(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030143
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】MR電気特性断層撮影
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20161114BHJP
A61B 5/05 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
A61B5/05 382
A61B5/05ZDM
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-536385(P2014-536385)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2014-530081(P2014-530081A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】IB2012055619
(87)【国際公開番号】WO2013057655
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】61/548,445
(32)【優先日】2011年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン リール アストリト ルシア ヘレナ マリア ウィレミナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルフ コーネリス アントニウス セオドルス
(72)【発明者】
【氏名】カッチャー ウルリッヒ
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−504224(JP,A)
【文献】
特開2009−119204(JP,A)
【文献】
特開2009−160215(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/239951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴装置の検査ボリュームに置かれるオブジェクトの磁気共鳴イメージングの方法であって、
磁気共鳴信号を取得するための二つ以上のイメージングシーケンスに前記オブジェクトをかけるステップであって、前記イメージングシーケンスが各々、前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対する少なくとも一つの高周波パルスと少なくとも一つのスイッチ傾斜磁場を有する、ステップと、
前記二つのイメージングシーケンスを用いて取得される磁気共鳴信号から二つ以上の磁気共鳴位相画像を再構成するステップであって、前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対する前記イメージングシーケンスの一つの前記スイッチ傾斜磁場が、前記イメージングシーケンスの1つの前記スイッチ傾斜磁場に対して対向極性を持つ、ステップと、
前記磁気共鳴位相画像の画像位相から前記オブジェクトの電気特性の空間分布を導出するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記オブジェクトの電気特性の空間分布が、前記傾斜磁場成分の空間微分に対する電流密度に関するアンペアの法則に基づいて前記磁気共鳴位相画像から導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イメージングシーケンスが、変動する時間的プロファイルを持つスイッチ傾斜磁場を有し、前記オブジェクトの電気特性の空間分布が、前記取得された磁気共鳴信号から導出される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記オブジェクトを第1の磁気共鳴信号を取得するための第1のイメージングシーケンスにかけるステップと、
前記オブジェクトを第2の磁気共鳴信号を取得するための第2のイメージングシーケンスにかけるステップであって、前記第1及び第2のイメージングシーケンスのスイッチ傾斜磁場が対向極性を持つ、ステップと、
前記オブジェクトを第3の磁気共鳴信号を取得するための第3のイメージングシーケンスにかけるステップと、
前記オブジェクトを第4の磁気共鳴信号を取得するための第4のイメージングシーケンスにかけるステップであって、前記第3及び第4のイメージングシーケンスのスイッチ傾斜磁場が対向極性を持つ、ステップと、
前記第1、第2、第3及び第4の磁気共鳴信号から前記オブジェクトの電気特性の空間分布を導出するステップとを有し、前記オブジェクトが、前記第1及び第2の磁気共鳴信号の取得後、前記第3及び第4の磁気共鳴信号の取得前に、前記磁気共鳴装置の主磁場軸と垂直な軸まわりに90°回転される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のイメージングシーケンスのスイッチ傾斜磁場の空間方向が、前記第3及び第4のイメージングシーケンスのスイッチ傾斜磁場の空間方向と異なる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
三次元磁気共鳴位相画像が前記第1、第2、第3及び第4の磁気共鳴信号から各々再構成される、請求項4又は5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実行するための磁気共鳴装置であって、検査ボリューム内に均一な定常磁場を生成するための少なくとも一つの主磁石コイルと、前記検査ボリューム内の異なる空間方向にスイッチ傾斜磁場を生成するための複数の傾斜磁場コイルと、前記検査ボリューム内に高周波パルスを生成するため及び/又は前記検査ボリューム内に位置するオブジェクトから磁気共鳴信号を受信するための少なくとも一つの高周波コイルと、高周波パルスとスイッチ傾斜磁場の時間的遷移を制御するための制御ユニットと、再構成ユニットとを含み、前記磁気共鳴装置は、
磁気共鳴信号を取得するための二つ以上のイメージングシーケンスに前記オブジェクトをかけるステップであって、前記イメージングシーケンスが各々、前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対する少なくとも一つの高周波パルスと少なくとも一つのスイッチ傾斜磁場を有する、ステップと、
対向極性の前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対するスイッチ傾斜磁場を有するイメージングシーケンスを用いて取得される磁気共鳴信号から二つ以上の磁気共鳴位相画像を再構成するステップと、
前記磁気共鳴位相画像から前記オブジェクトの電気特性の空間分布を導出するステップと
を実行するように構成される、磁気共鳴装置。
【請求項8】
磁気共鳴装置上で実行されるコンピュータプログラムであって、
磁気共鳴信号を取得するための二つ以上のイメージングシーケンスを生成するステップであって、前記イメージングシーケンスが各々、前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対する少なくとも一つの高周波パルスと少なくとも一つのスイッチ傾斜磁場を有する、ステップと、
前記磁気共鳴イメージングにおける空間エンコーディングに対する対向極性のスイッチ傾斜磁場を有するイメージングシーケンスを用いて取得される磁気共鳴信号から二つ以上の磁気共鳴位相画像を再構成するステップと、
前記磁気共鳴位相画像からオブジェクトの電気特性の空間分布を導出するステップ
のための命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴(MR)イメージングの分野に関する。これはMR装置の検査ボリューム内に置かれるオブジェクトのMRイメージングの方法に関する。本発明はMR装置及びMR装置上で実行されるコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
二次元若しくは三次元画像を形成するために磁場と核スピン間の相互作用を利用する画像形成MR法は、軟組織のイメージングにとってこれらが多くの点で他のイメージング法より優れており、電離放射線を必要とせず、通常は非侵襲的であるため、とりわけ医療診断の分野で今日広く使用されている。
【0003】
一般的なMR法によれば、検査されるオブジェクト(例えば患者の体)は強い均一磁場内に配置され、磁場の方向は同時に座標系の軸(通常z軸)を規定し、測定はこれに基づく。磁場は規定周波数(いわゆるラーモア周波数若しくはMR周波数)の交流電磁場(RF場)の印加によって励起され得る磁場強度に依存する個々の核スピン(スピン共鳴)に対して異なるエネルギーレベルを生じる。巨視的観点から、個々の核スピンの分布は全体磁化を生じ、これは磁化がz軸まわりの歳差運動を行うように、磁場がz軸と垂直に広がりながら適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)の印加によって平衡状態から偏向され得る。歳差運動は円錐の表面をあらわし、その開口角はフリップ角とよばれる。フリップ角の大きさは印加電磁パルスの強さと持続期間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、スピンはz軸から横断面へ偏向される(フリップ角90°)。
【0004】
RFパルスの終了後、磁化は緩和して元の平衡状態へ戻り、ここでz方向の磁化は第1の時定数T
1(スピン格子若しくは縦緩和時間)で再度増大され、z方向と垂直な方向の磁化は第2の時定数T
2(スピン‐スピン若しくは横緩和時間)で緩和する。磁化の変動は、磁化の変動がz軸と垂直な方向に測定されるようにMR装置の検査ボリューム内に配置され配向される受信RFコイルを用いて検出され得る。横磁化の減衰は、例えば90°パルスの印加後、同位相を持つ秩序状態から全位相角度が均一に分布する状態(ディフェージング)への核スピンの遷移(局所磁場不均一性によって誘導される)を伴う。ディフェージングはリフォーカシングパルス(例えば180°パルス)を用いて補正され得る。これは受信コイル内のエコー信号(スピンエコー)を生じる。
【0005】
オブジェクト内の空間分解能を実現するために、三つの主軸に沿って広がる線形傾斜磁場が均一磁場に重畳され、スピン共鳴周波数の線形空間依存性をもたらす。そして受信コイルにおいてピックアップされる信号はオブジェクト内の異なる位置と関連し得る異なる周波数の成分を含む。受信コイルを介して得られる信号データは周波数領域に対応し、k空間データとよばれる。k空間データは通常は異なる位相エンコーディングで取得される多重線を含む。各線は複数のサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間データの集合はフーリエ変換若しくは他の適切な再構成アルゴリズムを用いてMR画像に変換される。
【0006】
生物組織の電気特性の空間分布の決定は、生物組織の複素誘電率がそれらの組成によって影響されるため、大いに興味深い。腫瘍の細胞組成は健常組織と異なるので、例えば神経膠腫の導電率は周辺健常組織の導電率と異なることがわかった(Lu et al.,Int.J.Hyperthermia,8:755‐60,1992参照)。
【0007】
近年、生物組織の(複素)誘電率若しくは導電率(のみ)の検査を可能にするMRイメージングに基づく方法が開発されている。いわゆるMR電流密度イメージング(MR CDI)では、組織に電流を注入するために外部電流源が検査される患者の皮膚に接続される。組織中の電流は主磁場強度を局所的に変更する。この効果はMR位相画像を取得することによって組織内の電流密度分布を画像化するために使用される(Scott et al.,IEEE Trans.Med.Imag.,10:362‐74,1991)。適切な後処理ステップを用いて、得られる電流密度マップから導電率の空間分布が導出され得る。このアプローチはMR電気インピーダンスマッピングとよばれる(MR EIT,Seo et al.,IEEE Trans.Biomed.Eng.,50:1121‐1124,2003参照)。これらのMR CDI及びMR EIT技術は一般にDC電流を数ミリ秒間印加することによって実行される。従って、得られる導電率は"低"周波数範囲(〜1kHz未満)と関連する。
【0008】
上記MR CDI及びMR EIT技術の両方の欠点は、これらが標準MRイメージング環境では利用できない外部電流源を要することである。電流源は電流を注入するために検査される患者の皮膚表面に接続されなければならない。主要な問題は十分な信号対雑音比を得るために比較的高電流が必要なことである。こうした高電流は検査される患者にとって苦痛になり得る。
【0009】
さらに、電気特性の空間分布の決定を可能にする、もう外部電流源を必要としない方法が近年開発されている。MR EPT(MR電気特性断層撮影、WO2007/017779A2参照)とよばれるこの方法は、MRイメージングにおける核スピンの励起のために必要な高周波場が組織の複素誘電率によって変更されるという洞察に基づく。励起場を決定することによって、導電率が直接再構成され得る。しかしながら、決定される複素誘電率の周波数範囲は使用されるMR装置のMR周波数に制限される。MR周波数は典型的には64乃至300MHzに及ぶ。この周波数範囲はβ分散バンド(約1MHz)から大きく外れており、これはその細胞膜情報との関係のために特に興味深い(Martinsen et al.,Encyclopedia of Surface and Colloid Science,2643‐52,2002参照)。さらに、単一周波数検査のみが所与のMR装置で実行されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から、改良されたMR EPT技術が必要であることが容易に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、MR装置の検査ボリューム内に置かれるオブジェクトのMRイメージングの方法が開示される。方法は以下のステップを有する:
オブジェクトを、MR信号を取得するための二つ以上のイメージングシーケンスにかけるステップ。イメージングシーケンスは各々少なくとも一つのRFパルスと少なくとも一つのスイッチ傾斜磁場を有する。
対向極性のスイッチ傾斜磁場を有するイメージングシーケンスを用いて取得されるMR信号から二つ以上のMR位相画像を再構成するステップ。
MR位相画像からオブジェクトの電気特性の空間分布を導出するステップ。
【0012】
"グラジエント‐EPT"とよばれ得る、本発明の要旨は、MRイメージングにおける空間エンコーディングのために印加されるスイッチ傾斜磁場によって誘導される電磁場が使用されることである。このように、本発明はMR EIT/MR CDI(特定の生物学的関心のある周波数範囲における電気特性の決定)及び"RF‐EPT"(電流注入なしの電気特性の決定)の両方の利点を組み合わせる。さらに、スイッチ傾斜磁場の使用は異なる周波数における複素誘電率の決定を直接可能にする。従って、電気特性のスペクトルが決定され得る。
【0013】
本発明はMRイメージングにおける傾斜磁場のスイッチングが時間変動磁場をもたらし、これが検査オブジェクト内に(誘導を通じて)渦電流を生成するという洞察に基づく。渦電流分布は組織の導電率に依存する。渦電流は主磁場を局所的に乱すので、オブジェクトの電気特性の空間分布が取得MR信号から直接導出されることができる。
【0014】
本発明によれば、誘導渦電流に起因する、取得MR信号における位相差がスイッチ傾斜磁場の対向極性において測定される。このように、渦電流の電流密度の空間分布が直接導出され得る。電流密度分布が再構成されると、根底にある導電率が推定され得る。
【0015】
従って本発明の本質的特徴は、取得MR信号から再構成される二つ(若しくはそれ以上)のMR画像が、それらの渦電流誘導位相に関してのみ異なるということである。例えば、これら二つのMR画像を減算すると、渦電流誘導位相のみを含むMR画像をもたらし、これは本発明にかかるオブジェクトの電気特性の空間分布を導出するために使用され得る。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、MR信号は傾斜磁場スイッチングの遷移相中に取得される。"遷移相"とは磁場が一時的に一定でない時間間隔中にMR信号が取得されることを意味する。例えば、MR信号は本発明にかかる傾斜磁場スイッチングの増加及び/又は減少位相中に取得され得る。
【0017】
傾斜磁場スイッチングによって誘導される渦電流の周波数はランピング(ramping)プロセス、すなわちスイッチ傾斜磁場の時間的プロファイル(波形)に依存する。傾斜磁場波形を変動させることによって、MR周波数よりも著しく低い周波数の範囲が精査されることができ、検査されるオブジェクトの電気特性の対応する空間分布が取得MR信号から導出されることができる。
【0018】
ここまで説明した本発明の方法は、検査ボリューム内に均一定常磁場を生成するための少なくとも一つの主磁石コイル、検査ボリューム内の異なる空間方向にスイッチ傾斜磁場を生成するための複数の傾斜磁場コイル、検査ボリューム内にRFパルスを生成するため及び/又は検査ボリューム内に位置するオブジェクトからMR信号を受信するための少なくとも一つのRFコイル、RFパルスとスイッチ傾斜磁場の時間的遷移を制御するための制御ユニット、及び再構成ユニットを含むMR装置を用いて実行され得る。本発明の方法は、例えば、MR装置の再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラミングによって実施され得る。
【0019】
本発明の方法は現在臨床で使用されるほとんどのMR装置において有利に実行されることができる。この目的のために、本発明の上記方法ステップを実行するようにMR装置が制御されるコンピュータプログラムを利用することが必要なだけある。コンピュータプログラムはデータキャリア上に存在するか、又はMR装置の制御ユニットへのインストールのためにダウンロードされるようにデータネットワーク内に存在するかのいずれかであり得る。
【0020】
添付の図面は本発明の好適な実施形態を開示する。しかしながら、図面は例示の目的に過ぎず本発明の限定の定義としてではなく設計されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の方法を実行するためのMR装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、MR装置1が図示される。装置はほぼ均一な時間的に一定の主磁場が検査ボリュームを通るz軸に沿って生成されるように超電導若しくは常電導主磁石コイル2を有する。
【0023】
磁気共鳴生成及び操作システムは一連のRFパルスとスイッチ傾斜磁場を印加して、核磁気スピンを反転若しくは励起し、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴をリフォーカスし、磁気興味を操作し、磁気共鳴を空間的に及び他の方法でエンコードし、スピンを飽和させるなどして、MRイメージングを実行する。
【0024】
最も具体的に、傾斜磁場パルス増幅器3は検査ボリュームのx、y及びz軸に沿って全身傾斜磁場コイル4、5及び6の選択した一つに電流パルスを印加する。デジタルRF周波数送信機7は送信/受信スイッチ8を介してRFパルス若しくはパルスパケットを全身ボリュームRFコイル9へ送信し、検査ボリューム内へRFパルスを送信する。典型的なMRイメージングシーケンスは、互いに及び任意の印加傾斜磁場と統合すると、核磁気共鳴の選択した操作を実現する、短期間のRFパルスセグメントのパケットから成る。RFパルスは、飽和、共鳴の励起、磁化の反転、共鳴のリフォーカス、若しくは共鳴の操作及び検査ボリューム内に位置する体10の部分の選択のために使用される。MR信号は全身ボリュームRFコイル9によってもピックアップされる。
【0025】
パラレルイメージングを用いる体10の限られた領域のMR画像の生成のために、局所アレイRFコイル11,12,13のセットがイメージングのために選択される領域に隣接して置かれる。アレイコイル11,12,13は体‐コイルRF送信によって誘導されるMR信号を受信するために使用され得る。
【0026】
得られるMR信号は全身ボリュームRFコイル9によって及び/又はアレイRFコイル11,12,13によってピックアップされ、好適には前置増幅器(不図示)を含む受信機14によって復調される。受信機14は送信/受信スイッチ8を介してRFコイル9,11,12及び13に接続される。
【0027】
ホストコンピュータ15は傾斜磁場パルス増幅器3と送信機7を制御して、エコープラナーイメージング(EPI)、エコーボリュームイメージング、グラジエント及びスピンエコーイメージング、高速スピンエコーイメージングなどといった複数のMRイメージングシーケンスのいずれかを生成する。選択されたシーケンスに対して、受信機14は各RF励起パルスの後間断なく単一の若しくは複数のMRデータラインを受信する。データ収集システム16は受信信号のアナログ‐デジタル変換を実行し、各MRデータラインをさらなる処理に適したデジタル形式へ変換する。現代のMR装置において、データ収集システム16は生の画像データの収集を専門とする個別コンピュータである。
【0028】
最終的に、デジタル生画像データはフーリエ変換若しくは他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17によって画像表現に再構成される。MR画像は患者を通る平面スライス、平行な平面スライスのアレイ、三次元ボリュームなどをあらわし得る。そして画像は画像メモリに保存され、ここでスライス、投影、若しくは画像表現の他の部分を、例えば得られるMR画像の人が読める表示を提供するビデオモニタ18を介して、可視化のための適切な形式に変換するためにアクセスされ得る。
【0029】
引き続き
図1を参照し、さらに
図2を参照して、本発明のイメージングアプローチの一実施形態が説明される。
【0030】
本発明によれば、適用されるイメージングシーケンスはRFパルスとスイッチ傾斜磁場を有し、MR信号は好適には傾斜磁場スイッチングの遷移相中に取得される。このようにして取得されるMR信号から体の電気特性の空間分布が導出される。
【0031】
電気特性の導出は以下の通りアンペアの法則に基づく:
【0032】
この式のz成分は次のようにあらわされ得る:
【0033】
ここで、Jは電流密度であり、σは導電率であり、Eは電場でありBは磁場である。傾斜磁場スイッチング中に生成される渦電流によって誘導される磁場は、MR画像位相から本発明に従って導出され得る。二つ以上のMR位相画像が、対向極性のスイッチ傾斜磁場を各々有するイメージングシーケンスを用いて取得されるMR信号から再構成される。以下、"元の"傾斜磁場極性を用いて取得されるMR信号から再構成されるMR位相画像における画像位相はφ
orgとあらわされ、対向極性のスイッチ傾斜磁場を用いることによって取得されるMR信号から再構成されるMR位相画像における画像位相はφ
invとあらわされる。すると渦電流誘導磁場は次のように計算され得る:
【0034】
ここで、γは磁気回転比でありτは渦電流の実効持続時間である。τの知識はJの絶対値が導出されるべき場合にのみ必要である。追加測定なしに、位相の和が例えば次式を介してラーモア周波数における導電率を決定するために使用され得る。
【0035】
複素誘電率はそれに応じて決定され得る。
【0036】
本発明によれば、患者10の体は第1のMR信号を取得するための第1のイメージングシーケンスにかけられ、第1のイメージングシーケンスは元の傾斜磁場極性を持つスイッチ傾斜磁場を有する。MR信号は傾斜磁場スイッチングの遷移相中(例えば増加及び/又は減少位相中)に取得され得る。次のステップにおいて、患者の体10は第2のMR信号を取得するための第2のイメージングシーケンスにかけられ、第2のイメージングシーケンスのスイッチ傾斜磁場は逆極性を持つ。追加の傾斜磁場がイメージングシーケンスに加えられる必要はない。上記MR信号データのペアは例えば元の選択、準備、若しくは読み出し傾斜磁場、又はこれら三つの傾斜磁場の任意の組み合わせを反転させることによって取得され得る。第2のMR信号から得られるMR画像は反転した傾斜磁場方向に沿って鏡写しのように見え、さらなる画像再構成の前に元の配向へ鏡写しして戻される必要がある。三次元MR位相画像φ
org(r)とφ
inv(r)は第1及び第2のMR信号から再構成される。これに基づいて、渦電流誘導磁場が上記式を用いて計算される。電流密度分布を得るために、さらなる信号収集ステップが必要である。第1及び第2のMR信号の取得後、検査される体10(若しくは少なくとも実際に検査される体10の部分)はMR装置の主磁場軸と垂直な軸まわりに、好適には90°回転される。その後、患者の体10は第3のMR信号を取得するための第3のイメージングシーケンスにかけられ、第3のイメージングシーケンスは再度元の極性を持つスイッチ傾斜磁場を有する。最後に、患者の体10は第4のMR信号を取得するための第4のイメージングシーケンスにかけられ、第4のイメージングシーケンスは逆極性を持つスイッチ傾斜磁場を有する。第1、第2、第3及び第4のMR信号に基づいて、電流密度を計算するための上記式が解かれ得る。
【0037】
第1及び第2のMR信号の取得は
図2に図の左側に図示される。第3及び第4のMR信号の取得は右側に図示される。第1及び第2のMR信号の取得は体10を通る複数の横断スライスのスキャンを有し、体10の足‐頭方向がMR装置1の"長手方向"z軸に対応する。第1及び第2のMR信号間の位相差φ
org(r)−φ
inv(r)は渦電流によって誘導される足‐頭方向の磁場に比例する(体10の座標フレームにおけるB
z'に対応する)。そしてサンプルはMR装置1の前後軸まわりに90°回転され、第3及び第4のMR信号の取得が矢状スライス配向に実行される。以前と同じ大きさのMR画像が取得される。しかしながら、ここでMR装置1の足‐頭方向は患者の体10の座標フレームにおけるx'‐方向に対応する。従って、磁場のカールのz成分及び従ってこの方向の電流密度が上記式を用いることによって計算され得る。
【0038】
患者の体10の直交配向での二つの測定の代わりに、一次独立な傾斜磁場方向での二つ(若しくはそれ以上)の信号収集ステップも可能である。このように、患者の体10の(時に実現困難な)回転の必要がなくなり得る。例えば、元の及び逆の傾斜磁場を持つスライスの多重ペアが、所定回転角度によってスライス配向を連続的にステップすることで取得され得る。その後の画像再構成は得られる画像を平均化すること、若しくは逆投影法を用いることを含み得る。代替的に、単一スライス配向及び単一患者配向についてただ一つの画像ペアを取得することによって時に十分な画像コントラストが得られることがある。電流密度分布が上記方法で再構成されると、根底にある導電率が文献に記載の方法で推定され得る(Seo et al.,IEEE Trans.Biomed.Eng.,50:1121‐1124,2003)。