(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は情報処理装置の構成例を示す図である。情報処理装置1は、位置検出手段1a、位置補正手段1bおよび移動状況判定手段1cを備え、移動体の動線を解析する装置である。
【0011】
位置検出手段1aは、移動体の位置を検出する。位置補正手段1bは、位置検出手段1aで検出された検出位置を補正して補正位置を求める。
位置補正手段1bでは、移動体の通過が想定されるルート上の1以上のポイントを取得し、その1以上のポイントの位置と、検出位置とを比較して、検出位置から閾値範囲内にあるポイントを近傍点として近傍点集合を生成する。そして、位置補正手段1bは、近傍点集合に含まれる近傍点の中から補正位置を求める。
【0012】
また、移動状況判定手段1cは、移動体のルート毎に管理されている、移動体の特定区間での移動に要するあらかじめ決められた設定時間を取得する。そして、移動状況判定手段1cは、移動体が特定区間で実移動した移動時間と、設定時間とを比較して、移動体の全ルートで移動時間が設定時間を超える場合は、アラームを出力する。
【0013】
このように、情報処理装置1では、実測定された移動体位置の周辺における、移動体の通過が想定されるルート上のポイントを近傍点として抽出し、近傍点の中から補正位置を求める処理を行う。
【0014】
これにより、簡易な位置検出機能でも(例えば、少ない位置検出センサ数でも)、移動体位置および動線を高精度に求めることが可能になる。また、移動体の移動状況をリアルタイムに判定する機能も有しているので、移動状況に応じた適切な指示を行うことも可能になる。
【0015】
次に情報処理装置1が適用される動線解析システムについて説明する。なお、以降では、人動線を解析する場合を例にして説明する。
図2は動線解析システムの構成例を示す図である。動線解析システム1−1は、管理サーバ10a、管理端末10b、無線端末2(携帯電話など)およびアクセスポイントAP1、AP2を備える。
【0016】
動線解析システム1−1では、作業者の位置検出として、アクセスポイントAP1、AP2と、無線端末2間で行われる無線LAN(Local Area Network)通信を利用する場合の構成例を示している。
【0017】
アクセスポイントAP1、AP2は、作業現場Spの適所に設けられ、無線端末2は、作業者に携帯される。また、管理サーバ10a、管理端末10bおよびアクセスポイントAP1、AP2は、有線で接続している。
【0018】
管理サーバ10aは、
図1の情報処理装置1の機能を含み、無線端末2とアクセスポイントAP1、AP2による作業者の位置検出を行って、作業現場Sp内における作業者の動線の解析を行う。管理端末10bは、管理者に対して管理サーバ10aで行われる動線解析に関するGUI(Graphical User Interface)を提供する。
【0019】
本技術を適用する動線解析システム1−1では、無線LAN通信によって作業者のおおよその実測位置を取得し、その後の補正処理によって、作業者の正確な補正位置を求める。このため、作業現場Sp内に設置するアクセスポイント数を従来システムよりも少なく設置することができる。そして、少ないアクセスポイント数で作業者の位置を高精度に求めることが可能である。
【0020】
図3は動線解析システムの構成例を示す図である。動線解析システム1−2は、管理サーバ10a、管理端末10b、RFID(Radio Frequency Identification)タグ2aおよびRFIDアンテナAt1〜At9を備える。
【0021】
動線解析システム1−2では、作業者の位置検出として、RFIDアンテナAt1〜At9とRFIDタグ2a間で行われるRFID通信を利用する場合の構成例を示している。
【0022】
RFIDアンテナAt1〜At9は、作業現場Spの適所に設けられ、RFIDタグ2aは、作業者に装着される。管理サーバ10a、管理端末10bおよびRFIDアンテナAt1〜At9は、有線で接続している。
【0023】
管理サーバ10aは、
図1の情報処理装置1の機能を含み、RFIDタグ2aとRFIDアンテナAt1〜At9による作業者の位置検出を行って、作業現場Sp内における作業者の動線の動線解析を行う。管理端末10bは、管理者に対して管理サーバ10aで行われる動線解析に関するGUIを提供する。
【0024】
本技術を適用する動線解析システム1−2では、RFID通信によって作業者のおおよその実測位置を取得し、その後の補正処理によって、作業者の正確な補正位置を求める。このため、作業現場Sp内に設置するRFIDアンテナ数を従来システムよりも少なく設置することができる。そして、少ないRFIDアンテナ数で作業者の位置を高精度に求めることが可能である。
【0025】
なお、
図2、
図3共に、管理サーバ10aおよび管理端末10bは、1台の管理装置として構成されていてもよい。また、上記では、位置検出として、無線LANやRFIDによる通信によって作業者の概略位置を実測する例について示したが、その他の方法で実測位置を検出してもよい。
【0026】
次に情報処理装置1の構成について説明する。
図4は情報処理装置の構成例を示す図である。情報処理装置1Aは、位置検出手段11、位置補正手段12、作業者情報取得手段13、ルート集合生成手段14、作業状況判定手段15およびデータベース管理手段16を備える。
【0027】
なお、位置検出手段11は、
図1の位置検出手段1aの機能を有し、位置補正手段12は、
図1の位置補正手段1bの機能を有する。さらに、作業状況判定手段15は、
図1の移動状況判定手段1cの機能を有する。
【0028】
データベース管理手段16は、作業者情報DB(database)16−1、区間定義情報DB16−2、ルート定義情報DB16−3、ルート集合DB16−4、ルート作業時間定義情報DB16−5、ルート詳細情報DB16−6および位置情報DB16−7を含み、各DBの登録管理を制御する。なお、各構成要素の動作と各データベースの構成例については後述する。
【0029】
次に情報処理装置1Aによる動線解析の全体処理について説明する。
図5は動線解析処理を示すフローチャートである。
〔S1〕作業者情報取得手段13は、作業者情報DB16−1から、作業者情報として、動線解析対象の作業者の作業者ID(identification)および作業IDを取得する。
【0030】
〔S2〕ルート集合生成手段14は、当該作業者の作業IDによって、現時点で候補として挙がる複数の作業ルート(ルート群)の中から、作業開始点が一致するルートをすべて抽出し、初回ルート集合を作成する。そして、ルート集合生成手段14は、初回ルート集合をルート集合DB16−4に登録する。
【0031】
〔S3〕位置検出手段11は、簡易的な位置検出機能により、当該作業者の概略の位置情報を取得し、取得した位置情報を位置情報DB16−7に登録する。
〔S4〕位置補正手段12は、位置検出手段11で検出された検出位置を補正して補正位置を特定する。
【0032】
〔S5〕ルート集合生成手段14は、ステップS4の位置補正結果にもとづき、現時点でのルート集合を認識し、ルート集合DB16−4の登録内容を更新する。
〔S6〕作業状況判定手段15は、ルート作業時間定義情報DB16−5に登録されているルート作業時間定義情報にもとづいて、作業状況を判定する。
【0033】
〔S7〕作業状況判定手段15は、当該作業者の作業終了と判断した場合は、動線解析を終了し、作業が継続されていることを判断した場合は、ステップS3へ戻る。
次に本技術の動線解析が行われる作業現場の一例について説明する。
図6は動線解析が行われる作業現場のレイアウトの一例を示す図である。作業現場Spの中には、トレイtr1〜tr8が存在している。作業者は、通路(トレイtr1〜tr8が存在しないスペース)を移動しながら、トレイtr1〜tr8の周辺を巡り、商品ピッキングなどの所定の作業を行うものとする。
【0034】
図7は作業現場内の動線を示す図である。図中の太実線は動線Lを示している。動線Lは、作業者が作業現場Sp内を移動することが可能な経路である。
図8は動線の区間分けを示す図である。作業者の動線Lは、適切な区間に分割されて区間単位で処理される。このため、作業者の動線Lを複数の区間に分割するために、動線L上には分割ポイントとなるノードがマッピングされる。
【0035】
図8では、ノードN1〜N15が動線L上に設定されて、作業現場Sp内の動線Lは、複数の区間に分割されている。なお、以降では、ノードNaからノードNbの方向における区間を区間Labと呼ぶ。例えば、区間L12は、ノードN1からノードN2の移動方向における区間を示し、区間L21は、ノードN2からノードN1の移動方向における区間を示す。
【0036】
次にデータベース管理手段16で管理される各種データベースおよび登録情報について説明する。
図9は作業者情報DBの構成例を示す図である。作業者情報DB16−1は、属性項目として、作業者ID、開始時刻および作業IDを有する。
【0037】
作業者IDは、作業者を識別するための識別子であり、例えば、作業者が携帯する無線端末2に設定されているIDやRFIDタグ2aのIDに該当する。また、開始時刻は、作業の開始時刻を示し、作業IDは、作業内容を識別するための識別子である。
【0038】
図10、
図11は区間定義情報DBの構成例を示す図である。区間定義情報DB16−2は、区間毎の区間定義情報をテーブル化して登録する。区間定義情報は、区間内の位置、区間上の移動方向および該当区間のスタート/エンドノードの属性を含む。移動方向は、対応する位置をルートに沿って通過する作業者の進行方向である。移動方向は、例えば、作業現場Spの2次元座標の1つの座標軸と、に移動方向を示す単位ベクトルとの成す角度で表される。
【0039】
例えば、区間L12の区間定義情報は、位置L12(xi、yi)、移動方向(θ12i)、スタート/エンドノードの属性を含み、また、区間L21の区間定義情報は、位置L21(xi、yi)、移動方向(θ21i)、スタート/エンドノードの属性を含む。
【0040】
さらに、例えば、区間L34の区間定義情報は、位置L34(xi、yi)、移動方向(θ34i)、スタート/エンドノードの属性を含む。また、区間L43の区間定義情報は、位置L43(xi、yi)、移動方向(θ43i)、スタート/エンドノードの属性を含む。
【0041】
図12、
図13は区間定義情報を説明するための図である。
図12は、区間L12の区間定義情報を示し、
図13は、区間L34の区間定義情報を示している。
図12の区間L12では、スタートノードがノードN1であり、エンドノードがノードN2である。そして、ノードN1からノードN2への区間上に、6ポイントの位置(L12x1、L12y1)〜(L12x6、L12y6)が設定されている。さらに、ノードN1からノードN2への区間上に、6ポイントの移動方向θ121〜θ126が設定されている。
【0042】
また、
図13の区間L34では、スタートノードがノードN3であり、エンドノードがノードN4である。そして、ノードN3からノードN4への区間上に、4ポイントの位置(L34x1、L34y1)〜(L34x4、L34y4)が設定されている。さらに、ノードN3からノードN4への区間上に、4ポイントの移動方向θ341〜θ344が設定されている。なお、位置および方向の設定ポイントの数は、解析精度に応じて適宜決定する。
【0043】
次にルート関連の情報およびDBについて説明する。ルートとは、作業者が所定の作業を行う際に移動する動線L上の経路のことであり、作業毎にルートはあらかじめ決められている。
【0044】
図14〜
図16はルートの例を示す図である。例えば、
図14のルートR1は、作業ID=#1の作業ルートであり、作業ID=#1の作業を行う際の作業者が通過する最短経路を示している。
【0045】
また、
図15のルートR2は、作業ID=#3の作業ルートであり、作業ID=#3の作業を行う際の作業者が通過する最短経路を示している。さらに、
図16のルートR3は、作業ID=#4の作業ルートであり、作業ID=#4の作業を行う際に作業者が通過する最短経路を示している。なお、異なる作業IDでも同じルートが割り当てられることもある(
図19、
図20で後述)。
【0046】
図17はルート定義情報DBの構成例を示す図である。該当ルートの区間識別子がルート定義情報となる。また、ルート定義情報DB16−3は、各ルートに対して、ルート定義情報となる区間識別子を、ノードの通過順に順番に登録する。
【0047】
例えば、
図14のルートR1の通過ノードを順に示すと、N1→N2→N3→N4→N5→N6→N7→N8→N9→N10→N11→N12→N13→N14→N15→N10→N9→N8→N7→N6→N5→N4→N3→N2→N1である。
【0048】
したがって、ルートR1のルート定義情報は、
図17に示すように上から順に、区間L12、L23、L34、L45、L56、L67、L78、L89、L910、L1011、L1112、L1213、L1314、L1415、L1510、L109、L94、L43、L32、L21と登録される。ルートR2、R3のルート定義情報についても、同様にして登録される。
【0049】
図18はルート集合DBの構成例を示す図である。ルート集合DB16−4は、作業者IDとルートIDの属性項目を含み、一人の作業者の担当する(または担当候補となる)作業ルートを登録するDBである。例えば、作業者ID=ID0001の作業者には、ルートR1、R2、R5、・・・のルート集合が割り当てられることが示されている。
【0050】
図19〜
図22はルート作業時間定義情報DBの構成例を示す図である。ルート作業時間定義情報DB16−5は、作業IDとルートIDの組み合わせ毎に、ルート作業時間定義情報を登録する。
【0051】
ルート作業時間定義情報は、区間、所要時間および累積時間の属性を有する。所要時間は、該当区間で作業者が作業に要する時間(作業者が留まる時間)である。累積時間は、所要時間を移動方向の順に累積した時間である。
【0052】
なお、同じルートであっても作業IDが異なれば所要時間(作業時間)が異なる。例えば、
図19のテーブルと、
図20のテーブルを比較すると、どちらも同じルートR1であり、
図19のテーブルは作業ID=#1、
図20のテーブルは作業ID=#2となっている。
【0053】
この場合、
図19のテーブルの区間L12では、所要時間=T11
-1であり、
図20のテーブルの区間L12では、所要時間=T11
-2であり、所要時間は互いに異なっている。
【0054】
図23はルート詳細情報DBの構成例を示す図である。ルート詳細情報DB16−6は、ルート毎のルート詳細情報を登録する。ルート詳細情報は、位置Rn(xi、yi)、移動方向(θ)および区間の属性を有する。
図23の例では、ルートR1のルート詳細情報を示している。
【0055】
次に位置情報および位置情報DB16−7について説明する。
図24は位置情報DBの構成例を示す図である。位置情報DB16−7は、位置検出手段11で検出された作業者の概略の位置情報と、位置補正手段12で位置が補正されて特定された補正位置情報とを登録する。
【0056】
位置情報DB16−7は、位置情報として、位置P(xi、yi)と相対時間の属性を有し、補正位置情報として、補正位置Q(xi、yi)の属性を有する。相対時間とは、最初の位置を検出した時刻から、各位置の検出時刻までの経過時間(実績相対時間)である。なお相対時間として、1つ前の位置から現在位置への移動に要した時間を、位置情報DB16−7に格納してもよい。その場合、先に検出された相対時間の合計を計算することで、最初の位置検出から各位置の検出までの実績相対時間を得ることができる。
【0057】
図25は位置検出手段により検出された作業者の検出位置を示す図である。位置検出手段11は、少ない測定ポイント数で無線LANまたはRFIDなどによって位置検出を行う。このため、作業現場Sp内を移動する作業者の位置は、おおまかな位置として検出される。また、検出結果は、位置情報として位置情報DB16−7に登録される。
【0058】
なお、
図25には、位置情報から想定しうる作業ルートとして、ルートR1、R2が示されている。また、図中のポイントa1〜anwは、位置検出手段11で検出された作業者の概略位置であり、各ポイントを結ぶ矢印は、作業者の移動方向を示している。
【0059】
図24の位置情報DB16−7に登録されている位置情報に対応させると、例えば、ポイントa2は、位置がP(x2、y2)であり、相対時間はPT2(ポイントa1からポイントa2への移動相対時間)である。同様に、ポイントanwは、位置がP(xnw、ynw)であり、相対時間はPTnw(ポイントa9からポイントanwへの移動相対時間)である。
【0060】
ここで、作業者が作業現場Sp内で作業を行っているときは、作業者は、通路上に位置しているはずであり、トレイtr1〜tr8上に位置するということはない。しかし、
図25からわかるように、作業者の位置検出ポイントとして、例えば、ポイントa2は、通路上で検出されているが、ポイントa1は、トレイtr2上で検出されている。このように、位置検出手段11では、作業者の位置をおおまかに検出しているので、本来、作業者が位置しないはずの箇所を、作業者の位置として検出する可能性がある。
【0061】
この場合、作業現場Sp内に配置する測定ポイント数などを増やして、位置検出精度を上げれば、作業者の位置を正確に検出することは可能になるが、装置規模およびコストの増加を招くことになる。
【0062】
したがって、本技術では、位置検出手段11で粗く検出された作業者の位置に対して、その後の位置補正処理を行うことで、精度よく作業者の位置および動線を求め、装置規模およびコストの増加を抑制して、精度の高い動線解析を実行するものである。
【0063】
次に位置補正手段12について説明する。
図26は位置補正手段の動作を示すフローチャートである。
〔S11〕位置補正手段12は、ルート集合DB16−4から、動線解析対象の作業者IDに対応する現在のルート集合を認識する。そして、位置補正手段12は、該ルート集合から1つのルートを選択し、選択したルート上のポイントを抽出する。
【0064】
〔S12〕位置補正手段12は、抽出したポイントの位置(抽出ポイント)と、位置検出手段11で検出された作業者の現在の概略位置(現検出位置)との比較を行う。
〔S13〕位置補正手段12は、現検出位置の閾値範囲内に、抽出ポイントが含まれるか否かを判断する。閾値範囲内に抽出ポイントが含まれる場合は、ステップS14へ行き、含まれない場合は、ステップS15へ行く。なお、閾値範囲内に含まれるポイントを近傍点と呼ぶ。
【0065】
図27は近傍点を説明するための図である。現検出位置a0は、半径r1の円cr1の中心に位置するものとし、円cr1の内部を閾値範囲とする。近傍点か否かの判断としては、例えば、ルート上のポイントが円cr1内にある、または円cr1の円周上にあれば、そのポイントは近傍点とする。
【0066】
図の場合では、ポイントp1−1、p1−2は、円cr1内に含まれているので、ポイントp1−1、p1−2は、現検出位置a0に近接している近傍点とする。また、ポイントp1−3は、円cr1内に含まれていないので、ポイントp1−3は近傍点とはならない。なお、上記の近傍点を判断するための方法は一例であって、その他の方法を用いてもよい。
【0067】
〔S14〕位置補正手段12は、閾値範囲内に含まれるポイントを近傍点とし、該近傍点を近傍点集合に入れる。
〔S15〕位置補正手段12は、現在のルート集合の全ポイントに対して、ステップS13の近傍点探索処理を行ったか否かを判断する。全ポイントに対して行った場合は、ステップS17へ行き、行っていない場合はステップS16へ行く。
【0068】
〔S16〕位置補正手段12は、選択したルート上の次のポイントを取得して、ステップS12へ戻る。
〔S17〕位置補正手段12は、近傍点集合の同一区間内に、複数の近傍点があれば、現検出位置に最も近接している近傍点を選択する。すなわち、位置補正手段12は、1区間内の近傍点は1つに絞る。
【0069】
〔S18〕位置補正手段12は、近傍点集合の中に2つ以上の近傍点を有しているか否かを判断する。2つ以上の近傍点を有している場合はステップS20へ行き、有していない場合はステップS19へ行く。
【0070】
〔S19〕位置補正手段12は、現周期で抽出した1点の近傍点を補正位置とする。または、近傍点集合内に近傍点が存在しない場合には、位置補正手段12は、現検出位置に最近接するポイントを補正位置とする。
【0071】
〔S20〕位置補正手段12は、前回周期で特定した補正位置(前回補正位置)と、現周期で取得した現検出位置との距離を算出する。
〔S21〕位置補正手段12は、ステップS20で算出した距離が一定値以内か否かを判断する。具体的には、0に近いか否かを判断する。例えば、算出距離があらかじめ設定した閾値以内にあれば、ほぼ0とみなし、閾値を超えれば0ではないとみなす。算出距離が0に近い場合はステップS22へ行き、0に近くない場合はステップS23へ行く。
【0072】
〔S22〕位置補正手段12は、前回補正位置を現周期での補正位置とする。
なお、前回周期で抽出した前回補正位置と、現周期で抽出した現検出位置との距離が0に近い場合は、作業者は移動しておらず、留まっていると想定される。したがって、このような場合は、前回補正位置を、現周期での補正位置とすることにより、作業者が留まっている場合の位置を求めることができる。
【0073】
〔S23〕位置補正手段12は、後述の補正位置特定処理を行う。
次に位置補正手段12による補正位置特定処理について説明する。
図28、
図29は補正位置特定処理を説明するための図である。
【0074】
図28において、現在周期の位置検出で得られた現概略位置を現検出位置anwとし、前回周期で特定された補正位置を前回補正位置a9とする。また、現検出位置の閾値範囲内にある近傍点集合の中に近傍点が3つあるとし、それらを近傍点k1、k2、k3とする。
【0075】
図29において、位置補正手段12は、まず、前回補正位置a9と、現検出位置anwとから、移動ベクトルVrを求める(前回補正位置a9が始点、現検出位置anwが終点)。そして、位置補正手段12は、近傍点集合の中から抽出したルート上の近傍点k1、k2、k3における、作業者の進行方向の単位ベクトルvk1、vk2、vk3をそれぞれ求める。例えば位置補正手段12は、区間定義情報DB16−2を参照し、近傍点k1、k2、k3それぞれの移動方向を取得する。次に位置補正手段12は、取得した移動方向にもとづいて、近傍点k1、k2、k3それぞれについて、移動方向を向いた単位ベクトルvk1、vk2、vk3を生成する。
【0076】
さらに、位置補正手段12は、移動ベクトルVrの単位ベクトルvk1方向の成分F(1)、移動ベクトルVrの単位ベクトルvk2方向の成分F(2)および移動ベクトルVrの単位ベクトルvk3方向の成分F(3)を求める。
【0077】
ここで、ベクトルA、Bの内積は、A・B=|A||B|cosθである(θはベクトルA、Bのなす角度)。ベクトルBの単位ベクトルをeとすれば(|e|=1)、A・e=|A|cosθとなり、A・eは、ベクトルAのe方向の成分を表す。
【0078】
したがって、ここの例では、移動ベクトルVrの単位ベクトルvk1方向の成分F(1)は、F(1)=Vr・vk1=|Vr||vk1|cos(θ−0°)=r・cosθとなる(∵|Vr|=r、|vk1|=1)。
【0079】
また、移動ベクトルVrの単位ベクトルvk2方向の成分F(2)は、F(2)=Vr・vk2=|Vr||vk2|cos(θ−270°)=r・cos(θ−270°)=−r・sinθとなる(∵|vk2|=1)。
【0080】
さらに、移動ベクトルVrの単位ベクトルvk3方向の成分F(3)は、F(3)=Vr・vk3=|Vr||vk3|cos(θ−90°)=r・cos(θ−90°)=r・sinθとなる(∵|vk3|=1)。
【0081】
そして、位置補正手段12は、成分F(1)、F(2)、F(3)の中の最大値を持つ近傍点を補正位置として特定する。この例では、F(1)が最大なので、近傍点k1が補正位置と特定される。
【0082】
図30は補正位置特定処理の動作を示すフローチャートである。
〔S31〕位置補正手段12は、前回補正位置と現検出位置とから移動ベクトルVrを求める。
【0083】
〔S32〕位置補正手段12は、近傍点集合の中から抽出したルート上の近傍点における、作業者の進行方向の単位ベクトルを求める。
〔S33〕位置補正手段12は、移動ベクトルVrの各単位ベクトル方向の成分を求める。
【0084】
〔S34〕位置補正手段12は、移動ベクトルVrの各単位ベクトル方向の成分の中から最大値を選択し、その最大値を持つ近傍点を補正位置と特定する。
〔S35〕位置補正手段12は、決定した補正位置を位置情報DB16−7の補正情報として登録する。
【0085】
図31は概略位置と補正位置とを示す図である。概略位置a1〜anwがそれぞれ位置補正されて、補正位置c1〜cnwとなっている状態を示している。このように、補正位置特定処理を行うことにより、作業者の位置および動線を精度よく求めることができる。すなわち、位置検出によって作業者の位置がトレイ上に検出されたとしても、その後の補正位置特定により、作業者の位置が通路上に補正されることになる。
【0086】
次にルート集合生成手段14のルート集合DB16−4の更新処理について説明する。
図32はルート集合DBの更新処理を示すフローチャートである。
〔S41〕ルート集合生成手段14は、補正位置となったポイントが含まれる区間を特定する。
【0087】
〔S42〕ルート集合生成手段14は、特定した区間を持つルートを現ルート集合から抽出する。
〔S43〕ルート集合生成手段14は、抽出したルートを新たな現ルート集合とし、ルート集合DBに登録する。
【0088】
次に作業状況判定手段15について説明する。
図33は作業状況判定手段の動作を示すフローチャートである。
〔S51〕作業状況判定手段15は、作業者情報DB16−1から、作業者IDに対応する作業IDを取得する(複数の作業IDの取得も可)。
【0089】
〔S52〕作業状況判定手段15は、ルート作業時間定義情報DB16−5から、取得した作業IDに対応する作業時間の情報を読み込む。
〔S53〕作業状況判定手段15は、概略位置情報の現在位置における相対時間と、該当の作業情報の累積時間とを比較する。例えば作業状況判定手段15は、相対時間と累積時間との差を求める。
【0090】
〔S54〕作業状況判定手段15は、比較結果がすべての該当作業ID上で閾値を超える場合は、ステップS55へ行き、閾値を超えない場合は終了する。
〔S55〕作業状況判定手段15は、アラーム出力を行う。
【0091】
ここで、ルート作業時間定義情報DB16−5によって、ルート上の特定区間での作業者の作業に要する設定時間は、作業ID毎にあらかじめ管理されている。作業状況判定手段15では、特定区間での作業者の実作業に要した作業時間と、設定時間とを比較し、該当作業者に割り当てられているすべての作業IDで、作業時間が設定時間を超える場合は、通常の作業が行われていないと判断してアラームを出力する。このように、動線解析結果をリアルタイムで作業者指導に活用することができるので、作業効率の向上を図ることが可能になる。なお、該当作業者に割り当てられている少なくとも1つの作業IDで、作業時間が設定時間を超える場合に、アラームを出力するようにしてもよい。
【0092】
また
図33の例では、現在位置における相対時間と、該当の作業情報の累積時間とを比較しているが、他の時間の比較を行ってもよい。例えば、現在の区間にいる時間が、規定の所要時間を超過した場合に、アラームを出力してもよい。その場合、作業状況判定手段15は、位置情報DB16−7にもとづいて、作業者が現在の区間に立ち入ってからの経過時間を求める。次に作業状況判定手段15は、作業者に課されている作業のルート作業時間定義情報DB16−5から、作業者が現在いる区間の所要時間を求める。そして作業状況判定手段15は、作業者が現在の区間に立ち入ってからの経過時間と、その区間の所要時間より大きい場合に、アラームを出力する。
【0093】
図34はアラームの表示例を示す図である。例えば、
図2、
図3に示した管理端末10bの画面上に示されるアラーム表示の一例を示している。管理端末10bには、作業情報表示画面3が映し出され、作業情報表示画面3は、作業者ID、作業名、ステータスおよび検出時刻が表示されている。
【0094】
例えば、作業者ID=12002の作業者が行っている作業EFGにおいて、時刻15:32に異常ありと表示されている。アラーム出力のその他の例としては、作業者が携帯している無線端末2のアラームを鳴動させたり、無線端末2に注意喚起のメールを送信したりしてもよい。
【0095】
なお、上記に示した処理機能は、コンピュータによって実現することができる。
図35は本実施の形態に用いるコンピュータのハードウェアの一構成例を示す図である。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器が接続されている。
【0096】
RAM102は、コンピュータ100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0097】
バス108に接続されている周辺機器としては、HDD(Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、および通信インタフェース107がある。
【0098】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、コンピュータ100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0099】
グラフィック処理装置104には、モニタ104aが接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令に従って、画像をモニタ104aの画面に表示させる。モニタ104aとしては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0100】
入力インタフェース105には、キーボード105aとマウス105bとが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード105aやマウス105bから送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス105bは、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0101】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク106aに記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク106aは、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク106aには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(Rewritable)などがある。
【0102】
通信インタフェース107は、ネットワーク110に接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク110を介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行う。
【0103】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。また、コンピュータで本実施の形態の処理機能を実現する場合、情報処理装置1Aが有する機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。
【0104】
そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto Optical disk)などがある。なおプログラムを記録する記録媒体には、一時的な伝搬信号自体は含まれない。
【0105】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0106】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0107】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0108】
以上説明したように、本技術により、簡易的な位置検出技術を用いた場合でも、移動体の位置および動線をその後の位置補正処理で精度よく求めることが可能になる。これにより、現場作業者が<どこで>、<どのような作業を>、<どの程度の時間を掛けて>実施したかを精度良く認識することができる。
【0109】
また、動線解析の結果を、当該作業者に作業指導や作業品質向上に向けたアドバイスとして活用することができ、さらに、これらの動線解析結果の蓄積により、標準作業定義や現場作業改善など2次的な効果を見出すことも可能になる。
【0110】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。