特許第6030126号(P6030126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030126
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】絶縁配合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20161114BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20161114BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20161114BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08G59/68
   C08K9/06
   C08L63/00 C
   H01B3/40 C
   H01B3/40 J
   H01B3/40 M
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-511370(P2014-511370)
(86)(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公表番号】特表2014-518921(P2014-518921A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012033424
(87)【国際公開番号】WO2012158292
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/485,843
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エセギエ,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ウィリアム ジェイ.
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−345640(JP,A)
【文献】 特開2010−280892(JP,A)
【文献】 特表2002−504602(JP,A)
【文献】 特開平02−296820(JP,A)
【文献】 特開2006−156964(JP,A)
【文献】 特開平03−232730(JP,A)
【文献】 特表2014−520172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01B 3/16−3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、
(b)少なくとも1種の液体環状無水物ハードナー、
(c)エポキシ−シラン処理充填剤であり、1ミクロンから100ミクロンの間のサイズを有する、少なくとも1種の熱伝導性および電気絶縁性固体充填剤、および
(d)アミン水素を有していない少なくとも1種のアミン硬化触媒を含む、電気装置のための絶縁物として有用な硬化性エポキシ樹脂配合組成物であって、硬化時に、少なくとも140℃のガラス転移温度、少なくとも80MPaの引張強度、少なくとも10kV/mmの誘電強度、少なくとも0.8W/m−Kの熱伝導率および少なくとも1×1012オーム−cmの体積抵抗率を含む特性のバランスを有する硬化生成物を提供する、エポキシ樹脂配合組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のエポキシ樹脂がビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エポキシノボラックまたはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のエポキシ樹脂がエポキシノボラックを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のエポキシ樹脂の濃度が7重量パーセントから30重量パーセントを範囲とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の無水物ハードナーがナジックメチル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物およびそれらの混合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の無水物ハードナーがナジックメチル酸無水物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の無水物ハードナーがメチルテトラヒドロフタル酸無水物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の無水物ハードナーがナジックメチル酸無水物およびメチルテトラヒドロフタル酸無水物の混合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の無水物ハードナーの濃度が7重量パーセントから35重量パーセントを範囲とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の充填剤がエポキシ−シラン処理石英を含み、そして、少なくとも1種の充填剤の濃度が40重量パーセントから90重量パーセントを範囲とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の硬化触媒が1−置換イミダゾール触媒を含み、少なくとも1種の硬化触媒の濃度が0.005重量パーセントから2重量パーセントを範囲とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項12】
反応性希釈剤、柔軟化剤、加工助剤、強化剤またはそれらの混合物を含める、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項13】
反応性希釈剤が1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;プロポキシ化グリセリンのトリグリシジルエーテル;エポキシ化ヒマシ油;エポキシ化亜麻仁油;オルト−クレシルグリシジルエーテル;アルキルグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;またはそれらの混合物を含む、請求項12に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項14】
硬化時に、140℃から225℃のガラス転移温度を有する硬化生成物を提供し、硬化時に、80MPaから250MPaの引張強度、10kV/mmから45kV/mmの誘電破壊強度、1×1012オーム−cmから1×1019オーム−cmの体積抵抗率を有する硬化生成物を提供する、請求項1に記載のエポキシ樹脂配合組成物。
【請求項15】
(a)少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、(b)少なくとも1種の液体環状無水物ハードナー、(c)少なくとも1種の熱伝導性および電気絶縁性エポキシ−シラン処理充填剤、および(d)アミン水素を有していない少なくとも1種のアミン硬化触媒を添加混合することを含む、電気装置のための絶縁物として硬化性エポキシ樹脂配合組成物を調製するためのプロセスであって、エポキシ樹脂配合組成物が硬化時に、ガラス転移温度、引張強度、誘電強度および体積抵抗率を含む特性のバランスを有する硬化生成物を提供硬化時に、少なくとも140℃のガラス転移温度、少なくとも80MPaの引張強度、少なくとも10kV/mmの誘電破壊強度、少なくとも0.8W/mKの熱伝導率、および少なくとも1×1012オーム−cmの体積抵抗率を有する硬化生成物を提供する、プロセス。
【請求項16】
(i)請求項1に記載の組成物を提供するステップ、
(ii)前記請求項1に記載の組成物を基材に適用するステップ、および
(iii)前記基材および組成物を硬化することで絶縁材料を形成するステップ
を含む、電気装置のためのエポキシ絶縁性材料を調製するためのプロセスであって、生じる絶縁材料が、120℃以上の連続運転温度に必要とされる電気的、機械的および熱的特性を含めた必要特性のバランスを有する、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂配合物、より詳細には電気装置のための絶縁性材料として有用なエポキシ樹脂配合物に関連する。
【背景技術】
【0002】
絶縁材料の1つの特性が改善されている電気絶縁材料として使用するための充填エポキシに関連するいくつかの公知従来技術プロセスがある。しかしながら、これまで、公知技術において、所定の運転温度に必要とされる電気的、機械的および熱的特性などの特性の必要なバランスを有する電気絶縁材料のための充填エポキシ樹脂配合物の提供に成功したものはない。
【0003】
シリカ充填剤を用いる典型的な硬化エポキシ注型用絶縁材料配合物は、約70〜95℃のガラス転移温度、約70〜90MPaの引張強度、一般に約1.0W/mK未満の熱伝導率、約1015から1016オーム−cmの体積抵抗率を有し、多くの他の特性を含める。様々な最終使用のための固体絶縁材料には、前述の特性など、これら特性の必要なバランスが要求される。加えて、絶縁材料は、例えば電力変圧器などの電気装置の分野において、例えば、絶縁材料として首尾よく使用されるためにエポキシ配合物を硬化するより前の必要な粘度を含めて、加工特徴を有するべきである。
【0004】
ガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移温度に接近(および引き続いて通過)するにつれて貯蔵弾性率、引張強度減少など、動的機械分析計を使用する温度掃引または一部の昇温もしくは温度傾斜での環境チャンバ内における測定を介して測定される場合の機械的および熱機械的特性が減少し、体積抵抗率および誘電強度などの電気絶縁特性が減少し、熱線膨張の係数が増加する点において、絶縁物における特に重要な特性である。特性の上記組合せにおける変化は、絶縁材料の早期破損に至ることがあり、これが順じて、ショートすることに至る。例えば、Journal of Applied Polymer Science、1981、26、2211は、硬化エポキシ樹脂においてTgに接近するにつれて、誘電強度が減少することを記載している。Tgに接近するにつれて、硬化エポキシ樹脂生成物の、引張強度の減少および熱線膨張の係数の増加が生じることも知られている。エポキシ絶縁材料のTgの増加は、例えば電力変圧器の使用温度(短期の、より高い温度突入を含める)を増加させる方法である。しかしながら、Tgが硬化エポキシ樹脂において増加するにつれて、材料の強度が減少し、したがって、亀裂に対してより感受性である絶縁材料を作製する絶縁材料において脆性が増加し得る。結果として、亀裂は、電気ショートすることによって証明される通り電気絶縁材料の損傷の一因となる。
【0005】
Tg、引張強度;体積抵抗率;誘電破壊強度および熱伝導率などの特性のバランスを有する充填エポキシ配合物を開発し、その結果、電気的、機械的および熱的特性などの必要特性のバランスを有する絶縁物が所定の連続運転温度において使用され得ることは、電気絶縁用途に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明より前には、120℃以上の連続運転温度に必要とされる全ての必要とされる電気的、機械的および熱的特性のバランスを有する電力変圧器などの電気装置のためのエポキシ絶縁性材料を開発したものは誰もいない。本発明は、従来技術とは異なる乾式変圧器などの用途のために特性のこのバランスを達成する。本発明の材料は、そう所望されるならば、より低い運転温度で使用され、こうしたより低い運転温度システムにおいて、通常の運転温度より高い温度への可動中においてより良好に行うための能力を得るという利点を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電力変圧器などの電気装置のための電気絶縁性材料として有用なエポキシ硬化性配合物または組成物を対象とする。例えば、本発明の硬化性組成物の1つの広い実施形態は、(a)少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、(b)少なくとも1種の液体環状無水物ハードナー、(c)エポキシ−シラン処理充填剤であり、約5ミクロンから約35ミクロンの間のサイズを有する、少なくとも1種の熱伝導性および電気絶縁性充填剤、(d)アミン水素を有していない少なくとも1種のアミン硬化触媒、および(e)他の任意選択の化合物を含み、ここで、エポキシ樹脂配合組成物は硬化時に、Tg、引張強度、誘電強度および体積抵抗率を含む特性のバランスを有する硬化生成物を提供する。
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂、無水物ハードナー、充填剤、触媒および任意選択の構成成分の構成要素混合物を含めて構成要素の適正な選択を利用することによって、次世代乾式変圧器内のコイルおよび巻線のための、被覆、含浸または注型されたエポキシ電気絶縁物に必要である加工属性と一緒に、電気的、機械的および熱的特性の必要なバランスをもたらす。
【0009】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、約120℃を超える(>約120℃)連続運転温度および約140℃以上のTg、>約1.00W/mKの熱伝導率、>約20kV/mmの誘電強度、および例えば>約80MPaなど現配合物と少なくとも同等の引張強度のために設計することができる。本発明の組成物は、有利には、機械的、熱的および電気的特性と適切な靭性および頑強性との全体的バランスを有することで、乾式型変圧器の用途領域における電気絶縁物として利用される。
【0010】
別の実施形態において、硬化するより前の配合物は、変圧器のコイルおよび巻線を被覆、含浸および/または注型するのに、および適切なポットライフを有する配合物を提供するのに充分な粘度を有する。例えば、該組成物の複素粘度は、一実施形態において約100,000mPa−s未満であってよく、別の実施形態において、配合物が(例えば被覆、含浸および/または注型することによって)変圧器のコイルおよび巻線に適用されるのを可能にする注型温度で約20,000mPa−s未満であってよい。
【0011】
注型温度における加工粘度のバランスおよび配合物硬化時の特性のバランスとともに、本発明は、電気絶縁物のための必要な特性、機械的および電気的特性の両方、ならびにその注型性を提供する。本発明は、こうした先に知られている系が、より高い温度で動作する電力変圧器に利用することができないような従来技術のエポキシ電気絶縁系を超える改善を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
その最も広い範囲において、本発明は、(a)少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、(b)少なくとも1種の液体環状無水物ハードナー、(c)エポキシ−シラン処理充填剤であり、約5ミクロンから約35ミクロンの間の平均粒径を有する、少なくとも1種の熱伝導性および電気絶縁性充填剤、および(d)アミン水素を有していない少なくとも1種のアミン硬化触媒を含むエポキシ樹脂配合組成物を対象とする。
【0013】
本発明において使用されるエポキシ樹脂は、Lee、H.およびNeville、K.、Handbook of Epoxy Resins、McGraw-Hill Book Company、New York、1967、2章、2−1ページから2−27ページに記載されているエポキシ樹脂など当技術分野において知られている任意のエポキシ樹脂構成成分または2種以上のエポキシ樹脂の組合せであってよい。当技術分野において知られている特に適当な他のエポキシ樹脂としては、例えば、多官能アルコール、フェノール、脂環式カルボン酸、芳香族アミンまたはアミノフェノールとエピクロロヒドリンとの反応生成物に基づくエポキシ樹脂が挙げられる。いくつかの非限定的な実施形態としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、およびパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテルが挙げられる。当技術分野において知られている他の適当なエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロロヒドリンと、o−クレゾールノボラック、炭化水素ノボラックおよびフェノールノボラックとの反応生成物が挙げられる。エポキシ樹脂は、例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なD.E.R.331(登録商標)、D.E.R.332、D.E.R.354、D.E.R.580、D.E.N.425、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736、またはD.E.R.732エポキシ樹脂などの市販製品から選択することもできる。
【0014】
別の実施形態において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂構成成分としてジビニルアレーンジオキシドを挙げることができる。ジビニルアレーンジオキシド、特に、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などジビニルベンゼンから誘導されるものは、相対的に低い液体粘度だが従来のエポキシ樹脂より高い強剛性および架橋密度を有するジエポキシドのクラスである。例えば、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの粘度は、一実施形態において一般に約0.001Pa sから約0.1Pa s、別の実施形態において約0.01Pa sから約0.05Pa s、また別の実施形態において25℃で約0.01Pa sから約0.025Pa sを範囲とする。
【0015】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドとしては、例えば、例えば参照により本明細書に組み込むWO2010077483に記載されているプロセスによって生成されるジビニルアレーンジオキシドを挙げることができる。本発明において有用であるジビニルアレーンジオキシド組成物は、例えば、参照により本明細書に組み込む米国特許第2,924,580号にも開示されている。より詳細には、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの例は、ジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0016】
本発明における構成成分(a)として有用なエポキシ樹脂のまた別の実施形態としては、例えば、参照により本明細書に組み込む米国特許出願公開番号US20090186975およびWO99/67315に記載されているエポキシ樹脂が挙げられる。例えば、本発明の文脈内において使用されるエポキシ樹脂の実施形態としては、芳香族および/または脂環式化合物が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばヘキサヒドロ−o−フタル酸−ビス−グリシジルエステル、ヘキサヒドロ−m−フタル酸−ビス−グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、またはヘキサヒドロ−p−フタル酸−ビス−グリシジルエステルが挙げられる。脂肪族エポキシ樹脂、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、またはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルも、本発明の組成物のための構成成分として使用することができる。エポキシ樹脂は、1分子当たり少なくとも2個の1,2−エポキシ基を含有する反応性グリシジル化合物である。一実施形態において、例えばジグリシジル化合物およびトリグリシジル化合物の混合物など、ポリグリシジル化合物の混合物を使用することができる。
【0017】
本発明において有用なエポキシ化合物は、非置換グリシジル基、および/またはメチル基で置換されているグリシジル基を含むことができる。これらのグリシジル化合物は、一実施形態において約150から約1200の間、および別の実施形態において約150から約1000の間の分子量を有することができる。グリシジル化合物は、固体または液体であってよい。
【0018】
本発明の一実施形態としては、(i)室温(例えば約25℃)で液体であり、およびエポキシ配合物を混合および脱ガスする温度まで液体のままであるもの、(ii)室温から約80℃が含まれるそれ以下の間の温度で液体になるもの、または(iii)それらの混合物を含む構成成分(a)として有用な少なくとも1種のエポキシ樹脂が挙げられる。本発明の一実施形態において、ブレンドを含めてエポキシ樹脂は、約25℃から約52℃の温度範囲にわたり約5mPa sから約50、000mPa sを範囲とする粘度を有する。別の実施形態において、ブレンドを含めてエポキシ樹脂は、約25℃で約10mPa sから約28,000mPa sの粘度範囲を有する。
【0019】
別の実施形態において、本発明の構成成分(a)として有用なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、およびそれらの混合物を挙げることができる。また別の実施形態において、エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールFジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
本発明において有用なエポキシ樹脂の実施形態の例示として、エポキシ樹脂としては、下記の構造(I)によって定義されるようなエポキシ樹脂を挙げることができ、ここで、nは、1種の構成成分または2種以上の構成成分の混合物のいずれかの平均値である。
【0021】
【化1】
式中、nは、一般に、一実施形態において1≦n≦2.9、別の実施形態において1≦n≦2.7、また別の実施形態において1≦n≦1.9、なお別の実施形態において1≦n≦1.6の範囲である。別の実施形態において、nは、1.2>n≦2.9の範囲であってよい。
【0022】
本発明の配合物において使用されるエポキシ樹脂、構成成分(a)の濃度は、一般に、一実施形態において約7wt%から30wt%、別の実施形態において約10wt%から約25wt%、また別の実施形態において約12wt%から約23wt%、なお別の実施形態において約15wt%から約20wt%を範囲とすることができる。
【0023】
一般に、本発明の硬化性エポキシ樹脂配合物または組成物のための構成成分(b)として有用な硬化剤(ハードナーまたは架橋剤とも称される)は、液体の環状無水物硬化剤を含むことができる。硬化剤は、例えば、当技術分野においてよく知られている1種または複数の環状無水物硬化剤から選択することができる。硬化剤は、室温(例えば約25℃)で液体である混合物を含めたエポキシ樹脂を硬化するための当技術分野において知られている任意の環状無水物硬化剤;ならびに配合物が混合および/または脱ガスされる温度から約80℃の温度まで液体である硬化剤を含むことができる。本発明の配合物には、エポキシ樹脂、構成成分(a)に可溶性である環状無水物ハードナーが含まれる。本発明の一実施形態において、本発明において使用される環状無水物硬化剤およびそれらの混合物には、液体または低溶融固体(即ち、約80℃未満の融点を有する固体)が含まれ得る。
【0024】
加えて、環状無水物ハードナーとしては、本発明の配合物を調製する脱ガスステップ中に実質的に昇華または実質的に揮発することがないハードナーが挙げられる。揮発性のインジケーターは、(i)圧力依存性であってよい特定の環状無水物の沸点、および/または(ii)所与の温度における特定の環状無水物の蒸気圧によって反映され得る。例えば、本発明において有用な環状無水物ハードナーは、一実施形態において一般に約200℃を超え、別の実施形態において大気圧で約250℃を超える高沸点を有することができる。圧力が低減される(即ち、真空の適用)につれて沸点が低下し、一般に、本発明において有用な環状無水物の沸点は、本発明の配合物を脱ガスするために利用される真空で100℃を超えてよい。
【0025】
本発明の例示実施形態として、ナジックメチル酸無水物は、大気圧で約295℃の沸点、10Torrで約140℃の沸点、および2Torrで約132℃の沸点を有し、メチルテトラヒドロフタル酸無水物は、大気圧で約290℃の沸点を有し、ヘキサヒドロフタル酸無水物は、大気圧で約296℃の沸点および5Torrで136℃の沸点を有し、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物は、大気圧で約290℃の沸点を有する。
【0026】
環状無水物ハードナーの蒸気圧は、温度の増加とともに増加し、本発明の配合物の脱ガス中、ならびに配合物の初期の硬化中の無水物揮発を最小化するため、蒸気圧値は、脱ガスが行われている温度で相対的に小さいことが望ましい。例えば、環状無水物の例示的蒸気圧は、ナジックメチル酸無水物には120℃で1.7mmHg、テトラヒドロフタル酸無水物には120℃で3.0mmHg、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物には120℃で3.0mmHg、メチルテトラヒドロフタル酸無水物には120℃で2.0mmHg、およびヘキサヒドロフタル酸無水物には120℃で3.7mmHgであってよい。
【0027】
環状無水物ハードナーのブレンドは、構成成分の1種が室温で固体であり得るならばブレンドが結晶化に対して感受性が低いことがあるという点において、特別な実用の利点を有することがある。加えて、環状無水物ハードナーの混合物は、低い蒸気圧の環状無水物と、より高い蒸気圧の環状無水物ハードナーとを混合することによって、混合物のための蒸気圧を調整する能力を提供することができる。混合物の蒸気圧は、一般に、ラウールの法則によって記載されている通り、各化学構成要素の蒸気圧、および理想的な混合物または溶液中に存在する構成成分のモル分率に依存性である。例えば、当技術分野において知られている蒸気圧に基づいて、120℃で1.7mmHgの蒸気圧を有するナジックメチル酸無水物と、一般にナジックメチル酸無水物より高い蒸気圧を有する他の環状無水物とをブレンドすることによって、無水物と有利には液体のままであると予想される中間蒸気圧との混合物をもたらすことが予想される。
【0028】
混合物を含めて、本発明において有用な液体環状無水物のさらなる属性は、室温でのハードナーの粘度;および総配合物の個々の構成成分が混合される温度でのハードナーの粘度である。粘度は、Brookfield粘度計などの回転粘度計、ならびに例えばこれらに限定されないがISO 2555、ASTM D−2983およびASTM D−445など試験基準に記載されている動的粘度のためのガラス毛細管を用いる、当技術分野においてよく知られている装置および方法によって測定することができる。例えば、液体環状無水物の粘度は、一般に、25℃で約30mPa−sから約350mPa−sであってよく、液体の温度が増加するにつれてこれらの粘度がより低くなる。本発明の配合物を混合、脱ガスおよび移動させる簡便さのために、25℃で350mPa−s未満の粘度を使用することができる。環状無水物の混合物の粘度を合わせるまたは低減するために環状無水物の混合物を利用することが有利であることがあり、というのも、より低い粘度の環状無水物と、より高い粘度の無水物とを混合することで、環状無水物の任意の1種が約25℃から約100℃の間で固体であり得るならば有利には結晶化に対して感受性が低いことがある中間粘度を有する混合物をもたらすからである。本発明の配合物において、液体構成成分の粘度は、総配合物の総粘度において有意な役割を果たすことができ、配合物において使用することができるとともに硬化するより前にまだ注型可能なままであり得る固体充填剤のレベルに影響を及ぼすことができる。
【0029】
本発明において有用な環状無水物硬化剤は、硬化剤として機能することもできるカルボン酸(1種または複数)官能基の限定量を含有することができる。一般に、本発明において使用されるハードナーは、一実施形態においてカルボン酸を含有する混合物中で無水物が約60パーセント(%)を超え、別の実施形態において約80%を超え、また別の実施形態において約90%を超え、なお別の実施形態において約97%を超えるように無水物を優勢的に含むことが望ましい。
【0030】
一実施形態において、本発明において有用な無水物硬化剤としては、例えば、アルキル基、アルケニル基またはハロゲン基で置換されていてもまたは置換されていなくてもよい芳香族、脂肪族、脂環式および複素環式のポリ炭酸環状無水物を挙げることができる。無水物硬化剤の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジックメチル酸無水物、無水コハク酸、ドデセニルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、マレイン酸無水物、イサト酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
本発明において有用な他の硬化剤としては、参照により本明細書に組み込む米国特許第6,852,415号に記載されている無水物硬化剤が挙げられる。一実施形態において、液体環状無水物硬化剤としては、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジックメチル酸無水物、およびそれらの混合物が挙げられる。別の実施形態において、液体環状無水物硬化剤としては、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ナジックメチル酸無水物、およびそれらの混合物が挙げられる。また別の実施形態において、液体環状無水物硬化剤としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物およびナジックメチル酸無水物およびそれらの混合物が挙げられる。なお別の実施形態において、液体環状無水物硬化剤としては、ナジックメチル酸無水物およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態の例示として、ナジックメチル酸無水物は、本発明の組成物における環状無水物硬化剤として使用される。ナジックメチル酸無水物は、室温で液体であること、25℃で約300mPa−s未満の粘度を有すること、2mmHgで約132℃または70mmHgで140℃の高沸点を有すること、120℃で5mmHgの蒸気圧を有することなど、本発明の配合物のための特に望ましい属性を有する液体環状無水物ハードナーであり、後者属性が配合物中に残る能力を示し、配合物の脱ガス中揮発が制限される。本発明のための配合物用のハードナーにおけるナジックメチル酸無水物の使用は、有利には、充填剤の良好な湿潤性を提供すること、および硬化エポキシ樹脂に対する充填剤の付着を容易にすることもできる。本発明のための配合物用のハードナーにおけるナジックメチル酸無水物の使用は、有利には、本発明の配合物が硬化される一方で硬化および低収縮中に低発熱挙動を一般にもたらすなど、他の使用も提供することができる。追加として、本発明のハードナーにおけるナジックメチル酸無水物の使用は、一般に、他の液体無水物ハードナーと比較して本発明の硬化生成物のTgの増加をもたらすことができる。加えて、本発明のハードナーにおけるナジックメチル酸無水物の使用は、一般に、熱機械的特性の改善をもたらすことができる。
【0033】
別の実施形態において、ナジックメチル酸無水物およびメチルテトラヒドロフタル酸無水物を含む組合せは、本発明に使用することができる。例えば、上記組合せにおけるナジックメチル酸無水物の量は、一般に、一実施形態において総液体環状無水物の約5wt%から約95wt%、別の実施形態において総液体環状無水物の約20wt%から約80wt%、また別の実施形態において総液体環状無水物の約35wt%から約65wt%、なお別の実施形態において総液体環状無水物の約45wt%から約55wt%であってよい。
【0034】
本発明の配合物中に使用される無水物ハードナー、構成成分(b)の濃度は、一般に、一実施形態において約7wt%から35wt%、別の実施形態において約10wt%から約30wt%、また別の実施形態において約12wt%から約25wt%、なお別の実施形態において約15wt%から約23wt%を範囲とすることができる。
【0035】
一般に、本発明において使用することができる環状無水物硬化剤の量は、エポキシに対して無水物の当量(即ちモル)の範囲を超えていてよい。例えば、硬化剤は、エポキシ1当量当たり約0.2当量から約1.5当量の無水物基を範囲とすることができる。別の実施形態において、該範囲は、エポキシ1当量当たり約0.4当量から約1.2当量の無水物基であってよい。なお別の実施形態において、該範囲は、エポキシ1当量当たり約0.7当量から約1.1当量の無水物基であってよい。また別の実施形態において、該範囲は、エポキシ1当量当たり約0.8当量から約1.0当量の無水物基であってよい。
【0036】
本発明において、熱伝導性および電気絶縁性固体充填剤を含む充填剤は、本発明の組成物または配合物のための構成成分(c)として有用であり得る。1種の充填剤または充填剤の組合せは、本発明において使用することができる。
【0037】
本明細書における充填剤に関する「熱伝導性および電気絶縁性」によって、充填剤が約1W/mKを超える熱伝導率および約10kV/mmを超える電気絶縁値、即ち誘電強度を有し得ることが意味される。
【0038】
熱伝導率は、本発明の配合物および組成物に有益である固体充填剤の1つの属性である。例えば、充填剤の非存在下でエポキシ樹脂および無水物ハードナーから調製される硬化エポキシ樹脂は、1.0W/mK未満の熱伝導率を有し、一般には0.5W/mK未満である。硬化された未充填エポキシ樹脂の低熱伝導率のため、充填剤または充填剤のブレンドが約1.0W/mKを超える熱伝導率を有することで、本発明の硬化配合物が少なくとも約1.0W/mKの熱伝導率を有することができることは有利である。
【0039】
本発明の充填剤または充填剤のブレンドの熱伝導率は、一般に、一実施形態において約0.5W/mKを超え、別の実施形態において約1W/mKを超え、また別の実施形態において約1.2W/mKを超え、なお別の実施形態において約2W/mKを超え、さらにまた別の実施形態において約4W/mKを超え、さらになお別の実施形態において約6W/mKを超えていてよい。一実施形態において、本発明の充填剤または充填剤のブレンドの熱伝導率は、一般に、約0.5W/mKから約350W/mK、別の実施形態において約0.75W/mKから約250W/mK、また別の実施形態において約1W/mKから約200W/mK、なお別の実施形態において約2W/mKから約20W/mKであってよい。充填剤の混合物が本発明に使用される実施形態において、充填剤の混合物は、前述の熱伝導率範囲における最終の平均熱伝導率を有することができる。
【0040】
本発明の固体充填剤または充填剤のブレンドの電気絶縁特性は、本発明の固体充填剤を使用する本発明の配合物および組成物に有益である別の属性である。電気絶縁性は、充填剤の誘電強度を測定することによって示すことができる。一般に、充填剤または充填剤のブレンドは、一実施形態において約5kV/mmから約200kV/mm、別の実施形態において約10kV/mmから約100kV/mm、また別の実施形態において約15kV/mmから約50kV/mmの誘電強度を有する。
【0041】
本発明において有用な充填剤は固体であり、それ自体、本発明の配合物の調製または硬化中に固体を形成することができる。一実施形態において、充填剤は、本発明の配合物の混合、脱ガス、移動および硬化の全体にわたって固体状態において使用される。
【0042】
本発明において、本発明の組成物において利用される充填剤の少なくとも1種は表面処理充填剤を含み、該充填剤は配合物中への組込み前に、または配合物の化合中にその場でのいずれかで表面処理される。一実施形態において、充填剤の少なくとも1種は、本発明の系を用いて処方するより前に表面処理することができる。充填剤の表面を処理することで、充填剤およびポリマーの相互作用を改善することができる。充填剤の様々な表面処理剤の例としては、脂肪酸、シランカップリング剤、チタネート、ジルコネート、アルミネート、またはシラザン化合物が挙げられる。
【0043】
本発明の一実施形態において、例えば、充填剤は、しばしばシラン化されると称される、シランカップリング剤またはシランサイズ剤によって、シランで表面処理することができ、生じる充填剤には、それが適合性のあるまたはエポキシ硬化プロセスの一部として反応することができるような官能性または修飾がある。一般に、シランカップリング剤が少なくとも1個のアルコキシ基を含有することで、表面処理を容易にし、任意選択により無機充填剤への結合を容易にする。別の実施形態において、シランカップリング剤は、例えばエポキシ基、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ビニル基、アリル基、ヒドロシリル基(即ちSiH)、あるいはエポキシ配合物と反応することができるまたは本発明の配合物のエポキシ構成成分と適合性もしくは相溶性のある他の官能基を含めて別の基を含有することができる。
【0044】
また別の実施形態において、本発明の組成物において有用な少なくとも1種の充填剤は、例えば、商標Dow Corning Z−6040 SilaneでDow Corning Corporationから市販されている3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの化合物のエポキシ−シランクラスのメンバーであるシランカップリング剤で処理される。
【0045】
本発明において有用なシラン処理充填剤のなお別の実施形態としては、例えばエポキシ−シラン処理石英などのエポキシ−シラン処理充填剤を挙げることができる。本発明において有用なエポキシ−シラン処理石英の例としては、126EST、W6EST、W12EST、100EST、600EST、および800ESTとして記載されている異なるグレードを有する商標SILBONDでQuarzwerkeから市販されているもの、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0046】
本発明において有用な充填剤材料は、様々な形状または形態を有することができる。本発明において有用な充填剤材料の許容される充填剤形態としては、結晶性、半結晶性もしくは非晶質またはそれらの任意の組合せであってよい小平板、繊維、球体、顆粒、針状晶などの形状が挙げられる。一部の実施形態において、異なるサイズ分布および異なる形状を有する充填剤を合わせることで、硬化性組成物の粘度に対して;ならびに硬化組成物の熱膨張係数(CTE)、弾性率、強度、ならびに電気および/または熱伝導性に対して相乗作用の効果を有することができる。
【0047】
本発明の充填剤材料は、顆粒形態で使用される場合、一般に、硬化するより前に本発明の硬化性組成物のための許容加工粘度を向上させるのに、および硬化後の許容熱機械的特性のバランスを向上させるのに充分な、しばしばミクロン範囲におけるd50%で示される平均粒径を有することができる。例えば、顆粒充填剤のための平均粒径は、一般に、一実施形態において約1ミクロン(μm)から約100μm、別の実施形態において約2μmから約50μm、また別の実施形態において約5μmから約35μm、なお別の実施形態において約12μmから約25μmの範囲であってよい。
【0048】
硬化された充填絶縁性材料の機械的または熱機械的性能(即ち、貯蔵弾性率、引張強度など;体積抵抗率および誘電強度の減少などの電気絶縁特性;ならびに周囲温度を超える温度で、または温度掃引もしくは温度傾斜を介して測定される場合の熱線膨張係数)は、上記されている通りの粒状の充填剤を本発明の硬化性組成物中に組み込むことによって改善することができる。本発明の充填剤の使用は、配合物の硬化中における収縮の低減、ならびに硬化配合物における吸水の低減、電気強度の改善、環境老化の改善および他の属性などの他の属性などの他の利点を提供することもできる。
【0049】
本発明の配合物には、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、天然および合成の鉱物、主にシリケート、およびケイ酸アルミニウム、ならびにそれらの混合物などの1種または複数の充填剤が含まれ得る。
【0050】
本発明において有用な充填剤の例としては、石英、溶融シリカ、天然シリカ、合成シリカ、天然酸化アルミニウム、合成酸化アルミニウム、スレート、中空充填剤、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、マイカ、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ムライト、ウォラストナイト、バーミキュライト、タルカム、グリマー、カオリン、ベントナイト、ゾノライト、アンダルサイト、ゼオライト、ドロマイト、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラス織物、他の有機または無機粒状充填剤、およびそれらの混合物を挙げることができる。充填剤は、それらの最終状態における配合物中へ添加するかまたはその場で形成されるかのいずれでもよい。
【0051】
一実施形態において、本発明において使用される充填剤は、石英、天然シリカ、合成シリカ、天然酸化アルミニウム、合成酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ウォラストナイト、ガラス粉末、ガラス繊維、およびガラス織物からなる群から選択することができる。別の実施形態において、本発明において有用な充填剤は、エポキシ−シラン処理石英である。
【0052】
本発明において有用な充填剤負荷量は変動してよい。一般に、本発明の配合物中に存在する総充填剤の濃度は、総配合物または組成物の重量に基づいて、一実施形態において約40wt%から約90wt%、別の実施形態において約50wt%から約80wt%、また別の実施形態において約60wt%から約70wt%、なお別の実施形態において約62wt%から約68wt%であってよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、例えば配合物が電力変圧器などの電気装置のための絶縁性材料として、より詳細には乾式変圧器のための電気絶縁性材料として使用される場合、本発明の配合物は、一般に、例えば約60wt%を超える充填剤などの高い充填剤濃度を有することで、硬化系の熱機械的特性を改善し、より良好な構成成分信頼性性能を付与する。
【0054】
前述の通り、本発明配合物において使用される充填剤構成成分は、2種以上の充填剤の組合せであってよい。充填剤がエポキシ−シラン処理石英を含む実施形態において、例えば、エポキシ−シラン処理石英は、本発明の組成物中で利用される充填剤の100%であってよい。別の実施形態において、エポキシ−シラン処理石英と異なる1種または複数の充填剤は、使用される他の異なる充填剤または充填剤(複数)の量がエポキシ−シラン処理石英より少ない限り、エポキシ−シラン処理石英との組合せで使用することができる。
【0055】
例えば、他の異なる充填剤または充填剤(複数)(エポキシ−シラン処理石英以外)は、一実施形態において配合物または組成物中に使用される総充填剤の50wt%未満、別の実施形態において配合物または組成物中に使用される総充填剤の約35wt%未満、また別の実施形態において配合物または組成物中に使用される総充填剤の約20wt%未満、なお別の実施形態において約10wt%以下であってよい。前述の通り、エポキシ−シラン処理石英以外の他の異なる充填剤は、この発明の配合物中に使用される総充填剤の0wt%であってよい。
【0056】
前に上記されている充填剤の任意の1種または複数は、他の異なる充填剤または充填剤(複数)として、エポキシ−シラン処理石英と組合せて使用することで、構成成分(c)の充填剤材料を構成することができる。他の異なる充填剤は、表面処理してもまたはしなくてもよい。一般に、しかしながら、他の異なる充填剤も、一実施形態において表面処理、例えばシラン処理、より詳細には、上記されている通りエポキシ−シラン処理石英と同様のエポキシ−シラン処理をすることができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂配合物を調製する際に、少なくとも1種の硬化触媒または促進剤を使用することで、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を容易にすることができる。本発明において有用な硬化触媒としては、例えば、硬化を触媒する能力を有する求核触媒、第3級アミン、アミン錯体、尿素誘導体、イミダゾール、置換イミダゾールおよびルイス塩基、ならびにそれらの混合物が挙げられる。触媒および反応条件に依存して、触媒は、任意選択により共反応して配合物に入ることができる。
【0058】
本発明において有用な触媒、構成成分(d)としては、例えば、アミン、ホスフィン、複素環式窒素、アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウム、スルホニウム部分およびそれらの任意の組合せを含有する触媒化合物など、当技術分野においてよく知られている触媒を挙げることができる。本発明の触媒の一部の非限定的な例として、例えば、エチルトリフェニルホスホニウム;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド;参照により本明細書に組み込む米国特許第4,925,901号に記載されている複素環式窒素含有触媒;イミダゾール;トリエチルアミン;およびそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0059】
本発明において有用な触媒の選択は、触媒がアミン水素を含有することができないことを除いて制限されず、エポキシ系の多くの通例使用される触媒を使用することができる。その上、触媒の添加は、調製される系に依存し得る。本発明において有用な触媒の例は、第3級アミン、1−置換イミダゾール、オルガノ−ホスフィンおよび酸性塩が挙げられる。
【0060】
本発明において有用な触媒の実施形態としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、1−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、およびそれらの混合物が挙げられる。また別の実施形態において、触媒は、1−メチルイミダゾールなどの少なくとも1種の1−炭化水素置換イミダゾールであってよい。
【0061】
配合物の有機部分における、本発明において使用される触媒の濃度は、一般に、一実施形態において約0.005wt%から約2wt%、別の実施形態において約0.01wt%から約1.5wt%、また別の実施形態において約0.1wt%から約1wt%、なお別の実施形態において約0.2wt%から約0.8wt%を範囲とすることができる。触媒のエポキシ処方濃度約0.005wt%より下では、配合物の硬化は遅すぎることになり、触媒のエポキシ処方濃度が約2wt%より上ならば、硬化は早すぎることになり、即ち、注型するためのポットライフ/時間を短くすることになる。触媒のための上記外の濃度が架橋の網目および性質を変化することもあり、その理由は、ヒドロキシルのような他の部分が網目に関与し始めることができ、網目における可能な変化が、生じる硬化生成物の特性の一部に影響を及ぼし得るからである。
【0062】
本発明において有用であり得る他の任意選択の構成成分または添加剤は、当業者に知られている樹脂配合物において通常に使用される構成成分である。例えば、任意選択の構成成分は、組成物に添加されることで加工特性および/または適用特性(例えば、表面張力修飾剤、粘度低下剤または流れ助剤)、信頼性特性(例えば、付着促進剤、相溶化剤および表面処理剤)、離型剤(例えば、鋳型離型)、反応速度、反応の選択性および/または触媒寿命を増強することができる化合物を含んでよい。例えば、加速剤は、例えばヒドロキシル基を有する水素供与化合物であり、水素または水素結合を供与するとともに硬化速度の増加に寄与することができるフェノール性化合物、ベンジルアルコール、グリコールおよびポリグリコールのような材料が挙げられる。
【0063】
各種の添加剤が、例えば、反応性の希釈剤、非反応性希釈剤、強化剤、柔軟剤、チキソトロピー剤、安定剤、可塑剤および触媒不活性化剤など、ならびにそれらの混合物を含めて、任意選択の構成成分として本発明の組成物に添加され得る。
【0064】
例えば、任意選択の反応性希釈剤に関して、エポキシ樹脂のサブクラスは、大部分のエポキシ樹脂と比較される場合、典型的に低い粘度およびしばしばより低い分子量であり、配合物へ反応性希釈剤を添加すると、反応性希釈剤は、反応性希釈剤を用いない配合物と比較される場合、加工性の改善のために完成配合物の粘度を有利に低下させる手段を提供する。反応性希釈剤を用いる配合物は、加工利点をもたらすか、または配合物中に利用される充填剤の量を増加するおよび/もしくはより小さいサイズの充填剤を利用する機会を提供することができる。反応性希釈剤を含有するエポキシは、しばしば、アルコール、グリコール(多官能性ヒドロキシル含有化合物を含める)、およびカルボン酸のエピクロロヒドリンまたはグリシジルエステル(多官能性カルボン酸含有化合物を含める)など、相対的にコンパクトなヒドロキシル含有化合物から誘導される。エポキシ化植物油も反応性希釈剤として使用することができる。反応性希釈剤は、典型的に、一実施形態において少なくとも1個のエポキシ基を含有し、別の実施形態において2個以上のエポキシ基を含有することができる。本発明において有用な反応性希釈剤の例としては、これらに限定されないが、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロポキシ化グリセリンのトリグリシジルエーテル、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化亜麻仁油、オルト−クレシルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルまたはそれらの混合物が挙げられる。反応性希釈剤は、25℃で約1mPa sから約500mPa sを範囲とする粘度を有する。
【0065】
本発明の配合物において有用な他の添加剤としては、例えば、ハロゲン含有またはハロゲンフリーの難燃剤;水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛またはメタロセンなど、消炎能力の性能を改善するための相乗剤;例えばアセトン、メチルエチルケトン、Dowanol PMAを含めて、加工性のための溶媒;修飾オルガノシラン(エポキシ化、メタクリル、アミノ)、アセチルアセトネート、または硫黄含有分子などの付着促進剤;修飾オルガノシラン、Byk900シリーズおよびByk W−9010、修飾フッ化炭素など、湿潤助剤および分散助剤;Byk−A530、Byk−A525、Byk−A555、Byk−A560などの脱泡添加剤;スリップ添加剤および光沢添加剤(これらの多くはByk−Chemieから入手可能である)、ならびにそれらの混合物などの表面修飾剤が挙げられる。
【0066】
本発明において有用な他の任意選択の添加剤の量は、硬化複合体のTgが約140℃を超えるレベルで保持されるようなものである。本発明において使用される添加剤の濃度は、一般に、組成物の総重量に基づいて、一実施形態において0wt%から約10wt%、別の実施形態において約0.01wt%から約5wt%、また別の実施形態において約0.1wt%から約2.5wt%、なお別の実施形態において約0.5wt%から約1wt%を範囲とすることができる。
【0067】
乾式変圧器のための絶縁性材料として有用な物質エポキシ配合物の組成物を調製するためのプロセスには、(a)少なくとも1種の液状エポキシ樹脂、(b)少なくとも1種の液体環状無水物ハードナー、(c)少なくとも1種の熱伝導性および電気絶縁性のエポキシ−シラン処理充填剤、(d)アミン水素を持たない少なくとも1種の硬化触媒、および(e)任意選択により、所望される通りの他の構成要素をブレンドすることが含まれる。例えば、本発明の硬化性エポキシ樹脂配合物の調製は、上記の樹脂構成成分(a)〜(e)で充填剤を湿潤させ、該構成要素を均等に分配するRoss PD Mixer(Charles Ross)、FlackTek Speedmixerまたは当技術分野において知られている他の混合器内において真空の有無にかかわらずブレンドすることによって達成される。上に記述されている構成要素は、一般に、ほぼ任意の順序、様々な組合せおよび様々な添加回数で、好都合および所望される通りに添加することができる。例えば、ポットライフを長くするため、硬化触媒(d)は、最後にまたは混合および任意選択の脱ガス中の後半であるが配合物を注型するより前に、添加することができる。上に記述されている任意選択の類別された配合物添加剤のいずれも、例えば追加のエポキシ樹脂も、混合中または混合するより前の組成物に添加することで、組成物を形成することができる。
【0068】
一実施形態において、配合物の上記の構成成分(a)〜(e)の1つまたは複数は、予備混合することができる。例えば、触媒をハードナーまたは柔軟剤中で予備混合することができ、次いで、予備混合された構成成分を配合物中に添加することができる。
【0069】
本発明の配合物に関して、配合物の脱ガスは、本発明の絶縁材料の機械的および/または電気的性能において重要な要素である。典型的に、脱ガスは、個々の構成成分を含める配合物のための、ある混合装置内において真空を適用することによって実施することができる。注型および硬化するより前に配合物を有効に脱ガスするための真空の範囲、真空の傾斜およびステップ、ならびに真空適用のタイミングは、例えば温度、配合物の粘度、配合物の質量、ならびに脱ガス槽の幾可学的形状およびその混合品質などに関連する当技術分野において知られている通りの様々な因子に依存する。一般に、真空は樹脂構成成分(a)〜(e)の混合中のある時点で適用されることが望ましく、真空は何か大気圧未満のものと定義されている。脱ガスは、構成成分(a)〜(e)のいずれかを初期に混合するのに使用することができるのと同じまたは分離した装置および/または槽内で発生することができる。混合または撹拌は、通常、脱ガスするときに行われる。大部分の任意の真空が適用され得るが、脱ガスの速度は、より低い真空が利用されると増進する。脱ガスは、一般に、一実施形態において約200ミリバール未満、別の実施形態において約100ミリバール未満、また別の実施形態において約50ミリバール未満、なお別の実施形態において約20ミリバール未満で行われる。一般に、適用される真空のおよその下限は、経済的な考慮ならびに構成成分および構成成分の温度に依存する構成成分の揮発を最小化するという所望の両方のために使用される。一実施形態において、約0.5ミリバール超の若干の真空を脱ガスにおいて利用することができ、別の実施形態において、利用される真空は、約1ミリバール超であってよい。
【0070】
エポキシ樹脂配合物の全ての構成成分は、典型的に混合および分散され;任意選択により脱ガスされ;ならびに例えば変圧器の適用において組成物を使用するのに必要とされる特性の所望のバランスを有する有効な硬化エポキシ樹脂組成物の調製を可能にする温度で移動される。全ての構成成分の混合および任意選択の脱ガス中の温度、ならびに装置または鋳型(即ち注型温度)に移動される場合の混合物の温度は、一般に、一実施形態において約10℃から約110℃、別の実施形態において約20℃から約90℃、また別の実施形態において約40℃から約80℃であってよい。より低い混合温度は、樹脂およびハードナー構成成分の反応を最小化することで配合物のポットライフを最大化するのに役立つが、短期間におけるより高い混合温度は、配合物粘度を低下させ、混合、脱ガスおよび硬化される前の配合物の移動を容易にすることができる。
【0071】
一般に、移動または注型の温度での完成エポキシ樹脂配合物の粘度は、当技術分野において知られている通り、配合物が流動する任意の粘度値であり得る。一実施形態において、例えば、完成エポキシ樹脂配合物の複素粘度は、約100,000mPa−s未満、別の実施形態において約50,000mPa−s未満、また別の実施形態において約25,000mPa−s未満であってよい。一般に、完成エポキシ樹脂配合物の複素粘度は、一実施形態において約100mPa−sから約100,000mPa−s、別の実施形態において約500mPa−sから約50,000mPa−s、また別の実施形態において約1,000mPa−sから約20,000mPa−s、なお別の実施形態において約1,500mPa−sから約15,000mPa−sである。上記複素粘度範囲は、例えば一般に、一実施形態において約10℃から約110℃、別の実施形態において約20℃から約90℃、また別の実施形態において約40℃から約75℃の注型温度などの注型温度で決定される。
【0072】
本発明の完成配合物は、最大約60℃までの周囲温度(約25℃)で保持される場合、混合、脱ガスおよび移動されて、絶縁材料が一般に使用される形状または装置内で、一実施形態において約2日未満、別の実施形態において約1日未満、また別の実施形態において約12時間未満硬化されることが一般に望ましい。当技術分野において知られている通り、完成配合物のポットライフ(またはシェルフライフ)は、配合物が保持される温度だけでなく、配合物のポットライフを典型的に延長する触媒のより低い濃度を有する配合物に含まれる触媒の量および型にも依存性である。ポットライフまたはシェルフライフの延長のため、ブレンド化合物配合物は、典型的に、シェルフライフを最大化するために周囲温度以下で、および任意選択により触媒を含有することなく貯蔵される。貯蔵のための許容温度範囲としては、例えば、一実施形態において約−100℃から約25℃、別の実施形態において約−70℃から約10℃、また別の実施形態において約−50℃から約0℃が挙げられる。一実施形態の例示として、貯蔵の温度は約−40℃であってよい。しかしながら、完成および脱ガス配合物の移動を、貯蔵するよりむしろ直ちに開始して、絶縁材料が一般に使用される形状または装置内で硬化されることが有益である。
【0073】
ブレンド配合物は、次いで、電力変圧器用途など電気装置用の絶縁性材料のための多くの方法を介して基材に適用することができる。例えば、典型的な適用方法としては、当業者に知られている通りの真空鋳造、自動圧力ゲル化(APG)、フィラメントワインディング、真空圧力含浸、樹脂封止および固体注型などが挙げられる。「基材」としては、本明細書において、例えば乾式型電力、配電または計器用変圧器のコイル、電力線のための屋外用絶縁体のためのロッド複合体、屋外用電力スイッチにおける構成要素、過電圧保護装置、スイッチギヤ、ブッシング、電気機械、トランジスタのコーティング構成要素、他の半導体装置、および/または含浸電気構成成分などが挙げられる。
【0074】
熱硬化可能な組成物の硬化は、所定の温度で、および所定の時間期間、および組成物を硬化するのに充分な一連の温度傾斜および温度ステップにおいて実施することができる。配合物の硬化は、配合物中に使用されるハードナーに依存性であり得る。ステップの一部が配合物を部分的にだけ硬化またはゲル化する配合物の硬化において2つ以上の温度ステップを使用することは、完全に硬化された配合物の特性の発生を容易にすると仮定される。こうした温度ステップ化プロセスは、本発明の配合物の硬化中に生じる均一性、収縮および応力をより良好に管理すると仮定され、電力変圧器を含めて電気装置のためのより一貫性があるまたはより良好な電気的および/または機械的性能の絶縁材料をもたらすことができる。硬化プロファイルが何であれ、最終の硬化温度が一般に、完全に硬化されたエポキシ/ハードナー系のガラス転移温度Tgを超えるべきであることは、当業者によって一般に認識されている。組成物を硬化または後硬化した後、該プロセスには、単一または複数の温度傾斜および温度ステップが含まれ得ることで電気絶縁性の熱伝導性硬化材料における応力および可能な欠陥の発生を最小化する制御冷却が含まれ得る。
【0075】
例えば、配合物のための硬化または一連の1つもしくは複数の硬化ステップの温度は、一般に、一実施形態において約10℃から約300℃、別の実施形態において約50℃から約250℃、また別の実施形態において約80℃から約225℃であってよい。硬化時間は、基材のサイズおよび形状に依存して選択することができる。一般に、硬化時間は、一実施形態において約1分から約96時間の間、別の実施形態において約1時間から約72時間の間、また別の実施形態において約4時間から約48時間の間であってよい。約1分の時間期間より下では、該時間が短すぎて従来の加工条件下での充分な反応を確保できないことがあり、約96時間より上では、該時間が長すぎて実践的または経済的でないことがある。硬化エポキシ配合物のサイズおよび形状ならびにエポキシ配合物の構成成分は、当業者に知られている通りに利用される硬化プロファイルにおいて役割を果たす。
【0076】
一実施形態において、約50℃から約150℃の第1温度ステップまたは傾斜で組成物を部分的に硬化またはゲル化すること、および次いで約120℃から約300℃の少なくとも1つのさらなる加熱ステップまたは傾斜を実施することが有利である。例えば、一実施形態において、組成物の硬化段階は、例えば、約70℃から約100℃の温度での第1硬化ステップおよび約130℃から約150℃の温度での第2硬化ステップを含めた少なくとも2つのステップにおいて実施することができる。別の実施形態において、第3硬化ステップが上記の第1および第2ステップ後に使用されることがあり、ここで、第3ステップの温度は約175℃から約250℃である。上に記載されているステップ/傾斜のいずれにおいても、所望の温度での加熱時間は、約5分から約96時間であり得る。
【0077】
配合物または組成物があまりにも速くまたは特別な温度ステップもしくは傾斜にあまりにも高い温度で硬化されるならば、絶縁材料ならびに絶縁材料が利用される装置の性能の減少をもたらす可能性がより高いことがあり得る。性能の減少は、これらに限定されないが、生じる硬化組成物における欠陥から起こることがあり、これは、配合物または配合物が利用される装置における性能の減少または機能不全をもたらし得る。こうした欠陥の例としては、割れ目、気泡、および充填剤(1種または複数)の実質的不均等分布などが挙げられる。
【0078】
本発明の絶縁性材料を形成する熱硬化生成物(即ち、本発明の硬化性組成物から作製される架橋生成物)は、従来のエポキシ硬化樹脂を超えるいくつかの改善特性を示す。本発明の硬化生成物の1つの利点は、こうした硬化生成物が、例えば電気装置を絶縁する用途領域における電気絶縁物として配合物を利用するための機械的、熱的および電気的特性の全体的バランスを有することである。
【0079】
例えば、本発明の硬化生成物は、約140℃から約250℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。一般に、樹脂のTgは、一実施形態において約140℃より高く、別の実施形態において約145℃より高く、また別の実施形態において約150℃より高く、なお別の実施形態において約155℃より高い。
【0080】
加えて、本配合物系は高い充填剤負荷量を可能にするので、硬化系は、硬化配合物のガラス転移温度より下の、より低いCTEを達成することができ、例えば、本発明の熱硬化生成物は、一実施形態において一般に約1ppm/℃から約75ppm/℃である、ASTM D 5335によって決定される場合のTgより下の熱膨張(CTE)係数を呈する。別の実施形態において、CTEは、約75ppm/℃未満、別の実施形態において約60ppm/℃未満、なお別の実施形態において約45ppm/℃未満であってよい。
【0081】
加えて、本発明の熱硬化生成物は、一実施形態において一般に約0.8W/mKから約50W/mKの熱伝導率を有することもできる。別の実施形態において、熱伝導率は、約1.0W/mKを超え、別の実施形態において約1.1W/mKを超え、また別の実施形態において約1.2W/mKを超えていてよい。
【0082】
本発明の熱硬化生成物は、一実施形態において一般に約10kV/mmから約45kV/mmの誘電破壊強度を有することもできる。別の実施形態において、誘電破壊強度は約20kV/mm以上、別の実施形態において約23kV/mmを超え、なお別の実施形態において約27kV/mmを超えていてよい。
【0083】
本発明の熱硬化生成物が有することができる別の特性は、一実施形態において一般に約1×1012オーム−cmから約1×1019オーム−cmの体積抵抗率である。別の実施形態において、体積抵抗率は約1×1015オーム−cmを超え、また別の実施形態において約4×1015オーム−cmを超え、なお別の実施形態において約1×1016オーム−cmを超えていてよい。一実施形態において、体積抵抗率は少なくとも約5×1015オーム−cmを超えていてよい。
【0084】
本発明の熱硬化生成物が有することができるまた別の特性は、一実施形態において一般に約80MPaから約250MPaの引張強度である。別の実施形態において、引張強度は約80MPaを超え、別の実施形態において約85MPaを超え、なお別の実施形態において約90MPaを超えていてよい。
【0085】
上記の特性は、本発明の熱硬化生成物に、電気装置を絶縁する用途領域における電気絶縁物として配合物を利用するための機械的、熱的および電気的特性の全体的バランスを提供する。本発明の熱硬化生成物は、有利には、一実施形態において約120℃から約200℃、および別の実施形態において約130℃から約200℃の連続運転温度で特性の上記バランスを呈する。別の実施形態において、連続運転温度は約130℃以上、また別の実施形態において145℃以上、なお別の実施形態において約160℃以上である。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂配合物は、変圧器、ポッティング用途、スイッチ、トランスデューサー、ブッシング、センサ、コンバーター、トランジスタ、電気機械および電気装置などのための電気絶縁性材料を製造するための硬化性組成物として使用される。
【実施例】
【0087】
以下の実施例および比較例は、本発明を詳細にさらに例示するが、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0088】
以下の実施例において使用される様々な用語および名称を本明細書において下記に説明する。
【0089】
D.E.R.332は、Dow Chemical Companyから市販されている、171のEEWを有するビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂である。
【0090】
D.E.R.383は、Dow Chemical Companyから市販されている、180.3のEEWを有するビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂である。
【0091】
D.E.N.425は、Dow Chemical Companyから市販されている、172のEEWを有するエポキシノボラック樹脂である。
【0092】
D.E.R.354は、Dow Chemical Companyから市販されている、171.5のEEWを有するビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂である。
【0093】
ERL4221は、134のEEWを有する(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとしても知られており、Polysciencesから市販されている脂環式エポキシ樹脂である。
【0094】
「TMPTGE」は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを表し、140のEEWを有する反応性希釈エポキシ樹脂であり、Aldrich Chemicalから市販されている。
【0095】
「BDODGE」は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを表し、Aldrich Chemicalから市販されている反応性希釈エポキシ樹脂である。
【0096】
SILBOND(登録商標)W12ESTは、Quarzwerkeから市販されている、16ミクロンのd50%粒径を有するエポキシ−シラン処理石英である。
【0097】
SILBOND(登録商標)126ESTは、Quarzwerkeから市販されている、22ミクロンのd50%粒径を有するエポキシ−シラン処理石英である。
【0098】
MILLISIL(登録商標)W12は、Quarzwerkeから市販されている、16ミクロンのd50%粒径を有する石英である。
【0099】
Alは、Baikowski Internationalから名称BAIKOLOX(登録商標)GEA6で市販されている、7.8ミクロンのd50%粒径を有する高純度アルミナである。
【0100】
「DVBDO」は、ジビニルベンゼンジオキシドを表す。
【0101】
「NMA」は、ナジックメチル酸無水物を表し、Polysciencesから市販されている。
【0102】
「ECA100」は、エポキシ硬化剤100を表し、Dixie Chemicalから市販されている。ECA100は、一般に、80%を超えるメチルテトラヒドロフタル酸無水物および10%を超えるテトラヒドロフタル酸無水物を含む。
【0103】
「1MI」は、1−メチルイミダゾールを表し、Aldrich Chemicalから市販されている。
【0104】
以下の標準分析用機器および方法が実施例において使用される。
【0105】
鋳型アセンブリ
角度のある切り込みを有する2個の約355mm角金属プレート上で、1つの端を各DUOFOIL(商標)(約330mm×355mm×0.38mm)上に取り付ける。約3.175mmID×約4.75mmOD(ガスケットとして使用される)のチューブを付けている約3.05mmの厚さおよびシリコーンゴムのU−スペーサー棒をプレート間に置き、鋳型をC−クランプで閉めて保持する。鋳型は、その使用より前に約65℃の炉内で予熱する。
【0106】
充填エポキシ樹脂の注型
充填剤の必要量を終夜真空炉内にて約70℃の温度で乾燥させる。エポキシ樹脂および無水物ハードナーを約60℃に別々に予熱する。広口プラスチック容器中に、温かいエポキシ樹脂、温かい無水物ハードナー、および1−メチルイミダゾールの指定量を負荷し、これらを温かい充填剤中に添加する前に手でかき混ぜる。容器の内容物を次いで、FlackTek SpeedMixer(商標)上にて、約1〜2分の持続期間約800rpmから約2350rpmの複数のサイクルで混合する。
【0107】
混合配合物を、脱ガス用の真空ポンプおよび真空制御器と一緒にTeflon(登録商標)ブレードを有するガラス撹拌軸および軸受を使用して、オーバーヘッドスターラー付きの温度制御されている約500mLの樹脂ケトル中に負荷する。典型的な脱ガスプロファイルを約55℃から約75℃の間にて以下の段階で行う。5分、80rpm、100Torr;5分、80rpm、50Torr;5分、80rpm、20Torr、約760TorrまでN中断;5分、80rpm、20Torr、約760TorrまでN中断;3分、80rpm、20Torr;5分、120rpm、10Torr;5分、180rpm、10Torr;5分、80rpm、20Torr;および5分、80rpm、30Torr。
【0108】
温かい脱ガス混合物を大気圧にし、上に記載されている温かい鋳型アセンブリに注ぐ。充填鋳型を80℃の炉内に約16時間の間置き、温度を引き続いて上昇させ、140℃で合計10時間の間保持し、次いで引き続き上昇させ、225℃で合計4時間の間保持し、次いで周囲温度(約25℃)にゆっくり冷却する。
【0109】
ガラス転移温度(T)測定
硬化エポキシ配合物の一分量を示差走査熱量計(DSC)中に置き、10℃/分にて0℃から250℃の第1加熱走査から0℃から250℃の第2加熱走査で加熱および冷却する。Tgを0℃から250℃の第2の加熱走査上のハーフハイト値として報告する。
【0110】
引張特性測定
引張特性測定を、硬化エポキシ配合物についてASTM D638に従って1型引張試験片を使用して0.2インチ/分のひずみ速度を用いて行う。
【0111】
熱伝導率測定
熱伝導率測定を、硬化エポキシ配合物についてISO22007−2(遷移平面熱源(ホットディスク)法)に従って行う。
【0112】
体積抵抗率
体積抵抗率を室温でHewlett−Packard High Resistivity Meter上にて、115ミルから130ミルのプラーク厚を範囲として測定した。
【0113】
誘電強度
誘電強度も、115〜130ミルプラーク上にてAC破壊Testerを使用してASTM D149によって、試料破壊まで500V/secの傾斜アップ電圧速度で測定した。
【0114】
エポキシ配合物粘度の測定
温度の関数としての複素粘度(温度走査)を、平行プレート取り付け具で固定したTA Instruments ARES G2レオメーターを使用して得る。プレート直径は50mmであり、流れモードにおいて101/秒のせん断速度、および40℃から100℃の温度範囲にわたる5℃/分の温度傾斜で運転する。複素粘度を対象とする温度(即ち注型温度)で報告するか、または別法として、時間走査も所与の温度で行うことができる。この場合において、レオメーターを対象とする温度で、時間の関数として測定する複素粘度を用いて設定することで、硬化特徴を理解することができる。
【0115】
実施例1〜15および比較例A〜C
充填エポキシ樹脂注型物を、上記されている通りの一般的方法および下記の表Iに記載されている配合物を使用して調製する。生じた注型物の特性を上に記載されている方法によって測定し、特性結果を下記の表IIに記載する。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】