特許第6029910号(P6029910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029910
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20161114BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B60C11/12 B
   B60C11/12 D
   B60C11/12 A
   B60C11/03 100B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-209822(P2012-209822)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-65328(P2014-65328A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−230407(JP,A)
【文献】 特開平10−264609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面におけるタイヤ幅方向中央部に、タイヤ周方向に延びる2つの周溝で区画され且つタイヤ周方向に延びるリブが設けられ、前記リブの表面に、タイヤ幅方向に延びて前記双方の周溝に連なるサイプがタイヤ周方向に間隔をあけて複数形成される空気入りタイヤであって、
前記複数のサイプには、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底よりも高いサイプ底をタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底有りサイプと、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底と同じ高さ以下のサイプ底をタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底無しサイプと、が含まれており、
前記上げ底有りサイプは、接地面内に複数出現するとともに、前記上げ底無しサイプは、接地面内に少なくとも2つ出現することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記上げ底無しサイプは、接地面内に少なくとも3つ出現する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記リブのタイヤ幅方向両側には、タイヤ幅方向に延びるラグ溝で区画されるブロックがタイヤ周方向に複数配列されており、
接地面内に出現する前記ラグ溝の数をNとした場合に、前記上げ底無しサイプは、接地面内にN個以下出現する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地面におけるタイヤ幅方向中央部に配置される周方向に延びるリブの表面に、タイヤ幅方向に沿って延びる複数のサイプをタイヤ周方向に並べて形成した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
冬の寒い時季には、特に氷雪路面を走行する場面で、スタッドレスタイヤに代表される冬用タイヤが使用されることが多い。また、一年を通して使用できるオールシーズンタイヤに対する需要も高まりつつある。このような氷雪路面の走行に用いられるタイヤでは、トレッド面の陸部にサイプと呼ばれる切り込みが形成されており、サイプによるエッジ効果によって、摩擦係数の低い氷雪路面での制動性能(以下、単にスノー性能とも表記する場合がある)が高められる。
【0003】
昨今では、暖冬の影響もあって積雪が減少していること、タイヤの履き替えが面倒であることなどを理由として、スタッドレスタイヤにおいても、乾燥路面での操縦安定性能(以下、単にドライ性能とも表記する場合がある)が要求される傾向にある。しかし、スノー性能を良好に発揮するためには、それ相応にサイプの深さや配置密度を確保する必要があり、その一方で、サイプに起因した剛性低下によってドライ性能が悪化するという背反事象があるため、スノー性能とドライ性能との両立は難しい。
【0004】
スタッドレスタイヤの一例として例えば、特許文献1には、接地面におけるタイヤ幅方向中央部に、タイヤ周方向に延びる2つの周溝で区画され且つタイヤ周方向に延びるリブが設けられ、前記リブの表面に、タイヤ幅方向に延びて双方の周溝に連なるサイプがタイヤ周方向に複数並べて形成される空気入りタイヤが開示されている。接地面中央部に、リブを設けることで、接地面中央部の剛性を高めてドライ性能の向上を狙っている。
【0005】
しかしながら、所望のエッジ効果を得るために、リブに、一定の深さで幅方向に延びるサイプを複数設けた構成では、リブの剛性が低くなりすぎてしまう。そこで、特許文献1には、サイプ同士の間隔を周方向に沿って周期的に変化させる構成や、サイプの深さを周方向に沿って周期的に変化させる構成を採用することで、リブ全体の剛性が低くなることを抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−267010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1のタイヤは、リブ全体での剛性を確保できるものの、周方向にアンバランスであるので、サイプ間隔の狭い部分やサイプ深さの深い部分では、剛性低下が大きく、接地圧が上昇し、そのことでタイヤ幅方向のバランスが崩れて偏摩耗を招来してしまう。また、接地面で見た場合に、エッジ効果の高い区画と低い区画とが存在するため、乾燥路面及び氷雪路面ともにグリップ力が不安定となり、ドライ性能及びスノー性能が十分に発揮されない場合がある。
【0008】
リブの著しい剛性低下を抑制するための一つの有効な手段として、タイヤ幅方向両側部位のサイプ底を、タイヤ幅方向中央部のサイプ底に比して高くした、いわゆる上げ底有りサイプ(ブリッジ有りサイプとも呼べる)にすることが考えられる。しかし、サイプ底が高いタイヤ幅方向両側部位は、エッジ効果が低くなる。またリブ剛性が高くなりすぎることで接地面内の動きが小さくなり、すべり量が増加する。よって摩耗が促進され偏摩耗につながる。
【0009】
なお、リブの代わりに、横溝により区画されるブロック陸部を周方向に沿って複数配列した構成では、雪柱剪断力及びエッジ効果を十分に確保でき、スノー性能を向上させることができるが、その反面、剛性が著しく低下して乾燥路面での操縦安定性能が損なわれてしまう。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、リブ剛性が高すぎてすべり量が増大することに起因する摩耗エネルギーの集中を抑制しつつ、乾燥路面での操縦安定性能と氷雪路面での制動性能とを両立する空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、接地面におけるタイヤ幅方向中央部に、タイヤ周方向に延びる2つの周溝で区画され且つタイヤ周方向に延びるリブが設けられ、前記リブの表面に、タイヤ幅方向に延びて前記双方の周溝に連なるサイプがタイヤ周方向に間隔をあけて複数形成される空気入りタイヤであって、
前記複数のサイプには、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底よりも高いサイプ底をタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底有りサイプと、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底と同じ高さ以下のサイプ底をタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底無しサイプと、が含まれており、
前記上げ底有りサイプは、接地面内に複数出現する間隔で配置されているとともに、前記上げ底無しサイプは、接地面内に少なくとも2つ出現する間隔で配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、上げ底有りサイプが接地面内に複数出現する間隔で配置されているので、リブの著しい剛性低下を抑制しつつ、或る程度のエッジ効果を得ることが可能となる。それでいて、上げ底無しサイプが接地面内に少なくとも2つ出現する間隔で配置されているので、接地面内における少なくとも2つの上げ底無しサイプで区画される領域が擬似的なブロックとして或る程度動き、エッジ効果が向上するとともに、接地面が適正化して乾燥路面での操縦安定性能が向上する。さらに、接地面内での動きが適正化してすべり量が減るので、摩擦エネルギーの集中が抑制されると考えられる。したがって、摩耗エネルギーの集中を抑制しつつ、乾燥路面での操縦安定性能と氷雪路面での制動性能とを両立させることが可能となる。
【0013】
よりエッジ効果を向上させるためには、前記上げ底無しサイプは、接地面内に少なくとも3つ出現する間隔で配置されていることが好ましい。
【0014】
タイヤ幅方向のバランスを良好に保つためには、前記リブのタイヤ幅方向両側には、タイヤ幅方向に延びるラグ溝で区画されるブロックがタイヤ周方向に複数配列されており、接地面内に出現する前記ラグ溝の数をNとした場合に、前記上げ底無しサイプは、接地面内にN個以下出現する間隔で配置されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る空気入りタイヤが有するトレッド面の一例を示す展開図。
図2】サイプの深さを示す断面図。(a)上げ底有りサイプを示す、図1のB−B部位断面図。(b)上げ底無しサイプを示す、図1のA−A部位断面図。
図3】本発明の他の実施形態に係るトレッド面の一例を示す展開図。
図4】本発明の上記以外の実施形態に係るトレッド面の一例を示す展開図。
図5】比較例のトレッド面の一例を示す展開図。
図6】比較例のトレッド面の一例を示す展開図。
図7】比較例のトレッド面の一例を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示す空気入りタイヤのトレッド面には、タイヤ周方向CDに延びる周溝1a〜1dと、その周溝1a〜1dで区画される陸部列2〜6とが設けられている。本実施形態では、タイヤ幅方向WDの中央部Ce(接地面CFにおけるタイヤ幅方向中央部Ce)には、タイヤ周方向CDの延びる2つの周溝1b,1cで区画され且つタイヤ周方向CDに延びるリブ4が設けられている。リブ4のタイヤ幅方向両側にある陸部列3,5は、タイヤ幅方向WDに延びるラグ溝7で区画されるブロックがタイヤ周方向CDに複数配列されるブロック列である。すなわち、タイヤ中央Cにリブ4が配置され、そのタイヤ幅方向WDの両側には、ブロック列が配置されたトレッドパターンをなしている。なお、本実施形態では、リブ4はタイヤ中央Cに配置されているが、接地面CFにおけるタイヤ幅方向の中央又はその近傍であれば、厳密にタイヤ幅方向WDの中央でなくてもよい。また、周溝1a〜1dは、本実施形態では4つ配置されているが、これに限定されない。
【0018】
リブ4及びブロック列2,3,5,6の表面には、タイヤ幅方向WDに沿って延びる複数のサイプ80,81がタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数形成されている。トレッド面を、タイヤ幅方向WDに、ショルダー部Sh、メディエイト部Md、センター部Ceと3つに区画した場合に、メディエイト部Md及びセンター部Ceに形成されたサイプ80,81は、タイヤ幅方向WDに延びてタイヤ幅方向WD両側にある周溝に連なっている。
【0019】
本実施形態では、リブ4に形成されるサイプ80,81には二種類があり、一つは、図2(a)に示す上げ底有りサイプ81であり、もう一つは、図2(b)に示す上げ底無しサイプ80である。なお、図2(a)は、図1のB−B部位断面図であり、図2(b)は、図1のA−A部位断面図である。図1では、識別しやすいように、破線楕円で囲んだサイプが上げ底無しサイプ80であり、破線楕円で囲んでいないサイプが上げ底有りサイプ81である。上げ底有りサイプ81は、図2(b)に示すように、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底81aよりも高いサイプ底81bをタイヤ幅方向両側部位に有するサイプである。上げ底有りサイプ81は、上げ底81bがブリッジに見えることからブリッジ有りサイプとも呼ばれる。上げ底無しサイプ80は、図2(b)に示すように、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底80aと同じ高さ以下のサイプ底80bをタイヤ幅方向両側部位に有するサイプである。上げ底無しサイプ80は、上記上げ底(ブリッジ)が無いことからブリッジ無しサイプとも呼ばれる。サイプ80,81は、共に踏面からの最大深さが主溝深さ比で80%が望ましい。本実施形態では、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底80a、81aの深さが主溝深さ比で75%に設定されている。上げ底有りサイプ81においてタイヤ幅方向両側部位のサイプ底81bは、踏面から主溝深さ比で20%〜40%が望ましい。本実施形態では、上記サイプ底81bは、主溝深さ比で25%に設定してある。ここでの「主溝深さ」とは、周溝1a〜1dの踏面からの深さである。
【0020】
図1に示すように、上げ底有りサイプ80は、接地面CF内に複数出現する間隔p1でリブ4に配置されている。上げ底無しサイプ81は、接地面CFに少なくとも2つ出現する間隔p2でリブ4に配置されている。すなわち、上げ底有りサイプ同士81・81は、上記間隔p1をあけてタイヤ周方向CDに均等に配置されているとともに、上げ底無しサイプ同士80・80は、上記間隔p2をあけてタイヤ周方向CDに均等に配置されている。なお、本実施形態では、上げ底有りサイプ81の配置間隔p1よりも、上げ底無しサイプ80の配置間隔p2が大きい。
【0021】
接地面CFは、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面である。接地端Eは、その接地面CFのタイヤ幅方向WDの最外位置である。正規リムは、原則としてJISD4202等に定められている標準リムとし、正規荷重は、JISD4202(自動車タイヤの諸元)等に規定されている最大荷重(乗用車用タイヤの場合は設計常用荷重)の0.8倍の荷重とし、正規内圧は上記最大荷重に見合った空気圧とする。
【0022】
リブ4のタイヤ幅方向両側に配置されるブロック列3,5は、接地面CF内に最大で5つのラグ溝7が出現する間隔で配置されている。
【0023】
本明細書において、サイプは、幅が1.2mm以下の細溝をいい、周溝やラグ溝は、幅が1.2mmを超えるものとする。
【0024】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、接地面CFにおけるタイヤ幅方向中央部Ceに、タイヤ周方向CDに延びる2つの周溝1b,1cで区画され且つタイヤ周方向CDに延びるリブ4が設けられ、リブ4の表面に、タイヤ幅方向WDに延びて双方の周溝1b,1cに連なるサイプ80,81がタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数形成される空気入りタイヤであって、
複数のサイプ80,81には、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底81aよりも高いサイプ底81bをタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底有りサイプ81と、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底80aと同じ高さ以下のサイプ底80bをタイヤ幅方向両側部位に有する上げ底無しサイプ80と、が含まれており、
上げ底有りサイプ81は、接地面CF内に複数出現する間隔p1で配置されているとともに、上げ底無しサイプ80は、接地面CF内に少なくとも2つ出現する間隔p2で配置されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、上げ底有りサイプ81が接地面CF内に複数出現する間隔p1で配置されているので、リブ4の著しい剛性低下を抑制しつつ、或る程度のエッジ効果を得ることが可能となる。それでいて、上げ底無しサイプ80が接地面CF内に少なくとも2つ出現する間隔で配置されているので、接地面CF内における少なくとも2つの上げ底無しサイプで区画される領域が擬似的なブロックとして或る程度動き、エッジ効果が向上するとともに、接地面CFが適正化して乾燥路面での操縦安定性能が向上する。さらに、接地面CF内での動きが適正化してすべり量が減るので、摩擦エネルギーの集中が抑制されると考えられる。したがって、摩耗エネルギーの集中を抑制しつつ、乾燥路面での操縦安定性能と氷雪路面での制動性能とを両立させることが可能となる。
【0026】
特に、本実施形態では、上げ底無しサイプ80は、接地面CF内に少なくとも3つ出現する間隔で配置されているのが好ましい。この構成によれば、接地面CFにおいて上げ底無しサイプ80で区画される領域が少なくとも二つとなり、擬似的なブロックが少なくとも2つとなるため、よりエッジ効果を向上させることが可能となる。
【0027】
本実施形態では、リブ4のタイヤ幅方向両側には、タイヤ幅方向WDに延びるラグ溝7で区画されるブロックがタイヤ周方向CDに複数配列されている。上げ底無しサイプ80が、接地面CF内に出現するラグ溝の数N(本実施形態では5つ)を超えて出現すると、擬似的なブロック数が、ラグ溝7で区画されるブロックよりも多くなり、タイヤ幅方向WDのバランスがくずれことによる摩耗エネルギーの集中を招来するとともに、剛性低下により乾燥路面での操縦安定性能が悪化することが考えられる。そこで、本実施形態では、接地面CF内に出現するラグ溝7の数をN=5とした場合に、上げ底無しサイプ80は、接地面CF内に5個以下出現する間隔で配置されている。この構成によれば、擬似的ブロックが増えることによる上記不具合を抑えることが可能となる。
【0028】
[他の実施形態]
本実施形態において上げ底無しサイプ80は、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底80aとタイヤ幅方向両側部位のサイプ底80bとが同じ高さに設定されているが、タイヤ幅方向両側部位のサイプ底80bが、タイヤ幅方向中央部位のサイプ底80aよりも低く設定されていてもよい。
【実施例】
【0029】
本発明の構成と効果を具体的に示すために、下記実施例について下記の評価を行った。
【0030】
(1)氷雪路面での制動性能(スノー性能)
サイズ:195/65R15のタイヤを使用し、実車(国産車;1800cc、1300kg)の走行速度を40km/hから0km/hに落としたときの制動距離を測定し、指数評価を行った。氷雪路面(スノー路面)での制動距離を制動性として評価した。当該指数が大きいほど制動性が高く好ましい。
【0031】
(2)乾燥路面での操縦安定性(ドライ性能)
上記サイズのタイヤを取り付けた実車を用い、乾燥路面走行により官能評価にて比較した。操縦安定性能は、比較例1における操縦安定性能を100として指数で評価した。当該指数が大きいほど操縦安定性能が高く好ましい。
【0032】
(3)耐ヒール&トウ摩耗エネルギー性能
台上試験器粗面路上にて接地相当荷重負荷状態で制動、加速自由転動を想定した走行モードにて摩耗エネルギーを計測した。回転方向の進み側及び遅れ側(ブロックでいうと踏み込み側と蹴り出し側)のエネルギー差を測定し、指数評価を行った。当該指数が大きいほど、エネルギー差が少なく、性能が高く好ましい。
【0033】
(4)センター部摩耗エネルギー性能
上記耐ヒール&トウ摩耗性能と同様の試験で、センター部Ceとショルダー部Shの摩耗エネルギーの差を測定し、指数評価を行った。当該指数が大きいほど、エネルギー差が少なく、性能が高く好ましい。
【0034】
実施例1
図1に示すように、上げ底無しサイプ80が、接地面に3つ出現する間隔p2でリブ4に均等に配置されている。上げ底有りサイプ81は、リブ4及びブロックの表面に複数個出現する間隔p1で均等に配置した。リブ4のタイヤ幅方向両側にあるブロック列3,5を区画するラグ溝7は、接地面CF内に5つ出現する間隔で配置されている。
【0035】
実施例2
図3に示すように、実施例1に対し、上げ底無しサイプ80が、接地面CFに5つ出現する間隔p3でリブ4に均等に配置されている。それ以外は、実施例1のタイヤと同じとした。
【0036】
実施例3
図4に示すように、実施例1に対し、上げ底無しサイプ80が、接地面CFに2つ出現する間隔p4でリブ4に均等に配置されている。それ以外は、実施例1のタイヤと同じとした。
【0037】
比較例1
図5に示すように、実施例1に対し、上げ底無しサイプ80を配置しないトレッドパターンにした。それ以外は、実施例1のタイヤと同じとした。
【0038】
比較例2
図6に示すように、比較例1に対し、リブ4を横溝8でタイヤ周方向CDに複数に区画し、ブロック化した。それ以外は、比較例1のタイヤと同じにした。
【0039】
比較例3
図7に示すように、実施例1に対し、上げ底無しサイプが接地面に1つ出現する間隔でリブに均等に配置した。それ以外は、実施例1のタイヤと同じとした。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より、実施例1〜3は、比較例に比して氷雪路面での制動性能及び乾燥路面での操縦安定性能の両方が向上しているとともに、センター部とショルダー部の摩耗エネルギーの差が低減して偏摩耗が抑制されていることが分かる。また、回転方向の踏み込み側とけり出し側とのエネルギーの差も悪化せずに維持されていることが分かる。
【0042】
特に、比較例1と2とを比べると、リブをブロック化することで、氷雪路面での制動性能が向上する反面、乾燥路面での操縦安定性能及び耐摩耗性が著しく低減することが分かる。
【0043】
また、実施例1〜3を見比べると、上げ底無しサイプが接地面内に出現する個数が増えるほど氷雪路面での制動性能が向上する一方、乾燥路面での操縦安定性能が若干低下することが分かる。しかし、比較例2のようにリブを完全にブロック化する場合に比べて、両性能を効果的に両立できることが分かる。
【符号の説明】
【0044】
1b,1c 周溝
4 リブ
7 ラグ溝
80,81 サイプ
80 上げ底無しサイプ
81 上げ底有りサイプ
CF 接地面
WD タイヤ幅方向
CD タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7