(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030006
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/524 20060101AFI20161114BHJP
G01S 7/288 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
G01S13/524
G01S7/288
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-45631(P2013-45631)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-173943(P2014-173943A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋史
(72)【発明者】
【氏名】西田 博行
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−092371(JP,A)
【文献】
特開2010−048761(JP,A)
【文献】
特開平05−341040(JP,A)
【文献】
特開2002−214330(JP,A)
【文献】
特表2002−520624(JP,A)
【文献】
特開平06−123772(JP,A)
【文献】
特開平06−066930(JP,A)
【文献】
特開平05−019046(JP,A)
【文献】
特開昭62−055583(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00444458(EP,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02412852(FR,A1)
【文献】
米国特許第03618088(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 13/524
G01S 7/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される送信信号を送信するとともに、前記送信信号の反射波を受信する空中線装置と、
CPIの間に、予め規定され相互に異なる間隔で配列されるn個のパルスからなるパルス群を複数含む前記送信信号を前記空中線装置へ送出し、前記空中線装置を介して受信した前記反射波に基づく受信信号を出力する送受信装置と、
前記送受信装置から出力される前記受信信号に対してMTI処理を行い、前記受信信号から、1番目からn番目のパルスを先頭とし、n個のパルスからなるパルスパターンを選択し、選択した前記パルスパターンのうちから相互に等しい前記パルスパターンごとに前記受信信号の周波数と振幅を算出する信号処理装置と、
を備えるレーダ装置。
【請求項2】
前記信号処理装置は、
算出された前記パルスパターンごとの前記周波数と前記振幅について前記周波数ごとに前記振幅を積算して目標の速度を検出する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記パルスパターンを構成するパルス間の時間間隔の合計は、各パルスパターンにおいて等しい請求項2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記パルス群はスタガ単位を構成する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置にはMTI(moving target indicator)処理とパルスドップラ処理を行うものがある。ここで、MTI処理はある時間間隔を開けて受信した信号の差分をとることにより速度を持たない固定成分を除去し、速度成分を抽出する処理である。MTIでは反射波の位相回転量が2πの整数倍となる場合に、目標が移動しているにもかかわらず速度成分を検知できない場合が生じる。これをブラインド速度という。従来のレーダ装置では、このブラインド速度による目標の誤消去を低減するために、パルス間の繰り返し周期を変更するスタガが行われている。
【0003】
また、パルスドップラ処理を行うレーダ装置では、複数のパルスを用いて移動目標のドップラ成分の抽出を行う。この所定のパルス数の繰り返しのパターンの間隔をCPI(Coherent Processing Interval)という。
【0004】
パルスドップラ処理を行うレーダでもMTIを行うことは可能であるが、通常パルスドップラの処理負荷を考慮してCPI内のパルス繰り返し周期は一定とし、パルス間で繰り返し周期を変更するパルス間スタガは行われないため、このCPIにおいては目標の移動速度がブラインド速度と一致した場合に目標を検出することができなくなる。こういったレーダ装置ではブラインド速度対処として、次のCPIにおいてはパルス繰り返し周波数を変更するグループスタガや次のスキャンにおいてパルス繰り返し周波数を変更するスキャン間スタガが行われてきた。
【0005】
しかし、高速移動目標に対処するレーダ装置や目標の検出機会が少ないレーダ装置においては、1CPI目標を検出できないことにより追尾精度が低下するなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−63507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、MTI処理におけるブラインド速度による移動目標の誤消去を最小限にしつつ高精度に目標の速度を検知できるレーダ装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本
実施形態に係るレーダ装置は、
入力される送信信号を送信するとともに、送信信号の反射波を受信する空中線装置と、CPI
の間に、予め規定され相互に異なる間隔で配列されるn個のパルスからなるパルス群を複数含む送信信号
を空中線装置へ送出し、空中線装置
を介して受信した反射波に基づく受信信号
を出力する送受信装置と、
送受信装置から出力される受信信号に対してMTI処理を行い、
受信信号から、1番目からn番目のパルスを先頭とし、n個のパルスからなるパルスパターンを選択し、選択したパルスパターンのうちから相互に等しいパルスパターンごとに受信信号の周波数と振幅を算出する信号処理装置と、を備え
る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態におけるスタガ単位の例を示す図である。
【
図4】信号処理装置が行ったFFTの結果の例を示す図である。
【
図5】信号処理装置が行った積算処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、レーダ装置の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のレーダ装置は、信号の送受信を行う空中線装置と、CPI内においてパルス間の時間間隔が異なる複数のパルスを有する送信信号を生成して空中線装置に送出し、空中線装置から入力した受信信号の受信処理を行う送受信装置と、受信信号に対してMTI処理を行い、CPIを構成するパルス内で繰り返し周期が同じもの同士を選択して受信信号の周波数と振幅を算出する信号処理装置と、備える。
【0012】
図1は、本実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のレーダ装置は、信号の送受信を行う空中線装置10と、送信信号を生成して空中線装置10に送出し、空中線装置10から入力した受信信号の受信処理を行う送受信装置20と、受信信号の信号処理を行う信号処理装置30と、を備える。
【0013】
空中線装置10は、例えば、反射板を用いるリフレクタ方式や複数のアンテナ素子をアレイ状に配置し、送信信号の位相を変化させることにより送信信号の送出方向を変化させるアレイアンテナ方式を用いることができる。
【0014】
送受信装置20は、CPI内においてパルス間の時間間隔が異なる複数のパルスを有する送信信号を生成及び受信を行う。
【0015】
ここで、本実施形態のレーダ装置にはMTI(moving target indicator)処理とパルスドップラ処理を行う。MTI処理はある時間間隔を開けて受信した信号の差分をとることにより速度を持たない固定成分を除去し、速度成分を抽出する処理である。
【0016】
このレーダ装置は、パルスドップラ処理を行う所定のパルス数を送信する。この所定のパルスの期間をCPI(Coherent Processing Interval)という。
【0017】
信号処理装置30は、演算装置であるCPU31と、記憶装置であるRAM32、及びROM33と、を備える。
【0018】
信号処理装置30は、受信信号に対してMTI処理を行い、CPIを構成するパルスパターンにおいて繰り返し周期が同じもの同士を選択して、例えばFFT(高速フーリエ変換)によってパルスパターンごとに受信信号の周波数と振幅を算出し、算出されたパルスパターンごとの周波数と振幅について周波数ごとに振幅を積算して目標の速度を検出する。
【0019】
図2は、本実施形態におけるCPI内のパルス間スタガの例を示す図である。
図2に示すように、送受信装置20は、CPI内のパルス間隔を互いに異なった時間間隔にして送信信号を生成する。
【0020】
図2には、スタガ単位のパルス数が3個の場合を示す。第1のパルスと次の第2のパルスの時間間隔をA、第2のパルスと次の第3のパルスの時間間隔をB、第3のパルスと後続するパルスとの時間間隔をCとし、以降はまたA、B、Cの繰り返しとする。このA、B、Cの繰り返し周期の単位をスタガ単位と呼ぶ。
【0021】
時間間隔Aと時間間隔Bと時間間隔Cとを互いに異ならせることにより、目標の移動速度とブラインド速度とが一致することを最小限にすることが可能となる。
【0022】
スタガ単位を構成する各パルスの時間間隔の順序は後続するスタガ単位を構成する各パルスの時間間隔の順序と等しい。すなわち、スタガ単位において、時間間隔Aと時間間隔Bと時間間隔Cとによってパルスが生成される場合、後続するスタガ単位も時間間隔Aと時間間隔Bと時間間隔Cとによってパルスが生成される。
【0023】
図3は、パルスパターンを示す図である。
図3に示すように、パルスパターンはスタガ単位内のパルス数がn個(nは整数)の時、連続するn個のパルスが選択され、n個のパルスパターンが定義される。
【0024】
具体的には、スタガ単位内のパルス数が3個である場合、パルスパターンはABC(以下、Xという。)、BCA(以下、Yという。)、CAB(以下、Zという。)の3パターンである。CPIにn+1個のスタガ単位が含まれる場合、各パルスパターンはn個定義できる。
【0025】
各パルスパターン、この例においてはX、Y、及びZの時間間隔及びその合計はそれぞれ等しい。
【0026】
信号処理装置30は、受信信号についてパルスパターンごとにFFTを行う。すなわち、Xについて、第1のX(X1)から第nのXを用いてFFTを行い、Y、Zも同様にn個を用いてFFTを行う。
【0027】
図4は、信号処理装置30が行ったFFTの結果の例を示す図である。
図4に示すように、信号処理装置30は受信信号についてパルスパターンX、Y、Zごとに周波数ごとの振幅を算出する。
【0028】
図5は、信号処理装置30が行った積算処理を示す図である。
図5に示すように、信号処理装置30は、各パルスパターンのFFTの結果について周波数ごとに振幅を積算することにより、目標の移動速度を判定する。
【0029】
図6は、信号処理装置30の動作を示す図である。
図6に示すように、ステップ601において、信号処理装置30は受信信号を送受信装置20から入力する。
【0030】
ステップ602において、信号処理装置30は、受信信号をパルスごとにRAM32に格納する。
【0031】
ステップ603において、信号処理装置30は、CPI分の受信信号を格納したかを判定する。信号処理装置30は、CPI分の受信信号を格納したと判定した場合、ステップ604に進み、格納していないと判定した場合、ステップ601に戻る。
【0032】
ステップ604において、信号処理装置30はステップ608までの処理をn回繰り返す。すなわち、信号処理装置30は、ステップ605においてX1についてMTI処理を行い、ステップ606においてY1についてMTI処理を行い、ステップ607においてZ1についてMTI処理を行う。この各処理をXn、Yn、Znまで行う。
【0033】
ステップ609において、信号処理装置30はMTI処理後のXについてX1からXnを用いてFFTにより周波数ごとの振幅を算出する。
【0034】
ステップ610において、信号処理装置30はMTI処理後のYについてY1からYnを用いてFFTにより周波数ごとの振幅を算出する。
【0035】
ステップ611において、信号処理装置30はMTI処理後のZについてZ1からZnを用いてFFTにより周波数ごとの振幅を算出する。
【0036】
ステップ612において、信号処理装置30は、パルスパターンごとに算出された振幅を周波数ごとに積算する。すなわち、信号処理装置30はXについてのFFTの結果と、YについてのFFTの結果と、ZについてのFFTの結果とを積算する。
【0037】
ステップ613において、信号処理装置30は積算結果から目標の移動速度を検出する。
【0038】
以上のべたように、本実施形態のレーダ装置は、信号の送受信を行う空中線装置10と、CPI内においてパルス間の時間間隔が異なる複数のパルスを有する送信信号を生成して空中線装置10に送出し、空中線装置10から入力した受信信号の受信処理を行う送受信装置20と、受信信号に対してMTI処理を行い、CPIを構成するパルスパターンが同じもの同士を選択してパルスパターンごとに受信信号の周波数と振幅を算出し、算出されたパルスパターンごとの周波数と振幅について周波数ごとに振幅を積算して目標の速度を検出する信号処理装置30と、を備える。
【0039】
従って、CPI内においてスタガを行っているため、MTI処理におけるブラインド速度による移動目標の誤消去を最小限にするとともに高精度に目標の速度を検知できるという効果がある。
【0040】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10:アンテナ装置
20:送受信装置
30:信号処理装置