(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030118
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】発光デバイスの製造方法および発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20161114BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20161114BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/12 C
H05B33/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-503435(P2014-503435)
(86)(22)【出願日】2013年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2013000469
(87)【国際公開番号】WO2013132739
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-50571(P2012-50571)
(32)【優先日】2012年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 英雄
(72)【発明者】
【氏名】林 明峰
【審査官】
本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−234268(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/114582(WO,A1)
【文献】
特開2007−067416(JP,A)
【文献】
特開2004−335467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口と、前記第1開口の長手方向に沿って配置されている少なくとも1つの第2開口とを有するマスクを、基板上に配置するマスク配置工程と、
前記マスク配置工程の後に、前記マスクの前記第1開口および前記少なくとも1つの第2開口を介して、第1スペクトルの光を発光する第1発光材料で前記基板上にパターン形成する第1パターン形成工程と、
前記第1パターン形成工程の後に、前記第1開口の長手方向における前記第1開口の幅より短く前記第1開口の長手方向における前記少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させる第1マスク移動工程と、
前記第1マスク移動工程の後に、前記マスクの前記第1開口および前記少なくとも1つの第2開口を介して、前記第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光を発光する第2発光材料で前記基板上にパターン形成する第2パターン形成工程と
を含む発光デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1マスク移動工程において、等間隔で配置された前記少なくとも1つの第2開口のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離の略1/2の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させる請求項1に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第2パターン形成工程の後に、前記第1開口の長手方向における前記第1開口の幅より短く前記第1開口の長手方向における前記少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させる第2マスク移動工程と、
前記第2マスク移動工程の後に、前記マスクの前記第1開口および前記少なくとも1つの第2開口を介して、前記第1スペクトルおよび前記第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光を発光する第3発光材料でパターン形成する第3パターン形成工程と
をさらに含む請求項1に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1マスク移動工程において、前記少なくとも1つの第2開口のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離の略1/3の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させ、
前記第2マスク移動工程において、前記中心間距離の略1/3の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させる請求項3に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1開口の短手方向における前記第1開口の幅と前記少なくとも1つの第2開口の幅との和より長い距離だけ、前記第1開口の短手方向に前記マスクを移動させる第4マスク移動工程と、
前記第4マスク移動工程の後に、前記マスクの前記第1開口および前記少なくとも1つの第2開口を介して、前記第1発光材料で前記基板上にパターン形成する第4パターン形成工程と
をさらに含む請求項1から4のいずれか一項に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第4パターン形成工程の後に、前記第1開口の長手方向における前記第1開口の幅より短く前記第1開口の長手方向における前記少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、前記第1開口の長手方向に前記マスクを移動させる第5マスク移動工程と、
前記第5マスク移動工程の後に、前記マスクの前記第1開口および前記少なくとも1つの第2開口を介して、前記第2発光材料で前記基板上にパターン形成する第5パターン形成工程と
をさらに含む請求項5に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項7】
第1電極層および第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置されている発光材料層と
を備え、
前記発光材料層は、
第1スペクトルの光を発光する第1発光材料で形成されている第1発光層と、
前記第1発光層と略同一の形状であり、前記第1発光層に対して面方向に予め定められた距離ずれて前記第1発光層上から前記第1発光層と同一面内までの範囲に積層されており、前記第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光を発光する第2発光材料で形成されている第2発光層と、
前記第1発光層と同一面内の第1領域に、前記第1発光材料で形成されている第3発光層と、
前記第1発光層と同一面内の第2領域に、前記第2発光材料で形成されている第4発光層と
を有し、
前記第3発光層と前記第4発光層との中心間距離は、前記予め定められた距離である発光デバイス。
【請求項8】
前記第3発光層および前記第4発光層は、前記第1発光層および前記第2発光層の長手方向に沿って配置されている請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記第3発光層および前記第4発光層は、前記第1発光層と前記第2発光層とが重なっている領域に隣接して配置されている請求項8に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記発光材料層は、前記第1発光層および前記第2発光層と略同一の形状であり、前記第2発光層に対して前記面方向に前記予め定められた距離ずれて前記第2発光層上から前記第1発光層と同一面内までの範囲に積層されており、前記第1スペクトルおよび前記第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光を発光する第3発光材料で形成されている第5発光層をさらに有する請求項7から9のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記発光材料層は、前記第1発光層と同一面内の第3領域に、前記第3発光材料で形成されている第6発光層をさらに有する請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記第6発光層は、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第5発光層の長手方向に沿って、前記第3発光層および前記第4発光層と並んで配置されている請求項11に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記第6発光層は、前記第1発光層と前記第2発光層と前記第5発光層とが重なっている領域に隣接して配置されている請求項12に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスの製造方法および発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクを用いて基板上の各ピクセルに対応する各領域に発光層を蒸着する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
特許文献1 特開2011−165581号公報
特許文献2 特開2010−40529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マスクを用いて基板上の各ピクセルに対応する各領域に発光層を形成する発光デバイスの製造方法において、製造工程のさらなる効率化が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る発光デバイスの製造方法は、第1開口と、第1開口の長手方向に沿って配置されている少なくとも1つの第2開口とを有するマスクを、基板上に配置するマスク配置工程と、マスク配置工程の後に、マスクの第1開口および少なくとも1つの第2開口を介して、第1スペクトルの光を発光する第1発光材料で基板上にパターン形成する第1パターン形成工程と、第1パターン形成工程の後に、第1開口の長手方向における第1開口の幅より短く第1開口の長手方向における少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させる第1マスク移動工程と、第1マスク移動工程の後に、マスクの第1開口および少なくとも1つの第2開口を介して、第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光を発光する第2発光材料で基板上にパターン形成する第2パターン形成工程とを含む。
【0005】
上記発光デバイスの製造方法において、第1マスク移動工程において、等間隔で配置された少なくとも1つの第2開口のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離の略1/2の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させてもよい。
【0006】
上記発光デバイスの製造方法は、第2パターン形成工程の後に、第1開口の長手方向における第1開口の幅より短く第1開口の長手方向における少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させる第2マスク移動工程と、第2マスク移動工程の後に、マスクの第1開口および少なくとも1つの第2開口を介して、第1スペクトルおよび第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光を発光する第3発光材料でパターン形成する第3パターン形成工程とをさらに含んでもよい。
【0007】
上記発光デバイスの製造方法において、第1マスク移動工程において、少なくとも1つの第2開口のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離の略1/3の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させ、第2マスク移動工程において、中心間距離の略1/3の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させてもよい。
【0008】
上記発光デバイスの製造方法は、第1開口の短手方向における第1開口の幅と少なくとも1つの第2開口の幅との和より長い距離だけ、第1開口の短手方向にマスクを移動させる第4マスク移動工程と、第4マスク移動工程の後に、マスクの第1開口および少なくとも1つの第2開口を介して、第1発光材料で基板上にパターン形成する第4パターン形成工程とをさらに含んでもよい。
【0009】
上記発光デバイスの製造方法は、第4パターン形成工程の後に、第1開口の長手方向における第1開口の幅より短く第1開口の長手方向における少なくとも1つの第2開口の幅以上の距離だけ、第1開口の長手方向にマスクを移動させる第5マスク移動工程と、第5マスク移動工程の後に、マスクの第1開口および少なくとも1つの第2開口を介して、第2発光材料で基板上にパターン形成する第5パターン形成工程とをさらに含んでもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る発光デバイスは、第1電極層および第2電極層と、第1電極層と第2電極層との間に配置されている発光材料層とを備え、発光材料層は、第1スペクトルの光を発光する第1発光材料で形成されている第1発光層と、第1発光層と略同一の形状であり、第1発光層に対して面方向に予め定められた距離ずれて第1発光層上から第1発光層と同一面内までの範囲に積層されており、第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光を発光する第2発光材料で形成されている第2発光層とを有する。
【0011】
上記発光デバイスにおいて、発光材料層は、第1発光層と同一面内の第1領域に、第1発光材料で形成されている第3発光層と、第1発光層と同一面内の第2領域に、第2発光材料で形成されている第4発光層とをさらに有し、第3発光層と第4発光層との中心間距離は、予め定められた距離でもよい。
【0012】
上記発光デバイスにおいて、第3発光層および第4発光層は、第1発光層および第2発光層の長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0013】
上記発光デバイスにおいて、第3発光層および第4発光層は、第1発光層と第2発光層とが重なっている領域に隣接して配置されていてもよい。
【0014】
上記発光デバイスにおいて、発光材料層は、第1発光層および第2発光層と略同一の形状であり、第2発光層に対して面方向に予め定められた距離ずれて第2発光層上から第1発光層と同一面内までの範囲に積層されており、第1スペクトルおよび第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光を発光する第3発光材料で形成されている第5発光層をさらに有してもよい。
【0015】
上記発光デバイスにおいて、発光材料層は、第1発光層と同一面内の第3領域に、第3発光材料で形成されている第6発光層をさらに有してもよい。
【0016】
上記発光デバイスにおいて、第6発光層は、第1発光層、第2発光層、および第5発光層の長手方向に沿って、第3発光層および第4発光層と並んで配置されていてもよい。
【0017】
上記発光デバイスにおいて、第6発光層は、第1発光層と第2発光層と第5発光層とが重なっている領域に隣接して配置されていてもよい。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る発光デバイスの平面図である。
【
図3A】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3B】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3C】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3D】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3E】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3F】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3G】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【
図3H】本実施形態に係る発光デバイスの製造方法の各工程の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本実施形態に係る発光デバイスの平面図を示す。発光デバイスは、基板10を備える。基板10は、互いに離間して配置された第1発光層領域101、第2発光層領域102、第3発光層領域103、および第4発光層領域104を有する。第1発光層領域101には、第1スペクトルの光の一例である赤色Rの光を放射する赤色発光層が形成されている。第2発光層領域102には、第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光の一例である緑色Gの光を放射する緑色発光層が形成されている。第3発光層領域103には、第1スペクトルおよび第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光の一例である青色Bの光を放射する青色発光層が形成されている。第4発光層領域104には、第1スペクトル、第2スペクトル、および第3スペクトルの光が混合された光の一例である白色Wの光を放射する白色発光層が形成されている。第1発光層領域101、第2発光層領域102、第3発光層領域103、および第4発光層領域104は、それぞれ一サブ画素を構成し、第1発光層領域101、第2発光層領域102、第3発光層領域103、および第4発光層領域104により一画素を構成する。
【0022】
発光デバイスは、例えば、第1発光層領域101、第2発光層領域102、第3発光層領域103、および第4発光層領域104のそれぞれの発光層を同時に発光させる。これにより、発光デバイスは、それぞれの発光層から照射された光を受けた人に、予め定められた色温度を有する白色光を照射されているように認識させる。
【0023】
図2Aは、本実施形態に係る発光デバイスの基板10の上方の第1発光層領域101、第2発光層領域102、第3発光層領域103、および第4発光層領域104のそれぞれに発光材料を堆積させる場合に用いられるマスク200の平面図を示す。
【0024】
マスク200は、第1開口201と、第1開口201の長手方向Xに沿って形成されている複数の第2開口とを有する。複数の第2開口202のそれぞれの中心間距離は、複数の第1発光層領域101、複数の第2発光層領域102、または複数の第3発光層領域103同士の中心間距離と同一である。言い換えれば、複数の第2開口202のそれぞれの中心間距離は、一の第1発光層領域101と、一の第1発光層領域101に隣接する一の第2発光層領域102との中心間距離の3倍である。
【0025】
マスク200を用いた発光材料の堆積および長手方向Xまたは短手方向Yへのマスク200の移動を繰り返すことで、基板10の上方のそれぞれの発光層領域に赤色発光層、緑色発光層、青色発光層、および白色発光層を形成する。なお、マスク200が有する第1開口201および複数の第2開口202は、
図2Bに示すように、1つの開口を形成してもよい。また、マスク200は、少なくとも1つの第2開口202を有していればよい。
【0027】
マスク200を、基板10上の予め定められた位置、例えば、
図3Aにおいて、最も左側の第2開口202が、基板10が有する複数の第1発光層領域101のうち最左上の第1発光層領域102に対応する位置に配置する(
図3A)。マスク配置工程の後に、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して、赤色Rに対応する第1スペクトルの光を発光する第1発光材料を例えばマスク蒸着することで、第1発光材料で基板10上にパターン形成する。これにより、基板10上に複数の赤色発光層32a、および赤色発光層32bを形成する。なお、赤色発光層32aは、「第3発光層」の一例である。赤色発光層32bは、「第1発光層」の一例である。
【0028】
続いて、第1開口201の短手方向300における第1開口の幅w2と複数の第2開口202の幅w1との和より長い距離w3だけ、第1開口の短手方向300にマスク200を移動させる。マスク200を短手方向300に移動させた後に、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して、再び第1発光材料で基板10上にパターン形成する(
図3C)。マスク200の短手方向300の移動および第1発光材料のマスク蒸着を繰り返すことで、基板10上に複数の赤色発光層32a、および複数の赤色発光層32bを形成する(
図3D)。
【0029】
次に、第1開口201の長手方向302における第1開口201の幅Dより短く第1開口201の長手方向302における複数の第2開口202の幅以上の距離だけ、第1開口201の長手方向302にマスク200を移動させる(
図3E)。より具体的には、複数の第2開口202のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離dの略1/3の距離d/3だけ、第1開口201の長手方向302にマスク200を移動させる。マスク200を長手方向302に移動させた後、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して、緑色に対応する第1スペクトルとは異なる第2スペクトルの光を発光する第2発光材料をマスク蒸着することで、第2発光材料で基板10上にパターン形成する(
図3F)。これにより、基板10上に複数の緑色発光層33a、および緑色発光層33bを形成する。なお、緑色発光層33aは、「第4発光層」の一例である。緑色発光層33bは、「第2発光層」の一例である。
【0030】
第1開口201の短手方向300における第1開口の幅w2と複数の第2開口202の幅w1との和より長い距離w3だけ、第1開口の短手方向300にマスク200を移動させ、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して第2発光材料で基板10上にパターン形成する工程を繰り返し、基板10上に、複数の緑色発光層33aおよび複数の緑色発光層33bを形成する(
図3G)。
【0031】
続いて、複数の緑色発光層33aおよび複数の緑色発光層33bの形成が終了した後、第1開口201の長手方向における第1開口201の幅より短く第1開口201の長手方向における複数の第2開口202の幅以上の距離d/3だけ、第1開口201の長手方向にマスク200を移動させる。さらに、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して、青色に対応する第1スペクトルおよび第2スペクトルとは異なる第3スペクトルの光を発光する第3発光材料をマスク蒸着することで、第3発光材料でパターン形成する。次いで、第1開口201の短手方向300における第1開口の幅w2と複数の第2開口202の幅w1との和より長い距離w3だけ、第1開口の短手方向300にマスク200を移動させ、マスク200の第1開口201および複数の第2開口202を介して、第3発光材料でパターン形成する。マスク200の短手方向の移動およびマスク200を用いた第3発光材料のパターン形成を繰り返し、基板上に、複数の青色発光層34aおよび複数の青色発光層34bを形成する(
図3H)。なお、青色発光層34aは、「第6発光層」の一例である。青色発光層34bは、「第5発光層」の一例である。
【0032】
以上の各工程により、基板10の上方に発光層を形成できる。本実施形態に係る発光デバイスの製造方法によれば、同一のマスクを用いて、基板10の上方のそれぞれ異なる領域に単色の光を放射する単層発光層および複数色の光を放射する多層発光層を同時に形成できる。よって、発光デバイスの製造工程を効率化でき、発光デバイスの製造コストを抑制できる。
【0033】
図4Aは、本実施形態に係る発光デバイスの
図3Hに示すA−A断面図を示す。
図4Bは、本実施形態に係る発光デバイスの
図3Hに示すB−B断面図を示す。
【0034】
本実施形態に係る発光デバイスは、基板10、第1電極層20、発光材料層30、および第2電極層40を備える。発光材料層30は、第1電極層20と第2電極層40との間に配置されている。発光デバイスは、いわゆるボトムエミッション型の有機EL発光デバイスである。なお、発光デバイスは、いわゆるトップエミッション型の有機EL発光デバイス、または両面光取出し型の有機EL発光デバイスでもよい。
【0035】
基板10は、ガラスまたは高分子フィルムなどの光透過性を有する板材を用いることができる。第1電極層20は、陽極であり、透明導電膜でもよい。第1電極層20は、光透過性導電性材料により構成されてもよい。ここで、「光透過性」とは、光を透過する性質を有することを意味する。光透過性導電性材料は、可視光域(350nm〜780nm)における光の透過率が概ね50%を超える性質を有し、かつ表面抵抗値が10
7Ω以下の材料のことをいう。具体的には、光透過性導電性材料として、インジウムドープの酸化錫(ITO)、インジウムドープの酸化亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛などを用いることができる。表面抵抗の低さの観点からは、インジウムドープの酸化錫を用いて第1電極層20を構成することが好ましい。第1電極層20は、例えば、スパッタ法、蒸着法、パルスレーザー堆積法などにより基板10上にITO薄膜を形成することにより形成される。第1電極層20は、第1方向(マスク200の長手方向)に沿って帯状に配置されている複数の第1電極22を有する。なお、第1電極層20は、共通電極である一の第1電極22を有してもよい。
【0036】
第2電極層40は、陰極であり、発光材料層30の上方に配置されている。第2電極層40は、例えば、AlまたはAgなどの導電性材料を用いて、蒸着法、スパッタ法などの方法により発光材料層30上に形成される。基板10側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL発光デバイスの場合、第2電極層40は光透過性である必要はない。一方、トップエミッション型または両面取出し型の有機EL発行デバイスの場合、第2電極層40は、光透過性導電材料により構成される。この場合、第2電極層40は、第1電極層20で用いられる材料と同一の材料により構成されてもよい。なお、本実施形態においては、第2電極層40は、発光材料層30上に配置されている。しかし、発光デバイスの製造工程において、吸湿によって発光材料層30を構成する各層が劣化するのを抑制する観点から、発光材料層30の最表面(第2電極層40との界面)に第2電極層40とは別に、バッファ層として導電性の他の層を形成してもよい。第2電極層40は、第1方向に垂直な第2方向(マスク200の短手方向)に沿って帯状に配置されている複数の第2電極42を有する。
【0037】
複数の第1電極22および複数の第2電極42のそれぞれに個別または同時に駆動電圧を印加することで、複数の第1電極22および複数の第2電極42のうち駆動電圧が印加されたそれぞれの第1電極および第2電極が交差するそれぞれの領域における発光材料層30が発光する。
【0038】
発光材料層30は、一般の有機EL素子において陽極と陰極とに狭持された部分を示し、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔注入層、および正孔輸送層などを有する。発光材料層30は、有機化合物のほかに、薄膜のアルカリ金属または無機材料を用いて構成されてもよい。
【0039】
発光材料層30は、正孔注入層および正孔輸送層31、および電子注入層および電子輸送層35を含む。発光材料層30は、正孔注入層および正孔輸送層31と電子注入層および電子輸送層35との間に、赤色発光層32a、緑色発光層33a、青色発光層34a、または白色発光層36を有する。白色発光層36は、赤色発光層32b、緑色発光層33b、および青色発光層34bを含む。
【0040】
赤色発光層32bは、赤色に対応する第1スペクトルの光を発光する第1発光材料で形成されている。緑色発光層33bは、赤色発光層32bと陰極側から見て略同一の形状であり、赤色発光層32bに対して面方向に予め定められた距離d/3ずれて赤色発光層32b上から赤色発光層32bと同一面内までの範囲に積層されており、第2スペクトルの光を発光する第2発光材料で形成されている。
【0041】
青色発光層34bは、赤色発光層32bおよび緑色発光層33bと陰極側から見て略同一の形状であり、緑色発光層33bに対して面方向に予め定められた距離d/3ずれて緑色発光層33b上から赤色発光層32bと同一面内までの範囲に積層されており、第3スペクトルの光を発光する第3発光材料で形成されている。
【0042】
赤色発光層32aは、赤色発光層32bと同一面内の第1発光層領域101に、第1発光材料で形成されている。緑色発光層33aは、赤色発光層32aと同一面内の第2発光層領域102に、第2発光材料で形成されている。青色発光層34aは、赤色発光層32bと同一面内の第3発光層領域103に、第3発光材料で形成されている。赤色発光層32aと緑色発光層33aとの中心間距離および緑色発光層33aおよび青色発光層34aとの中間間距離は、予め定められた距離d/3である。また、赤色発光層32aおよび緑色発光層33aは、赤色発光層32bおよび緑色発光層33bの長手方向に沿って配置されている。赤色発光層32aおよび緑色発光層33aは、赤色発光層32bと緑色発光層33bとが重なっている領域に隣接して配置されている。青色発光層34aは、赤色発光層32b、緑色発光層33b、および青色発光層34bの長手方向に沿って、赤色発光層32aおよび緑色発光層33aと並んで配置されている。赤色発光層32a、緑色発光層33aおよび青色発光層34aは、赤色発光層32b、緑色発光層33b、および青色発光層34bが重なっている領域に隣接して配置されている。
【0043】
以上のように構成された発光デバイスによれば、例えば、赤色発光層32aおよび32b、緑色発光層33aおよび33b、並びに青色発光層34aおよび34bを同時に発光させることで、それぞれの発光層から照射された光を受けた人に、予め定められた色温度を有する白色光を照射されているように認識させることができる。
【0044】
なお、発光デバイスは、
図5に示すように、第1発光層領域101、第3発光層領域103、および第4発光層領域104から構成される複数の画素を有してもよい。この場合、マスク200が有する複数の第2開口202の中心間距離は、
図6に示すように、複数の第1発光層領域101、または複数の第3発光層領域103同士の中心間距離と同一である。言い換えれば、複数の第2開口202のそれぞれの中心間距離は、一の第1発光層領域101と、一の第1発光層領域101に隣接する一の第3発光層領域103との中心間距離d/2の2倍の距離dである。
図6に示すマスク200を用いて発光デバイスを製造する場合において、マスク200を第1開口201の長手方向に移動する場合には、等間隔で配置された複数の第2開口202のうちの隣接する2つの第2開口の中心間距離の略1/2の距離d/2だけ、第1開口201の長手方向にマスク200を移動させればよい。これにより、単相発光層および多層発光層を同一マスクを用いて同時に形成できる。
【0045】
また、上記の実施形態に係るマスクは、基板10上に配置される一列分の画素群に対応する1つの第1開口201と複数の第2開口202のみを有する例について説明した。しかし、
図7に示すように、マスク200は、基板10上に配置される複数列分の画素群に対応する複数の第1開口201と、複数の第1開口201のそれぞれに対応する複数の第2開口202とを有してもよい。このようなマスク200によれば、第1開口201の短手方向への移動を減らすことができる。よって、さらに製造工程の効率化を図ることができる。
【0046】
また、白色Wの光を放射する大面積の第4発光層領域104以外の赤色Rまたは緑色G青色B等の光を放射する第1発光層領域101、第2発光層領域102、および第3発光層領域101等の面積は視感効率または発光効率の関係から必ずしも同じ面積である必要はなく、また、同じ面積で各々の発光層を形成した場合であっても、各々の発光領域に対応する陽極または陰極、即ち、第1電極層20または第2電極層40の面積を調整することで発光層領域としての面積は調整することができる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0048】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 基板
20 第1電極層
30 発光材料層
32a,32b 赤色発光層
33a,33b 緑色発光層
34a,34b 青色発光層
36 白色発光層
40 第2電極層
101 発光層領域
102 発光層領域
103 発光層領域
104 発光層領域
200 マスク
201 第1開口
202 第2開口