(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030093
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】容器詰め炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20161114BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20161114BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
A23L2/00 U
A23L2/00 C
A23L2/00 G
A23L2/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-149025(P2014-149025)
(22)【出願日】2014年7月22日
(62)【分割の表示】特願2014-26474(P2014-26474)の分割
【原出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-43766(P2015-43766A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-158305(P2013-158305)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002447
【氏名又は名称】キリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】長 沼 広 幸
(72)【発明者】
【氏名】山 本 研一朗
(72)【発明者】
【氏名】四 元 祐 子
(72)【発明者】
【氏名】若 林 英 行
【審査官】
松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−000062(JP,A)
【文献】
国際公開第02/067702(WO,A1)
【文献】
国際公開第03/096825(WO,A1)
【文献】
特開2011−045305(JP,A)
【文献】
特表2010−517542(JP,A)
【文献】
特表2010−527613(JP,A)
【文献】
特表2010−521163(JP,A)
【文献】
国際公開第00/024273(WO,A1)
【文献】
Tests Show Carcinogen Levels in Coca-Cola Vary Worldwide,[2012.06.26](online);[retrieved on 2014.02.26];<URL: http://www.cspinet.org/new/201206261.html>
【文献】
鈴木一 他,加工澱粉・デキストリンの炭酸系飲料への応用,月刊フードケミカル,2010年,Vol.26, No.11,p.71-73
【文献】
ITmedia[オンライン],2012年 3月26日,[検索日:2015.01.19], インターネット: <URL:http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が100ppb未満である、容器詰め炭酸飲料。
【請求項2】
高甘味度甘味料が、アスパルテームを含んでなる、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】
高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウムおよび/またはスクラロースである、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項4】
高甘味度甘味料が、飲料に対して、0.01〜0.2質量%を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項5】
カラメル組成物がカラメル色素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項6】
カラメル色素が、飲料に対して、0.01〜0.5質量%を含んでなる、請求項5に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項7】
高甘味度甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が100ppb未満となるように調整する、容器詰め炭酸飲料の製造方法。
【請求項8】
高甘味度甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料において、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が100ppb未満となるように調整することを特徴とする、容器詰め炭酸飲料の泡安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−メチルイミダゾールの含有量が所定値に調整されてなる容器詰め炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲料液に炭酸ガスを圧入し、飲料液中に炭酸ガスを過飽和に吸収させた清涼飲料であり、飲用時に、口腔内および喉通過の時に、発泡した炭酸ガスにより爽快感を感じて賞味する嗜好性の高い飲料である。従って、炭酸飲料における泡は、飲用時の味覚、および爽快感に重要な影響を及ぼすことになり、泡の安定化は炭酸飲料の特性を形成する一つの大きな因子となっている。また、昨今の消費者の嗜好の多様化により、炭酸飲料の味覚も多様化し、現在では、果汁、乳成分、ビタミン類、エキス等の呈味成分、栄養成分の添加、風香味物質の添加等、コーラ系炭酸飲料をはじめ、多種多様の炭酸飲料が提供されている。
【0003】
炭酸飲料においては、飲料中の泡の存在が、喉越しの美味しさの重要な要因になっていることから、安定な泡の持続性、すなわち泡保持が、炭酸飲料飲用時の爽快感の持続や、泡立ち(飲料液面上部に形成されるフォーム)の外観に重要な因子となっている。従来、炭酸ガス含有飲料においては、泡の形成、つまり起泡性に重点が置かれたが、その形成される泡径が大きく粗い喉越しのものであり、爽快感の点で必ずしも好ましいものではなかった。一方で、飲用時に細かな泡を形成させることにより、泡の保持や喉越しが良好になることから、炭酸ガス含有飲料の製造に際して、飲用時に細かな泡を形成させる工夫がなされてきた。すなわち、細かく安定な泡の形成を促進し、或いは、長時間安定な泡の持続性を付与することを目的として、炭酸飲料製造用の各種の起泡剤や、泡保持剤が用いられてきた。
【0004】
従来から、起泡性の飲食品においては、その起泡性や安定性等を改善するために大豆タンパク質、小麦タンパク質、卵白ペプチド、ゼラチン、カゼインナトリウム等の動植物起源のタンパク質、或いはグアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、いなごまめ実ガム等のガム類等、種々の起泡剤或いは起泡助剤が用いられている。炭酸飲料においても、飲料中の泡の形成や持続性を改良するための各種の起泡剤または泡保持剤が開発されている。例えば、特開2003−304844号公報(特許文献1)には、起泡助剤として黒茶抽出物が開示されている。
【0005】
また、特開2004−81171号公報(特許文献2)には、オクテニルコハク酸デンプンを含有させた炭酸ベースの発泡性飲料が、特開2009−11199号公報(特許文献3)には、オクテニルコハク酸デンプンと茶葉の抽出物とを含有する炭酸ガス含有飲料が、特開2009−11200号公報(特許文献4)には、サポニンと、オクテニルコハク酸デンプン、ペクチンおよびタマリンドガムから選択される1種以上の起泡剤または泡保持剤を含む炭酸ガス含有飲料が、WO2003/105610号公報(特許文献5)には、茶葉の抽出物からなる泡持ち剤と、動植物から抽出されたサポニン抽出物、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等からなる起泡剤とを含有させた炭酸飲料がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−304844号公報
【特許文献2】特開2004−81171号公報
【特許文献3】特開2009−11199号公報
【特許文献4】特開2009−11200号公報
【特許文献5】WO2003/105610号公報
【発明の概要】
【0007】
これまで、起泡剤や泡保持剤の添加により、炭酸飲料の泡の改善すなわち安定な泡の形成と、長時間安定な泡の持続性とが図られてきた。しかし、起泡剤や発泡剤を添加した炭酸飲料は、泡のはじけ感を保持し、泡は滑らかで消えにくいものの、該炭酸飲料に好ましくない香味を付与したり、粘度が上昇するなどの物性の変化を起こすことなどにより、嗜好性が低下してしまうといった欠点を有している場合があった。特に、カラメル色素などを含有するコーラ系炭酸飲料においては、好ましくない香味の付与は、商品特性を著しく損なうものとなっていた。
【0008】
本発明は、容器詰め炭酸飲料(特に、カラメル組成物を含有するコーラ系炭酸飲料)において、溶存二酸化炭素(以下、単に「炭酸ガス」という)により形成された泡(飲料液面上部に形成されるフォーム)が安定化された容器詰め炭酸飲料、およびその製造方法、並びに容器詰め炭酸飲料の泡の安定化方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、甘味料、およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料において、難消化性デキストリンを添加し、さらに該飲料中の4−メチルイミダゾール(以下、「4MI」という場合もある)の含有量を所定値に調整することにより、炭酸ガスにより形成された泡を長い時間保持でき、泡を安定化できることを見いだした。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明を提供する。
(1)甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満である、容器詰め炭酸飲料。
(2)甘味料が高甘味度甘味料である、(1)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(3)高甘味度甘味料が、アスパルテームを含んでなる、(2)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(4)高甘味度甘味料が、飲料に対して、0.01〜0.2質量%を含んでなる、(2)または(3)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(5)カラメル組成物がカラメル色素である、(1)〜(4)のいずれかに記載の容器詰め炭酸飲料。
(6)カラメル色素が、飲料に対して、0.01〜0.5質量%を含んでなる、(5)に記載の容器詰め炭酸飲料。
(7)甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整する、容器詰め炭酸飲料の製造方法。
(8)甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料において、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整することを特徴とする、容器詰め炭酸飲料の泡安定化方法。
【0011】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、炭酸ガスにより形成される泡をより長く保持することが可能である。すなわち、本発明の容器詰め炭酸飲料は、好ましくない香味を付与し、嗜好性に悪影響を与える可能性がある起泡剤や泡保持剤の添加によらずに、炭酸飲料における泡の安定性を改善し、泡の安定化を図ることができる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、試験例1の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表し、横軸は各試験区(試験区1〜3)を表す。
【
図2】
図2は、試験例2の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表し、横軸は各試験区(試験区4および5)を表す。
【
図3】
図3は、試験例3の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表し、横軸は炭酸飲料中の4MIの濃度(ppb)を表す。
【
図4】
図4は、試験例4の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表す。横軸は、炭酸飲料中の4MIの濃度(ppb)を表す。
【
図5】
図5は、試験例8の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表す。横軸は、炭酸飲料中の4MIの濃度(ppb)を表す。
【
図6】
図6は、試験例9の試験結果を表す。縦軸は泡の保持時間(秒)を表し、横軸は各試験区(試験区30および31)を表す。
【0013】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、難消化性デキストリンを添加し、さらに該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満に調整されてなる、容器詰め炭酸飲料である。本発明の容器詰め炭酸飲料は炭酸ガスにより形成される泡が安定化されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、上記の成分を含むが、それ以外の炭酸飲料の製造のために用いられる製造原料、製造手段、および製造条件については、公知の炭酸飲料の製造原料、製造手段、および製造条件と特に変わるところはない。例えば、炭酸飲料の製造原料としては、果汁、乳成分、ビタミン類、エキス等の呈味成分、栄養成分の添加、風香味物質の添加等、公知の炭酸飲料の製造原料として用いられている製造原料を用いることができる。また、炭酸飲料の製造手段、製造条件も公知の炭酸飲料の製造手段、製造条件を用いることができる。例えば、炭酸飲料の原料溶液の調合、加熱殺菌、炭酸ガスの圧入等の手段、および処理条件も、公知の手段、および処理条件を採用することができる。
【0015】
炭酸飲料とは、炭酸ガス(二酸化炭素)の圧入された飲料であるが、飲料内の二酸化炭素圧は、約20℃において測定した場合、通常、1.7〜4.4kg/cm
2(0.17〜0.43MPa)、好ましくは、2.1〜4.0kg/cm
2(0.21〜0.39MPa)、より好ましくは、2.6〜3.5kg/cm
2(0.25〜0.34MPa)とすることができる。約5℃において、飲料内の二酸化炭素圧を測定した場合、通常、2.8〜7.1kg/cm
2(0.27〜0.70MPa)、好ましくは、3.5〜6.4kg/cm
2(0.34〜0.63MPa)、より好ましくは、4.0〜5.0kg/cm
2(0.39〜0.49MPa)とすることができる。炭酸飲料内の二酸化炭素圧をこのような範囲とすることにより、炭酸の食感が好ましく、また刺激や苦味が強くなりすぎないことから、好ましい。
【0016】
炭酸飲料内の二酸化炭素圧は、市販の機械式炭酸ガス圧測定器を用いて測定することができ、例えばガスボリューム測定装置(GVA−500、京都電子工業株式会社製)を用いて、測定することができる。また、この炭酸飲料内の二酸化炭素圧は、日本農林規格に則り測定することができる。この日本農林規格によれば、ガス内圧力は『20℃において、ガス内圧計を用いて試料のガス内圧力を測定するものとし、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、びんをふり動かして指針が一定の位置に達したときの値をkg/cm
2で表す。』ものであるとされている。
【0017】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、難消化性デキストリンを含有する。本発明における難消化性デキストリンとは、とうもろこし、小麦、米、豆類、イモ類、タピオカなどの植物由来の澱粉を加酸および/または加熱して得た焙焼デキストリンを、必要に応じてαアミラーゼおよび/またはグルコアミラーゼで処理した後、必要に応じて脱塩、脱色した水溶性食物繊維であり、難消化性の特徴を持つものをいう。この難消化性デキストリンは、例えば、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素処理して得ることができ、衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリン、好ましくは85〜95質量%の難消化性成分を含むデキストリンなどをいう。本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれる難消化性デキストリンには、水素添加により製造される難消化性デキストリンの還元物も含まれる。なお、難消化性デキストリンとその還元物(還元難消化性デキストリン)は市販されているものを用いても良い。
【0018】
本発明の容器詰め炭酸飲料中の難消化性デキストリンの含有量は、血糖値上昇抑制作用、血清コレステロール低下作用、または中性脂肪上昇抑制作用や整腸作用を考慮して決定することができるが、炭酸飲料における泡保持の効果を発揮するためには、炭酸飲料中の難消化性デキストリンの含有量の下限値は、例えば、0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上とすることができる。また、本発明の炭酸飲料における難消化性デキストリンの含有量の上限値は、その香味への影響を考慮して、例えば、2.0質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下とすることができる。また、飲料容器容量が250ml以上の場合には、難消化性デキストリンの含有量は、飲料容器容量当たり、例えば、3.0g以上、好ましくは4.0g以上とすることができ、難消化性デキストリンの含有量の上限は、飲料容器容量当たり、例えば、40.0g以下とすることができる。
【0019】
本発明の容器詰め炭酸飲料では、DE(Dextrose Equivalentの略であり、グルコースを100とした場合の糖液の持つ還元力を固形分当りにした値を意味する。)が、8以上20以下の難消化性デキストリンを用いることができる。本発明の容器詰め炭酸飲料では、また、グルコシド結合の50%以上がグルコシド結合1→4である難消化性デキストリンを用いることができる。本発明の容器詰め炭酸飲料では、さらに、コーンスターチ由来の難消化性デキストリンを用いることができる。
【0020】
本発明の容器詰め炭酸飲料には、カラメル組成物が含まれる。本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれるカラメル組成物には、カラメル色素またはカラメル麦芽などが含まれていても良いが、カラメル色素であることが好ましい。カラメル色素は、糖類を加熱重合して得られる高分子の褐色色素をいい、各種重合触媒(例えば、アンモニウム化合物や亜硫酸化合物)を使用して得られた高分子も本発明で使用するカラメル色素に含まれる。
【0021】
カラメル色素は、その製造方法により以下の4種類に分類されるが、いずれの製造方法により製造されたカラメル色素であっても、本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれていても良い。
【0022】
カラメルI:澱粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、または酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を使用していないもの。
【0023】
カラメルII:澱粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物を加えて、またはこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、アンモニウム化合物を使用していないもの。
【0024】
カラメルIII:澱粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物に、アンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないもの。
【0025】
カラメルIV:澱粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもの。
【0026】
本発明容器詰め炭酸飲料には、上記のいずれのカラメル色素も用いることができるが、好ましくはカラメルIVである。
【0027】
本発明の容器詰め炭酸飲料中のカラメル色素の含有量は、カラメル色素の固形分、色調、および目的とする炭酸飲料に応じて適宜決定することができるが、例えば、0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.07〜0.3質量%、さらに好ましくは0.07〜0.2質量%である。
【0028】
また、本発明の容器詰め炭酸飲料中のカラメル色素由来の固形分含有量は、例えば、0.025〜0.25質量%、好ましくは0.035〜0.15質量%、より好ましくは0.035〜0.1質量%である。カラメル色素の固形分に関しては、食品衛生検査指針理化学編(発行所:社団法人日本食品衛生協会、2005年発行)に記載の試料を常温で所定の温度と条件下で加熱乾燥して、乾燥前後の重量差を水分とする常圧加熱乾燥法(公定法)に従って測定することができる。
【0029】
さらに、本発明の容器詰め炭酸飲料中のカラメル色素の含有量を吸光度で表すと、430nmにおいて0.3〜1.0、470nmにおいて0.1〜0.8、500nmにおいて0.1〜0.7、570nmにおいて0.03〜0.5、および660nmにおいて0.03〜0.3であり、好ましくは、430nmにおいて0.5〜0.8、470nmにおいて0.3〜0.7、500nmにおいて0.3〜0.5、570nmにおいて0.1〜0.3、および660nmにおいて0.03〜0.1である。カラメル色素には極大吸収部が存在しないため、色の特定として複数波長における吸光度で管理することが好ましい。本発明において「吸光度」とは、ガス抜き処理した炭酸飲料をイオン交換水で3倍(質量比)に希釈し、光路長10mmのセルで測定した上記波長での吸光度をいう。
【0030】
カラメル麦芽とは、糖化処理、カラメル化処理を経て生成される麦芽のことをいい、製品である飲料に色や香ばしさを付与する。カラメル麦芽は、緑麦芽等を浸麦し含水率を40%程度に高めた後、糖化処理およびカラメル化処理によって得られる、色度50〜2500EBCで規定される麦芽である。一般に、糖化処理は、麦中の温度を60〜75℃程度まで上昇させ、30分間以上保温することにより実行される。また、カラメル化処理は、長時間かけて段階的に120〜230℃程度まで上昇させることにより実行される。
【0031】
本発明の容器詰め炭酸飲料にカラメル麦芽を用いる場合は、例えば、一定量のカラメル麦芽を約3〜5倍の沸騰水浴中に入れて15分間ほど煮沸抽出後、固液分離したものを6℃で3000rpm、30分間遠心分離処理して抽出液を調製し、飲料に配合することができる。
【0032】
本発明の容器詰め炭酸飲料中のカラメル麦芽の含有量は、目的とする飲料に応じて適宜決定することができるが、例えば、1.0〜10質量%、好ましくは、2.0〜8.0質量%、より好ましくは3.0〜5.0質量%とすることができる。
【0033】
本発明の容器詰め炭酸飲料は該飲料中の4MIの含有量が200ppb未満であることを特徴とするものであるから、本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれるカラメル組成物は、4MIの含有量が比較的低いものを用いることが望ましい。4MIは、カラメル組成物(例えば、カラメル色素およびカラメル麦芽)の製造過程において生成される物質である。
また、本発明の容器詰め炭酸飲料には、カラメル色素やカラメル麦芽の抽出液を、吸着剤(例えば、活性炭や、酸性白土または活性白土などの白土)によって処理することにより得られた、4MIを低減させたカラメル組成物も用いることができる。本発明の容器詰め炭酸飲料にカラメル色素を用いる場合は、カラメル色素の炭酸飲料への添加量にもよるが、4MI濃度が400ppm未満のカラメル色素を用いることができ、好ましくは200ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満である。4MI濃度は、公知の手段により測定することができるが、例えば、下記の条件により、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)を用いて測定することができる。
機種(LC):ACCELA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
機種(MS/MS):TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:Polaris3 C18−A (3μm)、φ4.6mm×15cm(アジレント社製)
カラム温度:40℃
移動相:水、メタノールの混液(50:50)
流量:0.2ml/min
イオン化:ESIポジティブモード
モニターイオン:プリカーサーイオン m/z 83の分解によって生じるプロダクトイオン m/z 56
注入量:10μl
【0034】
また、本発明の容器詰め炭酸飲料は、各種原料中の4MI濃度と該原料の使用量に基づいて、製造される炭酸飲料中の4MIの含有量を予め予測した上で製造することができる。製造した容器詰め炭酸飲料において4MIの含有量を所定値に低減させるためには、活性炭や、酸性白土または活性白土などの白土によって処理するなどの手段を用いることができる。
【0035】
本発明の容器詰め炭酸飲料の4MIの含有量は、200ppb未満であり、好ましくは100ppb未満、より好ましくは50ppb未満、最も好ましくは30ppb未満である。本発明の容器詰め炭酸飲料の4MIの含有量を200ppb未満とすることにより、泡(飲料液面上部に形成されるフォーム)を長く保持でき、安定化された泡を実現することができる。
【0036】
本発明の容器詰め炭酸飲料に用いられる甘味料としては、食品に甘味を付与する目的で使用される食品添加物のうち、果糖や、ショ糖などの単糖、二糖、およびオリゴ糖、ならびに高甘味度甘味料が挙げられる。高甘味度甘味料とは、ショ糖と同量(同質量)を口に含んだ際に感じる甘味がショ糖の数十倍から数千倍となる甘味料である。本発明の容器詰め炭酸飲料に用いられる甘味料は、高甘味度甘味料であることが好ましい。
【0037】
本発明の容器詰め炭酸飲料に用いられる単糖、二糖、およびオリゴ糖としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、スクロース、ラクトース、マルトトリオース、ケトースなどが挙げられる。
【0038】
添加される高甘味度甘味料としては、天然高甘味度甘味料であっても、合成高甘味度甘味料であってもよく、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、D-キシロース、グリチルリチンおよびその酸およびその塩、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、D-ソルビトール、ステビア抽出物、ステビア末、タウマチン、アブルソサイドA、シクロカリオサイドI、N-アセチルグルコサミン、L-アラビノース、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、カンゾウ抽出物、酵素処理ステビア、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、酵素処理カンゾウ、L-ソルボース、ネオテーム、ラカンカ抽出物、L-ラムノース、D-リボース等が挙げられる。
【0039】
添加される甘味料は、単一成分として使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。甘味料は、単一成分で添加される場合でも2種以上を組み合わせて添加する場合でも、好ましくは、高甘味度甘味料として、少なくともアスパルテームを含んでなるものである。また、添加される甘味料は、好ましくは、ショ糖、果糖、ブドウ糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、酵素処理ステビア、アスパルテームおよびネオテームからなる群から選択される1種または2種以上からなるものであってもよい。高甘味度甘味料を2種以上組み合わせて使用する場合の高甘味度甘味料の含有量は、2種以上の各高甘味度甘味料の量を合計した量で表すことができる。
【0040】
本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれる高甘味度甘味料は、市販されているものを使用しても、公知の方法に従って製造したものを使用してもよい。また、本発明において使用される高甘味度甘味料は、目的の高甘味度甘味料を含む植物等の抽出物(例えば、ステビアであればステビア抽出物)を使用してもよい。
【0041】
本発明の容器詰め炭酸飲料中の高甘味度甘味料の含有量は、目的とする飲料に応じて適宜決定することができるが、例えば、0.01〜0.2質量%、好ましくは0.02〜0.1質量%、より好ましくは0.03〜0.07質量%とすることができる。
【0042】
高甘味度甘味料として、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、酵素処理ステビア、およびスクラロースの組み合わせを使用する場合は、それぞれの甘味度や原飲料の種類を考慮して、濃度を決定することができる。
【0043】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、アルコールを含有しない飲料(ノンアルコール飲料)として提供してもよく、例えば、黒色炭酸飲料(例えば、コーラ系炭酸飲料(好ましくは、コーラ飲料))、果汁入り炭酸飲料、ノンアルコール飲料、およびビールタイプ飲料が挙げられる。本発明の容器詰め炭酸飲料は、カラメル組成物を使用することから着色炭酸飲料(有色炭酸飲料)として提供することができる。本発明の容器詰め炭酸飲料は、カラメル組成物と甘味料を使用することから、好ましくはコーラ系炭酸飲料として提供される。
ここで、コーラ系炭酸飲料とは、コーラの種実の抽出エキスまたはその同等物をベースとして酸味料、着色料、およびカフェインなどを配合し、柑橘系香料や各種スパイスで適宜香味を調えた炭酸飲料を意味する。
【0044】
本発明の容器詰め炭酸飲料の容器は、PETボトル、缶、瓶等の飲料として提供しうる形態ものであれば特に限定されない。本発明の容器詰め炭酸飲料は、好ましくはPETボトルに充填された態様で提供することができ、より好ましくは、1〜2L容量のPETボトルに充填して提供される。1〜2L容量のPETボトルは比較的大容量ゆえ、複数回開栓と閉栓が繰り返され、その都度内容物が消費され、炭酸ガスが経時的に飲料から抜けてしまうが、本発明の容器詰め炭酸飲料では炭酸ガスの泡が安定化されていることから、たとえこのような炭酸ガスの抜けが生じたとしても、該炭酸飲料を容器に注いだときに形成される炭酸ガスの泡を安定化させることができ、炭酸ガスの抜けによる香味の劣化を最小限に抑えることができる。すなわち、本発明の容器詰め炭酸飲料をPETボトル、特に、1〜2L容量の大容量PETボトルの態様で提供する場合には、炭酸ガスの抜けによる容器に注いだときに形成される炭酸ガスの泡保持時間の短縮を最小限に抑えることができ、炭酸飲料の風味が損なわれない点で有利である。
【0045】
本発明の炭酸飲料の製造において、炭酸飲料に添加されるものについては、本発明の効果を逸しない範囲においては特に制限はなく、上記のものを必要に応じて添加できるほか、任意のものを含有させることができる。酸味料を添加する場合、酸味料の種類や添加量は任意であるが、果汁を含有しない飲料とする場合において、嗜好性の観点から酸度として0.01〜0.4%、好ましくは、0.05〜0.3%となるように調整することができる。
【0046】
酸度とは、日本農林規格(平成18年8月8日農水告第1127号)に定められた酸度の測定方法に基づいて算出されるものを意味する。具体的には、クエン酸換算値とし、以下の式で算出した百分比を酸度とすることができる。
酸度(%)=A×f×100/W×0.0064
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
W:試料重量(g)
0.0064:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLに相当する無水クエン酸の重量(g)
【0047】
炭酸飲料に果汁を含有させる場合、上記(1)多糖類、(2)糖やその加工品、および(3)酸味料の添加量は、果汁による可溶性固形分への寄与や酸度への寄与分を考慮することが好ましい。この場合、果汁を含む(1)、(2)、および(3)のいずれも果汁による寄与分を合計した値とすることが好ましい。本発明の炭酸飲料のpHは、通常2.5〜5.5、好ましくは2.5〜4.5、より好ましくは2.5〜3.5とすることができる。
【0048】
本発明の容器詰め炭酸飲料は、原料を水に混合および溶解し、規定の濃度の調合液とする工程、調合液を加熱する工程、加熱した調合液を冷却し炭酸ガスを吸収させる工程、炭酸ガスを吸収した調合液を容器詰めする工程を含む製造工程により製造することができる。本発明の容器詰め炭酸飲料は、好ましくは上記工程に加えて、容器詰めした飲料を殺菌する工程を含んでいてもよい。容器詰めした飲料を殺菌する工程をも含む製造法においては、調合液を加熱する工程で調合液が必ず80〜100℃の温度帯を経るようにすることができる。容器詰めした飲料を殺菌する工程では、55〜65℃で5〜30分間保持することを含んでいてもよい。得られた飲料は、ガラスビン、PETボトルのようなプラスチック容器、金属缶等、任意のものに充填して容器詰め飲料とすることができる。
【0049】
本発明の容器詰め炭酸飲料の好ましい態様によれば、高甘味度甘味料(好ましくは、アスパルテーム)およびカラメル組成物を含んでなる容器詰めコーラ系炭酸飲料であって、難消化性デキストリンを含有させ、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満である、容器詰め炭酸飲料が提供される。ここで、コーラ系炭酸飲料とは、コーラの種実の抽出エキスまたはその同等物をベースとして酸味料、着色料およびカフェインなどを配合し、柑橘系香料や各種スパイスで適宜香味を調えた炭酸飲料を意味する。
【0050】
本発明の別の面によれば、甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、難消化性デキストリンを含有させ、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整する、容器詰め炭酸飲料の製造方法が提供される。本発明の製造方法では、難消化性デキストリンを含有させ、該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量を200ppb未満に調整することにより、該飲料の炭酸ガスにより形成される泡が安定化されることを特徴とする。
【0051】
本発明の別の面によれば、甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料において、難消化性デキストリンを含有させ、かつ該飲料中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整することを特徴とする、容器詰め炭酸飲料の泡安定化方法が提供される。本発明において、容器詰め炭酸飲料の泡とは、該炭酸飲料を容器に注いだ際に飲料液面上に形成される炭酸ガスの泡(フォーム)を意味する。本発明の効果である「泡の安定化」、「泡保持の向上」とは、炭酸飲料を容器に注いだ際に飲料液面上に形成される炭酸ガスの泡(フォーム)が安定し、その破泡が抑制され、その泡の形状を維持することを意味する。そのため、飲料製造時に容器に飲料を注ぐ場合や、容器詰め炭酸飲料をコップなどの飲用容器に注ぐ場合の泡立ちやすさを示す「起泡」とは異なる指標である。容器詰め炭酸飲料の泡の安定化は、例えば、下記実施例の試験例1に記載の方法により評価することができる。
【0052】
これらの本発明の方法で使用する難消化性デキストリン、甘味料、およびカラメル組成物やその添加態様並びに4MI含有量の調整については本発明の容器詰め炭酸飲料に関する記載事項を参照することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、「%」とは、特に記載のない限り「質量%」を意味する。各試験の評価は試験ごとに独立して評価した。
【0054】
[試験例1:難消化性デキストリンが泡の安定化に与える影響について(1)]
(試験方法)
(1)下記表1の処方に従い、それぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。ポストミックス法とは、糖液、酸味料、香料、着色料等を混合して調合したシロップを容器に注入し、例えば、カーボネーションした水を用いて炭酸ガスを充填する方法である。
【0055】
【表1】
【0056】
(2)測定:
(a)500mLメスシリンダー(高さ42cm、内径6.5cm)(柴田科学社製)を卓上電子はかりに乗せた。
(b)漏斗(HARIO社製)の口部末端と樹脂製2方コック(内径6mm、アズワン社製)の口部末端をゴム管で接続し、樹脂製2方コックのゴム管を接続していない口部末端が、メスシリンダー内部の底面より40cmの高さとなるように、ゴム管で接続された漏斗と樹脂製2方コックを設置した。この際、漏斗から注がれるコーラ様炭酸飲料がメスシリンダー底面の中心に落下するように、樹脂製2方コックを設置した。
(c) 測定の直前に10℃以下に保たれた上記の試作したコーラ様炭酸飲料を漏斗に150g入れた。
(d) 樹脂製2方コックのコックを開き、試作したコーラ様炭酸飲料をメスシリンダー底部へ100g注いだ。卓上電子はかりが100±5gの時点でコックを閉じた。この時点で、泡保持時間の測定を開始した。泡保持時間とは、上述したように、樹脂製2方コックのコックを閉じて試作したコーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を指す。ここで、「泡が消えた」という判断は、液面上部に堆積した泡層が切れて、溶液面が見えた瞬間をもって判断した(泡の消え方は、まず液面に堆積した泡層の高さがなくなり、次に液面中央部から円の外側に向かって泡が消えていく)。
【0057】
(結果)
試験例1の試験結果を、
図1に示す。なお、結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。
図1の結果より、炭酸飲料に難消化性デキストリンを含有させることで、泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかる。
【0058】
[試験例2:各種カラメル色素が泡の安定化に与える影響について(1)]
(試験方法)
(1)下記表2の処方に従い、それぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0059】
【表2】
【0060】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を測定した。また、カラメル色素中の4MI濃度は下記の条件により、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)を用いて測定した。
機種(LC):ACCELA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
機種(MS/MS):TSQ Quantum Discovery MAX(サーモフ
ィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:Polaris3 C18−A (3μm)、φ4.6mm×15cm(アジ
レント社製)
カラム温度:40℃
移動相:水、メタノールの混液(50:50)
流量:0.2ml/min
イオン化:ESIポジティブモード
モニターイオン:プリカーサーイオン m/z 83の分解によって生じるプロダクトイ
オン m/z 56
注入量:10μl
【0061】
(結果)
試験例2の試験結果を、
図2に示す。なお結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保
持時間の平均値である。カラメル色素DDW050(DDW社製)を用いた試験区4の容
器詰め炭酸飲料に含有される4MI濃度は280ppbであり、カラメル色素DDW03
4(DDW社製)を用いた試験区5の容器詰め炭酸飲料に含有される4MI濃度は74p
pbであり、炭酸飲料に含まれるカラメル色素中の4MIの含有量が低いほうが、泡保持
時間が長くなり、泡が安定化することがわかる。
【0062】
[試験例3:各種カラメル色素が泡の安定化に与える影響について(2)]
(試験方法)
(1)難消化性デキストリンを5.1%、アスパルテームを0.1%、および各種市販のカラメル色素(CDL019(AIPU社製)、DDW050、DDW034(いずれも、DDW社製)を1.0%となるように、それぞれ溶かした各炭酸飲料用濃縮溶液を調製した。各カラメル色素の固形分含有量を前述の常圧加熱乾燥法(公定法)に従って測定したところ、CDL019は48.2%、DDW050は50.5%、DDW034は49.7%であった。
【0063】
(2)測定:
(a)500mLメスシリンダー(高さ42cm、内径6.5cm)(柴田科学社製)を卓上電子はかりに乗せた。
(b)漏斗(HARIO社製)の口部末端と樹脂製2方コック(内径6mm、アズワン社製)の口部末端をゴム管で接続し、樹脂製2方コックのゴム管を接続していない口部末端が、メスシリンダー内部の底面より40cmの高さとなるように、ゴム管で接続された漏斗と樹脂製2方コックを設置した。この際、漏斗から注がれる炭酸水がメスシリンダー底面の中心に落下するように、樹脂製2方コックを設置した。
(c)5℃に保たれた炭酸飲料用濃縮液を25g量りとり、メスシリンダーへ入れた。
(d)測定の直前に5℃に保たれたガス圧0.5MPaの炭酸水を漏斗に150g入れた。
(e) 樹脂製2方コックのコックを開き、炭酸水をメスシリンダー底部へ100g注ぐ。卓上電子はかりが100±5gの時点でコックを閉じた。この時点で、メスシリンダーから液面の容量、泡最上部の容量を読み取り、泡保持時間の測定を開始した。泡保持時間とは、上述したように、樹脂製2方コックのコックを閉じて炭酸水を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を指す。ここで、「泡が消えた」という判断は、液面上部に堆積した泡層が切れて、溶液面が見えた瞬間をもって判断した(泡の消え方は、まず液面に堆積した泡層の高さがなくなり、次に液面中央部から円の外側に向かって泡が消えていく)。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0064】
(結果)
試験例3の試験結果を、表3および
図3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
上記の結果より、炭酸飲料に含まれるカラメル色素中の4−メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満である場合に、泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかる。また、各炭酸飲料用濃縮溶液と炭酸水が混合された炭酸飲料中のカラメル色素由来の固形分含有量は、試験区6は0.10質量%、試験区7は0.099質量%、試験区8は0.096質量%であった。
【0067】
[試験例4:4MI濃度が泡の安定化に与える影響について(1)]
(試験方法)
(1)難消化性デキストリンを5.1%、アスパルテームを0.1%、市販のカラメル色素(CDL019、AIPU社製)を1.0%、および下記表4の濃度になるように4−メチルイミダゾールをそれぞれ溶かした各炭酸飲料用濃縮溶液を調製した。
【0068】
(2)測定:
上記試験例3と同様に泡保持時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0069】
(結果)
試験例4の試験結果を、表4および
図4に示す。
【表4】
【0070】
上記の結果より、炭酸飲料中の4−メチルイミダゾールの濃度が200ppb未満である場合に、炭酸飲料における泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかる。
【0071】
[試験例5:4MI濃度が泡の安定化に与える影響について(2)]
4MI濃度が、コーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0072】
(試験方法)
(1)下記表5の処方に従い、飲料における濃度として、難消化性デキストリンを1.02%、アスパルテームを0.04%、市販のカラメル色素(CDL019、AIPU社製)を0.2%、および下記表5の濃度になるように4−メチルイミダゾール(4MI)をそれぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0073】
【表5】
【0074】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0075】
(結果)
試験例5の試験結果を、表5に示す。なお、結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。本試験例において、コーラ様炭酸飲料を試作した上で、これを漏斗から注ぐという評価方法においても、コーラ様炭酸飲料中の4−メチルイミダゾールの濃度が200ppb未満の範囲で、4−メチルイミダゾール濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。
【0076】
[試験例6:4MI濃度が泡の安定化に与える影響について(3)]
活性炭のような吸着剤によって処理することにより4MI濃度を低減させたカラメル組成物を用いてコーラ様炭酸飲料を試作し、4MI濃度がコーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0077】
(試験方法)
(1)下記表6の処方に従い、飲料における濃度として、難消化性デキストリンを1.02%、アスパルテームを0.06%、および5倍希釈して活性炭で処理した市販のカラメル色素(カラメルIV、池田糖化社製)を1.0%、それぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0078】
(2)活性炭によるカラメル色素の処理方法
カラメル色素に含有される4−メチルイミダゾール(4MI)を低減するために、以下の方法に従って処理を行った。
市販品のカラメル色素(カラメルIV、池田糖化社製)を精製水で5倍に希釈し、40mlずつ試験管に分注した。これらのカラメル色素水溶液に、活性炭(CL−K、味の素ファインテクノ社製)を、それぞれ無添加並びに1、2、および4質量%となるように添加し、ボルテックスミキサーで撹拌し、室温で10分間接触させた。その後、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清30mlをデカンテーションして回収した。さらに、該上清30mlを0.45μmのフィルターでろ過し、ろ過したカラメル色素をそれぞれ表6の処方に従い、コーラ様炭酸飲料の試作に用いた。
【0079】
【表6】
【0080】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0081】
(結果)
試験例6の試験結果を、表6に示す。なお結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。上記の結果より、炭酸飲料中の4MI濃度は、その処理や調製の方法を問わず、4MIの濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。
【0082】
[試験例7:甘味料の濃度が泡の安定化に与える影響について]
甘味料の濃度がコーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0083】
(試験方法)
(1)下記表7の処方に従い、飲料における濃度として、難消化性デキストリンを1.02%、市販のカラメル色素(CDL019、AIPU社製)を0.2%、および下記表7の濃度になるようにアスパルテームをそれぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0084】
【表7】
【0085】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要
した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0086】
(結果)
試験例7の試験結果を、表7に示す。なお結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。上記の結果より、炭酸飲料中の甘味料の濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。一方で、高甘味度甘味料は、少量の添加であっても、炭酸飲料の香味への影響が大きい。そのため、訓練されたパネリスト4名での官能評価を行った結果によれば、炭酸飲料の香味設計上、高甘味度甘味料(アスパルテーム)の濃度は0.03〜0.07質量%がより好ましいことがわかった。
【0087】
[試験例8:4MI濃度が泡の安定化に与える影響について(4)]
試験例7と異なる甘味料を用いて、4MI濃度がコーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0088】
(試験方法)
(1)下記表8の処方に従い、飲料における濃度として、難消化性デキストリンを1.02%、ステビアを0.06%、市販のカラメル色素(CDL019、AIPU社製)を0.2%、および下記表8の濃度になるように4−メチルイミダゾール(4MI)をそれぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0089】
【表8】
【0090】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要
した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0091】
(結果)
試験例8の試験結果を、表8および
図5に示す。なお、結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。上記の結果より、炭酸飲料中の甘味料にステビアを用いた場合でも、4MIの濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。
【0092】
[試験例9:4MI濃度が泡の安定化に与える影響について(5)]
活性炭のような吸着剤によって処理することにより4MI濃度を低減させたカラメル組成物を用いてコーラ様炭酸飲料を試作し、4MI濃度がコーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0093】
(試験方法)
(1)下記表9の処方に従い、飲料における濃度として、難消化性デキストリンを1.02%、ステビアを0.06%、および5倍希釈して活性炭で処理した市販のカラメル色素(カラメルIV、池田糖化社製)を1.0%、それぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0094】
(2)活性炭によるカラメル色素の処理方法
上記試験例6と同様に、カラメル色素に含有される4−メチルイミダゾール(4MI)の低減処理を行った。
【0095】
【表9】
【0096】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0097】
(結果)
試験例9の試験結果を、表9および
図6に示す。なお結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。上記の結果より、炭酸飲料中の甘味料にステビアを用いた場合でも、カラメル色素の4MIを低減する処理や調製の方法を問わず、4MIの濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。
【0098】
[試験例10:難消化性デキストリンが泡の安定化に与える影響について(2)]
試験例7の結果を踏まえて、飲料としての香味設計上、好適な甘味料の濃度において難消化性デキストリンがコーラ様炭酸飲料の泡の安定化に与える影響について検討した。
【0099】
(試験方法)
(1)下記表10の処方に従い、飲料における濃度として、アスパルテームを0.06%、市販のカラメル色素(CDL019、AIPU社製)を0.2%、および下記表10の濃度になるように難消化性デキストリンをそれぞれ用いて、各コーラ様炭酸飲料のそれぞれの20℃での容器内ガス圧が0.34MPaとなるように、コーラ様炭酸飲料をポストミックス法で試作した。
【0100】
【表10】
【0101】
(2)測定:
上記の試験例1と同様に、コーラ様炭酸飲料を注ぎ終わってから、泡が消えるまでに要した時間を測定した。カラメル色素中の4MI濃度は、試験例2と同様に測定した。
【0102】
(結果)
試験例10の試験結果を、表10に示す。なお結果は3回実験を行い、3回の測定した泡保持時間の平均値である。上記の結果より、炭酸飲料中の難消化性デキストリンの濃度に依存的に泡保持時間が長くなり、泡が安定化することがわかった。