(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともゴム成分と、充填剤と、アミノ基を含んだチオ硫酸化合物とを混合する(A)工程と、この(A)工程により得られた混合物と、硫黄成分と、加硫促進剤とを混合する(B)工程とを有するタイヤ部材の製造方法であって、
前記(A)工程において、前記アミノ基を含んだチオ硫酸化合物を前記ゴム成分100質量部に対して0.2質量部以上配合し、かつ
前記(A)工程において、混合中の混合物の温度を145〜170℃の範囲内に20秒間以上67秒間以内保持する
ことを特徴とする、タイヤ部材の製造方法。
前記(A)工程において、混合中の混合物の温度をx±5℃(x=150〜165℃)の範囲内に20秒間以上保持することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ部材の製造方法。
前記(A)工程における混合を、撹拌ロータと、加熱冷却媒体が流れるジャケットと、加圧ラムとを備えた混合装置にて行い、混合物の温度を前記温度範囲内に保持するために、前記混合装置の撹拌ロータの回転速度、加熱冷却媒体の温度、及びラム圧のうちの1つ以上の制御を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明のタイヤ部材の製造方法は、上記(A)工程と(B)工程とを少なくとも有し、(A)工程では、少なくともゴム成分と、充填剤と、アミノ基を含んだチオ硫酸化合物とを混合する。
【0021】
本発明で使用可能なゴム成分としては、各種天然ゴム(NR)、各種ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)等が挙げられ、これらはいずれか一種を用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、天然ゴム、各種ポリブタジエンゴムを用いる。また、これらのゴムとしては、アミノ基、アルコキシシラン基、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン等を導入した変性ジエンゴムも必要に応じて用いることができる。
【0022】
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示され、通常はカーボンブラック及びシリカが好ましく用いられる。
【0023】
上記充填剤の配合量は特に限定されず、タイヤ部材の用途等によって適宜調整されるものであるが、カーボンブラックのみを使用する場合は、通常はゴム成分100質量部あたり30〜80質量部の範囲が好ましく、シリカを配合する場合は、通常はゴム成分100質量部あたり10〜120質量部の範囲が好ましい。またシリカを配合する場合、ゴム成分100質量部あたりカーボンブラックを5〜50質量部配合することが好ましく、シリカ/カーボンブラックの配合比率は0.7/1〜1/0.1が特に好ましい。
【0024】
上記充填剤としてシリカを使用する場合は、シランカップリング剤を併用するのが好ましい。シランカップリング剤の種類は特に限定されず、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用されるものを使用することができ、例としてはスルフィドシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の含有量はシリカに対して5〜15質量%が好ましい。
【0025】
本発明で使用するアミノ基を含んだチオ硫酸化合物としては、上記の式(1)〜(3)のいずれかで表されるチオ硫酸化合物又はその塩を好適に用いることができ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩;コバルト塩、銅塩等の遷移金属塩;亜鉛塩等の典型金属塩;アンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩等の置換又は無置換のアンモニウム塩等が挙げられる。これらの中では、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、コバルト、銅又は亜鉛等の金属塩が好ましく、中でもリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。また、本発明でチオ硫酸化合物とその塩をそれらの混合物として用いる場合、かかる混合物は、例えば、チオ硫酸化合物とその塩とを混合する方法、金属アルカリを用いてチオ硫酸化合物の一部を金属塩化する方法、プロトン酸を用いてチオ硫酸化合物の金属塩の一部を中和する方法等により得られたものを用いることができる。なお、以下においては、「式(1)〜(3)のいずれかで表されるチオ硫酸化合物又はその塩のうちの1種又は2種以上」を「チオ硫酸化合物及び/又はその塩」と略記する場合がある。
【0026】
式(1)で表される化合物の好ましい例としては、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸、S−(3−アミノブチル)チオ硫酸、S−(3−アミノペンチル)チオ硫酸、S−(3−アミノヘキシル)チオ硫酸が挙げられる。
【0027】
式(1)で表される化合物は任意の公知の方法によって製造することができ、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の塩は、例えば、3−ハロプロピルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法や、フタルイミドカリウム塩と1,3−ジハロプロパンとを反応させ、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法等により製造することができる。S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸は、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸の塩をプロトン酸を用いて中和することにより製造することができる。このようにして製造したS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその塩は、濃縮、晶析等の操作により単離することができ、単離されたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその塩は、通常0.1%〜5%程度の水分を含む。
【0028】
次に式(2)で表される化合物の例としては、S−3−(ピペリジン−1−イル)プロピルチオ硫酸、S−4−(ピペリジン−1−イル)ブチルチオ硫酸、S−5−(ピペリジン−1−イル)ペンチルチオ硫酸、S−6−(ピペリジン−1−イル)ヘキシルチオ硫酸、S−7−(ピペリジン−1−イル)ヘプチルチオ硫酸、S−8−(ピペリジン−1−イル)オクチルチオ硫酸、S−10−(ピペリジン−1−イル)デシルチオ硫酸、S−12−(ピペリジン−1−イル)ドデシルチオ硫酸、S−3−(ピロリジン−1−イル)プロピルチオ硫酸、S−4−(ピロリジン−1−イル)ブチルチオ硫酸、S−5−(ピロリジン−1−イル)ペンチルチオ硫酸、S−6−(ピロリジン−1−イル)ヘキシルチオ硫酸、S−7−(ピロリジン−1−イル)ヘプチルチオ硫酸、S−8−(ピロリジン−1−イル)オクチルチオ硫酸、S−10−(ピロリジン−1−イル)デシルチオ硫酸、S−12−(ピロリジン−1−イル)ドデシルチオ硫酸が挙げられる。中でも、S−3−(ピペリジン−1−イル)プロピルチオ硫酸、S−3−(ピペリジン−1−イル)プロピルチオ硫酸ナトリウム、S−6−(ピペリジン−1−イル)ヘキシルチオ硫酸又はS−6−(ピペリジン−1−イル)ヘキシルチオ硫酸ナトリウムが好ましく、S−3−(ピペリジン−1−イル)プロピルチオ硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0029】
式(2)で表される化合物は、例えば次の式に示される方法により製造できる。
【化4】
【0030】
式中、R及びnは式(2)におけるのと同じであり、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0031】
かかる製法によれば、通常、ナトリウム塩が得られるが、必要に応じてカチオン交換し、所望の化合物を製造できる。得られる化合物は、通常0.1〜5質量%程度の水分を含む。
【0032】
次に、式(3)で表される化合物の例としては、S−(4−アミノフェニル)メチルチオ硫酸、S−[2−(4−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸、S−[3−(4−アミノフェニル)プロピル]チオ硫酸、S−[4−(4−アミノフェニル)ブチル]チオ硫酸、S−[5−(4−アミノフェニル)ペンチル]チオ硫酸、S−[6−(4−アミノフェニル)ヘキシル]チオ硫酸、S−2−(3−アミノフェニル)メチルチオ硫酸、S−[2−(3−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸、S−[3−(3−アミノフェニル)プロピル]チオ硫酸、S−[4−(3−アミノフェニル)ブチル]チオ硫酸、S−[5−(3−アミノフェニル)ペンチル]チオ硫酸、S−[6−(3−アミノフェニル)ヘキシル]チオ硫酸、S−(2−アミノフェニル)メチルチオ硫酸、S−[2−(2−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸、S−[3−(2−アミノフェニル)プロピル]チオ硫酸、S−[4−(2−アミノフェニル)ブチル]チオ硫酸、S−[5−(2−アミノフェニル)ペンチル]チオ硫酸、S−[6−(2−アミノフェニル)ヘキシル]チオ硫酸、S−(3,5−ジアミノフェニル)メチルチオ硫酸、S−(3,4−ジアミノフェニル)メチルチオ硫酸、S−[2−(3,5−ジアミノフェニル)エチル]チオ硫酸、S−[2−(3,4−ジアミノフェニル)エチル]チオ硫酸等が挙げられる。中でも、S−[2−(4−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸、S−[2−(4−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸ナトリウムが好ましく、S−[2−(4−アミノフェニル)エチル]チオ硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0033】
式(3)で表される化合物は、例えば次の式に示される方法により製造できる。
【化5】
【0034】
式中、R及びnは上記式(3)におけるのと同じであり、Xはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0035】
かかる製法によれば、通常、ナトリウム塩が得られるが、必要に応じてカチオン交換し、所望の化合物を製造できる。得られる化合物は、通常0.1〜5質量%程度の水分を含む。
【0036】
本発明の製造方法の(A)工程におけるチオ硫酸化合物及び/又はその塩の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.2質量部以上(すなわち0.2phr以上)が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。0.2質量部未満であると、目的とする耐摩耗性能、引裂強さ、耐疲労性等の物性の向上が不十分となるおそれがある。
【0037】
また、(A)工程においては、上記ゴム成分、充填剤及びチオ硫酸化合物及び/又はその塩以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、オイルその他のタイヤゴム部材の製造に通常使用される成分や添加剤を配合することができる。これらの配合量も限定されるものではなく、タイヤ部材の使用目的等により適宜調整されるが、通常は、酸化亜鉛の使用量は、ゴム成分100質量部あたり1〜15質量部の範囲内であることが好ましく、3〜8質量部の範囲内であることがより好ましい。また、ステアリン酸の使用量は、ゴム成分100質量部あたり0.5〜10質量部の範囲内であることが好ましく、1〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0038】
(A)工程におけるゴム成分と充填剤とチオ硫酸化合物及び/又はその塩との混合は、一般に混練と称される操作であり、例えば、バンバリーミキサー等の、撹拌ロータと、加熱冷却媒体が流れるジャケットと、加圧ラムとを少なくとも備えた公知の混合装置を用いて行うことができる。加熱冷却媒体は、所望の温度になるように必要に応じて加熱されて、ジャケットの中を流れ、混合容器の壁面の熱伝達により混合物を加熱又は冷却する。この加熱冷却媒体としては通常は水が使用される。加圧ラムはシリンダ内を昇降して、混合機内部の圧力を調整するようになされている。混合装置は、さらに、装置内の混合物の温度を検知する温度センサと、ロータの回転数を制御する制御部とを備えていることが好ましい。
【0039】
かかるゴムの混練は通常は発熱を伴うので、何ら制御を行わないと混合中の混合物の温度は急激に上昇するところ、本発明の製造方法では、(A)工程における混合中の混合物の温度が145〜170℃の範囲内に20秒間以上保持されるように混合条件等を調整する。具体的には、混合装置のロータの回転速度、加熱冷却媒体の温度、及びラム圧のうちの1つ以上を制御することにより温度を上記範囲内に保持することが可能である。これら回転速度等はPID(Proportional Integral Differential:比例積分微分)制御により自動制御することにより、混合物の温度調節がより容易かつ確実となる。
【0040】
上記温度範囲での保持時間が20秒未満であると、耐摩耗性能、引裂強さ、耐疲労性の改良効果が不十分となる。チオ硫酸化合物及び/又はその塩はより高い温度で混合したほうが、各物性の改良効果は大きくなるが、一方でゴムは高温に晒されることで、分子量の低下やゲル化を生じ、結果として耐摩耗性能の悪化や耐疲労性の悪化を招くので、上記温度範囲及び時間で混合することにより、高温混合によるゴムの物性低下を抑えつつ、チオ硫酸化合物及び/又はその塩の配合による効果を高められると考えられる。
【0041】
なお、上記温度範囲での保持時間が20秒未満である場合としては、例えば、温度上昇が緩やかで排出時の温度が145℃未満の場合や、145℃に達しても、それから排出までの時間が20秒未満であった場合、あるいは急激に温度上昇して、上記温度範囲を20秒以内で通過した場合が想定される。
【0042】
上記温度範囲での保持時間の上限は、好ましくは120秒以内とし、より好ましくは60秒間以内とする。高温での長時間の混合は、ゴムの分子量の低下やゲル化を生じ、耐摩耗性能や耐疲労性の低下を招くおそれがあり、また、混合時間の増加による生産性の悪化、混合に使用するエネルギーコストの増加を生じ、対費用効果が低下する。
【0043】
好ましくは、上記ロータの回転速度等の制御をより厳密に行い、混合中の混合物の温度をx±5℃(x=150〜165℃)の範囲内で20秒間以上保持する。すなわち、145〜155℃の範囲や、160〜170℃の範囲というように、150〜165℃の範囲内のある温度を基準温度xとして、最低温度が(x−5)℃以上、最高温度が(x+5)℃以下になるように制御する。このように温度変動をより小さくして一定時間保持することで、チオ硫酸化合物及び/又はその塩による作用がより高められ、上記各物性改良効果がより顕著となる。特に好ましくは、160℃±5℃、すなわち155〜165℃の範囲内で20秒以上120秒以内保持する。
【0044】
また、(A)工程全体を通しての混合物の最高温度は170℃以下であることが好ましい。混合物の温度が170℃を超えると、ゴムの劣化により物性が低下するおそれが生じる。また、(A)工程全体としての混合時間は、特に限定されないが、通常は1分〜10分である。
【0045】
次に、本発明の(B)工程、すなわち、上記(A)工程で得られた混合物と硫黄成分と加硫促進剤とを混合する工程について説明する。
【0046】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、ベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。なお、本明細書でいう硫黄成分には、上記式(1)〜(3)で表されるチオ硫酸化合物及びその塩は含まれないものとする。硫黄成分の使用量は、上記ゴム成分100質量部あたり0.3〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0048】
硫黄成分と加硫促進剤との比率は特に制限されないが、質量比で硫黄成分/加硫促進剤=2/1〜1/2の範囲が好ましい。また天然ゴムを主とするゴム成分において耐熱性を向上させる方法である硫黄/加硫促進剤の比を1以下にする、いわゆるEV加硫は、耐熱性向上が特に必要な用途においては、本発明でも好ましく用いられる。
【0049】
本工程における上記(A)工程で得られた混練物と硫黄成分と加硫促進剤との混合も、一般に混練と称される操作であり、例えば、オープンロールやバンバリーミキサー等の混練装置を用いて常法に従い行うことができる。
【0050】
混練時間は、通常は1分〜10分が好ましく、より好ましくは2分〜8分の範囲である。混練時間が1分以上であれば、硫黄成分や加硫促進剤のゴム成分への分散性が向上する傾向にあり、10分以下であれば、ゴム成分の劣化が抑制される傾向にあり、最終的に得られる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる点において、それぞれ好ましい。
【0051】
上記により得られた混合物を、一般に加硫と称される熱処理に供する。熱処理は、常圧下又は加圧下で行われ、処理温度は通常は120℃〜180℃程度である。
【0052】
上記により得られる本発明のタイヤ部材は、耐摩耗性能、引裂強さ、耐疲労性等がバランスよく向上するため、各種タイヤのキャップトレッドやベーストレッド等のトレッド部材やサイドウォール部材として好適に用いることができる。
【0053】
具体的には、上記混合物をトレッド部材やサイドウォール部材等の目的とするタイヤ部材に対応した所定の断面形状に押出し成形したり、あるいは混合物からリボン状のゴムストリップを形成してドラム上で螺旋状に旋回して目的とするタイヤ部材に対応した断面形状に形成したりすることにより、タイヤ部材が得られる。かかるタイヤ部材を、インナーライナー、カーカス、ベルト、ビードコア、ビードフィラー等のタイヤを構成する他のタイヤ部材と共に、常法に従い加硫成形することにより、本発明のタイヤが得られる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下で示す配合割合は、特記しない限り質量基準(「質量部」、「質量%」等)とする。また、以下の実施例及び比較例で使用した化合物A及びBの製造方法は以下の通りである。
【0055】
〔化合物A(S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩)の製造〕
反応容器を窒素置換し、反応容器中に、3−ブロモプロピルアミン臭素酸塩25g(0.11mol)、チオ硫酸ナトリウム・5水和物28.42g(0.11mol)、メタノール125ml及び水125mlを仕込み、得られた混合物を70℃で4.5時間還流した。
【0056】
反応混合物を放冷し、減圧下でメタノールを除去した。メタノールを除去した反応混合物に水酸化ナトリウム4.56gを加え、室温で30分間攪拌した。その後、熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後、静置した。結晶をろ取し、エタノール、ヘキサンで洗浄することにより得られた結晶を真空乾燥して、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を得た。
【0057】
〔化合物B(S−(6−アミノヘキシル)チオ硫酸のナトリウム塩)の製造〕
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、フタルイミドカリウム49.6g(0.27mol)及びジメチルホルムアミド240mlを仕込み、得られた混合物に、1,6−ジブロモヘキサン100g(0.41mol)とジメチルホルムアミド100mlとの混合物を室温で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を120℃まで昇温し、4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、酢酸エチルと水とを加えて分液した後、有機層を濃縮した。得られた残渣にヘキサンと酢酸エチルとを加え、得られた混合物を静置したところ、結晶が析出した。結晶をろ取し、真空乾燥して、N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミドを56.5g得た。
【0058】
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、上記で得られた N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミド20g(64.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム・五水和物16.0g(64.4mmol)、メタノール100ml及び水100mlを仕込み、得られた混合物を4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、エタノール100mlを加えて1時間還流した。熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを約5g除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後静置した。結晶をろ取し、エタノールとヘキサンで洗浄した。得られた結晶を真空乾燥することにより、6−フタルイミドヘキシルチオ硫酸のナトリウム塩を22.1g得た。
【0059】
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコを窒素置換し、そこに、6−フタルイミドヘキシルチオ硫酸のナトリウム塩20.0g(54.7mmol)及びエタノール200mlを仕込み、得られた混合物にヒドラジン・一水和物4.25g(84.8mmol)を滴下した。滴下終了後、得られた混合物を70℃で5時間攪拌した後、減圧下でエタノールを留去した。残渣にメタノール100mlを加えて1時間還流させた。熱ろ過により結晶を取得し、これをメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより、6−アミノヘキシルチオ硫酸のナトリウム塩を得た。
【0060】
[タイヤトレッド部材の製造]
表1〜3に示した配合に従い、各成分を表の混合(A)工程に示した条件でバンバリーミキサーを用いて混合し、次いで混合(B)工程で示した加硫促進剤と硫黄を添加混合したのち、150℃にて30分間加熱することにより加硫を行い、タイヤトレッド部材を得た。
【0061】
(A)工程における混合物の温度の調整は、混合機のロータ回転速度をPID制御することにより行った。例えば、基準温度xが150℃である実施例1−1の場合、混合室内の温度が150℃に達してからPID制御を行い、ロータ回転速度を小刻みに変化(上昇または下降)させることで、145〜155℃の温度範囲を25秒間保持した。
【0062】
表1〜3に示す各配合物の詳細は以下の通りである。
化合物A:S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩
化合物B:S−(6−アミノヘキシル)チオ硫酸のナトリウム塩
NR:天然ゴム RSS#3
BR:宇部興産(株)製 BR150B
カーボンブラックA:東海カーボン(株)製 シースト6
カーボンブラックB:東海カーボン(株)製 シースト3
オイル:(株)ジャパンエナジー製 JOMO プロセス P200
シリカ:東ソー・シリカ工業(株)製 ニップシールAQ
シランカップリング剤:エボニック・デグサ(株)製 Si69
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製 亜鉛華
ステアリン酸:日油(株)製 ビーズステアリン酸
老化防止剤:住友化学工業(株)製 アンチゲン6C
ワックス:日本精蝋(株)製 オゾエース0355
加硫促進剤:三新化学工業(株)製 サンセラーCM
硫黄:鶴見化学(株)製 粉末硫黄
【0063】
上記により得られたトレッド用ゴムの耐摩耗性、引裂強さ、耐屈曲疲労性を以下の方法で評価した。結果を各表に示す。
【0064】
耐摩耗性能:JIS K6264に準拠して測定した。スリップ率は30%、負荷荷重は40N、落砂量は20g/分とした。結果を比較例1の値を100とした指数で示す。数値が大きいほど耐摩耗性能に優れることを示す。
【0065】
引裂強さ:JIS K6252に準拠して測定した。比較例1を100とした指数で示す。値が大きいほど引裂強さが大きいことを示す。
【0066】
耐屈曲疲労性:JIS K6260(デマチャ屈曲亀裂試験)に準拠し、屈曲亀裂成長試験を行った。測定は温度23℃の条件下で行い、亀裂成長が2mmになるまでの回数を求めた。比較例1を100とした指数で示す。数値が大きいほど耐疲労性が優れることを示す。
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表1〜3に示された結果から、チオ硫酸化合物A又はBを所定量配合し、かつ(A)工程において混合中の混合物の温度を145〜170℃で20秒以上保持した各実施例のゴム部材は、これらの要件のいずれかを満たさない比較例のゴム部材と比較して、耐摩耗性、引裂強さ、及び耐屈曲疲労性がまんべんなく向上しているのが分かる。
【0070】
[タイヤサイドウォール部材の製造]
表4に示す成分及び混合条件を用いた以外は上記トレッド部材の製造と同様にして、サイドウォール部材を製造した。表4に示す各配合物の詳細も上記と同じである。得られたサイドウォール部材につき、上記と同じ方法により、引裂強さ、耐屈曲疲労性を評価した。結果を表4に示す。
【表4】
【0071】
表4に示された結果から、チオ硫酸化合物Aを所定量配合し、かつ(A)工程において混合中の混合物の温度を145〜170℃で20秒以上保持した各実施例のゴム部材は、これらの要件のいずれかを満たさない比較例のゴム部材と比較して、引裂強さ及び耐屈曲疲労性がまんべんなく向上しているのが分かる。