【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の実施例1である半導体発光素子10を示す。
図1(a)は半導体膜20、支持基板30、電極50の配置を模式的に示す平面図である。
図1(b)は支持基板30の主面の垂直方向から見た場合の平面図である。
図1(c)は
図1(a)のW−W線に沿った断面図である。
【0009】
図1(c)に示すように半導体発光素子10は、半導体膜20、半導体膜20上に形成された第2の電極40、及び第2の電極40に接合された支持基板30を含んだ構造を有している。半導体膜20は、第1導電型の第1の半導体層21、第2導電型の第2の半導体層22、第1の半導体層21と第2の半導体層22との間に設けられた発光層23、を含んでいる。なお、以下においては、第1導電型、第2導電型がそれぞれn型、p型であり、第1の電極50、第2の電極40がそれぞれn電極、p電極である場合について説明する。
【0010】
半導体膜20は、n型半導体層21、p型半導体層22、n型半導体層21とp型半導体層22との間に設けられた発光層23を含んだ構造を有している。n型半導体層21は、例えばSiのようなn型ドーパントが添加され、例えば厚さ3〜7μmを有する。p型半導体層22は、例えばMgのようなp型ドーパントが添加され、例えば厚さ50〜300nmを有する。発光層23は、例えば厚さ2.2nmのInGaN井戸層および厚さ15nmのGaN障壁層を3〜10周期繰り返して積層した多重量子井戸(MQW)構造を有している。
【0011】
n電極50は、半導体膜20に平行な面(図中、xy平面)において矩形環形状(又は矩形の枠形状)を有し、半導体膜20のn型半導体層21上の一部に形成されている。n電極50は、例えばTi/Al/Pt/AuやTi/Ni/Auが順次積層された構造を有している。n電極50は、n型半導体層21との間でオーミック接合を形成すると共に、金属の酸化を防止する構成を有している。
【0012】
p電極40は、半導体膜20のp型半導体層22上に形成されている。p電極40は、例えばTi/Ag/Ti/Pt/Auが順次積層された構造を有し、反射電極として機能する。また、p電極40は、p型半導体層22との間でオーミック接合を形成すると共に、Agのマイグレーションを防止できる構成を有している。
【0013】
支持基板30は、p電極40に接合されており、p電極40を介して半導体膜20が支持基板30上に載置されている。支持基板30は、支持基板30の裏面(底面)から内部に至る凹部が設けられている。そして、当該凹部には、高熱伝導部31が埋設されている。
【0014】
支持基板30には、半導体膜20(例えば、GaNからなる半導体膜)との熱膨張係数のマッチングなどの諸物性及びコストの観点からSiを用いることが好ましい。また、支持基板30には、Ge、CuW、AlN、SiCやCuなどを用いても良い。高熱伝導部31が埋設される凹部は、例えばドライエッチング、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)、レーザスクライブなどで形成される。半導体膜20と支持基板30との接合には、例えばAu/Sn接合などの共晶接合やAu/Au接合などの金属/金属接合などを用いることができる。
【0015】
高熱伝導部31は、支持基板30の裏面から支持基板30の内部に至って埋設され、半導体膜20の垂直方向においてn電極50に対応した部分に配置されている。また、高熱伝導部31は、半導体膜20に平行な面において、n電極50(第1の電極)の形状に対応した断面形状である矩形環状(又は矩形の枠形状)の断面形状を有している。また、高熱伝導部31は、半導体膜20の平行方向及び垂直方向においてn電極50にアライメントされて設けられている。
【0016】
まず、n電極50及び高熱伝導部31の配置について詳細に説明する。
図1(a)に示すように、n電極50は、半導体膜20に平行な面において、幅a(
図1(c))を有する帯状電極が矩形に形成された矩形環状をなす電極として構成されている。すなわち、矩形状の内周50I及び外周50Jによって画定される電極として構成されている。また、
図1(b)に示すように、高熱伝導部31は、半導体膜20に平行な断面において、n電極50の形状に対応した断面形状、すなわち矩形環形状を有している。そして、高熱伝導部31の中心軸(すなわち、当該矩形形状の中心を通り、半導体膜20に垂直な軸)が、n電極50の中心軸(すなわち、n電極50の矩形中心Oを通り、半導体膜20に垂直な軸)と一致するようにアライメント(整列)されて、高熱伝導部31が設けられている。つまり、高熱伝導部31は、半導体膜20の垂直方向(図中、z方向)に延伸する中空直方体形状の埋込部として形成され、高熱伝導部31の延伸方向(z方向)の中心軸とn電極50の中心軸とが一致するようにアライメントされて設けられている。さらに、埋込部は、その断面が、半導体膜20に平行な面内(すなわち、x方向及びy方向)においてn電極50とアライメントされて設けられている。具体的には、
図1(a),(b)に示すように、高熱伝導部31の矩形形状断面の半導体膜20の平行な面内における向きがn電極50の矩形形状の向きと一致するようにアライメントされている。
【0017】
さらに、高熱伝導部31の上記断面における当該矩形環の幅d(
図1(c))は、矩形環状のn電極50の幅a(
図1(c))よりも大きいことが好ましい。また、高熱伝導部31は、支持基板30の凹部に支持基板30よりも熱伝導率の高い高熱伝導材料を充填することで形成される。例えば、高熱伝導部31の部材には、Au、Cu、AlやAgなどを用いることが好ましい。高熱伝導部31の材料は、例えばペースト塗布、蒸着法やスパッタ法などで凹部に充填される。
図2は、
図1の破線Yによって囲まれた部分を拡大した部分拡大断面図である。
図2において、高熱伝導部31の頂部の半導体膜20に平行な面における幅dについて説明する。支持基板30内における熱伝導の拡がり角度は、例えば45度程度に近似される。p電極40及び高熱伝導部31が互いに接していない場合には、高熱伝導部31は、半導体膜20の面内の放熱性を向上させるために熱伝導の拡がりを考慮した幅dを有することが好ましい。すなわち、高熱伝導部31の上記断面における幅dをp電極40と高熱伝導部31との間の距離bに比例してn電極50の幅aよりも大きくすることが好ましい。
【0018】
例えば、
図2に示すように、高熱伝導部31の当該断面の幅dがn電極50の幅aに対して両側にそれぞれ幅cだけ大きい(すなわち、d=a+2c)としたとき、上記した熱伝導の拡がりを考慮すると、幅cは距離bの長さで近似される。例えば、幅aを10μm、距離bを10μmとすると、幅dは20μm(c=10μm)である。また、高熱伝導部31が支持基板30を貫通しており、高熱伝導部31がp電極40に接している場合(図示せず)には、c=0μmである。
【0019】
高熱伝導部31は支持基板30が半導体膜20に接合される前に形成されることが好ましい。その場合には、支持基板30を半導体膜20に接合するときのアライメント調整によって、高熱伝導部31は支持基板30の内部においてn電極50の直下に配置される。また、支持基板30は、高熱伝導部31が形成される前に半導体膜20に接合されても良い。
【0020】
図3(a)〜(c)は実施例1の半導体発光素子10との比較のための比較例の半導体発光素子110を示す図である。半導体発光素子110は、半導体膜20、半導体膜20のp型半導体層22上に形成されたp電極40、n型半導体層21上に形成されたn電極50、及びp電極40に接合された支持基板30を含んだ構造を有している。支持基板30は支持基板30の内部に高熱伝導部131を有し、高熱伝導部131は支持基板30の内部に、一様な深さの凹部に埋設されて設けられている。すなわち、実施例1のn電極50が矩形環形状を有し、高熱伝導部31が中空部を有しているのに対し、高熱伝導部131の半導体膜20に平行な面における断面は環形状ではない(中空部を有しない)矩形状であり(
図3(a))、高熱伝導部131は中空部を有していない(
図3(b)、(c))。
【0021】
図4(a)は、実施例1の半導体発光素子10の面内の温度分布E1Tと比較例の半導体発光素子110の面内の温度分布CTとの比較を模式的に示すグラフである。縦軸は半導体膜20の面内の温度を示し、横軸は半導体膜20の面内方向における位置を示す。
【0022】
一般に、半導体膜20に流れる電流は均一ではなく、n電極50の直下における領域に電流が集中しやすい。また、半導体膜20は、電流注入によるフォノン散乱や半導体膜20の抵抗成分によるジュール損失により発熱する。そのため、電流が集中するn電極50の直下の領域における発熱量は半導体膜20の面内の他の領域よりも高くなる。
【0023】
図4(a)に示すように、比較例の半導体発光素子110においては、n電極50の直下の領域において、上記した電流集中に起因して熱が集中する温度分布特性を有している。すなわち、
図4(a)に示す面内分布においてn電極50に対応した位置に温度分布の極大点(ピ−ク)が存在する。
【0024】
一方、実施例1の半導体発光素子10の面内温度分布E1T(
図4(a)、実線)に示すように、n電極50の直下の領域(すなわち、n電極50に対応した領域)における熱集中は緩和されている。更に、実施例1における半導体発光素子10の面内における温度差は比較例の半導体発光素子110の面内における温度差よりも小さい。従って、実施例1の半導体発光素子10においては、比較例の半導体素子110よりも半導体膜20の面内の熱集中は抑制され、温度分布の均一性が高い。
【0025】
図4(b)は、実施例1の半導体発光素子10の面内の発光効率E1Eと比較例の半導体発光素子110の面内の発光効率CEとの比較を模式的に示すグラフである。縦軸は半導体膜20の面内の発光効率を示し、横軸は半導体膜20の面内方向における位置を示す。半導体膜20の面内において熱が集中している領域では、フォノン散乱や放射再結合による相互作用が強くなり発光効率は低下する。
【0026】
比較例の半導体発光素子110の面内の発光効率CE(実線で示す)に示すように、比較例の半導体発光素子110においては、n電極50の直下の領域に発光効率の極小点(ボトム)が存在する。すなわち、比較例の半導体発光素子110においては、面内の発光効率は、n電極50の直下において最も低くなる。また、上記したように、半導体膜20の面内の温度差が大きいので、n電極50の直下における領域と素子の中央部・側方部との間において、半導体膜20の面内の発光効率の不均一性は大きくなっている。
【0027】
一方、実施例1の半導体発光素子10の面内の発光効率E1E(
図4(b)、実線)に示すように、実施例1の半導体発光素子10においては、比較例の半導体発光素子110において見られたn電極50の直下の領域における発光効率の極小点(ボトム)が改善されている。また、半導体膜20の面内の温度差が小さくなることから、半導体膜20の面内の発光効率の差は小さくなっている。つまり、実施例1における半導体発光素子10においては、面内の発光効率の不均一性は低減される。また、発光効率の均一性が改善されるので、素子の信頼性も向上する。
【0028】
上記においては、n電極50が矩形環状をなす帯状電極として構成されている場合について説明したが、一般に、n電極50(第1の電極)が帯状電極部を有する電極として構成されていればよい。この場合、高熱伝導部は、半導体膜20に平行な面において帯状電極部の相似形状(合同形状を含む)であって帯状電極部以上の幅の断面を有して半導体膜20の垂直方向に延伸する埋込部を含み、埋込部は半導体膜20の平行方向及び垂直方向において帯状電極部にアライメントされて設けられている。換言すれば、半導体膜20の平行な面(
図1、x−y平面)における高熱伝導部31の断面形状とn電極50(第1の電極)の形状とが当該平行方向(すなわち、x方向及びy方向)に関して同一の向きを向くように配されている。従って、n電極50(第1の電極)を当該平行面上に垂直に投影したとき、n電極50の形状は高熱伝導部31の断面形状内に包含される(合同形状の場合には一致する)ように高熱伝導部31及びn電極50(第1の電極)が配されている。
【0029】
例えば、n電極50は、
図5に示すように互いに分離した2つの帯状電極部50a、50bから構成されていてもよい。帯状電極部50a、50bは、直線状の同一形状(すなわち、同一の長さ及び幅)を有し、互いに平行かつ対向して配されている。換言すれば、帯状電極部50a、50bは、長方形の対向する2辺上に配されている。そして、高熱伝導部31は、例えば半導体膜20に平行な面において帯状電極部50a、50bの形状に対応した断面形状を有している。すなわち、高熱伝導部31は、半導体膜20に平行な面においてそれぞれが帯状電極50a、50bの相似形状であって帯状電極部50a、50bの幅(a)以上の幅(d)の断面を有しており(すなわち、拡大した相似形状又は合同形状)、半導体膜20の垂直方向に高熱伝導部31の全体に亘って一定の断面形状で延伸する2つの直方体形状の伝導部(埋込部)31a、31bを含んでいる。そして、直方体形状の伝導部(埋込部)31aは、その延伸方向(z方向)の中心軸、及びその断面の長軸及び短軸(縦方向及び横方向)がそれぞれ帯状電極50aの中心軸(すなわち、帯状電極50aの中心を通り、帯状電極50aに垂直な軸)に一致するように設けられている。また、直方体形状の伝導部(埋込部)31bについても同様である。なお、高熱伝導部31は、帯状電極部50a、50bのいずれか1つに対応して設けられていても良い。すなわち、直方体形状の伝導部(埋込部)31a、31bのいずれか1つが設けられていてもよい。また、一般に、互いに分離した帯状電極部が複数設けられていてもよい。この場合、当該複数の帯状電極部は同一の形状を有し、例えば素子の中心を対称点として点対称に配置されていることが好ましい。
【0030】
さらに、上記した実施例においては、n電極50(第1の電極)が、半導体膜20に平行な面において矩形(四角形)環状をなす電極として形成されている場合について説明したが、n電極50の形状はこれに限らない。一般に、多角形環形状の電極として形成されていてもよい。この場合、高熱伝導部31は、その中心軸がn電極50(第1の電極)の多角形環形状の中心軸と一致するようにアライメントされて配置され、半導体膜20に平行な断面が当該多角形環形状を有する中空多角柱形状の埋込形状を有するように形成される。また、n電極50(第1の電極)は円環形状の電極として形成されていてもよい。この場合、高熱伝導部31は、その中心軸がn電極50(第1の電極)の円環形状の中心軸と一致するようにアライメントされて配置され、半導体膜20に平行な断面が当該円環形状を有する中空円柱形状の埋込形状を有するように形成される。
【0031】
なお、付言すれば、
図1で示したn電極50は、
図6において破線で示すように帯状電極部50a、50b、50c、50dを4辺とする中空矩形状の電極と見なすこともできる。この場合、高熱伝導部31は、4つの帯状電極部に対応する4つの直方体形状の伝導部を合成した中空直方体形状の埋込部として形成されているとみなすことができる。さらに、一般に、n角形(nは3以上)環状をなす電極又は円環状をなす電極は、それぞれn個の帯状電極部又は複数の円弧状の帯状電極部から構成されているとみなすことができる。すなわち、種々の形状をなす帯状電極は、当該帯状電極を構成する複数の帯状部分(帯状電極部)の合成又は結合からなり、高熱伝導部は、各帯状電極部に対応する埋込部を合成又は結合した埋込形状を有するとみなすことができる。なお、当該埋込部の各々は、半導体膜に平行な面において帯状電極部の相似形状であって帯状電極部以上の幅の断面を有して半導体膜の垂直方向に延伸し、半導体膜の平行方向及び垂直方向において帯状電極部にアライメントされて配置されている。
【0032】
なお、例えば、n電極50は、一定の幅を有する完全な帯状又は環状ではなく、全体として帯状と又は環状して形成されていればよい。例えば、当該帯状又は環状の周縁部、内周又は外周の一部に切り欠き部があっても良く、又は凹凸が設けられていてもよい。
【実施例2】
【0033】
図7に本発明の実施例2である半導体発光素子10aを示す。
図7(a)は半導体膜20、支持基板30、電極50の配置を模式的に示す平面図である。
図7(b)は支持基板10aの主面の垂直方向から見た場合の平面図である。
図7(c)は
図7(a)のW−W線に沿った断面図である。
【0034】
図7(c)に示すように、半導体発光素子10aは、半導体膜20、半導体膜20上に形成された第2の電極40、及び第2の電極40に接合された支持基板30を含んだ構造を有している。半導体膜20は、第1導電型の第1の半導体層21、第2導電型の第2の半導体層22、第1の半導体層21と第2の半導体層22との間に設けられた発光層23、を含んでいる。なお、実施例1の場合と同様に、第1導電型、第2導電型がそれぞれn型、p型であり、第1の電極50、第2の電極40がそれぞれn電極、p電極である場合について説明する。実施例2における半導体発光素子10aは、実施例1で示した半導体発光素子10と同じ構造を有し、同符号を付して説明を省略する。支持基板30は、支持基板30の裏面(底面)から内部に至る凹部が設けられている。そして、当該凹部には、高熱伝導部32が埋設されている。
【0035】
図7(a)に示すように、n電極50は、実施例1と同様に、半導体膜20に平行な面において、幅aを有する帯状電極が矩形に形成された矩形環状をなす電極として構成されている。また、
図7(b)、(c)に示すように、高熱伝導部32は、支持基板30とp電極40との接合面に向かって支持基板30の裏面から単調に窪んだ凹形状32aと、上記実施例1における埋込部の形状(すなわち、中空直方体形状)32bとの合成形状を有して支持基板30に埋設されている。すなわち、実施例1と同様に、当該埋込部(中空直方体形状)は、半導体膜20の平行方向及び垂直方向においてn電極50にアライメントされて設けられている。また、当該単調に窪んだ凹形状は、円錐形状の凹部として形成され、当該円錐の中心軸はn電極50の矩形中心と一致するようにアライメントされている。当該埋込部(中空直方体形状)及び凹部は、支持基板30よりも熱伝導性が高い材料で充填されている。
【0036】
図8に示す半導体発光素子210及び310を参照し、素子の中央部における熱集中について説明する。
図8(a)は、半導体発光素子210の支持基板30の熱伝導経路を模式的に示す断面図である。
図8(b)は、高熱伝導部331を含む半導体発光素子310の断面図である。
図8(c)は、
図8(a)に示す半導体発光素子210と
図8(b)に示す半導体発光素子310との面内の温度分布の比較を模式的に示す図である。
【0037】
図8(a)に示すように、半導体発光素子210においては、支持基板30には高熱伝導部が設けられておらず、一様な材質からなっている。半導体膜20の側方部近傍から発生する熱Aは、支持基板30の深さ方向及び支持基板30の側面方向(半導体膜20の面方向)に伝導される。しかしながら、半導体膜20の中央部近傍から発生する熱Bは、支持基板30の側面方向に伝導され難く、主に支持基板30の深さ方向に伝導される。従って、かかる熱伝導に起因して半導体膜20の面内の中央部の放熱性が悪くなる。つまり、面内の温度分布S1(
図8(c)、破線)に示すように、熱伝導に起因する温度分布は、中央部において温度が極大となり、支持基板30の側面方向に単調に減少する分布を呈する。
【0038】
図8(b)に示すように半導体発光素子310には、支持基板30の内部に高熱伝導部331が設けられている。高熱伝導部331は、支持基板30とp電極40との接合面に向かって支持基板30の裏面から単調に窪んだ凹形状を有している。具体的には、当該単調に窪んだ凹形状は、円錐形状の凹部として形成され、当該円錐の中心軸はn電極50の矩形中心と一致するようにアライメントして配置されている。また、当該円錐の底面はn電極50を覆う大きさを有していることが好ましい。
【0039】
図8(c)の温度分布S2(実線)に示すように、高熱伝導部331が設けられている半導体発光素子310の場合(
図8(b))、中央部からの熱消散が改善され、面内の温度分布が均一化される。
【0040】
図9(a)は、実施例2の半導体発光素子10aの面内の温度分布E2T(実線)と比較例の半導体発光素子110の面内の温度分布CT(破線)との比較を模式的に示すグラフである。縦軸は半導体膜20の面内の温度を示し、横軸は半導体膜20の面内方向における位置を示す。比較例の半導体発光素子110の面内の温度分布CTは、
図4(a)の破線で示したものと同じであるので、その説明を省略する。
【0041】
実施例2の半導体発光素子10aの温度分布E2T(
図9(a)、実線)を実施例1の温度分布E1Tと比較すると、実施例1の場合よりも均一な温度分布が得られている。すなわち、実施例1と同様の埋込部(中空直方体形状)によって、n電極50に対応した領域における熱集中(ピーク)は緩和される。また、単調に窪んだ凹形状(円錐形状)の埋込部(高熱伝導部)によって中央部からの熱消散が改善される。従って、面内の温度分布がさらに均一化されている。
【0042】
また、
図9(b)は、実施例2の半導体発光素子10aの面内の発光効率E2E(実線)と比較例の半導体発光素子110の面内の発光効率CE(破線)との比較を模式的に示すグラフである。比較例の半導体発光素子110の面内の発光効率CE(
図9(b)、破線)は、
図4(b)の破線で示したものと同じであるので、その説明を省略する。実施例2の半導体発光素子10aの発光効率E2Eを実施例1の温度分布E1Eと比較すると、実施例1の場合よりも均一な発光効率分布が得られている。すなわち、n電極50に対応した領域の温度低減及び単調に窪んだ凹形状(円錐形状)の埋込部による素子中央部の温度低減によって面内の発光効率分布が実施例1の場合よりもさらに均一化される。
【0043】
さらに、n電極50(第1の電極)が、点対称な形状の、例えば実施例1において説明したような多角形環状又は円環状をなす電極、又は点対称に配置された帯状電極からなる場合には、電流集中に起因する熱集中と熱伝導に起因する熱集中とは相乗効果によってさらに増強されるので、温度分布及び発光効率分布は更に不均一となる。しかしながら、実施例2によれば、電流集中及び熱伝導に起因する熱集中を顕著に抑制する効果が得られる。
【0044】
なお、比較的高い抵抗を有するGaN系の半導体膜20を用いる場合において、n電極50(第1の電極)の直下の領域に電流が特に集中しやすいことが知られているが、本発明の実施例の半導体発光素子10及び10aにおいては、GaN系の半導体膜20を用いる場合、発光効率の面内均一性や素子の信頼性等の素子特性を向上させるために特に有効である。
【0045】
また、比較例の半導体発光素子110に高電流を注入すると、面内の発熱量は更に高くなり、面内の温度差も更に大きくなる。従って、面内の温度が更に高くなった領域の発光効率が低下し、素子の信頼性も低下する。そして、面内の発熱量が更に高くなることで、例えばp型半導体層とp電極との間の金属の粒形が変化し、電極界面の接触抵抗が大きくなるという問題も生じる。従って、素子のジュール損失は大きくなり、素子が発熱によって破壊される場合も生じる。
【0046】
すなわち、本発明の実施例においては、高電流駆動を行う場合であっても、面内の発熱量が抑制され、面内の温度差も小さくなる。従って、高電流駆動を行う場合であっても、発光効率の面内均一性が改善され、素子の信頼性も改善される。また、上記したように、半導体層と電極との間の接触抵抗が大きくならないため、素子が発熱によって破壊されることも防止される。つまり、本発明によれば、高電流駆動を行う場合であっても、発光効率の面内均一性が高く、信頼性が高い素子を提供することができる。
【0047】
なお、上記した実施例においては、シン・フィルム構造の素子を例として説明したが、フリップ・チップ構造の素子にも適用することができる。また、第1導電型、第2導電型はそれぞれp型、n型であり、第1の電極50、第2の電極40はそれぞれp電極、n電極であっても良い。第1の電極50の形状は、上記した形状に限定されず、帯状の電極部からなる種々の形状を有していても良い。また、単調に窪んだ凹形状が円錐形状の場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、素子中央部に集中する熱を側方部に消散させる形状であればよい。例えば、切頭円錐形状、楕円錐形状、切頭楕円錐形状、錐台形状、切頭錐台形状などであってもよい。また、半導体膜20や支持基板30の形状は、上記した直方体形状に限定されず、多角柱、円柱や楕円柱形状であっても良い。