(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029918
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】微粉分級装置
(51)【国際特許分類】
B07B 7/08 20060101AFI20161114BHJP
B04C 5/103 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
B07B7/08
B04C5/103
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-220654(P2012-220654)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-73429(P2014-73429A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504094626
【氏名又は名称】株式会社ゼロテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉昭
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第3951620(US,A)
【文献】
特開2005−205267(JP,A)
【文献】
特開昭61−50678(JP,A)
【文献】
特開平11−10022(JP,A)
【文献】
特開2003−280263(JP,A)
【文献】
特開平11−104567(JP,A)
【文献】
特開2008−36567(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0012006(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 7/08
B04C 5/103
B04D 45/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が垂直状態をなすように保持された円筒部と、前記円筒部内に気流を導入して前記円筒部内に前記軸心周りの旋回流を発生させるため前記円筒部に連通された流入経路と、前記円筒部の下縁部に下細り状態で連設された円錐部と、前記円錐部の下方に連設された回収経路とを備え、前記円錐部の内周面に前記軸心を中心とする多角筒状部を設け、前記多角筒状部の内周面から前記軸心方向に離れた位置に解砕部材を設けた微粉分級装置。
【請求項2】
前記多角筒状部の内周面を構成する複数の平面部の個数より前記解砕部材の個数が小である請求項1記載の微粉分級装置。
【請求項3】
前記解砕部材と前記多角筒状部の内周面との間の距離が変更可能である請求項1または2記載の微粉分級装置。
【請求項4】
前記軸心と直交する仮想平面における前記解砕部材の断面形状が閉曲線状若しくは多角形状のいずれか一方の形状である請求項1〜3のいずれかに記載の微粉分級装置。
【請求項5】
前記円錐部に外気導入手段を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の微粉分級装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体旋回流の遠心力を利用して、フライアッシュなどの微粉体を分級する機能を有する微粉分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュなどの微粉体を分級する技術については、従来、様々な方式が提案、実施されているが、本発明に係る技術分野においては、サイクロン方式の分級装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の「サイクロン分級装置」は、フライアッシュなどの乾燥状態にある微粉体を分級することができるほか、分級点を変更することができるという特徴を備えている。
【0003】
一方、本発明とは若干異なる技術分野に属するものであるが、食品や化学品などの材料を粉末になるまで粉砕する装置として、内周面に多角筒形状部を設けた倒立円錐筒形状の波動塔を備えた粉砕装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−205267号公報
【特許文献2】特開平7−136542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の「サイクロン分級装置」は、大小様々な粒径の粒子が混在しているフライアッシュなどの粉状体を粒径の違いにより、微粒成分と粗粒成分とに効率良く分級することができる点では優れている。しかしながら、微粒成分中の微粒子同士、あるいは、微粒成分中の微粒子と粗粒成分中の粗粒子とが付着し合って形成された凝集粒子が、分級対象である粉状体に含まれている場合、これらの凝集粒子は粗粒成分として分級される。このため、粗粒成分に比べ、工業的な利用価値の高い微粒成分の回収率が低いという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2記載の「粉砕装置」は、処理対象である各種材料を粉末に粉砕する機能を有するが、フライアッシュなどに含まれる前記凝集粒子を解砕する機能は有していない。また、フライアッシュなどの粉状体を分級する機能も備えていない。
【0007】
本発明が解決する課題は、微粒成分と粗粒成分とが混在した粉状体を効率良く分級することができ、粒子の凝集体を解砕する機能を有し、微粒成分の回収率を高めることができる微粉分級装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微粉分級装置は、軸心が垂直状態をなすように保持された円筒部と、前記円筒部内に気流を導入して前記円筒部内に前記軸心周りの旋回流を発生させるため前記円筒部に連通された流入経路と、前記円筒部の下縁部に下細り状態で連設された円錐部と、前記円錐部の下方に連設された回収経路とを備え、前記円錐部の内周面に前記軸心を中心とする多角筒状部を設け、前記多角筒状部の内周面から前記軸心方向に離れた位置に解砕部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、複数の前記平面部の個数より前記解砕部材の個数が小であることが望ましい。
【0011】
さらに、前記解砕部材と前記多角筒状部の内周面との間の距離が変更可能であることが望ましい。
【0012】
一方、前記軸心と直交する仮想平面における前記解砕部材の断面形状は閉曲線状若しくは多角形状
のいずれか一方の形状とすることができる。
【0013】
また、前記円錐部に外気導入手段を設けることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、微粒成分と粗粒成分とが混在した粉状体を効率良く分級することができ、粒子の凝集体を解砕する機能を有し、微粒成分の回収率を高めることができる微粉分級装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態である微粉分級装置を示す一部省略正面図である。
【
図4】
図1中のA−A線における一部省略断面図である。
【
図5】
図1中のB−B線における一部省略端面図である。
【
図6】
図4中のC−C線における一部省略断面図である。
【
図7】
図6中のD−D線における一部省略断面図である。
【
図8】解砕部材に関するその他の実施形態を示す一部省略水平断面図である。
【
図9】解砕部材に関するその他の実施形態を示す一部省略水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態の微粉分級装置100は、軸心10aが垂直状態をなすように保持された円筒部10と、円筒部10内に気流を導入して円筒部10内に軸心10a周りの旋回流を発生させるため円筒部10に連通された流入経路11と、円筒部10の下縁部10bに下細り状態で連設された円錐部20と、円錐部20の下方に連設された回収経路30とを備えている。円筒部10の頂上壁10cを貫通して円筒部10内に差し込まれた状態で円管状の流出経路12が設けられている。円筒部10、流出経路12及び円錐部20は軸心10aを共有している。
【0017】
図2に示すように、流入経路11は、円筒部10の周壁10dの外周に巻き付くように配置されるとともに、軸心10aに向かって連続的に縮径する渦巻を描きながら、流入経路11の横断面積が連続的に減少していくような形状をなして円筒部10内に連通されている。
【0018】
図1,
図3に示すように、円錐部20は、上から下に向かって連続的に縮径する複数の円錐筒状部材である最上部円錐筒体20a、上部円錐筒体20b、下部円錐筒体20c及び最下部円錐筒体20dを、軸心10aを共有した状態で、それぞれフラン
ジF1,F2,F
3を介して連結することによって形成されている。最上部
円錐筒体20aの上縁部が円筒部10の下縁部10bに接合され、最下部
円錐筒体20dの下縁部が回収経路30の導入部30aに接続されている。
【0019】
また、
図1,
図3に示すように、円錐部20を形成する最下部円錐筒体20dの周壁には、外気導入手段として、大気中と円錐部20内とを連通する通気管31,32が設けられ、これらの通気管31,32にはそれぞれの通気量を調整するための開閉弁31a,32bが設けられている。通気管31,32は、最下部円錐筒体2dの周壁の接線方向に沿って、180度間隔で配管されているが、これに限定するものではない。
【0020】
図4〜
図6に示すように、円錐部20を構成する上部円錐
筒体20b及
び下部円錐
筒体20cの内周面には、それぞれ軸心10aを中心とする多角筒状部40b,40cを設け、多角筒状部40bの内周面から軸心10a方向に離れた位置に円柱状の解砕部材50が複数設けられている。なお、
図6においては、線図の複雑化を回避するため、複数の解砕部材50のうち1本のみを表示し、他を省略している。
【0021】
図5に示すように、多角筒状部40bの内周面を構成する複数の平面部40bfと軸心10aとをそれぞれ最短距離で結ぶ複数の仮想直線Lのうちのいずれかを含む領域内に解砕部材50が配置されている。即ち、多角筒状部40bの周方向に沿って一つ置きの平面部40bfと軸心10aとを最短距離で結ぶ仮想直線Lを含む領域内にそれぞれ解砕部材50が配置されている。解砕部材50は円柱形状であるため、軸心10aと直交する仮想平面(図示せず)における解砕部材50bの断面形状は、閉曲線の一つである略円形をなしている。また、複数の平面部40bfの個数より、解砕部材50の個数が小である。なお、平面部40bfに対する解砕部材50の位置は限定しないので、旋回流方向に沿って隣接する平面部40bf同士の境界線寄り(多角筒状部40bの角部寄り)の部分に解砕部材50を配置することもできる。
【0022】
図7に示すように、解砕部材50は、上部円錐筒体20bの多角筒状部40bの内周面を構成する平面部40bfに対し、雄ネジ・雌ネジで構成される上下二箇所のネジ機構51を介して取り付けられているため、解砕部材50と多角筒状部40bの内周面40bf(平面部40bf)との間の距離が変更可能である。本実施形態では、平面部40bfと解砕部材50の軸心50aとが平行をなすように配置されているが、これに限定しないので、上下二箇所のネジ機構51を調整することにより、非平行に配置することもできる。
【0023】
次に、
図1〜
図7を参照しながら、微粉分級装置100を用いて、JIS規格(JIS A 6201)に基づくI種、II種及びこれらの凝集体(結合体)を含むフライアッシュを分級する工程について説明する。
【0024】
流出経路12の下流側に接続された、気体吸引機能を有するバグフィルタ(図示せず)を稼働させることにより、前記フライアッシュを含む気体を流入経路11から円筒部10内に流入させると、円筒部10及び円錐部20の内部には、軸心10aを中心として矢線S方向の旋回流が発生する。
【0025】
円筒部10及び円錐部20の内部に発生する旋回流とともに旋回する前記フライアッシュは遠心力の作用により分級され、前記フライアッシュに含まれる比較的粒径の大きいフライアッシュ(II種のフライアッシュ成分、及びI種とII種のフライアッシュ粒子の凝集体)が分離され、円錐部20の最上部円錐筒体20aの内周面20afに沿って矢線S方向に旋回しながら落下していく。
【0026】
一方、前記フライアッシュに含まれる比較的粒径の小さいフライアッシュ(I種のフライアッシュ成分)は、軸心10a付近に生じる上昇旋回流に伴って最上部円錐筒体20a内を上昇していき、気体流とともに流出経路12を経由して排出され、流出経路12の下流側に接続されているバグフィルタ(図示せず)により、気体から分離回収される。
【0027】
最上部円錐筒体20aの内周面20afに沿って旋回しながら落下してきたフライアッシュ(II種のフライアッシュ成分、及びI種・II種のフライアッシュ粒子の凝集体)が、上部円錐筒体20b内に流入すると、多角筒状部40bの内周面に沿って矢線S方向に旋回しながら落下していくが、この過程において、前記フライアッシュは、複数の平面部40bfとの衝突を繰り返すことにより、I種・II種のフライアッシュ粒子の凝集体が解砕され、I種のフライアッシュ成分と
II種のフライアッシュ成分に分かれる。
【0028】
また、多角筒状部40bの内周面に沿って旋回する前記フライアッシュの一部は、平面部40bより軸心10a側に離れた位置に設けられた複数の解砕部材50との衝突を繰り返し、この過程においてもI種・II種のフライアッシュ粒子の凝集体が解砕される。
【0029】
上部円錐筒体20b内の多角筒状部40b及び解砕部材50との衝突を繰り返しながら落下するフライアッシュは、上部円錐体20bの下方の下部円錐筒体20c内へ流れ込み、下部円錐筒体20cの内周面に沿って旋回しながら落下していき、多角筒状部40cを形成する複数の平面部40cfとの衝突を繰り返すことにより、解砕される。
【0030】
上部円錐体20b及び下部円錐体20cの内部において解砕されたフライアッシュ中に含まれるI種のフライアッシュ成分は、軸心10a付近に発生する上昇旋回流に伴って上昇していき、気体流とともに流出経路12を経由して排出され、流出経路12の下流側に接続されているバグフィルタ(図示せず)により、気体から分離回収される。
【0031】
一方、下部円錐体20cの多角筒状部40cの内周面に沿って旋回しながら落下したフライアッシュ(主にII種のフライアッシュ成分)は、最下部円錐筒体20d内へ流れ込み、その内周面20dfに沿って旋回しながら落下していき、回収経路30内へ流入し、所定場所あるいは所定容器に回収される。なお、最下部円錐筒体20d内においても旋回流による遠心分級が行われ、I種のフライアッシュ成分は軸心10a付近の上昇旋回流に伴って上昇し、気体流とともに流出経路12を経由して排出される。
【0032】
このように、微粉分級装置100は、微粒成分(I種のフライアッシュ成分)と粗粒成分(II種のフライアッシュ成分、及びI種・
II種のフライアッシュ粒子の凝集体)とが混在した粉状体(フライアッシュ)を効率良く分級することができる。また、多角筒状部40b,40c及び解砕部材50を設けたことにより、凝集粒子(I種・
II種のフライアッシュ粒子の凝集体)を解砕する機能を発揮するので、微粒成分(I種のフライアッシュ成分)の回収率を高めることができる。
【0033】
また、最下部円錐筒体20dの周壁に設けられた通気管31,32の開閉弁31a,32a(
図3参照)を操作して、これらの開度を大きくすると、通気管31,32を経由して最下部円錐筒体20d(円錐部20)内へ流入する外気量が増して、粗粒成分のフライアッシュの落下量が増大し、逆に、開閉弁31a,32aの開度を小さく(若しくは開度ゼロ)にすると、外気流入量が減って(若しくはゼロとなり)、粗粒成分のフライアッシュの落下量が減少する、という作用効果が生じるので、作業条件に適した設定とすることができる。
【0034】
さらに、
図7に示すように、多角筒状部40bの内周面の平面部40bfと解砕部材50との距離が変更可能であるため、粉状体の処理量(流入経路11から円筒部10内へ流入するフライアッシュの分量)に応じて前記距離を増減させることにより、分級効率の安定化を図ることができる。なお、上部円錐筒体20bは上下のフランジF1,F2の締結を解除すれば、水平方向に移動させ、最上部円錐筒体20a及び下部円錐筒体20cから変位させることができるため、平面部40bfと解砕部材50との距離の調整あるいはメンテナンス時の作業性が良好である。
【0035】
図4,
図5に示すように、微粉分級装置100においては、多角筒状部40b,40cを正十六角筒形状としているが、これに限定しないので、内角数の異なるその他の多角筒形状とすることもできる。また、多角筒状部40b,40cの位相を軸心10a周りに互いに変位させて配置したり、多角筒状部40b,40cの内角数を異なるような構成としたりすることもできる。
【0036】
さらに、円錐部20内において多角筒状部を設ける位置や範囲、あるいは解砕部材50を設ける位置や個数なども限定しないので、分級処理対象である粉状体の種類や性状あるいは作業条件などに応じて設定することができる。
【0037】
次に、
図8,
図9に基づいて、解砕部材に関するその他の実施形態について説明する。なお、
図8,
図9中において
図1〜
図7中の符号と同符号を付した部分は、前述した微粉分級装置100の構成部分と同様の構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0038】
図8に示す実施形態においては、軸心10a(
図5参照)と直交する仮想平面における断面形状が四角形(正方形)をした角柱状の解砕部材60が設けられ、四つの角縁部61のうちの一つが矢線S方向の旋回流と対向する状態で配置されている。なお、前記断面形状は四角形(正方形)に限定しないので、長方形あるいは四角以上の多角形とすることもできる。
【0039】
図9に示す実施形態においては、軸心10a(
図5参照)と直交する仮想平面における断面形状が三角形(鈍角三角形であって不等辺三角形)をした三角柱状の解砕部材70が設けられている。また、3つの角縁部71,72,73のうち最も小さな鋭角をなす角縁部71が矢線S方向の旋回流と対向し、3つの外周面74,75,76のうちの、角縁部71と鈍角の角縁部73との間の外周面74が平面部40bfと平行をなす状態で配置されている。なお、前記断面形状は前記三角形に限定しないので、正三角形、二等辺三角形あるいはその他の三角形とすることもできる。
【0040】
図1〜
図9に基づいて説明した実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明の微粉分級装置は前述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の微粉分級装置は、フライアッシュなどの粉状体の分級手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 円筒部
10a,50a 軸心
10b 下縁部
10c 頂上壁
10d 周壁
11 流入経路
12 流出経路
20 円錐部
20a 最上部円錐筒体
20b 上部円錐筒体
20c 下部円錐筒体
20d 最下部円錐筒体
20af,20df 内周面
30 回収経路
30a 導入部
31,32 通気管
31a,32b 開閉弁
40b,40c 多角筒状部
40bf,40cf 平面部
50,60,70 解砕部材
51 ネジ機構
61,71,72,73 角縁部
74,75,76 外周面
100 微粉分級装置
F1,F2,F3 フランジ
L 仮想直線