特許第6030113号(P6030113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030113シリカ構造を有するナノ粒子を含む親水性コーティングを有する分析用補助器具
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  • 特許6030113-シリカ構造を有するナノ粒子を含む親水性コーティングを有する分析用補助器具 図000084
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030113
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】シリカ構造を有するナノ粒子を含む親水性コーティングを有する分析用補助器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20161114BHJP
   A61B 5/157 20060101ALI20161114BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALN20161114BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALN20161114BHJP
   C09D 1/00 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   A61B5/14 300D
   A61B5/14 300L
   !B82Y30/00
   !B82Y40/00
   !C09D1/00
【請求項の数】33
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2014-500372(P2014-500372)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公表番号】特表2014-517714(P2014-517714A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012054993
(87)【国際公開番号】WO2012126945
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】11159172.3
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100184826
【弁理士】
【氏名又は名称】奥出 進也
(72)【発明者】
【氏名】グライベ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バビッチ、ブラニスラフ
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−527287(JP,A)
【文献】 特開2002−302617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/151
A61B 5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を含む分析用補助器具であって、親水性コーティングが、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含み、そしてナノ粒子が構造(I)または(II)の基:
【化1】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化2】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む分析用補助器具。
【請求項2】
Rが、H、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオン、
【化3】
からなる群より選択され、および
+=Al+である請求項1記載の分析用補助器具。
【請求項3】
前記ナノ粒子のシリカ構造が、Sn、Ti、Zr、Ge、In、Ga、AlおよびBからなる群より選択される少なくとも1つの外来原子を有する請求項1または2記載の分析用補助器具。
【請求項4】
前記外来原子がAlである請求項3記載の分析用補助器具。
【請求項5】
前記ナノ粒子が1〜100nmの範囲の平均粒子径を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項6】
前記ナノ粒子が1〜50nmの範囲の平均粒子径を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項7】
前記ナノ粒子が3〜20nmの範囲の平均粒子径を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項8】
全てのR基の10〜40%が
【化4】
である請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項9】
式(I)の基が式(Ia)または(Ib):
【化5】
(式中、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルからなる群より選択される)
である構造を有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項10】
前記親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項11】
少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた分析用補助器具の表面が、少なくとも部分的に金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項12】
記親水性コーティングが最大500nmの幅の厚さを有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項13】
前記親水性コーティングが最大300nmの幅の厚さを有する請求項12記載の分析用補助器具。
【請求項14】
前記親水性コーティングが最大100nmの幅の厚さを有する請求項12記載の分析用補助器具。
【請求項15】
前記厚さが平均の厚さである請求項12〜14のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項16】
前記親水性コーティングの表面が、DIN 55660.2にしたがって測定される場合に、50°より小さい対水接触角を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項17】
分析用補助器具が、ニードルエレメント、キャピラリ、カニューレ、体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための試験エレメント、および、収集された体液のサンプルを分配するための分配エレメントからなる群より選択される請求項1〜16のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項18】
前記ニードルエレメントがランセットである請求項17記載の分析用補助器具。
【請求項19】
前記キャピラリがキャピラリギャップである請求項17記載の分析用補助器具。
【請求項20】
前記分配エレメントが展延性網状組織またはプラスティックフィルムである請求項17記載の分析用補助器具。
【請求項21】
前記展延性網状組織および/またはプラスティックフィルムが、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物でコートされている請求項20記載の分析用補助器具。
【請求項22】
分析用補助器具が、体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)のニードルエレメント(112)である請求項1〜21のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【請求項23】
少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を含む分析用補助器具を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)分析用補助器具を提供する工程、
(b)分析用補助器具を、少なくとも1つの分散剤と、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にある、シリカ構造を有するナノ粒子とを含む混合物Gと接触させることにより分析用補助器具をコーティングする工程であって、
前記ナノ粒子が
構造(I)または(II)の基:
【化6】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化7】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む工程、および
(c)工程(b)によって得られた分析用補助器具を乾燥する工程、
を含む方法。
【請求項24】
前記工程(b)における接触が、浸漬塗装および/またはスプレー塗装および/またはコンタクトコーティングによって行われる請求項23記載の方法。
【請求項25】
分析用補助器具および/または分析用補助器具の表面が、少なくとも部分的には金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物で構成される請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記工程(c)によって得られた分析用補助器具を滅菌する工程(d)をさらに含む請求項23記載の方法。
【請求項27】
コートされる分析用補助器具の表面が、工程(b)の前に少なくとも1つのエッチング液を用いておよび/またはプラズマを用いて処理される請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの分散剤が水である請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物Gが2〜10の範囲のpHを有する請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子が構造(I)の基を含み、かつ、全てのR基の10〜40%が
【化8】
である請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
分析用補助器具がニードルエレメント(112)および試験エレメントからなる群より選択される場合に、分析用補助器具に関する請求項1〜22のいずれか1項に記載の少なくとも1つの分析用補助器具を含む、体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)。
【請求項32】
シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子の、分析用補助器具の表面のための親水性コーティング(122)としての使用であって、前記ナノ粒子が、構造(I)または(II)の基:
【化9】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化10】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
である使用。
【請求項33】
体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)のニードルエレメント(112)のための親水性コーティング(122)としての請求項32記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具(Analytisches Hilfsmittel)であって、親水性コーティングが、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法(dynamische Lichtstreuung))にしたがって決定された平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。本発明はさらに、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法)にしたがって決定された平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含む、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具の製造方法に関する。本発明はまた、本方法により製造され得る分析用補助器具および開示された少なくとも部分的にコートされた分析用補助器具を備えるサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、数多くの分析用補助器具、特には液体サンプルの成分の迅速かつ定量的な分析的測定のための、例えば、個別のテストストリップもしくはストリップの形の試験材料の形状の、または、試験エレメント(Testelement)がサンプリング装置の一部である一体化されたシステムにおける分析用補助器具が開示されている。簡易なおよびより経済的な製造および成分安定性のため、従来の試験エレメントは通常、プラスティックまたは金属で作られており、そして、一般的に、液体サンプル、一般には水性サンプルによる分析用補助器具の迅速かつ一様な湿潤のために問題となる比較的疎水性の表面を有する。
【0003】
例えば特許文献1から、ニードルエレメントを有し、かつ、それを用いることにより体液中の少なくとも1つの分析物が定性的または定量的に検出され得る試験エレメントを備える、体液を収集するためのサンプリング装置が公知である。この場合、体液のサンプルは、ニードルルエレメントに沿って試験エレメントへと運ばれる。通常、皮膚中へのニードルエレメントの挿入場所は試験エレメントからある程度離れた場所に位置されているので、通常、体液のサンプルは試験エレメントに到達するまでキャピラリに沿って数ミリメートル進まなければならない。通常、スチールで作られているニードルエレメントが使用され、これは比較的疎水性のスチール表面を有しており、そしてしたがって、水性の体液を輸送するためにあまり適切なものではない。
【0004】
ニードルエレメントに沿った体液の流速を増加させることを目的として、特許文献2は、親水性コーティングを用いたニードルエレメントの表面の修飾について記載している。例えばポリソルベートなどの非イオン性界面活性剤が親水性コーティングとして特に言及されている。
【0005】
同様に、特許文献3は、例えばAlOOH、TiOx、SiO2などの、親水化するための金属酸化物コーティングを開示しており、ここでこれらのコーティングは、例えば懸濁液中の離散粒子の形状で適用され、および定着される。例えばPVP−PEGなどの有機ポリマー化合物の、および、例えばPAAまたはヘパリン塩などの水溶性有機ポリ酸および/またはその塩の、親水性コーティングとしての使用がまた、従来技術から公知である。
【0006】
ニードルエレメントの親水性表面を形成するために、例えばスチール表面のエッチングまたは活性化金属表面を作製するという意味におけるプラズマまたはコロナ処理などの物理化学的手段による親水性化がまた可能である。通常、これらの効果は一時的なものであり、したがって一般的に、その後のコーティングのためにニードルエレメント表面を調製するための補助的な手段にすぎない。
【0007】
ニードルエレメントに沿った体液の輸送を改善するために、追加でキャピラリ機能を備えた表面構造が提供され得、そしてまさにこのキャピラリ表面構造の親水性コーティングが、ニードルエレメントに沿った体液の輸送速度のためにとりわけ有利であり得る。
【0008】
特許文献4は、液体のキャピラリ輸送のためのマイクロ流体システムとしてデザインされているニードルエレメント、および、前記ニードルエレメント上に親水性の表面コーティングを適用するための方法について記載する。ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、硫酸デキストランおよび/またはコンドロイチン硫酸が表面コーティング材料として使用される。特に好ましくは、ニードルエレメント上のマイクロチャンネルとして形成される表面構造が前記親水性の表面コーティングとともに提供され、ニードルエレメントに沿った体液の迅速かつ着実な輸送を確実なものとする。
【0009】
しかしながら、従来技術中で開示されているコーティング材料は不適切な安定性、とりわけ不適切な長期安定性をしばしば有している。発明者らは、不適切な安定性の理由として、例えば、基板のコートされた表面上へのコーティングの不十分な結合を挙げることができ、これはコーティング処理のあいだにおける、または、例えばこのような方法でコートされたニードルエレメントが皮膚中に挿入された時などの基板の保管もしくは基板の使用のあいだにおけるコーティングの分離をもたらし得る。親水性コーティングは、室温におけるより長期の保存に対してまたは温度の変動に対して抵抗性ですらないかもしれない。さらに、いくつかの化合物は、滅菌条件に暴露される場合の低い安定性および/またはパッケージングからのガス発生に対する低い抵抗性を示す。
【0010】
特に、パッケージング材料に対する非安定性はしばしば、例えば基板がプラスティック材料中にパッケージされる場合などに、コートされた表面の親水性が保管の間に顕著に低下し、そして保管後の基板の十分な親水性がもはや保障されないということを意味する。この親水性の損失は、例えば揮発性物質、通常非極性の、パッケージング材料の成分の吸収によって説明され得る。
【0011】
このような親水性の損失を避けるために、特許文献5は、親水性コーティングのための緩いカバリングおよび/またはパッケージ中への吸収剤の添加を含む、親水性コーティングによる前記揮発性成分の吸収を防ぐための特定のパッケージングの使用を記載する。しかしながら、特許文献5において提案されるパッケージングは、複雑、高価であり、そしてとりわけ、パッケージからの基板の確実な開梱をもまた提供しなければならない自動操作の測定器具にとって不都合である。
【0012】
特許文献6は、流体サンプルを収集するための器具および方法を記載する。これはとりわけ、分析物検出器および接触ポイントから検出ポイントまでサンプル流体の輸送を行うための勾配手段を備える、一体化された収集装置を開示している。一体化された収集装置は、複数の層を含む層状構造を備える。デザインはとりわけ、第一の層および表面層を形成する第二の層で特徴付けられる。親水性表面はヒュームドシリカのナノ粒子を用いた粉体塗装によって生成される。
【0013】
したがって、十分な安定性、とりわけ揮発性物質、一般的には非極性の、パッケージング材料の成分の存在下においてでさえの十分な安定性を有する、親水性コーティングを備える分析用補助器具の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/045412号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2025287号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2014727号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1887355号明細書
【特許文献5】国際公開第2008/015227号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0179373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はしたがって、有利な濡れ性特性を有し、かつ、コーティングの高い安定性によって特徴付けられる、親水性コーティングを備える分析用補助器具を提供するという問題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、本課題は独立クレームの要件によって解決される。有利な実施態様は、従属クレームの要件で提示される。
【発明の効果】
【0017】
驚くべきことに、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法)にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子が、分析用補助器具をコーティングするために使用された場合、特に顕著な特性を有する分析用補助器具が製造される。そのようにコートされた分析用補助器具は、有利な親水性および濡れ性によって特徴付けられる。さらに、コーティングの高い安定性が提供される。
【0018】
したがって、本発明はまた、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法)にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含み、そして、ナノ粒子が構造(I)および/または(II)の基:
【化1】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化2】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む分析用補助器具に関する。
【0019】
例えば上述のヒュームドシリカナノ粒子を用いた親水性の表面コーティングを開示しているにすぎない特許文献6に対し、本発明によって提供されるナノ粒子はしたがって、構造(I)および/または(II)の基を含む。
【0020】
本発明はまた、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具を製造するための方法にも関し、ここで前記方法は、
(a)分析用補助器具を提供する工程、
(b)分析用補助器具を、少なくとも1つの分散剤と、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にある、シリカ構造を有するナノ粒子とを含む混合物Gと接触させることにより分析用補助器具をコーティングする工程であって、
前記ナノ粒子が、
構造(I)および/または(II)の基:
【化3】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化4】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む工程、
(c)工程(b)によって得られた分析用補助器具を乾燥する工程、および
(d)任意には、工程(c)によって得られた分析用補助器具を滅菌する工程
を含み、ここで、工程(b)における接触が、好ましくは浸漬塗装(Tauchbeschichtung)および/またはスプレー塗装(Spruhbeschichtung)および/またはコンタクトコーティング(Kontaktbeschichtung)によって行われ、そして、分析用補助器具および/または分析用補助器具の表面が好ましくは、少なくとも部分的には金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物(Mischmetalloxid)および/または金属混合酸化物(Metallmischoxid)で構成される。
【0021】
別の実施態様によれば、本発明はまた、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法)にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子の、分析用補助器具の表面のための親水性コーティング、好ましくは、体液を収集するためのサンプリング装置のニードルエレメントのための親水性コーティングとしての使用であって、前記ナノ粒子が、構造(I)および/または(II)の基:
【化5】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化6】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む使用に関する。
【0022】
ナノ粒子
上述されるように、コーティングは、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008(動的光散乱法)にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含む。
【0023】
好ましくは、ナノ粒子は1〜100nmの範囲、より好ましくは1〜50nmの範囲、さらに好ましくは3〜25nmの範囲、および特に好ましくは5〜15nmの範囲のサイズを有する。
【0024】
ナノ粒子は好ましくは、100〜700m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0025】
コーティングは好ましくは、500nm以下、例えば300nm以下の平均の層厚(以下、平均厚さ(mittlere Dicke)または平均厚さ(gemittelte Dicke)ともまた称される)を有する。層厚は、通常使用される方法によって、例えば破壊または非破壊方法の手段によって測定され得る。より具体的には、層厚は、エリプソメーターを用いて、および/または、走査型力顕微鏡を用いて、および/または、スタイラスを用いて、そのたわみおよび/またはその位置が記録される層の表面をスキャンする装置である「アルファステップ(Alpha-Steppers)」を用いて測定され得る。他の測定方法もまた考えられ得る。代わりにまたは追加で、平均の層厚はさらに半経験的に計算および/または測定されてもよい。例えば、平均の層厚は公知のコーティングの厚さおよびコーティング量から決定され得る。したがって、例えば、計算された平均の層厚は、30〜300nmの範囲、特には50〜150nmの範囲にあるかもしれない。例えば一またはそれ以上のチャネルおよび/またはキャピラリおよび/またはエッジ効果におけるゆらぎなどのゆらぎは本明細書においては考慮される必要はない。
【0026】
ナノ粒子の構造については、上述されるようにナノ粒子は、シリカ構造を有する、構造(I)および/または(II):
【化7】
の基を含むナノ粒子である。
【0027】
好ましくは、ナノ粒子の表面の少なくとも一部分は、構造(I)の基または構造(II)の基を用いて、好ましくは少なくとも構造(I)の基を用いて修飾される。
【0028】
好ましい実施態様によれば、本発明はしたがって、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた少なくとも1つの表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが、構造(I)の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および、前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように構造(I)の基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0029】
構造(I)の基
上述されるように、残基Rは、H、金属含有イオン、
【化8】
からなる群より選択され、式中、
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H,アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1である。
【0030】
RがHである場合、シリカ粒子は好ましくは、
【化9】
である構造の基を含む。
【0031】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化10】
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0032】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように
【化11】
である構造の基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0033】
別の実施態様によれば、Rは金属含有イオンである。この場合、シリカ粒子はしたがって、好ましくは
【化12】
である構造の基を含む。
【0034】
好ましい実施態様によれば、X+は、例えばMg2+またはCa2+などのアルカリ土類金属含有イオン、アルカリ金属イオン、またはアルミニウム含有イオンである。
【0035】
Rがアルカリ金属イオンである場合、ナノ粒子は、好ましくは
【化13】
である構造、または、
【化14】
である構造の基を含む。
【0036】
特に好ましくは、アルカリ金属は、Li+、Na+、K+およびそれらの混合物からなる群より選択される。本文脈において、用語「それらの混合物(Mischungen davon)」とは、
【化15】
である構造のそれぞれ独立した基において、
シリコンナノ粒子中に含まれる、Si−O−X+である構造のさらなるそれぞれの基中に含有されるそれぞれのX+とは独立して、
【化16】
中に含有されるX+がLi+、Na+、K+からなる群より選択されることを意味しており、したがって、ナノ粒子はいずれの場合にも、いくつかの異なるアルカリ金属対イオンを有することができる。非常に特に好ましくは、X+はNa+である。
【0037】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化17】
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0038】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように
【化18】
である構造の基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0039】
別の実施態様によれば、Rは、以下の構造
【化19】
を有するカチオンであり、式中、Rw、Rx、40RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択される。
【0040】
本発明の意味において使用される、用語「アルキル(alkyl)」は、直鎖または分岐の、任意には置換されていてもよいアルキル残基を意味する。
【0041】
wおよび/またはRxおよび/またはRyおよび/またはRzがアルキル残基である場合、アルキル残基は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルからなる群より選択され、好ましくはメチルである。
【0042】
Rが
【化20】
である場合、Rw、Rx、RyおよびRzは、特に好ましくは、それぞれ互いに独立して、H、メチルおよびエチルより選択される。特に好ましくは、Rw、Rx、RyおよびRzはHである。
【0043】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化21】
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0044】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように
【化22】
である構造の基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0045】
上記ナノ粒子は、例えばLudox(登録商標)AS−30(Grace、Aldrich)またはLevasil(登録商標)200N/30%(EKA)などの名の下で入手可能である。
【0046】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、Rは
【化23】
であり、式中、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1である。
【0047】
本発明の好ましい実施態様によれば、Rは
【化24】
であり、式中、pおよびnは1であり、かつ、mは0である。
【0048】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化25】
である構造のシラン修飾されたケイ素基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0049】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように
【化26】
である構造の、シラン修飾されたケイ素基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0050】
シリコンナノ粒子が
【化27】
である構造の、シラン修飾されたケイ素基を含む場合、シリコンナノ粒子は、任意には、例えば
【化28】
である構造の基、および/または
【化29】
である構造の基、および/または
【化30】
である構造の基、および/または
シラン基の、同様の分岐修飾
(式中、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基である)
などの、シラン基のさらなる修飾を含んでいてもよい。
【0051】
本発明の意味において使用される、用語「置換されたアルキル残基(substituierter Alkylrest)」は、少なくとも1つのHが適切な置換基で置換されているアルキル残基を意味する。置換されたアルキル残基は、少なくとも1つの、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の置換基を含むことができ、ここで、2つ以上の置換基が存在している場合、存在している置換基は同一または異なっていてもよい。置換基の特性については、ナノ粒子が使用されるのであれば、原則として制限はなく、十分な親水性および安定性をもつコーティングが提供され得る。置換基は例えば、エポキシ、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバミン酸塩、カルバミド、アミジン、ニトロ、イミノ、SH、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アルデヒド、ケト基、例えばシクロペンチルまたはシクロへキシルなどのシクロアルキル、例えばモルホリノ、ピペラジニルまたはピペリジニルなどのヘテロシクロアルキル、およびグリコシルからなる群より選択され得る。特に好ましい置換基は、ヒドロキシル基、グリコシル基およびリン酸エステル基である。
【0052】
用語「シクロアルキル(Cycloalkyl)」とは、本発明の意味において、任意には置換されていてもよい、環状アルキル残基を意味しており、これらは単環基または多環基であってもよい。任意的に置換されたシクロヘキシルとしては、好ましい例としてシクロアルキル残基が挙げられ得る。
【0053】
用語「シクロヘテロアルキル(Cycloheteroalkyl)」とは、本発明の意味において、任意には置換されていてもよい、例えばO、NまたはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を環中にもつ環状アルキル残基を意味しており、これらは単環または多環基であってもよい。
【0054】
用語「置換されたシクロアルキル残基(substituierter Cycloalkylrest)」または「シクロヘテロアルキル(Cycloheteroalkyl)」とは、本発明の意味において、少なくとも1つのHが適切な置換基によって置換されている、シクロアルキル残基またはシクロヘテロアルキル残基を意味する。この場合、置換されたシクロアルキル残基またはシクロヘテロアルキル残基は、少なくとも1つの、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の置換基を含むことができ、ここで、2つ以上の置換基が存在している場合、存在している置換基は同一または異なっていてもよい。置換基の特性については、置換されたアルキル残基に関する例として開示された置換基が参照される。
【0055】
用語「アリール(Aryl)」とは、本発明の意味において、任意には置換されていてもよい、5または6員環の芳香族環、および、例えば三環式または二環式のアリール基などの、置換または未置換の多環式芳香族基(アリール基)を意味する。任意には置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基が例として挙げられる。多環式芳香族基はまた、非芳香族環を含んでいてもよい。
【0056】
用語「ヘテロアリール(Heteroaryl)」とは、本発明の意味において、任意には置換されていてもよい、5または6員環の芳香族環、および、一またはそれ以上の、例えば1、2、3または4などの1〜4個のヘテロ原子を環系中に有する、例えば三環式または二環式のアリール基などの、置換または未置換の多環式芳香族基を意味する。環系中に二以上のヘテロ原子が存在する場合、存在する少なくとも2つのヘテロ原子は同一または異なっていてもよい。例としては以下のヘテロアリール残基が挙げられ得る:ベンゾジオキソリル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾジオキサゾイル、ベンゾチアゾリル、ベンジミダゾリル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニリル、ナフチリジニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾフラニル、プリニル、ベンゾフラニル、デアザプリニル、またはインドリジニル。
【0057】
用語「置換されたアリール残基またはヘテロアリール残基(substituierter Arylrest oder Heteroarylrest)」とは、本発明の意味において、少なくとも1つのHが適切な置換基によって置換されているアリール残基またはヘテロアリール残基を意味する。この場合、置換されたアリール残基またはヘテロアリール残基は、少なくとも1つの、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の置換基を含むことができ、ここで、2つ以上の置換基が存在している場合、存在している置換基は同一または異なっていてもよい。置換基の特性については、化合物Mが十分な親水性を有し、および/または、十分に安定なコーティングが化合物Mによってもたらされ得るのであれば、原則として制限はない。置換基としては、例えば、アリール、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバミン酸塩、カルバミド、アミジン、ニトロ、イミノ、SH、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、例えばシクロペンチルまたはシクロへキシルなどのシクロアルキル、例えばモルホリノ、ピペラジニルまたはピペリジニルなどのヘテロシクロアルキル、糖残基およびヘテロアリールからなる群より選択され得る。
【0058】
用語「アルコキシアルキル(Alkoxyalkyl)」とは、一またはそれ以上の−O−基をアルキル鎖内に含むアルキル残基を意味する。前記用語は、アルキル−O−アルキル構造および類似の構造である基を含み、それぞれのアルキル残基は、上述されるように、置換されていてもよくまた未置換であってもよい。
【0059】
用語アルケニルとは、少なくとも1つのC−C二重結合をもつアルキル残基を意味する。考えられる置換基の特性については、前述のものが参照される。
【0060】
本発明の好ましい実施態様によれば、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、H、任意には置換されていてもよいアルキル残基および任意には置換されていてもよいアルコキシアルキル残基からなる群より選択される。
【0061】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが、構造(I)の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関し、
式中、Rは
【化31】
であり、および、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、H、任意には置換されていてもよいアルキル残基および任意には置換されていてもよいアルコキシアルキル残基からなる群より選択される。
【0062】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように、構造(I)の基を有し、
Rは
【化32】
であり、および、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、H、任意には置換されていてもよいアルキル残基および任意には置換されていてもよいアルコキシアルキル残基からなる群より選択されるナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0063】
以下の好ましい基が、Ra、RbまたはRc残基の例として挙げられ得る:
【化33】
である構造の基で修飾されたシリカナノ粒子の例としては、例えば以下のシランを用いて修飾される化合物が挙げられる:オクチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、イソシアネートシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチル−トリメトキシシラン、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル−ヘキシルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシランなどのグリシドキシ−および/またはグリシドキシプロピル基を有するエポキシ−シランまたはシラン、例えばビニルトリエトキシシランなどのビニル基を含むシラン、シラン無水物、すなわち、例えば無水コハク酸または無水マレイン酸などの環状有機無水物ユニットを有しているシランおよびそれらの加水分解生成物、および/または、例えば3−アミノプロピルトリエトキシ(またはトリメトキシ)シランおよびジ−トリアミノシランなどのアミノシラン。
【0064】
特に好ましくは、Ra、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、H、アルキル、および、以下の式:
【化34】
である基からなる群より選択され、式中、アルキル基は、より好ましくはメチルまたはエチルであり、および特に好ましくはエチルである。
【0065】
非常に特に好ましくは、pおよびnは1であり、および、m=0であり、および、RbおよびRcはメチルまたはエチル、好ましくはエチルであり、および、Rcはより好ましくは、
【化35】
である。
【0066】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子を含み、式(I)の基が式(Ia)または(Ib):
【化36】
である構造を有する分析用補助器具に関する。
【0067】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように、式(I)の基が式(Ia)または(Ib):
【化37】
(式中、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、H、アルキルから、好ましくは、H、メチルおよびエチルからなる群より選択される)
である構造を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0068】
前記ナノ粒子は、例えばBindzil(登録商標)CC30またはCC301およびCC40またはCC401(EKA Akzo Nobel)などの名の下で入手可能である。
【0069】
ナノ粒子が式(I)である基を含み、Rが
【化38】
である場合、シリコンナノ粒子
【化39】
中に存在する基の全てのR基の、好ましくは10〜50%が以下の式
【化40】
である構造を有する。
【0070】
ナノ粒子中に含まれるR基の、残りの50〜90%は、ナノ粒子を安定化させるためにどの対イオンが使用されるかに依存して、Hおよび/または金属含有イオンおよび/または
【化41】
である。好ましくは、残りのR基は、上述されるように、Hおよび/またはNa+である。
【0071】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化42】
(式中、好ましくは全てのR基の5〜50%が、式
【化43】
である構造を有する)
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0072】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように、
【化44】
(式中、好ましくは全てのR基の5〜50%が、式
【化45】
である構造を有する)
である構造の基を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0073】
構造(II)の基
本発明の別の実施例によれば、シリカナノ粒子は、式(I)の基に加えてまたはそれに代えて、式(II):
【化46】
の基を有する。
【0074】
特には、ナノ粒子は、式(I)の基または式(II)の基のどちらかを有しており、すなわち、ナノ粒子が式(I)の基をもつ場合、好ましくは式(II)の基をもたず、そしてまた逆も同様である。
【0075】
Mは金属であり、好ましくは3価の金属、より好ましくはアルミニウムである。特に好ましくは、しがたって、Mはアルミニウムであるか、またはM+=Al+である。
【0076】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子を含み、および、ナノ粒子が、構造(IIa):
【化47】
である基を含む分析用補助器具に関する。
【0077】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように構造(IIa):
【化48】
である基を含むナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0078】
アニオンA-の化学的特性については、アニオンが生理学的に適合性であり、および、分析用補助器具が使用されるにあたって結果を変造しない限り、原則として制限はない。好ましいアニオンとしては例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩およびリン酸水素塩などが挙げられる。特に好ましくは、A-は塩化物である。
【0079】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子を含み、および、ナノ粒子が、構造(IIa):
【化49】
である基を含む分析用補助器具に関する。
【0080】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子であって、上述されるように構造(IIa):
【化50】
である基を含むナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコートされる。
【0081】
構造(IIa)である基を含むナノ粒子は、例えばナノ粒子を塩化アルミニウムで処理することなどによって得られる。このようなナノ粒子は、例えばBindzil(登録商標)CAT(Akzo Nobel)などとして入手され得る。
【0082】
シリカ構造
ナノ粒子は、好ましくは非晶質シリカである、シリカ構造を有する。さらに、SiおよびOおよびRまたはM+基に加えて、ナノ粒子は、さらに外来原子を含んでいてもよい。外来原子としては例えば、Sn、Ti、Zr、Hf、Ge、In、Ga、P、AlまたはBが挙げられる。存在する場合、外来原子はシリカ構造中の一またはそれ以上のSi原子を置換する。
【0083】
本発明の一実施態様によれば、ナノ粒子は、外来イオンとしてアルミニウムを含む。
【0084】
したがって、本発明はまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子を含み、ナノ粒子のシリカ構造が、Sn、Ti、Zr、Hf、Ge、In、Ga、P、AlおよびBからなる群より選択される少なくとも1つの外来原子を有する分析用補助器具に関し、ここで好ましくは外来原子はAlである。
【0085】
本発明はまた、分析用補助器具の製造のための方法、および前記方法によって製造され得る分析用補助器具にも関し、ここで分析用補助器具は、少なくとも1つの分散剤と、シリカ構造を有するナノ粒子とを含む混合物Gを用いて、工程(b)においてコーティングされ、上述されるように、ナノ粒子のシリカ構造は、Sn、Ti、Zr、Hf、Ge、In、Ga、P、AlおよびBからなる群より選択される少なくとも1つの外来原子、好ましくはAlである外来原子を有する。
【0086】
ナノ粒子のシリカ構造が、少なくともアルミニウムを含む場合、ナノ粒子は、アルミニウムを、好ましくはナノ粒子の総重量に対して0.1〜10重量%の範囲の量で含む。
【0087】
分析用補助器具の製造のための方法
上述された方法の工程(b)における、分析用補助器具を混合物Gと接触させる、分析用補助器具のコーティングに関して、前記コーティングは当業者にとって公知である全ての方法を用いて行われ得る。接触は好ましくは、浸漬塗装および/またはスプレー塗装および/またはコンタクトコーティングによって行われる。しかしながら、その代わりにまたはそれに加えて、多数の他の方法が考えられ得る。例えば、浸漬塗装、スプレー塗装、スピンコーティング、押し型法、ナイフコーティング法または滴下コーティング法から選択される方法が適用可能である。しかしながら、基本的に、上述された方法の組み合わせおよび/または他の方法もまた使用可能である。
【0088】
混合物G
工程(b)において使用される混合物に関し、Gは、上述されるように、ナノ粒子に加えて、少なくとも1つの分散剤を含む。ナノ粒子は、好ましくは分散されるか、または、少なくとも1つの分散剤中のコロイド溶液の形状にある。
【0089】
前記少なくとも1つの分散剤は、好ましくは水である。
【0090】
混合物Gは、さらに、少なくとも1つの溶媒、例えば少なくとも1つの有機溶媒、好ましくは極性有機溶媒、より好ましくは、極性、プロトン性有機溶媒、さらに好ましくはアルコールを含む。好ましい実施態様によれば、前記少なくとも1つの有機溶媒は、水と混和性がある。特に好ましくは、前記少なくとも1つの有機溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メトキシメタノール、メトキシエタノールおよびエチレングリコールからなる群より選択される。Gが少なくとも1つの有機溶媒を含む場合、溶媒混合物は好ましくは、混合物Gの総容量に対して、最大50vol%の、より好ましくは0.1vol%〜30vol%の範囲の、より好ましくは1vol%〜20vol%の範囲の、および特に好ましくは1.5vol%〜5vol%の範囲の量の有機溶媒を含む。
【0091】
したがって、本発明はまた、上述されるような製造方法、および、前記方法によって製造され得るまたは製造される分析用補助器具に関し、ここで混合物Gは、さらに、最大50vol%の量で少なくとも1つの溶媒を含む。
【0092】
混合物G中のナノ粒子の量に関して、混合物Gは、混合物Gの総重量に対して、0.01重量%〜5重量%の範囲の量の、好ましくは0.02重量%〜3重量%の範囲の量の、より好ましくは0.05重量%〜2重量%の範囲の量のナノ粒子を含む。
【0093】
したがって、本発明はまた、上述されるように、分析用補助器具の製造のための方法、および、前記方法によって製造され得るまたは製造される分析用補助器具に関し、ここで混合物Gは、混合物Gの総重量に対して、0.01重量%〜5重量%の範囲の量のナノ粒子を含む。
【0094】
好ましくは、混合物Gは、実質的には、少なくとも1つの分散剤とシリカ構造を有するナノ粒子とからなる。「実質的には(Im Wesentlichen)」とは、混合物が、最大1重量%の量の、好ましくは最大0.1重量%の量のさらなる成分、例えば不純物を含むことを意味する。
【0095】
工程(b)におけるコーティングが、上述されるように、浸漬塗装によって行われる場合、混合物G中に浸漬される分析用補助器具のドウェル時間は、好ましくは最大で5分、より好ましくは最大で2分、より好ましくは最大で1分、例えば1秒〜30秒の範囲である。
【0096】
上述された、分析用補助器具の製造のための方法は、上述した工程の他に追加で、
(c)工程(b)によって得られた分析用補助器具を乾燥する工程
を含む。
【0097】
乾燥とは、本発明の意味において、分析用補助器具上に存在する分散剤および存在する他の溶媒が、実質的に完全に、好ましくは完全に除去されることを意味する。乾燥は、所定の温度で、好ましくは20〜150℃、特に好ましくは20〜120℃および非常にとりわけ好ましくは20〜80℃の温度で、乾燥棚中で行われ得る。これに追加して、またはこれの代わりに、乾燥は、分析用補助器具を通って流れるガス流、例えば空気流によって行われてもよい。
【0098】
これに追加して、またはこれの代わりに、乾燥はまた、コートされた分析用補助器具を、20〜150℃の範囲の温度で、好ましくは20〜80℃の範囲の温度で、より好ましくは室温で、空気中または不活性雰囲気中で保管することによって行われてもよい。
【0099】
本発明の実施態様によれば、工程(c)はまた、追加の洗浄工程を含む。この場合、工程(b)によって得られた分析用補助器具は、上述されるようにまず乾燥され、その後、分析用補助器具は、溶媒または溶媒混合物、好ましくは水を用いて洗浄され、ここで洗浄は好ましくは、最大1分間の時間で、例えば1〜30秒の範囲の時間で行われる。この任意の洗浄工程に続いて、分析用補助器具は好ましくは再び乾燥され、この第二の乾燥工程において、洗浄のために使用された、かつ分析用補助器具上に存在する溶媒または溶媒混合物が、実質的に完全に、好ましくは完全に除去される。乾燥工程は、同じ方法または異なる方法で行われ得る。好ましくは、工程(c)において洗浄工程は行われない。
【0100】
工程(c)によって得られた分析用補助器具は、好ましくは別の工程(d)において滅菌される。
【0101】
滅菌は好ましくは、ガンマ線および/またはベータ線の照射を用いる。代わりにまたは追加で行われ得るさらなる可能な方法は、蒸気滅菌および/またはオートクレーブおよび/または例えばエチレンオキサイド(EtO)などを用いた化学滅菌である。一般的に、例えば、特にはガンマ線照射および/またはベータ線照射を用いた電離放射線滅菌、特には乾熱滅菌および/または蒸気滅菌などの加熱滅菌、特にはガスおよび/または液体の殺菌媒体である少なくとも1つの殺菌性媒体を用いた化学滅菌からなる群より選択される、少なくとも1つの滅菌方法が使用され得る。
【0102】
例えば、本発明の分析用補助器具は、例えばプラスティックバッグなどの適切な容器内に包装され得、ここで包装は例えばヒートシーリングなどによってなされ得る。工程(d)による滅菌は、特に分析用補助器具の包装またはヒートシーリング後に、特にはガンマ線照射によって行われる。
【0103】
特に好ましくは、分析用補助器具は、工程(b)の前に少なくとも1つのエッチング液および/またはプラズマを用いて処理される。
【0104】
したがって、本発明は上述されるような方法、および前記方法によって製造され得る、または製造される分析用補助器具に関し、コートされる分析用補助器具の表面が、工程(b)の前に少なくとも1つのエッチング液を用いておよび/またはプラズマを用いて処理される。
【0105】
ある実施態様によれば、分析用補助器具は、事前に、例えば工程(b)の直前にエッチング液を用いてエッチングされ得る。「直前(kurz vor)」とは、本発明の意味において、好ましくは12時間を超えない、特には8時間を超えない、特に好ましくは1時間を超えない、および、とりわけ10分を超えない時間間隔を意味する。したがって、例えば新たにエッチングされた分析用補助器具が工程(b)において使用される。新たにエッチングされた分析用補助器具とは、混合物Gを用いる処理の直前にエッチング液でその表面を軽くエッチングされた分析用補助器具を意味する。分析用補助器具のエッチングと混合物Gを用いた分析用補助器具の処理とのあいだに経過する時間が、好ましくは最大で0〜12時間、特に好ましくは0〜8時間、および特に非常に好ましくは0〜4時間、特にはまさに0〜1時間、またはまさに10分以下であれば、それは新たにエッチングされたといえるものである。それぞれの制限時間が守られている場合、本発明の意味における新たにエッチングされた分析用補助器具を得たということになる。
【0106】
任意にはエッチングされ、そしてその後任意には水で洗浄された、分析用補助器具は、エッチングとコーティングとのあいだのこの間、好ましくは例えば水中、任意には安定剤とともに提供される水中に保管される。任意には、分析用補助器具は工程(b)の前に乾燥される。乾燥のための条件に関しては、前述の記載が参照されるべきである。エッチングは好ましくは、硝酸または塩化鉄(III)溶液および塩酸を含むエッチング液を用いて行われる。
【0107】
硝酸が使用される場合、好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは25〜35重量%、および特に非常に好ましくは30〜34重量%の硝酸が使用される。
【0108】
別の実施態様によれば、分析用補助器具のコートされる表面、任意には上述されるようにエッチングされた表面は、工程(b)の直前にプラズマによって処理される。したがって、好ましくは、新たにプラズマで処理された分析用補助器具が工程(b)において使用される。新たにプラズマで処理された分析用補助器具とは、混合物Gを用いる処理の直前にプラズマで処理された分析用補助器具を意味する。プラズマを用いた分析用補助器具の処理と混合物Gを用いる分析用補助器具の処理とのあいだの時間間隔が、好ましくは最大で0〜12時間、特に好ましくは0〜8時間、および特に非常に好ましくは0〜4時間、特にはまさに0〜1時間、またはまさに10分以下であれば、それは新たにプラズマで処理されたといえるものである。
【0109】
親水性コーティング
本発明の意味において使用される、用語「親水性コーティング(hydrophile Beschichtung)」とは、その表面が、分析用補助器具のコートされていない表面と比較して、より小さい対水接触角、好ましくはDIN 55660.2にしたがって測定される場合に、好ましくは少なくとも15°小さい接触角を有するコーティングを意味する。原則として、DIN EN 828:1997による測定もまた適切であろう。好ましくはコーティングの表面は、好ましくはDIN 55660.2にしたがって(原則的には、ここでもDIN EN 828:1997もまた適切である)測定される場合に、好ましくは60°より小さい、好ましくは50°より小さい、より好ましくは40°より小さい、および特に好ましくは30°より小さい対水接触角を有する。
【0110】
分析用補助器具の表面上のナノ粒子の量に関し、分析用補助器具は好ましくは、分析用補助器具の単位表面積mm2当たり7.5μg〜分析用補助器具の単位表面積mm2当たり150ngの範囲のナノ粒子の量でコーティングされる。
【0111】
好ましくは、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.9重量%、より好ましくは少なくとも100重量%の親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子からなる。
【0112】
本発明の意味において、コーティングは種々のナノ粒子の混合物を含み得る。好ましくは、コーティングは1つの構造のナノ粒子のみを含む。
【0113】
本発明の意味において、分析用補助器具の表面は、親水性コーティングを用いて部分的に、または完全にコートされ得る。好ましくは、分析用補助器具を使用する際にサンプルと対向する表面が、少なくとも部分的にまたは完全にコートされる。好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%および特に好ましくは少なくとも99%の表面がコートされる。
【0114】
分析用補助器具が、例えば少なくとも1つの内部空間を有するニードルエレメント、特には少なくとも1つのカニューレおよび/または少なくとも1つのキャピラリで例えばある場合、好ましくはニードルエレメントの内部空間の全ての表面は、親水性コーティングを備えて、および特に好ましくは、ニードルエレメントの先端から、少なくとも1つの任意の試験エレメントとの、例えば体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの試験化学との、ニードルエレメントの任意の接触ポイントまでの少なくとも1つのキャピラリ機能を備えた表面構造を備えて提供される。
【0115】
分析用補助器具の表面
分析用補助器具の化学的特性に関し、その表面は、好ましくは少なくとも部分的に金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または金属酸化物混合物からなる。これは、分析用補助器具が、それ自体、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または金属酸化物混合物からなるか、または、分析用補助器具が少なくとも部分的には別材料から製造され、かつ、この材料が少なくとも部分的に金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または金属酸化物混合物を用いてコートされていたことを意味する。
【0116】
ある実施態様によれば、したがって、分析用補助器具は、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物であるコーティングを含む。
【0117】
金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物であるコーティングは、例えばスパッタリング、真空金属蒸着、ガルバニックコーティングまたは溶解金属化合物からの積層、などの任意の公知の方法で適用され得る。さらに、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物のいくつかの層が適用されてもよい。
【0118】
本発明のある実施態様によれば、分析用補助器具は、例えば、以下に記載されるように分析用補助器具が試験エレメントまたは分配エレメント(Verteilerelement)である場合、真空金属蒸着によって、例えばアルミニウムを用いてコートされ得る。このように得られた分析用補助器具は、その後、例えば酸化などによって金属酸化物および/または金属混合酸化物へと、特にはベーマイトへと変換される。酸化は、例えば水、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸素、過酸化水素、オゾン、空気中の酸素の存在下での加熱、または硫黄化合物を用いて達成される。金属表面は、この場合、例えば熱水および/または蒸気を用いたベーマイト法によってなどで、少なくとも部分的に酸化されている。
【0119】
このようなコーティングが適用される場合、金属および/または金属合金を含むこのコーティング、および/または、金属酸化物および/または混合金属の酸化物を含むこのコーティング、および/または、金属混合酸化物を含むこのコーティングは、好ましくは、工程(b)の前に分析用補助器具上に適用される。したがって、本発明はまた、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具を製造するための方法、および、前記方法によって製造されるまたは製造され得る分析用補助器具に関し、ここで、上述される前記方法の工程(a)は、
(a)分析用補助器具を提供する工程であって、前記提供が、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物を用いた分析用補助器具のコーティングを含む工程
を含む。
【0120】
分析用補助器具がニードルエレメントである場合、分析用補助器具は好ましくは、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物を用いてコートされない。
【0121】
ナノ粒子が構造(I):
【化51】
(式中、Rは金属含有イオン、または
【化52】
である)
である基を含む場合、本発明の好ましい実施態様によれば、ナノ粒子は、工程(b)の前に脱イオン化される。この脱イオン化において、以下の構造
【化53】
である基を含むナノ粒子は、以下の構造
【化54】
である基を有するナノ粒子へと変換される。
【0122】
脱イオン化は、一般的に当業者にとって公知である全ての方法によって行われ得る。好ましくは、脱イオン化は、イオン交換クロマトグラフィーによって、または酸性イオン交換材料との接触によって達成される。
【0123】
したがって、本発明は、分析用補助器具を製造するための方法、および、前記方法によって製造され得る分析用補助器具に関し、ここで前記方法は、
(a)分析用補助器具を提供する工程、
(a1)DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にある、シリカ構造を有するナノ粒子を提供する工程であって、ナノ粒子が、シリカ構造を有するナノ粒子を脱イオン化することによって、ナノ粒子が、基:
【化55】
を有し、ナノ粒子が、
【化56】
(式中、Rw、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択される)
である構造の基を有する工程、
(b)分析用補助器具を、少なくとも1つの分散剤と(a1)によって得られたナノ粒子とを含む混合物Gと接触させることにより、分析用補助器具をコーティングする工程、
(c)工程(b)によって得られた分析用補助器具を乾燥する工程、および
(d)任意には、工程(c)によって得られた分析用補助器具を滅菌する工程
を含み、
ここで、工程(b)における接触は、好ましくは、浸漬塗装および/またはスプレー塗装および/またはコンタクトコーティングおよび/または少なくとも1つの前述の他の方法によって行われ、そして、分析用補助器具および/または分析用補助器具の表面は好ましくは、少なくとも部分的には、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物からなる。
【0124】
したがって、本発明は好ましくはまた、上述されるように、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を有する分析用補助器具であって、親水性コーティングが
【化57】
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む分析用補助器具に関する。
【0125】
分析用補助器具
本発明の意味において使用される、用語「分析用補助器具(analytisches Hilfsmittel)」とは、一般的に、少なくとも1つのサンプルの少なくとも1つの特性がそれによってまたはそれを用いて測定され得るエレメントを意味する。基本的に、この点において、任意の分析用補助器具、例えば固定分析用補助器具、または、また変形可能な分析用補助器具などが挙げられ得る。分析用補助器具は特には、完全にまたは部分的に、金属、金属酸化物、紙、セラミック、プラスティック、および、例えばセルロースまたは合成繊維などの繊維材料からなる群より選択される材料から構成され得る。前述の材料および/または他の材料の組み合わせもまた考えられる。
【0126】
特には、分析用補助器具はサンプルの定性的および/または定量的分析のための分析用補助器具であってもよい。
【0127】
サンプルは、特には、液体またはガス状サンプルであり得る。特に好ましくはサンプルは、少なくとも1つの体液またはその一部、特には血液もしくは血液成分、間質液、唾液または尿を含む。
【0128】
前記少なくとも1つの特性とは、基本的には任意の、化学的、物理的または生物学的特性であり得る。特に好ましくは、前記少なくとも1つの特性は、サンプル中の少なくとも1つの分析物の、特には例えばグルコース、乳酸またはコレステロールなどの少なくとも1つの代謝物中の濃度を含む。
【0129】
特に好ましくは、したがって、分析用補助器具は、液体中の、特には体液中の少なくとも1つの分析物を検出する意味で使用され得る分析用補助器具である。特には、分析用補助器具はサンプリングのあいだ、例えば体液のサンプルを収集する時、および/またはサンプルの分析のあいだ、例えば体液中の少なくとも一つの分析物の検出に使用され得る分析用補助器具であり得る。特には、分析用補助器具はしたがって、血液および/または間質液の定性的および/または定量的な分析のための分析用補助器具または分析用補助器具の一部であってもよい。
【0130】
特に好ましくは、分析用補助器具は、体液の、例えば血液および/または間質液の少なくともの1つの分析物、例えば、糖類、好ましくはグルコース、脂質、例えば尿素または尿酸などの代謝生成物、タンパク質、ペプチドおよび塩、または血液のまたは間質液の他の成分などの測定および/または定性的および/または定量的検出に適している。検出される少なくとも1つの分析物は、例えば少なくとも1つの代謝物、例えば血液グルコース、乳酸、コレステロールまたは他の代謝物などであり得る。
【0131】
分析用補助器具の特性に関し、当該技術分野の当業者にとって公知である全ての分析用補助器具が含まれる。好ましくは、分析用補助器具は、ニードルエレメント、液体中の少なくとも1つの分析物を検出するための試験エレメント、および任意には、収集された体液のサンプルを分配するための分配エレメントからなる群より選択される。
【0132】
試験エレメント
「試験エレメント(Testelement)」とは、本発明の意味において、液体中の少なくとも1つの分析物を検出するための、担体に結合された全てのエレメントを意味する。試験エレメントは、基本的に医学的または非医学的目的のために少なくとも1つの分析物を検出することを目的とする。担体に結合されたこれらの試験エレメントは、好ましくは、少なくとも1つの特定の対象分析物を検出するための少なくとも1つの検出試薬を含む、一またはそれ以上の層を含む。好ましくは、これら検出試薬は、担体の対応する層中に組み込まれる。少なくとも1つの検出される分析物(これはまた標的分析物とも称される)の存在下での、試験エレメントおよび特には検出試薬の液体との接触は、例えば検出試薬と標的分析物とのあいだの共有結合、非共有結合、またはそれらが複合した結合の形成を伴う、例えば物理的および/または化学的性質の検出可能な変化を誘導する。これは好ましくは、例えば電気的シグナルおよび/または色の変化などの検出可能なシグナル、好ましくは、例えば視覚的にまたは器具を用いて、反射測光法または蛍光測定よってなどで例えば評価され得る計測可能な光学的なシグナルを導く。
【0133】
試験エレメントの外観に関し、当業者によく知られている全ての外観が本発明の意味内に含まれる。特には、試験エレメントは、テストストリップ、テストテープ、またはテストディスクであってもよい。さらなる限定無しに、代わりにまたは追加で使用可能な実施態様、特には平坦な、ストリップの形の試験エレメント、すなわちテストストリップが以下に記載される。
【0134】
少なくとも1つの分析物特異的な反応を行うことができる、少なくとも1つの検出試薬に追加で、試験エレメント、特には試験エレメントの少なくとも1つの試験フィールドは、さらなる物質、例えば担体、賦形剤、色素、充填剤、緩衝物質またはその類似物などを含み得る。以下においては、分析物を検出するための反応にも寄与するさらなる物質と、実際の検出試薬とのあいだの区別はなされないであろう。特には、検出試薬は酵素的検出試薬を含み得る。このような種類のグルコース特異的酵素的検出試薬の例としては、例えば酸化還元酵素(例えばGlucDOR/PQQなど)、デヒドロゲナーゼ酵素、酸化酵素または類似の酵素、例えばグルコースオキシダーゼ(GOD)またはグルコース脱水素酵素などを挙げることができるであろう。
【0135】
少なくとも1つの検出可能な反応は、すでに記載されているように、好ましくは、光学的に検出可能な反応である。しかしながら、他のタイプの反応も基本的に可能である。特には、少なくとも1つの標的分析物が存在する時に少なくとも1つの検出物質が形成される反応であり得る。いくつかの検出物質がまた形成および/または使用され得、それらは個々に、まとめて、またはそれら全てが検出され得る。検出物質はしたがって、少なくとも1つの検出反応の結果として形成される、および/または、少なくとも1つの検出反応中に生じそして検出可能である物質である。検出される少なくとも1つの検出物質に基づいて、例えば、少なくとも1つの分析物が、定量的におよび/または定性的に検出され得る。しかしながら、少なくとも1つの検出物質の検出が、使用されない、または、分析物の検出のためにのみ使用されるわけではなく、代わりに例えば、試験フィールド上のサンプルの厚さの層の容積を測定するために使用される、複数の検出および/または検出物質がまた可能であり、以下に記載されるであろう。
【0136】
好ましくは、少なくとも1つの標的分析物を少なくとも1つの検出試薬を用いて検出するための上述の試験化学は、親水性コーティングに影響を受けない。これは、分析用補助器具を使用する際に微量の親水性コーティングが分離した場合でも、試験エレメントが試験化学に影響を及ぼすことなく汚染され得ることを確実にしている。したがって、試験化学のコーティングへの不応症により、標的分析物の検出のための試験は、微量の式(I)の化合物またはその分解生成物によって不変であるか、またはわずかにのみ変えられる。好ましくは、測定のための使用のあいだ、親水性コーティングの実質的にいかなる部分も、より好ましくは、いかなる部分も全く分析用補助器具から分離しない。
【0137】
試験エレメントの構造に関し、これは好ましくは少なくとも1つの担体エレメント、特には担体ストリップを有する。この担体エレメントは、例えばプラスティック材料、セラミック材料、紙材料、複合材料またはその類似物を含み得る。試験フィールドがその後、この担体エレメント上に適用されてもよい。担体エレメントは、試験エレメントに、例えばサンプル適用のあいだおよび/または測定のあいだに試験エレメントを保持すること可能とするためなどの機械的支持機能を提供するために使用される。少なくとも1つの親水性コーティングが例えば、担体エレメント上および/または特には試験化学上および/または試験エレメントの一またはそれ以上の他のエレメント上に、全面的にまたは部分的に適用され得る。
【0138】
担体エレメントは、例えば少なくとも1つのフィルムエレメント、特には少なくとも1つのプラスティックフィルムを含み得る。フィルムエレメントは好ましくは、密封された表面を有し、好ましくは実質的にサンプル非透過性である。好ましくは、フィルムエレメントは非多孔性デザインのものであるか、非多孔性表面を有するか、または5μm以下、好ましくは1μm以下の平均孔半径である孔を有する。したがって、フィルムエレメントは例えば従来の網状組織様材料、例えば展延性網状組織とは異なっている。一般的に、担体エレメントおよび/または担体表面は、実質的にサンプル非透過性である少なくとも1つの材料を有し得る。
【0139】
分配エレメント
分配エレメントとは、本発明の意味において、それを用いることにより、受容されたサンプル、特に液体サンプルが2次元分布域および/または3次元分布容積に分配され得る装置と解されるべきである。特には、分析されるサンプル、好ましくは、少量の血液サンプルの均一な、広範かつ迅速な分配のため、分配エレメントは、好ましくは例えばテストストリップなどの、とりわけグルコーステストストリップなどの試験エレメント上に配置され得る。
【0140】
分配エレメントは、特には、キャピラリ構造、膜、網状組織、とりわけ展延性網状組織からなる群より選択され得る。好ましくは、本発明の意味において、分配エレメントは、展延性網状組織である。本発明の意味において、膜とは、サンプルを受容し、そしてそれを好ましくは横方向に、すなわちフィルムまたは層の面と平行に分配するために配置される、多孔性エレメント、例えば多孔性フィルムまたは多孔性層と解されるべきである。特には、膜は少なくとも1つの多孔性プラスティックフィルムを含んでいてもよい。用語「展延性網状組織(Spreitnetz)」とは、本発明の意味において、展延または分配または移送の目的に適した全てのフィラメント構造に対する明示的な総称として解されるべきである。これには、とりわけ、繊維製品、ニット織物、およびフリースが含まれる。用語「フィラメント(filament)」とは、ベース材料および寸法において均一または非均一のモノフィラメントおよびポリフィラメントの両方を含む。サンプル移送は好ましくはフィラメント構造を介して行われることに留意されるべきである。
【0141】
好ましい実施態様によれば、膜および/または展延性網状組織は、試験エレメントの少なくとも1つの層、例えば、少なくとも1つの検出試薬を含む、試験エレメントの検出層、および/または、少なくとも1つの反射性色素および/または例えば赤血球などのサンプル成分を分離するために配置されている少なくとも1つの物質を含む分離層の上に位置している。適用されるサンプルの液体は、したがって、少なくとも1つの検出試薬を含む層へ例えば本発明によって想定される展延性網状組織により、キャピラリ作用によって導かれ得、そして、展延性網状組織と検出層との接触ポイントにおいて、検出層上に、同様にキャピラリ力によって展延または分配され得る。したがって、展延性網状組織は、好ましくは、液体サンプルの、目的とする位置、すなわち、少なくとも1つの検出試薬を含む少なくとも1つの層上における無方向性(等方性)2次元分配を助けるものとして機能する。サンプルの所望の中間的貯蔵および表面での展延は、展延性網状組織との相互作用によってのみ起こり、ここで展延性網状組織は、検出層に対して多数の様々なキャピラリ機能を備えた隙間またはキャピラリギャップにより区別され、フィラメントの表面の輪郭およびその空間的配置により全体的に大部分無方向性に伸びる。
【0142】
上述されるように、分析用補助器具の表面は、好ましくは、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物を含む。したがって、好ましい実施態様による分析用補助器具は、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物からなる表面を含む分配エレメントである。好ましくは、本発明の意味において、分析用補助器具は、上述されるように金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物を用いてコートされ得る、例えば展延性網状組織などの分配エレメントである。
【0143】
したがって、本発明はまた、展延性網状組織であって、任意には金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物によってコートされている分析用補助器具に関する。
【0144】
ニードルエレメント
代わりの好ましい実施態様によれば、分析用補助器具はニードルエレメントであるか、または前記ニードルエレメントを含む。この場合、ニードルエレメントは基本的に、使用者の皮膚の一部分に開口部を形成するように配置されているチップまたはブレードを有する任意のエレメントであり得る。例えば、ランセット、カニューレ、特には中空カニューレ、少なくとも部分的に開口している中空カニューレ、マイクロカッターまたはその類似物、キャピラリ、特にはキャピラリギャップなどがニードルエレメントとして使用され得る。
【0145】
ニードルエレメントがランセットである場合、ランセットは特にはいわゆるマイクロサンプラー、すなわち穿刺を生じさせることのできるチップおよび/またはブレードと、少なくとも1つのサンプルを吸い上げるためのキャピラリチャネルとの両方を有するエレメントを含む。さらに、マイクロサンプラーは、任意には、サンプル中の少なくとも1つの分析物を検出するための少なくとも1つの試験エレメントを備えていてもよい。
【0146】
一般的に、ニードルエレメントは、以下では単純にキャピラリ構造と称され、そして、ニードルエレメントの表面上に全面的に配置されている必要は必ずしもない、少なくとも1つのキャピラリ機能を備えた表面構造を有し得る。特には、キャピラリ構造は、少なくとも1つのキャピラリチャネルおよび/または少なくとも1つのキャピラリの谷間を有し得る。表面構造のキャピラリ作用により、穿刺部から流れ出た体液は、キャピラリ構造によって吸い上げられ得、そして、例えばニードルエレメント上に配置される試験エレメントへと移送され得る。キャピラリ構造は、例えば一またはそれ以上の試験のために必要とされる量の体液を受容するためなどの受入容積を提供し得る。前記表面構造は、ニードルエレメントの長手方向軸に平行におよび/または少なくとも部分的に横断する方向に延びる、少なくとも1つのキャピラリの谷間によって形成され得る。キャピラリの谷間がニードルエレメントの長手方向軸に平行に延びている場合、前記キャピラリの谷間の数としては、2〜6個、特には2または3個が好ましい。しかしながら、例えば10個までのキャピラリの谷間がニードルエレメント上に形成されることもまた可能である。例えば中空カニューレの場合、キャピラリ構造はカニューレの中空の形によって形成される。
【0147】
とりわけ、穿刺部の中から外へのまたは穿刺部からの体液の、目的とされる取り込みおよび/または目的とされる移送が可能であることは、前記キャピラリ構造のデザインにおいて有利である。例えば、少なくとも1つの試験エレメントへの、例えばニードルエレメント上に配置されたまたは配置され得る少なくとも1つの試験エレメントへの、またはニードルエレメントへの移送が起こり得る。試験エレメントは、ニードルエレメントおよび/またはキャピラリ構造に固定されて配置されてもよいが、また、これらに対し移動可能に、例えば、体液のキャピラリ構造への取り込みの後に試験エレメントがキャピラリ構造に向かって移動するように、組み込まれてもよい。有利には、親水性コーティングおよび/またはプラズマ処理および/または少なくともキャピラリの谷間における、または表面全体におけるナノ構造およびマイクロ構造の形成が、キャピラリ作用にさらに寄与する。
【0148】
ニードルエレメントの親水性コーティングは、全面的であってもまたは部分的であってもよい。好ましくはニードルエレメントの全ての表面は、親水性コーティング、および特に好ましくは、ニードルエレメントの先端からニードルエレメント/試験エレメントの接触点までの少なくとも1つのキャピラリ機能を備えた表面構造を備えている。
【0149】
例えば体液がニードルエレメントを用いて吸い上げられる場合、体液は好ましくは、30〜1000ms/mmの範囲内、特に好ましくは40〜700ms/mmの範囲内およびとりわけ特に好ましくは40〜400ms/mmの範囲内である、穿刺部位から試験エレメントまでの移送距離を、ニードルエレメントに沿って移送される。用語、移送距離とは、吸い上げられたサンプルがニードルエレメント中で移動する距離、好ましくは移動する最大の距離を意味する。移動距離の総計は、例えば0.5mm〜10mm、特には1mm〜5mmの長さであり得る。例えば、移動距離は、ニードルエレメント中のキャピラリ、例えばキャピラリギャップの全長であってもよい。代わりにまたは追加で、用語、移動距離とはまた、例えばカニューレの場合、チップから放出開口部までのニードルエレメントの長さを指し得る。全体的にまたは部分的にニードルエレメントの構成要素であってもよいがまた、ニードルエレメントから完全にまたは部分的に分離されて形成されていてもよい、分析物を検出するための少なくとも1つの試験化学を有する少なくとも1つの試験エレメントが提供され得る。試験エレメントがニードルエレメントの構成要素でない場合、ニードルエレメントからの体液の移動は、ニードルエレメントによる体液の取り込み後に遅延時間をともなって起こり得る。この移動まで、例えば、穿刺の開始後および/または生体組織からのニードルエレメントの撤退後、例えば0.5s〜5sの間の時間、特には1s〜2sの間の時間などの、さらなる時間が経過し得る。
【0150】
好ましくは、分析用補助器具は体液を収集するためのサンプリング装置のニードルエレメントである。
【0151】
したがって、本発明はまた、上述されるように、体液を収集するためのサンプリング装置のニードルエレメントである分析用補助器具に関する。本発明はさらに、上述されるように、体液を収集するためのサンプリング装置のニードルエレメントである分析用補助器具を製造するための方法、および前記方法によって製造され得るまたは製造される分析用補助器具に関する。
【0152】
本発明はさらに、体液を収集するためのサンプリング装置に関する。サンプリング装置は、一般的に、分析という目的のためにサンプルを吸い上げるために配置される装置として解されるべきである。好ましくは、さらには、サンプリング装置はまた、例えば少なくとも1つのニードルエレメントを用いて、例えば穿刺を形成しおよび/または皮膚表面を切開することによって、サンプルを作製するために配置される。代わりにまたは追加で、サンプリング装置は、例えば上述された一またはそれ以上の実施態様にしたがって、例えば少なくとも1つの試験エレメントを用いて、サンプル中の少なくとも1つの分析物を検出するために配置され得る。
【0153】
サンプリング装置は、上述された一またはそれ以上の実施態様にしたがって、分析用補助器具がニードルエレメントおよび試験エレメントからなる群より選択されるという条件下で、少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた少なくとも1つの表面を有する少なくとも1つの分析用補助器具を含む。ニードルエレメントおよび/または試験エレメントの可能な実施態様に関して、上の記載および以下に記載される実施態様が参照されるであろう。ニードルエレメントは、特にはキャピラリ構造の領域内に少なくとも1つのコーティングを全面的にまたは部分的に備えて提供される少なくとも1つのマイクロサンプラーを特には含む。試験エレメントは、特には、親水性コーティングを備えて提供される少なくとも1つの分配エレメント、好ましくは、例えば試験エレメントの少なくとも1つの試験フィールド上に位置し得る、親水性コーティングを備えて提供される少なくとも1つの展延性網状組織を含んでいてもよい。
【0154】
したがって、サンプリング装置は、上述されるように、体液のサンプルを採取するための少なくとも1つのニードルエレメント、および/または、それを用いることにより対応する体液中の少なくとも1つの分析物が定性的および/または定量的に検出され得る、少なくとも1つの試験エレメントを有する。試験エレメントは、特には、ニードルエレメントに連結されていてもよく、このため、体液はニードルエレメントから試験エレメント、例えば試験エレメントのサンプル適用ポイントまたはサンプル適用表面へと移動し得る。しかしながら、代わりにまたは追加で、試験エレメントは、分離した試験エレメントとして配置されてもよく、また、サンプリング装置内またはその上に、例えばその中にニードルエレメントがまた配置され得る例えば少なくとも1つのチャンバ内へなど他のなんらかの方法で適用されてもよい。ニードルエレメントによって吸い上げられた体液を試験エレメントへと移送する移送機構が提供され得る。これは、例えば、アクチュエータまたは他のなんらかの機構を用いることによって、体液を含むニードルエレメントが試験エレメントへと接近させられ、このため体液がニードルエレメントから試験エレメント、例えば試験エレメントの試験フィールドなどへと少なくとも部分的に移送されるなどにより起こり得る。例えば、この目的のため、ニードルエレメントおよび/またはニードルエレメントの少なくとも1つのキャピラリ構造が試験フィールド上に配置され得る。しかしながら、他の実施態様もまた、可能である。体液がキャピラリの機能を備えた表面構造から試験エレメントへと通り抜けることができるように、試験エレメントは好ましくは、試験エレメントと表面構造との接続ポイントにおいて、体液が表面構造から試験エレメントへと吸引により移送されるように構成される。このため、試験エレメントは、キャピラリの機能を備えた構成要素、例えば表面構造の毛管現象よりもキャピラリ作用が大きい、吸収性のフリースまたは繊維束などを伴って提供されることが好ましい。しかしながら、代わりにまたは追加で、例えばキャピラリを化学の上に位置させることなどによって、任意にはまた圧力の適用をともなうことによって、単純に、キャピラリが化学と接触させられるようにもデザインされ得る。さらに、カニューレの表面構造と試験エレメントのキャピラリ機能を有する構成要素とのあいだの接触が確保されるべきである。
【0155】
さらに、サンプリング装置は、少なくとも1つのセンサーを備えていてもよい。このセンサーは、例えば電気化学的および/または光学的デザインのものであり得る。電気化学的センサーの場合、試験化学の触媒的作用を介して、測定されるべき体液の物質が、反応させられ、そして、この反応が電気化学的に測定され得、一方、光学的センサーの場合、体液中に含まれる物質との試験化学の反応の反応生成物が所定の波長の光で照射され、そして例えばこの光の吸収度および/または光の反射度および/またはサンプルの蛍光などが測定される。
【0156】
さらに、サンプリング装置は、導電性エレメント、特には電気伝導性エレメントを備えていてもよい。電気化学的センサーの場合、この導電性エレメントは、プラスティックフィルム上に適用された金属層、および/または、例えば射出成型法などによって対応する構成要素中に任意には注入される、金属箔または金属ワイヤであってもよい。導電性エレメントはまた、導電性プラスティックから、または他の何らかの方法によって、例えば導電性インクを用いることなどによって形成されてもよい。サンプリング装置はまた、それを介してサンプリング装置が周辺機器と連結され得る、少なくとも1つの電気的および/または光学的接触ポイントを備え得る。したがって、サンプリング装置には、電気的接触ポイントを介して電流が供給され得、そして、情報が前記電気的接触ポイントを介して伝達され得る。光は周辺機器とサンプリング装置とのあいだを光学的接触ポイントを介して伝達され得る。光学的センサーの場合、前記サンプリング装置は、電気的接触ポイントおよび光学的接触ポイントの両方を備え得る。
【0157】
好ましくは、サンプリング装置は、完全にまたは部分的に、使い捨ての物および/または多数回使用の物としてデザインされ得、使い捨ての物である場合、サンプリング装置は、単回使用の後廃棄され、一方、多数回使用のものである場合、多数回の使用が意図される。例えばランシング補助器具中にランセットをマガジン化するのと同様に、例えば数個のサンプリング装置をまとめて1つのマガジン中に保管するおよび/またはサンプリング装置が例えば数個の試験エレメントおよび/または数個のニードルエレメントをマガジン化された形状で含むことなどによって、一またはそれ以上のサンプリング装置および/またはその一部分をマガジン化することがまた可能である。
【0158】
上述されるように、分析用補助器具、好ましくはニードルエレメントおよび/または試験エレメントは、少なくとも部分的に、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物から製造され得る。さらに、ニードルエレメントのおよび/または試験エレメントの材料は、(特にサンプリングされる体液に対して)不活性、かつ、生体適合性、かつ、機械的に強固であり、そして容易に滅菌可能でなければならない。好ましくは、ニードルエレメントは外科用スチールで作られており、ここで前記外科用スチールは金属酸化物のコーティングを伴って提供され得る。しかしながら、金属材料の代わりにまたは追加で、ニードルエレメントはまた、完全にまたは部分的に、例えばプラスティック材料および/またはセラミック材料などの、別の材料で製造されても、また別の材料を含んでいてもよい。とりわけ、ニードルエレメントがそれ自体、上述されるように、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物を用いてコートされており、かつ、親水性コーティングがこの表面、例えばこのコーティングの表面上に適用されている実施態様もまた本発明の範囲に含まれる。
【0159】
本発明による分析用補助器具および本発明による方法は、公知の分析用補助器具および方法に対して多数の有利点をもつ。したがって、発明者らは驚くべきことに、上述される種類のナノ粒子を用いた親水性コーティングが第一に、卓越した親水性を有する表面特性をもたらすことを発見した。第二に、コーティングは驚くべきことに、良好な長期間にわたる安定性を特徴としており、したがって、比較的長い期間にわたる安定した保管を確実なものとすることを可能にしている。より具体的には、例えばプラスティック材料、接着剤または金属などの様々な材料と分析用補助器具との直接的または間接的接触によってでさえも、コーティングの親水性特性が(例えあったとしても)ごくわずかにしか損なわれないことが示され得る。加えて、例えばβ線および/またはγ線によって引き起こされる放射線負荷などの滅菌による負荷、および/または、例えばエチレンオキシドなどの化学的殺菌による負荷などはまた、コーティングの親水性特性を損なわないかまたはごくわずかにしか損なわない。この結果、6〜12か月またはそれ以上の長期の安定性が、親水性表面特性は維持されつつ、問題なく達成され得る。
【0160】
さらに、本発明にしたがって使用されるコーティングは、汚染物質に対し非常に抵抗性であり、そして、それ自身は、例えば収集されたサンプルなどを汚染しない。したがって、分析用補助器具は、任意には複数回使用され得る。より具体的には、本発明にしたがって適用されるコーティングは、分析用補助器具のキャピラリエレメントおよび/またはキャピラリチャネルに、本発明のコーティングによってこれらのエレメントに長持ちする親水性をもたせるために適用されてもよい。
【0161】
さらに、本発明にしたがって使用されるコーティングは、単純かつ信頼性の高い方法で、例えば、一またはそれ以上の、上述される展開またはより詳細に以下に記載される実施態様にしたがって本発明の方法を用いることによって、調製され得る。さらに具体的には、表面コーティングは、例えば、水溶液および/または水性分散液から適用され得る。このような種類の適用方法は容易に行われ得る。
【0162】
以下の実施態様が本発明の意味において特に好ましい。
【0163】
1.少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を含む分析用補助器具であって、親水性コーティングが、シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子を含み、そしてナノ粒子が構造(I)および/または(II)の基:
【化58】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化59】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む分析用補助器具。
【0164】
2.Rが、H、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオン、
【化60】
からなる群より選択され、および
+=Al+である、実施態様1記載の分析用補助器具。
【0165】
3.親水性コーティングが、R=Hである構造(I)の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む、実施態様1または2に記載の分析用補助器具。
【0166】
4.親水性コーティングが
【化61】
(式中、アルカリ金属+は好ましくは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、特に好ましくはNa+である)
である構造の基を含む、シリカ構造を有するナノ粒子を含む、実施態様1または2に記載の分析用補助器具。
【0167】
5.親水性コーティングが、R=NH4+である構造(I)の基を有する、シリカ構造を有するナノ粒子を含む、実施態様1または2に記載の分析用補助器具。
【0168】
6.親水性コーティングが、構造(I)の基であって、式中、Rが以下の構造
【化62】
を有する、シリカ構造を有するナノ粒子を含む、実施態様1または2に記載の分析用補助器具。
【0169】
7.ナノ粒子のシリカ構造が、Sn、Ti、Zr、Hf、Ge、In、Ga、P、AlまたはBからなる群より選択される少なくとも1つの外来原子を有する、好ましくは外来原子はAlである、実施態様1〜6のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0170】
8.ナノ粒子が1〜100nmの範囲、より好ましくは1〜50nmの範囲、さらに好ましくは3〜25nmの範囲、および特に好ましくは5〜15nmの範囲の平均粒子径を有する実施態様1〜7のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0171】
9.全てのR基の10〜40%が
【化63】
である実施態様1〜8のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0172】
10.式(I)の基が式(Ia)または(Ib):
【化64】
(式中、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルからなる群より選択される)
である構造を有する実施態様1〜9のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0173】
11.親水性コーティングがシリカ構造を有するナノ粒子からなる実施態様1〜10のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0174】
12.少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた分析用補助器具の表面が、少なくとも部分的に金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物からなる実施態様1〜11のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0175】
13.ナノ粒子が1〜100nmの範囲の平均粒子径を有し、かつ、親水性コーティングが最大500nm、好ましくは最大300nmおよび特には最大100nmの幅の厚さ、特には平均の厚さを有する実施態様1〜12のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0176】
14.親水性コーティングの表面が、好ましくはDIN 55660.2にしたがって測定される場合に、60°より小さい対水接触角を有する実施態様1〜14のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0177】
15.分析用補助器具が、ニードルエレメント、特にはランセット、キャピラリ、特にはキャピラリギャップ、カニューレ、体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための試験エレメント、および、収集された体液のサンプルを分配するための分配エレメント、特には任意には金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物でコートされた展延性網状組織、または、金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物でコートされたプラスティックフィルムからなる群より選択される実施態様1〜15のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0178】
16.分析用補助器具が、体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)のニードルエレメント(112)である実施態様1〜16のいずれか1項に記載の分析用補助器具。
【0179】
17.少なくとも部分的に親水性コーティングでコートされた表面を含む分析用補助器具を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)分析用補助器具を提供する工程、
(b)分析用補助器具を、少なくとも1つの分散剤と、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にある、シリカ構造を有するナノ粒子とを含む混合物Gと接触させることにより分析用補助器具をコーティングする工程であって、
前記ナノ粒子が
構造(I)および/または(II)の基:
【化65】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化66】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
を含む工程、
(c)工程(b)によって得られた分析用補助器具を乾燥する工程、および
(d)任意には、工程(c)によって得られた分析用補助器具を滅菌する工程
を含み、ここで、工程(b)における接触が、好ましくは浸漬塗装および/またはスプレー塗装および/またはコンタクトコーティングによって行われ、そして、分析用補助器具および/または分析用補助器具の表面が好ましくは、少なくとも部分的には金属および/または金属合金および/または金属酸化物および/または混合金属の酸化物および/または金属混合酸化物で構成される方法。
【0180】
18.コートされる分析用補助器具の表面が、工程(b)の前に少なくとも1つのエッチング液を用いておよび/またはプラズマもしくはコロナを用いて処理される実施態様17記載の方法。
【0181】
19.少なくとも1つの分散剤が水であり、かつ、混合物Gが好ましくは2〜10の範囲のpHを有する実施態様17または18に記載の方法。
【0182】
20.ナノ粒子が構造(I)の基を含み、かつ、全てのR基の10〜40%が
【化67】
である実施態様17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【0183】
21.実施態様17〜20のいずれか1項に記載の方法によって製造され得るまたは製造される分析用補助器具。
【0184】
22.分析用補助器具が体液を収集するためのサンプリング装置のニードルエレメントである実施態様21記載の分析用補助器具。
【0185】
23.分析用補助器具がニードルエレメント(112)および試験エレメントからなる群より選択される場合に、分析用補助器具に関する先行の実施態様の1つによる少なくとも1つの分析用補助器具を含む、体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)。
【0186】
24.シリカ構造を有し、かつ、DIN ISO 22412:2008にしたがって決定される平均粒子径が1〜500nmの範囲にあるナノ粒子の、分析用補助器具の表面のための親水性コーティング(122)としての、好ましくは体液のサンプルを採取するためのサンプリング装置(110)のニードルエレメント(112)のための親水性コーティング(122)としての、使用であって、前記ナノ粒子が、構造(I)および/または(II)の基:
【化68】
(式中、構造(I)のそれぞれの基において、それぞれ互いに独立して、RはH、金属含有イオン、
【化69】
からなる群より選択され、および
w、Rx、RyおよびRzは、それぞれ互いに独立して、Hおよびアルキルから選択され、および
a、RbおよびRcは、それぞれ互いに独立して、任意には置換されていてもよい、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アルケニルおよびアルコキシアルキルからなる群より選択される残基であり、および
n、mおよびpは、それぞれ互いに独立して、0または1であり、および
+は、金属イオンであり、かつ、A-は生理学的に適合性のアニオンである)
である使用。
【図面の簡単な説明】
【0187】
本発明のさらなる詳細および特徴は、以下の好ましい実施例の記載から、特には従属クレームと併せることにより明らかであろう。対応する特徴は、まさにそれらの中にまたはいくつかの互いの組み合わせにおいて把握されるであろう。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0188】
図1図1はサンプリング装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0189】
図1は、本発明にしたがって考えられるサンプリング装置110の一例の非常に概略的な側断面図である。しかしながら、本発明はまた、多数の他のタイプのサンプリング装置および分析用補助器具へと適用され得る。
【0190】
サンプリング装置110は、図1に概略的に示される、ニードルエレメント112の穿刺方向116への動きに基づいて使用者の皮膚の一部分に穴を開けるチップ114を有するニードルエレメント112を備える。ニードルエレメント112の動きは、図1に概略的に示されるように、例えばサンプリング装置110の任意的なアクチュエータ118によって操作され得、そしてこれは当業者よって公知である様々な方法でデザインされ得る。アクチュエータ118は、穿刺方向116におけるニードルエレメント112の前方への動き、および任意にはまた、穿刺方向116に対するニードルエレメント112の後方への動きを引き起こし得る。
【0191】
ニードルエレメント112は、提示される実施例において、また他の例においても、追加で任意には、例えばキャピラリ構造120などの形状で、少なくとも1つのキャピラリを備えた表面構造、例えば特には穿刺方向116に平行に延び得る少なくとも1つのキャピラリギャップを備える。キャピラリ構造120の他の実施態様もまた可能である。キャピラリ構造120は例えば、サンプリング操作において、ニードルエレメント112が生体組織中に貫通する際に、体液のサンプルを吸い上げるおよび/または移送するために役立ち得る。例えば、サンプルの移送または取り込みは、毛細管力によって起こり得る。
【0192】
ニードルエレメント112は、さらに、少なくとも1つの親水性コーティング122を、好ましくはキャピラリ構造120の領域に備える。この親水性コーティング122の考えられる実施態様、および、それらの製造のための考えられる方法および例が以下により詳細に説明される。
【0193】
サンプリング装置110は、例えば体液中の少なくとも1つの分析物を検出するための、少なくとも1つの試験化学を備えたさらに少なくとも1つの試験エレメント124を備える。例えば、この試験エレメントは、すくなくとも1つの試験フィールドを備え、これゆえ、少なくとも1つの領域が試験化学によってコーティングされている。図1において、試験エレメント124は、象徴的に、ニードルエレメント112から分離して形成された試験エレメント124として示されており、そして、これは、例えばサンプリング装置110のハウジング126、例えばマガジンハウジングなどの中またはその上に配置され得る。例えば、サンプルが採取された後、キャピラリ構造120を有するニードルエレメント112は、体液のサンプルまたはその一部分をキャピラリ構造120から試験エレメント124まで移送するために、試験エレメント124に近づけられてもよい。この目的のために、例えばサンプリング装置110中に、サンプルの取り込み後にニードルエレメント112またはその一部分を試験エレメント124へ向かう動きの方向130に動かすアクチュエータ128が提供され得る。しかしながら、代わりにまたは追加で、サンプル収集の後の、試験エレメント124を通り越す適切な経路に沿った後方への動きのあいだに、キャピラリ構造120から、および/または、ニードルエレメント112から、試験エレメント124へと、例えばニードルエレメント112を通り抜けることなどにより、体液を移送するための他の可能性もまた存在する。しかしながら、同じように、代わりにまたは追加で、任意的な試験エレメントを完全にまたは部分的にニードルエレメント112に、例えばキャピラリ構造120の一端で一体化させることもまた可能である。
【0194】
親水性にコートされた分析用補助器具の製造に関連する様々な例が以下に説明される。
【実施例】
【0195】
実施例1:キャピラリのコーティングおよび親水化剤の貯蔵寿命の検証
使用された材料
−120×80μmの断面積を有するキャピラリ
−マクロロン(Makrolon)(登録商標)2458(Bayer)顆粒コーティング材料
1.Arプラズマ
2.ヘパリン
3.Carbopol(登録商標)971PNF(部分的に架橋した高分子ポリアクリル酸のナトリウム塩)(例えばLubrizolより市販されている)
4.Mega−8(オクタノイル−N−メチルグルカミド)(例えばDojindoより市販されている)
5.DONS(ジオクチルコハク酸ナトリウム)(例えばCytec Industries B.V.より市販されている)
6.PVA 28−99(ポリビニルアルコール)(例えばFlukaより市販されている)
7.PVP K15(ポリビニルピロリドン)(例えばAldrichより市販されている)
8.Bindzil(登録商標)CC30(ナノシリカ分散)(Akzo Nobel)
9.Ludox(登録商標)AM−30(ナノシリカ分散)(例えばAldrichより市販されている)
10.Ludox(登録商標)AS−30(ナノシリカ分散)(例えばAldrichより市販されている)
11.Bindzil(登録商標)2034DI(ナノシリカ分散)(例えばAkzo NobelまたはEKAより市販されている)
12.CMC(カルボキシメチルセルロース、MW=700000g/mol、置換度DS=0.9)(例えばAldrichより市販されている)
13.Bindzil(登録商標)CC301(ナノシリカ分散)(Akzo Nobel)
14.Bindzil(登録商標)CC401(ナノシリカ分散)(Akzo Nobel)
15.Bindzil(登録商標)33/360(ナノシリカ分散)(Akzo Nobel)
【0196】
キャピラリをコーティングするための一般仕様1(a)
コーティングは、コーティング材料の水性分散剤または溶液を、キャピラリが完全に充填される(約35nL)まで、純粋に毛細管力によって120×80μmの断面積を有するキャピラリ中に流すことによって達成される。その後、コーティングは、室温で送風機を用いて、または140℃まで加熱することによって短時間乾燥される。
【0197】
コーティングの前に、キャピラリはプラズマ処理によってぬれ性を与えられる。
【0198】
キャピラリのプラズマ処理のための一般仕様1(b)
キャピラリは、50mbarのアルゴン圧および電力400Wのマイクロ波で、30秒間プラズマ炉(Plateg社製)中で処理される。
【0199】
滅菌のための一般仕様1(c)
滅菌は、β線照射(25kGy)を用いた処理によって達成される。
【0200】
実施例1.1 マクロロンの存在下における親水化剤の貯蔵寿命
揮発性のパッケージング材料の成分の存在下における様々な親水化剤の貯蔵寿命が、マクロロンそれ自体を材料とする例において、一般仕様1(b)にしたがってコーティングの前にプラズマを用いて処理された、一般仕様1(a)にしたがってコートされた6つのキャピラリのそれぞれを、それぞれ4gのマクロロン2458の顆粒とともにまたは顆粒なしにPETバッグ中にヒートシーリングし、そしてそれらを所定の時間保管することによって検証された。他に記載が無い限り、全てのバッグは25kGyのβ線照射を用いて滅菌された。4mmの長さが充填されるための時間が測定された。測定はヘパリン血、HK 44を用いて行われた。結果が表1に示される。
【0201】
【表1】
【0202】
結果は、本発明によるコーティングが、マクロロンの存在下PETバッグ中に保管された後であっても、120×80μmの断面積の4mmの長さに対し400ms未満の充填時間を可能にしている証拠を提供している。
【0203】
実施例1.2 Zylarの存在下における親水化剤の貯蔵寿命
揮発性のパッケージング材料の成分の存在下における様々な親水化剤の貯蔵寿命が、Zylar(登録商標)(マクロロンと比較してより高い割合の揮発性物質を含む)の例において、一般仕様1(b)にしたがってコーティングの前にプラズマを用いて処理された、一般仕様1(a)にしたがってコートされた6つのキャピラリのそれぞれを、Zylar 220材料の射出成形物(MBSコポリマー、Ineos−ova社製、約1.5mm厚さ、重量4g)とともに保管することによって検証された。4mmの長さが充填されるための時間が測定された。測定はヘパリン血、HK 44を用いて行われた。結果が表2に示される。
【0204】
【表2】
【0205】
Zylarの存在下では、有機基によって修飾されたシリカナノ粒子を用いたコーティングが、有機基修飾をもたないシリカナノ粒子よりも有利であることが示されている。
【0206】
例1.3 比較例:本発明によらないコーティングを用いた場合の、Zylarの存在下における親水化剤の貯蔵寿命
本発明のコーティングを本発明によらないコーティングと比較するための比較例として、実施例1.2で記載された例示的な実施態様が再度、本発明によらないコーティングを用いて繰り返された。ここで適用されたコーティング材料は、カルボキシメチルセルロースのDONSとの混合物を含むものであり、欧州特許出願公開第2014727号明細書に記載されるコーティングである。コーティングは、前記カルボキシメチルセルロースの水溶液を最初に調製し、これに対し適切な量のDONSを添加することを含む。得られた水溶液が一般仕様1(a)によるコーティングのために使用された。
【0207】
揮発性のパッケージング材料の成分の存在下におけるCMCおよびDONSの特定の混合物の貯蔵寿命が、実施例1.2にしたがって再度、Zylarの例において検証された。
【0208】
結果が表3に示される。
【0209】
【表3】
【0210】
Zylarの存在下、CMCおよびDONSを用いたコーティングを有するキャピラリは、一週間後でさえももはや充填されなかった。
【符号の説明】
【0211】
110 サンプリング装置
112 ニードルエレメント
114 チップ
116 穿刺方向
118 アクチュエータ
120 キャピラリ構造
122 親水性コーティング
124 試験エレメント
126 ハウジング
128 アクチュエータ
130 動きの方向
図1