(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汚水の流入量や汚濁負荷量の大きな変動に対して、汚水を安定して適正に処理するため、大きな汚水貯留槽の設置、処理能力に余裕を持った汚水処理装置の構築、高度な処理ユニットの導入等により、汚水処理を安定して行うことはできる。しかし、その場合には、汚水処理装置の大型化、設置面積の増大、建設コストや運転コストの上昇など、費用やエネルギー消費量の増大を招くばかりか、維持管理作業や保守点検業務が煩雑化してしまい、省資源や省エネルギーといった効率的な汚水処理に逆行するという課題があった。
【0009】
例えば平時における汚濁負荷量の急激な増大に対応する場合や被災後の応急復旧の現場では、汚水処理装置の安定的な生物処理や運転開始(立上)のために十分な量の汚泥(種汚泥)を急に入手するのは困難であることから、その限られた量の汚泥(種汚泥)で速やかに生物反応槽の処理機能を安定化させる必要があるという課題があった。
【0010】
また、応急復旧にろ材を用いた汚水処理を行う場合には、汚水に含まれるし渣の除去などの前処理が十分でなく、さらに汚水中の懸濁(浮遊性)物質濃度が高いと、ろ材に閉塞が生じやすくなり、この閉塞は時間経過と共に増大し、生物膜に十分な酸素が行き渡らなくなり、生物膜内部の嫌気化が進み(腐敗し)、汚水の好気的な生物処理に支障をきたしてしまう。そして、汚水が十分に処理されないまま短絡して排出されてしまうと、処理水質の悪化や放流先水域の水質汚濁を招くという課題があった。また、ろ材の閉塞を抑制するために、ろ材に対して空気洗浄等を行う場合においても、水面下に設置されているろ材の閉塞状況を外部から確認できないため、その閉塞状況に応じて、適切にろ材を洗浄できないという課題があった。
【0011】
平時においても、また被災後の応急復旧においても、一般に、生物反応槽内に設置されたろ材のうち、汚水が流入する上流側のものは生物膜の付着量が多くなり、処理水が流出する下流側のものは生物膜の付着量が少なくなる傾向にある。このため、生物反応槽に設置されたすべてのろ材が均一且つ有効に利用されにくいという課題があった。また、例えば平時における汚濁負荷量の急激な増大に対応する場合や被災後の応急復旧の現場では、汚水処理装置から余分にまたは新たに発生する汚泥の処分が困難であるため、その汚泥の発生量を極力少なくしながら、汚水処理を行う必要があり、さらには機能不全に陥った汚水処理装置の処理機能を速やかに回復させ、安定させることで、処理水質の悪化や放流先水域の水質汚濁を最小限に抑える必要があるという課題があった。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、平時においては、流入水量や汚濁負荷量の変動に対して速やかに対応でき、また、地震、津波、集中豪雨などの災害や異常気象で機能不全に陥った汚水処理施設に対する応急復旧対策として使用することもできる汚水処理装置および汚水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る汚水処理装置は、汚水を導入して好気性生物処理する生物反応槽と、該生物反応槽の混合液を処理水と分離汚泥とに固液分離する固液分離設備と、前記分離汚泥を前記生物反応槽へ返送する汚泥返送管と、前記生物反応槽内に一つまたは二つ以上設けられていると共に、幹糸および枝糸を有するひも状ろ材が複数配設されたろ材モジュールと、該ろ材モジュールの下方に設けられた散気器とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る汚水処理装置は、前記汚水に含まれるし渣を除去するし渣除去設備を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る汚水処理装置は、前記生物反応槽が、複数の汚水流入口を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る汚水処理装置は、前記固液分離設備が、水槽と、複数枚の分離羽根が間隙をもって配設されていると共に、前記混合液が流入する回転筒と、該回転筒を回転させる駆動機と、沈降した分離汚泥を掻き寄せる汚泥掻寄機とを備えた回転筒式固液分離槽であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る汚水処理方法は、幹糸および枝糸を有するひも状ろ材が複数配設されたろ材モジュールを一つまたは二つ以上生物反応槽に設け、該生物反応槽に汚水を導入し、前記ろ材モジュールの下方から散気して好気性生物処理を行い、前記生物反応槽から流出する混合液を処理水と分離汚泥とに固液分離し、前記分離汚泥の一部または全部を前記生物反応槽へ返送することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る汚水処理装置によれば、汚水を導入して好気性生物処理する生物反応槽と、この生物反応槽の混合液を処理水と分離汚泥とに固液分離する固液分離設備と、分離汚泥を生物反応槽へ返送する汚泥返送管と、前記生物反応槽内に一つまたは二つ以上設けられていると共に、幹糸および枝糸を有するひも状ろ材が複数配設されたろ材モジュールと、該ろ材モジュールの下方に設けられた散気器とを含む構成としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
(1) ろ材モジュールを構成するひも状ろ材は、活性汚泥処理など好気性生物処理を行う生物反応槽において、汚水の流入や散気器(散気板や散気管など)からの空気の供給によって発生する生物反応槽内の流動により柔らかに動き、とくに枝糸が幹糸と接続する部分を支点として上下左右に柔軟に揺れ動くことで、ひも状ろ材に付着成長した生物膜と汚水が効率よく接触できると共に、好気条件下で確実に好気性生物処理が促進される。これにより、汚水処理装置の処理能力をより高めることができるので、汚水処理装置の大型化や高度化をしなくて済み、これらに伴う建設コストや運転コストなどの費用やエネルギー消費量の増大を回避することができる。
(2) 一方、散気器によって、活性汚泥処理など好気性生物処理を行う生物反応槽内へ空気を供給し、その空気泡の上昇により生物反応槽内に上向流を発生させると共に、ひも状ろ材に付着成長した生物膜へ汚濁物質の酸化分解に必要な酸素を確実に供給することができる。また、好気性生物処理に伴ってひも状ろ材に付着成長した生物膜が肥大化していくが、生物反応槽内の上向流、それによる枝糸の揺れ動き、気泡の衝突などにより、その生物膜の一部を剥離させることができ、ろ材の閉塞や生物膜表面積の減少を防止でき、効率的な好気性生物処理が可能となる。
(3) 汚水中に含まれるし渣が多かったり、前処理でのし渣除去が不十分だったりして、懸濁(浮遊)物質濃度が高い汚水が生物反応槽へ導入される場合、し渣に由来する分解されにくい繊維質のものがろ材に絡んでしまうため、比較的簡単にろ材を閉塞させる可能性がある。しかし、ひも状ろ材は上述したように生物反応槽内の流動で自ら揺れ動いたり、空気泡が衝突したりすることで、閉塞等を容易に解消することができる。仮に、重大な閉塞等が生じた場合でも、ろ材モジュール自体を引き上げて、ひも状ろ材の閉塞箇所を適宜確認して、必要な清掃(剥離作業等)を行うことができる。これにより、ろ材閉塞の解消、生物膜肥大化の抑制、生物膜表面積の確保などが可能となり、適正に生物膜を保持し、十分に酸素供給も行えるので、生物反応槽で安定して効率的な好気性生物処理を維持できる。
(4) ろ材モジュールを引き上げることにより、ろ材モジュール毎の生物膜の付着度合を確認でき、付着度合いに基づき、ろ材モジュール毎に空気洗浄の条件(洗浄空気量、洗浄頻度)を容易に設定することが可能となるため、効率的且つ的確な汚水の好気性生物処理を行うことができる。
(5) ろ材モジュールを上流側と下流側との間で配置換えを行うことにより、上流側のろ材モジュールを構成する、生物膜の付着量の多いひも状ろ材を下流側へ、逆に下流側のろ材モジュールを構成する、生物膜の付着量の少ないひも状ろ材を上流側へ移すことで、生物反応槽内に設置されたすべてのひも状ろ材を均一且つ有効に利用し、これにより、生物反応槽全体での好気性生物処理を均一に行うことができる。
【0019】
本発明に係る汚水処理装置によれば、活性汚泥処理など好気性生物処理を行う生物反応槽に、幹糸および枝糸を有するひも状ろ材が複数配設されたろ材モジュールを一つまたは二つ以上設けた構成としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
(1) 広い表面積を確保することが可能なひも状ろ材を複数配設したろ材モジュールを一つまたは二つ以上設けたので、そのろ材表面に付着成長する生物膜の付着量を増大させ、散気器からの散気による好気条件下での好気性生物処理を促進することができることから、汚水処理装置の処理能力をより高めることができる。
(2) 表面積の広いひも状ろ材に付着成長する生物膜は、汚水の好気性生物処理を担う活性汚泥生物等を常に保持できるため、平時においては、固液分離設備から返送される汚泥量を抑えて生物反応槽のMLSS(浮遊汚泥濃度)を低くすると共に空気量を抑えて運転することができ、運転コストや維持管理作業を軽減することができる。
汚濁(有機物)負荷が極端に低減した場合などでは、固液分離設備からの汚泥返送を停止して運転することで、より一層運転コストや維持管理作業を軽減するだけでなく、活性汚泥生物等を生残させることができる。逆に、汚濁(有機物)負荷が極端に増加した場合などでは、固液分離設備からの汚泥の返送量を増加させ、速やかに生物反応槽のMLSSを高くすることができるため、安定した汚水の好気性生物処理を行うことができる。
(3) また、極端な負荷変動ではない場合、例えば観光地を抱える地域での汚水処理施設では、汚濁負荷ピーク期には汚泥返送量を最大にして汚水処理を行い、過渡期には汚泥返送量を段階的に減少させて汚水処理し、閑散期には汚泥返送を完全に停止して接触酸化方式で汚水処理することもできる。そして、このような汚濁負荷に応じた運転を、汚泥返送量などの簡便な調整で速やかに行うことが可能であるため、災害復旧時や異常気象(大雨洪水など)時などにおいても、流入する汚水の質や量に応じて、速やかに適切な処理を行うことができる。
(4) 汚水処理装置の運転開始時(立上時)には、好気性生物処理に不可欠の活性汚泥(種汚泥)を生物反応槽に投入して生物反応槽の処理機能を早期に安定化させる必要があるが、被災後の速やかな立上げに必要な十分量の種汚泥を入手するのはとても難しい。このような場合であっても、固液分離設備で分離した分離汚泥を汚泥返送管によって直ちに生物反応槽に返送することにより、災害後でも生物反応槽の処理能力を早期に安定化させることができる。また、被災地の復興が進むにつれて変化すると予想される汚水の量や質に応じて処理能力の増強が可能となる。
【0020】
本発明に係る汚水処理装置によれば、汚水に含まれるし渣を除去するし渣除去設備を備えた構成としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
汚水に髪の毛や繊維質のものなどのし渣が多く含まれていたり、前処理での固液分離が不十分であったりすると、そのし渣が多量に生物反応槽に流入し、生物反応槽内に設置されているろ材モジュールやひも状ろ材に絡みついて汚損を引き起こし、さらには、ひも状ろ材の枝糸の揺れ動きを妨害するばかりか、絡みついたし渣の周りに生物膜が付着成長して、ひも状ろ材全体が生物膜に覆われて一本の円柱状になってしまうこともあり、そうなると好気性生物処理に重大な支障が生じてしまい処理機能不全に陥る。
そこで、このような状況に陥らせないために、し渣除去設備を設け、予め汚水からし渣を十分に除去し、し渣が除去された汚水を生物反応槽に流入させる。これにより、ひも状ろ材を良好な状態に保持できると共に、生物膜面積の減少を抑制でき、十分に処理機能を発揮させることができる。また、し渣を確実に除去することにより、管路の閉塞も防止でき、さらに、し渣に起因する汚泥発生量の増大を抑制することも可能であり、もって汚水処理装置全体を良好に維持することができる。
【0021】
本発明に係る汚水処理装置によれば、生物反応槽に複数の汚水流入口を備えた、好ましくは生物反応槽の上流から下流にわたり複数の汚水流入口を備えた構成としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
上述したように、生物反応槽内において、ひも状ろ材への生物膜の付着量は、通常、汚水が流入する上流側で多くなり、生物反応槽混合液(混合液)が流出する下流側で少なくなる傾向にある。つまり、汚濁(有機物)負荷が高いところでは付着(成長)量が大きく、低いところでは小さい。そこで、複数の汚水流入口から汚水を適宜流入させることにより、汚濁負荷の大小をならすことができ、ひも状ろ材への生物膜の付着量の設置場所による偏りを容易にコントロールすることが可能となる。
例えば、汚濁(有機物)負荷の高い汚水の一部を生物反応槽の下流側の方(生物反応槽の中間地点など)に流入させることで、上流側への汚濁(有機物)負荷を低減させると共に、下流側への汚濁(有機物)負荷を増大させて下流側のひも状ろ材に付着する生物膜の増殖を促すことができ、これにより生物反応槽内のひも状ろ材への生物膜の付着量をならすことができ、もってすべてのひも状ろ材を有効に利用して生物反応槽全体の処理効率を上昇させることができる。また、汚濁(有機物)負荷が低い場合には、上流側から下流側にわたるすべてのろ材モジュールに対して、少ないながら有機物負荷をかけることができ、継続的な低汚濁負荷による解体現象を防止して、生物膜を維持することができる。
なお、汚水を生物反応槽の段階的(例えば生物反応槽内に設けられた区画毎)に流入させてもよい(ステップ流入)。
【0022】
本発明に係る汚水処理装置によれば、固液分離設備を、水槽と、複数枚の分離羽根が間隙をもって配設されていると共に、混合液が流入する回転筒と、該回転筒を回転させる駆動機と、沈降した分離汚泥を掻き寄せる汚泥掻寄機とを備えた回転筒式固液分離槽としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
(1) 回転する回転筒内に流入してきた混合液を、通常の重力沈降に比べ速やかに処理水と分離汚泥とに分離でき、処理水に同伴して流出しやすい微細な汚泥フロックも捕捉することも可能であり、清澄な処理水を得ることができる。
(2) また、効率よく固液分離できるため、確実に分離汚泥が得られると共に、汚泥濃度を高めることができ、汚泥処理や場外搬出する汚泥量を少なくすることが可能となる。
(3) 汚水処理装置においては、汚濁物質の負荷量が一定であれば、発生する分離汚泥量(重量)もほぼ一定となる。分離汚泥量が一定であれば分離汚泥濃度が高いほど分離汚泥容量(容積)が小さくなり、汚泥処理や搬出処分に要する処理処分や運搬にかかる労力、エネルギーおよび費用が抑えられる。
【0023】
本発明に係る汚水処理方法によれば、幹糸および枝糸を有するひも状ろ材が複数配設されたろ材モジュールを一つまたは二つ以上設けた生物反応槽に汚水を導入し、前記ろ材モジュールの下方から散気して好気性生物処理を行い、前記生物反応槽から流出する混合液を処理水と分離汚泥とに固液分離し、前記分離汚泥の一部または全部を前記生物反応槽へ返送する構成としたので、次のような優れた作用効果を奏する。
(1) ひも状ろ材には生物膜が形成され、汚水の好気性生物処理を担う活性汚泥生物等が常に保持されるため、平時においては、固液分離設備から返送する汚泥量を抑えて生物反応槽のMLSSを低くして空気量を抑えて運転することができ、運転コストや維持管理作業を軽減することができ、汚濁(有機物)負荷が極端に低減した場合などにおいては、固液分離設備からの汚泥返送を停止して運転することで、より一層運転コストや維持管理作業を軽減するだけでなく、活性汚泥生物等を生残させることができ、逆に汚濁(有機物)負荷が極端に増加した場合などにおいては、固液分離設備からの汚泥の返送量を増加させ、速やかに生物反応槽のMLSSを高くすることができるため、安定した汚水の好気性生物処理を行うことができる。
(2) ひも状ろ材には生物膜が形成されることにより、また固液分離した分離汚泥を返送することにより、生物反応槽では汚水の好気性生物処理を担う活性汚泥生物等を常に保持できるため、災害や異常気象等による応急復旧時においても、速やかに安定した処理機能を発揮(回復)させることができる。
【0024】
本発明に係る汚水処理装置および汚水処理方法は、いずれも、上述したように、平時においては、汚水処理施設に流入してくる下水や産業排水などの水量や汚濁負荷量が変動しても速やかに対応でき、また、地震、津波、集中豪雨などの災害や異常気象で機能不全に陥った汚水処理施設に対する応急復旧対策として使用することもできるので、平時においても、また被災時においても、放流先の水質に見合った処理水を得ることができることから、環境保全や処理水放流先の水域等の水質汚濁防止にとても有効である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による汚水処理装置の全体構成を示す部分断面図であり、
図2は
図1に示した汚水処理装置の生物反応槽を拡大して示す部分断面図であり、
図3は
図2に示したろ材モジュールを構成するろ材の一形態を拡大して示す断面図であり、
図4は
図2に示したろ材モジュールが引上げ可能なことを示す部分断面図であり、
図5は
図2に示したろ材モジュールの設置場所が変更可能なことを示す正面図であり、
図16はひも状ろ材の設置(形状)例を示す写真である。
る。
この実施の形態1による汚水処理装置は、流入する汚水を活性汚泥処理など好気性生物処理する生物反応槽1と、この生物反応槽1の水面下に配設された複数のろ材モジュール2と、ろ材モジュール2の下方に設けられた散気器3aと、生物反応槽1からの混合液を処理水と分離汚泥に固液分離する沈殿分離槽4(固液分離設備)と、分離汚泥を生物反応槽1へ返送する汚泥返送管9とから概略構成されている。
【0027】
図1および
図2に示すように、生物反応槽1内に設けられている複数のろ材モジュール2は支持体5で支持されている。支持体5は、互いに離間する一対の脚部5aと、両脚部5a間の上部に設けられた矩形状の板部5bとから概略構成されている。板部5bには、各ろ材モジュール2を個別に引き上げられるように引上用部材(図示せず)が設けられている。この引上用部材としては、例えば、ろ材モジュール2を上下方向に移動可能に支持する溝やフックなどであってもよいが、これに限定されるものではない。また、
図4および
図5に示すようなろ材モジュール2の引上げや生物反応槽1外への取り出しには、機械的に吊り上げる機構(図示せず)を用いてもよい。
【0028】
この実施の形態1では、汚水が流入する上流(流入)側から混合液の流出する下流(流出)側への流下方向に沿って、4つのろ材モジュール2(最上流側ろ材モジュール2a、上流側ろ材モジュール2b、下流側ろ材モジュール2cおよび最下流側ろ材モジュール2d)が配置されていて、これらは支持体5によって支持されている。
【0029】
各ろ材モジュール2は、矩形状の枠体であり、この枠体内には、複数のひも状ろ材6が上下方向に沿って、好ましくは互いに平行で且つ所定の間隔をもって配設されている。ひも状ろ材6は、
図3に示すように、幹糸6aと、この幹糸6aの長さ方向に沿って間隔をもって配設され、且つ、幹糸6aの側面から離間する方向に延在する複数の枝糸6bとから構成されている。生物反応槽1の水面下でのひも状ろ材6は、液体(汚水や混合液)の流れや気体の流れ(散気)などの生物反応槽内の流動により柔らかに動き、とくに枝糸6bは幹糸6aと接続する部分を支点として上下左右に柔軟に揺れ動く構造となっている。このように構成されたひも状ろ材6の表面上には、生物反応槽1に流入する汚水に含まれる有機物等を分解する微生物が付着・成長して集積し、生物膜6cが形成されることになる。
【0030】
生物反応槽1の容積に対するひも状ろ材6が占める容積(バルク)は、処理状況(水量や水質)や処理設備の大きさなどに基づき20%〜70%の範囲で設定するが、概ね30〜55%であることが好ましい。また、ひも状ろ材6のろ材モジュール2への固定方法としては、ひも状ろ材6の幹糸6aの両端をろ材モジュール2の枠体にフック等の固定手段により固定する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、ひも状ろ材6は、生物反応槽1内で鉛直方向に配設することが望ましいが、状況により横方向に配設してもよい。
なお、
図3では、枝糸6bは幹糸6aの長さ方向に沿って左右交互に配設されているが、左右交互ではなく同じ位置で枝糸6bを左右両方向へ伸ばすようにしてもよい。例えば、一本の枝糸6bを左右両方向へ伸びるように幹糸6aに結着する。その際、
図16に示すように、長さ方向に沿って間隔(0.5〜10cm)を持たせ、且つ角度(15〜60度)をずらして複数の枝糸6bを結着して、枝糸6bをらせん状(DNA状)に展開させてもよい。このような形状とすることにより、ひも状ろ材6を平面的ではなく立体的に形成することができ、汚水との接触にも有効である。
【0031】
この実施の形態1では、散気器(散気板)3aは、4つのろ材モジュール2a,2b,2c,2dの下方にそれぞれ配設された最上流側散気板3a、上流側散気設備3b、下流側散気設備3cおよび最下流側散気設備3dと、これらに空気を供給する送風機、送気管、空気量やタイミング等を調節するバルブ(いずれも図示せず)とから概略構成されている。また、散気器(散気板)3aとしては、例えば、ゴム製のチューブの上部に細かい切込みを入れ、この切込みが空気の膨張圧力によって広がって噴出口となり空気を放出するタイプや多孔質の陶板などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、例えば表面に散気孔が多数設けられた
図6に示す散気器(散気管)3eやジェット噴流式の散気器(図示せず)を用いてもよい。
なお、散気器(散気板)3aは、ろ材モジュール2の下方に設けられていればよく、例えば、生物反応槽1内の底部に設けられてもよい。また、この実施の形態1では、各散気板(3a〜3d)がそれぞれ1つのろ材モジュール(2a〜2d)に対する位置に配設されているが、これに限定されるものではなく、要は好気性生物処理に必要な酸素が供給でき、生物反応槽1内の流動が確保でき、必要に応じて肥厚した生物膜6cを剥離することができるような散気が得られれば、数量や設置場所は特に限定されない。
また、上記作用を効率よく得るには、
図2に示すように、散気板(3a〜3d)を、対応するろ材モジュール(2a〜2d)の下方で個別に散気できるよう配置することが望ましい。また、上記散気器(散気板)3aに加えて、ろ材モジュール2に対する空気洗浄用の散気器を別途設けてもよく、ろ材モジュール2のひも状ろ材6の異物(絡みついたし渣など)の除去、肥厚した生物膜6cの剥離、閉塞の解消等のために、粗大気泡を発生させるタイプであることが好ましい。
【0032】
沈殿分離槽4(固液分離設備)は、
図1に示すように、円錐形状の傾斜底部を有する水槽7と、この水槽7内に配設された汚泥掻寄機8とから概略構成されている。水槽7の上部には、生物反応槽1から流出する混合液を受け入れる手段(図示せず)や、処理水を排出するための処理水排出口7bが設けられ、傾斜底部の最深部には、分離汚泥を排出するための汚泥排出口7cが設けられている。汚泥掻寄機8は、水槽7の底部で回転し、底部に堆積した分離汚泥を汚泥排出口7cへ掻き寄せる汚泥掻寄板8aと、この汚泥掻寄板8aの回転駆動力を発生する回転モータ8bと、汚泥掻寄板8aを支持すると共に回転モータ8bの回転駆動力を伝達する回転軸8cとから概略構成されている。掻き寄せられた分離汚泥は、汚泥排出口7cより、汚泥引抜ポンプ23を介して引き抜かれる。
なお、
図1では固液分離設備4として沈殿分離槽(円形沈殿池)を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば
図10に示す回転筒式固液分離槽4でもよく、また生物反応槽1内に浸漬配置された膜分離器でもよく、もちろん矩形沈殿池でもよく、要は混合液を効率よく確実に処理水と分離汚泥に分離できる設備であればよい。
【0033】
汚泥返送管9は、
図1に示すように、沈殿分離槽4の汚泥排出口7cから、汚泥引抜ポンプ23により引き抜かれた分離汚泥を、返送汚泥として生物反応槽1へ返送する移送管であり、汚泥返送を中止したり、分離汚泥を余剰汚泥として引き抜いたりするなどの際に開閉する開閉弁24を備えている。また、分離汚泥を余剰汚泥として引き抜いて系外に排出するための排泥管にも、同様に開閉弁24を備えている。なお、この実施の形態1では、返送汚泥を直接、生物反応槽1へ返送しているが、これに限らず、予め返送汚泥と汚水とを混合させるために、例えば
図10に示すように、汚泥返送管9を汚水流入管路25に接続した構成としてもよい。
【0034】
次に汚水処理について説明する。
まず、
図1に示す汚水処理装置では、汚水を生物反応槽1へ流入させ、返送汚泥と混合して、好気性生物処理が行われる。なお、応急復旧時など返送汚泥が十分に確保できない時は、外部から調達した種汚泥を生物反応槽1内に投入することが望ましく、また種汚泥の入手が困難な場合には、汚水中に生息する微生物を種汚泥として生物反応槽1で増殖させてもよい。
生物反応槽1へ流入した汚水は、返送汚泥や種汚泥(つまり活性汚泥)と混合して、散気器(散気板)3aからの散気で好気性生物処理(主に有機物の酸化分解)される。すなわち、汚水と活性汚泥が混合した混合液は、槽内の押出流や散気による上向流などの流動を受けて生物反応槽1内で流動し、ひも状ろ材6と接触する。ひも状ろ材6の表面には、好気性生物処理に伴い生物膜6cが形成され成長する。
生物膜6cでは、汚水に含まれる有機物(BODやCODMn)の酸化分解に伴い好気性微生物が増殖すると共に、ひも状ろ材6自体や生物膜6cへのSSの付着(懸濁物質の吸着やし渣などの絡み付き)もあるため、時間経過と共に生物膜6c(汚泥)は肥大化していき、槽内の流動などでその一部がひも状ろ材6(とくに揺れ動く枝糸6b)から剥離していく。
【0035】
このように、ひも状ろ材6の表面では、常に、生物膜6cの増殖、肥大化および剥離からなる一連のサイクルが繰り返され、汚水の好気性生物処理を担う活性汚泥生物等の量および生物相(細菌〜原生動物〜後生動物)が保たれ、浮遊する活性汚泥(生物等)と共に汚水を浄化していく。
なお、生物膜6cが適正な剥離される、つまりひも状ろ材6に付着したSS(吸着した懸濁物質や絡み付いたし渣など)が除去され、主に枝糸6bで肥厚した生物膜6cが剥離され、ひも状ろ材の閉塞が解消されることにより、生物膜6cの表面積、枝糸6bの揺れ動き、ひも状ろ材6と混合液との接触を良好に維持でき、安定して効率的な好気性生物処理を行うことができる。
【0036】
要するに、生物反応槽1に流入した汚水は、まず活性汚泥(返送汚泥)と混合して、汚水中に含まれる主に溶解性の有機物やSS(懸濁物質)が活性汚泥フロックに吸着し、次いで槽内の流動により、ひも状ろ材6と接触してさらに有機物やSS(懸濁物質やし渣など)が吸着(付着)し、散気による好気条件下で有機物が酸化分解され、浄化されていく。
このように、生物反応槽1では、活性汚泥(返送汚泥)の存在下で、ひも状ろ材6が配置されることにより、好気性生物処理を担う活性汚泥生物等が十分に確保できるので、たとえ流入する汚水量や汚濁負荷量が増大しても、適正な散気で汚水を効率よく確実に浄化することができ、良好な水質の処理水を排出することができる。
なお、生物反応槽1における汚水の平均滞留時間は、所望する処理水質や処理条件により適宜設定されるが、概ね0.5〜24時間の範囲が好ましく、BOD容積負荷にして0.1〜5.0kgBOD/m
3・dの範囲が妥当である。
【0037】
次に、好気性生物処理に重要な役割を果たすろ材モジュール2(ひも状ろ材6)の洗浄について説明する。
生物反応槽1内では、汚水の流入する上流(流入)側ほど、有機物やSSなどの汚濁物質の濃度が高く、下流(流出)側に比べて、ひも状ろ材6の生物膜6cの付着量が多く、成長速度も速くなる。このため、最上流側ろ材モジュール2aは、明らかに最下流側ろ材モジュール2dに比べて、生物膜6cが肥厚し、ひも状ろ材6が閉塞する可能性が高い。そこで、
図4に示すように、閉塞の可能性が高い最上流側ろ材モジュール2aから順次引き上げて、その閉塞(肥厚)状況を確認し、閉塞が確認された場合には、速やかに清掃を行うか、または、ろ材モジュール2を支持体5に戻して散気器(散気板)3aによる散気(空気吐出)で空気洗浄(剥離作業)を行う。
なお、生物反応槽1内に流入した汚水の性状等と閉塞状況との関係が明らかになっている場合には、汚水の性状等に応じてろ材モジュール2に対する空気洗浄を定期的に行うことで、閉塞やこれに伴う処理機能不全を未然に回避できる。空気洗浄では、例えば散気器(散気板)3aからの空気吐出量を一時的にアップさせ、肥厚した生物膜6cに多くの空気泡を衝突させることにより、剥離させ、閉塞を解消する。
【0038】
次に、散気器(散気板)3aから常時散気している場合のろ材モジュール2(ひも状ろ材6)の空気洗浄について説明する。
汚水の有機物濃度が高いなど散気器(散気板)3aから常時散気している、つまり常に酸素を供給して好気性生物処理を促進している場合、生物反応槽1内では空気泡の上昇により、槽内に上向流が形成される。そして、この空気泡の上昇および上向流の形成による槽内の流動で、主にひも状ろ材6の枝糸6bが活発に揺れ動き続けることになり、生物膜6cの一部を剥離させ、ろ材モジュール2の洗浄ができる。
この好気性生物処理のための散気は、肥厚した生物膜6cの剥離(洗浄)にも有効であるが、散気器(散気板)3aの設置場所や生物膜6cの肥厚状況によっては、複数のろ材モジュール2全てにおいて適切に洗浄することは困難である。
そこで、実施の形態1において、散気板(3a〜3d)を、ろ材モジュール(2a〜2d)毎に設けるように構成し、すべてのろ材モジュール(2a〜2d)に適切な洗浄空気量(例えば通常の1.2〜2.5倍の空気量)および適切な洗浄頻度(例えばろ材モジュール2dを1回洗浄する間にろ材モジュール2aを2回以上洗浄する)に設定して洗浄を行うことで、ろ材モジュール2が確実に洗浄されて良好な状態を維持できる。
【0039】
次に、ろ材モジュール2の設置場所の変更について説明する。
図5は、最上流側ろ材モジュール2aと下流側ろ材モジュール2cとの設置場所の変更を示している。
汚濁(有機物や懸濁物質)負荷が高く生物膜6cが肥厚しやすい最上流側ろ材モジュール2aを生物反応槽1外に取り出し、ひも状ろ材6の閉塞等の確認および清掃を行った後に、汚濁負荷が低い状態に置かれていた下流側ろ材モジュール2cと設置場所を変更する。このような作業を適宜実施することにより、各ひも状ろ材6や各ろ材モジュール(2a〜2d)に掛かる生物学的、物理学的、化学的な負担をならすことができ、一部のひも状ろ材6や一部のろ材モジュール2の極端な劣化や破損を防ぐことができる。
なお、
図5に示した設置場所変更例に限定されるものではなく、ろ材モジュール2の設置場所変更履歴やひも状ろ材6の閉塞状況を参考に、生物学的、物理学的、化学的な負担が各ひも状ろ材6に対してなるべく均一になるように設置場所を変更することが望ましい。
【0040】
生物反応槽1では、汚水の好気性生物処理が進み、剥離した生物膜6cの一部(剥離汚泥)を含む活性汚泥の混合液が固液分離設備4(沈殿分離槽)へ移流する。この沈殿分離槽4では、流入した混合液が、重力沈降により処理水と沈殿汚泥とに固液分離される。処理水は処理水排出口7bを介して排出(放流)され、沈殿汚泥は汚泥掻寄機8の汚泥掻寄板8aにより掻き寄せられ、分離汚泥として汚泥排出口7cから汚泥引抜ポンプ23で引き抜かれ、汚泥返送管9を介して生物反応槽1へ返送される。また、一部の分離汚泥は余剰汚泥として系外に排出され、脱水処理等や焼却など処理・処分される。
返送汚泥と余剰汚泥の量や返送(引抜)時間等の調整は、汚泥引抜ポンプ23や開閉弁24の操作で、適宜行う。なお、汚濁負荷がとても低い場合には、前述したように分離汚泥の生物反応槽1への返送は行わない。その場合、生物反応槽1はいわゆる接触酸化槽としての役目を果たすことになり、剥離汚泥が中心となる分離汚泥(発生量:少)は全量系外に排出して、処理処分することになる。汚泥の返送量は、諸状況に応じて、汚水の流入量に対して0%〜100%の範囲で設定されることが好ましい。
【0041】
以上のように、この実施の形態1によれば、生物反応槽1では、流入した汚水が、活性汚泥処理されると共に、生物反応槽1内の散気や汚水流入などによる流動により揺れ動くひも状ろ材6、とくに枝糸6bに付着増殖する生物膜6cと効率よく接触して浄化されていく。汚濁負荷が高い時は、返送汚泥量を増やす(高MLSS)と共に十分に散気することで、確実に汚水を好気性生物処理することができ、汚濁負荷が低くなった場合には、汚泥返送量を低減する(低MLSS)と共に散気量を抑えることで、エネルギー消費を抑制して効率よく汚水を好気性生物処理することができる。また、このような適正な汚水の好気性生物処理を行うことができるため、緊急対応時には速やかに種汚泥を得る、つまり活性汚泥を増殖させることができ、さらには復旧途上の近隣の汚水処理施設へ増殖した活性汚泥を種汚泥として供給でき、この施設の立上げに寄与することもできる。
【0042】
仮に、汚濁負荷が高く、ひも状ろ材6が頻繁に閉塞する可能性がある場合でも、ろ材モジュール2を引き上げて容易に閉塞状況の確認や清掃を行うことができ、これにより生物膜6cの表面積、枝糸6bの揺れ動き、ひも状ろ材6と混合液との接触が良好に維持され、常に生物膜6cへ十分な酸素供給が行えるので、生物反応槽1の生物処理能力を良好に維持できる。また、ろ材モジュール2を引き上げてろ材モジュール2毎の生物膜6cの付着度合を確認できるため、ろ材モジュール2毎に空気洗浄の条件(洗浄空気量、洗浄頻度)を容易に設定することができる。
なお、この実施の形態1では、4つのろ材モジュール2a〜2dが生物反応槽1内に1列に配設されているが、生物反応槽1の槽形状や規模、汚水処理施設の規模等に応じて、ろ材モジュールの数や配置を変更してもよい。また、ろ材モジュール2の形状は汚水処理装置において統一されていることが望ましいが、生物反応槽1の形状や要求される処理能力に応じて形状の異なるろ材モジュール(例えば、浮遊性の筒状ろ材や固定式の繊維状ろ材など)を混在させてもよい。
【0043】
ろ材モジュール2のひも状ろ材6に付着する生物膜6cや生物反応槽1内の活性汚泥には、汚水から窒素やリンを除去する比較的代謝(増殖)速度の遅い細菌類が存在する。この細菌類は、混合液と共に生物反応槽1から固液分離設備4へ流出しやすいので、汚水からの窒素やリンの除去性能が低下してしまう。そこで、窒素やリンの除去性能を維持するために、この細菌類を担持する浮遊性担体を生物反応槽1内へ投入することが望ましい。浮遊性担体としては、例えば、スポンジ状のキューブや多孔性のろ材などが使用可能であり、浮遊性担体の材質としては、ひも状ろ材6と接触して生物膜6cを不必要に剥離させてしまわないように、硬質のものより軟質のものが好ましい。
【0044】
この実施の形態1では、
図3に示したように幹糸6aと枝糸6bから構成されるひも状ろ材6が好適であるが、特にこれに限定されるものではなく、ひも状ろ材としては、汚水の流入や散気による流動で揺れ動くものであり、生物膜6cが形成され、肥大化(成長)が進み、その生物膜6cの一部が剥離され、新たに成長するというサイクルが繰り返されるものであれば、どのような構成、構造、材質であってもよく、例えば枝糸6bに相当する部分がリング状や渦巻状の長糸であってもよい。
【0045】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2による汚水処理装置の全体構成を示す部分断面図であり、
図8(a)は
図6のし渣除去設備14である回転スクリーン式し渣除去機20を示す部分断面図である。
図1乃至
図5と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態2による汚水処理装置は、汚水流入管路25に、し渣除去設備14として回転スクリーン式し渣除去機20を設けた点、散気器として散気管3eで構成した点で、実施の形態1における構成と異なる。
【0046】
回転スクリーン式し渣除去機20は、
図8(a)に示すように、汚水流入管路25で開口し、ウェッジワイヤーやバーで形成された回転スクリーン20aと、捕捉したし渣を移送するスクリューコンベア20bと、これらを駆動させる駆動機20cとから略構成され、生物反応槽1に向かって汚水流入管路25を流れてくる汚水に含まれるし渣を捕捉して、スクリューコンベア20bによる搬送中のし渣に対する圧密作用で、し渣を脱水し、脱水し渣を排出するものである。
【0047】
また、散気管3eは、塩ビ管などの耐腐食性のある管部材に、複数の散気孔が設けられたものであり、生物反応槽1の下部(通常は底部付近)に、流下(長手)方向に沿って延在させるものである。その設置場所は、ろ材モジュール2の下方であれば、ろ材モジュール2の真下でも、それ以外のところでもかまわず、また設置数は1本でも複数本でもかまわない。要は、生物反応槽1内を確実に散気でき、槽内の流動を生じさせ、肥厚した生物膜6cを剥離できれば、特に限定されるものではない。
【0048】
このように構成された実施の形態2における汚水処理装置では、沈殿分離槽4から排出された分離汚泥の一部または全部が汚泥返送管9を介して生物反応槽1へ返送され、これにより生物反応槽1ではMLSSを通常1000〜5000mg/Lに維持できる。そして、回転スクリーン式し渣除去機20で、し渣が除去された汚水が生物反応槽1へ導入され、散気管3eからの散気による好気条件下において、活性汚泥とひも状ろ材6に付着成長した生物膜6cにより、汚水を効率よく確実に好気性生物処理することができる。
【0049】
以上のように、この実施の形態2によれば、とくに回転スクリーン式し渣除去機20を設けたので、汚水に含まれるし渣を十分に除去すること可能となり、これによりひも状ろ材2のみならずろ材モジュール6へのし渣などの繊維状の異物の絡み付きを抑制できると共に、生物膜6cの過大な肥大化を防止でき、生物膜6cの表面積を十分に確保して、活性汚泥との相乗効果により、効率的で良好な好気性生物処理を行うことができ、剥離汚泥を含む余剰汚泥の削減にも有効である。
なお、返送汚泥にも繊維状の異物(し渣等)が多く含まれる場合には、汚泥返送管9を汚水移送管路25の回転スクリーン式し渣除去機20より上流まで延伸させて、返送汚泥に含まれる繊維状の異物(し渣等)を除去してもよい。
【0050】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3による汚水処理装置の全体構成を示す部分断面図であり、
図8(b)は
図7のし渣除去設備14であるスクリーン式し渣除去機21を示す部分断面図である。
図1乃至
図6と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態3による汚水処理装置は、汚水流入管路25に、し渣除去設備14としてスクリーン式し渣除去機21を設けた点、汚水流入管路25から分岐した分岐管10、分岐管10から延伸する分岐管11、分岐管11から延伸する分岐管12、およびそれぞれの管に設けられ生物反応槽1へ汚水を流入させる汚水流入口13を有する点で、実施の形態2における構成と異なる。なお、実施の形態1と同様に、散気器(散気板)3aを採用している。
【0051】
スクリーン式し渣除去機21は、
図8(b)に示すように、汚水流入管路25に配設され、ウェッジワイヤーやバーで形成されたスクリーン21aと、このスクリーン21aで捕捉したし渣を掻き取る掻取部材(レーキ)21dと、この掻取部材21dが複数配設され、掻取部材21dをスクリーン21aに沿って移動させるチェーンベルト21bと、このチェーンベルト21bを駆動する駆動機21cとから略構成され、生物反応槽1に向かって汚水流入管路25を流れてくる汚水に含まれるし渣を捕捉し、捕捉したし渣を掻き取りながら搬送し排出するものである。
【0052】
また、
図7に示すように、分岐管10は汚水流入管路25から分岐して、生物反応槽1の最上流側ろ材モジュール2aと上流側ろ材モジュール2bとの間に、汚水流入口13を介して汚水を流入させ、分岐管11は分岐管10から延伸して、生物反応槽1の上流側ろ材モジュール2bと下流側ろ材モジュール2cとの間に、汚水流入口13を介して汚水を流入させ、分岐管12は分岐管11から延伸して、生物反応槽1の下流側ろ材モジュール2cと最下流側ろ材モジュール2dとの間に、汚水流入口13を介して汚水を流入させるものである。
【0053】
このように構成された実施の形態3における汚水処理装置では、スクリーン式し渣除去機21で、し渣が除去された汚水が生物反応槽1に流入するが、分岐管10、分岐管11および分岐管12により生物反応槽1の上流側から下流側にわたり複数の箇所で汚水を流入させることができ、これにより生物反応槽1に流入した汚水は、それぞれの流入箇所で直ちに活性汚泥と混合し、また生物膜6cと接触することが可能となり、速やかに効率よく好気性生物処理を行うことができる。
【0054】
なお、実施の形態3では、分岐管11は分岐管10から延伸させ、分岐管12は分岐管11から延伸させる構成としたが、これに限るものではなく、分岐管11も分岐管12も直接汚水流入管路25から分岐させてもよく、また汚水流入管路25を介さず、し渣除去設備14に直接複数の分岐管を設けてもよく、要は生物反応槽1の複数の箇所に、し渣が除去された汚水を流入させることができればよい。
【0055】
以上のように、この実施の形態3によれば、とくにスクリーン式し渣除去機21を設けたので、汚水に含まれるし渣を十分に除去すること可能となり、これによりひも状ろ材2のみならずろ材モジュール6へのし渣などの繊維状の異物の絡み付きを抑制できると共に、生物膜6cの過大な肥大化を防止でき、生物膜6cの表面積を十分に確保して、活性汚泥との相乗効果により、効率的で良好な好気性生物処理を行うことができ、剥離汚泥を含む余剰汚泥の削減にも有効である。
また、実施の形態2.と同様に、汚水流入口13を複数備えているので、生物反応槽1の複数の箇所に、し渣が除去された汚水を流入させることができ、それぞれの流入箇所で速やかに好気性生物処理を行うことができると共に、生物反応槽1内のおける汚濁負荷を分散化できるため、ひも状ろ材6の生物膜6cの付着成長(肥厚)をならす、つまり偏りをなくすことができ、維持管理や清掃作業の効率化にも有効となる。
さらに、汚水流入量の減少や希薄化で汚濁負荷が低減した場合には、生物反応槽1では汚泥返送を停止すると共に空気量を抑えて低負荷運転に切り替えるが、汚濁負荷の低い状況が続くと、例えば最下流側ろ材モジュール2dのひも状ろ材6の生物膜6cは有機物負荷、つまり基質の供給が途絶えてしまう可能性があり、解体現象が生じて生物膜6cの維持が難しくなる。そのような場合にも、実施の形態2.と同様に、実施の形態3による汚水処理装置では、生物反応槽1の複数の箇所に、し渣が除去された汚水を流入させて、生物反応槽1の全体にわたって基質の供給を行うことができ、これにより、ろ材モジュール2(とくに下流の2cや2d)のひも状ろ材6の生物膜6cを維持することができる。
【0056】
実施の形態4.
図9(a)、(b)および(c)は、本発明の実施の形態4による汚水処理装置の生物反応槽1の構成を示す部分断面図(汚水が流下する一断面の図)である。
図1乃至
図8と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態4では、汚水処理装置の生物反応槽1におけるろ材モジュール2と、ろ材モジュール2の下方に設けられた散気器3aとの配置について、異なるパターンを例示し説明する。
つまり、
図9(a)では、生物反応槽1の一方の側壁に沿って、ろ材モジュール2を配設し、他方の側壁の底部付近に散気器(散気板)3aを設けている。
図9(b)では、生物反応槽1の両方の側壁に沿ってろ材モジュール2を配設し、生物反応槽1中心部の底部付近に散気器(散気板)3aを設けている。
図9(c)では、生物反応槽1の両方の側壁付近を除いてろ材モジュール2を配設し、このろ材モジュール2の直下の底部付近に散気器(散気管)3eを設けている。
【0057】
図9(a)では、上記の通り構成することにより、散気設備3の送風機26から送気管26aを介して供給される空気が散気器(散気板)3aから散気され、空気泡の上昇により生物反応槽1内の散気器(散気板)3aが設けられている側壁付近に上向流が発生し、ろ材モジュール2が配設されている側壁付近では反転して下向流となる。これにより生物反応槽1内では上下方向の旋回流が形成され、生物反応槽1内の混合液が流動すると共に、ろ材モジュール2のひも状ろ材6を揺れ動かし、さらに活性汚泥やひも状ろ材6の生物膜6cに酸素を供給することができる。なお、散気器(散気板)3aはろ材モジュール2の直下に設けられてなく、上昇する空気泡がほとんどひも状ろ材6に衝突しないため、生物膜6cの剥離は緩やかに行われることになる。
【0058】
図9(b)では、上記の通り構成することにより、散気設備3の送風機26から送気管26aを介して供給される空気が散気器(散気板)3aから散気され、空気泡の上昇により生物反応槽1内の散気器(散気板)3aが設けられている中心部付近に上向流が発生し、ろ材モジュール2が配設されている両方の側壁付近では反転して下向流となる。これにより生物反応槽1内では上下方向の旋回流が形成され、
図9(a)と同様の作用や効果を得ることができる。
【0059】
図9(c)では、上記の通り構成することにより、散気設備3の送風機26から送気管26aを介して供給される空気が二つの散気器(散気管)3eから散気され、空気泡の上昇により生物反応槽1内に配設されたろ過モジュール2に向かって上向流が発生し、ろ材モジュール2が配設されていない両方の側壁付近では反転して下向流となる。これにより、生物反応槽1内では上下方向の旋回流が形成され、生物反応槽1内の混合液が流動すると共に、ろ材モジュール2のひも状ろ材6を活発に揺れ動かし、さらに活性汚泥やひも状ろ材6の生物膜6cに酸素を供給することができる。
なお、散気器(散気管)3eはろ材モジュール2の直下に設けられていて、上昇する空気泡が常にひも状ろ材6に衝突するため、生物膜6cの剥離が進むことになり、生物膜6cの剥離および新たな成長を促進させることができる。
【0060】
以上のように、この実施の形態4によれば、生物反応槽1内おいて、適宜ろ材モジュール2や散気器(3aや3e)を配設することができ、流入する汚水の水質や水量、季節変動、汚水処理施設の規模など各要素を考慮して、適切な構成を選定することで、良好で安定した好気性生物処理を行うことができる。
なお、汚水の流入量が多くて生物反応槽1内の流動が十分に得られ、常に生物膜6cの剥離が促されている場合には、
図9(a)や
図9(b)の構成が好ましく、汚水の流入量の少なかったり、汚濁負荷が高かったりして、生物膜6cの肥厚が進みやすい場合には、
図9(c)の構成が好ましい。
【0061】
実施の形態5.
図10は本発明の実施の形態5による汚水処理装置の全体構成を示す部分断面図であり、
図11は
図10の固液分離設備である回転筒式固液分離槽4の構成を示す図であり、
図11(a)は回転筒の外部構成を示す正面図であり、
図11(b)は
図11(a)のA−A矢視図であり、
図11(c)は回転筒式固液分離槽4の全体構成を示す断面図であり、
図1乃至
図9と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態5による汚水処理装置は、汚水流入管路25に、し渣除去設備14として上向流式ろ材槽22を設けた点、汚泥返送管9が汚水流入管路25に接続している点、固液分離設備として回転筒式固液分離槽4を設けた点で、実施の形態1乃至4による構成と異なる。
【0062】
図10に示すように、し渣除去設備14としての上向流式ろ材槽22内には、ろ材が充填されたろ床22aが配設されていて、上向流式ろ材槽22の下部から導入された汚水はろ床22aを上向流で通過することにより、汚水に含まれる繊維状の異物などのし渣や懸濁物質を確実に捕捉し除去することができ、し渣が除去された汚水は上向流式ろ材槽22の上部より流出して生物反応槽1へ送られる。これにより、生物反応槽1においては、ひも状ろ材6のみならず、ろ材モジュール2へのし渣などの繊維状の異物の絡み付きを抑制できると共に、生物膜6cの過大な肥大化を防止でき、生物膜6cの表面積を十分に確保でき、生物膜6cと活性汚泥との相乗効果により、効率的で良好な好気性生物処理を行うことができ、剥離汚泥を含む余剰汚泥の削減にも有効である。
なお、ろ床22aに充填されるろ材は、ひも状ろ材6を用いることもできるが、し渣を確実に捕捉して保持できる浮遊性の筒状ろ材、砂礫、陶製部材、繊維状ろ材などを用いることが好ましく、それらを混在させてもよい。また、ろ材の洗浄(捕捉したし渣の排除)は、一旦上向流式ろ材槽22への汚水の流入を停止させ、槽水位を下げて、上方より洗浄水を供給することで洗浄することができる(フラッシュ洗浄)。
【0063】
一方、
図10に示すように、汚泥返送管9を汚水流入管路25に接続した構成とすることにより、固液分離設備4から排出された分離汚泥を、生物反応槽1へ返送して好気性生物処理を行う場合、予め汚水流入管路9で、し渣が除去された汚水と返送汚泥を混合して、生物反応槽1へ流入させることができる。これにより汚水と返送汚泥が予め混合され、生物反応槽1へ流入した直後から、速やかに且つ効率よく好気性生物処理を行うことができ、また汚水と返送汚泥が一緒に生物反応槽1へ流入するので、槽内に十分な流動(押し出し流れ)を形成することができ、ひも状ろ材の揺れ動きを促進させ、また槽底部への汚泥堆積などを防止することもできる。
【0064】
図11(a)、(b)および(c)に示すように、回転筒式固液分離槽4の回転筒15は、水槽7の水面下に、または上端が水面上に出るように配設され、汚泥掻寄機8の回転軸8cに支持されており、回転モータ8bにより回転可能である。この回転筒15は、
図11(a)および
図11(b)に示すように、円周に沿って複数の分離羽根16が配設されていて、各分離羽根16間に間隙17が形成されている。分離羽根16は、その横断面形状が回転筒15の内側に「く」または「へ」の字状に屈曲した細長い板状部材である。
【0065】
混合液導入口7aから回転する回転筒15内へ導入された混合液は、回転筒15の回転に同伴して緩やかに回転し、混合液に含まれる汚泥フロック18には向心力が働き、中心部(回転軸8c方向)に寄せられると共に、重力により水槽7の底部へ沈降していく。その際、微細な汚泥フロック18等は、幅が1〜100mm程度に形成された間隙17から処理水の流れに乗って回転筒15の外側へ流出しようとするが、回転している分離羽根16の屈曲形状部分に衝突して、回転筒15の内側に戻されるため、流出を防止することができる。一方、処理水(汚泥フロック18等が分離された清澄水)は間隙17を通過して回転筒15の外側に流出して、排出される。
【0066】
このように、回転筒15内へ導入された混合液の汚泥フロック18等は、回転する回転筒15内からの流出が阻まれ、また回転筒15の下方に形成される汚泥ゾーンに汚泥フロック18が捕捉される作用も働いて、固液分離が効率よく進み、通常の重力沈殿に比べ速やかに且つ確実に汚泥フロック18等を分離することができ、さらに効率的な固液分離により沈殿した汚泥の濃度も高めることができる。
なお、回転筒15は、汚泥掻寄機8の回転軸8cに支持されており、回転モータ8bにより汚泥掻寄板8aと等速度で回転させてもよく、別途駆動機を設けて回転筒15を別途回転させてもよい。
【0067】
この実施の形態5では、分離羽根16は、その横断面が「く」または「へ」の字形状となっているが、回転筒15内の汚泥フロック18等が回転筒15の外側に流出しにくい構造であれば、板状であっても、椀状であっても、「く」や「へ」の字の変形であっても、緩やかな湾曲であっても鋭利な屈曲であってもよい。また、分離羽根16は全て同じ形状、大きさであっても、一つ置き、二つ置きに同じ形状、大きさであっても、全てランダムであってもよい。間隔17も等間隔である必要はなく、ランダムな間隔であっても、一つ置き、二つ置きに同一の間隔となるように設定されてもよい。さらに、分離羽根16の形状は、回転筒15の大きさや水量負荷などを考慮して、短冊状、台形、正方形、半円形など適宜選定すればよい。
【0068】
以上のように、この実施の形態5によれば、し渣除去設備14として上向流式ろ材槽22を採用することにより、目の粗いスクリーン式のし渣除去機より確実に、し渣を除去でき、また予め汚水と返送汚泥を混合させることができ、良好な好気性生物処理を行うことができる。また、固液分離設備として回転筒式固液分離槽4を採用することにより、重力沈殿に比べ速やかに且つ確実に汚泥フロック18等を分離することができて効率的な固液分離が可能となり、また効率的な固液分離により沈殿した汚泥の濃度も高めて排出される分離汚泥の濃度を高くすることができ、処理・処分する汚泥(余剰汚泥)の減容化が可能となり、余剰汚泥の処理、運搬、処分に係る労力、エネルギー、費用等を低減することができる。
【実施例】
【0069】
実施例1.
この実施例1は、
図1に示した汚水処理装置を用いて行った汚水の好気性生物処理の一例である。
図12は汚水の主な汚濁指標の除去に関し、BOD除去率(黒塗りダイヤで示す)、CODMn除去率(黒塗り四角で示す)およびSS除去率(黒塗り三角で示す)の経時変化を示したグラフであり、各汚濁指標の除去率は実施期間中の1週間毎の平均値で示したものである。
運転状況としては、汚濁負荷の少ない期間であり、汚水のBOD濃度は55〜65mg/Lであり、BOD容積負荷は0.25〜0.30kg/m
3・dであり、汚泥返送率10〜20%で、生物反応槽の浮遊汚泥濃度(MLSS)は800〜1000mg/Lであった。
実施期間中、BOD除去率は概ね75%以上、CODMn除去率は概ね62%以上およびSS除去率は概ね80%以上に維持されており、汚濁負荷が低い期間であっても良好な好気性生物処理が行われていることが示されている。
これら汚濁指標(BOD、CODMn、SS)の除去率からも、本発明の実施の形態1における汚水処理装置は、生物反応槽1の活性汚泥とひも状ろ材6に付着成長している生物膜6cとの相乗効果で、また低汚濁負荷に対応して、低汚泥返送率でMLSSを低く維持し、空気量を抑えた省エネルギー運転で、効率がよく安定した好気性生物処理性能を維持できることが分かる。
【0070】
実施例2.
この実施例2は、
図6に示した汚水処理装置を用いて行った汚水の好気性生物処理の一例である。
図13は汚水の主な汚濁指標の除去に関し、BOD除去率(黒塗りダイヤで示す)、CODMn除去率(黒塗り四角で示す)およびSS除去率(黒塗り三角で示す)の経時変化を示したグラフであり、各汚濁指標の除去率は実施期間中の1週間毎の平均値で示したものである。
運転状況としては、汚濁負荷の多い期間であり、汚水のBOD濃度は150〜190mg/Lであり、BOD容積負荷は0.90〜1.10kg/m
3・dであり、汚泥返送率85〜110%で、生物反応槽のMLSSは2000〜2700mg/Lであった。
実施期間中、BOD除去率は概ね80%以上、CODMn除去率は概ね70%以上およびSS除去率は概ね88%以上に維持されており、汚濁負荷が高い期間であっても良好な好気性生物処理が行われていることが示されている。
これら汚濁指標(BOD、CODMn、SS)の除去率からも、本発明の実施の形態2における汚水処理装置は、生物反応槽1の活性汚泥とひも状ろ材6に付着成長している生物膜6cとの相乗効果で、また高汚濁負荷に対応して、高汚泥返送率でMLSSを高く維持した運転で、確実で安定した好気性生物処理性能を維持できることが分かる。
【0071】
実施例3.
この実施例3は、
図6に示した汚水処理装置を用い、汚泥返送率を変化させて行った汚水の好気性生物処理の一例である。
図14は、生物反応槽1内のMLSSの経時変化を示したグラフであり、汚濁負荷のとても低い時期(汚泥返送率5%)が黒塗りダイヤで示されていて、汚濁負荷の高い時期(汚泥返送率90%)が黒塗り四角で示されている。各MLSSは実施期間中の1週間毎の平均値を示したものである。
実施期間中、ひも状ろ材6の枝糸6bの揺れ動きや上昇する空気泡による生物膜6cの成長(増殖)および剥離や、各々のろ材モジュール2を引き上げ、し渣などによるひも状ろ材6の閉塞状況や生物膜付着量の管理を適宜行ったため、MLSSは低負荷時では250〜300mg/Lで、高負荷時では2300〜2500mg/Lで、それぞれ概ね一定であった。MLSSが一定に保たれていたことから、活性汚泥およびひも状ろ材6で付着成長している生物膜6cへの酸素供給および汚濁物質の処理(吸着・酸化・分解)が良好に行える状態が維持されたことがわかる。
【0072】
実施例4.
この実施例4は、
図10に示した汚水処理装置を用いて行った汚水の好気性生物処理の一例である。
図15は、
図10に示した固液分離設備として回転筒式固液分離槽4を設置した場合の分離汚泥濃度の経時変化を示したグラフであり、汚泥返送率10%で且つMLSS1000mg/Lでの低負荷運転時が黒塗りダイヤで示されていて、汚泥返送率100%で且つMLSS2700mg/Lの高負荷運転時が黒塗り四角で示されている。分離汚泥濃度は実施期間中の1週間毎の平均値を示したものである。実施期間中、生物反応槽1への汚濁物質負荷は概ね一定(平均BOD容積負荷:約1.0kg/m
3・d)であった。なお、回転筒式固液分離槽4の高い分離性能および分離汚泥の高濃度化を確認するために、実施期間の第1週から第4週までは
図1に示した沈殿分離槽4を用いて、実施期間の第5週から第8週までは回転筒式固液分離槽4を用いて、好気性生物処理を行った。
【0073】
図15からわかるように、低負荷運転時の第1週から第4週における分離汚泥濃度は10000〜11000mg/Lであったが、第5週から第8週における分離汚泥濃度は12000〜13000mg/Lであり、高負荷運転時の第1週から第4週における分離汚泥濃度は12000mg/L前後であったが、第5週から第8週における分離汚泥濃度は13000〜14000mg/Lであり、回転筒式固液分離槽4を設置したことによって固液分離性能が向上して分離汚泥濃度が安定して高くなり、これによって排出される余剰汚泥量を削減することができた。