(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029997
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造
(51)【国際特許分類】
F24C 15/20 20060101AFI20161114BHJP
F24C 15/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F24C15/20 B
F24C15/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-29310(P2013-29310)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156996(P2014-156996A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−52345(JP,A)
【文献】
特開2002−340348(JP,A)
【文献】
実開昭55−6788(JP,U)
【文献】
実開昭63−19104(JP,U)
【文献】
実公平7−9007(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/20
F24C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を加熱調理する調理庫の一側壁に形成した開口部の外側に設けた照明室を透光可能に塞ぐガラス板を前記調理庫の一側壁に固定する加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造であり、
前記開口部の周縁部と前記ガラス板の周縁部との間に介装した耐熱性及び耐油性を有したシート状のシール部材と、
前記ガラス板を前記シール部材を介して前記調理庫の一側壁に押しつけて固定する取付フレームとを備え、
前記取付フレームの内周縁部に形成した平坦な押圧面部を前記ガラス板の周縁部に面当接させた状態で押圧させ、前記取付フレームを前記調理庫の一側壁に固定したことを特徴とする加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造において、
前記シール部材はフッ素樹脂シートであることを特徴とする加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を加熱調理する調理庫の一側壁に形成した開口部の外側に設けた照明室を透光可能に塞ぐガラス板を調理庫の一側壁に固定する加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には食材を加熱調理する加熱調理器が開示されている。この加熱調理器は、ハウジング内に食材を加熱調理する調理庫と蒸気発生装置とを備えている。また、調理庫内には、食材を加熱するヒータと、調理庫内の空気を対流させるファンとが設けられている。この加熱調理器においては、ヒータ、ファン及び蒸気発生装置を作動させることで、調理庫内に収容した食材は加熱調理される。
【0003】
この加熱調理器は、
図5に示したように、食材を加熱調理する調理庫102の右側壁102aに形成した開口部102bの外側には照明室103が設けられ、照明室103を透光可能に塞ぐガラス板104を調理庫102の右側壁102aに固定する加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造101を備えている。照明室用ガラス板の固定構造101は、調理庫102の右側壁102aの開口部102bを塞ぐガラス板104と開口部102bの周縁部とをシールするゴム製のガスケット105と、ガラス板104を調理庫102の右側壁102aに押しつけて固定する取付フレーム106とを備えている。このガスケット105は、ガラス板104の周部にてガラス板104の厚み方向に延びる基板部105aと、基板部105aの照明室103側の端部からガラス板104とハウジング11の右側壁102aとの間に延出した照明室側シール部105bと、基板部105aの照明室用シール側105bと反対側の端部からガラス板104と取付フレーム106との間に延出したフレーム側シール部105cとからなり、ガラス板104側に開いた略コ字形をしてガラス板104の全周縁部をシールしている。また、取付フレーム106は内側周縁部をガスケット105のフレーム側シール部105cに当接させ、照明室側シール部105bとフレーム側シール部105cとを押圧させた状態で外側周縁部の四隅部がねじにより調理庫102の右側壁に取り付けられている。このように構成した照明室用ガラス板の固定構造101により、調理庫102内の油脂を含んだ高温の水蒸気が照明室103に進入するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−027274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の照明室用ガラス板の固定構造101では、特に、ガスケット105のガラス板104と調理庫102の右側壁102aの開口部102bの周縁部との間の照明室用シール側105bにより、調理庫102内の油脂を含んだ高温の水蒸気が照明室103に進入するのを防いでいる。
【0006】
この加熱調理器においては、取付フレーム106の外周縁は調理庫102の右側壁102aに対して僅かに離間しているので、ガスケット105の基板部105aは調理庫102内の油脂を含んだ高温の水蒸気に曝され、ガスケット105の基板部105aが劣化しやすかった。ガスケット105が劣化すると、ガスケット105がガラス板104と開口部102bの周縁部との間を充分にシールできず、照明室103内のランプが故障するおそれがあった。
【0007】
また、ガスケット105のフレーム側シール部105cを押圧している取付フレーム106の内周縁の先端部はガラス板104側に折れ曲げられており、取付フレーム106の内周縁の先端はガラス板104に対して僅かに離間している。このため、ガスケット105のフレーム側シール部104cは調理庫102内の油脂を含んだ高温の水蒸気に曝され、同様に劣化しやすかった。
【0008】
また、取付フレーム106は四隅部をねじにより調理庫102の右側壁102aに対して締め付けて固定されている。ガラス板104と開口部102bの周縁部との間をガスケット105により液密にシールするために、ガスケット105の照明室側シール部105bがガラス板104と開口部102bの周縁部との間で弾性変形するように、取付フレーム106を調理庫102の右側壁102aにねじで強く締め付けて固定している。ねじを強く締め付けすぎると、取付フレームのフレーム側シール部104cがつぶれて、取付フレーム106の内周縁のガラス板104側に折り曲げた先端がガラス板104に当たり、ガラス板が破損するおそれがあった。本発明は、食材を加熱調理する調理庫の一側壁に形成した開口部の外側に設けた照明室を透光可能に塞ぐガラス板をシール部材を介して調理庫の一側壁に固定するときに、シール部材が劣化しにくい照明室用ガラス板の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、食材を加熱調理する調理庫の一側壁に形成した開口部の外側に設けた照明室を透光可能に塞ぐガラス板を調理庫の一側壁に固定する加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造であり、開口部の周縁部とガラス板の周縁部との間に介装した耐熱性及び耐油性を有したシート状のシール部材と、ガラス板をシール部材を介して調理庫の一側壁に押しつけて固定する取付フレームとを備え、取付フレームの内側周縁部に形成した平坦な押圧面部をガラス板の周縁部に面当接させた状態で押圧させて、取付フレームを調理庫の一側壁に固定したことを特徴とする加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造を提供するものである。
【0010】
上記のように構成した加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造においては、開口部の周縁部とガラス板の周縁部との間に介装した耐熱性及び耐油性を有したシート状のシール部材とを介装したので、シール部材は厚みの部分の端面が調理庫内の油脂を含んだ高温の水蒸気に曝されるだけとなり、シール部材が劣化しにくくなった。また、ガラス板をシール部材を介して調理庫の一側壁に押しつけて固定する取付フレームは、その内側周縁部に形成した平坦な押圧面部をガラス板の周縁部に面当接させた状態で押圧させて、取付フレームを調理庫の一側壁に固定したので、ガラス板には局部的に圧力が加わりにくくなって破損しにくくなった。
【0011】
上記のように構成した加熱調理器の照明室用ガラス板の固定構造においては、シール部材はフッ素樹脂シートを採用するのが最適であり、このようにしたときには、汎用性の高いシートであることから安価に供給できたうえで、充分にシール機能を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の照明室用ガラス板の固定構造を適用した加熱調理器の一実施形態の概略図である。
【
図2】加熱調理器を斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】照明室用ガラス板の固定構造を示す断面図である。
【
図5】従来の照明室用ガラス板の固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の照明室用ガラス板の固定構造を適用した加熱調理器の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示したように、加熱調理器10は、ハウジング11内の左側部を除く部分に食材を加熱調理する調理庫12と、ハウジング11内の左側部の機械室内に蒸気発生装置13を備えている。調理庫12内には庫内を加熱するヒータ14と、庫内の空気を循環させるファン15が設けられている。ハウジング11の前面には調理庫12の前面開口を塞ぐ扉16が開閉自在に設けられている。
【0014】
図2〜
図4に示したように、調理庫12の右側壁12aの中央部には略矩形状の開口部12bが形成されており、開口部12bの周縁部は外側に凹んだ凹部が形成されている。開口部12bの外側には照明室17が設けられており、照明室17内には調理庫12内を照らすランプ18が設けられている。ランプ18は扉16が開放されたときに点灯するように制御されている。照明室17は開口部12bより大きな平坦なガラス板19により透光可能に塞がれており、ガラス板19はこれから説明する照明室用ガラス板の固定構造20により調理庫12の右側壁12aに固定されている。
【0015】
照明室用ガラス板の固定構造20は、調理庫12の右側壁12aの開口部12bの周縁部とガラス板19の周縁部との間に介装したシール部材21と、ガラス板19をシール部材21に押圧させた状態で調理庫12の右側壁12aに固定する取付フレーム22とを備えている。シール部材21はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をシート状にしたもの(テフロン(登録商標)シートともいう)であり、耐熱性及び耐油性の高いシート部材である。シール部材21は四角形の枠形状をしており、内周部が開口部12bより少し大きく外周部がガラス板19と同じ大きさとなっている。シール部材21は1mmの厚さをして厚み方向に適度に弾性変形することで開口部12bの周縁部とガラス板19の周縁部とを液密にシールしている。なお、シール部材21はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をシート状にしたものに限られず、耐熱性及び耐油性の高い素材として、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)などのフッ素樹脂をシート状に加工したものであってもよい。
【0016】
取付フレーム22は四角形の枠形状をしており、内周部が開口部12bと同じ大きさであり、外周部がガラス板19より大きな大きさとなっている。取付フレーム22の内周縁部には平坦な押圧面部22aが周方向に連続して形成されており、取付フレーム22はこの押圧面部22aをガラス板19の周縁部に面当接させて押圧させている。取付フレーム22は押圧面部22aからガラス板19の外端側に延びる方向にガラス板19から離間するように折り曲げられ、取付フレーム22の外周縁部はガラス板19の周縁部を覆うように調理庫12の右側壁12a側に折り曲げられている。取付フレーム22の四隅部には取付孔が形成されており、取付フレーム22は取付孔に挿通したねじを調理庫12の右側壁12aに締結して固定されている。
【0017】
上記の加熱調理器10においては、ヒータ14、ファン15及び蒸気発生装置13を作動させることで、調理庫12内に収容した食材は加熱調理される。このとき、調理庫12内には油脂を含んだ高温の水蒸気が対流する。
【0018】
上記のように構成した加熱調理器10においては、調理庫12の右側壁12aに形成した開口部12bの外側に照明室17が設けられており、照明室17を塞ぐガラス板19は照明室用ガラス板の固定構造20により調理庫12の右側壁12aに固定されている。照明室用ガラス板の固定構造20は、調理庫12の右側壁12aの開口部12bの周縁部とガラス板19の周縁部との間に介装した耐熱性及び耐油性を有したシート状のシール部材21と、ガラス板19をシール部材21を介して調理庫12の右側壁12aに押しつけて固定する取付フレーム22とを備えている。シール部材21は開口部12bの周縁部とガラス板19の周縁部との間に介装した耐熱性及び耐油性を有したシート状であるので、シール部材21の厚みの部分の端面が調理庫12内の油脂を含んだ高温の水蒸気に曝されるだけとなり、シール部材21が劣化しにくくなった。開口部12bの周縁部とガラス板19との間のシール部材21が劣化しにくくなったことで、照明室17内には長期間にわたって油脂を含んだ高温の水蒸気が進入するのを防ぐことができ、結露または油脂によるランプ18の故障を長期間にわたって防ぐことができる。
【0019】
また、ガラス板19をシール部材21を介して調理庫12の右側壁12aに押しつけて固定する取付フレーム22は、その内側周縁部に形成した平坦な押圧面部22aをガラス板19の周縁部に面当接させた状態で押圧させ、取付フレーム22を調理庫12の右側壁12aに固定している。これにより、ガラス板19には押圧面部22aにより局部的に圧力が加わりにくくなって破損しにくくなった。また、ガラス板19の周縁部は取付フレーム22の押圧面部22aと、押圧面部22aのガラス板を介した直ぐ後側の開口部12bの周縁部とにシール部材21を介して当接しているので、取付フレーム22からガラス板19に加わる荷重がオフセットすることなく調理庫12の右側壁12aの開口部12bの周縁部に伝わり、ガラス板19が破損しにくくなった。
【0020】
上記の実施形態においては、調理庫12の一側壁として右側壁12aの開口部12bの外側に照明室17を設けたが、本発明はこれに限られるものでなく、調理庫12の一側壁として左側壁または後壁に開口部を形成し、この開口部の外側に照明室を設け、この照明室を塞ぐガラス板に照明室用ガラス板の固定構造を採用したものであっても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
10…加熱調理器、12…調理庫、12a…一側壁(右側壁)、12b…開口部、17…照明室、18…ランプ、19…ガラス板、20…照明室用ガラス板の固定構造、21…シール部材、22…取付フレーム、22a…押圧面部。