特許第6030151号(P6030151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030151エステル交換による2−オクチルアクリレートの生成のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030151
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】エステル交換による2−オクチルアクリレートの生成のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20161114BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20161114BHJP
   C07C 67/54 20060101ALI20161114BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   C07C67/03
   C07C69/54 Z
   C07C67/54
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-552674(P2014-552674)
(86)(22)【出願日】2013年1月14日
(65)【公表番号】特表2015-508053(P2015-508053A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】FR2013050079
(87)【国際公開番号】WO2013110877
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】1250606
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リオンデル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】グレール,コラリー
(72)【発明者】
【氏名】エシュ,マルク
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−513241(JP,A)
【文献】 特開平11−222461(JP,A)
【文献】 特開平04−066555(JP,A)
【文献】 特表2011−529034(JP,A)
【文献】 特表2006−503795(JP,A)
【文献】 特開2003−261504(JP,A)
【文献】 特表2004−529202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/03
C07C 67/54
C07C 69/54
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換触媒としてのアルキルチタネートおよび少なくとも1つの重合阻害剤の存在下における軽質アルコールアクリレートと2−オクタノールとの間でのエステル交換反応による、2−オクチルアクリレートの連続生成のための方法であって、
軽質アルコールアクリレートおよびエステル交換反応により発生した軽質アルコールからなる共沸混合物が反応中に継続的に取り出され、反応混合物が、一方では純粋な2−オクチルアクリレートを得、他方では再利用されることを意図された未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレート、さらには再利用されることを意図された触媒を得るために、2つの蒸留カラムを含み、フィルム蒸発器を含まない精製処理を施され、方法は
−触媒が、2−オクタノール中に溶解したエチルチタネートおよび2−オクチルチタネートから選択され、
−軽質生成物としての未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレートならびに重質生成物としての触媒、1つまたは複数の重合阻害剤、さらには重質反応生成物を有する、所望の2−オクチルアクリレートを含む粗製反応混合物が、減圧下の第1の蒸留カラム(B)に送られ、蒸留が、
○最上部において、ごくわずかな2−オクチルアクリレートを有する、未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレートから本質的に構成される流れを得ること、ならびに
○底部において、2−オクチルアクリレート、触媒、1つまたは複数の重合阻害剤および重質反応生成物および微量の軽質化合物を含む流れを得ること
を可能にする、第1のカラム(B)内で実施され、次いで、
−第1の蒸留カラム(B)からの底部流が、
○最上部において、所望の純粋な2−オクチルアクリレートを得ること、ならびに
○底部において、触媒、1つまたは複数の重合阻害剤および重質反応生成物および2−オクチルアクリレートを得ること
を可能にする蒸留が実施される、減圧下の第2の蒸留カラム(C)に送られ、
−第2の蒸留カラム(C)からの底部流が、少なくとも一部が反応に再利用されること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
触媒が、2−オクチルチタネートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、エステル交換反応の原料である2−オクタノールの1モル当たり5×10−4molから5×10−2molまでの比率において使用されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
軽質アルコールアクリレートが、エチルアクリレートであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
軽質アルコールアクリレート/エステル交換反応の原料である2−オクタノールのモル比が、1から3までの範囲であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エステル交換反応が、500mmHg(0.67×10Pa)から大気圧(10Pa)の間の圧力および90℃から130℃までの範囲の温度において実施されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
軽質アルコールアクリレートが、再生可能な起源のエチルアクリレートであることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換による連続プロセスに従った2−オクチルアクリレートの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
軽質アルコールのアクリレート(軽質アクリレートとして知られている)と重質アルコールとの間でのエステル交換反応を実施することにより、アクリル酸エステルを生成することが知られている。
【0003】
この反応は、式(I)に記載の軽質アルコールの発生を伴う平衡触媒反応である。
CH=CH−COOR+R−OH⇔CH=CH−COOR+R−OH
【0004】
アクリル酸エステルの生成の方向に平衡をシフトするために、反応中に生成された軽質アルコールを除去することが必要である。
【0005】
この反応は一般に、数多くの応用分野において使用され得るポリマーを製造するためのモノマーとしてのその最終的な使用に関した技術的要件を満たしている高純度を有するアクリル酸エステルを得るという目的のために除去する必要がある、不純物を生成する副反応を伴う。
【0006】
さらに、明白な経済的理由から、粗製反応混合物中、特に未反応の反応物質および触媒中に存在する経済的にグレードを上げることができる生成物は、可能な限りプロセス内部で再利用される。
【0007】
これらの目的のために、蒸留、抽出および/または沈降による分離の組合せを含む分離/精製プロセスが一般に実施されるが、分離/精製プロセスは同時に、特に共沸混合物の存在の結果として、実施するには比較的複雑であり、エネルギー的に高価である。
【0008】
アクリル酸エステルを生成するための様々なエステル交換プロセスは、従来技術においてすでに記述されている。
【0009】
例えば、文献US7268251を挙げることができるが、エステル交換からの反応流出液が下記の方法により処理される:
・所望のアクリル酸エステルの大部分が最初に分離され、続いて、使用された触媒から蒸留により単離され(触媒の分離)、
・または、所望のアクリル酸エステルの大部分が最初に、使用された触媒から蒸留により単離され(触媒の分離)、続いて、アクリル酸エステルの大部分が分離され、
・続いて、所望のアクリル酸エステルの沸点より低い沸点を有する化合物が、得られた混合物の蒸留により分離され(低沸点物質の分離)、続いて、アクリル酸エステルが蒸留される(純粋な状態における蒸留)。
【0010】
このプロセスは、触媒、一般にチタンアルコキシドを分離するためにエバポレーターを備える、少なくとも4つの蒸留または精留カラムの使用を必要とする。
【0011】
文献US7268251において記述されたプロセスが、アルキルアクリレートおよびこの出発アクリレートのアルキル鎖に対して少なくとも炭素1個分だけより長い鎖長を示すアルコールから出発するエステル交換による、アルキルアクリレートの製造に関するとしても、このプロセスは、カスケード状の2つの反応器内でのジメチルアミノエタノールおよびメチルアクリレートまたはエチルアクリレートからのジメチルアミノエチルアクリレートの製造を用いてしか説明されていない。
【0012】
文献US7268251において記述されたプロセスは、高純度および満足のいく生産量の生成物を得るために連続した4つの蒸留/精留成分の動作条件最適化の結果として、工業的規模で実施するには複雑であることが判明している。
【0013】
文献US6977310は、エステル交換触媒としてのテトラアルキルチタネートの存在下におけるメチル(メタ)アクリレートおよびC−C12アルコールからの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの連続製造のためのプロセスを記述している。このプロセスは、易揮発性化合物(未反応の反応物質)を分離する減圧下での蒸留を反応混合物に施し、次いで、生成されたエステル、触媒、重合阻害剤および高沸点副生成物を含む得られた画分がカラム底部において抜け出ていき、生成された高純度のエステルを最上部において回収することを可能にする真空蒸留段階に送られるものである。この真空蒸留段階は、生成されたエステル中の高沸点生成物の完全な除去のための、蒸留カラムと組み合わさったフィルムエバポレーターを特に備える。
【0014】
このプロセスは、それぞれブタノールおよびイソブタノールからのブチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートの製造を用いて説明されている。
【0015】
文献US6977310において記述されたプロセスは、触媒のあらゆる分解およびアルコール反応物質のエーテルのあらゆる形成を予防するために、フィルムエバポレーターを用いる。このプロセスは、さらに、触媒のリサイクルを提供しない。
【0016】
驚くべきことに、2−オクチルアクリレートの場合、フィルムエバポレーターではなく従来のボイラーを用いた触媒の除去は、エーテルまたはオクタン等の不純物の形成をもたらさないことが見出された。
【0017】
本出願人は上述したプロセスの様々な問題を解決することを模索し、未反応の反応物質および触媒等の経済的にグレードを上げることができる生成物をリサイクルすること、およびそれによって工業スケールにおける製造に適合する生産量を示すことを包含する一方で、非常に高い純度の2−オクチルアクリレートを高収率によって生成するための、単純化された製造プロセスをこうして発見した。
【0018】
提供される解決策は、エステル交換触媒として2−オクタノール中に溶解したエチルチタネートまたは2−オクチルチタネートを使用すること、および2つの蒸留カラムのみ備える精製トレイン(purification train)を用いるものである。
【0019】
本発明は、植物体に由来するアルコールである2−オクタノールの使用に関した再生可能な起源の炭素を含む、アクリル酸エステルを生成することもさらに可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第7268251号明細書
【特許文献2】米国特許第6977310号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明の主題は、エステル交換触媒としてのアルキルチタネートおよび少なくとも1つの重合阻害剤の存在下における軽質アルコールアクリレートと2−オクタノールとの間でのエステル交換反応による、2−オクチルアクリレートの連続生成のための方法であって、軽質アルコールアクリレートおよびエステル交換反応により発生した軽質アルコールからなる共沸混合物が反応中に連続的に取り出され、反応混合物が、一方では純粋な2−オクチルアクリレートを得、他方では再利用されることを意図された未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレート化合物、さらには再利用されることを意図された触媒を得るために、2つの蒸留カラムを備える精製処理を施され、前記方法は
−触媒が、2−オクタノール中に溶解したエチルチタネートおよび2−オクチルチタネートから選択され、
−軽質生成物としての未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレートおよび重質生成物としての触媒、1つまたは複数の重合阻害剤、さらには重質反応生成物を有する、所望の2−オクチルアクリレートを含む粗製反応混合物が、減圧下の第1の蒸留カラム(B)に送られ、蒸留が、
○最上部において、ごくわずかな2−オクチルアクリレートを有する、未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレートから本質的に構成される流れを得ること、ならびに
○底部において、2−オクチルアクリレート、触媒、1つまたは複数の重合阻害剤および重質反応生成物および微量の軽質化合物を含む流れを得ること
を可能にする、前記第1のカラム(B)内で実施され、次いで、
−第1の蒸留カラム(B)からの底部流が、
○最上部において、所望の純粋な2−オクチルアクリレートを得ること、ならびに
○底部において、触媒、1つまたは複数の重合阻害剤および重質反応生成物および2−オクチルアクリレートを得ること
を可能にする蒸留が実施される、減圧下の第2の蒸留カラム(C)に送られ、
−第2の蒸留カラム(C)からの底部流が、少なくとも一部が反応に再利用される
ことを特徴とする、方法である。
【0022】
本発明は、添付の1つの図を参照してより詳細に記述され、以下に続く説明では言外の制限なく示される。そしてここで、本発明による方法を実施することを可能にするプラントを図示している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】2つの蒸留カラムを備えたプラントを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的の1つは、天然および再生可能な起源の出発材料すなわち生体より供給される出発材料を使用することである。
【0025】
本発明による方法において使用される2−オクタノールは、再生可能な起源のアルコールであり、特に、ヒマシ油に由来するリシノール酸のアルカリ処理により得ることができる。
【0026】
本発明による方法において出発材料として用いられる軽質アルコールアクリレートは、軽質アルコール、一般にメタノールまたはエタノールを用いた、本質的にプロピレンから工業的に生成されたアクリル酸の直接エステル化により得られる。
【0027】
再生可能な起源の2−オクタノールの使用とは独立に、本発明は、再生可能な起源のアクリル酸に由来する軽質アルコールアクリレートの使用にまで及ぶが、それはそのようにして得られるまたは2−ヒドロキシ−プロピオン酸(乳酸)もしくは3−ヒドロキシプロピオン酸およびそれらのエステルの脱水により得られるアクロレインの気相酸化段階が後続する、アクロレインを与えるための、グリセロールの脱水の第1段階を含むプロセスに従って、特にグリセロールから得ることができる。
【0028】
本発明はまた、バイオエタノール等の生体より供給されるアルコールに由来する、軽質アルコールアクリレートの使用にまでも及ぶ。
【0029】
一般に、エステル交換反応は、1から3までの範囲であり得、好ましくは1.3から1.8の間の範囲であり得る軽質アルコールアクリレート/2−オクタノールのモル比を用いて、外部交換器により加熱された、蒸留カラムが上に載っている撹拌反応器(A)内で実施される。
【0030】
軽質アルコールアクリレートとして、メチルアクリレート、エチルアクリレートまたはブチルアクリレートが使用され、好ましくはエチルアクリレートが使用される。
【0031】
エステル交換触媒は、2−オクタノール中に溶解したエチルチタネートであり、例えばエチルチタネートの2−オクタノール中90%溶液であり、または、100℃におけるエチルチタネートと2−オクタノールとの反応により前もって得られた2−オクチルチタネートであり、好ましくは2−オクチルチタネートである。
【0032】
触媒は、2−オクタノールの1モル当たり5×10−4molから5×10−2molまでの比率において使用され、好ましくは、2−オクタノールの1モル当たり10−3molから10−2molまでの比率において使用される。
【0033】
エステル交換反応は一般に、500mmHg(0.67×10Pa)から大気圧の間の圧力および90℃から130℃までの範囲の温度、好ましくは100℃から120℃までの範囲の温度において、反応器(A)内で実施される。
【0034】
反応は、粗製反応混合物に対して1000ppmから5000ppmまでの比率において反応器内に導入される、1つ以上の重合阻害剤の存在下で実施される。使用され得る重合阻害剤として、例えば、単独のフェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジ(tert−ブチル)−パラ−クレゾール(BHT)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)、ジ(tert−ブチル)カテコールもしくは4−ヒドロキシ−TEMPO(4−OH−TEMPO)等のTEMPO誘導体またはすべての比率におけるそれらの混合物を挙げることができる。重合阻害剤のさらなる添加は一般に、後続の精製処理において実施され、特に蒸留カラムのそれぞれの中で実施される。
【0035】
エステル交換反応により形成された軽質アルコールは、蒸留反応器に載っているカラム内に、軽質アルコールアクリレートとの共沸混合物の形態において、蒸留により連続的に取り込まれる。この混合物は、有利には、軽質アクリレートの合成のための装置に再利用される。
【0036】
一般に3時間から6時間の間の反応器内での滞留時間を伴う反応後、粗製反応混合物(5)は、軽質生成物としての未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレートならびに重質生成物としての触媒、1つまたは複数の重合阻害剤、さらには重質反応副生成物を有する、所望の2−オクチルアクリレートを含む。
【0037】
反応混合物は、一方では純粋な2−オクチルアクリレートを得、他方では再利用されることを意図された未反応の2−オクタノールおよび軽質アルコールアクリレート化合物、さらには再利用されることを意図された触媒を得るために、2つの蒸留カラム(B)および(C)を含む精製処理を施される。
【0038】
第1の蒸留カラム(B)は一般に、20mmHgから50mmHg(0.027×10Paから0.067×10Pa)までの範囲の圧力下、120℃から150℃までの範囲の底部温度において動作する。
【0039】
カラム(B)からの最上部流(7)は、ごくわずかな2−オクチルアクリレート生成物を有する、未反応の軽質生成物(軽質アルコールアクリレートおよび2−オクタノール)から主に構成される。この流れ(7)は、有利には、反応器(A)内でのエステル交換反応に再利用することができる。
【0040】
カラム(B)からの底部流(6)は、触媒、重合阻害剤および重質副生成物を有する、2−オクチルアクリレートから主に構成され、残留している微量の軽質化合物を含み得る。
【0041】
この流れ(6)は、一般に20mmHgから50mmHg(0.027×10Paから0.067×10Pa)までの圧力および120℃から150℃までの範囲の温度の下で動作する、第2のカラム(C)内で蒸留を施される。
【0042】
カラム(C)は、精製された2−オクチルアクリレートを最上部(8)において回収することを可能にする。
【0043】
カラム(C)の底部において、触媒、重質副生成物、重合阻害剤および2−オクチルアクリレートが、流れ(9)の中に分離される。
【0044】
この流れ(9)の一部(10)は、有利には反応器(A)内での反応に再利用され、残り部分(流れ11)は、廃棄のために送られる。
【0045】
カラム(C)の最上部において回収された純粋な2−オクチルアクリレート(8)は、99.3%超の純度を示し、実際には99.6%以上の純度さえ示す。
【0046】
下記の例は本発明を説明しているが、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0047】
これらの例において、パーセンテージは、特に記載がない限り重量により示されており、下記の略語が使用されている。
EA:エチルアクリレート
2OCTA:2−オクチルアクリレート
PTZ:フェノチアジン
【0048】
[実施例1]
(本発明による)
エチルアクリレートおよび2−オクタノール反応物質を含む混合物、触媒としての2−オクタノール中の90%溶液としてのエチルチタネートを、阻害剤としてのPTZと一緒に、53.8/45.6/0.6の重量による比率において、外部交換器により加熱された、12個の理論段を有する蒸留用パックドカラムが上に載っている完全撹拌反応器Aに仕込む。
反応器は、空気によってバブリングしながら加熱し、温度が500mmHg(0.67×10Pa)下で115℃に到達したらすぐに、2500ppmのPTZによって安定化されたEA(3)、2−オクタノール(1)および2−オクタノール中に溶解したエチルチタネートの混合物(90%混合物)(2)を、53.8/45.6/0.6の重量による比率において、継続的に導入する。
カラム最上部において、35/65の重量による組成を有するEA/エタノール共沸混合物(4)が、継続的に取り出される。この混合物(4)は、EAを製造するためのプラントに直接再利用される。
粗製反応生成物(5)は、形成された2OCTA、未反応のEA、未反応の2−オクタノール、ならびに、重合阻害剤および重質誘導体を有する触媒を含む混合物を、73/20.1/6.3/0.6の重量による比率において含む。粗製反応生成物(5)は、減圧下で動作しており外部交換器により加熱された、15個の理論段を有する第1の蒸留カラムBに継続的に送られる。カラムB最上部において、EA中の2500ppmのPTZを含む混合物が導入される。
カラムBは、最上部において、67/21/13の重量による組成を有する、ごくわずかな2OCTAを有する未反応の反応物質、EAおよび2−オクタノールを含む混合物(7)を分離し、反応段階に送る。
カラムBの底部において、2OCTAに富んでおり重合阻害剤、触媒および重質誘導体を含む混合物(6)が回収され、この混合物は、重量による下記の組成を有する:
−2OCTA:97.8%
−EA:100ppm
−2−オクタノール:600ppm
−重質誘導体+阻害剤+触媒:2.1%。
この混合物(6)は、第2の蒸留カラムCに送られる。カラムCの最上部において、2OCTA中の2500ppmのHQMEを含む混合物が導入される。カラムCは、最上部において、精製された2OCTA(8)を分離し、底部において、触媒、重質誘導体、重合阻害剤および2−オクチルアクリレートを主に含む流れ(9)を分離する。この流れ(9)は、反応器Aに大いに(90重量%程度)再利用され(流れ10)、残り部分(11)は、廃棄のために送られる。
2−オクチルアクリレートは、下記の純度を有する:
−2OCTA:99.5%
−EA:500ppm
−2−オクタノール:1500ppm
【0049】
[実施例2]
(比較用)
例1におけるのと同じ合成を実施したが、エチルチタネートの代替としてブチルチタネートを触媒として使用した。
この場合、カラムBの最上部において蒸留された流れ(7)は、ごくわずかな2OCTAを有する未反応の反応物質に加えて、触媒とEAとの反応を起源とする15%のブチルアクリレートも含む。
反応段階に再利用されることを意図されたこの流れ(7)は、プラント内でのブチルアクリレートの経時的な蓄積および精製された2OCTAの汚染のリスクを限定するために、ブチルアクリレートを除去するためのさらなるカラムにおける蒸留による予備的精製を必要とした。
【0050】
[実施例3]
(比較用)
例1におけるのと同じ合成を実施したが、エチルチタネートの代替として2−エチルヘキシルチタネートを触媒として使用した。
この場合、97.3%の純度を有する2OCTA(9)が、精製された生成物中の2%の2−エチルヘキシルアクリレートの存在のため、カラムCの最上部において得られた。
このようにして得られた2−オクチルアクリレートは、99.5%の純度を有する2OCTAと同じ性能を感圧性接着剤中に提供しない。
図1