(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収容部は、前記ターゲット基板配置部に前記ターゲット基板が配置されたときに、前記第1の面のうち、前記金属層を含む一部分のみに接する、請求項1に記載の放射性同位元素精製装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ターゲット基板の金属層に荷電粒子線を照射する工程では、ターゲット基板の面のうち、金属層が設けられていない側の面に冷却水などが供給される場合がある。このような工程において、金属層が設けられていない側の面に、不純物が付着することがある。従って、従来の放射性同位元素精製装置にあっては、このような不純物まで溶解液である塩酸中に混入してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、溶解液中に不純物が混入することを抑制できる放射性同位元素精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射性同位元素精製装置は、ターゲット基板上に設けられ、放射性同位元素を含有する金属層を溶解させる溶解部を有する放射性同位元素精製装置であって、ターゲット基板は、金属層が設けられる第1の面と、当該第1の面とは反対側の第2の面とを有し、溶解部は、ターゲット基板が配置されるターゲット基板配置部と、金属層を溶解させる溶解液を収容すると共に、ターゲット基板配置部と連通する収容部と、ターゲット基板配置部にターゲット基板が配置されたときに、収容部とターゲット基板の第2の面との間を封止する封止部と、を備える。
【0007】
本発明に係る放射性同位元素精製装置によれば、溶解部は、金属層を溶解させる溶解液を収容する収容部を有しているため、ターゲット基板上に設けられた金属層は、放射性同位元素と共に収容部の溶解液によって溶解される。ここで、ターゲット基板配置部にターゲット基板が配置されたときに、溶解液が収容される収容部と、金属層とは反対側の第2の面との間は、封止部によって封止されている。すなわち、ターゲット基板の第2の面には不純物が付着する可能性があるが、収容部に収容される溶解液は、封止部によって、ターゲット基板の第2の面へ至ることが防止されている。これによって、溶解液中に不純物が混入することを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る放射性同位元素精製装置において、収容部は、ターゲット基板配置部にターゲット基板が配置されたときに、第1の面のうち、金属層を含む一部分のみに接してよい。これによって、収容部に収容される溶解液がターゲット基板の第1の面に接する範囲は、金属層を含む一部分に限定されるため、必要な溶解液の量を少なくすることができる。
【0009】
本発明に係る放射性同位元素精製装置において、溶解部は、第1の部材及び第2の部材によって構成される本体部を備え、ターゲット基板配置部は、少なくとも本体部の第1の部材の端面と本体部の第2の部材の端面とによって構成されてよい。これによって、ターゲット基板を第1の部材及び第2の部材で挟み込む構成とすることができる。このような構成により、両部材で挟み込む力を利用して、ターゲット基板の位置決め・固定や封止部での封止を行うことが可能となる。
【0010】
本発明に係る放射性同位元素精製装置において、本体部には、第2の部材を第1の部材に押圧する押圧部が設けられていてよい。このような押圧部による押圧力を利用することによって、封止部での封止をより確実にすることができる。
【0011】
本発明に係る放射性同位元素精製装置において、第1の部材は凹部を有し、第2の部材は凹部に対応する凸部を有してよい。第1の部材の凹部の底部側に収容部を設けることにより、当該収容部に対して溶解液を供給・排出するための流路を設け易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶解液中に不純物が混入することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る放射性同位元素精製装置の一実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100の概略構成図である。
図1に示すように、放射性同位元素精製装置100は、放射性同位元素を含有するターゲット材料を溶解させる溶解部1と、溶解部1の溶液から放射性同位元素の精製を行うために溶液の濃度などの調整を行う溶液調整部2と、溶液調整部2で調整された溶液に含まれる放射性同位元素をイオン交換樹脂等を用いて抽出して精製する精製部3と、を備えている。なお、本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100は、少なくとも溶解部1を備えていればよく、他の部分における構成は特に限定されない。
【0016】
放射性同位元素精製装置100よりも上流側には、ターゲット材料に荷電粒子線を照射することによって放射性同位元素を生成する装置(不図示)が設けられている。具体的には、
図4に示すように、金属板で構成されるターゲット基板10上に、ターゲット材料としての金属層11が形成される。なお、金属層11は、純度の高い金属の層に限らず、金属酸化物の層でもよい。当該ターゲット基板10を装置にセットして、金属層11に荷電粒子線Bが照射されることにより、照射された部分に微量の放射性同位元素12が生成する。これにより金属層11中に放射性同位元素12が含有される。ターゲット基板10の材料として、溶解液で溶解しない材料が採用され、例えば、Au、Ptなどが採用される。
図4に示すターゲット基板10は円板状に形成されているが、形状や厚さは特に限定されない。ターゲット材料である金属層11の材料として、例えば、
64Ni、
89Y、
100Mo、
89YO
2などが挙げられる。当該金属層11に対応して生成される放射性同位元素12として、
64Cu、
89Zr、
99mTcなどが挙げられる。金属層11は、ターゲット基板10の表面(第1の面)10aにめっき処理を施すことによって形成される。また、めっき処理に限らず、板状の金属層11をターゲット基板10に貼り付けてもよい。
図4に示す金属層11は、ターゲット基板10の中央位置に円形状に形成されているが、形状や位置は特に限定されない。なお、ターゲット基板10の裏面(第2の面)10bには、金属層11に荷電粒子線Bが照射されるとき、冷却水などが供給される。これにより、荷電粒子線Bの照射による金属層11(及びターゲット基板10)の発熱を、冷却水等で吸収することができる。このとき、裏面10bに、冷却水などに含まれる不純物が付着する場合がある。なお照射される荷電粒子は、陽子、重陽子、アルファ粒子または
3Heなどである。
【0017】
次に、
図2及び
図3を参照して、溶解部1の具体的構成の一例について説明する。
図2は、
図1に示す溶解部1の具体的構成の一例を示す正面図である。
図3は、
図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
【0018】
まず、溶解部1の全体的な構造について説明する。
図2及び
図3に示すように、溶解部1は、本体部20と、当該本体部20を支持する支持部21と、を備えている。本体部20は、少なくとも2つの部材に分割可能であり、第1の部材22及び第2の部材23から構成されている。第1の部材22は、ターゲット基板10の表面10a側に配置される、第2の部材23は、ターゲット基板10の裏面10b側に配置される。なお、第1の部材22は、第2の部材23に接続される基体部25と、第2の部材23側とは反対側に、ボルト26で基体部25に固定される蓋部24と、を有している。本体部20は、各部材22,23が組み付けられた状態では、全体として中心軸線CLに沿って延びる円柱状の形状をなしている。本実施形態では、本体部20は、中心軸線CLが水平方向に延びるような向きに配置されている。支持部21は、第1の部材22の外周面に固定されて下方へ延びる一対の脚部27と、当該脚部27の下端部を支持するベース28と、を備えている。なお、本体部20は、中心軸線CLが鉛直方向に延びるような向きに配置されていてもよい。また、本体部20の形状は特に限定されず、四角柱状などであってもよい。
【0019】
第1の部材22は、全体として中心軸線CLに沿って延びる円柱状の形状をなしており、第2の部材23側の端面22aに、凹部31を有している。凹部31は、中心軸線CLに沿って延びる円形の穴によって構成されており、底面31a及び内周面31bを有する。第2の部材23は、第1の部材22側とは反対側の端面23a側に設けられるフランジ部32と、フランジ部32から第1の部材22側へ延びる凸部33と、を備えている。フランジ部32は中心軸線CL周りに広がる円板状の形状をなしている。凸部33は、中心軸線CLに沿って延びる円柱状の形状をなしており、先端側の端面33a及び外周面33bを有する。当該凸部33は、第1の部材22の凹部31内に配置される。また、ターゲット基板10は、第1の部材22と第2の部材23との間、具体的には凹部31の底面31aと凸部33の端面33aとの間に挟まれるようにして配置される。なお、ターゲット基板10周辺の構造の詳細については後述する。
【0020】
本体部20には、第2の部材23を第1の部材22に押圧する押圧部34が設けられる。押圧部34は、凹部31の内周面31bに形成されたネジ部34a、及び凸部33の外周面33bに形成されたネジ部34bによって構成されている。凹部31のネジ部34aに凸部33のネジ部34bをねじ込むことによって、第1の部材22に対して第2の部材23を容易な組み付け作業にて押圧することができる。
【0021】
次に、溶解部1の詳細な構造について説明する。溶解部1は、ターゲット基板10を配置するターゲット基板配置部41と、金属層11を溶解させる溶解液を収容する収容部42と、収容部42周りを封止する封止部43と、収容部42に溶解液を供給する供給部44と、収容部42から溶解液を排出する排出部46と、を備えている。溶解部1は、溶解液でターゲット基板10の金属層11を溶解させることにより、金属層11の金属成分及び放射性同位元素が混在した溶液を得る。なお、溶解液として、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
ターゲット基板配置部41は、収容部42に対してターゲット基板10を位置決めすると共に、当該位置にてターゲット基板10を固定する機能を有する。本実施形態では、ターゲット基板配置部41は、第2の部材23の凸部33の端面33aと、当該端面33aの外周縁に設けられる外周壁39の内周面39aと、第1の部材22の凹部31の底面31aと、によって囲まれる空間に構成される。ターゲット基板配置部41にターゲット基板10が配置されたとき、端面33aは、ターゲット基板10の裏面10bと面接触することにより、当該裏面10bを支持する。また、内周面39aは、ターゲット基板10の外周面10cと面接触することによって、当該外周面10cを支持する。ただし、内周面39aとターゲット基板10の外周面10cとの間には多少のがたつきがあってもよい。また、底面31aは、ターゲット基板10の表面10aと面接触することにより、当該表面10aを支持する。底面31aは、表面10aのうち、少なくとも金属層11を除く外周側の領域を支持する。ただし、封止部43のOリング49が表面10aに十分押圧されている場合は、底面31aは表面10aから離間していてもよい。
【0023】
なお、押圧部34によって第2の部材23を第1の部材22に押圧すると、ターゲット基板10は、端面33aと底面31aとに挟みこまれる。これによって、ターゲット基板10は、ターゲット基板配置部41の位置に固定される。外周壁39は、ターゲット基板10を取り囲むように円環状に形成されている。端面33a及び底面31aがターゲット基板10を挟むときに、底面31aと外周壁39の先端面とが干渉しないように、外周壁39の突出量は、ターゲット基板10の厚さと略同一に設定されるか、当該厚みよりも小さく設定される。
【0024】
収容部42は、ターゲット基板配置部41にターゲット基板10が配置された状態において、少なくとも金属層11と接するような空間によって構成されている。収容部42は、ターゲット基板配置部41と連通する。また、本実施形態では、収容部42は、ターゲット基板配置部41にターゲット基板10が配置されたときに、ターゲット基板10の表面10aのうち、金属層11を含む一部分のみに接している。具体的には、収容部42は、第1の部材22の凹部31の底面31aに、更なる凹部を形成することによって構成されている。収容部42は、中心軸線CLに沿って延びる円形の穴によって構成されており、底面42a及び内周面42bを有する。収容部42は、中心軸線CL方向から見たときに、ターゲット基板10の金属層11の全領域を取り囲むように形成されている。収容部42の大きさは、凹部31の底面31aに封止部43を形成できるだけのスペースが確保される程度の大きさに設定される。従って、ターゲット基板配置部41にターゲット基板10を配置した状態では、表面10aのうち、金属層11を含む一部分のみが、収容部42内に露出する。従って、収容部42に溶解液が収容されるときは、底面42a、内周面42b及びターゲット基板10の表面10aによって取り囲まれる空間内に溶解液が収容される。なお、
図3においては、収容部42と金属層11の位置関係を明確にするために、金属層11の厚さを強調して示している(他の図面においても同様である)。
【0025】
封止部43は、収容部42に収容された溶解液が当該収容部42よりも外側へ漏れることを防止する。また、封止部43は、ターゲット基板配置部41にターゲット基板10が配置されたときに、少なくとも、収容部42とターゲット基板10の裏面10bとの間を封止する。具体的には、封止部43は、凹部31の底面31aに形成された溝部48と、当該溝部48内に配置されたOリング49と、によって構成されている。溝部48は、中心軸線CL方向から見たときに、収容部42を取り囲むように円環状に形成されている。これにより、Oリング49は、ターゲット基板10の表面10aのうち、収容部42に接する部分を少なくとも取り囲むように、当該表面10aと接する(なお、
図2には、封止部43が設けられる領域に梨地模様を付している)。また、押圧部34のネジ部34aにネジ部34bをねじ込むことによって、Oリング49は、表面10aに押圧される。これによって、封止部43は、収容部42と、ターゲット基板10の表面10aのうち、当該封止部43よりも外周側の領域との間を封止する。それに伴い、封止部43は、収容部42と、ターゲット基板10の外周面10c及び裏面10bとの間も封止する。
【0026】
供給部44は、収容部42から第1の部材22の外周面まで上方に貫通する流路によって構成されている。供給部44は、収容部42の内周面42bの上端部から上方へ向かって延びる管部51と、管部51の上端と連通して継手54と接続される接続部52と、を備えている。管部51及び接続部52は、上方へ真っ直ぐに延びている。接続部52は、管部51より径が大きく、第1の部材22の外周面で開口している。排出部46は、収容部42から第1の部材22の外周面まで下方に貫通する流路によって構成されている。排出部46は、収容部42の内周面42bの下端部から下方へ向かって延びる管部56と、管部56の下端と連通して継手58と接続される接続部57と、を備えている。管部56及び接続部57は、下方へ真っ直ぐに延びている。接続部57は、管部56より径が大きく、第1の部材22の外周面で開口している。供給部44及び排出部46は、管部51,56と封止部43の溝部48とが連通しないように、且つ、径が大きい接続部52,57が凹部31と連通しないように配置されている。このような構成により、継手54に接続された配管(不図示)から送られてきた溶解液は、供給部44を介して収容部42に収容される。また、収容部42で金属層11及び放射性同位元素が溶解した溶液は、排出部46を介して継手58に接続された配管(不図示)へ排出される。溶解液の供給・排出は、ヘリウムガスや窒素ガスなどの圧力によってなされる。なお、供給部44及び排出部46は、収容部42に対して溶解液を供給・排出できるものであれば構造は特に限定されない。例えば、流路が屈曲しているようなものでもよく、収容部42の底面42aと接続されていてもよい。
【0027】
また、第1の部材22には、収容部42内の塩酸を加熱するためのヒータ61が設けられている。ヒータ61は、収容部42を挟んでターゲット基板配置部41側とは反対側に設けられており、底面42aの近傍に設けられている。これによって、ヒータ61は、効率よく収容部42中の溶解液を加熱することができる。本実施形態では、中心軸線CLと直交するように水平方向に延びる棒状のヒータ61が上下に一対設けられている。ただし、ヒータの形状や数量や配置は特に限定されず、巻線状のもので収容部42の周りを取り囲んでもよい。第1の部材22には、収容部42の溶解液の温度を監視するために、熱電対62が設けられている(
図2参照)。当該熱電対62の検出位置は特に限定されないが、収容部42の近傍であることが好ましい。
【0028】
上述のような構成を有する溶解部1で金属層11を溶解させる手順について説明する。まず、ターゲット基板10を第2の部材23にセットする。このとき、金属層11が設けられていない裏面10bが端面33aと接触するように配置する。この状態で第2の部材23のネジ部34bを第1の部材22のネジ部34aにねじ込む。ターゲット基板10の表面10aと封止部43のOリング49とが接触し、当該表面10aに対してOリング49が十分に押圧されるように、第2の部材23を十分に第1の部材22へねじ込む。その後、供給部44から収容部42へ溶解液を供給し、ヒータ61で加熱しながら、金属層11を溶解液に溶解させる。金属層11が全て溶解したら、収容部42内の溶液を排出部46から排出する。また、第2の部材23を第1の部材22から取り外し、ターゲット基板10を回収する。
【0029】
次に、本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100の作用・効果について説明する。
【0030】
まず、
図5を参照して、比較例に係る放射性同位元素精製装置の溶解部200について説明する。
図5は、比較例に係る放射性同位元素精製装置の溶解部200の断面図である。
図5に示すように、溶解部200は、本体部201内に、溶解液を収容するための収容部202を備えており、当該収容部202を封止する封止部203を備えた蓋部204と、収容部202を取り囲むように設けられたヒータ206と、を備えている。また、収容部202の上方から溶解液を供給する供給部207と、下方から溶解液を排出する排出部208と、が設けられている。このような溶解部200においては、ターゲット基板10は、収容部202内にそのまま配置され、ターゲット基板10の全体又は一部が溶解液中に浸漬する状態となる。
【0031】
しかしながら、
図5のような構成では、収容部202はターゲット基板10全体を収容するような大きさに設定されており、ターゲット基板10を浸漬させることができる程度に溶解液を収容部202内に収容しなくてはならないため、溶解に用いられる溶解液の量が多くなってしまう。また、金属層11に荷電粒子線を照射する工程において、冷却水などと接触することによりターゲット基板10の裏面10bに不純物が付着する場合がある。溶解部200では、ターゲット基板10を溶解液中に浸漬するため、溶解液が金属層11のみならず裏面10bにも接する。これによって、溶解液中に不純物が混入する場合がある。
【0032】
一方、本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100によれば、溶解部1は、金属層11を溶解させる溶解液を収容する収容部42を有しているため、ターゲット基板10に設けられた金属層11は、放射性同位元素と共に収容部42の溶解液によって溶解される。ここで、溶解液が収容される収容部42と、ターゲット基板10における金属層11が設けられた面(表面10a)とは反対側の第2の面(裏面10b)との間は、封止部43によって封止されている。すなわち、ターゲット基板10の裏面10bには不純物が付着する可能性があるが、収容部42に収容される溶解液は、封止部43によって、ターゲット基板10の裏面10bへ至ることが防止されている。これによって、溶解液中に不純物が混入することを抑制することができる。また、少なくとも裏面10bには溶解液が接触しない構造とすることにより、ターゲット基板10全体を溶解液中に浸漬させる構造に比べ、必要な溶解液の量を少なくすることができる。
【0033】
本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100において、収容部42は、ターゲット基板配置部41にターゲット基板10が配置されたときに、表面10aのうち、金属層11を含む一部分のみに接している。これによって、収容部42に収容される溶解液がターゲット基板10の表面10aに接する範囲は、金属層11を含む一部分に限定されるため、必要な溶解液の量を少なくすることができる。また、収容部42が表面10aの一部分のみに接する構成とすれば、表面10aの外周側の他の部分に対しては封止部43のOリング49を接触させることができる。Oリング49が表面10aに接する構成とした場合、中心軸線CL方向へ作用する押圧力を、ターゲット基板10の位置決め及び固定に利用することができると同時に、Oリング49の押圧力を高めて封止を確実にするために利用することができる。
【0034】
本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100において、溶解部1は、第1の部材22及び第2の部材23によって構成される本体部20を備えている。また、第1の部材22は収容部42を備え、第2の部材23はターゲット基板10の裏面10bを支持している。また、ターゲット基板配置部41は、少なくとも第1の部材22の端面(凹部31の底面31a)と、第2の部材23の端面(凸部33の端面33a)と、によって構成されている。これによって、ターゲット基板10を第1の部材22及び第2の部材23で挟み込む構成とすることができる。このような構成により、両部材22,23で挟み込む力を利用して、ターゲット基板10の位置決め・固定や封止部43での封止を行うことが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100において、本体部20には、第2の部材23を第1の部材22に押圧する押圧部34が設けられていている。このような押圧部34による押圧力を利用することによって、ターゲット基板10の位置決め・固定を行うと共に、封止部43での封止をより確実にすることができる。また、本実施形態では、ネジ部34a,34bで押圧部34が構成されているため、第1の部材22と第2の部材23を組み付けるための機構をそのまま押圧力を発生させる機構として用いることができる。従って、シンプルな構造でありながら、封止部43での封止を確実にすることができる。
【0036】
上述のように、第1の部材22と第2の部材23とを容易に組み付け、且つ押圧力を発生させることが出来るようにするために、一方の部材に凹部が設けられ、他方の部材に凸部が設けられ、それらの内周面及び外周面に互いに噛み合うネジ部が設けられることが好ましい。ここで、
図6に示すように、第1の部材322に凸部331を設けて第2の部材323に凹部333を設けた場合、供給部344及び排出部346は、第1の部材322の端面322aに対して、凸部331側とは反対側に離間して配置させる必要がある(なお、
図6に示す溶解部300の詳細な説明については後述)。従って、当該供給部344及び排出部346と連通するために、収容部342を深くして、底面342aを深い位置に配置する必要が生じる。これによって、
図3に示す構成よりも、収容部342の容積が大きくなり、溶解液の量を多くする必要が生じる。あるいは、収容部342の容積を小さくするために底面342aを浅い位置に配置する場合は、供給部344及び排出部346の流路を屈曲させるなど、複雑な構成にする必要が生じる。
【0037】
一方、本実施形態に係る放射性同位元素精製装置100において、第1の部材22は凹部31を有し、第2の部材23は凹部31に対応する凸部33を有している。これによって、供給部44及び排出部46が回避するべき構造を収容部42付近から減らすことができるため、供給部44及び排出部46を設け易くすることができる。従って、収容部42の底面42aを浅い位置に配置することにより、収容部42の容積を小さくしても、複雑な流路とすることなく、上下方向に真っ直ぐ延びる供給部44及び排出部46を設けることができる。
【0038】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば、上述の実施形態では、収容部42が設けられた第1の部材22が凹部31を有し、第2の部材23が凸部33を有していたが、逆であってもよい。例えば、
図6に示すような溶解部300を採用してもよい。溶解部300では、本体部320のうち、収容部342が設けられた第1の部材322が凸部331を有し、第2の部材323が凹部333を有している。この場合、第2の部材323の凹部333の底側にターゲット基板配置部341が設けられ、凹部333の底面333aがターゲット基板10の裏面10bを支持し、凹部333の内周壁333bがターゲット基板10の外周面10cを支持する。また、第1の部材322の凸部331を第2の部材323に押し込んで、凸部331の端面331aでターゲット基板10の表面10aを押圧すると共に封止部343で封止する。
【0040】
また、上述の実施形態では、収容部42が、ターゲット基板10の表面10aのうち、金属層11を含んだ一部分のみに接する構造となっていた。しかし、収容部が少なくとも金属層11と接しており、且つ、封止部が、少なくとも収容部とターゲット基板10の裏面10bとの間を封止している限り、収容部及び封止部をどのように構成してもよい。
【0041】
例えば、
図7(a)に示すような溶解部400を採用してよい。溶解部400では、収容部442がターゲット基板10の表面10aの全域と接する。この溶解部400では、第2の部材423の端面423aに裏面10bが接するように、ターゲット基板10を固定する。このとき、第2の部材423及びターゲット基板10にネジ穴を設けておき、ボルト450を用いてターゲット基板10を固定してよい。ターゲット基板配置部441は、端面423a及びボルト450を用いた固定構造によって構成される。また、第1の部材422には、収容部442を構成する凹部が設けられ、当該凹部は、ターゲット基板10の径と略同径に構成される。第1の部材422は、このような凹部でターゲット基板10の外周面10cを覆うように第2の部材423に組み付けられる。収容部442を構成する凹部の内周面442bの先端側の一部に封止部443が設けられる。当該封止部443によって、収容部442とターゲット基板10の裏面10bとの間が封止される。
【0042】
また、例えば、
図7(b)に示すような溶解部500を採用してもよい。溶解部500では、収容部542がターゲット基板10の表面10aのみならず外周面10cにも接する。この溶解部500では、第2の部材523の端面523aに裏面10bが接するように、ターゲット基板10を固定する。このとき、第2の部材523及びターゲット基板10にネジ穴を設けておき、ボルト550を用いてターゲット基板10を固定してよい。また、ターゲット基板10の外周面10cを取り囲むような環状の突出部530が端面523aに設けられ、当該突出部530の内周面530aがターゲット基板10の外周面10cを支持する。ターゲット基板配置部541は、端面523a、内周面530a及びボルト550を用いた固定構造によって構成される。また、第1の部材522には、収容部542を構成する凹部が設けられ、当該凹部は、突出部530の外周面の径よりも大きな径で構成される。第1の部材522は、このような凹部でターゲット基板10及び突出部530を取り囲むように第2の部材523に組み付けられる。突出部530の内周面530aに封止部543が設けられる。当該封止部543によって、収容部542とターゲット基板10の裏面10bとの間が封止される。
【0043】
また、上述の実施形態では、本体部が少なくとも二つの部材によって構成されていたが、一つの部材で構成されていてもよい。例えば、
図8に示すように、一つの部材で構成された本体部620を有する溶解部600の構成を採用してもよい。この溶解部600では、本体部620内にターゲット基板10をセットするためのスリット溝650が形成されている。当該スリット溝650の底側の領域は、ターゲット基板10を配置するためのターゲット基板配置部641として構成されている。スリット溝650の一方の面650aでターゲット基板10の表面10aを支持し、他方の面650bで裏面10bを支持する。また、一方の面650aには、収容部642及び封止部643が設けられている。なお、ターゲット基板配置部641にセットされたターゲット基板10を封止部643に押圧するような機構を設けてもよい。
【0044】
なお、上述の実施形態では、押圧部として、第1の部材及び第2の部材の一方が内周面にネジ部を有する凹部を備え、他方が外周面にネジ部を有する凸部を備える構成とし、互いにねじ込むことによって押圧可能な構成であった。ただし、押圧部の構成はこのようなものに限らず、押圧力を発生することができる構造であれば、どのような構成を採用してもよい。例えば、第1の部材と第2の部材とを複数本のボルトで締めることによって押圧力を発生させる構成であってもよい。