特許第6030004号(P6030004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030004
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
   B62D21/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-41533(P2013-41533)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169008(P2014-169008A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】粟野 克行
(72)【発明者】
【氏名】彌武 朋也
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−085616(JP,A)
【文献】 特開2006−312437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームの下方にサブフレームが設けられ、該サブフレームにステアリングギアボックスが設けられ、前記サブフレームの上方にパワープラントが設けられた車両前部構造において、
前記サブフレームは、
車両前後方向に延びる左右のサイドメンバと、
前記左右のサイドメンバのうち車両後方側の部位を連結するクロスメンバと、
前記左右のサイドメンバの前端部から車幅方向内側に延びる左右の支持部を含み、
前記ステアリングギアボックスは、前記左右の各支持部に前記左右のサイドメンバの前端部の前方に位置するように取り付けられ、かつ前記左右のサイドメンバの前端部を互いに連結し、
前記支持部は、前記左右のサイドメンバの前端部に前記ステアリングギアボックスを支持することにより、前記ステアリングギアボックスを前記パワープラントの車両前方側に配置し、かつ前記ステアリングギアボックスが入力された衝撃荷重で下方へ脱落するように、前記衝撃荷重で破断可能に形成されたことを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
記支持部は、
前記ステアリングギアボックスが取り付けられるギアボックス取付部と、
前記衝撃荷重が入力する荷重入力部と、を有し、
前記ギアボックス取付部および前記荷重入力部は、前記支持部が設けられた前記サイドメンバより車幅方向内側に配置され、
前記支持部が、前記荷重入力部に入力した衝撃荷重で破断することを特徴とする請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記荷重入力部が前記ギアボックス取付部より車幅方向外側に設けられたことを特徴とする請求項2記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記荷重入力部に前記衝撃荷重を伝達可能に連結されるサポート部を備え、
該サポート部は、
前記ステアリングギアボックスより車両前方側に配置された状態で車幅方向に延びる連結バーを有することを特徴とする請求項2または請求項3記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記ステアリングギアボックスまたは前記パワープラントに傾斜ガイド部を備え、
該傾斜ガイド部は、
前記支持部が衝撃荷重で破断した後、前記ステアリングギアボックスを下方に案内するように傾斜状に形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフレームにステアリングギアボックスが設けられ、サブフレームの上方にパワープラントが設けられた車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部構造のなかには、左右のフロントサイドメンバが車両前後方向に延出され、左右のフロントサイドメンバの途中から左右の延出部が車幅方向内側に延出され、左右の延出部にステアリングギアボックスが架け渡されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
左右の延出部にステアリングギアボックスを架け渡すことにより、ステアリングギアボックスをクロスメンバとして兼用することができる。よって、クロスメンバを除去することができるので車両の軽量化を図ることができる。
【0003】
ところで、特許文献1のステアリングギアボックスは、ダッシュボードに沿って車幅方向に延出されている。このダッシュボードによりエンジンルームと車室とが仕切られている。よって、ダッシュボードおよびステアリングギアボックスの車両前方側にパワープラントが設けられている。
パワープラントは、一例として、エンジンとトランスミッションとが一体に形成されたエンジン/トランスミッションユニットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−56129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1の車両前部構造は、ステアリングギアボックスがパワープラントの車両後方に設けられている。よって、車両前方から衝撃荷重が入力した場合に、パワープラントの車両後方への移動をステアリングギアボックスで阻止することが考えられる。
このため、パワープラントの車両後方への移動量を確保することが難しく、そのことが衝撃荷重を十分に吸収する妨げになっていた。
【0006】
本発明は、車両の軽量化を図り、かつ、衝撃荷重を十分に吸収することができる車両前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、左右のサイドフレームの下方にサブフレームが設けられ、該サブフレームにステアリングギアボックスが設けられ、前記サブフレームの上方にパワープラントが設けられた車両前部構造において、前記サブフレームは、車両前後方向に延びる左右のサイドメンバと、前記左右のサイドメンバのうち車両後方側の部位を連結するクロスメンバと、前記左右のサイドメンバの前端部に前記ステアリングギアボックスを支持することにより、前記ステアリングギアボックスを前記パワープラントの車両前方側に配置する支持手段と、を含み、前記支持手段は、前記ステアリングギアボックスが入力された衝撃荷重で下方へ脱落するように、前記衝撃荷重で破断可能に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記支持手段は、前記左右のサイドメンバの前端部から車幅方向内側に延びる左右の支持部を含み、前記支持部は、前記ステアリングギアボックスが取り付けられるギアボックス取付部と、前記衝撃荷重が入力する荷重入力部と、を有し、前記ギアボックス取付部および前記荷重入力部は、前記支持部が設けられた前記サイドメンバより車幅方向内側に配置され、前記支持部が前記荷重入力部に入力した衝撃荷重で破断することを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記荷重入力部が前記ギアボックス取付部より車幅方向外側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、前記荷重入力部に前記衝撃荷重を伝達可能に連結されるサポート部を備え、該サポート部は、前記ステアリングギアボックスより車両前方側に配置された状態で車幅方向に延びる連結バーを有することを特徴とする。
【0011】
請求項5は、前記ステアリングギアボックスまたは前記パワープラントに傾斜ガイド部を備え、該傾斜ガイド部は、前記支持手段が衝撃荷重で破断した後、前記ステアリングギアボックスを下方に案内するように傾斜状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、左右のサイドメンバの前端部に支持手段を介してステアリングギアボックスを支持した。このステアリングギアボックスは剛性の高い部材である。
よって、ステアリングギアボックスをサブフレームの前クロスメンバとして兼用できる。これにより、サブフレームから前クロスメンバを除去することができるので車両の軽量化を図ることができる。
【0013】
さらに、ステアリングギアボックスをパワープラントの車両前方側に配置した。さらに、支持手段を衝撃荷重で破断させて、ステアリングギアボックスをパワープラントやサブフレームの下方へ脱落させるようにした。
ステアリングギアボックスが脱落することにより、ステアリングギアボックスで衝撃荷重を支えないようにできる。よって、車両前部構造に衝撃荷重が入力した場合に、衝撃荷重をパワープラントに効率よく伝えることができる。
これにより、パワープラントの車両後方への移動量を確保して衝撃荷重を十分に吸収することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、サイドメンバの前端部から支持部を車幅方向内側に延ばし、支持部にギアボックス取付部および荷重入力部を備えた。さらに、荷重入力部に入力した衝撃荷重で支持部を破断するようにした。
【0015】
荷重入力部をサイドメンバより車幅方向内側に配置することにより、荷重入力部をサイドメンバに対してオフセットさせる(ずらす)ことができる。よって、荷重入力部に入力した衝撃荷重を、支持部を破断させる荷重として効率よく利用することができる。
これにより、支持部を衝撃荷重で良好に破断させて、ステアリングギアボックスをパワープラントやサブフレームの下方に確実に脱落させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、荷重入力部をギアボックス取付部より車幅方向外側に設けた。
ここで、荷重入力部に衝撃荷重が入力することにより、支持部のうち荷重入力部や荷重入力部近傍が破断することが考えられる。
よって、荷重入力部を車幅方向外側に設けることにより、支持部(すなわち、荷重入力部や荷重入力部近傍)を破断した場合に、サイドメンバの前端部からギアボックス取付部を確実に切り離すことができる。
これにより、ステアリングギアボックスを衝撃荷重でパワープラントやサブフレームの下方に一層確実に脱落させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、荷重入力部にサポート部を連結し、サポート部の連結バーをステアリングギアボックスより車両前方側に配置した。
よって、ステアリングギアボックスに衝撃荷重が伝達される前に、荷重入力部に衝撃荷重を伝達させて支持部を破断させることができる。これにより、ステアリングギアボックスを衝撃荷重でパワープラントやサブフレームの下方に確実に脱落させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、ステアリングギアボックスまたはパワープラントに傾斜ガイド部を備えることにより、傾斜ガイド部でステアリングギアボックスを下方に案内するようにした。
これにより、ステアリングギアボックスを衝撃荷重でパワープラントやサブフレームの下方に確実に脱落させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る車両前部構造を示す斜視図である。
図2図1の車両前部構造を示す側面図である。
図3図1の車両前部構造からパワープラントを外した状態を示す平面図である。
図4図1の車両前部構造からパワープラントなどを外した状態を示す斜視図である。
図5図4の車両前部構造の要部を示す斜視図である。
図6図5の車両前部構造を示す分解斜視図である。
図7図3の7部拡大図である。
図8図6の8部拡大図である。
図9図2の9部拡大図である。
図10】本発明に係る上フォーク部を衝撃荷重で破断する例を説明する図である。
図11】本発明に係るステアリングギアボックスをサブフレームから切り離す例を説明する図である。
図12】本発明に係るステアリングギアボックスを下方に脱落させる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0021】
実施例に係る車両前部構造12について説明する。
図1図2に示すように、車両10は、車両10の前部を構成する車両前部構造12を備えている。
車両前部構造12は、車両10の前部に設けられた左右のサイドフレーム13,14と、左右のサイドフレーム13,14の後端部13a,14aに設けられたダッシュボード15と、左右のサイドフレーム13,14の前端部13b,14bに設けられたフロントバルクヘッド16と、左右のサイドフレーム13,14の前端部13b,14bに左右の連結部材17(図3も参照)を介して連結されたフロントバンパー19とを備えている。
【0022】
また、車両前部構造12は、左右のサイドフレーム13,14の下方に設けられたサブフレーム20と、サブフレーム20の前端部に設けられたステアリングギアボックス21と、ステアリングギアボックス21に連結されたステアリングホイール22と、サブフレーム20の前端部に設けられたサポート部23と、サブフレーム20の上方に設けられたパワープラント24とを備えている。
【0023】
図3図4に示すように、サブフレーム20は、一例として、アルミニウム合金で成形された鋳造部材である。
このサブフレーム20は、車両前後方向に延びる左右のサイドメンバ31,32と、左サイドメンバ31および右サイドメンバ32の各後端部31a,32aを連結するクロスメンバ33と、左サイドメンバ31および右サイドメンバ32の各前端部31b,32bに設けられた支持手段35とを含む。
【0024】
左サイドメンバ31の後端部31aは、「左サイドメンバ31のうち車両後方側の部位」である。また、右サイドメンバ32の後端部32aは、「右サイドメンバ32のうち車両後方側の部位」である。
このサブフレーム20は、左右のサイドメンバ31,32およびクロスメンバ33で平面視略コ字状に形成されている。
【0025】
左サイドメンバ31の前端部31bが左脚部41の下端部にボルト42で取り付けられている。左脚部41(図2参照)の上端部が左サイドフレーム13の中央部13cに取り付けられている。
これにより、左サイドメンバ31の前端部31bが左脚部41を介して左サイドフレーム13の中央部13cに連結されている。
【0026】
同様に、右サイドメンバ32の前端部32bが右脚部43の下端部にボルト44で取り付けられている。右脚部43の上端部が右サイドフレーム14の中央部14cに取り付けられている。
これにより、右サイドメンバ32の前端部32bが右脚部43を介して右サイドフレーム14の中央部14cに連結されている。
【0027】
また、左サイドメンバ31の後端部31aが左サイドフレーム13の後端部13aにボルト46で連結されている。同様に、右サイドメンバ32の後端部32aが右サイドフレーム14の後端部14aにボルト47で連結されている。
【0028】
図5図6に示すように、支持手段35は、左サイドメンバ31の前端部31bから車幅方向内側に延びる左支持部(左スティフナ)36と、右サイドメンバ32の前端部32bから車幅方向内側に延びる右支持部(右スティフナ)37とを含む。
【0029】
左支持部36にステアリングギアボックス21の左端部21aが上ボルト51および下ボルト52で取り付けられている。同様に、右支持部37にステアリングギアボックス21の右端部21bが上ボルト53および下ボルト54で取り付けられている。
すなわち、左サイドメンバ31および右サイドメンバ32の各前端部31b,32bにステアリングギアボックス21が支持手段35を介して支持されている。
【0030】
ここで、ステアリングギアボックス21は剛性の高い部材である。よって、ステアリングギアボックス21をサブフレーム20の前クロスメンバ33として兼用できる。
これにより、サブフレーム20から前クロスメンバを除去できるので車両10の軽量化を図ることができる。
【0031】
ステアリングギアボックス21は、ステアリングギア(図示せず)などを収容する円筒状のケースである。
ステアリングギアボックス21の左端部21aのうち、上部に上取付部21cが形成され、下部に下取付部21dが形成されている。上取付部21cに車両前後方向に延びる上貫通孔56が形成され、下取付部21dに車両前後方向に延びる下貫通孔57が形成されている。
上貫通孔56および下貫通孔57に上ボルト51および下ボルト52がそれぞれ貫通される。
【0032】
ステアリングギアボックス21の右端部21bのうち、上部に上取付部21eが形成され、下部に下取付部21fが形成されている。上取付部21eに車両前後方向に延びる上貫通孔58が形成され、下取付部21fに車両前後方向に延びる下貫通孔59が形成されている。
上貫通孔58および下貫通孔59に上ボルト53および下ボルト54がそれぞれ貫通される。
【0033】
このステアリングギアボックス21から連結シャフト61が車両後方に向けて延出されている。連結シャフト61の後端部にステアリングシャフト63が連結されている。
ステアリングシャフト63の後端部にステアリングホイール22(図2参照)が取り付けられている。
ステアリングギアボックス21の車幅方向略中央のうち車両前方側の部位に、電動モータなどのパワーアシスト機構64が設けられている。パワーアシスト機構64は、ステアリングホイール22で操行操作する際に操作力を補助する機構である。
【0034】
左支持部36および右支持部37にサポート部23が取り付けられている。
サポート部23は、左支持部36(荷重入力部84)に後端部66aがボルト71で取り付けられた左連結アーム66と、右支持部37(荷重入力部84)に後端部67aがボルト72で取り付けられた右連結アーム67と、左連結アーム66および右連結アーム67の各前端部66b,67bを連結する連結メンバ68とを有する。
【0035】
左連結アーム66は、ステアリングギアボックス21の左端部21aの上半部を回避するように後半部66cが上向き傾斜状に形成されている。
これにより、左連結アーム66の後半部66cが左端部21aの上半部を回避して左支持部36(荷重入力部84)に連結される。
また、右連結アーム67は、ステアリングギアボックス21の右端部21bの上半部を回避するように後半部67cが上向き傾斜状に形成されている。
これにより、右連結アーム67の後半部67cが右端部21bの上半部を回避して右支持部37(荷重入力部84)に連結される。
【0036】
左連結アーム66の中央部66dが左サイドメンバ31の前端部31bに左支持バー69(図9も参照)で連結されている。また、右連結アーム67の中央部67dが右サイドメンバ32の前端部32bに右支持バー69で連結されている。
【0037】
連結メンバ68は、ステアリングギアボックス21より車両前方側に配置された状態で車幅方向に(すなわち、ステアリングギアボックス21に沿って)延出されている。
よって、車両10の前方に衝撃荷重F1が入力した場合に、入力した衝撃荷重F1はステアリングギアボックス21に入力する前に連結メンバ68に入力する。
【0038】
連結メンバ68に入力した衝撃荷重F1の一部が、左連結アーム66を経て左支持部36(荷重入力部84)に伝えられる。さらに、連結メンバ68に入力した衝撃荷重F1の残りが、右連結アーム67を経て右支持部37(荷重入力部84)に伝えられる。
これにより、左支持部36(荷重入力部84やその近傍)および右支持部37(荷重入力部84やその近傍)を破断させることができる。
【0039】
図2図4に戻って、左連結アーム66の前端部66bが左前脚部74を介して左サイドフレーム13の前端部13bに連結されている。また、右連結アーム67の前端部67bが右前脚部75を介して右サイドフレーム14の前端部14bに連結されている。
すなわち、左連結アーム66および右連結アーム67の各後端部66a,67aにサブフレーム20が連結されている。さらに、左連結アーム66の前端部66bが左サイドフレーム13に連結され、右連結アーム67の前端部67bが右サイドフレーム14に連結されている。
よって、サブフレーム20がサポート部23などを介して左サイドフレーム13および右サイドフレーム14に連結されている。
【0040】
ここで、左支持部36および右支持部37は略左右対称に形成された部材である。そこで、以下、左支持部36および右支持部37の各構成部材に同じ符号を付し、右支持部37の説明を省略する。
【0041】
図7図8に示すように、左支持部36は、中空状の部材で、左サイドメンバ31の前端部31bから車幅方向内側に向けて延出されたアーム77と、アーム77の先端部77aに設けられたフォーク78とを有する。
【0042】
アーム77は、左サイドメンバ31の前端部31bに基部77bが一体に形成され、前端部31bから車幅方向内側に向けて延出されている。このアーム77は、断面略ロ字状に形成された中空の部材である。
【0043】
フォーク78は、アーム77の先端部77aから分岐された上フォーク部81および下フォーク部82を有する。このフォーク78は、上フォーク部81および下フォーク部82で二股のフォーク状に形成されている。
フォーク78を上フォーク部81および下フォーク部82に分岐することにより、上フォーク部81および下フォーク部82の断面形状がアーム77より小さく形成されている。
【0044】
上フォーク部81は、アーム77の先端部77aのうち上部77cに上基部81aが一体に形成され、上部77cから車幅方向内側に向けて延出されている。
上フォーク部81の上基部81aのうち上部に荷重入力部84が形成されている。荷重入力部84に車両前方から車両後方に向けてねじ孔85が形成されている。
【0045】
荷重入力部84のねじ孔85にボルト71が締結されることにより、サポート部23(左連結アーム66)の後端部66aが荷重入力部84に取り付けられている。また、左連結アーム66の前端部66bにサポート部23の連結メンバ68が連結されている。
これにより、連結メンバ68に車両前方から衝撃荷重F1が入力することにより、入力した衝撃荷重F1の一部が左連結アーム66を経て荷重入力部84に入力する。
すなわち、車両前方から入力した衝撃荷重F1を荷重入力部84に伝達可能にサポート部23が連結されている。
【0046】
また、上フォーク部81の上先端部81bに上ギアボックス取付部(ギアボックス取付部)87が形成されている。上ギアボックス取付部87に車両前方から車両後方に向けて上ねじ孔88が形成されている。
【0047】
図6に戻って、上ギアボックス取付部87の上ねじ孔88にステアリングギアボックス21(上取付部21c)の上貫通孔56が同軸上に配置され、上貫通孔56を貫通させたボルト51が上ねじ孔88に締結される。
これにより、上ギアボックス取付部87にステアリングギアボックス21の上取付部21cが取り付けられている(図7も参照)。
【0048】
図8に示すように、下フォーク部82は、アーム77の先端部77aのうち下部77dに下基部82aが一体に形成され、下部77dから車幅方向内側に向けて延出されている。
下フォーク部82の下先端部82bに下ギアボックス取付部(ギアボックス取付部)91が形成されている。下ギアボックス取付部91に車両前方から車両後方に向けて下ねじ孔92が形成されている。
【0049】
図6に再度戻って、下ギアボックス取付部91の下ねじ孔92にステアリングギアボックス21(下取付部21d)の下貫通孔57が同軸上に配置され、下貫通孔57を貫通させたボルト52が下ねじ孔92に締結される。
これにより、下ギアボックス取付部91にステアリングギアボックス21の下取付部21dが取り付けられている。
【0050】
すなわち、図7図8に示すように、左支持部36は、ステアリングギアボックス21が取り付けられる上ギアボックス取付部87および下ギアボックス取付部91と、衝撃荷重が入力する荷重入力部84とを有する。
上ギアボックス取付部87および下ギアボックス取付部91が、上下方向に延びる略鉛直線94上に配置され、左サイドメンバ31より車幅方向内側に配置されている。
また、荷重入力部84が、左サイドメンバ31より車幅方向内側に配置されている。
よって、荷重入力部84が左サイドメンバ31に対して車幅方向内側にオフセットされている(ずらされている)。これにより、荷重入力部84に入力した衝撃荷重を、左支持部36を破断させる荷重として効率よく利用することができる。
【0051】
さらに、荷重入力部84が上ギアボックス取付部87や下ギアボックス取付部91より車幅方向外側に設けられている。すなわち、上フォーク部81に荷重入力部84および上ギアボックス取付部87が設けられ、荷重入力部84が上ギアボックス取付部87より車幅方向外側に設けられている。
これにより、上フォーク部81(すなわち、荷重入力部84や荷重入力部84近傍)を破断した場合に、上ギアボックス取付部87がアーム77(左サイドメンバ31の前端部31b)から確実に切り離される。
【0052】
ここで、フォーク78が上フォーク部81および下フォーク部82の二股に分岐されることにより、上フォーク部81および下フォーク部82の断面形状が小さく形成されている。
よって、荷重入力部84に入力した衝撃荷重で上フォーク部81および下フォーク部82を好適に破断させることができる。
【0053】
図5図9に示すように、左支持部36および右支持部37にステアリングギアボックス21が支持された状態において、ステアリングギアボックス21がパワープラント24の車両前方側に配置されている。
【0054】
ところで、上フォーク部81は上基部81aから車両前方に張り出されている。同様に、下フォーク部82は下基部82aから車両前方に張り出されている。
上フォーク部81および下フォーク部82で半円弧状の収容凹部83が形成されている。この収容凹部83にステアリングギアボックス21の前部が収容されている。
【0055】
よって、ステアリングギアボックス21を左サイドメンバ31および右サイドメンバ32(各後端部31a,32a)に近づけることができる。
これにより、左サイドメンバ31および右サイドメンバ32をステアリングギアボックス21で効率よく補強することができるのでサブフレーム20の剛性をより高めることができる。
【0056】
図1に示すように、パワープラント24は、一例として、エンジン96およびトランスミッション97(図1参照)が一体に組み合わされ、左右のサイドフレーム13,14間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
横向きに配置されたパワープラント24が、左サイドフレーム13に左取付ブラケット(図示せず)を介して支持され、右サイドフレーム14に右取付ブラケット98を介して支持されている。
【0057】
図5図9に戻って、パワープラント24は、ステアリングギアボックス21に下前部24aが対向し、この下前部24aに傾斜ガイド部102を備えている。
傾斜ガイド部102は、パワープラント24の下前部24aのうち略中央に一体に設けられ、前端102aから後端102bに向けて下り勾配の傾斜状に形成されている。
【0058】
前端102aはステアリングギアボックス21の当接部21gに対して上方に設けられている。また、後端102bはステアリングギアボックス21の当接部21gに対して下方に設けられている。
ステアリングギアボックス21の当接部21gは、ステアリングギアボックス21が車両前方に移動した場合に傾斜ガイド部102に当接する部位である。
【0059】
パワープラント24の下前部24a(略中央)に傾斜ガイド部102を備えることにより、左支持部36および右支持部37が衝撃荷重で破断した後、サポート部23がステアリングギアボックス21に当接する。
よって、ステアリングギアボックス21が車両後方に移動し、ステアリングギアボックス21の略中央が傾斜ガイド部102に当接する。これにより、ステアリングギアボックス21が傾斜ガイド部102で下方に案内される。
ステアリングギアボックス21が下方に案内されることにより、ステアリングギアボックス21をパワープラント24やサブフレーム20の下方に脱落させることができる。
【0060】
つぎに、ステアリングギアボックス21を衝撃荷重F2で下方に落下させる例を図10図12に基づいて説明する。なお、左右側の構成は略左右対称に形成されているので、作用の理解を容易にするため、左側構成について説明して右側構成の説明を省略する。
図10(a)に示すように、車両10が前方衝突した場合に、サポート部23の連結メンバ68に車両前方側から衝撃荷重F2が入力する。連結メンバ68に衝撃荷重F2が入力することにより、衝撃荷重F2の一部が左連結アーム66を経て左支持部36(上フォーク部81)の荷重入力部84に衝撃荷重F3として入力する。
【0061】
図10(b)に示すように、上フォーク部81は下フォーク部82から分岐されているので、上フォーク部81の断面形状が小さく形成されている。さらに、荷重入力部84が左サイドメンバ31に対して車幅方向内側にオフセットされているので、荷重入力部84に入力した衝撃荷重F3を、上フォーク部81を破断させる荷重として効率よく利用できる。加えて、上フォーク部81は上基部81aがアーム77の先端部77aに片持ち支持されている。
【0062】
よって、荷重入力部84に衝撃荷重F3が入力することにより、上基部81a近傍(すなわち、荷重入力部84や荷重入力部84近傍)に亀裂105が発生して上基部81a近傍が破断する。
ここで、荷重入力部84が上ギアボックス取付部87より車幅方向外側に設けられている。これにより、上基部81a近傍が破断することにより、アーム77(左サイドメンバ31の前端部31b)から上ギアボックス取付部87が確実に切り離される。
【0063】
図11(a)に示すように、上基部81a近傍が破断した後、連結メンバ68に衝撃荷重F2が継続して入力する。サポート部23が車両後方に向けて矢印Aの如く移動することにより、サポート部23(左連結アーム66)がステアリングギアボックス21に当接する。
よって、ステアリングギアボックス21が左連結アーム66で車両後方に向けて押圧されることにより、ステアリングギアボックス21が車両後方に向けて矢印Bの如く移動する。
【0064】
このステアリングギアボックス21は上ギアボックス取付部87および下ギアボックス取付部91(図10(b)参照)に取り付けられている。
よって、ステアリングギアボックス21が車両後方に向けて移動することにより、左支持部36(下フォーク部82)の下ギアボックス取付部91に衝撃荷重F4(図11(b)参照)が入力する。
【0065】
図11(b)に示すように、下フォーク部82は上フォーク部81から分岐されているので、下フォーク部82の断面形状が小さく形成されている。さらに、下ギアボックス取付部91が左サイドメンバ31に対して車幅方向内側にオフセットされているので、下ギアボックス取付部91に入力した衝撃荷重を、下フォーク部82を破断させる荷重として効率よく利用できる。加えて、下フォーク部82は下基部82aがアーム77の先端部77aに片持ち支持されている。
【0066】
よって、下ギアボックス取付部91に衝撃荷重F4が入力することにより、下基部82a近傍に亀裂106が発生して下基部82a近傍が破断する。
これにより、ステアリングギアボックス21の左端部21a(図11(a)参照)が左支持部36から切り離される。
同様に、図11(a)に示すように、ステアリングギアボックス21の右端部21bが右支持部37から切り離されることにより、ステアリングギアボックス21がサブフレーム20から切り離される。
【0067】
図12に示すように、ステアリングギアボックス21がサブフレーム20から切り離された後、連結メンバ68に衝撃荷重F2が継続して入力する。よって、サポート部23が車両後方に向けて矢印Aの如く継続して移動する。
ここで、サポート部23がステアリングギアボックス21に上フォーク部81を介して連結されている。これにより、サポート部23が車両後方に向けて移動することにより、サポート部23とともにステアリングギアボックス21が車両後方に向けて矢印Bの如く移動する。
【0068】
ステアリングギアボックス21が車両後方に移動することにより、ステアリングギアボックス21の当接部21gがパワープラント24の傾斜ガイド部102に当接する。
当接部21gが傾斜ガイド部102に当接することにより、ステアリングギアボックス21が傾斜ガイド部102で車両後方に向けて斜め下方に矢印Cの如く案内される。これにより、ステアリングギアボックス21をパワープラント24やサブフレーム20の下方に脱落させることができる。
【0069】
ステアリングギアボックス21を脱落させることにより、ステアリングギアボックス21で衝撃荷重F2を支えないようにできる。よって、衝撃荷重F2をパワープラント24に効率よく伝えることができる。
これにより、パワープラント24の車両後方への移動量を確保して衝撃荷重を十分に吸収することができる。
【0070】
ここで、ステアリングギアボックス21をパワープラント24やサブフレーム20の下方に脱落させない場合を比較例として説明する。
すなわち、ステアリングギアボックス21をパワープラント24やサブフレーム20の下方に脱落させない場合、ステアリングギアボックス21の車両後方への移動がサブフレーム20で阻止されることが考えられる。
【0071】
よって、ステアリングギアボックス21で衝撃荷重F2を支えてしまい、衝撃荷重F2をパワープラント24に効率よく伝えることが難しい。
このため、ステアリングギアボックス21を下方に脱落させない場合には、パワープラント24の車両後方への移動量を確保し難く、衝撃荷重F2を十分に吸収することが難しい。
【0072】
なお、本発明に係る車両前部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、パワープラント24としてエンジン/トランスミッションユニットを例示したが、これに限らないで、電動モータなどの他の動力源をパワープラント24とすることも可能である。
【0073】
また、前記実施例では、傾斜ガイド部102をパワープラント24の下前部に一体に形成した例について説明したが、これに限らないで、ステアリングギアボックス21に傾斜ガイド部を一体に形成することも可能である。
あるいは、パワープラント24またはステアリングギアボックス21とは別部材で傾斜ガイド部を形成し、別部材の傾斜ガイド部をパワープラント24やステアリングギアボックス21に設けることにより同等の効果を得ることができる。
【0074】
さらに、前記実施例では、左サイドメンバ31および右サイドメンバ32の車両後方側の部位として後端部31a,32aを例示し、後端部31a,32aにクロスメンバ33を連結させたが、これに限らないで、後端部31a,32a以外の部位にクロスメンバ33を連結させることも可能である。
【0075】
また、前記実施例では、衝撃荷重F2で上フォーク部81および下フォーク部82を破断させた例について説明したが、これに限らないで、アーム77を破断させるように構成することも可能である。この構成においても前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0076】
さらに、前記実施例では、左右の支持部36,37を中空状の部材に形成した例について説明したが、これに限らないで、左右の支持部36,37を中実状の部材に形成することも可能である。
この場合、左右の支持部36,37に切欠などを形成することにより、切欠を起点にして好適に破断させることが可能である。
【0077】
また、前記実施例で示した車両、車両前部構造、左右のサイドフレーム、サブフレーム、ステアリングギアボックス、サポート部、パワープラント、左右のサイドメンバ、クロスメンバ、支持手段、左右の支持部、連結メンバ、荷重入力部、上下のギアボックス取付部および傾斜ガイド部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、サブフレームにステアリングギアボックスが設けられ、サブフレームの上方にパワープラントが設けられた車両前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10…車両、12…車両前部構造、13…左サイドフレーム、14…右サイドフレーム、20…サブフレーム、21…ステアリングギアボックス、23…サポート部、24…パワープラント、31…左サイドメンバ、31a…左サイドメンバの後端部(左サイドメンバ31のうち車両後方側の部位)、31b…左サイドメンバの前端部、32…右サイドメンバ、32a…右サイドメンバの後端部(右サイドメンバ32のうち車両後方側の部位)、32b…右サイドメンバの前端部、33…クロスメンバ、35…支持手段、36…左支持部、37…右支持部、68…連結メンバ、84…荷重入力部、87…上ギアボックス取付部(ギアボックス取付部)、91…下ギアボックス取付部(ギアボックス取付部)、102…傾斜ガイド部、F2,F3…衝撃荷重。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12