特許第6029929号(P6029929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6029929インキ用ポリウレタン樹脂組成物及び印刷インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029929
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】インキ用ポリウレタン樹脂組成物及び印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20161114BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20161114BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C08G18/16
   B32B27/40
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-237808(P2012-237808)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88465(P2014-88465A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴司
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 正典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂和
(72)【発明者】
【氏名】大橋 富宏
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−143970(JP,A)
【文献】 特開平06−016989(JP,A)
【文献】 特開平06−016762(JP,A)
【文献】 特開2004−175867(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008339(WO,A1)
【文献】 特開2002−293860(JP,A)
【文献】 特開2010−241924(JP,A)
【文献】 特開2009−155581(JP,A)
【文献】 特開平11−021332(JP,A)
【文献】 特開2010−248466(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0247876(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0156227(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0176596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
B32B 27/40
C08G 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(a)を含有するインキ用樹脂組成物において、
アミノ基及び/またはイミノ基を有する化合物(I)が該ポリウレタン樹脂(a)中の炭素に共有結合してなり、且つポリアミドアミンであるインキ用樹脂組成物。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂(a)が、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ジヒドロキシカルボン酸、及びアルキルジオールからなる群から選ばれる一種以上のジオールとイソシアネート化合物との反応物であるウレタンプレポリマーと、前記アミノ基及び/またはイミノ基を有する化合物(I)、アミノ基含有鎖伸長剤、及び反応停止剤との反応物である請求項1に記載のインキ用樹脂組成物。
【請求項3】
顔料を含有する請求項1又は2に記載のインキ用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、有機溶剤を含有する請求項1〜3のいずれか一つに記載のインキ用樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤が、アルコール、ケトンおよび酢酸エステルからなる群より選ばれる単一の溶剤成分(b)である請求項4記載のインキ用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のインキ用樹脂組成物を用いた印刷インキ。
【請求項7】
請求項6記載の印刷インキを用いた印刷物。
【請求項8】
請求項6記載の印刷インキを用いたラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤が有機溶剤及び/または水で構成する、印刷時に揮発溶剤の回収を容易にした溶剤回収再利用に適する印刷インキに関する。さらには、溶剤の95%以上を単一の有機溶剤、水で構成する、印刷時に揮発溶剤の回収を容易にした溶剤回収再利用に適する印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境の破壊や、成層圏におけるオゾン層の破壊、更には低層圏における酸性雨による農産物への打撃や森林資源の破壊、光化学オキシダントによる人体への悪影響などの大気汚染に関する問題は日々深刻になっている。そのため、これを防止する為のPRTR法の施行、悪臭防止法の規制強化、京都議定書の二酸化炭素排出量の削減、大気汚染防止法、埼玉県生活環境保全条例など、大気環境保全に関する法律も年々厳しくなってきている。特に、有機溶剤を大量に使用し放出しているグラビア印刷業界では、これらの問題を解決するひとつの手段として、溶剤回収・再利用への関心が高まっている。
【0003】
実際、ラミネート接着剤や出版グラビア印刷の分野では溶剤種をトルエン単独の組成に設計し、揮発溶剤を回収して再利用する事が既に行われている。これは、単独溶剤組成であれば、回収溶剤も単独組成で得られる為、接着剤やインキの希釈溶剤として容易に再利用できる為である
【0004】
主に軟包装材の製造に使用されるグラビアインキは、有機溶剤型、水性型の2種類のタイプがある。その中で、プラスチックフィルムなどへ使用されるグラビアインキの90%以上が有機溶剤型インキである。これは、乾燥性、印刷安定性、物性が高く、水性型に比較し優れた特徴があるからである。一方、昨今の環境保護へ向けた取り組みの中で、有機溶剤の削減が求められている。しかしながら、水性型への切り替えでは、分散媒である水特有の乾燥性の低さと表面張力の高さ、更には水分散型樹脂が水に対して再分散しづらいことに起因する生産性の低下、品質の悪化が免れず、業界での移行は進んでいない。
【0005】
このような状況から、印刷後、乾燥工程により揮発した有機溶剤を燃焼処理、若しくは回収処理する取り組みが検討されている。但し、燃焼処理はCO2を多量に発生させる為、地球温暖化防止の観点から好ましくない。従って、回収処理が主流となると予想される。しかしながら、現行のグラビアインキは多種多様な有機溶剤を用いている為、回収された溶剤の再使用、再利用が容易ではない。
【0006】
そこで、水酸基を有するアルコール可溶性ウレタン尿素樹脂を用いて、回収、再利用の促進を図る工夫がなされたインキが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、該技術では、顔料分散性が不充分であった。更に、反応溶剤としてアルコ−ル系溶剤を使用した、両末端に脂肪族炭化水素の炭素に結合したイソシアネート基を有し、さらに分子側鎖にカルボキシル基を有する線状ウレタンプレポリマー(A)と、ジアミン(B)との反応であって、該線状ウレタンプレポリマー(A)中のカルボキシル基を塩基で中和してアルコール可溶性ウレタン樹脂を製造し、該樹脂をバインダー樹脂として印刷インキが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、溶剤成分の95%以上を単一種のアルコール系溶剤と、水中で完全溶解する特定のポリウレタンポリウレア樹脂を用いて、単一のアルコール系溶剤を用いた印刷インキ用組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、両技術とも、乾燥性、密着性等には優れるものの、顔料分散時に、分散剤が必須となること、或いは、版かぶり性が実用域に届かないレベルであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−175867
【特許文献2】特開2002−293860
【特許文献3】国際公開WO2012/008339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、印刷適性にも優れ、とりわけ版かぶりも優れ、更に、顔料分散剤を添加しなくても顔料の分散安定性に優れるインキ用樹脂組成物、該組成物を用いた印刷インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、アミノ基もしくはイミノ基を有する化合物との反応物であるウレタン樹脂をバインダーとして用いる印刷インキ組成物が、版かぶり性を解決することを見出し、発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、樹脂中の炭素に共有結合した、アミノ基及び/またはイミノ基を有する化合物(I)との反応物であるポリウレタン樹脂(a)を含有するインキ用樹脂組成物、該組成物を含有した印刷インキ、該印刷インキを用いた印刷物、該印刷インキを用いたラミネート積層体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、版かぶり性が良好な、顔料安定性が良好な印刷インキ、その印刷物ないしはラミネート積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いるウレタン樹脂は、アミノ基、イミノ基およびそれら誘導体を有する成分が、側鎖ないしは主鎖に結合されていれば、特に限定されず、種々のウレタン樹脂を用いることができる。
【0013】
ウレタン樹脂の側鎖ないしは主鎖にアミノ基、イミノ基およびそれら誘導体を有する成分を結合させるには、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)ポリオール類とポリイソシアネート類とを反応してウレタン樹脂を製造する際に、樹脂中の炭素に共有結合した、アミノ基及び/またはイミノ基を有する化合物(I)〔以下、化合物(I)と記す。〕を添加して反応する方法。
(2)ポリオール類とポリイソシアネート類とをイソシアネート基過剰で反応させ、得られたイソシアネート末端ウレタン樹脂に、化合物(I)を反応させる方法。
(3)ポリオール類とポリイソシアネート類とをイソシアネート基過剰で反応させ、得られたイソシアネート末端ウレタン樹脂に、化合物(I)と鎖伸長剤とを反応させる方法。
【0014】
前記ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、2−エチル−2ブチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等の飽和または不飽和の低分子ポリオール類;前記低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸あるいはこれらの無水物を脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等;前記ポリエーテルポリオール類と前記カルボン酸或いは、これらのエステル類などが挙げられ
【0015】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられる樹脂中の炭素に共有結合した、アミノ基及び/またはイミノ基を有する化合物(I)は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリオルニチン、ポリリジンおよびポリアミドアミン等が挙げられる。
【0017】
前記ポリアリルアミンは、N,N−ジアルキルアリルアミン単位を形成するモノマーとしては、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−ジプロピルアリルアミン、N,N−ジブチルアリルアミン類を重合して得られる。これらの例としては、例えば、ニットウボーメディカル(株)のPAAの各種製品等が挙げられる。
【0018】
前記ポリエチレンイミンは、エチレンイミンを重合して得られる。これらの例としては、(株)日本触媒性エポミン等が挙げられる。また、前記ポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルカルボン酸アミドの重合体を加水分解して得られる。これらの例としては、例えば、ダイヤニトリックス(株)の各種製品等が挙げられる。ポリアミドアミンとしては、例えば、エアープロダクツ社製アンカマイド等が挙げられる。
【0019】
前記ポリオルニチン、ポリリジンは、それぞれオルニチン、リジンが分子内に有するカルボキシル基とアミノ基を重縮合して得られる。
【0020】
前記ポリビニルアミンないしはポリアミドアミンは、アミノ基或いはイミノ基を分子内に有しているので、これらの官能基の活性水素を用いて、イソシアネート基が残存しているウレタン樹脂とは容易に反応する。
【0021】
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂(a)は、ウレタン構造を骨格内に有していれば、特に、限定されず、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等も含む。
【0022】
本発明のインキ用樹脂組成物において、単一の有機溶剤に溶解可能な前記ポリウレタン樹脂(a)の好ましい形態としては、ポリエステルジオール(A)とポリエーテルジオール(B)との混合物と、イソシアネート化合物(C)との反応物であるウレタンプレポリマーを、前記化合物(I)、鎖伸長剤(D)及び反応停止剤(E)との反応物であるポリウレタンポリウレア樹脂である。
【0023】
前記ポリエステルジオール(A)とポリエーテルジオール(B)との混合比〔(A)/(B)〕(固形分の重量比)は、硬化物の耐熱性が良好なことから15以上であることが好ましく、硬化物の基材密着性が良好なことから、85以下であることが好ましく、〔(A)/(B)〕が30/70〜70/30であることが、特に好ましい。
【0024】
前記の(A)と(B)の比率において、前記ポリエステルジオール(A)は、数平均分子量が400以上であることが、塗膜密着性が良好であることから好ましく、アルコール溶媒への溶解性が良好な点で数平均分子量3000以下が好ましい。
【0025】
また、ポリエーテルジオール(B)は、数平均分子量が、400〜4,000であることが好ましい。
【0026】
ポリエステルジオール(A)及びポリエーテルジオール(B)中の水酸基(OH)と、イソシアネート化合物(C)中のイソシアネート基(NCO)の比(NCO/OH)は、2.0〜3.0であることが好ましい。前記比が2.0より小さいときは十分な耐アルカリ性が得られない傾向があり、また、3.0より大きい場合には得られるプレポリマーの溶解性が低下する傾向が認められる。
【0027】
前記したポリウレタンポリウレア樹脂には、分子中にヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基のいずれかを1個以上有することが好ましい。
【0028】
分子中にカルボキシル基を導入するには、ジメチロールプロピオン酸、2、2ージメチロール酢酸、2、2ージメチロール酪酸、2、2ージメチロールペンタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。特に、反応性、溶解性の点からはジメチロールプロピオン酸、2、2ージメチロール酪酸が好ましい。
【0029】
前記ジヒドロキシカルボン酸は、前記ジヒドロキシカルボン酸が、ジヒドロキシカルボン酸を含めた全ポリオール分の0.5〜4.0重量%の範囲で配合することが必要である。
全固形分の0.5重量%未満であれば、トラッピング不良を軽減する効果に乏しく、また、4.0重量%を超えると、樹脂の粘度が著しく高くなる、ないしは、ゲル化に至り、望ましい印刷粘度とインキ皮膜物性とを両立するような顔料/樹脂比にできない点から好ましくない。
【0030】
分子中にヒドロキシル基を導入するには、炭素数2〜20のアルカノールアミン(モノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等)が好ましい。
【0031】
チオール基を有する化合物には、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等が好ましい。
【0032】
本発明に用いる前記化合物(I)は、乾燥性と密着性に加えて、更に、版かぶり性をも良好となる点から、前記ポリウレタン樹脂の0.1〜2重量%含有することが好ましい。
【0033】
本発明の印刷インキに用いるポリウレタンポリウレア樹脂の調製工程において、ウレタンプレポリマーに使用されるアミノ基含有鎖伸長剤(D)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、(N−アミノエチル)―2−エタノールアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。更には反応停止剤(E)を用いることもできる。かかる反応停止剤としては例えば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタンポリウレア樹脂中にカルボキシル基を導入したいときは、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。
【0034】
また、ジヒドロキシカルボン酸を用いることにより樹脂中にカルボン酸を導入しているので、樹脂末端に導入したアミノ基とのイオン結合によりインキ塗膜が溶けにくくなるため、トラッピング不良が改善する点から好ましい。
【0035】
以下に、本発明のインキ用樹脂組成物を用いた印刷インキについて記す。
【0036】
本発明の印刷インキに用いる白色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、記録剤等に使用されている有機、無機顔料や染料等が挙げられる。具体的には酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化クロム、シリカ等が挙げられる。特に酸化チタンを用いることが着色性、隠蔽性、耐薬品性、耐候性等の観点から好ましい。
【0037】
白色系以外の無機顔料には、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)、べんがら(酸化鉄(III))等の顔料が挙げられる。アルミニウムは一般に粉末またはペースト状であるが、取扱の簡便さと人体に対する安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、輝度感、濃度の要求に応じてリーフィングまたはノンリーフィングタイプが用いられる。
【0038】
本発明の印刷インキに用いる有色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、記録剤等に使用されている有機、無機顔料や染料等が挙げられる。例えば、アゾ系、フタロシアニン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系等の顔料が挙げられる。
【0039】
着色剤は、印刷インキに十分な濃度・着色力を発現させる為、印刷インキの総重量に対して1〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
顔料を本発明の印刷インキ中に安定に分散させる際、前記樹脂単独でも分散可能であるが、更に顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。例えば、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両イオン性等の界面活性剤を用いることができる。分散剤の使用量は、インキの保存安定性の観点から、インキの総重量に対して0.05質量%以上、かつ、ラミネート適性の観点から5質量%以下が好ましい。更に、0.1〜2質量%の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0041】
本発明の印刷インキは、樹脂、着色剤等を溶剤中に溶解、または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を前記樹脂、必要に応じて前記分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0042】
顔料分散体の粒度分布は、分散練肉機の粉砕メディアの直径、充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、最適化することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
【0043】
前記方法で製造された印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から、B型粘度計液温25℃で10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0044】
本発明の印刷インキは、グラビア印刷、フレキソ印刷等の既知の印刷方式で用いることができる。例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0045】
本発明の印刷インキは、各種フィルム及至シート状の基材に、上記の印刷方式を用いて印刷及至塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで、印刷物及至被覆物として得ることができる。を、フィルム及至シート基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミ等、もしくはこれらの複合材料を挙げることが出来る。
【0046】
基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどがコート処理が施されていても良く、さらにコロナ処理などの表面処理が施されていても良い。
【0047】
更に、この印刷物の印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルージョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート法、印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により、本発明の印刷インキを用いたラミネート積層物が得られる
【0048】
本発明の印刷インキは、印刷及び乾燥工程で発生する溶剤蒸気を容易に回収して再利用できる。より好ましくは、単一のアルコール系溶剤及び該アルコールに溶解可能なポリウレタンポリウレア樹脂を使用することを特徴としており、印刷及び乾燥工程で発生する溶剤蒸気からアルコール成分を容易に分離回収できる。回収した溶剤は、単一のアルコールであり、エステル系溶剤の場合と異なり、カルボン酸等の副生成物もなく、精製工程も簡略化可能である。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の「部」「%」は、特に断りがない場合は重量基準である。
【0050】
(製造例1:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロ−ト型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、0.5リットルの四ツ口フラスコに水酸基価112.2 (mgKOH/g)、分子量1,000の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸との縮合物15.9部、水酸基価112.2 (mgKOH/g)、分子量1,000のポリプロピレングリコール143.1部、水酸基価56.1 (mgKOH/g)、分子量1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル19.0部、1,1,1−トリメチロールプロパン0.9部、2−2ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸1.6部を仕込み、窒素ガスを流し、撹拌しながら50℃に昇温した。続いて、イソホロンジイソシアネート84.3部を加え、イソシアネート基の残存率であるNCO%が6.0%に達する迄90℃で反応し、ウレタンプレポリマー(A1)を得た。続いて、撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール694.0部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン28.6部、ジ−n−ブチルアミン5.0部、ポリアリルアミンPAA−03(ニットウボーメディカル(株)製) 7.6部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A1)264.8部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量11,200、アミン価1.2 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(X1)を得た。
ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0051】
(製造例2:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロ−ト型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、0.5リットルの四ツ口フラスコに水酸基価56.1 (mgKOH/g)、分子量2,000のε−カプロラクトンを主原料とするポリカプロラクトンジオール36.2部、水酸基価37.4 (mgKOH/g)、分子量3,000のポリプロピレングリコール108.6部、水酸基価56.1 (mgKOH/g)、分子量2,000のポリテトラメチレングリコール36.2部、水酸基価102.0 (mgKOH/g)、分子550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル44.2部、1,1,1−トリメチロールプロパン3.6部を仕込み、窒素ガスを流し、撹拌しながら50℃に昇温した。続いて、イソホロンジイソシアネート32.8部を加え、イソシアネート基の残存率であるNCO%が5.8%に達する迄90℃で反応し、ウレタンプレポリマー(A2)を得た。
続いて、撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール687.4部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン28.1部、ジ−n−ブチルアミン7.2部、後述する製造例6で得られたポリアリルアミン(paa−6)の20%水溶液 15.7部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A2)261.6部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量13,800、アミン価0.7 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(X2)を得た。ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0052】
(製造例3:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール682.3部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン20.9部、ジ−n−ブチルアミン10.2部、ポリアリルアミンPAA−03(ニットウボーメディカル(株)製) 22.1部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A1)264.4部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量14,500、アミン価1.2 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(X3)を得た。
ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0053】
(製造例4:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール700.0部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン21.8部、ジ−n−ブチルアミン12.1部、エポミンSP−018(日本触媒社製ポリエチレンイミン、分子量約1800)〕 2.2部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A1)263.9部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量12,200、アミン価1.2 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(X4)を得た。
ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0054】
(製造例5:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール700.0部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン28.0部、ジ−n−ブチルアミン5.0部、アンカマイド375A(エアープロダクツ社製ポリアミドアミン) 3.1部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A1)263.9部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量11,500、アミン価1.2 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(X5)を得た。
ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0055】
製造例6
濃塩酸(65%)1100g中に、水冷下5〜10℃で、かきまぜながらモノアリルアミン 570 g(10モル)を滴下する。滴下終了後、減圧下、60℃で水及び過剰の塩化水素を留去し、白色の結晶を得た。得られた結晶を、減圧下、80°Cで乾燥する。攪拌機、温度計、逆流冷却器、窒素ガス導入管を備えた2リットルの丸底フラスコ中に、前記の乾燥した結晶590gを水210gに溶解して、モノアリルアミン塩酸塩の70%水溶液を調製し、窒素ガスを通しながら、溶液を50℃に加温する。アゾ系開始剤:2、2’−ビス(N−フェニルアミジニル)−2、2’−アゾプロパン・ジ塩酸塩14gを蒸留水20m1に溶かして加える。2時間後から発熱するので、かきまぜながら冷却して、液温な48〜52℃に保つ。開始剤添加10時間後、攪拌を止め、得られた溶液に過剰のメタノール中に加え、白色の重合体(ポリアリルアミン塩酸塩)の沈殿が得た。得られた沈殿を炉別し、メタノールで洗浄して、モノアリルアミン塩酸塩を除去する。
次いで、得られたポリアリルアミン塩酸塩30gを蒸留水270gに溶かし、強塩基性イオン交換樹脂(アンバーライト−IRA −402)を通して塩酸を除去し、展開液(ポリアリルアミンの水溶液)を凍結乾燥して、ポリアリルアミン(paa−6)を得た。
得られたポリアリールアミンの重量平均分子量は、2000であった。
【0056】
(比較製造例1:ポリウレタンポリウレア樹脂の調製)
撹拌機、温度計、ジムロート型還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた、2リットルの四ツ口フラスコに2−プロパノール700.0部、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン32.6部、ジ−n−ブチルアミン7.2部を加え、40℃迄昇温した。次に、ウレタンプレポリマー(A2)260.2部を加え、40℃で4時間反応させて、固形分30%、重量平均分子量18,500、アミン価0.7 (mgKOH/g)の、ポリウレタンポリウレア樹脂のアルコール溶液(Y1)を得た。
ついで、後述する方法で、墨色インキを調製し、各種性能を評価した。
【0057】
実施例1〜5、比較例1について、具体的に記す。
(墨インキの調製法)
【0058】
実施例1
ガラス瓶に1.5mmのガラスビーズを100部仕込み、実施例1を例に上げれば、IPAを44部、カーボンブラックとしてMONARCH460(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク製)を11部、製造例1で得たポリウレタンポリウレア樹脂X1を40部、水を5部仕込んだ後、ペイントコンディショナーで1時間分散を行った後、金網でガラスビーズを濾過し、墨インキXB−1を得る。
【0059】
実施例2〜5
前記製造例2〜5で得た樹脂を用いて、表1に記載の配合比率にて実施例1と同様の手順にてインキを調製した。
【0060】
比較例1
比較製造例1で得られた樹脂Y1を用いて、表2に記載の配合比率にて実施例1と同様の手順にてインキを調製した。
【0061】
比較例2
ガラス瓶に1.5mmのガラスビーズを100部仕込み、IPAを43部、カーボンブラックとしてMONARCH460(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク製)を11部、フローレンG-700(共栄社化学株式会社製)を1部、ポリウレタンポリウレア樹脂Y1を40部、水を5部仕込んだ後、ペイントコンディショナーで1時間分散を行った後、金網でガラスビーズを濾過し、墨インキYB−2を得る。
【0062】
上記で得られた実施例1〜5のインキ、及び比較例1〜2のインキについて、以下の評価を実施した。
【0063】
(流動性)
表1及び表2に記載のインキの粘度をB型粘度計にて6rpmと60rpmの回転数で測定した。6rpmで測定した粘度を60rpmで測定した粘度で割り、TI値を求めた。TI値が3.0未満であれば実用上使用可能である。
(評価)
○:TI値が1.5未満
△:TI値が1.5以上〜3.0未満
×:TI値が3.0以上
【0064】
(密着性)
表1及び表2に記載のインキを、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製 E5102 12μm)の処理面にバーコーター#4にて展色する。ニチバンのセロファンテープ18mm幅を展色面に密着させたのち、セロファンテープを垂直方向に勢いよく引き剥がし、セロファンテープに付着するインキ皮膜の面積比率を目視評価した。
セロファンテープに付着するインキの面積比率30%未満であれば実用可能なレベルと判断できるが、よりセロファンテープに付着しない方が望ましい。
(評価)
◎:セロファンテープに付着するインキの面積比率0%
○:セロファンテープに付着するインキの面積比率10%未満
△:セロファンテープに付着するインキの面積比率30%未満
×:セロファンテープに付着するインキの面積比率30%以上
××:セロファンテープに付着するインキの面積比率80%以上
【0065】
(版かぶり)
表1及び表2に記載のインキをIPAで希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。調整したインキを、半ベタ版を取り付けたグラビア印刷機を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製 パイレンP−2161 20μm)の処理面に印刷を行った。印刷速度を100m/分、150m/分、200m/分と変更し、半ベタ版の非画線部のインキが掻き取り切れず、漏れ出したインキが二軸延伸ポリプロピレンフィルムに転移する現象(版かぶり)の発生度合を目視評価した。印刷速度100m/分の印刷条件で版かぶり現象が発生しなければ実用可能なレベルと判断できるが、より高印刷速度でも版かぶり現象が発生しない方が望ましい。
(評価)
◎: 印刷速度200m/minで版かぶり現象が発生せず
○: 印刷速度150m/minで版かぶり現象が発生せず
△: 印刷速度100m/minで版かぶり現象が発生せず
×: 印刷速度100m/minで版かぶり現象が発生
××: 印刷速度100m/minで版かぶり現象が酷く発生
【0066】
(転移性)
表1及び表2に記載のインキをIPAで希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、グラデーション版を取り付けたグラビア印刷機を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製 パイレンP−2161 20μm)の処理面に印刷を行った。印刷速度を50m/min、80m/minと変更し、グラデーション版のハイライト部(セル容積:5%、10%)でのインキの欠落(カスレ)発生の有無を目視評価した。印刷速度80m/min以上の印刷条件でセル容積10%部分にカスレ発生しなければ実用可能なレベルと判断できるが、より低印刷速度および低セル容積%部分でもカスレが発生しない方が望ましい。
(評価)
◎: 印刷速度50m/分でカスレ発生なし
○: 印刷速度80m/分でカスレ発生なし
△: 印刷速度80m/分,セル容積5%でカスレ発生するがセル容積10%
でカスレ発生なし
×: 印刷速度80m/分,セル容積10%でもカスレが顕著に確認できる
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
尚、表中の原料は以下の通りである。
MONARCH460(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製):カーボンブラック、粒子サイズ27nm、BET比表面積84m2/g
フローレンG−700(共栄社化学株式会社製):カルボキシ基含有ポリマー変性物
【0070】
(数平均分子量、重量平均分子量の測定)
なお、数平均分子量、重量平均分子量は、下記の方法で測定した。
・GPC(ポリスチレン換算)
・東ソー(株)社製HLC8220システム
・条件
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。