接または通信経路に介在する前記警報装置を中継して受信すると、前記非常事態検出信号を前記監視装置に向けて送出し、前記非常事態検出信号を受信した前記監視装置は、非常事態の発生を判断して非常信号を送出することを特徴とする。
(4)また、この発明は、(1)〜(3)において、前記中継器および前記警報装置の備える無線通信手段は、異なる2つの周波数で無線通信するものであり、第1の周波数で前記ビーコンを、第2の周波数で前記
ビーコン以外の通信スロットを介した前記信号を、また、前記警報装置に自己診断機能が備わる場合は、前記警報装置からの自己診断情報を第1の周波数で、それぞれ無線通信し、前記警報装置は、前記第2の周波数で信号を受信したときは前記第1の周波数に優先して前記通信スロットを介して受信した信号を再送することを特徴とする。
(5)また、この発明は、(1)〜(4)において、前記警報装置は、避難経路毎にグループ編成して定めるグループ識別IDを有し、前記監視装置は、検出手段からの非常事態信号に基づいて非常事態の発生とその範囲を判断し、避難を要する範囲のグループ識別IDを指定して非常信号を送出し、前記中継器は前記グループ識別IDを付して警報信号を送出し、前記警報装置は前記グループ識別IDを自機のグループ識別IDと照合して一致する場合にフラッシュ発光を行う
ことを特徴とする。
(6)また、この発明は、(1)〜(5)において、前記警報装置は、それぞれが配設された避難経路の順番に従った固有の識別IDを有し、前記監視装置は、検出手段からの非常事態信号に基づいて非常事態の発生とその位置を判断し、非常事態発生位置に最も近い警報装置の識別IDを指定して非常信号を送出し、前記中継器は非常事態発生位置に最も近い警報装置の前記識別IDを付して警報信号を送出し、前記警報装置は、非常事態発生位置に最も近い警報装置の前記識別IDと自機の識別IDとを比較して差分に相当する発光順序を演算し、該発光順序に比例する所定の時間差で前記フラッシュ発光の時期から遅延して、非常事態発生位置から非常口に向かって所定の時間差で順番にフラッシュ発光して避難誘導を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)の構成によると、中継器と警報装置
の計時手段が同期して動作し、警報装置がフラッシュ発光するタイミングと、火災警報信号を送受信するタイミングとが重ならないようにできるので、警報信号の送受信がフラッシュ発光に伴う電源変動等の影響を受けることがなく、警報信号を確実に伝達することができる。さらに、多数の警報装置それぞれがバラバラのタイミングで発光することがないので、光過敏性発作を引き起こすことなく、聴覚障害がある人にも火災発生を知らせて避難を促すことができるという効果を奏する。
【0013】
また、
上記(2)の構成によると、フラッシュ発光に伴う電源変動等の影響を受けることがなく、警報装置がビーコンおよび警報信号を中継通信するので、中継器からの電波が届かない位置に配設された警報装置は、途中の警報装置を介して
計時手段を他の警報装置または中継器の計時手段と同期させることができるという効果を奏する。
【0014】
また、
上記(3)の構成によると、非常事態検出手段からの非常事態検出信号を警報装置が中継するので、非常事態検出手段専用の中継器を必要としないという効果を奏する。
【0015】
また、
上記(4)の構成によると、至急処理せねばならない信号を第2の周波数を用いて優先的に通信するので、例えば火災発生による非常事態検出信号や、例えば火災発生に伴う警報信号を最優先で通信し、速やかに火災発生を警報し、警報装置のフラッシュ発光を遅滞なく開始できるという効果を奏する。
【0016】
また、
上記(5)の構成によると、非常事態発生範囲に応じて指定できるので、混信することなく、避難を要する範囲に警報することができるという効果を奏する。
【0017】
また、
上記(6)の構成によると、非常事態発生位置から非常口に向けて順番に警報装置をフラッシュ発光させ、避難誘導を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態1]
まず、
図1に基づいて、本発明の実施の形態1に係る警報システムの構成を説明する。
【0020】
本実施の形態に係る警報システムは、非常事態を検出する検出手段として、火災検出手段である火災感知器2と、火災感知器2と信号線で接続される監視装置として火災受信機1と、を具備する。火災受信機1は、火災感知器2が火災を感知したときに送出する火災感知信号S1に基づいて非常事態としての火災の発生を判断して、火災と判断したときに非常信号としての火災信号S2を送出する。
【0021】
さらに、本実施の形態に係る警報システムは、火災受信機1と信号線で接続され、火災受信機1が送出した火災信号S2に基づく警報信号としての火災警報信号S3を送出する、図示しない無線通信手段を有する中継器3を具備する。中継器3は、防火対象物の各拠点となる位置、例えばフロア毎等に配設され、警報システム全体を同期運転するために所定周期のビーコンを送出する。
【0022】
そして、中継器3からの火災警報信号S3を受信する図示しない無線通信手段を有し、火災警報信号S3に基づいて所定の発光周期でフラッシュ発光する1以上の警報装置、例えば
図1に示すように警報装置41〜47を具備する。また、避難経路としては、火の手によって閉じ込められることがないように2方向への避難が可能であることが常識であるが、
図2に示したように、前記避難経路には異なる位置に非常口E1、E2が設けられるものとする。なお、警報装置41〜47は、中継器3からの電波が到達する範囲内に、少なくとも1台の警報装置、例えば警報装置41が配設される。ここでは簡便のため、中継器3と無線通信が可能な警報装置は警報装置41のみであり、警報装置41〜47は付した番号順に避難経路に沿って配設されるものとして説明する。
【0023】
なお、火災感知器2と火災受信機1の間、及び、火災受信機1と中継器3との間は、個別の信号線で接続しても良いし、共通の信号線で接続して多重伝送を行うように構成しても良い。前者は、いわゆるP型システムとして知られ、後者は、いわゆるR型システムとして知られる周知のシステムである。また、中継器3は、上記拠点位置毎に配設される機器、例えば、総合盤、屋内消火栓、発信機、標識灯、等に、無線通信が可能なように内蔵させても良い。
【0024】
中継器3および警報装置41〜47は、それぞれ自機の制御を律すると共に前記ビーコンに基づいて同期する同期手段として、図示しない同期タイマを有する。すなわち、それぞれが有する同期タイマは、前記ビーコンによって同期し、一斉に同じ計時を行うように動作し、通信のタイミングが一律に決定されるように制御する。また、警報装置41〜47が有する同期タイマは、フラッシュ発光のタイミングが同期するように制御する。
【0025】
次に
図2および
図3に基づいて、本発明の実施の形態1に係る警報システムの動作を説明する。
【0026】
ここでは、非常事態を検出する検出手段としての火災感知器2が火災受信機1に電気的に接続されており、火災感知器2の監視範囲で火災F1が発生したものとして説明する。
【0027】
火災感知器2は、火災F1を感知すると火災受信機1へ火災感知信号S1を送出する。火災受信機1は、受信した火災感知信号S1に基づいて火災の発生を判断する。例えば、周知の蓄積機能などによって、一過性のノイズ等による誤報を除去するように火災発生の判断を行う。そして、火災の発生を判断すると、自機の盤面に火災表示し、自機に備わる主音響装置と防火対象物に配設された地区音響装置を鳴動させると共に、火災信号S2を中継器3へ送出する。なお、地区音響装置は日本国においては水平距離で少なくとも25m以内に配設されるが、一般に火災時には、出火階とその直上階、あるいは全館で鳴動するように制御される。本発明における警報装置は、視覚的に地区音響装置を代替するものとして作用する。
【0028】
中継器3および警報装置41〜47は、警報装置41〜47の発光周期T2に等しい所定周期で一巡する同期タイマを有する。そして、前記同期タイマに基づいて中継器3はその無線通信手段から警報システム全体を同期制御するためのビーコンを送出する。すなわち、中継器3は、平常状態、火災時を問わず、常に所定の周期T1で前記ビーコンを送出する。
図3においては、中継器3送出信号S3−1の周期T1毎に送出する信号が前記ビーコンに相当する。前記ビーコンは、他の無線信号と区別できるように単独の制御コードを備える等の独自の信号とし、これを受信した装置が前記ビーコンを確実に識別できるようにしておく。
【0029】
なお、前記ビーコンの周期T1はフラッシュ発光の周期T2に対して1以上の整数倍としておくと良い。例えば、
図3において前記ビーコンの周期T1は、警報装置41〜47の発光周期T2の2倍に設定している。
【0030】
警報装置41〜47に備わる同期タイマは、前記ビーコンによってスタート時期が定まれば、以後は、中継器3および警報装置41〜47に備わる全ての同期タイマが所定周期T2毎に同じ動作を繰り返す。しかしながら、このまま放置しておくと長い期間では狂いが生じて同期が崩れるので、それまでに前記ビーコンによって再び同期させるようにしている。さらに、このような定期的な同期処理の頻度を高めることによって、前記同期タイマの基準となる発振回路を安価なものに置き換えることができる。例えば、発振子の精度を高精度なもの、例えば水晶発振子から、安価なセラミック発振子などに置き換えたり、あるいは、発振子による発振回路を発振子によらない安価な発振回路に置き換えたりすることが可能となる。
【0031】
ここで、本実施の形態において特徴的な、前記ビーコン以外の無線通信について説明しておく。上記のように、警報システム全体で同期して自機の制御自機を律するように動作する同期タイマによって、前記ビーコンの送出時期とフラッシュ発光の時期とを把握できるので、これらの時期を除いた期間に、前記ビーコンを除いて無線通信する期間を設定することができる。この期間は、前記ビーコンを受信せず、故に同期タイマの同期処理を行わない期間であり、さらに電源変動やノイズを引き起こす虞があるフラッシュ発光を行わない時期であるので、安定に無線通信できる期間である。そしてこの期間に、自機に備わる無線通信手段に通信スロットを形成せしめ、この通信スロットを介して前記ビーコン以外の無線通信を行うようにする。この通信スロットは複数の通信スロット群に形成して、複数の情報を通信するようにしても良い。
【0032】
本実施の形態では、
図3に示すように、中継器3および警報装置41〜47の相互間の無線通信を複数の周波数、具体的には2つの周波数で行うようにしている。そして、中継器3は、第1の周波数で前記ビーコンを送出し、警報装置41〜47が火災時にフラッシュ発光する時期(平常時には当然フラッシュ発光しない)の後から次の前記ビーコン送出までの期間に複数の通信スロットで形成される通信スロット群を第1の周波数に設け、警報装置41〜47の自己診断の結果である自己診断情報を通信するようにしている。警報装置41〜47の自己診断情報が不要であれば、この第1の周波数における通信スロット群は省略できる。また、第2の周波数では、前記ビーコンを送出した後から警報装置41〜47が火災時にフラッシュ発光する時期(平常時には当然フラッシュ発光しない)までの期間に複数の通信スロットで形成される通信スロット群を設け、警報信号S3等の急を要する信号を通信するようにしている。そして、警報装置41〜47は、第2の周波数で受信した信号を第1の周波数で受信した信号に優先して処理するようにしている。したがって、火災発生に伴う火災警報信号を最優先で通信し、速やかに火災発生を警報し、警報装置のフラッシュ発光を遅滞なく開始できる。
【0033】
このように、本実施の形態では、定期的に送出する前記ビーコンと警報装置41〜47の自己診断情報を第1の周波数で、警報信号S3等の急を要する信号を第2の周波数で、それぞれ使い分けているが、無線通信する周波数は複数に限定されるものではなく1つであっても良い。例えば、
図3に示すように、第1の周波数に設けた前記ビーコンおよび通信スロット群と、第2の周波数に設けた通信スロット群とは、互いに重なり合うことがないよう、時間的に異なる期間に設けているので、これら全てを同一の周波数に設けるようにしても良い。ただし、実施の形態3で後述するように、同じ通信スロットを異なる信号で共用するような場合は、優先順位を定めて処理する必要があり、使用する周波数が第1の周波数だけであるときに共用する信号が多い場合は情報の欠落が発生する虞があるので注意を要する。
【0034】
ここで、火災時の中継器3の動作を説明する。中継器3は、先に述べたように前記ビーコンを所定周期T1で常に送出しているが、火災受信機1からの火災信号S2を受信すると、隣接する警報装置41に対して火災警報信号S3を送出する。この火災警報信号S3は、上記で説明した通信スロットを介して行われる。例えば、本実施の形態では、第2の周波数で送出する中継器3の送出信号S3−2において、前記通信スロット群における第1の通信スロットで、火災警報信号S3を表す制御コードを送出するようにする(
図3を参照)。
【0035】
そして、警報装置41は前記ビーコンで同期して動作する同期タイマを備えており、前記同期タイマによって、中継器3と同一のタイミングで通信する通信スロット群を備えているので、前記火災警報信号S3を第2の周波数における通信スロット群の第1スロットで火災警報信号S3を表す制御コードとして受信する。
【0036】
このように火災警報信号S3を受信した警報装置41は、警報装置41が備える前記同期タイマが所定の値を示したときに、自機が備える発光手段をフラッシュ発光させる。そして、前記同期タイマが前記所定の値を示す度にフラッシュ発光させるので、前記同期タイマの周期T2毎にフラッシュ発光を繰り返すように動作する。
【0037】
一方、警報装置41は、前記ビーコンを中継送信する。すなわち、前記ビーコンを受信してから、発光周期T2に等しい時間差で遅延させて再送すると良い。この時間差は、前記同期タイマの周期T2に等しいので、中継送信されたビーコンを受信する次の警報装置42に備わる同期タイマは、他の装置に備わる同期タイマと同期する。
【0038】
また、警報装置41は、前記通信スロット群を介して受信した信号、例えば火災警報信号S3を、同じ通信スロット群内で後続する通信スロット、すなわち第2の周波数における通信スロット群の第2スロットを用いて、火災警報信号S3を表す制御コードを再送するようにする。すなわち、前記火災警報信号S3のように重要かつ緊急を要する信号は、前記同期タイマ周期T2よりも短い時間で中継することができる。
【0039】
そして、警報装置42〜47も上記説明と同様に順番に動作してゆき、火災時には、全ての警報装置41〜47が一斉に同期してフラッシュ発光を繰り返すように動作する。
【0040】
このようにフラッシュ発光を制御することによって、所定周期でフラッシュ発光するタイミングと、火災警報信号を送受信するタイミングとが重ならないので、火災警報信号の送受信がフラッシュ発光に伴う電源変動やノイズの影響を受けることがなく安定に同期して動作し、多数の警報装置それぞれがバラバラのタイミングで発光することがない。したがって、光過敏性発作を引き起こすことなく、聴覚障害がある人にも火災発生を知らせて避難を促すことができるという効果を奏する。
【0041】
なお、制御する警報装置41〜47をグループ編成してグループ識別IDを与え、このグループ識別IDを含むように火災警報信号S3を送信することによって、目的とする警報装置41〜47のグループだけを確実に制御してフラッシュ発光させることができる。すなわち、警報装置41〜47は、受信した火災警報信号S3に含まれるグループ識別ID情報を自機のグループ識別IDと照合して一致する場合にフラッシュ発光を行うように制御する。
【0042】
また、前記通信スロット群で送信する前記制御コードにその他の制御内容を示す制御コードを更に設けると、警報動作させる制御コードで警報装置41〜47をフラッシュ発光させ、また、警報動作を停止させる制御コードで前記フラッシュ発光を停止させることができる。すなわち、火災が鎮火し、火災受信機1において復旧操作を行ったとき、復旧操作に基づく復旧信号を火災受信機1が中継器3に送出すると、中継器3は前記火災警報信号S3に代えて復旧信号に相当する制御コードを含む信号を送出し、これを受信した警報装置41〜47は前記フラッシュ発光を停止するように制御する。換言すれば、火災受信機1からの復旧信号を中継器3が警報装置41〜47に対して中継送信して、警報装置41〜47のフラッシュ発光は、火災受信機における復旧操作で停止させることができるという効果を奏する。
【0043】
また、警報装置41〜47は、音響装置を備え、火災警報信号S3を受信したときに、フラッシュ発光すると共に、前記音響装置を鳴動させても良い。この音響装置が発する音が連続的に一定なものであれば特にタイミングの制御は必要無いが、スイープ音、音声メッセージ、等、変化のある音を発する場合は、バラバラのタイミングで音響を発すると、その意味するところを聞き取れなくなる虞があるので、フラッシュ発光と同様に同期するように制御する。この場合、前記同期タイマの周期T2では短いので、所望の周期を得るように、前記同期タイマの複数周期毎に(例えば分周器を用いて)音響装置を同期するように制御すれば良い。
[実施の形態2]
図4および
図5に基づいて、本発明の実施の形態2に係る警報システムの構成と動作を説明する。実施の形態1と同じ構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
本実施の形態の実施の形態1との相違点は、火災時に警報装置41〜47が同期して一斉に同じタイミングでフラッシュ発光するのではなく、警報装置41〜47が非常口に向かって所定の時間差で順番にフラッシュ発光し、非常口に向かって避難誘導することにある。ここでは説明の簡便のため、仮に、非常口E1に最も近い警報装置は警報装置41、非常口E2に最も近い警報装置は警報装置47とする。
【0045】
そして、上記動作を実現するために、まず、警報装置41〜47は、それぞれが配設された避難経路の順番に従った固有の識別IDを有するようにする。
【0046】
火災受信機1は、位置情報を有する(例えば個々にアドレスを有する)火災感知器2からの火災感知信号S1に基づいて、火災の発生とその位置を判断し、警報装置41〜47のうちで火災発生位置に最も近い警報装置の識別IDを指定して火災信号S2を送出する。この火災信号S2を受信した中継器3は、火災発生位置に最も近い警報装置の識別IDを付して火災警報信号S3を送出する。
【0047】
この火災警報信号S3を受信した警報装置41〜47は、火災警報信号S3に含まれる、火災発生位置に最も近い警報装置の識別IDと自機の識別IDとを比較して差分に相当する発光順序を演算する。すなわち、それぞれの警報装置は自機が何番目にフラッシュ発光すれば良いのかを演算して求めることができるわけである。このようにして求めた発光順序に、順番に発光する時間差に相当する時間を乗じて発光順序に比例する自機の所定の時間差を求め、その時間差で遅延してフラッシュ発光するようにする。このようにして、火災発生位置に最も近い警報装置から順番に、所定の時間差で順番にフラッシュ発光して避難誘導を行う。
【0048】
図4は、警報装置41に最も近い火災感知器2が火災F1を検出した状態を表す。火災感知器2は自らのアドレスを含む火災感知信号S1を火災受信機1に送出する。このとき、火災発生位置に最も近い警報装置41の識別IDを付して、火災受信機は火災信号S2を、中継器3は火災警報信号S3を、それぞれ送出する。
【0049】
そして、火災警報信号S3を直接または他の警報装置を中継して受信した各警報装置は、火災警報信号S3に付された識別IDと自機の識別IDとを比較し、発光順序が、警報装置41が1番目、警報装置42が2番目、警報装置43が3番目、警報装置44が4番目、警報装置45が5番目、警報装置46が6番目、警報装置47が7番目であることを演算して求める。なお、識別IDが連番であれば、この演算は単なる差分を求めるだけで済むので最も容易に演算できる。
【0050】
そして、順番にフラッシュ発光する時間差を予めδと定めておけば、n番目の警報装置は、[δ・(n−1)]に相当する、発光順序に比例する所定の時間差で遅延してフラッシュ発光するようにすれば、一定の時間差で、火災発生位置から非常口(この場合は非常口E2)に向かって流れるようにR3の順番に警報装置41〜47がフラッシュ発光する。
【0051】
なお、火災感知器2が個別のアドレス等を有さず、火災発生位置の情報を得られない場合は、各警報装置から最も近い非常口に向かって順番にフラッシュ発光し、最も近い非常口に向かって避難誘導することもできる。
【0052】
例えば、非常口E1と非常口E2とを比較して、非常口E1の方に近い警報装置が、警報装置41〜43、非常口E2の方に近い警報装置が、警報装置44〜47であったとする。この場合、警報装置44または警報装置45のいずれかの識別IDを付して火災信号S2、火災警報信号S3を送出するように予め定めておけば、警報装置44または45から非常口E1に向かってR1の方向に順番にフラッシュ発光すると共に、警報装置44または45から非常口E2に向かってR2の方向に順番にフラッシュ発光し、2つの非常口の近い方に向かって避難誘導することができる。
[実施の形態3]
図6乃至
図8に基づいて、本発明の実施の形態3に係る警報システムの構成と動作を説明する。実施の形態2と同じ構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
本実施の形態の実施の形態2との第1の相違点は、非常事態としての火災を検出する検出手段としての火災感知手段、すなわち無線式の火災感知器51〜57を設け、火災感知器51〜57が有する無線通信手段との間で無線通信を行う無線通信手段を新たに警報装置41〜47に設けたことにある。そして、火災感知器51〜57のいずれかから火災を検出した旨の火災感知信号を受信した警報装置41〜47のいずれかが火災感知信号を中継し、中継器3までの経路に位置する警報装置がこれを次々と中継し、これを中継器3が受信し、火災受信機1に火災感知信号を送出する。
【0054】
ここでは説明の簡便のため、火災感知器51〜57からの火災感知信号を受信できる警報装置は、付した番号の末尾が等しい番号である警報装置に限るものとして説明する。
【0055】
まず、
図6を参照して、火災発生から火災受信機1が火災感知信号を受信するまでの動作を説明する。
【0056】
火災感知器54の監視範囲で火災F2が発生したものとし、火災感知器54が火災を感知し、火災感知信号S21を送出したものとする。この火災感知信号S21を受信可能な警報装置44は、火災感知信号S21を受信すると、第2の周波数の通信スロット群の第1通信スロットを介して火災感知信号を表す制御コードを送出する。
【0057】
前記第1通信スロットは、実施の形態1で述べた火災警報信号を警報装置41が中継器3より火災警報信号S3を受信する通信スロットに相当する。したがって、既に警報装置44が火災警報信号を受信していた場合は、これを中継送信する処理と衝突するので、どちらかを優先する必要が生じる。この場合、既に火災発生が確認されており、新たな火災感知信号S21は最初の火元からの延焼の可能性が高いので、これを中継せず、第4通信スロットを介して受信する火災警報信号の中継送信を第5通信スロットで行うものとする。なお、火災感知信号S21を活かすのであれば、第1の周波数の通信スロット群を利用し、警報装置の自己診断情報に優先して火災感知信号S21を中継送信しても良い。
【0058】
火災感知信号S21が第1報である場合、第2の周波数の通信スロット群に火災警報信号は存在せず、したがって前記通信スロット群は空いているので、警報装置44は前記第1通信スロットを介して、火災感知信号S22を中継送信する。
【0059】
中継器3に至る通信経路上に位置する警報装置43が、火災感知信号S22を第2周波数の通信スロット群の第1通信スロットで受信すると、これを第2周波数の通信スロット群の第2通信スロットより火災感知信号S23として中継送信する。このように、警報装置41〜47における中継送信は、常に昇順番の通信スロットで行われることは実施の形態1と同様である。これは、無線中継を速やかに行うために必要であり、逆に降順番の通信スロットで中継送信すると、次に中継送信の機会が来るまでに同期タイマの周期T2に近いタイムロスがあるからである。
【0060】
次に火災感知信号S23を第2周波数の通信スロット群の第2通信スロットで受信した警報装置42は、これを第2周波数の通信スロット群の第3通信スロットより火災感知信号S24として中継送信する。さらに、この火災感知信号S24を第2周波数の通信スロット群の第3通信スロットで受信した警報装置41は、これを第2周波数の通信スロット群の第4通信スロットより火災感知信号S25として中継送信し、中継器3がこれを受信する。火災感知信号S25を受信した中継器3は、火災感知信号S26を火災受信機1に送出し、最終的に火災受信機1が火災判断を行う。
【0061】
次に
図7を参照して、火災受信機1が火災判断した後の通信について説明する。
【0062】
なお、上述した火災感知信号S21〜S25は、火災発生位置を示す火災感知器54のアドレス情報を含むものとする。したがって、火災受信機1は火災の発生とその位置を判断しているものとする。
【0063】
まず、火災受信機1は、火災位置に最も近い警報装置の識別IDを選択する。そのために火災感知器のアドレスとそれに最も近い警報装置との関係を記憶するデータベースを予め有していても良いし、火災感知器のアドレスとそれに最も近い警報装置の識別IDとの間に一定の法則を定めておき、前記アドレスから前記識別IDが演算等によって自動的に導けるようにしておいても良い。
【0064】
そして、火災位置に最も近い警報装置の識別ID(この場合は警報装置44の識別IDが相当する)が決まると、火災受信機は警報装置44の識別IDを付して火災警報信号S31を送出する。そして、これを受信した中継器3は火災警報信号S32として、第2周波数の通信スロット群の第1通信スロットを介して、火災警報信号を表す制御コードに警報装置44の識別IDを付して送出する。
【0065】
以後の動作は、実施の形態1、2と同様である。ただし、第2周波数の通信スロット群において、火災感知器54に端を発する火災感知信号と、火災受信機1および中継器3に端を発する火災警報信号とが、同時に存在し得る状況があるが、この場合は、後者の火災警報信号を優先させるように各警報装置で処理するようにする。
【0066】
そして、実施の形態2と同様に、火災発生位置に最も近い警報装置44から非常口E1に向かうR4の方向に向かって、また、警報装置44から非常口E2に向かうR5の方向に向かって、避難経路に位置する各警報装置が所定の時間差で順番にフラッシュ発光し、火元から非常口に向かって避難誘導を行う。
【0067】
このように、警報装置41〜47へ電波が届く範囲に、専用の無線中継装置を設けることなく、無線式の火災感知器51〜57を容易に設置することができる。