特許第6029992号(P6029992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029992
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】建設機械の干渉防止装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20161114BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   E02F3/43 M
   F15B20/00 F
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-14045(P2013-14045)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145181(P2014-145181A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】守本 崇昭
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 良充
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕之
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−035239(JP,A)
【文献】 特開2012−219563(JP,A)
【文献】 特開2009−228249(JP,A)
【文献】 特開2000−291068(JP,A)
【文献】 特開2004−132077(JP,A)
【文献】 特開2009−197438(JP,A)
【文献】 特開平10−147956(JP,A)
【文献】 特開平09−142788(JP,A)
【文献】 特開平08−013544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/24
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アタッチメントの操作方向及び操作量を入力される操作レバーと、前記操作レバーによって入力された前記操作方向及び前記操作量に基づいて前記アタッチメントの動作を制御する油圧回路と、キャブの前方に開閉可能に取り付けられたステップとを備える建設機械干渉防止装置であって、
前記アタッチメントの位置を検出する検出手段と、
前記検出手段及び前記油圧回路を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ステップの開閉状態に応じて前記キャブからの干渉防止範囲を変更し、前記検出手段が検出した前記アタッチメントの位置に基づいて該アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入したか否かを判断し、該アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に前記油圧回路を用いて該アタッチメントを駆動する油圧シリンダを減速又は停止することを特徴とする
建設機械の干渉防止装置。
【請求項2】
前記干渉防止範囲は、前記ステップを含む前記キャブの外周の停止範囲と前記停止範囲の外周の減速範囲とであり、
前記制御手段は、前記ステップを開いているとき又は閉じているときの前記停止範囲及び前記減速範囲を夫々設定することを特徴とする
請求項1に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に、前記油圧回路の減圧弁を用いて前記油圧回路の方向制御弁に入力するパイロット圧を制御して、該アタッチメントの動作を制限することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に、入力された前記操作方向及び前記操作量を補正して、該アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの動作を制限することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記アタッチメントの位置として、該アタッチメントの先端の位置を検出することを特徴とする
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記アタッチメントの角度を検出して、該アタッチメントの位置を検出することを特徴とする
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記操作レバーによって入力された前記操作方向及び前記操作量に基づいて、前記アタッチメントの位置を検出することを特徴とする
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項8】
前記ステップの位置を検出する第2の検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて前記ステップの開閉状態を判断することを特徴とする
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【請求項9】
前記ステップが開き状態であること、又は、閉じ状態であることを入力される入力部を更に有し、
前記制御手段は、前記入力部によって入力された情報に基づいて、前記干渉防止範囲を設定することを特徴とする
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の建設機械の干渉防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブの前方にステップを備える建設機械の干渉防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械では、アタッチメントをキャブの前方及び上方で操作することがある。このとき、建設機械には、アタッチメントの動作時に、アタッチメント(例えばバケット)がキャブに接触(又は衝突)しないようにアタッチメントを駆動する油圧シリンダの動作を制限する必要がある。
【0003】
特許文献1には、作業機(建設機械)の運転範囲内に運転室(キャブ)と干渉する区域が存在する場合に、作業時にバケット(アタッチメント)が運転室に衝突することを防止するために、設定した干渉区域(準危険域、危険域)にバケットが進入したときにアタッチメントを駆動する油圧シリンダの作業速度の減速若しくは作業の停止を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−156037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、キャブの前方にステップを取り付けられた建設機械の場合について、アタッチメントがステップに接触(干渉)することを防止する方法が記載されていない。また、特許文献1に開示されている技術では、キャブの前方にステップを開閉可能に取り付けた場合について、ステップの開閉状態に応じて、アタッチメントの動作を制限する方法が記載されていない。
【0006】
本発明は、このような事情の下に為され、キャブの前方にステップを備える建設機械において、ステップの開閉状態に応じて、アタッチメントの動作を制限することができる建設機械の干渉防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、アタッチメントの操作方向及び操作量を入力される操作レバーと、前記操作レバーによって入力された前記操作方向及び前記操作量に基づいて前記アタッチメントの動作を制御する油圧回路と、キャブの前方に開閉可能に取り付けられたステップとを備える建設機械干渉防止装置であって、前記アタッチメントの位置を検出する検出手段と、前記検出手段及び前記油圧回路を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記ステップの開閉状態に応じて前記キャブからの干渉防止範囲を変更し、前記検出手段が検出した前記アタッチメントの位置に基づいて該アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入したか否かを判断し、該アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に前記油圧回路を用いて該アタッチメントを駆動する油圧シリンダを減速又は停止することを特徴とする建設機械の干渉防止装置が提供される。また、前記干渉防止範囲は、前記ステップを含む前記キャブの外周の停止範囲と前記停止範囲の外周の減速範囲とであり、前記制御手段は、前記ステップを開いているとき又は閉じているときの前記停止範囲及び前記減速範囲を夫々設定することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記制御手段は、前記アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に、前記油圧回路の減圧弁を用いて前記油圧回路の方向制御弁に入力するパイロット圧を制御して、該アタッチメントの動作を制限することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記制御手段は、前記アタッチメントが前記干渉防止範囲内に進入した場合に、入力された前記操作方向及び前記操作量を補正して、該アタッチメントを駆動する前記油圧シリンダの動作を制限することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記検出手段は、前記アタッチメントの位置として、該アタッチメントの先端の位置を検出することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記検出手段は、前記アタッチメントの角度を検出して、該アタッチメントの位置を検出することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記検出手段は、前記操作レバーによって入力された前記操作方向及び前記操作量に基づいて、前記アタッチメントの位置を検出することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。前記ステップの位置を検出する第2の検出手段を更に有し、前記制御手段は、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて前記ステップの開閉状態を判断することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。更に、前記ステップが開き状態であること、又は、閉じ状態であることを入力される入力部を更に有し、前記制御手段は、前記入力部によって入力された情報に基づいて、前記干渉防止範囲を設定することを特徴とする建設機械の干渉防止装置であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る建設機械の干渉防止装置によれば、キャブの前方に取り付けられたステップの開閉状態に応じて、アタッチメントの動作を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る建設機械の一例を示す概略外観図である。
図2】本発明の実施形態に係る建設機械のキャブの一例を説明する説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る建設機械のステップの例を説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る建設機械のステップのその他の例を説明する説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る建設機械のリモコン回路の例を説明する説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る建設機械の制御手段の動作の一例を説明するフローチャート図である。
図7】本発明の実施形態に係る建設機械の制御手段が設定する干渉防止範囲の例を説明する説明図である。
図8】本発明の実施形態に係る建設機械に用いられるアタッチメント(エンドアタッチメント)の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。なお、添付の全図面の中の記載で、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0011】
以後に、本発明の実施形態に係る建設機械100を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、本実施形態以外でも、キャブの前方にステップを備える機械であって、ステップの開閉状態に応じてアタッチメントの動作を制御(例えば制限)するものであれば、いずれのものにも用いることができる。また、本発明を用いることができる建設機械には、油圧ショベル、クレーン車、ブルドーザ、ホイールローダ及びダンプトラック、並びに、杭打ち機、杭抜き機、ウォータージェット、泥排水処理設備、グラウトミキサ、深礎工用機械及びせん孔機械などが含まれる。
【0012】
本実施形態に係る建設機械100を用いて、下記に示す順序で本発明を説明する。
【0013】
1.建設機械の構成
2.ステップの例
3.油圧回路
4.建設機械の動作
5.アタッチメントの例
(1.建設機械の構成)
図1及び図2を用いて、本実施形態に係る建設機械100の概略構成を説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る建設機械100は、キャブ(運転室)10を搭載した上部旋回体10Upと、車輪等を用いて建設機械100の移動を行う下部走行体10Dwとを備える。また、建設機械100は、アタッチメントとして、上部旋回体10Upに基端部を軸支されたブーム11と、ブーム11の先端に軸支されたアーム12と、アーム12の先端に軸支されたバケット13とを備える。更に、建設機械100は、油圧シリンダとして、ブーム11を駆動するブーム用シリンダ11aと、アーム12を駆動するアーム用シリンダ12aと、バケット13を駆動するバケット用シリンダ13aとを備える。
【0015】
なお、本発明を用いることができる建設機械は、アームの先端に取り付けるアタッチメント(エンドアタッチメント)として、バケット以外のアタッチメントを用いてもよい。例えば後述する(5.アタッチメントの例で説明する)リフティングマグネット又はフォークなどを用いてもよい。
【0016】
本実施形態に係る建設機械100は、後述する油圧回路30C(図5)を用いて、ブーム用シリンダ11aに作動油(圧油)を供給することによって、ブーム用シリンダ11aを長手方向に伸縮する。このとき、ブーム11は、ブーム用シリンダ11aの伸縮によって、キャブ10の前方及び上方で上下方向に駆動される。また、建設機械100は、キャブ10内のオペレータ(運転者、作業者)の操作レバーの操作量(及び操作方向)に応じてブーム用方向制御弁を制御し、ブーム用シリンダ11aに供給される作動油を制御する。この結果、建設機械100は、オペレータの操作レバーの操作量等に応じて、所望の作業を実施することができる。
【0017】
ブーム11の場合と同様に、建設機械100は、アーム用シリンダ12a及びバケット用シリンダ13aの伸縮によって、キャブ10の前方及び/又は上方でアーム12及びバケット13を駆動する。建設機械100は、ブーム用シリンダ11aの場合と同様に、アーム用方向制御弁及びバケット用方向制御弁によって、アーム用シリンダ12a及びバケット用シリンダ13aに供給される作動油を制御する。
【0018】
また、本実施形態に係る建設機械100は、下部走行体10Dwの車輪及び旋回装置等を用いて、建設機械100本体の走行(前後左右の移動)及び回転(旋回など)を行う。また、建設機械100は、走行用の方向制御弁などを更に用いて、キャブ10内のオペレータの操作レバーの操作量などに応じて、建設機械100の走行などを実施してもよい。
【0019】
更に、本実施形態に係る建設機械100は、キャブ10の前方にステップを備える。ここで、ステップとは、建設機械100のメンテナンス時にメンテナンス実施者の足場として利用される部材である。建設機械100は、図2に示すように、ステップ20を開閉可能に取り付けられている。また、建設機械100は、ステップ20を略水平位置で固定し、メンテナンス実施者によってステップ20を足場として利用される。建設機械100は、ステップ20の開閉状態を検出する検出部(第2の検出手段)を更に備えてもよい。また、建設機械100は、ステップ20が開き状態であること、又は、閉じ状態であることをオペレータによって入力される入力部を更に備えてもよい。
【0020】
なお、本発明に用いることができるステップの例は、後述する(2.ステップの例)で説明する。
【0021】
(2.ステップの例)
本実施形態に係る建設機械100のキャブ10に取り付けられるステップを図2乃至図4を用いて説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る建設機械100のキャブ10を説明する説明図である。図3は、本実施形態に係る建設機械100のキャブ10に取り付けられるステップの一例を説明する説明図である。図4は、本実施形態に係る建設機械100のキャブ10に取り付けられるステップの他の例を説明する説明図である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る建設機械100は、キャブ10の前方に開閉可能にステップ20を取り付けられている。ステップ20は、開き状態のときに略水平位置で固定されるベース部材21と、ベース部材21を保持する保持部材22とを有する。
【0023】
具体的には、図3(a)に示すように、ステップ20は、建設機械100のメンテナンス時に、フック22aを上方へ回動(回転移動)させることによって、ベース部材21を自重でキャブ10のフロント面から前方へ回動する(図中のMa)。このとき、ステップ20は、ベース部材21の支持部に形成されたストッパ21sの裏面を保持部材22の表面に当接することでベース部材21の回動を停止し、略水平位置で固定される。すなわち、ステップ20は、開き状態となる。これにより、メンテナンス実施者は、略水平位置に固定されたベース部材21(ステップ20)を足場として使用し、キャブ10の窓拭き等の所望の作業を効率的に行うことができる。
【0024】
次に、図3(b)に示すように、建設機械100は、メンテナンス時以外(例えば建設機械の作業時、アタッチメントの操作時など)に、ステップ20を閉じ状態とする。すなわち、ステップ20は、ベース部材21をキャブ10のフロント面の方向に回動され(図中のMb)、フック22aによってベース部材21を保持部材22に固定される。
【0025】
図4(a)に示すように、他の例のステップ20Aは、回転軸23Rbで相対的に回転可能な上部ベース部材21A及び下部ベース部材21Bと、上部ベース部材21A等を保持する保持部材22Aとを有する。他の例のステップ20Aは、上部ベース部材21A及び下部ベース部材21Bの固定位置を変更することによって、ステップ20Aの高さを変えることができる。これにより、建設機械100は、メンテナンス時に作業内容に適した高さにステップ20Aの位置(高さ)を変えることができるので、メンテナンス実施者の作業効率を向上することができる。
【0026】
具体的には、図4(a)に示すように、ステップ20Aは、建設機械100のメンテナンス時に、フック24Aを上方へ回動させることによって、上部ベース部材21A及び下部ベース部材21Bを自重でキャブ10のフロント面から前方へ回動する(図中のMa)。このとき、ステップ20Aは、下部ベース部材21Bの支持部に形成されたストッパの裏面が保持部材22Aの表面に当接することで下部ベース部材21Bの回動を停止して略水平方向に固定され、開き状態となる。また、上部ベース部材21Aは、ヒンジ部材25Aで下部ベース部材21Bに固定されている。すなわち、ステップ20Aは、メンテナンス時に、上部ベース部材21A及び下部ベース部材21Bを略水平位置で固定される。これにより、メンテナンス実施者は、略水平位置に固定された上部ベース部材21A等を足場として使用することができる。
【0027】
次に、図4(b)に示すように、建設機械100は、下部ベース部材21Bをキャブ10のフロント面の方向に回動し(図中のMb)、フック24Aによって保持部材22Aに下部ベース部材21Bを固定する。ここで、ステップ20Aは、ヒンジ部材25Aを支点として、上部ベース部材21Aのみをキャブ10の前方に回動することができる(図中のMc)。このとき、上部ベース部材21Aは、略水平位置で固定される。これにより、ステップ20Aは、図4(a)と比較して高さの高い足場として、略水平位置に固定された上部ベース部材21Aを使用することができる。
【0028】
(3.油圧回路)
本発明の実施形態に係る建設機械100に用いる油圧回路10Cを図5に示す。ここで、図5に記載した実線は、油路(圧油の通路)を示す。また、//を付加している実線は、電気制御系を示す。
【0029】
なお、図5は、本発明を説明するために主にリモコン回路を示し、その他の部分は省略している。また、図5に示す油圧回路10Cは、オフセットシリンダCo(上部旋回体10Upの位置をオフセットする油圧シリンダ)を備えるが、本発明はオフセットシリンダCoを備えないものにも適用することができる。更に、本発明に係る建設機械は、図5に示す油圧回路10C以外でも、キャブ10との干渉を防止するためにアタッチメント(油圧シリンダ)の動作を制限する油圧回路であれば、いずれのものにも用いることができる。
【0030】
図5に示すように、油圧回路10Cは、油圧ポンプ(不図示)から吐出された圧油を供給されるブーム用方向制御弁Vcbと、ブーム用方向制御弁Vcbを経由して圧油(作動油)を供給(流入)されるブーム用油圧シリンダCb(図1の11a)とを有する。また、油圧回路10Cは、本実施形態では、ブーム上げ方向のパイロット圧をブーム用方向制御弁Vcbの制御ポートに入力する油路にブーム用減圧弁Vpbを備える。
【0031】
油圧回路10Cは、ブーム用方向制御弁Vcb及びブーム用油圧シリンダCbと同様に、油圧ポンプから吐出された圧油を供給されるアーム用方向制御弁Vcaと、アーム用方向制御弁Vcaを経由して圧油を供給されるアーム用油圧シリンダCa(図1の12a)とを有する。また、油圧回路10Cは、本実施形態では、アーム閉じ方向のパイロット圧をアーム用方向制御弁Vcaの制御ポートに入力する油路にアーム用減圧弁Vpaを備える。更に、油圧回路10Cは、ブーム用方向制御弁Vcb及びブーム用油圧シリンダCbと同様に、オフセット用方向制御弁Vcoと、オフセット用油圧シリンダCoと、オフセット用減圧弁Vpoを備える。
【0032】
更に、本実施形態に係る建設機械100は、油圧回路10全体の動作を制御する制御手段30を油圧回路10Cに接続している。また、建設機械100は、アタッチメント(図1のブーム11等)の位置を検出する検出手段31と、ステップ20の位置を検出する第2の検出手段32とを制御手段30に接続している。
【0033】
本実施形態に係る油圧回路10Cは、油圧ポンプの動作を制御することによって、油圧ポンプから吐出した圧油を方向制御弁(Vcb、Vca、Vco)に供給する。また、油圧回路10Cは、方向制御弁(Vcb等)の動作を制御することによって、方向制御弁から油圧シリンダ(Cb、Ca、Co)に供給する圧油の流量及び方向を制御する。更に、油圧回路10Cは、検出手段31の検出結果に基づいてアタッチメントの動作を制限する場合に、制御手段30によってブーム用減圧弁Vpb及びアーム用減圧弁Vpaの動作を制御される。油圧回路10Cは、例えばブーム上げ方向のパイロット圧及びアーム閉じ方向のパイロット圧を制御される。すなわち、本実施形態に係る建設機械100は、制御手段30及び検出手段31を干渉防止装置として用いる。
【0034】
方向制御弁(Vcb等)は、油圧シリンダ(Cb等)に供給する圧油を制御するものである。方向制御弁は、油圧シリンダに供給する圧油の流量及び流れ方向を制御する。具体的には、方向制御弁は、入力されたパイロット圧に応じてスプール位置を切り替えられ、その内部通路の経路を変化される。方向制御弁は、例えばオペレータが操作した操作レバーLvb、Lva、Lvoの操作量(及び操作方向)に応じたパイロット圧を入力されて、油圧シリンダに供給する圧油(作動油)の流量(操作量)及び流れ方向(操作方向)を変化される。
【0035】
油圧シリンダ(Cb等)は、その伸縮動作によってアタッチメント(図1の11等)を駆動するものである。油圧シリンダは、方向制御弁(Vcb等)から供給された圧油(作動油)を用いて、長手方向に伸縮する。なお、油圧シリンダからの戻り油(作動油)は、方向制御弁等を介して、タンク(不図示)に排出される。油圧シリンダは、例えばシリンダ容器とピストン等で構成することができる。
【0036】
減圧弁(Vpb等)は、方向制御弁に入力するパイロット圧を制御するものである。減圧弁は、本実施形態では、制御手段30の入力信号に基づいて、その開度を変化される。すなわち、減圧弁は、その開度を変化することによって、その下流側の油路の圧力を減圧させることができる。減圧弁は、例えば比例弁、圧力調整弁などを用いてもよい。
【0037】
検出手段31は、アタッチメントの位置を検出する手段である。検出手段31は、本実施形態では、ブーム用センサ31b、アーム用センサ31a及びオフセット用センサ31oを用いてブーム、アーム及びオフセットの角度を夫々検出し、アタッチメントの位置として検出した角度に基づいてアーム12の先端の位置を算出する。これにより、検出手段31(建設機械100)は、アーム12の先端に異なるエンドアタッチメント(アタッチメント)が装着されている場合でも、先端の位置を算出する算出式を共通に用いることができる。なお、本発明を用いることができる建設機械は、アーム12の先端に装着されるエンドアタッチメント(アタッチメント)の種類に応じて算出式を切り換えるようにして、各エンドアタッチメント(アタッチメント)の干渉端部位置をアタッチメントの位置として検出するようにしてもよい。また、本発明を用いることができる建設機械は、オペレータによって入力された操作レバーの操作方向及び操作量に基づいて、アタッチメント(の先端)の位置を検出(算出)してもよい。
【0038】
第2の検出手段32は、ステップ20の位置を検出する手段である。第2の検出手段32は、本実施形態では、オペレータがステップ20を閉じるときに操作するスイッチ(以下、「キャブステップCLOSEスイッチ」という。)で入力した情報に基づいて、ステップ20の位置を検出する。なお、本発明を用いることができる建設機械は、第2の検出手段32として、ステップ20の位置を直接検出するセンサを用いてもよい。
【0039】
制御手段30は、油圧回路30C全体の動作を制御する手段である。制御手段30は、操作レバー(Lvb等)の操作量(及び操作方向)に応じて、油圧ポンプ及び減圧弁(Vpb等)を制御する。制御手段30は、例えば建設機械100の動作を制御するために搭載されたコントローラを利用してもよい。ここで、コントローラをCPU及びメモリ(ROM、RAMなど)等を含む演算処理装置で構成することができる。
【0040】
制御手段30は、本実施形態では、キャブ10の前方に取り付けられたステップ20(図1)の開閉状態に応じて、油圧回路30C(油圧シリンダ)を制限する。すなわち、制御手段30は、ステップ20の開閉状態に応じてアタッチメントの動作を制限する干渉防止装置として用いる。
【0041】
具体的には、制御手段30は、第2の検出手段32の検出結果に基づいて、ステップ20の開閉状態を判断し、判断した開閉状態に応じて干渉防止範囲を設定する。ここで、干渉防止範囲は、ステップ20を含むキャブ10の外周の停止範囲(例えば後述する図7(a)のRc1又は図7(b)のRc2)と、停止範囲の外周の減速範囲(図7(a)のRd1又は図7(b)のRd2)とである。制御手段20は、ステップ20を開いているとき又は閉じているときの停止範囲及び減速範囲を夫々設定する。なお、停止範囲及び減速範囲は、図7に示すものに限定されるものではない。建設機械100は、アタッチメントの種類及び動作方法に応じて、適宜、停止範囲及び減速範囲を設定することができる。
【0042】
また、制御手段30は、検出手段31が検出したアタッチメントの位置に基づいて、アタッチメントが干渉防止範囲内に進入したか否かを判断する。次いで、制御手段30は、アタッチメントが干渉防止範囲内に進入したと判断した場合に、油圧回路30Cの減圧弁(Vpb等)を用いて、アタッチメントを駆動する油圧シリンダを減速又は停止する。また、制御手段30は、アタッチメントが干渉防止範囲外に退避する方向への操作をされたと判断した場合に、アタッチメントを駆動する油圧シリンダの減速又は停止を解除する。なお、制御手段30(建設機械100)がステップ20の開閉状態に応じてアタッチメントの動作を制限する方法は、後述する(4.建設機械の動作)で説明する。
【0043】
(4.建設機械の動作)
本発明の実施形態に係る建設機械100(制御手段30)がアタッチメントの動作を制御する方法を図6及び図7を用いて説明する。ここで、図6は、本実施形態に係る建設機械100の制御手段30の動作の一例を説明するフローチャート図である。図7は、本実施形態に係る建設機械100の制御手段30が設定する干渉防止範囲を説明する説明図である。
【0044】
図6に示すように、建設機械100の制御手段30は、先ず、ステップS601において、オペレータが操作した操作レバーの操作方向(及び操作量)に応じて、アタッチメント(図1のブーム11等)の動作を開始する。その後、制御手段30は、ステップS602に進む。
【0045】
次に、ステップS602において、制御手段30は、第2の検出手段32(図5)の検出結果に基づいて、ステップ20(図3)の開閉状態を判断する。制御手段30は、ステップ20が「閉じ状態」であると判断した場合には(図3(b))、ステップS603に進む。制御手段30は、ステップ20が「開き状態」であると判断した場合には(図3(a))、ステップS604に進む。
【0046】
次いで、ステップS603において、制御手段30は、ステップ20を閉じているときの干渉防止範囲を設定する。具体的には、制御手段30は、図7(a)に示すように、ステップ20を閉じているときの停止範囲Rc1及び減速範囲Rd1を夫々設定する。その後、制御手段30は、ステップS605に進む。
【0047】
一方、ステップS604において、制御手段30は、ステップ20を開いているときの干渉防止範囲を設定する。具体的には、制御手段30は、図7(b)に示すように、ステップ20を開いているときの停止範囲Rc2及び減速範囲Rd2を夫々設定する。その後、制御手段30は、ステップS605に進む。
【0048】
ステップS605において、制御手段30は、アタッチメントの動作を制限すること(以下、「干渉防止制御」という。)を実施する。具体的には、制御手段30は、検出手段31(図5)を用いて検出したアタッチメントの位置に基づいて、アタッチメントが干渉防止範囲内に進入したか否かを判断する。次いで、制御手段30は、アタッチメントが干渉防止範囲内に進入したと判断した場合に、アタッチメントを駆動する油圧シリンダの動作を制限する。制御手段30は、アタッチメントが減速範囲(図7(a)のRd1、又は、図7(b)のRd2)内に進入した場合に、油圧回路30Cに配置した減圧弁(図5のVpb等)を用いてパイロット圧を減圧し、アタッチメントを駆動する油圧シリンダの動作速度を減速する。また、制御手段30は、アタッチメントが停止範囲(図7(a)のRc1、又は、図7(b)のRc2)内に進入した場合に、油圧回路30Cに配置した減圧弁(Vpb等)等を用いて方向制御弁(Vcb等)へのパイロット圧の入力を停止し、方向制御弁のスプールの位置を中立にして油圧シリンダの動作を停止する。更に、制御手段30は、その後、アタッチメントが干渉防止範囲外に退避する方向への操作をされた場合に、アタッチメントを駆動する油圧シリンダの動作を制限することを解除する。
【0049】
なお、制御手段30は、アタッチメントが干渉防止範囲内に進入した場合に、オペレータによって入力された操作方向(及び操作量)を補正して、油圧シリンダの動作を制限してもよい。制御手段30は、例えば補正した操作方向(及び操作量)に基づいて、方向制御弁のスプールの位置を制御してもよい。また、制御手段30は、例えば補正した操作方向(及び操作量)に基づいて、油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御してもよい。
【0050】
その後、制御手段30は、ステップS606に進む。
【0051】
ステップS606において、制御手段30は、オペレータが建設機械100に入力する情報に応じて、アタッチメントの動作(作業)を継続するか否かを判断する。アタッチメントの動作を継続する場合には、制御手段30は、ステップS602に戻る。アタッチメントの動作を継続しない場合には、制御手段30は、図中のENDに進み、アタッチメントを制御する動作を終了する。
【0052】
以上により、本発明の実施形態に係る建設機械100によれば、制御手段30を用いて、キャブ10の前方に取り付けたステップ20の開閉状態に応じて、アタッチメント(11等)の動作を制限することができる。すなわち、本実施形態に係る建設機械100によれば、制御手段30を用いて、キャブ10の前方に取り付けたステップ20の開閉状態に応じて干渉防止範囲を設定し、設定した干渉防止範囲に基づいてアタッチメントとキャブ10とが干渉することを防止することができる。これにより、本実施形態に係る建設機械100によれば、ステップ20の開き状態及び閉じ状態に夫々対応した干渉防止制御を実施することができ、キャブ10の前方にステップ20を取り付けた場合でもアタッチメントの操作性を向上することができる。
【0053】
(5.アタッチメントの例)
建設機械100が用いることができるアタッチメントのその他の例を図8に示す。なお、本発明に係る建設機械100が用いることができるアタッチメントは、図8に示すものに限定されるものではない。
【0054】
図8(a)に示すように、建設機械100は、アタッチメント(エンドアタッチメント)として、リフティングマグネット13Aを用いることができる。ここで、リフティングマグネットとは、磁力を用いて、破材などを移動するアタッチメントである。リフティングマグネット13Aを用いた建設機械100は、一般的に、アタッチメントの作動範囲が広くなる。建設機械100は、本発明に係る干渉防止制御を用いることによって、アタッチメントの作動範囲が広くなった場合でも、設定した干渉防止範囲に基づいてアタッチメントとキャブ10とが干渉することを防止することができる。なお、図8(a)に示す建設機械100のリフティングマグネット13A以外の部分は、前述のバケット13の場合と同様のため、説明を省略する。
【0055】
図8(b)に示すように、建設機械100は、アタッチメント(エンドアタッチメント)として、フォーク13Bを用いることができる。ここで、フォークとは、一対の部材(例えば一対のフォーク形状の部材)を用いて、破材などを挟んで移動するアタッチメントである。建設機械100は、本発明に係る干渉防止制御を用いることによって、フォーク13Bのアタッチメントを用いた場合でも、設定した干渉防止範囲に基づいてアタッチメントとキャブ10とが干渉することを防止することができる。なお、図8(b)に示す建設機械100のフォーク13B以外の部分は、前述のバケット13の場合と同様のため、説明を省略する。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態又は実施例に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 : 建設機械
10 : キャブ(運転室)
11 : ブーム
11a : ブーム用シリンダ
12 : アーム
12a : アーム用シリンダ
13 : バケット
13a : バケット用シリンダ
13A : リフティングマグネット
13B : フォーク
20,20A : ステップ
21,21A,21B : ベース部材
22,22A : 保持部材
30 : 制御手段(コントローラなど)
30C : 油圧回路
31,31a,31b,31o : 検出手段
Lva,Lvb,Lvo : 操作レバー
Vca,Vcb,Vco : 方向制御弁(コントロールバルブ)
Vpa,Vpb,Vpo : 減圧弁
Sst : スイッチ(ステップの開閉スイッチ、入力部など)
Rc1,Rc1 : 停止範囲(干渉防止範囲)
Rd1,Rd2 : 減速範囲(干渉防止範囲)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8