(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記簡略度設定部は、前記表示画面のスクロール速度が大きくなるほど、隣接する2つの前記表示領域の境界線を、より前記簡略度が大きい表示領域の面積を大きくする方向に移動する、
請求項1に記載の地図描画装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<A.前提技術>
図17は、LOD技術を用いた前提技術の地図描画装置の表示を示している。地図の上方から斜め下方に地物を視認する様を3D地図で表現する場合、表示画面の上側ほど視点距離が遠くなり、描画オブジェクトは小さく表示される。そこで、表示画面の下半分の描画オブジェクトを詳細に表示する一方、表示画面の上半分の描画オブジェクトを簡略的に表示すれば、簡略的に表示する分だけ、描画処理の負荷を軽くすることが出来る。
図17では、表示画面の上側では5つの建物(描画オブジェクト)を1つに統合しており、こうして描画オブジェクトの数を減らすことができ、描画処理の負荷が軽くなる。
【0013】
描画オブジェクトを詳細に表示する領域を詳細領域、簡略的に表示する領域を簡略領域とすると、前提技術によれば、表示画面上において、詳細領域と簡略領域の境界線の位置は固定されており、表示画面のスクロールを行う場合でも同様であった。
図18は、前提技術による表示画面の詳細領域、簡略領域の設定例を示している。スクロールなし(
図18(a))、右方向に速度v1でスクロール(
図18(b))、右方向に速度v2(v2>v1)でスクロール(
図18(c))する場合のいずれも、各領域の位置及び大きさに変化はない。
【0014】
しかしながら、右方向にスクロールすることで表示画面の左側部分に新しく表示される描画オブジェクトを詳細に表示すると、視認性に欠けるという問題があった。
【0015】
<B.実施の形態1>
前提技術の問題点に鑑み、本発明では、スクロールによって新たに表示される描画オブジェクトを簡略的に表示することにより(
図1)、スクロール時の視認性の向上を図る。
図1はその一例である。例えば、スクロールが無い場合は表示画面の全面において描画オブジェクトを詳細に表示する(
図1(a))。しかし、右方向に速度v1でスクロールがなされると、表示画面の左側部分において描画オブジェクトを簡略的に表示する(
図1(b))。さらに、右方向のスクロール速度がv2(v2>v1)まで増大すると、描画オブジェクトを簡略的に表示する領域を拡げる(
図1(c))。
【0016】
<B−1.構成>
図2は、本発明の地図描画装置の一例であるカーナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。カーナビゲーション装置10は、操作入力部1、制御部2、データ格納部3、状態監視部4、簡略度設定部5、描画オブジェクト生成部6、画像合成部7、および表示部8を備えている。
【0017】
操作入力部1は、カーナビゲーション装置10の入力インタフェースであり、ユーザ操作を受け付ける。操作入力部1は、例えば機械的又は電子的なスイッチにより構成され、カーナビゲーション装置10と別筐体のリモコンによって構成されていても良い。操作入力部1が受け付けるユーザ操作には、地図画面のスクロール情報(スクロール方向、スクロール速度、スクロール量)や、地図画面の拡大又は縮尺操作などがある。
【0018】
状態監視部4は、装置の状態を示す状態情報を格納している。装置の状態には、カーナビゲーション装置10のCPUリソース、GPUリソースの他、カーナビゲーション装置10の動作モードが含まれる。動作モードには、通常モードと通常モードより消費電力が少ない省電力モードがあり、いずれのモードで動作するかは、例えば所定の条件に従い制御部2により決定される。あるいは、ユーザが操作入力部1からいずれかの動作モードを入力して決定しても良い。
【0019】
データ格納部3は、地図を表現する描画オブジェクトのデータ(描画オブジェクトデータ)を格納しており、ハードディスク(Hard Disk Drive)やメモリ等の記憶媒体により構成される。あるいは、カーナビゲーション装置10の外部のサーバから無線通信によって随時描画オブジェクトデータを取得しても良い。ここで描画オブジェクトとは、住宅や施設など地図上の各地物を表現するポリゴンのことである。
【0020】
制御部2は、カーナビゲーション装置10の各構成要素を制御する。特に、制御部2は状態監視部4の状態情報を取得し、これに基づき簡略度設定部5を制御する。
【0021】
簡略度設定部5は、制御部2の指示に基づき表示画面を複数の領域に分け、当該領域ごとに描画オブジェクトの簡略度を設定する。したがって、状態情報が変化すれば、それに応じて描画オブジェクトの分布も変化する。本明細書において、簡略度とは簡略化の度合いを示し、単位面積あたりの描画オブジェクトを描画するのに必要な描画処理量として定義される。簡略化の一例は、隣接する描画オブジェクトを一つの描画オブジェクトに統合することである。簡略度が大きくなるほど、より広範囲の描画オブジェクトを統合する。他の例は、一つの描画オブジェクトの頂点数を減らすことである。簡略度が大きくなるほど、描画オブジェクトを少ない頂点数で表現する。また別の例は、隣接する描画オブジェクトの表示色を統一することである。簡略度が大きくなるほど、より広範囲の描画オブジェクトを同一色で表現する。
【0022】
描画オブジェクト生成部6は、制御部2の指示を受けてデータ格納部3から描画オブジェクトデータを取得し、さらに簡略度設定部5から当該描画オブジェクトの簡略度を取得する。描画オブジェクト生成部6は、簡略度別に描画オブジェクトの画像生成を行う詳細描画オブジェクト生成部61、中間描画オブジェクト生成部62、簡略描画オブジェクト生成部63を備えている。ここでは、表示画面に簡略度が0,1,2である3つの領域を設定する場合の例を示している。詳細描画オブジェクト生成部61は簡略度0の描画オブジェクトからなる描画オブジェクト画像を生成し、以下同様に、中間描画オブジェクト生成部62は簡略度1の描画オブジェクト画像を、簡略描画オブジェクト生成部63は簡略度2の描画オブジェクトを、それぞれ生成する。具体的な生成内容については、
図4で後述する。
【0023】
画像合成部7は、描画オブジェクト生成部6で簡略度毎に生成した描画オブジェクト画像を取得し、これらを合成して作成した表示画像を表示部8に出力する。
【0024】
表示部8は、液晶ディスプレイなどのモニタであり、画像合成部7で合成した画像が表示される。操作入力部1をタッチパネルで構成する場合、操作入力部1と表示部8は一体として構成される。
【0025】
なお、制御部2、簡略度設定部5、描画オブジェクト生成部6、画像合成部7は、RAM(Random Access Memory)などのメモリに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)により実現する。また、状態監視部4は、RAM(Random Access Memory)などのメモリにより実現する。
【0026】
<B−2.表示動作>
次に、カーナビゲーション装置10の画像表示動作を
図3のフローチャートに沿って説明する。まず、カーナビゲーション装置10に電源が投入されると、制御部2は、操作入力部1がユーザのスクロール操作を検知したか否かを判断する(ステップS1)。スクロール操作を検知しない場合(ステップS1でNo)は検知するまで待機する。スクロール操作が操作入力部1に入力されると(ステップS1でYes)、方向や速度などのスクロールに関する情報が操作入力部1から制御部2に送られる。制御部2は、スクロール方向及びスクロール速度のいずれかに変化があるか否かを判断する(ステップS2)。ここでは、その変化が所定値以上である場合に変化したと判断し、初めてスクロール操作を検知した場合には、前回のスクロール速度を0として変化を計算する。スクロール方向及びスクロール速度のいずれかに変化がなければ(ステップS2でNo)、ステップS1に戻る。
【0027】
スクロール方向及びスクロール速度のいずれかに変化があれば(ステップS2でYes)、制御部2の指示に従い簡略度設定部5が描画オブジェクトの簡略度を設定する(ステップS3)。
図4は、簡略化の一例として、隣接する描画オブジェクトの統合処理により簡略化を行う場合の描画オブジェクト生成部6の処理内容を、簡略度別に示している。簡略度が0の場合、統合処理は行わない。すなわち、描画オブジェクトは何ら近接する描画オブジェクトと簡略化処理を行わず、描画オブジェクトデータに従って生成される。簡略度が1の場合、近接する建物(描画オブジェクト)を統合する。簡略度が2の場合、簡略度が1の場合よりも広範囲の建物(描画オブジェクト)を統合する。簡略度が3の場合、同一区画の建物(描画オブジェクト)を全て統合する。このように、描画オブジェクト生成部6は、簡略度が大きくなるほど統合処理を行う描画オブジェクトの範囲を広くする。
【0028】
図4には4つの簡略度(簡略度0〜3)を示しているが、簡略度の数、すなわち表示画面の区分数はこれに限定しない。
図1(b)、(c)は、表示画面を簡略度が異なる2つの領域に分けた場合を示している。
図1(b)、(c)では、表示画面が左側の簡略領域(簡略度2)と、右側の詳細領域(簡略度0)に分けられている。このように、簡略度設定部5は、表示画面の左端から右端にかけて、簡略度が段階的に大きくなるように設定する。
【0029】
図3に戻って、次に、描画オブジェクト生成部6が簡略度別に描画オブジェクトの画像を生成する(ステップS4)。生成した簡略度別の画像は、画像合成部で1枚の画像に合成され(ステップS5)、表示部8に出力される(ステップS6)。
【0030】
次に、制御部2は描画プログラムが終了か否かを判断し(ステップS7)、プログラムが終了でなければステップS1に戻り、プログラムが終了であれば処理を終了する。
【0031】
<B−3.簡略度設定>
操作入力部1がスクロール操作を検知すると、スクロール方向、スクロール速度、スクロール量を含むスクロール情報が、制御部2を介して簡略度設定部5に送られる。簡略度設定部5はスクロール情報に基づき、描画オブジェクトの簡略度を設定する。より具体的には、スクロールによって新たに表示される描画オブジェクトの簡略度を、それ以外の描画オブジェクトの簡略度よりも大きく設定する。
【0032】
図1は、簡略度設定部5における簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない場合は、表示画面の全領域を詳細領域に設定する(
図1(a))。右方向のスクロール操作を検知すると、表示画面の左端の領域を簡略領域と設定する(
図1(b))。簡略領域と詳細領域の境界線は、表示画面の上下方向に伸びており、スクロール速度が大きくなるほど簡略領域を大きくする方向へ移動する(
図1(c))。このように、右方向のスクロール操作によって新しく表示される画像の左端を簡略領域と設定し、描画オブジェクトを簡略的に描画することにより、スクロール時の視認性が向上する。また、スクロール速度が大きくなるにつれて簡略領域の幅を広げることにより、スクロール速度が大きくなっても視認性を確保することができる。
【0033】
図1では、表示画面を簡略領域と詳細領域の2つに区分したが、簡略度別の表示画面の区分数はこれに限定しない。
図5では、表示画面を右方向にスクロールする際に、表示画面の左端から順に、簡略領域、中間領域、詳細領域と3つの領域に区分する例を示している。区分数を増やすことにより、簡略度が表示画面の左端から右端にかけて徐々に変化していくので、ユーザに違和感を与えることなく画像の簡略化を行うことができる。
【0034】
このように簡略度設定部5は、表示画面の一端から他端にかけて、簡略度が段階的に大きくなるように設定する。
図5では、表示画面の全体に対して、スクロール方向に基づき簡略度の設定を行っているが、表示画面内の少なくとも一部の領域に対して上記の設定を行えばよい。
【0035】
一般的にLODでは、表示画面の上側ほど視点距離が大きくなり、描画オブジェクトは小さく表示される。表示画面の下側は視点距離が小さく、描画オブジェクトが大きく表示されるため、簡略的に表示すると、実際の見え方に差異が生じてしまう。そこで、スクロール方向に応じた簡略度設定を行う場合にも、表示画面の下側は簡略度を低く固定することが望ましい。
【0036】
図6は、上記の趣旨による簡略度設定の例を示している。
図6では、右方向にスクロール操作がある場合に、表示画面の下側と右端を詳細領域とし、残りの部分を簡略領域と設定している。このように設定すれば、右方向のスクロール操作によって新しく表示される画像の左端の描画オブジェクトを簡略的に描画すると共に、表示画面の下側において、視点距離が近い描画オブジェクトを詳細に描画することによって、実際の見え方を殆ど変えることなく描画負荷を軽くすることができる。
【0037】
図7は、
図6と同様の趣旨による簡略度設定を、3つの領域に区分して行った例を示している。すなわち、表示画面の左上を簡略領域、表示画面の右上を中間領域、表示画面の下側を詳細領域と設定する。
【0038】
図8〜13は、スクロール操作がない状態で表示画面の上側を簡略表示又は中間表示とし、表示画面の下側を詳細表示とする場合に、スクロール方向に応じて各領域の範囲を変化させる例を示している。
【0039】
図8は、右方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の簡略領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図8(a))。簡略領域の表示画面上端からの幅をb1とする。操作入力部1が右方向のスクロール(速度v1)を検知すると、表示画面の左端から水平方向に所定幅a1の領域も簡略領域とし(
図8(b))、簡略領域はL字形になる。スクロール速度が大きくなるにつれて(v1→v2)、表示画面の左端からの幅を大きくしていく(a1→a2、
図8(c))。
【0040】
あるいは、簡略領域の表示画面の左端からの幅a1に最大値を設け、最大値に達した後もスクロール速度が大きくなる場合は(v1→v2)、簡略領域の表示画面上端からの幅を大きくしても良い(b1→b2、
図8(d))。
【0041】
図9は、左方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の簡略領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図9(a))。簡略領域の表示画面上端からの幅をb1とする。操作入力部1が左方向のスクロール(速度v1)を検知すると、表示画面の右端から所定幅の領域も簡略領域とし(
図9(b))、簡略領域はL字形になる。スクロール速度が大きくなるにつれて(v1→v2)、表示画面の右端からの幅を大きくしていく(a1→a2、
図9(c))。
【0042】
あるいは、簡略領域の表示画面の右端からの幅a1に最大値を設け、最大値に達した後もスクロール速度が大きくなる場合は(v1→v2)、簡略領域の画像上端からの幅を大きくしても良い(b1→b2、
図9(d))。
【0043】
図10は、右上方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の簡略領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図10(a))。操作入力部1が右上方向のスクロールを検知すると、簡略度設定部5は簡略領域と詳細領域の境界線の左側部分を下方向に傾ける(
図10(b))。また、スクロール速度が大きくなるにつれて(v1→v2)、前記境界線の傾きをさらに大きくし、画像左下の領域をさらに広く簡略領域と設定する(
図10(c))。
【0044】
図11は、右下方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の中間領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図11(a))。操作入力部1が右下方向のスクロールを検知すると、簡略度設定部5は両領域の境界線の左側部分を下方向に傾ける(
図11(b))。また、スクロール速度が大きくなるにつれて、前記境界線を下方向へ移動し、さらに左上から簡略領域を伸張させることで、画像左上の領域の簡略度をより大きくする(
図11(c))。なお、
図11(c)の状態で詳細領域は固定とし、さらにスクロール速度が大きくなる場合は、簡略領域と中間領域の境界線を表示画面の下方向に移動することによって、描画負荷を軽減しても良い。LOD表示では表示画面の下側ほど視点距離が近い描画オブジェクトが表示されるので、
図11(c)のように表示画面の下側で詳細領域を固定することで、視点距離が近い描画オブジェクトを詳細に表示し、違和感無く表示することが可能である。
【0045】
図12は、下方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の簡略領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図12(a))。操作入力部1が下方向のスクロール(速度v1)を検知すると、簡略度設定部5は両領域の境界線を下方向に移動し(
図12(b))、簡略領域の面積を大きくする。これにより、下方向のスクロールによって新しい画像が表示される表示画面の上側において、スクロール前よりも広範囲に簡略領域が設定され、視認性が向上する。また、下方向のスクロール速度がv2に増大すると、前記境界線はさらに下方向に移動する(
図12(c))。
【0046】
図13は、上方向にスクロール操作が行われる場合の簡略度の設定例を示している。スクロール操作がない状態で、表示画面は上側の簡略領域と下側の詳細領域とに二分されている(
図13(a))。操作入力部1が上方向のスクロール(速度v1)を検知すると、表示画面の下側から簡略領域を伸張させる(
図13(b))。スクロール速度が大きくなるほど、当該簡略領域の伸張幅は大きくなる。より速い速度v2で上方向にスクロールする場合には、詳細領域と下側の簡略領域との間の境界線は、速度v1でスクロールする際と比べて、上方向に移動する(
図13(c))。
【0047】
図8〜13では表示画面の上下、左右、斜めなど直線方向のスクロール例を考えたが、本発明は表示画像を回転させる場合、すなわち回転方向のスクロールにも適用可能である。すなわち、回転しても表示画面内に留まる中心の領域を詳細領域とし、回転によって一時的にでも表示画面から外れる周辺の領域を簡略領域とする(
図14)。このように、回転によって新しい画像が表示される表示領域を簡略領域とすることで、表示画面を回転させる際の視認性が向上する。
【0048】
以上の説明では、簡略度が異なる2又は3の領域を表示画面に設定し、領域の境界線を表示画面のスクロールに基づき移動する方法について述べた。このように、表示画面を有限個の領域に区分して異なる簡略度を割り当てる場合、簡略度の変化は
図15に示すように、例えば表示画像の底部から上部にかけて段階的なものとなる。ところで、上述したように、表示画面の区分数は
図5の3つに限らず、より多くても良い。区分数を限りなく増やしていけば、
図15に示す簡略度のステップ幅は限りなく小さくなり、
図16に示すように簡略度は連続的な変化をしているとみなすことができる。
【0049】
この場合、簡略度設定部5は、表示画面を複数の領域に区分して簡略度を割り当てることに代えて、簡略度の関数f(x,y,v,Ds)を規定する。関数fは、xy座標で規定される表示画面上の位置に対してスクロール速度v、スクロール方向Dsをパラメータとする。簡略度設定部5は、スクロール速度vが大きくなるにつれて、簡略度f(x、y)が大きくなるように関数fを設定する。これにより、スクロール時の視認性が向上する。
【0050】
<B−4.変形例>
以上の説明では、本発明の地図描画装置をカーナビゲーション装置に適用した例を説明したが、本発明の地図描画装置は、車両に搭載可能な、PND(Portable Navigation Device)、及び、携帯端末(例えば携帯電話、スマートフォン、及びタブレットなど)、並びにサーバなどを適宜に組み合せてシステムとして構築されるナビゲーション装置にも適用することができる。この場合、以上で説明したカーナビゲーション装置10の各機能あるいは各構成要素は、前記システムを構築する各機器に分散して配置される。
【0051】
また、本発明は3D表示における描画オブジェクトの簡略化について説明したが、2D地図を上方からの視点で表現したバードビューに対しても本発明を適用可能である。この場合、例えば2Dの描画オブジェクトを統合したり、頂点数を削減したり、表示色を統一したりすることによって簡略化が可能である。
【0052】
<B−5.効果>
本発明の地図描画装置は、描画オブジェクトデータから描画オブジェクトを生成して表示部8に出力する地図描画装置であって、表示部8の表示画面の少なくとも一部の領域に、当該領域の一端から他端にかけて、表示の簡略化を示す簡略度が連続的又は不連続的に変化するように簡略度を設定する簡略度設定部5と、描画オブジェクトデータから表示画面上の表示位置に応じて簡略化した描画オブジェクトを生成し、表示部8に出力する描画オブジェクト生成部6と、を備え、簡略度設定部5は、表示画面のスクロール方向に基づき簡略度を変更する。したがって、スクロールによって新たに表示される画像では描画オブジェクトが簡略的に描画されることにより、スクロール時の視認性が向上する。
【0053】
また、簡略度設定部5は、表示画面上の少なくとも一部の領域に、描画オブジェクトが所定の簡略度毎に割り当てられる複数の表示領域を設定し、表示画面がスクロールされた場合に、表示画面のスクロール方向と逆側の端部の簡略度が、スクロールしない場合と比べて大きくなるように複数の表示領域の面積比率を変更する。したがって、スクロールによって新たに表示される画像では描画オブジェクトが簡略的に描画されることにより、スクロール時の視認性が向上する。
【0054】
また、簡略度設定部5は、表示画面のスクロール速度が大きくなるほど、隣接する2つの表示領域の境界線をより簡略度が大きい表示領域の面積を大きくする方向に移動する。スクロール速度が大きくなるほど、スクロールによって新しく表示される画像の面積が大きくなるが、それに追従して前記境界線を移動することにより、スクロール時の視認性が向上する。
【0055】
また、簡略度設定部5は、最も簡略度が小さい表示領域の面積を一定値以上に保つ。LOD表示では表示画面の下側ほど視点距離が近い描画オブジェクトが表示されるので、例えば表示画面の底辺から所定幅の領域の簡略度を最も小さくし、スクロールの有無によらず当該領域の簡略度を固定することにより、視点距離が近い描画オブジェクトを詳細に表示し、違和感無く表示することが可能である。
【0056】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。