(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030145
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】研磨用スラリー及びこれを用いた基板の研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20161114BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20161114BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20161114BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
H01L21/304 621D
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-539865(P2014-539865)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2015-502417(P2015-502417A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】KR2012007367
(87)【国際公開番号】WO2013154236
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0038419
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314004772
【氏名又は名称】ユービーマテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェグン
(72)【発明者】
【氏名】イ コンソップ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒソップ
(72)【発明者】
【氏名】ツイ ハオ
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−003825(JP,A)
【文献】
特開平10−121035(JP,A)
【文献】
国際公開第01/000745(WO,A1)
【文献】
国際公開第01/048109(WO,A1)
【文献】
特開2011−014840(JP,A)
【文献】
特開2002−009023(JP,A)
【文献】
特開2002−173669(JP,A)
【文献】
特表2002−528903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン研磨用スラリーであって、
研磨を行う研磨剤及び酸化物形成を促す酸化促進剤を含み、
前記研磨剤として酸化チタン粒子を含み、
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、1.0〜2.0重量%であり、
前記酸化チタン粒子は、アナターゼ相とルチル相を有し、前記アナターゼ相とルチル相の総和を100としたとき、前記アナターゼ相が50を超え、
前記タングステンの研磨率が3700Å/min〜3800Å/minである、スラリー。
【請求項2】
前記酸化促進剤として、硝酸鉄、フェリシアン化カリウム、塩化鉄、硫酸鉄、フッ化鉄、臭化鉄、塩化銅、フッ化銅及び臭化銅よりなる群から選ばれた少なくとも一種を含み、
前記酸化促進剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.002重量%以上0.1重量%以下である請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記酸化促進剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.01重量%以上0.1重量%以下である請求項2に記載のスラリー。
【請求項4】
前記酸化促進剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.05〜0.1重量%である請求項2に記載のスラリー。
【請求項5】
前記スラリーは、pHが1〜4に調節される請求項2に記載のスラリー。
【請求項6】
酸化物を形成する酸化剤として、過酸化水素水、過酸化尿素、過硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム 、ヨウ素酸カリウム、過塩素酸カリウム及び過硫酸カリウムよりなる群から選ばれた少なくとも一種を含み、
前記酸化剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.5重量%以上5.0重量%未満である請求項2に記載のスラリー。
【請求項7】
前記酸化剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.5重量%〜2重量%である請求項6に記載のスラリー。
【請求項8】
前記酸化剤の含量は、スラリーの総重量に対して、1重量%〜2重量%である請求項6に記載のスラリー。
【請求項9】
選択比向上剤として、ポリビニールピロリドン、ビニールピリジン及びビニールピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも一種を含む請求項2に記載のスラリー。
【請求項10】
前記選択比向上剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.05重量%以上3.0重量%未満である請求項9に記載のスラリー。
【請求項11】
前記選択比向上剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.05重量%〜1.0重量%である請求項10に記載のスラリー。
【請求項12】
前記選択比向上剤の含量は、スラリーの総重量に対して、0.05〜0.1重量%である請求項10に記載のスラリー。
【請求項13】
前記酸化チタン粒子は結晶相に形成され、平均1次粒子径が10nm〜100nmである請求項2に記載のスラリー。
【請求項14】
タングステン研磨用スラリーであって、
研磨を行う研磨剤として酸化チタン粒子を含み、
さらに、酸化物形成を促す酸化促進剤と、タングステンと絶縁膜の研磨選択比を増加させるための選択比向上剤とを含み、
前記酸化チタン粒子は結晶相に形成されるとともに、アナターゼ相とルチル相を有し、前記アナターゼ相とルチル相の総和を100としたとき、前記アナターゼ相が50を超え、
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、0.2重量%超え10重量%以下であり、
前記酸化チタン粒子は、平均1次粒子径が10nm〜100nmであり、
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、1.0〜2.0重量%であり、前記タングステンの研磨率が3700Å/min〜3800Å/minであるスラリー。
【請求項15】
前記酸化チタン粒子は、多面体状を呈する請求項14に記載のスラリー。
【請求項16】
前記酸化チタン粒子は、平均1次粒子径が15nm以上50nm未満である請求項15に記載のスラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を研磨する工程において用いられる研磨用スラリー及びこれを用いた研磨方法に関する。さらに詳しくは、半導体製造工程のうち、化学機械的な研磨工程において用いられる、特に、タングステン金属膜の平坦化に使用可能なスラリー及びこれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のサイズが益々縮小され、且つ、金属配線層の数が益々増大されるにつれて、各層における表面うねりは次の層に転写されて最下層表面のうねり度が重要視されつつある。このようなうねりは、次のステップにおいて所望の形状を形成し難い程度に深刻な影響を及ぼすことがある。したがって、半導体素子の歩留まりを向上させるためには、例えば、半導体製造工程中における配線抵抗のばらつきを低減するために複数の工程中に発生する不規則的な表面うねりを除去する平坦化工程が必ず用いられている。
【0003】
平坦化方法としては、蒸着膜を形成した後にリフローさせる方法、蒸着膜を形成した後にエッチバックする方法または化学機械的な研磨(Chemical Mechanical Polishing;以下、CMPと称する。)方法など種々の方法が挙げられる。
【0004】
CMP工程とは、半導体ウェーハの表面を研磨パッドに押し当てて回転運動を行いながら、研磨剤と各種の化合物が含有されたスラリーを提供して平らに研磨する工程をいう。すなわち、基板やその上部の層の表面がスラリー及び研磨パッドによって機械的及び化学的に研磨されて平坦化される。一般的に、金属を研磨する金属CMP工程は、酸化剤によって金属酸化物が形成される過程と、形成された金属酸化物を研磨剤が除去する過程とが繰り返し行われることが知られている。
【0005】
半導体素子の配線として多用されるタングステンを研磨するタングステンCMP工程も、酸化剤もしくは酸化促進剤によってタングステン酸化物(WO
3)が形成される過程と、研磨剤によってタングステン酸化物が除去される過程とが繰り返し行われる循環研磨メカニズムによって研磨が行われる。このため、研磨率を向上させるためには酸化剤を添加してタングステン酸化物を形成し、研磨剤によってタングステン酸化物を効率よく除去することが重要である。しかしながら、既存に汎用される研磨剤であるコロイダルシリカの場合、タングステン酸化物を除去するに際して酸化剤濃度依存性が高いため非効率的である。なお、トレンチなどパターンが形成された基板を研磨する場合にはディッシングやエロージョンなどの欠陥が頻発するという問題がある。このようなディッシングやエロージョンが生じる場合、今後製造される素子が誤作動するなど素子の動作特性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0006】
一方、大韓民国特許公報第10−0948814号には、ディッシング及びエロージョンを低減するために、2段階に亘って研磨を行う方法が開示されているが、この場合、複数のスラリーを用意し、複数の工程を行うことを余儀なくされるため工程が複雑になり、しかも、生産性が低下するという問題が引き起こされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タングステン研磨用スラリー及びこれを用いた基板の研磨方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、タングステン研磨率及びタングステンと絶縁膜の研磨選択比に優れたタングステン研磨用スラリー及びこれを用いた基板の研磨方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、研磨工程中に発生するディッシングとエロージョンを低減するタングステン研磨用スラリー及びこれを用いた基板の研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るスラリーは、タングステン研磨用スラリーであって、研磨を行う研磨剤及び酸化物形成を促す酸化促進剤を含み、前記研磨剤として酸化チタン粒子を含む。
【0011】
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.2重量%超え約10重量%以下であってもよい。
【0012】
前記酸化促進剤として、硝酸鉄、フェリシアン化カリウム、塩化鉄、硫酸鉄、フッ化鉄、臭化鉄、塩化銅、フッ化銅及び臭化銅よりなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよく、前記酸化促進剤の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.002重量%以上約0.1重量%以下であってもよい。
【0013】
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.7〜約5重量%であってもよい。
【0014】
前記酸化促進剤の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.01重量%以上約0.1重量%以下であってもよい。
【0015】
前記スラリーは、pHが約1〜約4に調節されてもよい。
【0016】
酸化物を形成する酸化剤として、過酸化水素水、過酸化尿素、過硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム 、ヨウ素酸カリウム、過塩素酸カリウム及び過硫酸カリウムよりなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよく、前記酸化剤の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%以上約5.0重量%未満であってもよい。
【0017】
前記酸化剤の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%〜約2重量%であってもよい。
【0018】
選択比向上剤として、ポリビニールピロリドン、ビニールピリジン及びビニールピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0019】
前記選択比向上剤の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.05重量%以上約3.0重量%未満であってもよい。
【0020】
前記酸化チタン粒子は結晶相に形成されてもよく、平均1次粒子径が約10nm〜約100nmであってもよい。
【0021】
本発明の他の実施形態に係るスラリーは、タングステン研磨用スラリーであって、研磨を行う研磨剤として酸化チタン粒子を含み、前記酸化チタン粒子は結晶相に形成され、少なくとも一部はアナターゼ結晶相に形成され、前記酸化チタン粒子は、平均1次粒子径が約10nm〜約100nmである。
【0022】
前記酸化チタン粒子は、多面体状を呈していてもよい。
【0023】
前記酸化チタン粒子は、平均1次粒子径が約15nm以上約50nm未満であってもよい。
【0024】
前記酸化チタン粒子は、アナターゼ相とルチル相を有し、前記アナターゼ相とルチル相の総和を100としたとき、前記アナターゼ相が約50を超えてもよい。
【0025】
前記酸化チタンの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.2重量%超え約10重量%以下であってもよい。
【0026】
前記スラリーは、酸化物の形成を促す酸化促進剤を含んでいてもよく、前記スラリーは、pH調節剤を含んでいてもよい。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態に係る基板の研磨方法は、タングステン層が形成された基板を設ける過程と、研磨剤としての酸化チタン粒子と酸化促進剤を含む1次スラリーを設ける過程と、前記1次スラリーを前記基板の上に供給しながら前記タングステン層を研磨する過程と、を含み、前記研磨過程においては、前記タングステン層の上部表面にタングステン酸化膜が形成され、前記酸化チタン粒子の少なくとも一部が前記タングステン酸化膜の内部に浸透して前記タングステン層及び前記タングステン酸化膜を研磨する。
【0028】
前記1次スラリーを前記基板の上に供給しながら酸化剤を前記基板の上に供給してもよい。
【0029】
前記1次スラリーを前記基板の上に供給しながら選択比向上剤を前記基板の上に供給してもよい。
【0030】
前記選択比向上剤または前記酸化剤は、前記1次スラリーとは別途の流入ラインを介して前記基板の上に提供されてもよい。
【0031】
前記酸化促進剤は硝酸鉄を含んでいてもよく、前記酸化剤は過酸化水素水であってもよい。
【0032】
前記研磨過程が行われる間に前記タングステン酸化膜は所定の膜厚に保たれてもよい。
【0033】
前記研磨過程が行われる間に前記酸化チタン粒子の少なくとも一部は前記タングステン層表面と直接的に接触してもよい。
【0034】
前記タングステン層が形成された基板を設ける過程においては、前記基板の上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜にトレンチを形成し、前記トレンチを含む絶縁膜の全面にタングステン層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の実施形態によれば、研磨剤として酸化チタンを用いることにより、タングステンを直接的に接触して研磨することができて、タングステン研磨率が大幅に向上され、タングステンと絶縁膜の研磨選択比に優れた研磨工程を行うことができる。
【0036】
本発明の実施形態に係るスラリーは、従来の循環研磨に際して発生するディッシング及びエロージョンを大幅に低減することができる。特に、ディッシングがほとんど発生しない研磨工程を実現することができる。
【0037】
さらに、本発明の実施形態に係るスラリーは、製造し易く、CMP工程を単純に行うことができてタングステンを効率よく研磨することができ、その結果、半導体素子の動作特性及び信頼性を向上させることができ、製造生産性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】従来の技術と本発明の実施形態に係る研磨粒子を透過電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。
【
図2】本発明の実施形態に係る研磨粒子のX線回折分析グラフである。
【
図3】従来の研磨粒子を用いた研磨過程を示す概念図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る研磨粒子を用いた研磨過程を示す概念図である。
【
図5】従来の技術と本発明の実施例による研磨結果を示すグラフである。
【
図6】パターンが形成された基板を示す概念図である。
【
図7】パターンが形成された基板を研磨するときに現れるディッシングとエロージョンを説明する概念図である。
【
図8】本発明の実施例に用いられるパターンが形成された基板を走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。
【
図9】従来の技術と本発明の実施例による研磨結果を示すグラフである。
【
図10】従来の技術による研磨結果を走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。
【
図11】本発明の実施例1による研磨結果を走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。
【
図12】本発明の実施例2による研磨結果を走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明は、後述する実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる種々の形態で実現される。単に、これらの実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図中、同じ符号は同じ構成要素を示す。
【0040】
本発明の実施形態に係るスラリーは、タングステン研磨用スラリーであって、研磨を行う研磨剤及び酸化物形成を促す酸化促進剤を含み、研磨剤として酸化チタン粒子を含む。研磨剤と酸化促進剤は溶液中に含有される。すなわち、水、特に、超純水(DI water)に酸化促進剤が溶解され、研磨剤が分散されて分布する。なお、スラリーのpHを調節するためにpH調節剤をさらに含んでいてもよい。このようなスラリーは、液体に固体(研磨剤)が分散された形であり、各成分の含量が適切に調節される。
【0041】
一方、スラリーは、前記成分を含む1次スラリー及びその他の成分を研磨を行う工程に際して別途に用いることができる。すなわち、前記1次スラリーとは別途の容器に保管される酸化剤及び選択比向上剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
先ず、研磨剤としての酸化チタンは固体粒子であって、多面体状の結晶相に形成される。酸化チタンは、金属チタンの酸化物であって、特に、二酸化チタン(TiO
2)を含む。
図1の透過電子顕微鏡(transmission electronmicroscope:TEM)写真から明らかなように、従来研磨剤として主に用いられるシリカの場合、非晶質相であり、粒子の形状が球状であるが(
図1のa、b)、酸化チタン研磨粒子は結晶質相であり、結晶面を有する多面体状である(
図1のc、d)。酸化チタン研磨粒子をX線回折分析した
図2からも、酸化チタン研磨粒子が結晶相として存在することが分かる。このように酸化チタン研磨粒子が結晶相であり、結晶面を有することにより、タングステン研磨を効率よく行うことができる。これについては、後述する。
【0043】
酸化チタン研磨粒子は、平均1次粒子の粒径を約10nm〜約100nmにする。酸化チタン研磨粒子の平均粒径が約10nmよりも小さな場合に研磨率が低くてタングステン研磨が行い難く、約100nmよりも大きな場合には研磨に際して傷つきが発生する。なお、酸化チタン研磨粒子の平均1次粒子の粒径が約15nm以上約50nm未満であることが好ましい。この範囲において研磨粒子の濃度が最適化されて高い研磨率を達成しながら傷つきの発生を極力抑えることができる。
【0044】
また、酸化チタン研磨粒子は少なくとも一部がアナターゼ結晶相を有し、他の結晶相に比べてアナターゼがさらに多く含まれることが好ましい。すなわち、酸化チタン研磨粒子はアナターゼ相とルチル相を有し、アナターゼ相がルチル相よりも多量含まれることが好ましい。特に、酸化チタン研磨粒子は、アナターゼ相とルチル相の総和を100としたとき、アナターゼ相が55以上であることが好ましい。通常、酸化チタンとしては、結晶構造が異なる3つの変種が知られているが、高温において安定したルチル型、低温において安定したアナターゼ型、中間温度において安定したブルカイト型がある。ルチル型は耐化学性に優れているため熱にも強いが、硬さが約6〜約6.5であって、アナターゼ型の硬さよりも高くて製造し難い。これに対し、アナターゼ型は製造し易く、硬さが約5.5〜約6であって、ルチル型の硬さよりも低い。一方、タングステン研磨時に表面に生成されるタングステン酸化膜の硬さは約5〜約6であり、タングステンの下部に存在する絶縁膜であるシリコン酸化膜の硬さは約6〜約7である。タングステン酸化膜とシリコン酸化膜の研磨率を向上させるためには研磨粒子の硬さが高いもの、すなわち、ルチル型であることが好ましいが、研磨剤がルチル型である場合、研磨率が高すぎ、傷つきが発生する。また、シリコン酸化膜が多量除去されてエロージョンが発生する虞がある。このため、ルチル型に比べて相対的に硬さが低いが、タングステン酸化膜を研磨するのに十分な硬さを有するアナターゼ型を含むことが好ましい。特に、アナターゼ型を約55以上含む場合、傷つきの発生を顕著に低減し、シリコン酸化膜に対する研磨率を減らしてエロージョンの発生を抑えることができる。
【0045】
また、酸化チタン研磨粒子の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.2重量%超え約10重量%以下であることが好ましい。酸化チタン研磨粒子の含量が約0.2重量%以下であれば、研磨率が低すぎて研磨し難く、酸化チタン研磨粒子の含量が約10重量%を超えると、粒子の分散安定性に問題が発生し、二次粒子の粒径が過剰に大きくなってしまうという問題が発生する。酸化チタン研磨粒子の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.7重量%〜約5重量%であることが好ましく、約1.0重量%〜約2.0重量%であることがさらに好ましい。これは、約0.7重量%〜約5重量%の範囲においてタングステン研磨率に優れていて分散安定性が確保されるためであり、約1.0重量%〜約2.0重量%の範囲においてはタングステン研磨率に一層優れているためである。
【0046】
酸化促進剤は、タングステン層の表面が酸化されることを促す成分であり、硝酸鉄(Ferric nitride、Fe(NO
3)
3))、フェリシアン化カリウム(Potassium ferricyanide)、塩化鉄(Iron(III) chloride)、硫酸鉄(Iron(III) sulfate)、フッ化鉄(Iron(III) fluoride)、臭化鉄(Iron(III) bromide)、塩化銅(Copper(II) chloride)、フッ化銅(Copper(II) fluoride)及び臭化銅(Copper(II) bromide)よりなる群から選ばれた少なくとも一種を含む。ここでは、主として硝酸鉄を用いる。酸化促進剤を用いなくても、タングステンを研磨することはできるが、その研磨率が非常に低い。酸化促進剤としての硝酸鉄は超純水に溶解されて存在し、スラリーの総重量に対して約0.002重量%〜約0.1重量%で含まれることが好ましい。硝酸鉄の含量が約0.002重量%よりも低ければ、研磨率が低すぎて研磨し難く、硝酸鉄の含量が約0.1重量%よりも高ければ、スラリー及び研磨パッドが変色するという問題が発生する。硝酸鉄の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.01重量%〜約0.1重量%であることが好ましく、約0.05重量%〜約0.1重量%であることがさらに好ましい。これは、硝酸鉄の含量が約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲においてタングステン研磨率に優れており、約0.05重量%〜約0.1重量%の範囲において最適な濃度を有してディッシングがあまり発生しないためである。
【0047】
酸化剤はタングステン層の表面を酸化させる成分であり、過酸化水素水(H
2O
2)、過酸化尿素(Carbamide peroxide)、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、チオ硫酸アンモニウム(Ammonium thiosulfate)、次亜塩素酸ナトリウム(Sodium hypochlorite)、過ヨウ素酸ナトリウム(Sodium periodate)、過硫酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム(Potassium iodate)、過塩素酸カリウム(Potassium perchlorate)及び過硫酸カリウム(Potassium persulfate)よりなる群から選ばれた少なくとも一種を含む。ここでは、主として過酸化水素水を用いる。酸化剤を用いなくてもタングステンを研磨することはできるが、その研磨率が非常に低い。酸化剤としての過酸化水素水の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%以上約5.0重量%未満であることが好ましい。過酸化水素水の含量が約0.5重量%よりも低ければ、研磨率が低すぎて研磨し難く、過酸化水素水の含量が約5.0重量%以上であれば、バブルが生じ始める。過酸化水素水の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%〜約2.0重量%であることが好ましく、約1重量%〜約2重量%であることがさらに好ましい。これは、過酸化水素水の含量が約0.5重量%〜約2.0重量%の範囲においてタングステン研磨率が適切であり、約1重量%〜約2重量%の範囲において最適な濃度を有してディッシングがあまり発生しないためである。酸化剤と酸化促進剤はその作用が明確に区別されないこともあり、両方ともタングステン層の表面を酸化させるのに寄与する。
【0048】
選択比向上剤は、タングステンの研磨率とシリコン酸化膜の研磨率との割合、すなわち、研磨選択比を大きくするのに寄与する。特に、シリコン酸化膜の研磨率を下げて研磨選択比を増大させるように作用する。選択比向上剤は、ポリビニールピロリドン(poly vinyl pyrrolidone:以下、「PVP」と称する。)、ビニールピリジン(vinyl pyridine)及びビニールピロリドン(vinyl pyrrolidone)よりなる群から選ばれた少なくとも一種を含み、ここでは、主としてPVPを用いる。PVPの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.05重量%以上約3.0重量%未満であることが好ましい。PVPの含量が約0.05重量%よりも低ければ、ディッシングが発生し、PVPの含量が約3.0重量%以上であれば、タングステン研磨率が低いためCMP工程を行うことが困難になる。PVPの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.05重量%〜約1.0重量%であることが好ましく、約0.05重量%〜約0.1重量%であることがさらに好ましい。PVPの含量が約0.05重量%〜約1.0重量%の範囲においてタングステン研磨率が適切であり、約0.05重量%〜約0.1重量%の範囲において研磨選択比に非常に優れているためディッシングもほとんど発生しない。
【0049】
pH調節剤はスラリーのpHを調節するために添加され、硝酸などの酸系統を用い、微量を添加してpHを約1〜約4に調節する。
【0050】
上述したような酸化チタンを含むスラリーは、従来のスラリーとは全く異なる研磨メカニズムを示す。以下、研磨メカニズムについて詳細に説明する。
【0051】
先ず、従来よりタングステンを研磨する研磨剤としてコロイダルシリカが主として用いられてきており、コロイダルシリカを含有するスラリーを用いてタングステン層を研磨する場合、
図3の概念図に示すように、循環研磨が行われることが知られている。すなわち、基板にシリコン酸化膜110及びタングステン層120を形成し、これを研磨する場合、タングステン層120の上部にタングステン酸化膜130が形成され、その上にコロイダルシリカ研磨剤200が接触されて研磨が始まる。このとき、シリカ粒子200はマイナス電位を帯び、非晶質の球状を呈し、タングステン酸化膜130の表面に接触されてタングステン酸化膜130を研磨し(
図3のa)、最初の膜厚(H0−H1)のタングステン酸化膜130が除去されるまで研磨する(
図3のb)。次いで、露出されたタングステン層120の表面に再びタングステン酸化膜130が形成され、シリカ粒子200は再びタングステン酸化膜130を研磨し(
図3のc)、2番目の膜厚(H1−H2)のタングステン酸化膜130が除去されるまで研磨する(
図3のd)。このようにタングステン酸化膜130が形成され、これを研磨・除去する過程が循環的に繰り返し行われながら、タングステン層120が除去される(厚さの変化:H0→H1→H2)過程を経ることになる。なお、タングステン層120が除去された後、シリコン酸化膜110をさらに研磨する場合にも同様に、球状の非晶質シリカ粒子200がシリコン酸化膜110を研磨し、このとき、研磨粒子200とシリコン酸化膜110の材質がほとんど同様であるため研磨速度が速い。
【0052】
これに対し、本発明実施形態の酸化チタンを含むスラリーは全く異なる過程を経て研磨が行われる。
図4の概念図を参照すれば、基板にシリコン酸化膜110及びタングステン層120を形成し、ここにスラリーを供給し、CMP工程を行う場合、タングステン層120の上部にタングステン酸化膜130が形成され、酸化チタン研磨剤300は少なくとも一部がタングステン酸化膜130の内部に浸透してタングステン層120及びタングステン酸化膜130を研磨する。酸化チタン研磨粒子300は酸性pH領域においてプラス電位を帯び、結晶質の多面体状を呈し、スラリーに分散剤が含有されており、酸性pH領域においてタングステン酸化膜130はマイナス電位を帯びる。このため、プラス電位を帯び、結晶面を有する粒子である酸化チタン研磨粒子300がマイナス電位を帯び、相対的に軟質(約5〜6)であるタングステン酸化膜130の内部に食い込んで、一部はタングステン層120と直接的に接触し、この状態で研磨が行われ始める。研磨が行われながらタングステン酸化膜130及びタングステン層120の一部が削り取られ、タングステン酸化膜130とタングステン層120との間の界面においては再びタングステン酸化膜130が形成される。このため、研磨過程が行われる間にタングステン酸化膜130は所定の厚さ(ΔH)に保たれる。このとき、タングステン酸化膜130は略数〜数十Åの範囲に保たれる。また、酸化チタン研磨粒子300は結晶性を有して硬く、接触面積が広いため化学的な作用よりは機械的な研磨作用の方がさらに強いため、研磨速度が非常に速い。このような研磨過程はタングステン層120が除去されるまで行われ続ける。なお、タングステン層120が除去された後、シリコン酸化膜110をさらに研磨する場合、結晶質の酸化チタン研磨粒子300がシリコン酸化膜110を研磨し、このとき、酸化チタン研磨粒子300はシリコン酸化膜110よりも硬さが低いためコロイダルシリカに比べて研磨が低速で行われる。すなわち、酸化チタン研磨粒子は硬さが約5.5〜約6.5であるのに対し、シリコン酸化膜110は硬さが約6〜約7であるため、酸化チタン研磨粒子を用いてシリコン酸化膜を研磨するときに研磨能が減少される。このような研磨能の減少は、シリコン酸化膜が過剰に研磨されて発生するエロージョン現象の減少につながる。
【0053】
以下、従来のコロイダルシリカ研磨剤と酸化チタン研磨剤を用いて同じ条件のスラリーを製造し、タングステン層とシリコン酸化膜を研磨した結果について説明する。
【0054】
比較例のスラリーは約1重量%のコロイダルシリカ、約0.1重量%の硝酸鉄及び約2重量%の過酸化水素水を含むように製造され、実施例1のスラリーは約1重量%の酸化チタン、約0.1重量%の硝酸鉄及び約2重量%の過酸化水素水を含むように製造され、実施例2のスラリーは約1重量%の酸化チタン、約0.1重量%の硝酸鉄、約2重量%の過酸化水素水及び約0.05重量%のPVPを含むように製造された。
【0055】
研磨を行うための対象物としては、シリコンウェーハの上に絶縁膜であるシリコン酸化膜と窒化チタンを約1000Åずつそれぞれ蒸着した後、約6000Åの厚さにタングステンを蒸着したタングステンウェーハ及びTEOS(tetraethly orthosilicate)を原料として用い、プラズマ蒸着方法を用いて、ウェーハの上にシリコン酸化膜(以下、PETEOSと称する。)を約7000Åの厚さに蒸着したシリコン酸化膜ウェーハを用いた。研磨装備としては、G&Pテック社製のpoli−762装備を用い、研磨パッドとしては、ローム・アンド・ハース社製のIC 1000/SubaIV CMPパッドを用いた。
【0056】
研磨条件は、下記の通りである。
下降圧力:5psi、
定盤の速度:約93rpm、
スピンドルの速度:約87rpm、
スラリーの流速:約100mL/分
【0057】
なお、タングステン及びシリコン酸化膜を両方とも約60秒ずつ研磨した。下記表1に各研磨剤の条件及び研磨結果を示す。
【0059】
また、
図5は、比較例及び実施例のスラリーを用いて研磨する場合における、基板の各位置別の研磨前後のタングステン層の厚さ及び研磨率を示すグラフである。
【0060】
前記表1及び
図5に示すように、コロイダルシリカを研磨剤として用いた従来例に比べて、酸化チタンを研磨剤として用いた実施例はタングステン膜の研磨率が顕著に向上され、これに対し、シリコン酸化膜の研磨率は減少される。このため、タングステンとシリコン酸化膜の研磨選択比が増大される。選択比向上剤を追加した実施例2においてはシリコン酸化膜の研磨率がさらに減少されてタングステンとシリコン酸化膜の選択比がなお一層増大される。なお、コロイダルシリカを研磨剤として用いた従来例の場合、対象物の位置別に研磨厚さに相違があるため研磨均一度(約7%)がよくないが(
図5のa)、酸化チタンを研磨剤として用いた実施例は対象物の位置別に研磨厚さの相違が減少し、研磨均一度が向上され(
図5のb、c)、特に、選択比向上剤を追加した実施例2においては研磨均一度が約1.5%さらに向上された。
【0061】
一方、基板の上にトレンチなどのパターンが形成された場合にも、研磨工程を行って評価した。先ず、研磨対象物としてパターンが形成された基板を用意する。
図6に示すように、シリコン基板100に絶縁膜としてのシリコン酸化膜110を形成し、シリコン酸化膜110にトレンチ111を設け、その上の全面の上に窒化チタン膜121及びタングステン膜120を形成する。例えば、
図8の走査電子顕微鏡を用いて撮影した断面写真から明らかなように、シリコンウェーハの上にシリコン酸化膜としてのPETEOS膜を製造し、そこにパターン幅と長さがそれぞれ約90nm、約190〜220nmであるトレンチを形成し、トレンチを含む全面の上に窒化チタン膜を約200Åの厚さに蒸着した後、約3000Åの厚さのタングステン膜を蒸着したウェーハを用いた。研磨装備及び条件は、上述した通りである。
【0062】
パターンが形成された基板を研磨する場合、研磨が行われながらタングステン膜及びシリコン酸化膜のうちの少なくとも一方が過剰に研磨されてディッシングまたはエロージョンが発生することがある。ここで、
図7のディッシング及びエロージョン現象を説明する概念図を参照すれば、ディッシングは、研磨工程後にタングステンパターンの内側が過剰に研磨されて凹む現象、すなわち、トレンチ内のタングステン膜120が過剰に研磨されて凹む現象を意味する(
図7のD)。エロージョンは、金属領域と金属が形成されていない絶縁膜領域との間の段差発生の度合い、すなわち、初期絶縁膜(点線位置)から絶縁膜が過剰に研磨された度合いを意味する(
図7のE)。
【0063】
上述したようにして製造された比較例及び実施例1、2のスラリーを用いて
図8のトレンチパターンの上にタングステン膜が蒸着されたウェーハを研磨し、その結果を
図9〜
図12に示す。
図9は、それぞれのスラリーを用いてパターンが形成された基板を研磨した後に評価して、このときに現れたディッシングとエロージョンの量を示すグラフであり、
図10〜
図12は、比較例及び実施例1、2のスラリーを用いてパターンが形成された基板を研磨し、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。ここで、各スラリーを用いる場合、ディッシングとエロージョンの発生の度合い及びその関連性を調べるために、エロージョンが意図的に発生されるまで過研磨を行った。
【0064】
先ず、あらゆる場合、エロージョンがほとんど発生しないように弱く研磨すれば、ディッシングの発生があまりなかった。但し、コロイダルシリカ研磨剤を用いる比較例の場合には、実施例よりも顕著にディッシングが多く発生した。次いで、研磨時間を長くしてエロージョンを意図的に発生させる場合、
図9及び
図10に示すように、比較例においては、エロージョンの量が増大されるにつれて、ディッシングの量が急増する傾向にあった。これに対し、
図9、
図11及び
図12に示すように、酸化チタン研磨剤を用いた実施例の場合、エロージョンが約300Åまではディッシングの量は約60Åまでであり、それ以上エロージョンが増大されてもディッシングの量は約100Åと少なかった。特に、選択比向上剤としてのPVPを添加した実施例2の場合、エロージョンが増大してもディッシングはほとんど発生しないことを確認した。
【0065】
結果的に、コロイダルシリカ研磨剤を用いる場合よりも、酸化チタン研磨剤を用いる場合の方が研磨率やエッチング選択比の側面において優れており、且つ、パターン基板の研磨評価においても優秀性を確認した。ここに選択比向上剤としてのPVPを添加する場合に研磨率はやや下がるが、エッチング選択比に非常に優れており、且つ、パターン基板の研磨評価においてディッシングなどの欠陥がほとんど現れないことを確認することができた。
【0066】
上記のスラリーの製造過程は、通常のスラリーの製造過程とは大差ないため、ここでは簡単に説明する。先ず、スラリーを製造する容器を用意し、容器に所望の状態に制御された酸化チタン研磨粒子を所望の量だけ投入する。次いで、容器に超純水を投入して酸化チタン研磨粒子を超純水に分散する。次いで、硝酸鉄を溶解させた超純水溶液を前記容器に所望の量だけ投入して均一に混合する。次いで、硝酸などのpH調節剤を容器に投入し且つ混合して1次スラリーを完成する。過酸化水素水と選択比向上剤は別途の容器に用意し、研磨時に1次スラリーとともに研磨対象物の上に供給する。このとき、過酸化水素水及び選択比向上剤の量を調節して供給してもよい。
【0067】
以下、本発明の実施形態のスラリーの各成分の含量を変化させ、これを用いてタングステン膜及びシリコン酸化膜を研磨した場合について説明する。
【0068】
<酸化チタンの含量変化>
上述した方法を用いて酸化チタン研磨粒子の含量を変化させながらスラリーを製造し、これを用いて研磨を行い、その結果を下記表2に示す。このとき、スラリーの総重量に対して、硝酸鉄は約0.1重量%にし、且つ、過酸化水素水は約2重量%にした。研磨装備及び条件は、上述した通りである。
【0069】
下記表2に示すように、酸化チタン研磨粒子の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.2重量%超え約10重量%以下であることが好ましい。酸化チタン研磨粒子の含量が約0.2重量%以下であれば、タングステン研磨率が約249.5Å/分以下と低過ぎてタングステンが研磨し難く、タングステン研磨率が約10重量%よりも高ければ、固形の含量が増大されるため粒子の分散安定性に問題が発生し、二次粒子の粒径が過剰に大きくなるという問題が発生する。酸化チタン研磨粒子の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.7重量%〜5重量%であることが好ましく、約1.0重量%〜約2.0重量%であることがさらに好ましい。酸化チタン研磨粒子の含量が約0.7重量%〜約5重量%の範囲においてはタングステン研磨率が約2500Å/分以上と優れており、分散安定性が確保される。また、これは、酸化チタン研磨粒子の含量が約1.0重量%〜約2.0重量%の範囲においてはタングステン研磨率が約3700Å/分〜約3800Å/分に保たれて非常に優れた研磨率を示し、且つ、安定したCMP工程を行うことが可能であるためである。
【0071】
<過酸化水素水の含量変化>
上述した方法を用いて酸化剤として働く過酸化水素水の含量を変化させながらタングステン及びシリコン酸化膜の研磨を行い、その結果を下記表3に示す。このとき、スラリーの総重量に対して、酸化チタンの含量は約1.0重量%にし、硝酸鉄は約0.1重量%にした。研磨装備及び条件は、上述した通りである。
【0072】
下記表3に示すように、過酸化水素水の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%以上約5.0重量%未満であることが好ましい。過酸化水素水の含量が約0.5重量%よりも低ければ、タングステン研磨率が低過ぎてタングステンの研磨工程を行うことが困難になる。例えば、過酸化水素水が用いられない場合にもタングステン研磨を行うことは可能であるが、研磨率が約182.8Å/分と低過ぎて生産性を確保することが困難である。過酸化水素水の含量が約5.0重量%以上であれば、バブルが発生し始める。すなわち、過酸化水素水の含量が約5.0重量%である場合に研磨率は約5826.4Å/分と非常に優れているが、硝酸鉄と激しく反応してバブリングが始まることが観察された。過酸化水素水の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.5重量%〜約2.0重量%であることが好ましく、約1重量%〜約2重量%であることがさらに好ましい。これは、過酸化水素水の含量が約0.5重量%〜約2.0重量%の範囲においてタングステン研磨率が約1300Å/分〜約3700Å/分と適切であり、過酸化水素水の含量が約1重量%〜約2重量%の範囲において最適な濃度を有し、ディッシングがあまり発生しないためである。
【0074】
<硝酸鉄の含量変化>
上述した方法を用いて酸化促進剤として働く硝酸鉄の含量を変化させながらタングステン及びシリコン酸化膜の研磨を行い、その結果を下記表4に示す。このとき、スラリーの総重量に対して、酸化チタンの含量は約1.0重量%にし、過酸化水素水の含量は約2重量%にした。研磨装備及び条件は、上述した通りである。
【0075】
下記表4に示すように、硝酸鉄の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.002重量%以上約0.1重量%以下であることが好ましい。硝酸鉄の含量が約0.002重量%よりも低ければ、タングステン研磨率が低過ぎてタングステンCMP工程を行うことが困難である。例えば、硝酸鉄が用いられない場合にもタングステン研磨を行うことは可能であるが、研磨率が約163.9Å/分と低過ぎて生産性を確保することが困難である。硝酸鉄の含量が約0.1重量%よりも高ければ、研磨パッドが変色されるという問題が発生する。また、硝酸鉄の含量は、スラリーの総重量に対して、約0.01重量%〜約0.1重量%であることが好ましく、約0.05重量%〜約0.1重量%であることがさらに好ましい。これは、硝酸鉄の含量が約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲においてタングステン研磨率が約2700Å/分〜約3700Å/分と優れており、硝酸鉄の含量が約0.05重量%〜約0.1重量%の範囲において最適な濃度を有し、ディッシングがあまり発生しないためである。
【0077】
<PVPの含量変化>
上述した方法を用いて酸化促進剤として働くPVPの含量を変化させながらタングステン及びシリコン酸化膜の研磨を行い、その結果を下記表5に示す。このとき、スラリーの総重量に対して、酸化チタンの含量は約1.0重量%にし、過酸化水素水の含量は約2重量%にし、硝酸鉄の含量は約0.1重量%にした。研磨装備及び条件は、上述した通りである。
【0078】
下記表5に示すように、PVPの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.05重量%以上約3.0重量%未満であることが好ましい。PVPの含量が約0.05重量%よりも低ければ、ディッシングが多く発生し、PVPの含量が約3.0重量%以上であれば、タングステン研磨率が約153Å/分と非常に低くてCMP工程を行うことが困難になる。PVPの含量は、スラリーの総重量に対して、約0.05重量%〜約1.0重量%であることが好ましく、約0.05重量%〜約0.1重量%であることがさらに好ましい。これは、PVPの含量が約0.05重量%〜約1.0重量%の範囲においてタングステン研磨率が約1400Å/分〜約2800Å/分と適切であり、研磨選択比に優れており、PVPの含量が約0.05重量%〜約0.1重量%の範囲において研磨選択比が約500以上と非常に優れており、ディッシングもほとんど発生しないためである。
【0080】
以上、本発明について上述した実施形態及び添付図面に基づいて説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲によって限定される。よって、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲の技術的思想を逸脱しない範囲内において本発明が種々に変形及び修正可能であるということが分かる。
【符号の説明】
【0081】
100:基板
110:シリコン酸化膜
120:タングステン層
300:研磨粒子