特許第6029920号(P6029920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029920
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】製本装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 9/00 20060101AFI20161114BHJP
   B42C 19/02 20060101ALI20161114BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B42C9/00
   B42C19/02
   B65H37/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-221568(P2012-221568)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-73616(P2014-73616A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】野沢 亜希子
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116029(JP,A)
【文献】 特開2011−235998(JP,A)
【文献】 特開2011−121188(JP,A)
【文献】 特開2010−228319(JP,A)
【文献】 特開2007−163559(JP,A)
【文献】 特開2006−82543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42C 1/00−99/00
B65H 37/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に接続され、印刷と製本とを施す印刷製本ジョブに基づいて印刷部で印刷された記録媒体を糊で製本する製本装置において、
前記糊を加熱する加熱部と、
前記加熱部への電力供給を停止したときから所定時間経過したときの糊の温度を取得する取得部と、
糊の温度と前記加熱部により加熱されて該温度の糊を適温にするまでの時間を記憶する記憶部と、
前記印刷製本ジョブに基づいて、印刷が完了するまでに要する残り印刷時間を算出する時間算出部と、
現在の印刷製本ジョブの製本を完了し、後続に印刷製本ジョブが存在する場合、前記加熱部への電力供給を一旦停止させ、電力供給を停止したときから所定時間経過したとき、前記加熱部への電力供給を再開するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記残り印刷時間と前記取得部が取得した温度に対応した前記記憶部に記憶された前記加熱部により加熱されて糊を適温にするまでの時間とが等しくなるように前記所定時間を決定している
ことを特徴とする製本装置。
【請求項2】
さらに、糊の温度を検出する温度検出部を備え、
前記取得部は、前記温度検出部により検出された温度に対応した前記記憶部に記憶された前記糊の温度を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の製本装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に接続されて印刷と製本とを施すジョブに基づいて印刷装置の印刷部において印刷された記録媒体を糊で製本する製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置に後処理装置である製本装置を接続して、印刷装置にて印刷した記録媒体を束に糊付けする製本処理を施すことのできる印刷システムがある。このような印刷システムにおいては、所定の期間を超えてシステムが使用されない場合には、各装置を構成する要素に供給する電力を遮断しておくのが一般的である。各構成要素への電力供給が遮断されているときに、印刷や製本の処理を実行するよう指示が入力されると、各装置は、ウォームアップ動作を実行して動作可能な状態へと復帰し、印刷や製本等の処理を実行する。
【0003】
図8は、従来における印刷システムによる各装置のウォームアップ動作を説明する図である。図8に示すように、各構成要素への電力供給が遮断されているときに印刷・製本を行う旨の指示が入力されると、印刷装置は、自装置及び接続されている製本装置に対してウォームアップを実行するよう指示する。製本装置は、印刷装置からの指示にしたがって、ウォームアップを実行する。製本装置は、動作可能な状態へと復帰すると、その状態を維持して、印刷装置において印刷が完了し、自装置において製本処理を実行可能となるまで待機する。
【0004】
これに対して、画像形成装置に接続されている後処理装置のウォームアップと、画像形成装置における画像形成処理とを並行して実行するよう制御する技術について開示されている(例えば、特許文献1)。図9は、特許文献1に開示されている画像形成システムによる各装置の動作を説明する図である。図9に示すように、画像形成装置は、後処理装置のウォームアップが完了するまで待つことなく印刷処理を行うため、システム全体での作業効率が向上する。
【0005】
また、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、各部の動作タイミングに応じて電力を供給するタイミングや電力の供給を終了するタイミングを制御することにより、電力消費の無駄を抑制する技術について開示されている(例えば、特許文献2)。特許文献2に開示されている技術によれば、すぐには使用しない構成要素については電力を遮断しておくことにより、電力消費の無駄を低減させて糊の劣化を防止することは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−338999号公報
【特許文献2】特開2010−26012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2では、後続の(2番目以降の)製本処理をする場合、製本装置の構成要素の一つである加熱部を糊の特性に応じてどのように制御するかについては具体的に記載されていない。このため、加熱部への電力供給を単に停止させても、次の製本処理を開始するまでに糊を所定の温度まで加熱しておかなければならないので、加熱部への電力供給を再開するタイミングが遅れてしまうと、後続の製本処理の生産性が低下してしまうこととなる。
【0008】
本発明は、糊を加熱する加熱部への電力供給を一旦停止させた場合、糊の特性に応じて加熱部への電力供給を再開するタイミングを最適に設定し、連続する印刷製本ジョブに対しても、生産性を低下させることなく、糊の劣化を効果的に抑制することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製本装置の第1の特徴は、印刷装置に接続され、印刷と製本とを施す印刷製本ジョブに基づいて印刷部で印刷された記録媒体を糊で製本する製本装置において、前記糊を加熱する加熱部と、前記加熱部への電力供給を停止したときから所定時間経過したときの糊の温度を取得する取得部と、糊の温度と前記加熱部により加熱されて該温度の糊を適温にするまでの時間を記憶する記憶部と、前記印刷製本ジョブに基づいて、印刷が完了するまでに要する残り印刷時間を算出する時間算出部と、現在の印刷製本ジョブの製本を完了し、後続に印刷製本ジョブが存在する場合、前記加熱部への電力供給を一旦停止させ、電力供給を停止したときから所定時間経過したとき、前記加熱部への電力供給を再開するように制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記残り印刷時間と前記取得部が取得した温度に対応した前記記憶部に記憶された前記加熱部により加熱されて糊を適温にするまでの時間とが等しくなるように前記所定時間を決定していることである。
【0010】
本発明の製本装置の第2の特徴は、糊の温度を検出する温度検出部を備え、前記取得部は、前記温度検出部により検出された温度に対応した前記記憶部に記憶された前記糊の温度を取得することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る製本装置の第1の特徴によれば、製本が完了し、後続に印刷製本ジョブが存在するとき、加熱部への電力供給を一旦停止させる。そして、記憶部に記憶させた加熱部による加熱を停止してからの残り印刷時間(印刷完了所要時間)と加熱部への電力供給を再開して加熱したときに糊が適温になる時間とが等しくなるとき、加熱部への電力供給を再開する。
【0012】
加熱部への電力供給を一旦停止させることにより、糊が加熱され続けて劣化が進むことを抑える。これとともに、糊の特性情報から求めた糊が再度適温になるまで加熱するのに必要な時間と、印刷装置において実行中の印刷処理が完了する時間とを比較して、印刷が完了するまでには糊が適温となっているよう、適切なタイミングで加熱部への電力供給を再開する。これにより、生産性を低下させることなく、糊の劣化を効果的に抑制する。
【0013】
本発明に係る製本装置の第2の特徴によれば、糊の温度を検出する温度検出部を備え、取得部は、温度検出部により検出された温度に対応した記憶部に記憶されている糊の温度を取得するので、より適切なタイミングで加熱部への電力供給を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る印刷システムの構成図である。
図2】第1の実施形態に係る印刷システムが印刷製本ジョブに基づき印刷及び製本の処理を実行した場合の、各段階における印刷装置及び製本装置の状態を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る製本装置が保持する時間テーブルの構造例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る印刷システムによる印刷製本実行時の処理を示したフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る印刷システムの構成図である。
図6】第2の実施形態に係る製本装置が保持する時間テーブルの構造例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る印刷システムによる印刷製本実行時の処理を示したフローチャートである。
図8】従来における印刷システムによる各装置のウォームアップ動作を説明する図である。
図9】特許文献1に開示されている画像形成システムによる各装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る印刷システムの構成図である。図1に示す印刷システム10は、印刷装置2と製本装置3とを有し、印刷装置2で印刷を施した記録媒体を、製本装置3にて製本する。
【0016】
印刷装置2は、図1においては不図示の情報処理装置と接続される。情報処理装置としては、例えばパーソナルコンピュータ(以下PCとする)を使用する。印刷装置2は、印刷システム10において印刷及び製本の処理を実行する旨の指示をPCから受けると、これにしたがって所定の用紙等の記録媒体に印刷処理を施す。印刷装置2は、印刷処理が完了した記録媒体については、接続する製本装置3のスタック36に渡していく。製本装置3は、印刷装置2から排出されて自装置のスタック26に収納される記録媒体に対し、製本処理を施す。
【0017】
印刷システム10を構成する印刷装置2及び製本装置3の構成について説明する。
印刷装置2は、印刷部21と通信部22とを有する。このうち、印刷部21は、PCから入力される印刷製本ジョブに基づき、記録媒体に対して印刷を施す。印刷処理を施した記録媒体は順次製本装置3のスタック36に排出してゆく。通信部22は、印刷製本ジョブの実行にかかわる各種情報等を製本装置3の通信部31との間で送受する。
【0018】
製本装置3は、通信部31、ヒータ32、記憶部34、制御部35、スタック36及び製本部37を有する。
スタック36は、上記のとおり、印刷部21において印刷処理の施された記録媒体を収納する。
【0019】
製本部37は、印刷製本ジョブに基づき、スタック36に収納されている記録媒体に対して製本処理を実行する。
ヒータ32は、製本部37が製本処理に利用する糊を加熱するために設けられる。
【0020】
記憶部34は、ヒータ32により加熱される糊の特性に関する情報を記憶する。具体的には、製本に使用する糊の温度と、ヒータ32により糊を加熱して製本に適した所定の温度にするまでに要する時間とを互いに対応付けた時間テーブルを糊の特性情報として記憶している。時間テーブルの構造については、図3を参照して説明する。
【0021】
通信部31は、印刷装置2の通信部22との間で、印刷製本ジョブの実行にかかわる各種情報を送受する。
制御部35は、時間算出部52、時間比較部53、計測部54、取得部(図示なし)を有し、製本装置3の各構成要素の制御を行い、例えば、ヒータ32への電力供給の制御を行う。
【0022】
制御部35のうち、時間算出部52は、記憶部34に記憶している情報から、糊を適温にするまでの所要時間を求めるとともに、印刷装置2の印刷部21が、実行中の印刷処理を完了させるまでに要する残り時間を表す印刷完了所要時間を算出する。
【0023】
実施例では、印刷完了所要時間とは、ヒータ32への電力供給を停止させた時間から記録媒体に印刷処理を施して製本開始可能になるまでの時間をいい、印刷処理に伴い減少していく時間をいうものとする。
【0024】
つまり、ヒータ32への電力供給を停止させた時間の印刷完了所要時間は印刷製本ジョブを実行するときの最大時間であり、印刷完了所要時間が最小になったときが製本を開始する時間である。本実施形態では、印刷完了所要時間は、計測部54が計測したヒータ32への電力供給を停止させた時点からの経過時間を減算することにより減少する。
【0025】
また、制御部35は、製本完了検出部(図示なし)から製本が完了したことを検出したことを取得する。
時間比較部53は、時間算出部52が求めた2つの時間の比較を行う。制御部35は、時間比較部53の比較結果に基づいて、ヒータ32への電力供給を制御する。
【0026】
計測部54は、ヒータ32への電力供給が停止した時点からの時間を計測する。
取得部は、時間テーブルの温度を参照する際に用いるための糊の温度を取得する。
以下に、本実施形態に係る印刷システム10においてヒータ32への電力供給を制御する方法について、具体的に説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る印刷システム10が印刷製本ジョブに基づき印刷及び製本の処理を実行した場合の、各段階における印刷装置2及び製本装置3の状態を示す図である。図2を参照して、本実施形態に係る印刷システム10が、製本装置3のヒータ32への電力供給を制御してヒータ32のオン/オフを切り替えるタイミングについて説明する。
【0028】
図2においては、上段には、印刷装置2の状態を、下段には、製本装置3の状態をそれぞれ示す。
また、図2においては、初め、印刷システム10の印刷装置2及び製本装置3の各構成要素への電力供給が停止されている場合を例示する。印刷装置2及び製本装置3がそれぞれの構成要素への電力供給を停止しているときに、印刷装置2に新たに印刷製本ジョブが入力されると、ウォームアップ動作を開始する。
【0029】
ここで、一般的には、印刷装置2は製本装置3よりもウォームアップに要する時間が短い。このため、図2においては、印刷装置2の方が先にウォームアップ動作が完了し、印刷装置2は、製本装置3のウォームアップが完了するのを待たずに、先に印刷処理を開始している。
【0030】
製本装置3は、ヒータ32を含む各構成要素のウォームアップ動作を実行し、動作可能な状態になると、印刷装置2における印刷処理が完了して全ての記録媒体がスタック36に収納されるのを待ち受ける。製本装置3は、スタック36に全ての記録媒体が収納されると、製本処理を開始する。
【0031】
ここで、製本装置3は、前述のような印刷完了所要時間が最小になることで、印刷が完了して製本が開始できる状態を把握する。
なお、図2においては、ある印刷製本ジョブにより実行される印刷処理及び製本処理を、それぞれ「印刷(i)」及び「製本(i)」(i=1、2、…)と表し、括弧内の数字が一致する場合は、印刷処理及び製本処理が相互に対応する処理であることを示す。
【0032】
製本装置3は、印刷(1)が完了してスタックに存在している記録媒体に対して製本(1)の処理を施す。
図2に示す例では、印刷システム10には、実行すべき印刷製本ジョブを2つ有している。
【0033】
この場合、製本装置3は、最初(i=1)の印刷製本ジョブに基づき製本(1)の処理を終了すると、後続の製本(2)の処理を実行するまでにヒータ32をオフにしておくことができるか否かを判断する。
【0034】
図2においては、ヒータ32をオフにしておくことができると判断し、一旦ヒータ32への電力供給を停止させている。
そして、製本(2)の処理を実行開始するタイミングを判断して、ヒータ32への電力供給を再開している。
【0035】
ヒータ32への電力供給の再開タイミングは、印刷(2)の処理が完了し、製本装置3が製本(2)の処理を開始するまでに、糊が製本処理に使用可能な温度になっているよう制御される。
【0036】
このように、本実施形態に係る印刷システム10では、製本装置3が、後続の印刷製本ジョブがあるときに、ヒータ32をオフに切り替えると、次の製本処理までに糊が使用可能な状態となっているようタイミングを制御してヒータ32を再びオンに切り替える。次の製本処理が開始されるタイミングは、後続の印刷製本ジョブに含まれる印刷完了所要時間より判断する。
【0037】
ヒータ32をオフにした後、再度オンに切り替えて糊の加熱を再開した場合に糊を適温にするために必要な時間は、製本装置3の記憶部34に記憶する時間テーブルに基づき求める。
【0038】
まず、記憶部34に記憶する時間テーブルについて、図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る製本装置3が保持する時間テーブルの構造例を示す図である。
【0039】
図3に示す時間テーブルにおいては、「糊の温度」、「ヒータをオンにしてから適温になるまでの時間」(以下、糊が適温になるまでの時間)及び「ヒータをオフにしてからの経過時間」が互いに対応付けられている。
【0040】
「糊が適温になるまでの時間」は、対応する「糊の温度」にある糊をヒータ32で加熱した場合に、糊が適温になるまでに要する時間を表す。
「糊の温度」は、製本装置3のヒータ32により加熱され、製本に利用される糊の温度を表す。
【0041】
「ヒータをオフにしてからの経過時間」は、制御部35によりヒータ32がオフにされてから経過した時間を表す。
糊の適温が何度か、ある温度の糊が適温になるまでに要する時間等については、糊の種類やヒータ32等の製本装置3の仕様等により決まる。
【0042】
実施例では、糊の温度ごとに、糊が適温になるまでの所要時間を測定する等により求めて、図3に示す時間テーブルを作成し、予め、記憶部34に時間テーブルを記憶させておく。
【0043】
なお、ヒータ32をオフにして糊への加熱を止めた場合、通常は、時間の経過に伴い糊の温度は低下してゆく。
すなわち、ヒータ32をオフにしてからの経過時間は、糊の温度変化と関連性を有している。
【0044】
このことから、「糊の温度」と「糊が適温になるまでの時間」との関係は、「ヒータ32をオフにしてからの経過時間」と「糊が適温になるまでの時間」との関係に置き換えてもよい。
【0045】
そこで、本実施形態においては、ヒータ32をオフにした後の経過時間と糊の温度との関係を予め測定等により求めて、図3に例示するような時間テーブルを作成しておく。
本実施形態においては、図3の時間テーブルにより、糊の温度と糊を適温にするまでの時間とが、ヒータ32をオフにしてからの経過時間を通じて対応付けられているということができる。
【0046】
時間算出部52は、印刷処理をしている間に図3の時間テーブルを参照して、経過時間に対応した糊が適温になるまでの時間を求める。
このように、本実施形態に係る印刷システム10は、製本装置3が処理中のジョブに対して後続の印刷製本ジョブが存在する場合に、図3の時間テーブルを参照して、ヒータ32への電力供給の制御を実行する。
【0047】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る印刷システム10が印刷製本ジョブを実行するときに、製本装置3のヒータ32への電力供給を制御する方法について具体的に説明する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る印刷システム10による印刷製本実行時の処理を示したフローチャートである。
印刷システム10は、PC等から印刷製本ジョブを受け取ると、印刷処理を開始する
印刷装置2において印刷処理が完了し、製本装置3のスタック36に記録媒体が収納されて、製本装置3において製本処理が開始すると、図4に示す一連の処理を開始する。
【0049】
まず、ステップS1で、印刷装置2は、後続する印刷製本ジョブの有無を判定する。
これから実行しようとする印刷製本ジョブの後に、更に実行すべき印刷製本ジョブが存在する場合は、ステップS2へと処理を移行させる。
更に実行すべき印刷製本ジョブが存在しない場合は、通信部22を介してその旨を製本装置3に通知して、ステップS14へと処理を移行させる。
【0050】
ステップS14で、製本装置3の制御部35は、製本部37において処理中の印刷製本ジョブに基づく製本処理が完了するのを待機する。
印刷製本ジョブが存在しない状態で製本処理が完了すると、ステップS15に進み、制御部35は、ヒータ32への電力供給を停止させ、処理を終了する。
【0051】
一方、製本装置3が現在の印刷製本ジョブに基づく製本処理を実行している間に、新たな印刷製本ジョブが入力された旨の通知を印刷装置2から受けた場合は、ステップS1に戻る。
【0052】
ステップS2へと処理を移行すると、印刷装置2の印刷部21は、後続の印刷製本ジョブに基づき印刷処理を開始する。
製本装置3は、通信部31を介して印刷装置2の通信部22からその旨の通知を受信することにより、印刷装置2において後続の印刷製本ジョブに基づく印刷処理を開始したことを認識する。
【0053】
なお、印刷装置2が後続の印刷製本ジョブの印刷処理を実行する一方で、製本装置3は、現在の印刷製本ジョブに基づき、製本処理を実行中である。
ステップS3では、製本装置3の制御部35は、製本部37において、実行中の印刷製本ジョブに基づく製本処理が完了したか否かを判定する。
【0054】
制御部35は、ステップS3において、製本処理が完了するのを待機し、製本完了検出部が、製本処理が完了した旨を示す製本完了信号を検出すると、処理をステップS4へと移行させる。なお、本実施形態では、製本完了検出部が製本を完了したことを製本完了信号を取得することにより検出しているが、製本装置3が時間を測定し、予め算出した製本完了までの時間を測定することで、製本を完了したことを検出するようにしてもよい。
【0055】
ステップS4では、製本装置3の制御部35は、印刷装置2において後続の印刷製本ジョブの印刷処理を実行中であるか否かを判定する。
ステップS4については、スタック36に未だ全ての記録媒体が収納されていない場合には、印刷装置2において印刷処理を実行中であると判定する。
【0056】
印刷装置2において後続の印刷製本ジョブの印刷処理を実行中である(ステップS4でYES)場合は、ステップS5に進み、印刷装置2において印刷処理が完了している(ステップS4でNO)場合は、ステップS12へと処理を移行させる。
【0057】
ステップS5では、製本装置3の制御部35は、ヒータ32への電力供給を停止させる。
そして、ステップS6では、製本装置3の制御部35のうちの時間算出部52が、後続の印刷製本ジョブに含まれる印刷完了所要時間を取得し、ステップS7に進む。
【0058】
なお、ステップS6においては、時間算出部52が、通信部31を介して印刷装置2の通信部22と通信を行う等により、印刷完了所要時間を取得する。
ステップS7では、製本装置3の制御部35のうちの時間算出部52は、ステップS5において計測部54が計測したヒータ32への電力供給を停止させてからの経過時間に基づいて、図3の時間テーブルを参照して、糊の温度情報を取得する。
【0059】
ステップS8では、時間算出部52は、ステップS7で取得した糊の温度情報が表す「糊の温度」に対応する「糊が適温になるまでの時間」を、図3の時間テーブルから算出して、ステップS9に進む。
【0060】
ステップS9では、時間算出部52は、ステップS6で取得した印刷完了所要時間から、ステップS5でヒータ32への電力供給を停止させてからの経過時間分を減算して、印刷完了所要時間を更新する。
【0061】
ステップS10では、製本装置3の制御部35のうちの時間比較部53が、ステップS9で更新した印刷完了所要時間と、ステップS8で求めた糊が適温になるまでの時間とを比較し、互いに等しいか否かを判定する。
【0062】
互いに等しくない場合は、ステップS7に戻る。
比較を繰り返した結果、印刷完了所要時間と糊が適温になるまでに要する時間とが等しい場合は、ステップS11に進む。
【0063】
ステップS11では、製本装置3の制御部35は、ヒータ32への電力供給を再開する。
ステップS12では、制御部35は、糊が適温になり、且つ、印刷装置2において実行していた後続の印刷製本ジョブに基づく印刷処理が完了するまで待機する。
【0064】
糊が適温になり、後続の印刷製本ジョブに基づく印刷処理が完了すると、処理をステップS13へと移行させる。
ステップS13では、製本装置3の制御部35は、製本部37において後続の印刷製本ジョブに基づく製本処理を開始するよう制御を行うと処理を終了する。
【0065】
ステップS7及びステップS8においては、ヒータ32への電力供給を停止してからの経過時間より、糊の温度を求め、求まる糊の温度に対応する「糊が適温になるまでの時間」を算出しているが、糊が適温になるまでの時間の算出の仕方はこれには限らない。
【0066】
例えば、図3の時間テーブルには、ヒータ32への電力供給を停止してからの経過時間と糊が適温になるまでの時間とのみを互いに対応付けておき、時間テーブルの経過時間に対応する「糊が適温になるまでの時間」を直接取得する構成としてもよい。
【0067】
また、変形例として、ステップS7〜ステップS10においては、糊が適温になるまでの時間及び印刷完了所要時間の算出や比較を繰り替えし実行しているが、これには限定されない。
【0068】
例えば、図3のような時間テーブルのうち、「ヒータをオフにしてからの経過時間」及び「適温になるまでの時間」の合計時間が、ステップS6で取得した印刷完了所要時間に最も近くなる行を検索する。
【0069】
そして、検索により該当する行の「ヒータをオフにしてからの経過時間」を取得するとともに、計測部54により時間の計測を開始し、「計測された経過時間」と取得した行の「ヒータをオフにしてからの経過時間」とを比較する。
【0070】
「計測された経過時間」と「ヒータをオフにしてからの経過時間」とが等しくなったときに、すなわち、印刷完了所要時間からヒータをオフにしてからの経過時間を減算した印刷完了所要時間と適温になるまでの時間とが等しくなったとき、ヒータ32への電力供給を再開する構成とすることもできる。
【0071】
つまり、このような構成の場合、時間テーブルを随時参照する必要がなく、ヒータをオフにした時点で、自動的にヒータ32への電力供給を再開するタイミングを取得して、上記と同様に、ヒータ32をオフからオンに切り替えるタイミングを適切に決定することが可能である。
【0072】
上記のように、ヒータ32への電力供給を一旦停止させることより、製本装置3において印刷装置2側の印刷処理が完了するのを待機している間に糊の劣化が進むことを抑える。
【0073】
そして、時間テーブルを参照して再度加熱して糊が適温になるまでの時間を求め、糊が適温になるまでの時間と、印刷装置2にて実行している後続の印刷製本ジョブに基づく印刷完了所要時間とに基づき、印刷が完了するときに糊が適温となるよう適切なタイミングでヒータ32への電力供給を再開する。
【0074】
これにより、生産性を低下させることなく、糊の劣化を効果的に抑制できる。
<第2の実施形態>
上記の実施形態においては、時間テーブルには、「糊の温度」、「糊が適温になるまでの時間」及び「ヒータをオフにしてからの経過時間」を対応付けて格納しておく。
【0075】
そして、計測部54がヒータ32をオフにしてからの経過時間を計測しておき、経過時間に対応する糊が適温になるまでの時間を時間テーブルより求めている。
これに対し、本実施形態においては、糊の温度を検出する温度検出部33を設けるとともに、検出した糊の温度と、糊が適温になるまでの時間とを対応付けてテーブルに格納しておく。
【0076】
そして、時間テーブルより、糊の温度を検出する手段において検出した温度に対応する糊が適温になるまでの時間を求める点で異なる。
以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に、本実施形態に係る印刷システムによるヒータ32への電力供給の制御方法について、具体的に説明する。
【0077】
図5は、本実施形態に係る印刷システムの構成図である。
図5に示す印刷システム10は、図5の第1の実施形態に係る印刷システムと比較して、温度検出部33を更に備えている点で異なり、他の構成については、上記と同様である。
【0078】
温度検出部33は、糊の温度を検出し、実施例では、温度センサ等を使用する。
図6は、本実施形態に係る製本装置3が保持する時間テーブルの構造例を示す図である。
【0079】
図6に示す時間テーブルは、「糊の温度」及び「適温になるまでの時間」が互いに対応付けられている。
製本装置3の時間算出部52は、温度検出部33から糊の温度を取得し、取得した糊の温度に対応する糊を適温にするまでに要する時間を、図6の時間テーブルから算出し、時間比較部53が取得した時間を印刷製本ジョブより求まる印刷完了所要時間と比較する。
【0080】
制御部35は、比較に基づき、後続の印刷製本ジョブに基づく印刷処理が完了するときまで、すなわち、製本装置3が次の製本処理を開始するときまでにヒータ32の再開処理が完了できているよう、ヒータ32をオンにするタイミングを制御する。
【0081】
図7は、本実施形態に係る印刷システム10による印刷製本実行時の処理を示したフローチャートである。
第1の実施形態と同様に、印刷システム10は、PC等から印刷製本ジョブを受け取ると、印刷装置2において印刷処理を開始する。
【0082】
そして、印刷処理が完了して、記録媒体が製本装置3のスタック36に収納されると、図7に示す一連の処理を開始する。
ステップS21〜ステップS26の処理については、それぞれ図4のステップS1〜ステップS6の処理と同様である。また、ステップS34、ステップS35も図4のステップS14、ステップS15と同様である。
【0083】
ステップS27では、時間算出部52は、温度検出部33から、糊の温度を取得する。
そして、ステップS28では、時間算出部52は、記憶部34の時間テーブルより、ステップS27で取得した温度の糊が適温になるまでの時間を求める。
ステップS29以降の処理については、図4のステップS9以降の処理と同様である。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷システム10のように、糊の温度と糊が適温になるまでの時間との関係を求めておき、これに基づき時間テーブルを作成しておく構成をとる場合であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0085】
なお、上記の第1及び第2の実施形態においては、製本装置3において時間テーブルを記憶させておき、製本装置3が、保持する時間テーブルより糊が適温になるまでの時間を求めて、印刷装置2において実行中の後続の印刷製本ジョブに基づく印刷処理が完了する印刷完了所要時間と比較して、これによりヒータ32への電力供給を制御している。
【0086】
しかし、本発明は、かかる構成に限定されるものではない。
この他にも、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の改良及び変更が可能である。例えば、前述の各実施形態に示された全体構成からいくつかの構成要素を削除してもよく、更には各実施形態の異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 印刷装置
3 製本装置
10 印刷システム
21 印刷部
22 通信部
31 通信部
32 ヒータ
33 温度検出部
34 記憶部
35 制御部
36 スタック
37 製本部
52 時間算出部
53 時間比較部
54 計測部
図1
図2
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図9