(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030147
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/421 20060101AFI20161114BHJP
A61K 31/4422 20060101ALI20161114BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20161114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
A61K31/421
A61K31/4422
A61P3/06
A61P43/00 121
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-544661(P2014-544661)
(86)(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公表番号】特表2015-500232(P2015-500232A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】KR2012010175
(87)【国際公開番号】WO2013081373
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0126431
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンホ
(72)【発明者】
【氏名】リム,テクジュ
(72)【発明者】
【氏名】コウ,ウンジ
【審査官】
伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−505120(JP,A)
【文献】
特表2005−538977(JP,A)
【文献】
特表2002−533410(JP,A)
【文献】
J. Clin. Pharmacol., 2011 Mar, Vol.51, No.3, p.436-439
【文献】
Eur. Heart J., 2010, Vol.31, No.2, p.149-164
【文献】
Int. J. Cardiol., 1997, Vol.62, Suppl 2, p.S119-S124
【文献】
J. Cell Mol. Med., 2001, Vol.5 No.2, p.153-162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/421
A61K 31/4422
A61P 3/06
A61P 43/00
CAplus(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として下記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩と
アムロジピンまたはその塩との組み合わせを含み、該組み合わせが高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の予防または治療の相乗効果を示す、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記組成物が経口投与のための剤形に製剤化される請求項1の医薬組成物。
【請求項3】
前記経口投与のための剤形が、10〜300mg/日の投与に適した量の前記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記経口投与のための剤形が、5〜320mg/日の投与に適した量の前記アムロジピンまたはその塩を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記高トリグリセリド血症に関連する疾患が複合型高脂血症、アテローム性動脈硬化症または膵炎である請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、
アムロジピンまたはその塩を組み合わせた下記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される
塩の使用であって、該組み合わせが高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の予防または治療の相乗効果を示す使用。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、有効成分として(4S,5R)-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-({2-[4-フルオロ-2-メトキシ-5-(プロパン-2-イル)フェニル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}メチル)-4-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを含む高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高脂血症は、血中の脂質および/またはリポタンパク質のいずれかまたはすべてのレベルが異常に上昇している状態を言う。高脂血症は、増加する脂質の種類によって、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、および複合型高脂血症に分類することができる。トリグリセリドは、アテローム性動脈硬化症の独立した危険因子の1つとして知られている。高トリグリセリド血症とアテローム性動脈硬化症などの心血管疾患との関連は未だ明らかにはなっていないが、高トリグリセリド血症によりアテローム性動脈硬化症のリスクが増すことが知られている(Cullen P. Evidence that triglycerides are an independent coronary heart disease risk factor. Am J Cardiol 2000; 86:943-9、Le NA, Walter MF. The role of hypertriglyceridemia in atherosclerosis. Curr Atheroscler Rep 2007; 9:110-5、Stalenhoef AF, de Graaf J. Association of fasting and nonfasting serum triglycerides with cardiovascular disease and the role of remnant-like lipoproteins and small dense LDL. Curr Opin Lipidol 2008; 19:355-61)。また、膵炎は、トリグリセリドレベルが1000mg/dLまたは12mmol/Lを超える人々に発生することが報告されている。
【0003】
一方、下記式(1)の化合物は、化学名が(4S,5R)-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-({2-[4-フルオロ-2-メトキシ-5-(プロパン-2-イル)フェニル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}メチル)-4-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オンであり、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)を選択的に阻害する活性を有する。該化合物は、アテローム性動脈硬化症を予防または治療するための医薬として開発中である(国際公開2006/014357号パンフレット)。
【0004】
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患に対して有効な治療効果を提供することができる薬物または薬物の組み合わせを開発するために様々な研究を行った。驚くべきことに、本発明者らは、式(1)の化合物とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを同時に投与すると、式(1)の化合物の単独投与に比べて血中トリグリセリド濃度を顕著に抑制することができ、また血中HDLコレステロールを増加させることができることを見出した。
【0006】
したがって、本発明は、有効成分として式(1)の化合物とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを含む、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、有効成分として下記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを含む、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物が提供される。
【化2】
【0008】
本発明の医薬組成物において、前記カルシウムチャネル遮断薬は、アムロジピンまたはその塩であってもよい。前記フィブラートは、フェノフィブラートまたはその塩であってもよい。
【0009】
本発明の医薬組成物は、経口投与のための剤形に製剤化されてもよい。該経口投与のための剤形は、10〜300mg/日の投与に適した量の前記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/または5〜320mg/日の投与に適した量の前記カルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
式(1)の化合物と、アムロジピン、フェノフィブラートなどの薬物とを同時に投与すると、式(1)の化合物の単独投与と比べて血中トリグリセリド濃度を顕著に抑制できることが、本発明により新たに明らかになった。したがって、本発明の医薬組成物は、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の予防または治療に有効に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、有効成分として下記式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを含む、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
【化3】
【0012】
本明細書中、「高トリグリセリド血症に関連する疾患」とは、血中トリグリセリドレベルの異常な上昇に起因する疾患を言う。高トリグリセリド血症に関連する疾患は、複合型高脂血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎を含むが、これらに限定されるものではない。高トリグリセリド血症に関連する疾患の好ましい例は複合型高脂血症および及びアテローム性動脈硬化症を含み、より好ましい例は複合型高脂血症を含む。
【0013】
式(1)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、国際公開第2006/014357号パンフレットの開示に従って製造してもよい。国際公開第2006/014357号パンフレットは、参考文献として本明細書に組み込まれる。
【0014】
カルシウムチャネル遮断薬(CCB)は、アムロジピンまたはその塩(例えばベシル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、カムシル酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、オロチン酸塩など)を含む。
【0015】
「フィブラート」とは、米国特許第2008/0286354号において定義されている通り、2-フェノキシ-2-メチルプロパン酸誘導体またはその薬学的に許容される塩を言う。米国特許第2008/0286354号は、参考文献として本明細書に組み込まれる。フィブラートとしては、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、ビニフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、ピリフィブラート、エトフィブラートなどの薬物またはその薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。フィブラートは、フェノフィブラートまたはその薬学的に許容される塩であることが好ましい。
【0016】
本発明の医薬組成物は、経口用または非経口用の剤形に製剤化することができ、経口投与用の剤形に製剤化することが好ましい。また、本発明の医薬組成物は、式(1)の化合物とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを1つの単位剤形に製剤化することによって得られた形態であってもよい。あるいは、本発明の医薬組成物は、式(1)の化合物およびカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートを別々の剤形に製剤化した後、これらの製剤を1つの包装単位に包装することによって得られた形態であってもよい。
【0017】
単位剤形を1つまたは2つ有する本発明の経口投与用医薬組成物は、例えば希釈剤、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤および/または香味剤などの薬学的に許容される担体を含むことができ、慣用の方法に従って錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤またはシロップ剤などに製剤化することができる。経口投与用錠剤の場合、乳糖、トウモロコシデンプンなどの担体およびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤が通常使用される。経口投与用カプセル剤の場合には、乳糖および/または乾燥トウモロコシデンプンが希釈剤として使用できる。経口投与に水性懸濁剤が必要とされる場合、有効成分に乳化剤および/または懸濁化剤を配合することができる。所望により、特定の甘味剤および/または香味剤を使用してもよい。単位剤形を1つまたは2つ有する非経口投与(例えば筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内投与)用医薬組成物の場合、通常は有効成分の滅菌溶液を調製し、溶液のpHを適切に調節し、等張化剤および/または緩衝剤を使用して緩衝する。
【0018】
本発明の医薬組成物に含まれる式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日当たり約10〜300mgの範囲にある治療有効量で患者に投与してもよい。また、前記カルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートは、1日当たり、約5〜320mgの範囲にある治療有効量で患者に投与してもよい。当然のことながら、前記投与量は、患者の年齢、体重、感受性、症状などに応じて変更してもよい。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与のための剤形に製剤化されてもよい。該経口投与のための剤形は、10〜300mg/日の投与に適した量の式(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/または5〜320mg/日の投与に適した量の前記カルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートを含んでいてもよい。当然のことながら、前記アンジオテンシンII受容体遮断薬の1日当たりの投与量は、その種類によって異なる。
【0019】
本発明はまた、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、式(1)の化合物(すなわち、(4S,5R)-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-({2-[4-フルオロ-2-メトキシ-5-(プロパン-2-イル)フェニル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}メチル)-4-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オン)またはその薬学的に許容される塩とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとを含む有効成分の使用を提供する。本発明の使用において、高トリグリセリド血症に関連する疾患は、複合型高脂血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎を含むが、これらに限定されるものではない。高トリグリセリド血症に関連する疾患の好ましい例は複合型高脂血症および及びアテローム性動脈硬化症を含み、より好ましい例は複合型高脂血症を含む。本発明の使用において、前記カルシウムチャネル遮断薬はアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩であることが好ましく、前記フィブラートはフェノフィブラートまたはその薬学的に許容される塩であることが好ましい。
【0020】
本発明は、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の治療を必要とする患者に式(1)の化合物(すなわち、(4S,5R)-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-({2-[4-フルオロ-2-メトキシ-5-(プロパン-2-イル)フェニル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル}メチル)-4-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オン)またはその薬学的に許容される塩の治療有効量とカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートの治療有効量とを投与することを含む、高脂血症の治療方法を含む。本発明の高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の治療方法において、高トリグリセリド血症に関連する疾患は、複合型高脂血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎を含むが、これらに限定されるものではない。高トリグリセリド血症に関連する疾患の好ましい例は複合型高脂血症および及びアテローム性動脈硬化症を含み、より好ましい例は複合型高脂血症を含む。本発明の高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の治療方法において、前記カルシウムチャネル遮断薬はアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩であることが好ましく、前記フィブラートはフェノフィブラートまたはその薬学的に許容される塩であることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を参照しつつ、本発明についてさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0022】
実施例1:高コレステロール血症が誘発された動物におけるトリグリセリド抑制活性の評価
(1)試験方法
雄性ニュージーランド白色家兎を試験動物として使用した。G1群の動物(陰性コントロール群、n=4)を除くすべての動物に対し、放射線照射により滅菌した高コレステロール血症飼料、すなわちDYET#620007(1%コレステロール含有固形飼料Purina #5321、 Dyets,Inc., Bethlehem, PA 18017)をCentral Lab. Animal Inc.から購入して給餌した。高コレステロール血症を誘発するために、該飼料を試験動物に8週間以上給餌した。試験動物から血液サンプルを採取した後、血清生化学的分析を実施した。総コレステロールレベルが約870mg/dLである動物をコレステロール血症が誘発された動物として選択した。試験物質は、0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムおよび1%のトウィーン80を含む生理食塩水に溶解し、4週間にわたって毎日1回、ラテックスカテーテルを備えた経口注射器を用いて胃内に直接投与した。試験群は、下記表1に示す通りである。
【0023】
【表1】
【0024】
血液サンプルは、高コレステロール血症飼料の給餌を開始した日(すなわち給餌前)と、試験物質の投与開始から2週間後および4週間後(採血前12〜16時間絶食)に、動物の頸静脈から採取した。
【0025】
(2)結果
前記のようにして高コレステロール血症が誘発された動物におけるトリグリセリド濃度を以下の表2に示す。表2の値は、各群のトリグリセリド濃度の平均値(mg/dL)を示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2に示すように、式(1)の化合物および/またはアムロジピンまたはフェノフィブラートを4週間繰り返し経口投与した場合、式(1)の化合物の単独投与群(G3、投与開始後4週356.7mg/dL)と比べて、同時投与群(G4およびG5)は、著しく高いトリグリセリド抑制活性を示した。したがって、式(1)の化合物と、アムロジピンまたはフェノフィブラートなどのカルシウムチャネル遮断薬またはフィブラートとの組み合わせは、高トリグリセリド血症または高トリグリセリド血症に関連する疾患の予防または治療に有効に適用できることが期待される。
【0028】
実施例2:高トリグリセリド血症および高コレステロール血症が誘発された動物におけるトリグリセリド抑制活性の評価
(1)試験方法
雄性ニュージーランド白色家兎を試験動物として使用した。G1群の動物(陰性コントロール群)を除くすべての動物に対し、放射線照射により滅菌した高トリグリセリド血症および高コレステロール血症の飼料、すなわちDYET#621082(0.5%コレステロール、14%ココナツオイル、2%マルトースデキストリン含有固形飼料Purina #5321、Dyets、Inc.、Bethlehem、PA 18017)をSaeronbio Inc.から購入して給餌した。高トリグリセリド血症および高コレステロール血症を誘発するために、該飼料を試験動物に4週間以上給餌した。試験動物から血液サンプルを採取した後、血清生化学的分析を実施した。無処理群と比較して総コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルが有意に変化した動物を選択した。選択された動物を、総コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルに基づいて4群に分けた。このとき、いずれの群においても総コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルの平均値が実質的に同等となるようにした。試験物質は、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび1%トウィーン80を含む生理食塩水に溶解し、4週間にわたって毎日1回、ラテックスカテーテルを備えた経口注射器を用いて胃内に直接投与した。試験群は、下記表3に示す通りである。
【0029】
【表3】
【0030】
血液サンプルは、試験物質の投与を開始した日(すなわち群分け時、0週)と、試験物質の投与開始から4週間後(採血前12〜16時間絶食)に、動物の頸静脈から採取した(n=4〜7)。
【0031】
(2)結果
前記のようにして高トリグリセリド血症および高コレステロール血症が誘発された動物におけるトリグリセリド濃度を以下の表4に示す。表4の値は、各群のトリグリセリド濃度の平均値(mg/dL)を示す。
【0032】
【表4】
【0033】
表4に示すように、式(1)の化合物および/またはアムロジピンを4週間繰り返し経口投与した場合、式(1)の化合物の単独投与群(G3)およびアムロジピンの単独投与群(G4)は、G2群と比べて、血中トリグリセリドレベルにおいてそれぞれ10.2%および17.9%の抑制を示した。しかし、同時投与群(G5)は、G2群と比べて、トリグリセリドレベルにおいて33.1%の抑制を示した。G5のトリグリセリド抑制活性(すなわち33.1%の抑制)は、G3およびG4のトリグリセリド抑制活性の合計(すなわち28.1%の抑制)よりも強かった。したがって、式(1)の化合物とアムロジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬との組み合わせは、トリグリセリドレベルの抑制において、強い相乗効果をもたらすことが認められる。