特許第6030152号(P6030152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030152
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両の運転席を設置するための構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B62D25/08 J
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-555953(P2014-555953)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公表番号】特表2015-519238(P2015-519238A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2012073503
(87)【国際公開番号】WO2013117261
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】1251193
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ラーボール, フィリップ
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−178791(JP,A)
【文献】 特開2002−059867(JP,A)
【文献】 特開2004−114774(JP,A)
【文献】 特開2013−216143(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0001552(US,A1)
【文献】 欧州特許第01604885(EP,B1)
【文献】 特開2007−331450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コックピットモジュール(10)を車体上に設置するための設置構造であって、
前記構造は:
−前記コックピットモジュール(10)に固定された少なくとも1つの設置要素(18、19)、
−前記設置要素(18、19)と協働するよう位置決めされた少なくとも1つの車体側部要素(8、9)、
−保持位置へと前記車体に対して前記コックピットモジュール(10)を変位させるよう案内するように構成された少なくとも1つのガイド機構(20)であって、前記車体側部要素(8、9)又は前記設置要素(18、19)から選択される一方の要素に配置されたガイドピン(22)と、前記設置要素(18、19)又は前記車体側部要素(8、9)のうちの他方の要素上に配置された対応するガイドチャネル(24)とを備えるガイド機構(20)、
−前記設置要素(18、19)の各々に関連する少なくとも1つのガイド機構(20)であって、前記車体の縦方向に平行に直線移動中の前記コックピットモジュールを保持位置へと案内するために、前記ガイド機構(20)の各々の、前記ガイドチャネル(24)が、直線状であり、前記コックピットモジュール(10)の設置位置において前記車体の縦方向に平行に延在する、ガイド機構(20)
を備えており、
前記ガイド機構(20)の各々の、前記ガイドチャネル(24)が、前記保持位置で前記ガイドピン(22)を不動化するよう設計された少なくとも1つの留め具(28)を備えること、
前記留め具(28)が、前記ガイドピン(22)が前記保持位置への前記移動中にその上を摺動できるガイド面(30)であって、前記ガイドチャネルの直線壁(27)から離れる方向に前記保持位置の方向に延在する前記ガイド面(30)と、前記ガイドピン(22)の変位方向に垂直である平坦面(32)とを備えること、及び
前記ガイドピン(22)が、前記留め具(28)の平坦面(32)と協働するよう構成された平坦面(23)を備えること
を特徴とする設置構造。
【請求項2】
前記ガイド機構(20)の各々の、前記ガイドチャネル(24)が、閉鎖端部(26)と前記留め具(28)とを備え、前記ガイドピン(22)が前記留め具(28)と前記閉鎖端部(26)との間に位置する時に前記コックピットモジュール(10)が前記保持位置にあるよう、これら閉鎖端部(26)と前記留め具(28)とが位置決めされたること、又は
前記ガイドチャネル(24)が2つのめ具を備え、前記ガイドピン(22)が前記2つの留め具の間に位置する時に前記コックピットモジュール(10)が前記保持位置にあるよう、これら前記2つのめ具が位置決めされること
を特徴とする、請求項1に記載の設置構造。
【請求項3】
前記ガイドチャネル(24)が前記ガイドチャネル(24)の外側に向けて拡がる開口端部(25)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の設置構造。
【請求項4】
前記車体側部要素(8、9)又は前記設置要素(18、19)から選択される一方の要素に配置された補助ガイドピン(42)と、前記設置要素(18、19)又は前記車体側部要素(8、9)のうちの他方の要素上に配置された少なくとも1つの対応するガイド面(44)とを備える少なくとも1つの補助ガイド機構(40)を備え、前記ガイド面(44)は、前記ガイド機構(20)の前記ガイドチャネル(24)に平行に延在しており、前記ガイドチャネル(24)内で方の前記ガイドピン(22)を変位させる時に前記補助ガイドピン(42)を案内するよう設計されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の設置構造。
【請求項5】
前記補助ガイド機構(40)の前記ガイド面(44)に、前記保持位置で前記補助ガイドピン(42)を不動化するよう設計された少なくとも1つの留め具(48)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の設置構造。
【請求項6】
2つの前記設置要素に分散された、前記ガイドチャネル(24)を備える少なくとも3つの前記ガイド機構(20)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の設置構造。
【請求項7】
各々が前記コックピットモジュール(10)に固定されたプレートから形成された、2つの前記設置要素(18、19)を備えており、前記プレートは、前記コックピットモジュール(10)が前記車体に設置される時に、前記車体の横方向に垂直な平面内に延在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の設置構造。
【請求項8】
前記設置要素(18、19)を形成する前記プレートの一部を切り取ることによって、前記ガイド機構(20)の各々の、前記ガイドチャネル(24)を作製することを特徴とする、請求項7に記載の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のコックピットモジュールの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の組立時に、コックピットモジュールは、下方のフロントガラス用の横桁及び(防火壁として公知であり、エンジンルームから客室を隔てる)隔壁が既に設けられた車体上に、単一のユニットで設置される。上記コックピットモジュールは、ダッシュボードと、空調ユニットを設置したダッシュボードの横桁とからなる。更なる要素によって、例えばハンドル機構部分等のコックピットモジュールの一部も形成してよい。一般に、コックピットモジュールを設置する際には、ダッシュボードを下方のフロントガラス用の横桁に固定し、好適な開口を備える防火壁に空調ユニットのパイプを通過させる。
【0003】
現在、コックピットモジュールを設置するために利用できるいくつかの方法がある。
【0004】
1つの方法は、車両の縦軸(X軸)に沿って配向された位置決めピンを車体上に配置することからなり、上記位置決めピンは、ダッシュボード用の横桁の各端部に位置する上記X軸に垂直なプレート上に設けられた、対応する孔と係合する。係合後、上記プレートを車両の縦軸に沿ってねじで固定する。この設置方法により、コックピットモジュールを車両のX軸に沿って車体上で前方移動させることができ、これによりダッシュボードをX軸に沿って下方のフロントガラス用の横桁に固定できる。このX方向の固定により、ダッシュボードを下方の横桁の上に正確に位置決めすること及び確実に保持することができ、その結果、変形するリスクが低くなり、長期に亘ってこの固定が信頼できるものとなる。また、このX方向の固定により、空調ユニットのパイプをX軸に沿って防火壁の横桁に通過させることが可能となり、これにより、防火壁の開口は比較的小さい寸法を有することができ、パイプとこれらの開口の端部との間の間隙を僅かなものとすることができる。より具体的には、間隙が小さければ小さいほど、音響損失がより小さくなる。従って、これによってエンジンルームに対する客室の良好な遮音性を得ることができる。
【0005】
しかしながら、位置決めピンはX軸に沿って配向されているため、位置決めピンを車体に直接固定することはできず、車体の側壁に取り付けられたハウジングに固定しなければならない。上記ハウジングは大きくて重いことがわかっている。
【0006】
設置のための更なる方法により、重くて大きいハウジングの使用を回避することができる。特許文献1に開示されているこの方法は、車体の側壁上に、車両の横軸(Y軸)に沿って配向された位置決めピンを位置決めすることからなる。ダッシュボード用の横桁の各端部に位置する、上記横桁に垂直なプレートに、コックピットモジュールを前方移動させた場合に位置決めピンが係合するV字型のガイド溝を設ける。この場合であっても、溝のV字型のために、空調ユニットのパイプを通過させるための防火壁の開口のサイズを大きくする必要がある。上記の比較的大きな開口は、音響損失を引き起こし得る。そして、このような前方移動によって下方のフロントガラス用の横桁に対するダッシュボードの位置決め及び固定がより困難となり、これが長期に亘るダッシュボードの変形を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1604885B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、車体に固定されたハウジングを使用する必要がなく、下方のフロントガラス用の横桁に対するダッシュボードの正確な位置決めを保証すること及び防火壁の開口のサイズを低減することの両方を可能にする、コックピットモジュールの設置構造を提案することにより、上述の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明の主題は、コックピットモジュールを車体上に設置するための設置構造に関し、上記構造は:
−上記コックピットモジュールに固定された少なくとも1つの設置要素、
−設置要素と協働するよう位置決めされた少なくとも1つの車体側部要素、
−車体に対するコックピットモジュールの変位を案内するよう構成された少なくとも1つのガイド機構であって、車体側部要素又は設置要素から選択される一方の要素に配置されたガイドピンと、設置要素又は車体側部要素のうちの他方の要素上に配置された対応するガイドチャネルとを備えるガイド機構、
−各設置要素と連動する少なくとも1つのガイド機構であって、車両の縦方向に平行に直線移動中の上記コックピットモジュールを保持位置へと案内するために、各ガイド機構のガイドチャネルは直線状であり、かつ上記コックピットモジュールの設置位置において車両の縦方向に平行に延在するガイド機構
を備える。
【発明の効果】
【0010】
このような設置構造により、コックピットモジュールを保持位置へと車両の縦方向に前方移動させることができ、コックピットモジュールの重量がガイド機構の上に(より詳細にはガイドピンの上に)載る。従って有利なことに、ガイドピンはコックピットモジュールの重量を支持するよう構成される。一般には、この設置構造は、コックピットモジュールに固定された少なくとも2つの設置要素、特にコックピットモジュールの各側端部に少なくとも1つの設置要素を備え、それぞれの設置要素が車体の各側に位置する車体側部要素と協働する。
【0011】
コックピットモジュールが保持位置に入ると、ガイド機構を介して支持されているコックピットモジュールを、車両の横方向に延在するねじで止めることによって車体に固定できる。
【0012】
このように、コックピットモジュールを車両の縦方向に前方に移動させることができ、これにより、空調ユニットのパイプの寸法よりわずかに大きい寸法を有する開口を防火壁に作製でき、またコックピットモジュール、より詳細にはダッシュボードをフロントガラス用の横桁に対して正確に位置決めできる。
【0013】
更に、ガイド機構のピン又はガイドチャネルを支持するために、中間ハウジングは必要でない。
【0014】
1つの具体的な実施形態では、各ガイド機構のガイドピンを、車体側部要素に固定する。
【0015】
有利には及び非限定的な様式においては、各ガイド機構のガイドチャネルは、保持位置でガイドピンを不動化するよう設計された少なくとも1つの留め具を備える。このような配置により、コックピットモジュールを保持位置に保持してから完全に固定できる。またこのような配置により、車体に完全に固定する前にコックピットモジュールが位置からずれることを防止できる。
【0016】
留め具は例えば、ガイドピンが保持位置への移動中に摺動できるガイド面であって、ガイドチャネルの直線状の壁から離れる方向に保持位置の方向に延在するガイド面と、ガイドピンの変位方向に垂直な平坦面とを備え、従ってガイドピンは、留め具の平坦面と協働するよう構成された平坦面を備える。
【0017】
この目的のために、ピンの平坦面はピンの一部に設けられた平坦部であってよく、上記ピンは例えば円筒形であってよい。ピンは、その長さ全体に亘って平坦面を有してもよく、従ってこのピンの断面は直線側を有する。この断面は半円の形状であってよい。
【0018】
有利には及び非限定的な様式においては、各ガイド機構のガイドチャネルは閉鎖端部及び留め具を備えてよく、この閉鎖端部及び留め具は、ピンが留め具と閉鎖端部との間に位置する時にコックピットモジュールが保持位置となるよう位置決めされる。又は、ガイドチャネルは2つの留め具を備えてよく、この2つの留め具は、ピンが2つの留め具の間に位置する時にコックピットモジュールが保持位置となるよう位置決めされる。
【0019】
従って2つの留め具を設ける場合、保持位置へのピンの変位に関して第1の留め具の下流に位置する第2の留め具は、ピンの前進を防ぐように構成されることになる。ピンは、この第2の留め具と協働できる形状(例えば、この第2の留め具の平坦面と協働する更なる平坦面)を有する。
【0020】
有利には及び非限定的な様式においては、チャネルは、チャネルの外側に向けて拡がる開口端部を備える。これにより、ガイドピンの前方移動及びチャネルへの挿入が容易となる。
【0021】
有利には及び非限定的な様式においては、設置構造は、車体側部要素又は設置要素から選択される一方の要素に配置された補助ガイドピン、及びもう一方の要素、即ち車体側部要素又は設置要素上に配置された少なくとも1つの対応するガイド面を備える、少なくとも1つの補助ガイド機構を備えてよく、上記ガイド面は、ガイド機構のガイドチャネルに平行に延在し、ガイドチャネル内で一方のガイドピンを変位させる時に補助ガイドピンを案内するよう設計される。
【0022】
これにより、特にガイドチャネルを備える2つのガイド機構をコックピットモジュールの案内に用いる場合に、ガイドチャネル内に挿入されたガイドピンの周りでのいずれの旋回を回避することで、コックピットモジュールの安定性を改善できる。
【0023】
製造を容易にするために、2つのガイド機構、即ちガイドチャネルを備えるガイド機構及び補助ガイド機構のガイドピンを、好ましくは同じ要素上、例えば車体側部要素上に配置することが好ましい。
【0024】
設置構造は例えば、ガイドチャネルを備える2つのガイド機構及び1つ又は2つの補助ガイド機構を備えてよい。
【0025】
特に、補助ガイド機構のガイド面に、保持位置で補助ガイドピンを不動化するよう設計された少なくとも1つの、又は場合によっては2つの留め具を設けてよい。
【0026】
有利には及び非限定的な様式においては、設置構造は、2つの設置要素に分散された、ガイドチャネルを備える少なくとも3つのガイド機構を備えてよい。これにより、コクピットモジュールが設置されて保持位置にある時の、コックピットモジュールの応力均衡を保証できる。有利には、ガイドチャネルを備える4つのガイド機構を設けてよい。
【0027】
有利には及び非限定的な様式においては、設置構造は2つの設置要素を備え、各設置要素はコックピットモジュールに固定されたプレートから形成され、上記プレートは、コックピットモジュールを車両に設置する際に、車両の横方向に垂直な平面に延在する。
【0028】
上記設置要素を、例えばコックピットモジュールの一部を形成するダッシュボード用の横桁に固定してよく、上記横桁は、コックピットモジュールを車両上に設置する際に、車両の横方向に延在する。
【0029】
有利には及び非限定的な様式においては、設置要素を形成するプレートの一部を切り取ることによって、各ガイド機構のガイドチャネルを作製する。よって、この作製は単純かつ安価である。
【0030】
ここで、本発明を添付の非限定的な図面を参照しながら開示する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、車両の正面から見たコックピットモジュール及び本発明による設置構造の概略斜視図である。
図2図2は、設置要素の側面図である。
図3図3は、位置決めピンを有するガイド機構のガイドチャネルの拡大側面図である。
図4図4は、位置決めピンを有さないガイド機構のガイドチャネルの拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書では、前方、後方、上方及び下方という用語は、コックピットモジュールを車両上に設置する際の車両の前方及び後方方向を指す。X軸、Y軸、Z軸はそれぞれ、車両の縦軸(前方から後方)、横軸及び垂直軸であり、正規座標系を形成する。従って、このX軸及びY軸は水平面に延在する。
【0033】
「実質的に水平、縦又は垂直」は、水平、縦又は垂直の方向/平面から最大±10°の角度を形成する方向/平面と解釈する。
【0034】
図1は、車体上にコックピットモジュールを設置するための設置構造を示す。
【0035】
図1に示すコックピットモジュール10は、(部分的に示す)ダッシュボード12、ダッシュボード用の横桁14、及び空調ユニット16を備える。このコックピットモジュール10は、コックピットモジュール10の、車両の横Y方向両側に位置する2つの側端部を有する。
【0036】
コックピットモジュール10の各側端部は、車体上にコックピットモジュール10を設置するために設計された設置要素18、19を備える。上記設置要素18、19は、コックピットモジュール10に固定されたプレートからそれぞれ形成され、上記プレートは車両の横Y方向に垂直な平面に延在する。一般に、設置要素18、19は、コックピットモジュール10の一部を形成するダッシュボード用の横桁12に固定され、上記ダッシュボード用の横桁12は、車両の横断方向に延在する。
【0037】
図1はまた、車体の各側に位置し、各場合において対応する設置要素18、19と協働するよう位置決めされた、2つの車体側部要素8、9を部分的に示している。上記車体側部要素8、9は、フロントピラーのライニング、又はコックピットモジュール10の設置時にコックピットモジュール10の重量を支持できるいずれの車体側部要素であってよい。
【0038】
設置要素18、19及び車体側部要素8、9は、図示したコックピットモジュール10の設置構造の一部を形成する。
【0039】
この設置構造はまた、車体に対するコックピットモジュール10の保持位置への変位を案内するよう構成された少なくとも1つのガイド機構20を備える。
【0040】
この保持位置は、コックピットモジュール10を車体に恒久的に固定できる位置に対応する。
【0041】
図示した実施例では、各設置要素18、19は、単一のガイド機構20を備える。
【0042】
図2〜4に上記のガイド機構20をより詳細に示す。ガイド機構20は、車体側部要素8、9内に配置されたガイドピン22、及びもう一方の要素(コックピットモジュール10を保持位置へと案内するための設置要素18、19)上に配置された対応するガイドチャネル24を備える。
【0043】
コックピットモジュール10を保持位置へと車両の縦X方向に平行な直線移動に案内するために、各ガイド機構20のガイドチャネル24は直線状であり、車両の縦X方向に平行に延在する。
【0044】
各ガイド機構のガイドチャネル24を、設置要素18、19を形成するプレートの一部を切り取ることによって作製する。
【0045】
各ガイド機構20のガイドチャネル24は開口端部25及び閉鎖端部26を有し、開口端部25は、コックピットモジュールが車両上に設置される時、車両前方に向けて開いている(図3、4)。開口端部25はチャネルの外側に向けて拡がっており、これにより、ガイドピン22がこの拡がった部分内へと近接して係合すること、その後ガイドピン22をガイドチャネル24に向けて案内し、上記ガイドピンをガイドチャネル24内に挿入することが容易になる。この拡がった端部25により形成される中間区域によって、前方移動中にコックピットモジュールを様々な位置に配置でき、上記位置はZ軸に沿って±10mmだけ変化できる。図4に示す実施形態では、ガイドチャネルのZ方向の高さは典型的には12〜14mmである。ガイドチャネル24の開口端部25の拡がった部分の最大寸法は、例えば32〜34mmである。従って、この拡がった部分の寸法は、32〜34mmから、平行かつ直線状の端部を有するチャネル部分の開始位置における12〜14mmまで漸次的に小さくなる。
【0046】
ガイドチャネル24の底部に向かって更に前進した位置の区域において、上記ガイドチャネルは、保持位置でガイドピン22を不動化するよう設計された留め具28を備える。
【0047】
図示した実施例では、留め具28は、ガイドピン22が保持位置への変位中に摺動できる、一般に傾斜形状を有するガイド面30を備え、上記ガイド面30は、ガイドチャネルの直線壁27から保持位置の方向に漸次的に離れるように延在する。直線壁27から最も離れた位置の部分では、ガイド面30は、ガイドチャネル24内のガイドピン22の変位方向に垂直な平坦面32と隣接する。従って留め具28は、2つの表面30、32から形成され、その高さh(ガイドチャネルの直線壁27に対するZ軸に沿った寸法)はガイドピン22をガイドチャネル24内に保持することを保証するのに十分な高さである。平坦面32の高さhは、垂直Z方向で測定したガイド面30の最大寸法に対応している。例えば、この高さhは2〜3mmであってよく、例えば2.5mmであってよい。
【0048】
従ってガイドチャネル24は、開口端部25と留め具28との間に、縦X軸に沿って所定の長さLを有する直線壁27を備える。この長さLは、コックピットモジュール10を設置する際に、空調ユニット16のパイプ17が車両の防火壁を通過するのに十分な長さである。図示した実施例では、(拡がった部分とガイド面30の底部との間の)直線壁27の長さLは、典型的には50mmのオーダである。
【0049】
ガイドピン22は、図4に示すように、保持位置の留め具の平坦面32と協働するよう構成された平坦面23を備える。
【0050】
ガイドピン23は、車両の横Y方向に延在する。図示した実施例では、ガイドピン23は自由端部に略円筒形を有する要素に成形され、その直径は典型的には10mmのオーダである。車両の後方に対面するこの円筒形の一部は、平坦な面が垂直Z方向及び横Y方向に延在する平坦面23を有するように機械加工される。図4に示す実施例では、ガイドピン22は、(垂直Z方向に測定した)長さ全体に亘って平坦面23を有し、従ってピンの断面は半円形を有する。
【0051】
図示していない更なる実施例では、ガイドピン22の平坦面23は、円筒形のピン22の長さの一部に亘って作製された平坦な部分である。
【0052】
図面を参照して開示された設置構造はまた、設置要素18、19のそれぞれの上に補助ガイド機構40を備える。
【0053】
上記補助ガイド機構40は、車体側部要素8、9内に配置された補助ガイドピン42及び設置要素18、19上に配置された対応するガイド面44を備える。上記ガイド面44は、ガイド機構20のガイドチャネル24に平行に延在し、もう一方のガイドピン22がこのガイドチャネル24内を縦X軸に沿って車両の前方に向かって変位する際に補助ガイドピン42を案内するよう設計される。
【0054】
ガイド面44はまた、補助ガイドピン42を保持位置で不動化するよう設計された留め具48を備える。ガイド面44は設置要素の縁部を形成する。
【0055】
ガイド面44の端部のうちの一方46は、ガイド面に垂直な壁46によって閉鎖してよく、従って補助ガイドピン42の保持位置での不動化に貢献し、ガイド面44の端部のうちの他方45は、コックピットモジュール10を設置するためのコックピットモジュール10の前方移動を促進するよう、傾斜していてよい(図2)。
【0056】
設置要素18、19はまた、それらを車体側部要素8、9に固定するための孔50を備える。
【0057】
コックピットモジュール10の設置を、以下の様式で実装する。コックピットモジュール10を、(位置決めピンを形成する)ガイドピン22が設置要素18、19の各ガイドチャネル24に入るまで、車体に向かって縦X方向に移動させる。同時に、補助ガイドピン42を、設置要素18、19の各ガイド面44と係合させる。コックピットモジュール10を、ガイドピン22及び補助ガイドピン42が留め具28及び48を通過するまでX軸に沿って車両の前方へと変位させて、保持位置に保持する。
【0058】
一旦保持位置に入ると、ガイド機構により支持されているコックピットモジュール10を、車両の横Y方向に延在するねじで止めることによって車体に固定してよい。ダッシュボード12を下方のフロントガラス用の横桁に固定する更なる処理を実施してよい。X軸方向の前方移動によって、X軸に延在する爪が下方のフロントガラス用の横桁の好適なハウジング内に掛かることによってこの固定が実施される。
図1
図2
図3
図4