特許第6030023号(P6030023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030023
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20161114BHJP
   E06B 7/082 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B7/082
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-110175(P2013-110175)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-227773(P2014-227773A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】矢内 貴之
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 肇
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−129592(JP,U)
【文献】 特開平6−93772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00− 7/36
E06B 5/00− 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、障子と、カバーと、外部枠体とを備え、枠体は、上枠と縦枠を有していて、上枠と縦枠は、室外側に突出する持出部を有しており、障子は、枠体の持出部に上下動自在に納めてあり、カバーは、上枠及び縦枠に取り付けてあって、それぞれの持出部の外周側面と室外側面を覆っていて、カバーと持出部の間に空間部を形成してあり、カバーの室外側に外部枠体を取り付けてあることを特徴とするドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓を有し換気を行うことができるドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、上げ下げ窓を設けたドアがあり、ドアを閉めたままの状態で、窓を開けて換気を行うことができるものであった。このようにドアに上げ下げ窓を設ける場合、ドアの本体は二枚の障子(外障子と内障子)を納めるだけの見込厚さがないので、ドアの本体に室外側に突出する持出部を形成してあり、外障子がこの持出部に上下動自在に納めてあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明においては、火災時において、突出した持出部が炎にさらされやすく、この持出部が溶け落ちると、外障子が脱落して室内外が連通してしまうことが問題であった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、窓を有するものであって、火災時において障子が脱落することのないドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、枠体と、障子と、カバーと、外部枠体とを備え、枠体は、上枠と縦枠を有していて、上枠と縦枠は、室外側に突出する持出部を有しており、障子は、枠体の持出部に上下動自在に納めてあり、カバーは、上枠及び縦枠に取り付けてあって、それぞれの持出部の外周側面と室外側面を覆っていて、カバーと持出部の間に空間部を形成してあり、カバーの室外側に外部枠体を取り付けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、室外側に突出する持出部の外周側面と室外側面がカバーに覆われているので、持出部が直接炎にさらされることはない。また、カバーと持出部の間に空間部を形成してあって、炎の熱が持出部に伝わりにくい。さらに、外部枠体がカバーの室外側に取り付けてあるので、より炎の熱が持出部に伝わりにくい。これらにより、火災時において持出部が溶け落ちることを防いでおり、障子が脱落して室内外が連通してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ドアの上枠部分の縦断面図である。
図2】ドアの縦枠部分の横断面図である。
図3】ドアの縦断面図である。
図4】ドアの横断面図である。
図5】(a)はドアの室外側正面図(網戸枠体は図示省略)、(b)はドアの室内側正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のドアの実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、左右方向とは、ドアを室外側から見た場合(図5(a))の左右方向を示す。このドアは、主に勝手口などに設置するためのものであり、図3図5に示すように、上枠11と、下枠12と、左右の縦枠13とを四周枠組みして枠体1を構成し、その内周側に、外障子2a及び内障子2bを嵌め込んである。左側が戸先側、右側が吊元側となっており、右側の縦枠13が、丁番10によって躯体に取り付けてある。丁番10は、縦枠13の上下方向中央と、その上下の3箇所に、等間隔で配置してある。そして外障子2a及び内障子2bは、何れも上框21a,21bと、下框22a,22bと、左右の縦框23a,23bとを有し、上框21a,21b及び下框22a,22bの左右端に縦框23a,23bを取り付けて四周框組みしてあって、その内周側に、ガラスパネル24a,24bを納めたものである。閉鎖時において、外障子2aは上側、内障子2bは下側となる。そして、内障子2bの上框21bの上側にクレセント錠20を設けてあり、閉鎖時に施錠可能となっている。なお、各枠及び各框は、何れも室外側のアルミ部材と室内側の樹脂部材からなる。
【0010】
より詳しくは、図2に示すように、左右の縦枠13の内周側端部の室外側には、室外側に延びる外周側面13bと外周側面13bの室外側端部から内周側に延びる室外側面13cからなる持出部13aを形成してあり、この持出部13aにより、縦枠13の内周側端部の見込幅が広くなっている。そして、縦枠13(及び持出部13a)の内周側には、上下に延びる2本のガイド溝14a,14bが並んで形成してある。ガイド溝14a,14bは断面略コ字形で、室外側のガイド溝14aは持出部13a部分に形成してある。そして室外側のガイド溝14aには外障子2aの左右端(縦框23a)が納まり、室内側のガイド溝14bには内障子2bの左右端(縦框23b)が納まっていて、外障子2a及び内障子2bは上下動自在となっている。なお、この外障子2aと内障子2bはワイヤ30により連結されていて連動するようになっており、一方の障子を動かすと、他方の障子が反対方向に同距離だけ動く。また、図1に示すように、上枠11の内周側(下側)端部の室外側にも、縦枠13と同様に外周側面11bと室外側面11cからなる持出部11aを形成してあり、外障子2aの閉鎖状態において、外障子2aの上端(上框21a)が納まる。さらに、下枠12の内周側(上側)端部の室外側には、室外側に延びる延出片12aを形成してある。
【0011】
そして、図1及び図2に示すように、上枠11及び縦枠13に形成した持出部11a,13aには、カバー5を取り付けてある。上枠11に取り付けるカバー5は、見込面51と、見込面51の室外側端から内周側(下側)に延びる見付面52を有している。見込面51の室内側端には、室外側向きに開口する略コ字形の係合部53を形成してあり、見付面52の下端には室内側に向けて延びる当接片54を形成してある。さらに見付面52の下端には室外側下方に向けて延びる傾斜片55を形成してある。上枠11には、持出部11aの外周側面11bに隣接して溝状の被係合部11dを形成してあり、カバー5の係合部53を被係合部11dに嵌め込み、係合部53を外周側面11bにネジ止めして固定してある。この際、当接片54の先端は持出部11aの室外側面11cに当接している。また、係合部53は、上枠11の室外側面の下端部及び持出部11aの外周側面11bの室内側端部(持出部11aの根元部分)を覆っている。このように上枠11に取り付けられたカバー5は、上枠11の持出部11aの外周側面11bと室外側面11cを覆うものであり、カバー5の見込面51と持出部11aの外周側面11b及びカバー5の見付面52と持出部11aの室外側面11cの間には、空間部5aが形成されている。そして、カバー5の見込面51の内周側面(下面)には、加熱発泡材4を取り付けてある。この加熱発泡材4は、加熱されることにより発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張するものでる。また、縦枠13に取り付けるカバー5も、見込面51と、見込面51の室外側端から内周側に延びる見付面52を有している。見込面51の室内側端には、室内側向きに突出する略L字形の係合部53を形成してあり、見付面52の内周側端には室内側に向けて延びる当接片54を形成してある。さらに見込面51の内周側には中空部56を形成してある。縦枠13には、持出部13aの外周側面13bに隣接して溝状の被係合部13dを形成してあり、カバー5の係合部53を被係合部13dに嵌め込み、中空部56の内周側壁面を外周側面13bにネジ止めして固定してある。この際、当接片54の先端は持出部13aの室外側面13cに当接している。このように縦枠13に取り付けられたカバー5は、縦枠13の持出部13aの外周側面13bと室外側面13cを覆うものであり、カバー5の見付面52と持出部13aの室外側面13cの間には空間部5aが形成されている。
【0012】
また、カバー5の室外側面には、網戸枠体(外部枠体)6を取り付けてある。網戸枠体6は、上げ下げ窓の開放時において虫の侵入を防ぐものであり、網戸上枠61、網戸下枠62及び網戸縦枠63を四周枠組みして、網材64を張設したものである。より詳しくは、上枠11に取り付けるカバー5の傾斜片55に、上向きに延びる取付片66を有する取付部材65をネジ止めしてあり、取付片66に網戸上枠61をネジ止めしてある。さらに、縦枠13に取り付けるカバー5の見付面52に、室外側向きに延びる引掛片68を有する引掛部材67をネジ止めしてあり、引掛片68を網戸縦枠63の室内側面に形成した孔に挿入して、網戸縦枠63を引っ掛けてある。そして、下枠12の延出片12aの先端に、網戸下枠62が当接している。
【0013】
このようの構成したドアによれば、室外側に突出する持出部11a,13aの外周側面11b,13bと室外側面11c,13cがカバー5に覆われているので、持出部11a,13aが直接炎にさらされることはない。また、カバー5と持出部11a,13aの間に空間部5aを形成してあって(縦枠13の持出部13aの外周側面13bはカバー5に当接しているが、当接部分にはカバー5の中空部56が位置しているので、カバー5の見込面51と持出部13aの外周側面13bは離隔している)、炎の熱が持出部11a,13aに伝わりにくい。さらに、網戸枠体6がカバー5の室外側に取り付けてあるので、より炎の熱が持出部11a,13aに伝わりにくい。また、特に上側のカバー5においては、最も炎熱から保護したい持出部11aの根元部分を(根元部分が融解すると持出部11a全体が脱落してしまうため)、カバー5の係合部53により覆って保護している。そして、カバー5の見込面51の内周側面に加熱発泡材4を取り付けてあるので、火災時にはこれが発泡し、持出部11aの外周側面11bを覆って炎熱から保護する。これらにより、火災時において持出部11a,13aが溶け落ちることを防いでおり、外障子2aが脱落して室内外が連通してしまうことがない。また、網戸枠体6を持出部11a,13aに直接取り付けると、網戸枠体6の荷重が持出部11a,13aの先端に集中してかかるが、網戸枠体6をカバー5に取り付けると、網戸枠体6の荷重がカバー5を介して持出部11a,13aの全体に分散し、持出部11a,13aの変形が抑制される。さらに、カバー5が持出部11a,13aの外周側面11b,13bと室外側面11c,13cを覆っていて、従来のドアと比較すると持出部11a,13aに代わってカバー5が見えることになり、外観は従来と略同じであるので、ドアの意匠を損なわない。
【0014】
なお、図3に示すように、下枠12の内周側(上側)端部の室内側(アルミ部材部分)には、上向きに延びる立設片17を形成してあり、立設片17の上端には、タイト材ホルダ15を形成してある。タイト材ホルダ15は、上向きに開口する溝状のもので、タイト材16を嵌め込んで取り付けてある。タイト材16は、内障子2bの閉鎖状態において、内障子2bの下端(下框22b)の室内側部分に当接して、気密性・水密性を確保するものである。そして、内障子2bの下框22bは、エッジ材3を有している。エッジ材3は、略L字形で下向きに延びる垂下片31を有しており、下框22bの下面にネジ止めしてある。垂下片31は、下框22bの室外側端に位置していて、内障子2bの閉鎖状態において、下枠12のタイト材ホルダ15の室外側面に対向している。さらに、エッジ材3の左右幅は、下框22bの左右幅より長く、エッジ材3の左右端は、縦枠13のガイド溝14bに呑み込まれている。また、垂下片31の室内側面には、加熱発泡材4を取り付けてある。一方、下枠12の立設片17の室外側にも、加熱発泡材4を取り付けてある。この加熱発泡材4は、加熱されることにより発泡して厚さ方向(取付面に対して垂直方向)に膨張するものであって、火災時に発泡して下枠12と下框22bとの隙間を塞ぐ。このように、内障子2bの下框22bに取り付けたエッジ材3の左右端が縦枠13のガイド溝14bに呑み込まれているので、見込方向から見て縦枠13とエッジ材3(下框22b)の間に隙間がなく、火災時において、エッジ材3の垂下片31がタイト材16を炎熱から保護する。また、内障子2bの下框22bより左右に長いエッジ材3に加熱発泡材4を取り付けてあり、下枠12の立設片17に取り付けた加熱発泡材4と併せて、火災時に発泡して内障子2b下端部の全長を覆う。これらにより、火災時に内障子2bの下端部において室内外が連通することを確実に防ぐ。
【0015】
また、外障子2a及び内障子2bのガラスパネル24a,24bの全周にわたって、鉄製で断面コ字形のパネル支持材7を取り付けてある。これは、サッシが炎熱にさらされて上框21a,21b、下框22a,22b及び縦框23a,23bが融解した場合にガラスパネル24a,24bが外れるのを防ぎ、上げ下げ窓の気密性を維持するためのものである。
【0016】
さらに、外障子2a及び内障子2bの、各框(上框21a,21b、下框22a,22b及び縦框23a,23b)の中空部内には、鉄製で断面コ字形の補強材8を挿入してある(外障子2aの上框21aの補強材8のみ、断面L字形である)。補強材8は各框の全長にわたるもので、外側からネジ止めしてある。これは、サッシが炎熱にさらされた際に、各框の伸びを抑えるためのものである。
【0017】
また、上側のカバー5の内側及び内障子2bの下框22b部分以外にも、各ガイド溝14a,14bの内側、上枠11の持出部11aの内側、各障子2a,2bの縦框23a,23bの外周側面、パネル支持材7の内側、外障子2aの下框22aの室内側面と内障子2bの上框21bの室外側面の各所に加熱発泡材4を取り付けてあり、火災時に隙間を塞ぐ。
【0018】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、外障子と内障子が連動せず独立して開閉できるものや、外障子が固定されているものであってもよい。また、外部枠体は、網戸枠体のほか、複数本の桟を並べた格子体など、矩形の枠体形状のものであればよく、虫の侵入防止、目隠し、防犯などを目的とした種々のものを含む。
【符号の説明】
【0019】
1 枠体
2a 外障子(障子)
5 カバー
5a 空間部
6 網戸枠体(外部枠体)
11 上枠
13 縦枠
11a,13a 持出部
11b,13b 外周側面
11c,13c 室外側面
図1
図2
図3
図4
図5