(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、最新のファームウェアしかダウンロード出来ないという課題がある。又、画像形成装置の環境条件に応じた適切なファームウェアをダウンロード出来ないという課題がある。
【0006】
画像形成装置は、動作時の周囲の環境条件による影響を非常に敏感に受けるため、設置環境や季節により画像形成装置の性能が大きく変化する。そのため、特定の条件の範囲内の環境下では、多少の環境条件の変動が生じても、画像形成装置が一定の品質を確保できるように、当該画像形成装置に補正制御が組み込まれている。
【0007】
しかしながら、上述した補正制御は、特定の条件内であれば、正規のファームウェアで対応出来るものの、前記特定の条件を超えた場合、正規のファームウェアで対応することが出来ない。そのため、製造者が、この補正制御を含む特定環境下の専用ファームウェアを作成し、ウェブサイトにリリースする場合がある。環境条件が特定環境となれば、ユーザーが画像形成装置にこの専用ファームウェアをダウンロードすれば良いものの、環境条件が通常環境となれば、ユーザーが正規のファームウェアに戻さなければならないという課題がある。又、ユーザーが専用ファームウェアを正規ファームウェアに戻さない場合、画像形成装置に悪影響が生じる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、環境条件の変動に応じて適切なファームウェアの書き換えを実施することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る画像形成装置は、環境取得部と、記憶部と、環境判定部と、ファームウェア選択部と、ファームウェア書き換え部と、を備える。環境取得部は、画像形成装置の周囲の環境に関係する環境情報を環境センサーから取得する。記憶部は、環境条件テーブルと、ファームウェアテーブルとを格納する。前記環境条件テーブルは、特定の環境を示す登録環境情報に、当該特定の環境を識別するための識別情報を関連付けて記憶する。前記ファームウェアテーブルは、前記識別情報に、当該識別情報の環境条件に対応したファームウェアを関連付けて記憶する。環境判定部は、前記環境条件テーブルに基づいて、前記取得された環境情報が、前記登録環境情報に対応するか否かを判定する。ファームウェア選択部は、前記環境情報が前記登録環境情報に対応する場合、当該登録環境情報に関連付けられた識別情報と、前記ファームウェアテーブルとに基づいて、当該識別情報に対応するファームウェアを選択する。ファームウェア書き換え部は、現在使用しているファームウェアを、前記選択されたファームウェアに書き換えて、再起動を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置によれば、環境条件の変動に応じて適切なファームウェアの書き換えを実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の画像形成装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。又、フローチャートにおける数字の前に付されたアルファベットSはステップを意味する。
【0013】
以下に、本発明の実施形態の一例として、画像形成装置について説明する。尚、本発明の画像形成装置は、例えば、ファクシミリ、コピー、スキャナ、プリンター等の機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral)が該当する。
【0014】
複合機100は、
図1に示すように、操作部を介してユーザーから印刷ジョブの設定条件を受け付けると、画像読取部、画像処理部、搬送部、定着部等の各部を駆動し、当該印刷ジョブを提供する。又、複合機100の画像処理部又は定着部の近傍に、複合機100の環境条件(例えば、温度、湿度等)を計測する環境センサー101が予め設けられている。
【0015】
尚、複合機100の制御回路は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、各駆動部に対応するドライバを内部バスによって接続している。
【0016】
複合機100のCPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいてドライバからのデータ、指示、信号、命令等を授受し、印刷ジョブの実行に関する各駆動部の動作を制御する。又、駆動部以外の後述する各部(
図2に示す)についても、CPUが、各プログラムを実行することで当該各部を実現する。ROM、RAM、HDD等には、以下に説明する各部を実現するプログラムやデータが記憶されている。
【0017】
次に、
図2、
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、ユーザーが複合機100の電源を投入すると、当該複合機100の制御部201が各部を起動するとともに、その旨を環境取得部202に通知する。当該通知を受けた環境取得部202は、環境センサー101を起動させて(
図3:S101)、環境センサー101が検知する環境情報を取得する(
図3:S102)。この環境情報は、複合機100の周囲の環境に関係する情報を意味し、例えば、温度、湿度、気圧等を挙げることが出来る。
【0018】
環境取得部202が環境情報を取得すると、その旨を環境判定部203に通知し、当該通知を受けた環境判定部203は、前記取得された環境情報が、特定の環境を示す登録環境情報に対応する(前記環境情報が前記登録環境情報に含まれる)か否かを判定する(
図3:S103)。
【0019】
環境判定部203が判定する方法に特に限定は無い。例えば、環境判定部203は、特定の記憶部203aに予め記憶された環境条件テーブルを参照する。前記環境条件テーブル400には、
図4Aに示すように、特定の環境を示す登録環境情報401と、当該登録環境情報401の条件が継続した期間を示す登録継続期間402と、特定の環境を識別するための識別情報(ID)403が関連付けて記憶されている。ここで、特定の環境とは、補正制御を含む専用ファームウェアを実行しなければ、一定の品質を確保した印刷物を出力することが出来ない異常の環境や通常のファームウェアでも、一定の品質を確保した印刷物を出力することが出来る通常の環境を含む。
図4Aに示す環境条件テーブル400には、例えば、登録環境情報が「低温(0度以下)」である場合、「二日以上」の登録継続期間が記憶され、登録環境情報が「高温(30度以上)」である場合、「二日以上」の登録継続期間が記憶され、登録環境情報が「高温高湿(30度以上、80%以上)」である場合、「一日以上」の登録継続期間が記憶されている。又、登録環境情報が「通常温度、通常湿度(0度超、30度未満、80%未満)」である場合、「三日以上」の登録継続期間が記憶されている。これらの組み合わせは、適宜設計変更することが可能である。
【0020】
環境判定部203は、前記参照した環境条件テーブル400の登録環境情報401と、前記環境センサー101で取得された環境情報(例えば、温度、湿度)とを照合する。前記照合の結果、前記取得された環境情報が、前記環境条件テーブル400の登録環境情報401のいずれかに対応する場合、環境判定部203は、予め設けられた特定の計時部203b(RTC)を用いて、この対応した環境情報が継続する継続期間を計時する。そして、環境判定部203は、当該計時した継続期間が、前記登録環境情報401の登録継続期間402を満たすか否か判定する。つまり、環境判定部203は、前記取得された環境情報と前記環境条件テーブル400とに基づいて、特定の環境が特定の期間継続したか否かを判定する。
【0021】
S103において、前記取得された環境情報が前記環境条件テーブル400の登録環境情報401のいずれも対応しない場合、又は、前記計時した継続期間が前記登録環境情報401の登録継続期間402を満たさない場合(
図3:S103NO)、環境判定部203は、特定の環境が特定の期間継続していないと判定する。そして、環境判定部203は、新たな環境情報を受けて、S103で、再度、上述の判定を実施する。これにより、環境センサー101の環境情報を常時監視(モニター)することが出来る。
【0022】
一方、S103において、前記計時した継続期間が前記登録環境情報401の登録継続期間402を満たす場合(
図3:S103YES)、環境判定部203は、現在の環境は、前記登録環境情報401が示す特定の環境である(特定の環境が特定の期間継続した)と判定する。そして、環境判定部203は、当該継続した特定の環境を示すID403(例えば、「A」)を取得し、当該ID403(「A」)に対応するファームウェア書き換え要求をファームウェア選択部204に通知する(
図3:S104)。すると、ファームウェア選択部204がファームウェア書き換えモードへ移行して、前記登録環境情報401に関連つけられたID403(「A」)と、ファームウェアテーブル404とに基づいて、当該識別情報に対応するファームウェアを選択する(
図3:S105)。
【0023】
ファームウェア選択部204が選択する方法に特に限定は無い。例えば、ファームウェア選択部204は、前記記憶部203aに予め記憶されたファームウェア選択テーブル404を参照する。前記ファームウェア選択テーブル404には、
図4Bに示すように、前記特定の環境の環境条件を示すID405と、当該ID405の環境条件に対応したファームウェア406とが予め記憶されている。この記憶部203aは、例えば、不揮発性メモリーであり、各ファームウェア406は、複合機100がダウンロードする必要が無いように、予め不揮発性メモリーに記憶されている。そして、各ファームウェア406は、対応する環境条件に特化されたファームウェアであり、異常の環境であれば、補正制御を含むその環境下の専用のファームウェアが記憶され、通常の環境であれば、通常のファームウェアが記憶される。そして、ファームウェア選択部204は、前記満たした環境条件に対応するID(「A」)と、前記ファームウェア選択テーブル404のID405とを照合し、当該照合したID405に対応するファームウェア406(「aaa」)を選択する。
【0024】
ファームウェア選択部204が選択を完了すると、その旨をファームウェア書き換え部205に通知し、当該通知を受けたファームウェア書き換え部205は、現在使用しているファームウェアを、前記選択されたファームウェアに書き換えて(
図3:S106)、再起動を実行する(
図3:S107)。尚、現在使用しているファームウェアは、例えば、制御部201の特定のメモリーに記憶されている。このファームウェアが前記選択されたファームウェアに書き換えられる。
【0025】
ここで、ファームウェア書き換え部205が書き換えるタイミングに特に限定は無い。例えば、ユーザーが複合機100を使用している場合には、ファームウェア書き換え部205は、前記書き換えを実行せず、前記複合機100の使用が完了したタイミングや複合機100が放置されて通常状態からスリープ状態へ移行するタイミングで、ファームウェア書き換え部205は、前記ファームウェアの書き換えを実行し、再起動する。これにより、ユーザーの複合機100の使用を妨害することなく、ファームウェアの書き換えを実行出来る。
【0026】
又、例えば、ID(「A」)に対応する低温環境では、複合機100にかぶりが生じ易くなる。そのため、この低温環境に対応する専用のファームウェア(「aaa」)に、このかぶりを補正するための制御を含ませておくことで、低温環境であっても、かぶりが生じず、一定の品質を確保した印刷物を提供することが出来る。他の環境であっても同様である。これにより、環境条件の変動に応じて適切なファームウェアを自動的に書き換えることが可能となる。そして、製造者やユーザーが環境条件の変動に応じてダウンロード作業等を実施する必要も無くなり、環境の変化に応じて毎回ファームウェアを書き換える手間を省くことが出来る。
【0027】
又、何らかの理由により、複合機100の環境条件が変動し、通常の温度及び湿度に変わった場合、前記専用のファームウェアは通常のファームウェアに自動的に書き換えられることになる。即ち、環境取得部202が、通常の温度及び湿度に対応する環境情報を取得し、環境判定部203が、前記環境条件テーブルに基づいて、前記取得された環境情報が、常温常湿等の通常の環境を示す通常登録環境情報に対応するか否かを判定する。そして、前記環境情報が前記通常登録環境情報に対応する場合、ファームウェア選択部204が、当該通常登録環境情報に関連付けられたID403と、前記ファームウェアテーブル404とに基づいて、当該ID403に対応する通常のファームウェアを選択する。そして、ファームウェア書き換え部205が、前記通常のファームウェアに書き換えし、再起動を実行する。このように、異常の環境が通常の環境に戻った場合であっても、機械の性能を維持することが可能となる。特に、専用のファームウェアを使用している複合機100が、通常の環境に戻ったにもかかわらず、そのまま専用のファームウェアを継続的に使用すると、複合機100の各部にダメージを与える可能性がある。本発明の実施形態では、専用のファームウェアを通常のファームウェアに更新し忘れることによる複合機100の損傷を確実に防止することが出来る。
【0028】
尚、本発明の実施形態では、前記取得された環境情報が特定の登録環境情報401を満たし、且つ、当該環境情報が継続する継続期間が当該登録環境情報401に関連付けられた登録継続期間402を満たす場合に、環境判定部203が、現在の環境が前記特定の環境であると判定したが、他の構成でも良い。例えば、環境判定部203が、季節(夏季、冬季等)を加味して、現在の環境が前記特定の環境であると判定しても良い。前記環境条件テーブル400に、登録環境情報401、登録継続期間402に、更に、特定の時期を示す登録時期を関連付けて記憶させる。この登録時期は、季節に対応し、例えば、夏季であれば、6月から8月、冬季であれば、12月から2月である。次に、環境判定部203は、予め設けられた計時部(RTC)から、現在の年月日を取得し、前記取得した年月日が、前記登録時期に含まれるか否かを判定する。そして、前記取得された環境情報が特定の登録環境情報を満たし、当該環境情報が継続する継続期間が当該登録環境情報に関連付けられた登録継続期間を満たし、且つ、前記取得された現在の年月日が前記登録時期に含まれる場合に、現在の環境が前記特定の環境であると判定する。これにより、季節を加味したファームウェアの書き換えを実現することが可能となり、環境センサー101のみを頼った誤ったファームウェアの書き換えを防止することが可能となる。
【0029】
又、本発明の実施形態では、環境取得部202が、環境センサー101の環境情報のみ取得したが、他の構成でも良い。例えば、環境取得部202が、定着部の定着温度や、スリープ状態へ移行してからスリープ状態が解消されるまでの復帰時間を取得する。そして、環境判定部202が、前記取得された定着温度が予め登録された登録定着温度を満たすか否かを判定するとともに、前記取得された復帰時間が予め登録された登録復帰時間を満たすか否かを判定する。そして、前記環境情報が前記登録環境情報を満たし、当該環境情報が継続する継続期間が前記登録継続期間を満たし、更に、前記定着温度が前記登録定着温度を満たし、前記復帰時間が前記登録復帰時間を満たす場合に、現在の環境が前記特定の環境であると判定する。これにより、例えば、空調が整った環境であり、通常の環境に近いのか、空調が無く、異常の環境に変動し易いのかという現実の状況に応じて、ファームウェアの書き換えを精度高く実施することが出来る。
【0030】
又、本発明の実施形態では、前記環境条件テーブル400は、前記登録環境情報401を、前記登録継続期間402と、前記ID403とに関連付けて記憶するよう構成したが、他の構成でも良い。例えば、前記取得された環境情報が、高温高湿等の異常環境を示す登録環境情報に含まれていれば、前記ファームウェアの書き換えは、期間を問わず、原則、実行しても良いため、前記環境条件テーブル400は、前記登録環境情報401を、前記ID403に関連付けて記憶するよう構成しても良い。この場合、環境判定部203は、前記取得された環境情報が前記登録環境情報401に対応するか否かを判定し、ファームウェア選択部204は、前記環境情報が前記登録環境情報401に対応する場合、前記登録環境情報401に関連付けられたID403と、前記ファームウェアテーブル404とに基づいて、当該ID403に対応するファームウェア406を選択する。これにより、処理を簡略化することが出来る。
【0031】
又、本発明の実施形態では、例えば、環境判定部203がエンジンCPUであり、ファームウェア選択部204及びファームウェア書き換え部205がメインCPUであることを想定したが、他の構成でも構わない。
【0032】
又、本発明の実施形態では、複合機100が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、前記プログラムを複合機に読み出させ、当該複合機が前記各部を実現する。その場合、前記記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各手段が実行するステップをハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。