特許第6030141号(P6030141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030141
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】薬剤管理システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 7/04 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61J7/04 B
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-535196(P2014-535196)
(86)(22)【出願日】2012年10月8日
(65)【公表番号】特表2014-528343(P2014-528343A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2012055418
(87)【国際公開番号】WO2013054245
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/545,607
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11184593.9
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン マルク トマス
(72)【発明者】
【氏名】ファニー レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ラクロックス ヨイカ ペトラ ウィルマ
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05646912(US,A)
【文献】 特開2011−041663(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0027291(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0164716(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0214877(US,A1)
【文献】 米国特許第07573371(US,B1)
【文献】 米国特許第04926572(US,A)
【文献】 中国実用新案第201642968(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近づいている薬摂取時間又は期間を示すための所定の色を持つ視覚刺激を与える照明手段を有する、ユーザーに取り付け可能な携帯装置と、
前記ユーザーの注意を引くための前記所定の色を持つ光を供給することができる他の視覚刺激を与える及び前記薬摂取時間又は期間をさらに示す、他の照明手段を有する薬ディスペンサーとを有する薬剤管理システムにおいて、
前記携帯装置は、前記薬ディスペンサーが前記他の照明手段を用いて、対応する前記他の視覚刺激を与える前の所定の時間に、前記照明手段を用いて前記視覚刺激を与える、薬剤管理システム。
【請求項2】
前記薬ディスペンサーは、前記ユーザーに少なくとも2つの異なる種類の薬を与える、前記薬の各々が独自の所定の色を用いて示される、請求項1に記載の薬剤管理システム。
【請求項3】
前記他の照明手段は、第1の他の照明手段及び第2の他の照明手段を有し、
前記薬ディスペンサーは、第1の薬を保管する第1のコンテナ及び第2の薬を保管する第2のコンテナを有し、
前記第1のコンテナは、前記第1の薬の薬摂取時間又は期間を示すための第1の他の視覚刺激を与える前記第1の他の照明手段を有し、及び
前記第2のコンテナは、前記第2の薬の薬摂取時間又は期間を示すための第2の他の視覚刺激を与える前記第2の他の照明手段を有する、
請求項2に記載の薬剤管理システム。
【請求項4】
前記薬ディスペンサーは、前記他の照明手段が前記他の視覚刺激を与えたときにのみ、前記薬を入手できる、請求項1、2又は3に記載の薬剤管理システム。
【請求項5】
前記薬ディスペンサーはさらに、前記携帯装置が前記薬ディスペンサーから所定の範囲内にあることを検出するための検出手段を有し、前記他の照明手段はさらに、前記携帯装置が前記所定の範囲にあることが検出されたときにのみ、前記他の視覚刺激を与える、請求項1乃至4の何れか一項に記載の薬剤管理システム。
【請求項6】
前記携帯装置はさらに、前記ユーザーに触覚刺激を与えるための振動手段及び/又は前記ユーザーに音響刺激を与えるための音響手段を有し、前記触覚刺激及び/又は音響刺激は、前記照明手段が前記視覚刺激を与える前又はそれと同時に与えられる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の薬剤管理システム。
【請求項7】
前記他の照明手段は、対応する複数の所定の色を持つ複数の他の視覚刺激を与え、前記薬剤管理システムは、複数の携帯装置を有し、前記携帯装置は各々、前記複数の所定の色の別々の色に対応する1つの所定の色を持つ視覚刺激を与えるための照明手段を有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の薬剤管理システム。
【請求項8】
ユーザーに取り付けられる携帯装置に含まれる照明手段、近づいている薬摂取時間又は期間を示すための所定の色を持つ視覚刺激を前記ユーザーに与えるステップと、
ディスペンサーに含まれる他の照明手段、前記ユーザーの注意を引き、前記薬摂取時間又は期間を示すための前記所定の色を持つ他の視覚刺激を前記ユーザーに与えるステップとを有する薬剤管理の方法において、
前記照明手段が、前記視覚刺激を、前記他の照明手段が対応する前記他の視覚刺激を与える前の所定の時間に与える、方法。
【請求項9】
第1の薬の近づいている薬摂取時間又は期間を示すために、前記携帯装置に含まれる前記照明手段、第1の所定の色を持つ第1の視覚刺激を与える、及び前記薬ディスペンサーに含まれる前記他の照明手段、前記第1の所定の色を持つ第1の他の視覚刺激を与えるステップと、
第2の薬の近づいている薬摂取時間又は期間を示すために、前記携帯装置に含まれる前記照明手段、第2の所定の色を持つ第2の視覚刺激を与える、及び前記薬ディスペンサーに含まれる前記他の照明手段、前記第2の所定の色を持つ第2の他の視覚刺激を与えるステップとを有する、請求項8に記載の薬剤管理の方法。
【請求項10】
前記薬ディスペンサーが前記他の視覚刺激を与えるとき、唯一前記薬ディスペンサーに保管される薬を入手すること可能にされる、請求項8又は9に記載の薬剤管理の方法。
【請求項11】
前記携帯装置が前記薬ディスペンサーから所定の範囲にあることを前記薬ディスペンサーが検出するステップをさらに有し、前記他の照明手段他の視覚刺激を与えるステップが、前記携帯装置が前記所定の範囲にあると検出されることに基づかれる、請求項8乃至10の何れか一項に記載の薬剤管理の方法。
【請求項12】
前記照明手段が視覚刺激を与える前に又はそれと同時に、前記携帯装置触覚又は音響刺激を前記ユーザーに与えるステップをさらに有する、請求項8乃至11の何れか一項に記載の薬剤管理の方法。
【請求項13】
第1のユーザーに取り付けられる第1の携帯装置に含まれる第1の照明手段、前記第1のユーザーの近づいている薬摂取時間又は期間を示すための第1の所定の色を持つ第1の視覚刺激を前記第1のユーザーに与えるステップと、
第2のユーザーに取り付けられる第2の携帯装置に含まれる第2の照明手段、前記第2のユーザーの近づいている薬摂取時間又は期間を示すための第2の所定の色を持つ第2の視覚刺激を前記第2のユーザーに与えるステップと、
前記薬ディスペンサーに含まれる他の照明手段、前記第1のユーザーの注意を引くための前記第1の所定の色を持つ第1の他の視覚刺激を前記第1のユーザーに与えるステップと、
前記薬ディスペンサーに含まれる前記他の照明手段、前記第2のユーザーの注意を引くための前記第2の所定の色を持つ第2の他の視覚刺激を前記第2のユーザーに与えるステップとを有する請求項8に記載の方法において、
前記第1の照明手段が、前記第1の視覚刺激を、前記薬ディスペンサーが対応する前記第1の他の視覚刺激を与える前の第1の所定の時間に与え、及び
前記第2の照明手段は、前記第2の視覚刺激を、前記薬ディスペンサーが対応する前記第2の他の視覚刺激を与える前の第2の所定の時間に与える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤管理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム可能な錠剤ディスペンサーが従来知られている。このような錠剤ディスペンサーは、プログラムされたスケジュールに従って薬を飲むべきことを示すための視覚的なリマインダー信号をユーザーに供給するディスプレイを持ち、これにより医師が定めた時間に薬を飲むことをユーザーが忘れてしまうのを防ぐのに役立つ。この錠剤ディスペンサーの大きさが原因で、ユーザーは、例えばユーザーが家の中を移動するとき、この錠剤ディスペンサーを絶えず所持できない。従って、この錠剤ディスペンサーは、ユーザーの家のどこか頻繁に訪れる場所に置かれることが一般的な使い方である。これは、ユーザーが錠剤ディスペンサーを置いてある部屋の外にいるとき、ユーザーは自分の薬を飲むための視覚的なリマインダー信号が分からなかったり、又はユーザーがその部屋に戻ってきたとき、このリマインダー信号が存在するか錠剤ディスペンサーのディスプレイをチェックすることを忘れたりすることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様に従って、請求項1に記載の薬剤管理システムが提供される。例として、ユーザーがリビングにいるとき、薬ディスペンサーがキッチンに置かれている間、この薬ディスペンサーからの視覚的なリマインダー信号は、ユーザーには届かない。請求項1のシステムにおいて、携帯装置に含まれる照明手段は、近づいている薬摂取時間又は期間を示すための視覚刺激をユーザーに与える。本発明において、この視覚刺激は、ユーザーが身に着けている前記携帯装置により与えられる。これはユーザーが薬ディスペンサーの近くにいないときでも、この視覚刺激に気付くことを可能にする。この視覚刺激を受けた後、ユーザーはキッチンに移動する。本発明はさらに、知覚的プライミング(perceptual priming)を用いることにより、処方した薬を飲むための通知の増大効果が得られるという洞察に基づいている。従って、薬ディスペンサーに含まれる他の照明手段は、前記処方した薬を飲むためにユーザーの注意を引くための他の視覚刺激がユーザーに与えられる。例えば、ユーザーに与えられる前記他の視覚刺激は、薬ディスペンサーの場所、それにより飲まなければならない薬の場所に対するユーザーの注意を引くのに使用される。同じ所定の色を使用することにより、前記視覚刺激及び他の視覚刺激は脳の同じ神経経路により処理されると仮定され、これは、ユーザーに処方された薬を飲むようにユーザーに通知することに関し、前記他の視覚的なリマインダー刺激がますます効果的になる。知覚的プライミングに関する背景知識については、"Propertied and mechanisms of perceptual priming", Cheri L. Wiggs and Alex Martin, Current Opinion in Neurobiology, Volume 8, Issue 2, April 1998, pages227-233を参照する。前記例を続けると、前記携帯装置から視覚刺激の通知を受けた後、ユーザーはキッチンまで移動するが、例えばリビングにあるテレビからの音声のような、他のアイテム及びイベントに気を取られることがある。キッチンに到着した後、ユーザーは、前記携帯装置により与えられる視覚刺激と同じ所定の色を持つ他の視覚刺激を与える薬ディスペンサーを目にして、それによりユーザーに薬を飲むことを促す既にプライミングされた神経経路を効果的に連結する。例えば、薬ディスペンサーは、所定の投薬スケジュールに含まれる摂取時間又は期間に対応して黄色の光を供給するLED(発光ダイオード)を有する。ユーザーが所持する携帯装置上のディスプレイは、対応する他の視覚刺激がLEDにより与えられる前の所定の時間に、黄色の視覚刺激を与える。この他の視覚刺激より先に前記視覚刺激を与えることにより、ユーザーは、前記他の視覚刺激の所定の色に対しさらに敏感にさせ、それにより投薬スケジュールの順守を改善させる。
【0004】
ある実施例において、前記薬ディスペンサーは、2つ以上の薬を供給するために配され、ここで各々の薬は、ユーザーに前記摂取時間又は期間を示すための対応する所定の色を持っている。前記携帯装置の照明手段及び薬ディスペンサーの他の照明手段は、前記視覚刺激及び前記他の視覚刺激が所定の色を持つことを可能にするために、複数の色を供給するように配される。薬を飲むべき時間期間を定めている投薬スケジュールは、例えば、黄色の視覚刺激及び他の視覚刺激を用いてユーザーに示され、ユーザーは朝に第1の薬を飲むべきこと、並びに赤色の視覚刺激及び他の視覚刺激を用いてユーザーに示され、ユーザーは夕方に第2の薬を飲むべきことを定めている。携帯装置の照明手段は、前記ユーザーの投薬スケジュールに従って黄色及び赤色の視覚刺激を与えるように配される。第1の実施例において、前記薬ディスペンサーは、2つの別個の構成要素を持つ錠剤入れでもよく、一方の構成要素は、黄色のLEDを備える蓋を持ち、第1の薬を保存している、及び他方の構成要素は、赤色のLEDを備えるもう1つの蓋を持ち、第2の薬を保存している。第2の実施例において、前記薬ディスペンサーは、第1の薬が与えられるときは黄色の光を供給し、第2の薬が与えられるときは赤色の光を供給することが可能なディスプレイを持つ。
【0005】
他の実施例において、前記薬ディスペンサーは、2人以上のユーザーに2つ以上の薬を与えるように配され、ここで各々の薬は、対応するユーザーに摂取時間期間を示すための対応する所定の色を持っている。前記薬ディスペンサーの他の照明手段は、各々の薬に対する、前記対応する所定の色を持つ他の視覚刺激を与えるように配される。例えば、第1のユーザーの投薬スケジュールは、黄色の視覚刺激及び他の視覚刺激を用いて第1のユーザーに示され、朝に第1の薬を飲むべきことを定めているのに対し、第2のユーザーの他の投薬スケジュールは、赤色の視覚刺激及び他の視覚刺激を用いて示され、夕方に第2の薬を飲むように定める。第1のユーザーの携帯装置の照明手段は、この第1のユーザーの投薬スケジュールに従って黄色の刺激を与えるように配されるのに対し、第2のユーザーの携帯装置は、この第2のユーザーの他の投薬スケジュールに従って赤色の刺激を与えるように配される。第1の実施例において、前記薬ディスペンサーは、第1及び第2のユーザーのための薬を保管するための2つの個別の構成要素を持ち、第1の構成要素は、黄色のLEDを備える第1の蓋を持ち、前記第1の薬を保管する、及び第2の構成要素は、赤色のLEDを備える第2の蓋を持ち、前記第2の薬を保管している。第2の実施例において、前記薬ディスペンサーは、第1の薬が与えられるときは黄色の光を供給する及び第2の薬を飲まなければならないときは赤色の光を供給することが可能なディスプレイを持つ。
【0006】
薬剤管理システムの他の実施例において、前記薬ディスペンサーは、前記他の照明手段が前記他の視覚刺激を与えているときにのみ、この薬ディスペンサーに保管される薬を入手することを可能にするように配される。これは、投薬スケジュールにより定められた時間ウィンドウ外に薬を飲むことを防ぐ。
【0007】
薬剤管理システムの他の実施例において、前記薬ディスペンサーはさらに、この薬ディスペンサーから所定の範囲内に携帯装置があることを検出する検出手段を有し、ここで他の照明手段は、携帯装置が前記所定の範囲内にあると検出したとき、他の視覚刺激を与えるだけである。この所定の範囲は好ましくは、ユーザーが他の視覚刺激を目にすることができる薬ディスペンサーの周辺エリアに対応する。これは、携帯装置が前記所定の範囲の外側にあるとき、薬ディスペンサーにある前記他の照明手段による電力消費を抑え、バッテリー式の薬ディスペンサーの場合、これは有利である。
【0008】
薬剤管理システムの他の実施例において、前記携帯装置はさらに、ユーザーに触覚刺激を与えるための振動手段を有し、ここで触覚刺激は、前記視覚刺激の前に又はそれと同時に与えられる。携帯装置が腕に取り付けられる又はペンダントとして所持される場合、ユーザーはたまに視覚刺激を目にしないことがある。触覚刺激は、ユーザーに携帯装置を見ることを誘発し、ユーザーが視覚刺激に気付くことを可能にする。他の実施例において、前記携帯装置は、ユーザーに音響刺激を与えるための音響手段を有し、この音響刺激は、前記携帯装置を見るためのきっかけとして働く。他の実施例として、前記携帯装置は、前記振動手段及び前記音響手段の両方を有する。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、請求項8乃至13の何れか一項に記載の薬剤管理の方法を提供している。
【0010】
他の実施例において、前記方法はさらに、前記携帯装置に含まれる振動手段を用いて、前記視覚刺激の前に又はそれと同時に触覚刺激を与えるステップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】薬剤管理システムの実施例を示す。
図2】薬剤管理システムの他の実施例を示す。
図3】2人のユーザーのための薬剤管理システムを示す。
図4】タイミング図を示す。
図5】他のタイミング図を示す。
図6】薬剤管理の方法の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の例示的な実施例は、単に例として、以下の図面を参照して説明される。
【0013】
図1は、携帯装置10と薬ディスペンサー20を有する薬剤管理システム100を示す。この携帯装置は、ユーザーに取り付け可能であり、例えば腕に取り付けられる時計のような形状でも、又は首の周りにストラップを用いてペンダントとして所持されてもよい。前記携帯装置はユーザーに同行しているのに対し、使用するとき、薬ディスペンサーは家のどこか、例えばキッチンに置かれている。これは、ユーザーが日常生活の活動に従事しているとき、ユーザーは常に薬ディスペンサーの近くにいなくてもよいことを意味している。携帯装置10は、そのユーザーの薬摂取時間又は期間に関するデータを有する投薬スケジュールを記憶するメモリを有する。この薬剤は2つ以上の薬を有する、例えば医師は、ユーザーは朝に第1の薬を飲み、午後に第2の薬を飲まなければならないと定めている。携帯装置はさらに、ユーザーの投薬スケジュールに従ってユーザーに視覚刺激55を与えるための照明手段50を有する。この視覚刺激は、処方した薬の近づいている摂取時間を示すために、スケジュール及び定めた摂取時間又は期間より前に与えられる。日常の活動中のユーザーが視覚刺激55を目にするとき、ユーザーの脳にある神経経路が活性化される、この神経経路は、同じ所定の色を持つ他の視覚刺激45に対し、ユーザーをより"敏感"にする(すなわちユーザーの脳がプライミングされる)。この他の視覚刺激45は、薬ディスペンサー20に含まれる他の照明手段40、41により与えられる。例えば携帯装置にある前記照明手段(LED、ディスプレイ等)は、ユーザーに黄色の光を持つ視覚刺激55を与えてもよい。ユーザーがキッチンに入り、黄色の光を持つ他の視覚刺激45を受けるとき、ユーザーは薬を飲むことを思い出す。前記他の視覚刺激の黄色は、それより前に与えられた視覚刺激と同じ神経経路を介して脳で処理される、すなわちこの神経経路はプライミングされると仮定され、それにより前記他の視覚刺激は、ユーザーに薬を飲むことを思い出させることをますます効果的にする。
【0014】
前記他の照明手段41は、薬ディスペンサー20に含まれるもう1つのメモリに記憶される投薬スケジュールに従って前記他の視覚刺激を与える。さらに、薬ディスペンサー20は、唯一定めた投薬スケジュールに従ってユーザーが薬を飲むことができるように、前記他の視覚刺激45が与えられるとき及び与えられている間、唯一薬ディスペンサー20にある薬を入手することを提供するために配される。前記薬ディスペンサーは、携帯可能である及びバッテリー給電式でもよい。バッテリーの寿命を延ばすために、薬ディスペンサー20は、ユーザーが所定の範囲内にいることを検出するための検出手段(図示せず)を有してもよい。ユーザーが検出されたときにのみ、前記他の照明手段40は、ユーザーに前記他の視覚手段45を与え、それによりバッテリーのエネルギー消費を節約する。この検出手段は例えば、PIR(パッシブ赤外線)動作検出器でもよい。
【0015】
携帯装置10が腕に取り付けられるとき、ユーザー30は、視覚刺激55を目にしないことがある。従って、携帯装置10は、ユーザーにこの携帯装置をチェックすることを誘発する他の手段51、52を有し、そうすると視覚刺激55を受ける。例えば、携帯装置は、ユーザーから注目を得るための控えめな方法である触覚刺激を与えるための振動手段51を有する。前記携帯装置は、前記振動手段の代わりに又は振動手段に加えて、音響刺激を与えるための音響手段52を持ってもよい。これら触覚及び/又は音響刺激は、視覚刺激55の前に又はそれと同時に与えられてもよい。
【0016】
前記薬剤管理システム100の他の実施例が図2に示される。この薬剤管理システムにおいて、携帯装置10及び薬ディスペンサー20は、例えばユーザー30が朝に第1の薬を、夕方に第2の薬を飲むように定めた、より複雑な投薬スケジュールに適応している。携帯装置10の照明手段50は、第1の薬の近づいている摂取期間を示すための第1の所定の色を持つ第1の視覚刺激55を、及び第2の薬の近づいている摂取期間を示すための第2の所定の色を持つ第2の視覚刺激65を与えるように配され、これら第1及び第2の視覚刺激は、前記投薬スケジュールに従って与えられる。
【0017】
前記薬ディスペンサーに含まれる他の照明手段40、70は、対応する第1の他の視覚刺激45及び第2の他の視覚刺激75を与える。前記他の照明手段は、2つの個別の照明手段を有するか、また代わりにこれら他の照明手段が前記対応する第1の他の視覚刺激45及び第2の他の視覚刺激75を与えることができるような複数の色を与えることが可能な単独の照明手段を有する。さらに、薬ディスペンサー20は、前記第1の他の視覚刺激が与えられるとき及び与えられている間、この薬ディスペンサー20にある第1の薬を、並びに前記第2の視覚刺激が与えられている間、唯一第2の薬を入手することを提供するように配され、ユーザーは、定めた投薬スケジュールに従って正しい薬を飲む及び行動することを確認する。さらに、薬ディスペンサー20は、ユーザーが所定の範囲内にいることを検出するための検出手段(図示せず)を持つ。前記携帯装置はさらに、上述したようなユーザーにこの携帯装置をチェックすることを誘発するための振動及び/又は音響手段を有してもよい。
【0018】
図3は、2人以上のユーザーのために構成される薬剤管理システム100の他の実施例を示す。この薬剤管理システム100は、第1の携帯装置10を所有している第1のユーザー30及び第2の携帯装置110を所有している第2のユーザー130のための薬を保存するために配される薬ディスペンサー20を有する。第1の携帯装置10の第1の照明手段50は、第1の他の視覚刺激に対応する第1の所定の色を持つ第1の視覚刺激55を与えるように配され、この第1の他の視覚刺激は、この第1の所定の色を供給するための第1の他の照明手段を持つ第1のアクセスポイント40により与えられる。同様に、第2の携帯装置110の第2の照明手段60は、第2の他の視覚刺激に対応する第2の所定の色を持つ第2の視覚刺激65を与えるように配され、この第2の他の視覚刺激は、この第2の所定の色を供給するための第2の他の照明手段を持つ第2のアクセスポイント40により与えられる。またその代わりに、前記他の照明手段は、これら他の照明手段が対応する第1の他の視覚刺激45及び第2の他の視覚刺激75を与えることができるような複数の色を供給することが可能である。この実施例はさらに、上述したのと同じく、薬ディスペンサーに保管される薬の時間制限される入手の特徴を有してもよい。図3の実施例において、薬ディスペンサーの検出手段はさらに、例えばRFIDを使用することによりユーザーが所定の範囲にいることを検出及び特定し、薬の入手は、その薬が処方されたユーザーに制限されることをさらに可能にするために配され、例えば第1のユーザーが第2のユーザーのために処方した薬を第1のユーザーの定めた薬摂取時間に誤って飲んでしまうことを防ぐ。
【0019】
図4は、図3の薬剤管理システムに対する、第1及び第2の携帯装置10、110(に含まれる照明手段)により与えられる第1及び第2の視覚刺激、並びに薬ディスペンサー20(に含まれる他の照明手段)により与えられる対応する第1及び第2の他の視覚刺激45、75のタイミング図の一例を示す。このタイミング図は、第1及び第2のユーザーに定めた投薬スケジュールから得られる。第1の携帯装置10にある第1の照明手段50は、前記対応する第1の他の視覚刺激45が薬ディスペンサー20により与えられる前の所定の時間80に、第1のユーザー30に第1の視覚刺激55を与えるように配される。これら第1の視覚刺激及び第1の他の視覚刺激は例えば黄色である。第1の他の視覚刺激45が与えられている間、第1のユーザー30だけが自分の処方される薬を入手できる。同様に、第2の携帯装置110にある第2の照明手段60は、(第2の視覚刺激と同じ色を持つ)対応する第2の他の視覚刺激75が与えられる前の所定の時間81に、第2のユーザー30に第2の視覚刺激65例えば赤色を与え、第2の他の刺激75が与えられている間、第2のユーザー130だけが自分の処方される薬を入手できる。
【0020】
他の実施例において、薬ディスペンサー20はさらに、インターネットを介して遠く離れた介護人とデータを交換するように配され、投薬スケジュールの更新及び変更、並びに定めた投薬スケジュールをユーザーが順守しているかの監視を可能にする。薬剤管理システム100の他の実施例において、携帯装置10及び薬ディスペンサー20はさらに、携帯装置10、110と薬ディスペンサー20との間にワイヤレス結合を可能にするためのデータ送信手段を有する。これは、携帯装置が薬ディスペンサーから更新された投薬スケジュール、及び近づいているスケジュールされた薬摂取時間又は期間を示す視覚信号のタイミング設定を受信する利点を提供する。このタイミング設定は、高輝度の視覚刺激55が与えられる"オンタイム"90及び低輝度の視覚刺激が与えられる"オフタイム"91、並びに視覚刺激の起動から他の視覚刺激45の起動までの(介護者により提供される投薬スケジュールに依存する)所定の時間93に関するデータを有する(図5参照)。さらに、携帯装置10に含まれる照明手段50及び薬ディスペンサー20に含まれる他の照明手段41は、複数の所定の色を与えるように配され、ここで視覚刺激55及び他の視覚刺激45に使用される前記所定の色は、介護者によりプログラム可能である。例えば、投薬スケジュールが変更され、ユーザーは1種類だけでなく、2つの異なる種類の薬を飲まなければならないとき、介護者は、2つの異なる所定の色を与えるように携帯装置及び薬ディスペンサーをプログラミングすることができる。
【0021】
図5は、携帯装置10の照明手段50により与えられる視覚刺激55、及び薬ディスペンサー20に含まれる他の照明手段41により与えられる他の視覚刺激45の他のタイミング図を示す。これら照明手段は、高輝度の視覚刺激が与えられる"オンタイム"90と、低輝度の視覚刺激が与えられる"オフタイム"91とを持つパルス状の視覚刺激55を与えるように配される。ある実施例において、"オンタイム"は好ましくは約10秒若しくは11秒以上であり、"オフタイム"は好ましくは約5分若しくはそれ以下である。他の実施例において、薬ディスペンサー20は、ユーザーが薬ディスペンサーから薬を取ったときを検出するように配され、それに反応して、処方した薬が取られたので、前記視覚刺激をオフに切り替える信号を携帯装置10に送る(92)。
【0022】
図6は、近づいている所定の薬摂取時間又は期間を示すための視覚刺激55、65をユーザー30に与えるステップ210、並びに(例えば薬ディスペンサー20の位置に対し)ユーザーの注意を引く及びユーザーに薬を飲むことを思い出させるための他の視覚刺激を与える他のステップ220を有する薬剤管理の方法の実施例を示し、ここで、視覚刺激及び他の視覚刺激は同じ所定の色を持つ。薬ディスペンサーの位置に対するユーザーの位置とは関係なく、ユーザーは定めた投薬スケジュールに従って視覚刺激55を受けられるように、ユーザー30、130により所持される携帯装置10、110に含まれる照明手段50、60により視覚刺激が与えられる。携帯装置10は例えば、時計のように腕に所持されてもよいし、又はペンダントのように首の周りに紐を用いて所持されてもよい。前記他の視覚刺激は、薬ディスペンサーに含まれる手段40、41、70、71により与えられる。
【0023】
他の実施例において、前記携帯装置は、カラーディスプレイを持つスマートフォンであり、このスマートフォンは、プログラムされた投薬スケジュールに従って視覚刺激55を与えるようにプログラムされる。
【0024】
例えばスマートフォンをポケットに入れて所持するとき、ユーザー10に前記他の視覚刺激45を気付かせるために、前記方法は、視覚刺激55の前に又はそれと同時に、触覚刺激及び/又音響刺激を与える第1のステップ200を有する。例えば、スマートフォンは、ユーザーに触覚刺激を与える振動手段51を有する。それに反応して、ユーザーは、自分の電話をチェックして、視覚刺激を目にする。
【0025】
ある実施例において、薬ディスペンサー20は、蓋の一部又は全てを所定の色、例えば黄色にする他の照明手段を備える蓋を持つ薬瓶である。同じ所定の色(例えば黄色)を持つ視覚刺激55及び黄色くなった蓋により与えられる他の視覚刺激45は、ユーザー30の脳内において同じ神経経路を使用する。視覚刺激55は、脳に"覚えられ(remembered)"、後続する前記他の視覚刺激45をより敏感にさせる。前記視覚刺激は、他の視覚刺激が与えられるスケジューリングした摂取時間の前の所定の時間93に与えられる。この視覚刺激は、(例えば図4のように)スケジューリングした薬摂取期間の終わりまで連続して与えられず、代わりに(図5に90で示される)限られた期間に視覚刺激をユーザーに与える(高輝度の視覚刺激が与えられる"オンタイム"90及び低輝度の視覚刺激が与えられる"オフタイム"91を持つ)パルス信号である場合、前記視覚刺激55は少なくとも10秒間、及び前記他の視覚刺激45が与えられる前の約5分若しくはそれより前に与えられるべきである。
【0026】
本発明は、図面及び上述の記載において詳細に説明及び記載されているのに対し、このような説明及び記載は、説明的又は例示的であり、限定的であるとは考えない、つまり本発明は開示した実施例に限定されない。
【0027】
これら開示した実施例に対する変形例は、図面、本開示及び付随する特許請求の範囲を検討することにより、請求する本発明を実施する当業者により理解及びもたらされることができる。請求項において"有する"という言葉は、それ以外の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べていないことが、それらが複数あることを排除するものでもない。単一の処理器又は他のユニットが請求項に挙げられる幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。ある方法が互いに異なる独立請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に用いられないことを示してはいない。請求項における如何なる参照符号もその範囲を限定すると考えるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6