特許第6030110号(P6030110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許6030110モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用
<>
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000002
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000003
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000004
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000005
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000006
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000007
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000008
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000009
  • 特許6030110-モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030110
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】モータで補助され手動で制御される運動アセンブリ、それを有するX線装置、方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20161114BHJP
   A61B 6/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   A61B6/00 300D
   A61B6/04 332E
   A61B6/00 300X
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-256385(P2014-256385)
(22)【出願日】2014年12月18日
(62)【分割の表示】特願2012-509118(P2012-509118)の分割
【原出願日】2010年4月19日
(65)【公開番号】特開2015-62729(P2015-62729A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年1月7日
(31)【優先権主張番号】09159808.6
(32)【優先日】2009年5月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】メーク,ヘリット イェー
(72)【発明者】
【氏名】バート,ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】レイケン,アントニウス エム
【審査官】 田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−098126(JP,A)
【文献】 特開昭61−224012(JP,A)
【文献】 特開平11−070102(JP,A)
【文献】 特開2000−201909(JP,A)
【文献】 特開2008−126073(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0200396(US,A1)
【文献】 特開昭54−127697(JP,A)
【文献】 特開2005−118555(JP,A)
【文献】 特開2008−061780(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0153340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線装置又は患者支持装置の要素又はデバイスを移動させるモータ補助運動アセンブリであって、
第1構造要素と、
第2構造要素と、
2重ベルト駆動装置と、
前記2重ベルト駆動装置を介して前記第1構造要素に対して前記第2構造要素を駆動するダイレクトドライブモータ要素を有するモータ装置とを有し;
前記第1構造要素および前記第2構造要素は、互いに対して移動可能であり;
前記モータ装置は前記第1構造要素に配置され;
前記第2構造要素は、前記第1構造要素に対する前記第2構造要素の所望の運動の手動指示を受けるように適合され;
前記モータ要素は、加えられたトルクが結果として生じるモータ電流により決定されるという点で前記手動指示を検出するように適合され;
前記モータ装置は、前記手動指示に従って前記第1構造要素に対する前記第2構造要素の運動を補助するように適合される、
モータ補助運動アセンブリ。
【請求項2】
前記モータ要素は、前記モータ装置に加えられるトルクを検出するように適合される、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記モータ装置はダイレクトドライブモータ装置である、
請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ダイレクトドライブモータ装置は、駆動動作モード、クラッチ動作モードおよびブレーキ動作モードを有するように適合される、
請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記モータ要素は、ブラシまたはブラシレスモータである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記モータ装置は、前記第2構造要素の知覚された移動抵抗を少なくとも部分的に減少させることにより、前記第2構造要素の運動を補助するよう適合される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記第1構造要素に対する前記第2構造要素の運動を制御するための運動制御要素をさらに備える、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記運動制御要素は、トルクモード、電流モード、速度モードおよび位置モードを含むグループの少なくとも1つの動作モードで動作可能である、
請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記運動制御要素の動作のモードは、略瞬間的に切替可能である、
請求項8に記載のモータ補助運動アセンブリ。
【請求項10】
オメガ駆動装置をさらに有する、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記2重ベルト駆動装置は、
前記モータ装置に配置された可動ベルトと;
前記第2構造要素に配置された固定ベルトとを有し;
前記可動ベルトおよび前記固定ベルトは確実な結合をするように配置され;前記モータ装置は前記第1構造要素に対して前記第2構造要素を、前記可動ベルトを駆動することにより動かすように適合される;
請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
第1構造要素に対する第2構造要素の位置を決定するための絶対位置決定要素、力決定要素、圧力決定要素、重量決定要素および傾斜決定要素からなるグループの少なくとも1つの要素をさらに有する、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
X線発生装置と、
X線検出器と、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のモータ補助運動アセンブリとを有し、前記X線発生装置および前記X線検出器は、前記第2構造要素に配置されるとともに検査される物体のX線像を取得するよう動作可能に接続され;
前記モータ補助運動アセンブリは、前記X線発生装置および前記X線検出器の少なくとも一方を前記物体に対して動かすために適合される、
X線装置。
【請求項14】
X線装置であって、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のモータ補助運動アセンブリを有し、前記モータ補助運動アセンブリが、患者支持装置、患者支持器、移動可能な患者ベッド又は患者支持器のテーブル面のいずれかを移動させる、X線装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のモータ補助運動アセンブリを用いてX線装置又は患者支持装置の要素又はデバイスを移動させるためモータで補助される運動の方法において、
ダイレクトドライブモータ要素で、第1構造要素に対する第2構造要素の所望の運動の手動指示を検出するステップであって、前記モータ要素は、加えられたトルクが結果として生じるモータ電流により決定されるという点で前記手動指示を検出するように適合される、ステップと、
前記所望の運動を補助するステップとを含む、
モータで補助される運動の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してX線を発生させる技術に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は物体のX線像を得るためのX線装置、移動X線装置、Cアーク(C−arc)装置に関する。
【0003】
特に、検査される物体に対するX線装置の運動および位置決めに関する。
【背景技術】
【0004】
X線装置は、例えば生体の関心領域等、検査される物体のX線像の取得を含む診断および治療目的のための技術分野でよく知られている。
【0005】
X線像を取得するためのX線装置は、通常、例えばX線管等、X線発生装置、および検査される物体のX線像の取得のために配置されるとともに接続されるX線検出器を有する。X線発生装置およびX線検出器は、物体の両側に互いの方を向いて配置される。X線発生装置から放出されるX線放射はX線検出器の方向に放射されるので、検査される物体を突き抜け、その結果X線検出器内に物体のX線像を生成する。
【0006】
X線発生装置およびX線検出器の両方は通常、剛体の実質的な重さが重い要素である。したがって、例えば異なる方向のX線像の取得のため等、検査される物体に対してX線発生装置および/またはX線検出器を動かすために、X線発生装置および/またはX線検出器に力が加えられなければならず、通常、無視できるとみなすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、力の必要量が減少されるとともに位置決め精度が向上される、X線装置の個々の要素または装置の、補助されるが制御された運動に対する必要性が存在し得る。
【0008】
以下では、独立請求項によるモータ補助運動アセンブリ、X線装置、モータで補助される運動の方法およびモータで補助される運動アセンブリの使用が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示の実施形態によれば、第1構造要素と、第2構造要素と、モータ要素を有するモータ装置とを有する、モータ補助運動アセンブリが提供される。第1構造要素および第2構造要素は、第1構造要素に配置されたモータ装置を用いて互いに対して移動可能である。第2構造要素は、第1構造要素に対する第2構造要素の所望の運動の手動指示を受けるように適合される。モータ装置は、手動指示に従って第1構造要素に対する第2構造要素の運動を補助するように適合される。モータ要素は、手動指示を検出するように適合される。
【0010】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、X線発生装置と、X線検出器と、モータ補助運動アセンブリとを有する、X線装置が提供される。X線発生装置およびX線検出器は、X線発生装置およびX線検出器の少なくとも一方を物体に対して動かすよう適合されたモータ補助運動アセンブリを用いて検査される物体のX線像を取得するよう動作可能に接続されるとともに配置される。
【0011】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ要素で、第1構造要素に対する第2構造要素の所望の運動の手動指示を検出するステップと、所望の運動を補助するステップとを含む、モータで補助される運動の方法が提供される。
【0012】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ補助運動アセンブリが、X線装置、移動X線装置、Cアーク装置および患者支持器装置の少なくとも1つで使用される。
【0013】
本発明は、第2構造要素に対する第1構造要素の手動制御された運動への制御性能の向上および改良された機能の付加として見られ得る。
【0014】
例えば、手術中の場合、例えばCアークのような、X線取得装置が用いられる。例えばX線技師等の操作者が、手術前、手術中および手術後に、例えば外科医のために、関連する画像を取得するために必要とされる。Cアークは物体の関心領域の規定された平面の2次元画像しか取得できないので、異なる視野平面(plane of view)のX線像の取得のために、Cアーク、少なくともそのCボウ(C−bow)要素を移動させることまたはCアークを再調整することが必要となり得る。
【0015】
また、手術中のスペースの必要性またはスペースの制限は、画像が取得されないときにCアーク装置の手術台から離れる位置決めと、その後に画像が取得されるときにCアーク装置を手術野の中および外に動かすことが必要となり得る。
【0016】
Cアークは通常かなりの重量を有するので、X線発生装置およびX線検出器の少なくとも一方の再配置はうんざりする任務になり得る。
【0017】
さらに、Cアークを動かすときに、X線発生装置およびX線検出器を、例えば、外科手術の確定した部分の後等、特にマッチするその後のX線像を得るために、以前の画像取得に使用された規定された位置に再調整することが必要とされ得る。
【0018】
したがって、X線装置の個別の要素またはX線装置全体のモータで補助され手動で制御された運動は有益になり得る。
【0019】
特に、機械的にバランスされた装置の手動により制御された運動中、モータ装置により能力の向上が存在し得る。操作者は、例えば、X線発生装置および/またはX線検出器の1つの軸周りの回転等、所望の運動を手ほどきする。この手ほどきされた運動または運動の指示は決定され、適切に配置されたモータは摩擦および移動される要素の質量の感覚を減少させるための重ね合わせるまたは追加の力を加え得るので、操作者の手ほどきされた運動/運動の指示により手動で制御される間運動を補助する。特に、例えば、センサを有さないかもしれないハンドグリップ、スイッチまたは同様のもの等、手動制御要素は、運動の指示を提供するために用いられ得る。専用の手動制御要素は決して必要とされないが、有益であり得る。これに一致する手動制御要素は特に、手動制御入力の受信をもたらし得るとともに全ての実現可能な運動または運動方向のための適切な入力を受け取るために適し得る。
【0020】
さらなる機能は、好ましいまたは予め設定された位置への誘導のためのプログラム可能な停止であってもよい。この好ましいまたは予め設定された位置は、例えば、X線装置をX線像の取得のために規定されたおよび/または以前に使用された位置に再配置するために提供され得る制御アプリケーションあるいはプログラム中に保存され得る。また、モータ補助の異なる個別のレベルについての個々の使用者のプロフィールが実装されてもよい。
【0021】
ダイレクトドライブモータ技術のダイレクトドライブ作用、例えば、特定の歯車伝達比を有する分離したギヤボックスの必要性のない駆動装置等、が採用され得るので、動力伝達装置の駆動部品の数を減少させる。
【0022】
ダイレクトドライブの原理は、例えば、駆動動作モード、クラッチ動作モード、ブレーキ動作モード等、動作の異なるモードの実装を可能にし得る。
【0023】
駆動動作モードは、上述のようにモータで補助された手動の制御された運動を用いることを可能にし得る。
【0024】
モータ要素からの供給パワーの遮断により、実質的にフリーランニング(free running)モータ要素が得られ、これは構造要素の補助されない手動運動に対するさらなる加えられる力を必要としない基本的にフリーランニングと見なされ得る。これに一致する動作はクラッチ動作モードと称され得る。
【0025】
ブレーキ動作モードでは、X線発生装置および/またはX線検出器は予め規定された位置で停止することができるとともに、例えばCアークまたは少なくともCボウ要素等に、場合により意図せずに加えられる力に対抗するモータにより前記位置に保持されることさえできる。
【0026】
これに一致するモータ要素は、ブラシまたはブラシレスモータであってよい。ブラシレスモータは高トルクおよびゼロ速度を含む低速での良好な制御挙動を提供し得る。その結果、低減速比の動力伝達装置または直接の動力伝達装置が使用されることができ、したがって、高効率伝達装置をもたらし得る。
【0027】
本質的にダイレクトドライブのさらなる利点は、モータ要素電流が規定された負荷での対応するトルクの良い測定器または表示になり得るということである。運動制御要素はトルクまたは電流モードに設定されることができ、モータに加えられたトルクは、モータ補助機能の基礎である、生じるモータ電流により決定される。言い換えると、モータは、操作者が何をするつもりであるか/操作者がどの運動を望んでいるかを決定することができ、その結果、運動制御要素は位置フィードバックに反応することができるとともにモータ要素によりX線装置を要求通りに動かすために必要な力の一部を供給し得る。
【0028】
停止、好ましい位置決めおよび制動のようなさらなる機能は、トルクモードから速度あるいは位置モードへの、例えば、「即座のスイッチング(on the fly switching)」等、実質的に瞬間的なスイッチングにより達成され得、ここでは、場合によりX線発生装置および/またはX線検出器を有する、第1構造要素および第2構造用の絶対位置が決定される。位置はまた、第1構造要素および第2構造用の互いに対する相対位置を含み得る。
【0029】
モータ補助機能のさらなる重要な点は安全の側面であり得る。既知の装置では、患者の周囲のモータ駆動部分は、「デッドマン制御(dead man control)」下のボタンにより制御され、すなわち、ボタンが解放されると、運動が実質的に即座に停止される。本発明の特徴は、例えばモータ駆動要素の制御または手ほどきのためのスイッチまたはボタン等、専用の駆動要素の省略として見なされ得るので、さらなる安全対策が実装されなければならないかもしれない。安全対策は、例えば、補助された運動のトルクおよび運動速度を、略一定の力または操作者の指示を必要とするあるレベルに制限することであり得る。この一定の力または指示がもはや存在しない場合には、運動は基本的に即座に停止し得る。これに一致する安全機能は、「単一故障安全要件(single fault safety requirement)」を満たすことができ、如何なる単一の構成部品の故障または必要とされる一定の力または指示を提供することができないことも、安全な状態での/安全な状態への装置の停止に導くものとなるとともにそれぞれの問題が修正されるまでその後の自動動作を止めることを意味する。
【0030】
本発明は特に以下の特徴を提供する。
【0031】
モータは手動で制御された運動を補助することができるので、モータで補助された運動は、検査される物体に対してX線装置を動かすおよび/または位置決めするための必要な操作力を低いレベルに減少させることができ、少なくとも操作力を実質的に減少させる。これらの減少した操作力は、X線装置またはX線ビームのより速いおよび/またはより正確な位置決めをもたらす。
【0032】
独立した、専用の「移動を可能にさせる」アクチュエータ、スイッチまたはボタンは必要とされなくてもよい。
【0033】
さらに、事前にプログラムされた停止が実装され得る。言い換えると、X線装置の望ましい所定の位置決めが都合良くプログラムされることができるとともに自動的に実行され得る。これは、以前に使用された位置に復帰する、すなわち戻る、発展性またはオプションを含み得る。
【0034】
また、モータ駆動の停止および保持/ブレーキ機能が実装され得る。モータ要素またはモータ装置は、例えば使用者に知覚される移動質量および摩擦等、操作力を減少させるようにプログラムされ得るが、速度に影響を受ける制動または速度に依存する制動を利用することにより運動の最大速度も制限し得る。
【0035】
例えば、駆動モード、駆動動作モード、クラッチ動作モードおよび/またはブレーキ動作モード等のような、動作の異なるモードは、モータ装置をそれに応じてプログラムすることにより単一の構成部品で実現し得る。しかし、X線装置を手動で位置決めする可能性も常にあり得、または、特にモータ要素が駆動されないときにはX線装置を手動で位置決めする可能性が常にあり得る。この全ては、使用者または操作者の制御が利かなくなる装置の可能性の無い本質的に安全な装置につながり得る。
【0036】
通常、X線装置のモータ装置、特に医用画像のためのCアークを用いたX線装置は、タイミングベルト装置に基づいている。タイミングベルトは、一方の構造要素に、他方の構造要素に配置されたモータ要素とともに取付けられることができる。この構造要素は、互いに対して移動可能なものであり得る。例えば、Cアーク装置のタイミングベルトはCボウ要素の一端から他端に動き得るとともに特に十分な駆動剛性を得るために高い予張力をもって取付けられ得る。
【0037】
モータ要素の歯付駆動ホイールは、場合により、例えばタイミングベルトの歯等と、組み合う/噛み合う。このタイミングベルトは、少なくとも2つの案内ホイールを介してCボウからモータ要素に送られるが、本発明の更なる態様によれば、2重ベルト駆動装置、すなわちオメガ駆動装置(Omega drive)のさらなる実施形態が用いられてもよい。
【0038】
2重ベルト駆動装置は、例えば両方が歯付きである、2つのベルトを有する。一方のベルトは、Cボウに略その全長に沿って直接取付けられ得る一方、他方のベルトは歯と歯の噛み合いを有して取付けられ、さらにモータ要素に配置される。モータ要素のモータ軸が回転すると、ベルトは、第1の案内ホイールの近傍で一方の側に噛み合わず第2の案内ホイールに配置された第2の側に噛み合う。案内ホイールまたはローラは、誤差を含むことの無い適切な噛み合いを確実にする。したがって、モータ要素を駆動することにより、第1構造要素および第2構造要素は互いに対して移動可能になる。ベルトの力/張力は2つの案内ホイールの間の比較的小さい領域にのみ存在するとみなされることができ、実質的に関連するベルトの長さを減少させるとともに剛性が生み出されることに寄与する。
【0039】
案内ホイールまたはローラからCボウの両側または端に延びる、モータ軸に配置されるベルトの部品は、駆動剛性に寄与しないと見なされ得るので、通常のオメガ駆動装置の張力に相当する張力を有することを通常は必要とされない。2重ベルトは特に、小容量ベルトおよび張力の無いまたは減らされた張力であっても、駆動装置の高剛性を提供し得る。小さいベルトが用いられることができ、これはコンパクトな設計をもたらし得る。予張力の欠如または減少は、Cボウの如何なる加重も取り除く。したがってベアリングが小さくコンパクトになり得、小さいピッチの使用の可能性が駆動の精度を高めることができるとともに、ベルトの剛性がモータ要素またはモータ装置から見て全ストローク/最大の可能な運動に対して一定とみなされ得る。
【0040】
以下では、本発明のさらなる例示の実施形態が特にモータ補助運動アセンブリに関して記載される。しかし、これらの説明がモータ補助運動アセンブリを有するX線装置、モータ補助運動の方法およびモータ補助運動アセンブリの使用にも応用されることを理解すべきである。
【0041】
請求項に記載された構成の間の、特に装置タイプの請求項、方法タイプの請求項および使用タイプの請求項に関する実施形態の間の1つまたは複数の特徴の任意の変形および置換が、考えられるとともに本出願の範囲および開示の中であることが明確に記載される。
【0042】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ要素はモータ装置に加えられたトルクを検出するように適合されてもよい。
【0043】
言い換えると、例えば手動制御要素等が所望の運動の指示を提供するために使用されるとき、指示は、モータ要素軸を回転させようとする試みとして見られ得る方法で、モータ要素、特にモータ要素の軸に作用する、並進または回転力をもたらし得るので、トルクをモータ要素に加える。
【0044】
モータ要素軸のこの試みられた回転は、例えば、モータ要素内で生成される電流をもたらし得る。この電流は、モータ要素の電気的な接続において、例えばモータ自身または連続する制御装置等により検出され得る。したがって、この生成された電流は、モータ装置に加えられたトルクを検出するために使用されることができ、場合により規定された反応をもたらす。
【0045】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ装置はダイレクトドライブモータ装置であってもよい。
【0046】
ダイレクトドライブモータ装置は、実施的に歯車の無いまたは伝達装置の無いモータ装置として理解され得るので、例えば歯車列または変速機列等、動かされる追加的な要素を必要とする、伝達比を提供する必要なしに、回転が直接伝達され、したがって、モータ装置の出力の要件を減らしながら精度を高める。
【0047】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、ダイレクトドライブモータ装置は、駆動動作モード、クラッチ動作モードおよび/またはブレーキ動作モードを有するように適合される。
【0048】
駆動動作モードは、モータ補助運動が提供される動作モードとして解釈され得る。クラッチ動作モードは、実質的にフリーの、補助されない、特に第2構造要素に対する第1構造要素の手動運動が提供される動作モードとして見られ得る。クラッチ動作モードでは、実質的にモータ装置/モータ要素に出力が供給されなくてもよい。ブレーキ動作モードでは、外部の、場合により意図的ではない力が構造要素に作用しても、第2構造要素に対する第1構造要素の規定された位置が維持され得る。ブレーキ動作モードは特に、互いに対する構造要素の絶対位置の決定が必要になり得る。また、ブレーキ動作モードでは、モータ補助運動は規定された位置に到達するまで減速され、付加的な外力に対抗している間でも、この位置はそれ以降維持される。
【0049】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ要素はブラシレスモータ要素である。
【0050】
ブラシレスモータ要素は、ブラシモータのブラシに基づく機械的な整流システムとは対照的に、電子的に制御される整流システムを有するモータ要素としてみられてもよい。ブラシレスモータ要素では、電流とトルクおよび印加電圧と回転速度(毎分の回転数またはRPM)が線形に関連すると考えられ得る。ブラシレスモータは、モータ要素およびモータアセンブリそれぞれの好ましいダイレクトドライブ挙動を可能にする。
【0051】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータ装置は、第2構造要素の、特に第1構造要素に対する、知覚された移動抵抗を少なくとも部分的に減少させることにより、第2構造要素の運動を補助するよう適合され得る。
【0052】
移動抵抗は特に、摩擦、手動移動力および/または第1構造要素に対する第2構造要素のアンバランスに関係し得る。
【0053】
これらの値は物理的な前提条件のために提供され得るので、実際の摩擦、移動される物体のアンバランスおよび/または質量は影響されないと理解されるが、使用者または操作者により少なくとも知覚された摩擦、物体の質量および/またはアンバランスは下がるまたは減少され得る。
【0054】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、アセンブリはさらに、第1構造要素に対する第2構造要素の運動を制御するための運動制御要素を有してもよい。
【0055】
運動制御要素は特に、例えば手動制御要素を介してモータ要素に提供された力/トルクに反応し得るので、そこから所望の運動の指示が取り出され得るまたは決定され得、そのようにして生成された電流を検出および/または決定する。運動制御要素は、次に、例えば所望の運動と同じ方向に動かすよう、補助するために、例えばモータ要素を駆動することにより、所望の運動を補助し得る。
【0056】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、運動制御要素は、トルクモード、電流モード、速度モードおよび位置モードを含むグループの少なくとも1つの動作モードで動作可能であってもよい。
【0057】
特に、トルクモードと電流モード並びに速度モードと位置モードは、互いに組み合わされて、例えばトルク/電流モードおよび速度/位置モードに達する。
【0058】
トルク/電流モードでは、所望の運動が検出されることができる一方、速度/位置モードでは所望の位置が検出され、取り込まれおよび/または続いて保持されることができる。
【0059】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、運動制御要素の動作モードは、略瞬間的に切替可能であってもよい。
【0060】
特に、動作モードは、トルク/電流モードと速度/位置モードとの間で実質的に瞬間的に切替可能であり得る。これは、最初に所望の運動が運動制御要素に所望の位置に到達するために位置モードへの切り替えで指示される、複雑な運動を可能にする。そこでは第1構造要素に対する第2構造要素の位置が決定されるとともに続いて、所望の位置に等しい現在位置が決定されたときに、位置が維持され得る。運動制御要素は、所望の位置に到達するまで、トルク/電流モードと速度/位置モードとの間を連続的に切り替え得る。
【0061】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、モータアセンブリはさらに、オメガ駆動装置および/または2重ベルト駆動装置を有してもよい。
【0062】
それに一致する駆動装置は、第1構造要素の第2構造要素に対する高められた精度を有する簡単だが効果的な運動を可能にし得る。
【0063】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、2重ベルト駆動装置は、モータ装置に配置された可動ベルトと、第2構造要素に配置された固定ベルトとを有し得る。可動ベルトおよび固定ベルトは確実な結合(positive fit)をするように配置され得るとともにモータ装置は第1構造要素に対して第2構造要素を、可動ベルトを駆動することにより動かすように適合され得る。
【0064】
それに一致する2重ベルト駆動装置は、ベルト装置の力または張力を下げながら特に高められた精度での位置決めを可能にする。
【0065】
本発明のさらなる例示の実施形態によれば、アセンブリはさらに、第1構造要素に対する第2構造要素の位置を決定するための絶対位置決定要素、力決定要素、圧力決定要素、重量決定要素および傾斜決定要素からなるグループの少なくとも1つの要素を有してもよい。
【0066】
傾斜決定要素は特に、1軸または2軸の傾斜決定要素であり得る。決定要素のそれぞれは、モータ補助運動アセンブリの運動に影響を及ぼすパラメータを決定するために用いられ得る。それぞれの決定されたパラメータは特に、運動制御要素により補助された運動を制御するために使用され得る。パラメータは、使用者または操作者が気付くことの無い補助された運動のために用いられ得るので、好ましい自然な手動の制御をもたらす。決定要素は特にセンサであってもよい。
【0067】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以降に示す実施形態から明らかになるとともに、以降に示す実施形態を参照して説明される。
【0068】
本発明の例示の実施形態は以下の図面を参照して以下に示される。
【0069】
図面の説明は概略である。異なる図面では、同様のまたは同じ要素は同様または同じ参照番号が与えられる。
【0070】
図は縮尺通りに描かれていないが、定性的な比率で描かれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、本発明によるCアーク装置の例示の実施形態の概観を示す。
図2図2は、図1のCアーク装置の駆動ユニットの例示の実施形態の概観を示す。
図3図3は、本発明によるオメガ駆動装置の例示の実施形態の詳細図を示す。
図4図4は、本発明によるモータ補助運動アセンブリの運動制御要素の例示の実施形態の回路図を示す。
図5図5は、本発明による直線2重ベルト駆動装置の例示の実施形態の詳細図を示す。
図6図6は、本発明によるCアーク装置に配置された2重ベルト駆動装置の例示の実施形態の概観を示す。
図7図7は、本発明によるX線装置の例示の実施形態の概観を示す。
図8図8は、図4によるX線装置の画像生成部の詳細図を示す。
図9図9は、本発明による患者支持器の例示の実施形態の概観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
ここで図1を参照すると、本発明によるCアーク装置の例示の実施形態の概観が描かれる。
【0073】
CアークX線装置1は、例えばX線管等、X線発生装置8と、互いの方を向いて配置されるとともに物体のX線像を生成するために動作可能に連結されたX線検出器7とを有する。X線発生装置8およびX線検出器7の両方は、Cボウ要素16に配置される。Cボウ要素16には、図1に握りまたは手すりとして例示的に示される、手動制御要素4が配置される。図1では、Cボウ要素16は、第2構造要素6を構成すると見なされることができ、Cアーク装置1の本体は第1構造要素5を構成するとみなされることができる。モータ装置3が第1構造要素5と第2構造要素6との間、例えばX線装置1の本体24とCボウ要素16との間の接合点に配置される。本体24は、図1でCボウ要素16を上昇および加工させるために例示的に配置される、さらなる移動要素25を有し得る。
【0074】
本体24はさらに、運動制御要素10を有する。この運動制御要素10は、移動要素25および第1構造要素5と第2構造要素6との間の接合点に配置されたアクチュエータまたはモータに動作可能に結合され、さらにX線発生装置8およびX線検出器7をX線像の生成のために制御し得る。
【0075】
図1によるCアーク装置1は特に、手術応用のための移動X線装置として理解され得る。Cボウ要素16は、角度形成(angulation)および回転の、2つの軸に関して回転し得る。高さの調整のための移動要素25およびX線装置1全体を例えば手術室の床の上で転がすことによる移動X線装置1の長手方向の移動能力とともに、物体はアイソセンタ、すなわち回転および角形成軸の交差点に設置可能である。
【0076】
使用者が、X線発生装置8およびX線検出器7を検査される物体9に対して回転させるまたは角度を形成する(angulate)ことにより、投影角度を変更したときでさえ、物体の関心点は画像の中心にとどまる。具体的な画像取得アプリケーションに応じて、使用者は、手動制御要素4を使用することにより、2軸または単軸運動を行うことを決定し得る。単軸運動のみが望まれる場合、望まない軸はブロックされ得る。以下の記述では、モータ要素はCボウ要素16を角度形成運動で動かしている。
【0077】
操作者は、例えばCボウ要素16を反時計回りに回転させる等、所望の運動の指示を与えるために、手動制御要素4を使用している。したがって、操作者は手動制御要素4を下方に、手術室の床の方向に引くことができ、その結果運動制御要素10に所望の反時計回りの回転を指示する。
【0078】
モータ装置3は運動制御要素10とともに、所望の運動の指示が存在することを決定し、その結果運動制御要素10はモータ装置3に、同じ方向、ここでは反時計周りの運動のためにモータ制御要素3aを駆動することにより所望の運動を支援または補助するよう信号を送る。したがって、操作者は実質的に所望の運動の最初の指示を与えることのみ要求され、運動の最中では、手動制御要素4を所望の運動の方向にわずかに押すことを続けることにより所望の運動の指示を維持することができ、一方、Cボウ要素16を反時計周りに移動させるための実際の運動エネルギーまたは少なくともその一部はモータ装置3、特にモータ要素3aにより提供される。
【0079】
図2および3を参照すると、図1のCアーク装置1の駆動ユニットの例示の実施形態の概観および本発明によるオメガ駆動装置11の例示の実施形態の詳細図が描かれる。
【0080】
図2は、ボウ16の角度形成方向の、したがって図1に関して時計回りまたは反時計回りのモータで補助された移動のためのモータ装置3の基本的な動作原理を示す。
【0081】
Cボウ要素16はその端部に取り付けられたベルト13aを有する。このベルト13aは、各端部から見て、案内ホイール14に到達するまで、Cボウ要素16の外周に沿って延びる。案内ホイール14の外周は、モータ要素軸15に配置された歯付ホイール15aの外周と略等しい距離をおいて配置される。
【0082】
歯付ホイール15aは、モータ要素軸15に取付けられた独立した要素であってもよく、モータ要素軸15の一体部分であってもよい。上述の案内ホイール14のお互いの距離のため、歯付ベルト13aは、Cボウ要素16の表面からほぼ垂直に曲げられ、案内ホイール14を回ってモータ要素軸15およびその歯付ホイール15aに延びる。
【0083】
案内ホイール14は通常、その周りの歯付ベルト13aの好ましい滑らかな作動のために平らな表面を有する。案内ホイール14にまたは案内ホイール14の周りに配置される歯付ベルト13aの側面は略平坦であり、一方、Cボウ要素16の表面およびモータ要素軸15の歯付ホイール15aそれぞれに隣接する歯付ベルト13aの表面は、歯付形状に構成され、歯および歯の間の隙間または歯付ベルト13aの歯付要素の間の刻み目を有する。
【0084】
歯付ベルト13aの歯付要素は、略長方形であるとともにモータ要素軸15の歯付ホイール15aに組み込まれた歯に合うように適合され、その結果、歯付ベルト13aの歯および歯付ホイール15aの歯の確実な結合または確実なロック(positive locking)をもたらす。
【0085】
モータ要素3aは、第1構造要素5に配置されるとともに取付けられる。この第1構造要素5は、例えばスタンドまたは本体24により、手術室の床に実質的に接続されるとして見られてもよい。今、モータ要素3aがモータ要素軸15を回転させるので、歯付ホイール15aおよび歯付ベルト13aの確実な結合のために、歯付ホイール15aを回転させ、ベルト13aが歯付ホイール15aの表面上に沿って動かされ、従ってCボウ要素16が図1に関して時計回りまたは反時計周りに回転する。
【0086】
したがって、Cアーク1は歯付ベルト13aを用いて駆動される。この歯付ベルト13aは、Cアーク1の両端にその歯がCボウ要素16の外径または外面に配置されて固定される。歯付ホイール15aを有するモータ要素3aは、図2のCボウ要素16における、第1構造要素5と第2構造要素6との間の接続点において、第1構造要素5に取付けられる。
【0087】
案内ホイール14は、ベルトを歯付ホイール15aに案内する。Cアーク1の一方の側において、固定が張力として提供され得るので、高精度の遊びの無い運動のための歯付ベルト13aの適切な張力をもたらす。これに一致するオメガ駆動装置および2重ベルト駆動装置の効率は十分高いので、駆動システムはダイレクトドライブを構成するとみなされ得る。
【0088】
モータ要素3aの影響は、例えばクラッチ動作モードでの手動制御中等、通電されていないとき、運動のための追加的な力が無視され得る。
【0089】
使用者または操作者の必要な制御力は摩擦、慣性および多少の残っているアンバランスにより生じる。これらの力は、快適ではなく素早い運動には高すぎる可能性があるものの、依然としてモータ補助無しの使用を受け入れられるとみなされ得る。
【0090】
本発明によるモータ補助機能は、負荷へわずかな必要な力を加えることにより、手動制御をより軽くより容易にする。使用者は、摩擦および慣性を依然として感じるかもしれないが、減少したレベルに過ぎない。アンバランスは完全に補償され得る。
【0091】
図3図2のオメガ駆動装置を描くが、モータ要素3aのトルクに関するモータからのフィードバックを受けるための、または位置、特にモータ要素3aの絶対位置を決定するためのエンコーダケーブル17bをさらに描いている。このモータ要素3aは、例えばブラシレスモータ要素3aであり得る。電力はモータ要素3aにケーブル17aを介して供給される。
【0092】
ここで図4を参照すると、本発明によるモータ補助運動アセンブリの運動制御要素の例示の実施形態の回路図が描かれる。
【0093】
モータ装置3は、CアークX線装置1の駆動のための、例えばブラシレスAC、ベクトル制御モータ装置3であり得る。ブラシレスAC(BLAC)モータは特に、電子的な正弦波ベクトル制御整流システムを使用し得る。それに一致するタイプのモータは、連続する4象限のトルクおよびゼロから始まる速度範囲を提供し得る。
【0094】
モータ要素3aは、アンプKを介して駆動電力を受けるとともに整流およびサーボ制御のための絶対位置フィードバックエンコーダによりその位置に関するフィードバックを提供する。図4では、2つの基本的なモードが設定され、モードA、PIDまたは位置モード、およびモードB、トルク/電流モードとして記載される。サーボコントローラは、ブラシレスAC整流制御、トルク/電流制御ループ、位置(PID)制御ループおよび「即座の」制御ループ切り替え機構のような機能を提供する。
【0095】
アンプは電子的な整流および電流ループを提供し得る。モータトルクが電流に比例(K)するために、トルク制御が達成され得る。PID制御は、位置誤差を最小化するために位置誤差に反応し得る。これを達成するために、PIDコントローラは比例、積分および微分の値を誤差信号から送り得る。「即座の」モード切替は、移行の間に何も感じられないことを確実にし得る。これは、3つのPIDパラメータを滑らかに増加または減少させることにより達成され得る。
【0096】
制御原理が図4にブロック図により描かれ、モータコントローラの全ての機能の概観が提供される。機能はサーボコントローラおよび制御要素に存在する。アンプは整流および制御ループを提供する。電流設定点はPIDコントローラおよびフィードフォワードオフセットにより生成される。モータ位置フィードバックは高分解能絶対エンコーダにより提供され得る。
【0097】
フィードフォワード制御システムが提供される場合、設定電流は、フィードフォワードアルゴリズムにより、特に位置、速度および加速度の設定点および質量、減衰、摩擦およびアンバランスのパラメータに応じて、決定され得る。この場合、設定電流は特にオフセット電流に等しくなり得る。PIDコントローラはフィードフォワードモデルの偏差を修正し得る。
【0098】
PIDモードまたは位置または速度制御モードでは、「実(act)/設定(set)入力スイッチ」要素のスイッチおよびサーボコントローラの「オン/オフ PID」は、「モードA」に設定される。フィードフォワードアルゴリズムは、例えば物理運動モデルに基づいて、予想されるモータ電流を計算または決定し得る。モデルは摩擦、減衰、質量およびアンバランスのようなパラメータを含み得るとともにそれぞれ物理公式を参照する。モデリングが適合する、特に実質的に完全にモデル化された現実のシステムに適合する場合、PIDコントローラからの電流設定点へのアンプへの寄与は必要無くなり得る。この理論上の場合には、Cボウ要素16の運動は、PIDコントローラの支援無しに要求されたまたは所望の軌道に従い得る。それに一致するモデルはまた、補助モードの補助設定のための参照として使用され得る。
【0099】
補助モードの間、PID制御は切られるとともに、それぞれの値が設定点発生器により提供されるPIDモードとは対照的に、運動設定点が微分器フィルタからの実際の設置点により置き換えられる。補助モードでは、フィードフォワード機構が動作し続け得るが、量は必要な補助レベルに下げられ得る。補助モードでは、アンバランスフィードフォワードが完全に加えられ得る。減衰の寄与は、例えば反作用力を加えることにより、高すぎる手動速度を避けるために使用されることができ、機械的なモータ出力または補助運動あるいは反作用あるいは抵抗を実質的に減少させることをもたらし得、この場合Pは0より低くさえなり得る。
【0100】
知覚パラメータまたは因子P、PおよびPを用いて、必要なまたは所望の補助が調整され得る。補助モードではこれらのパラメータは0と1より小さい値との間になり得る一方、PIDモードではパラメータは1と等しくなり得る。因子の可能な範囲は両方の境界(margins)が含まれる0と1との間であり得る。
【0101】
実速度および加速度は実位置フィードバックの微分およびフィルタリングにより取得され、微分器フィルタで実行される。運動コントローラが位置変位を検出したときに運動が特に起動される。
【0102】
また、好ましい位置決めが実装されてもよい。補助モードを使用することにより、事前にプログラムされた位置での停止が実装され得る。使用者は運動の所望の方向の手動指示を与え、この方向にはプログラムされた位置が置かれ得る。この位置の近くで、制御は、事前にプログラムされた位置での滑らかで正確な停止を強いるよう、PID位置コントローラにより自動的に無効にされ得る。使用者モードコントローラは、電流ループからPIDループへの滑らかな制御モードの切り替えを提供する。運動が停止した後、補助モードは再び利用可能になり得る。
【0103】
さらに、ブレーキモードが実装されてもよく、これは、上述のような、実質的に好ましい位置での停止に等しい。また、保持/ブレーキ機能が、ブレーキ位置が残されるときにだけモータが起動されるPIDモードにおいて位置を保つことにより実現され得る。
【0104】
図4の制御要素は、例えば患者テーブルも制御される場合または患者テーブルの位置情報も考慮される場合に、さらなる補助フィードフォワード構成要素も有してもよい。
【0105】
補助フィードフォワード入力は、例えば装置の傾きまたは検査される物体の変化のような、外部からの影響によるさらなる力の外乱の補償のために使用され得る。補償は特に、図9を参照して後述されるように、患者支持器または患者テーブルにおいて実行されてもよい。
【0106】
ここで図5を参照すると、本発明による直線2重ベルト駆動装置12の例示の実施形態の詳細図が描かれる。
【0107】
図5では、2重ベルト駆動装置12が、ここでは直線軸駆動装置として描かれる。前述のオメガ駆動装置11との主な違いは、駆動装置の略全動作長さに対する第2歯付ベルト13bの追加として見られることができる。両方の歯付ベルト13a、13bは、タイミングベルトとも称され、2つの案内ホイール14の間の距離または空間を除いて、全運動範囲に対して確実にロックするまたは歯と歯が噛み合い、歯付ベルト13aはモータ要素軸15の歯付ホイール15aの周りに巻きつけられる。
【0108】
それに一致する駆動装置は、案内ホイール14から運動範囲の端までの領域において、力または張力がベルト13aの2つの案内ホイール14および歯付ホイール15aの間の小さい領域にのみ存在する、実質的に張力の無い歯付ベルト13aを可能にする。それに一致する2重ベルト駆動装置12を使用して、第1構造要素5が取付けられ得るモータ要素3aは、第2構造要素6に対して動かされ得る。容易で比較的摩擦の無い運動のために、案内要素18が第2構造要素6に取り付けられるとともに第2構造要素6がモータ要素3aに取付けられるので、第1構造要素5は、直線運動を可能にするために、図5の歯付ベルト13a、bの下に位置する。
【0109】
図5の場合、案内要素18に対する被案内要素19の横向きの運動は、モータ要素3a、特に歯付ホイール15aを有するモータ要素軸15の回転により引き起こされる。歯付ホイール15aのそれに一致する回転運動により、歯付ベルト13aは、歯付ホイール15aの一方の側でモータ要素3aに向かって引かれると同時に、回転方向に応じた側のその反対側でモータ要素3aから遠ざけられる。この運動は、歯付ベルト13aの上/下運動、従って歯付ホイール15aの回転運動により引き起こされる横向きの運動に達するために、案内ホイール14により偏向される。第2構造要素6の図5の左側に向かう運動が意図される場合、第1構造要素5の固定位置が想定される場合には、歯付ホイール15aは時計回りに回転し得る。
【0110】
ここで図6を参照すると、本発明によるCアーク装置に配置された2重ベルト駆動装置の例示の実施形態の概観が描かれる。
【0111】
図6では、2重ベルト駆動装置12が図1に関するCボウ要素16の角度形成回転運動をもたらすように適合される。歯付ベルト13bは、Cボウ要素16の略全外周に渡って取付けられ得る。歯付ベルト13bは、Cボウ要素16に、略その全長に渡って取付けられ得る、または、Cボウ要素の上面の湾曲のためにそれぞれの端部にのみ取付けられ得る。第2歯付ベルト13a、またはかみ合いベルトは、ベルトの歯が互いに向き合い、できる限り案内ホイール14からCボウ要素16のそれぞれの端部に確実に噛み合う状態で、歯付ベルト13bの真上に位置する。
【0112】
案内ホイール14の間では、歯付ベルト13aはモータ要素3aの歯付ホイール15aの周りに巻きつけられる。図5の直線軸駆動装置と同様に、比較的小容量のタイミングベルトが、Cボウ要素16の後ろに、例えばCボウ要素16の外面に接着されて、他のベルト13aが歯付ベルト13bと歯と歯の噛み合う状態で、位置し得る。接着されたベルト13bと浮動ベルト13aの両方のベルトは、Cボウ要素16のそれぞれの端部に固定されるが、予張力は無いまたは少なくとも減少される。歯付ベルト13aは、図2、3のオメガ駆動装置と同様にモータ要素3aの歯付ホイール15aの周りに巻きつく。
【0113】
ここで図7を参照すると、本発明によるX線装置の例示の実施形態の概観が描かれる。
【0114】
X線装置21は、X線発生装置8とX線検出器7とを有する、天井取付けCアークX線装置1を有する。患者支持器20の上には、物体9がアイソセンタにまたは少なくともX線発生装置8とX線検出器7との間の経路に配置される。
【0115】
X線装置21は、運動制御要素10により制御され、場合により制御撮像パラメータをさらに制御する。
【0116】
天井取付けCアークX線装置1は、複数の移動要素25を有し、モータ補助運動アセンブリ2a乃至2dとして実装される。モータ補助運動アセンブリ2aは、図1に関するCアークの角度形成の運動を提供し得る一方、モータ補助運動アセンブリ2bは図1に関するCアークの回転を提供し得る。
【0117】
モータ補助運動アセンブリ2dは、X線発生装置8とX線検出器7との間の距離の変化をもたらし得る。モータ補助運動アセンブリ2cは、CアークX線装置1の天井、すなわちCアークX線装置1の天井支持構造に略平行な2次元直線運動を可能にすることができるとともに、天井または天井支持構造に略垂直な軸回りのさらなる回転運動能力も提供し得る。CアークX線装置1の患者支持器20に対する高さを調整するさらなる運動能力がモータ補助運動アセンブリ2cまたは2bのいずれかに実装され得る。
【0118】
さらに、患者支持器20が高さ調整を提供してもよい。全ての移動要素25またはモータ補助運動アセンブリ2a乃至2dは、使用者により手動で制御され得るまたは運動制御要素10により自動的に動作可能であり得る。
【0119】
ここで図8を参照すると、図4によるX線装置の画像生成部の詳細図が描かれる。
【0120】
X線発生装置8とX線検出器7とを有する図8のCアークX線装置1が異なる角度から示される。各移動要素25またはモータ補助運動アセンブリ2c乃至2dのそれぞれの運動の自由度もまた描かれる。
【0121】
手動制御要素4が特にモータ補助運動アセンブリ2cの並進または回転運動に影響を与える。さらなる手動制御要素が、モータ補助運動アセンブリ2a、2bおよび2dの補助運動のために提供され得るが、図8には描かれていない。
【0122】
CアークX線装置1は、例えば天井に取り付けられたレールにより長手方向に動かされることができ、場合により手術室の天井に平行な2次元の運動を提供する。モータ作動で移動可能または手動制御であり得る。例示のCアークX線装置1は、通常1000kgを超える重さがあるので、全くの手動の補助の無いモードでの必要な操作力は極めて高くなり得る。
【0123】
したがって、モータ補助運動アセンブリは有益になり得る。この実施では、CアークX線装置1は、被案内要素19に取付けられ得る。この被案内要素19は案内要素18に沿って移動し得る。歯付ベルト13a、bが案内要素18の端部に取付けられ、例えばレールが被案内要素19、例えば長手方向台車、に噛み合う。残りの運動能力、特にモータ補助運動は前述の通りでありとみなされ得る。
【0124】
ここで図9を参照すると、本発明による患者支持器の例示の実施形態の概観が描かれる。
【0125】
図9では、患者支持器20は、1つまたは2つの軸の傾斜を決定するよう適合された傾斜決定要素22と、例えば重量センサ等、力、圧力または質量を決定する要素23とを有する。検査される物体9は、2つの交差する矢印により描かれるように2次元で動かされ得る移動可能な患者ベッドに位置する。
【0126】
患者支持器20のテーブル面は、手動で長手方向および横断方向に手動で浮動し得る。テーブル基部の剛性のために、特に重い検査される物体9と組み合わされるときに、延長されたテーブル面位置に傾斜たわみ(tilt sag)が発生し、長手方向のアンバランス力を生じ得る。
【0127】
しかし、特定の医学的介入のために、正確な位置決めが必須である。手動で制御された補助運動は、傾斜たわみを補償することができるとともに、患者支持器20に関連する摩擦および質量力も減少させることができる。
【0128】
患者テーブルの長手方向および/または横断方向の運動は、物体9の重量に起因する追加的なアンバランス状態を除いて、図7および図8のCアークX線装置1のものと同等とみなされ得る。不釣合力は、傾斜決定要素22により決定される傾斜角度と、力センサ23により決定される物体9の質量とから決定され得る。
【0129】
角度決定要素22または角度センサは、水平方向の端に対する傾斜を測定し得る一方、力決定要素または力センサは垂直方向の力を測定し得る。質量、重力加速度および傾斜たわみ角の湾曲の計算または掛け算は、アンバランス力を与え得る。この値またはパラメータは、図4の補助フィードフォワードによりモータ補助の寄与として使用され得る。測定された質量はまた、質量補償のために使用され得る。図9の機構は、検査される物体9の重量または位置にかかわらず、最適な補助を提供し得る。
【0130】
説明の過程では、モータ要素3aが特に第1構造要素5に配置されるとともに手動制御要素4が特に第2構造要素6に配置されているが、位置の変形または置き換えもあり得ることが理解されるべきである。言い換えると、モータ要素3aが第2構造要素6にも配置され得るとともに手動制御要素4が第1構造要素5にも配置され得る。
【0131】
「有する、含む(comprising)」の語は他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つ(a、an)」は複数を排除しないことに留意すべきである。また、異なる実施形態に関連して記載された要素は組み合わせ得る。
【0132】
特許請求の範囲の参照番号が特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことにも留意すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9