特許第6030155号(P6030155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030155
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】防水通音シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20161114BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20161114BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H04R1/00 311
   B32B27/02
   B32B27/20 A
   H04R1/00 321
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-558702(P2014-558702)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-509681(P2015-509681A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2013011494
(87)【国際公開番号】WO2014092459
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0143370
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0153945
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511302024
【氏名又は名称】アモグリーンテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ, イン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ, スン−フン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジュン−シク
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ヨン−シク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ギョン−ス
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052180(JP,A)
【文献】 特開2004−261737(JP,A)
【文献】 特開昭55−009859(JP,A)
【文献】 特開2011−078089(JP,A)
【文献】 特開2012−216899(JP,A)
【文献】 特開平06−093025(JP,A)
【文献】 特開2012−025160(JP,A)
【文献】 特表2008−522046(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0246798(US,A1)
【文献】 特開2009−228187(JP,A)
【文献】 特開2008−136908(JP,A)
【文献】 特開2010−070874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
B32B 27/02
B32B 27/20
B32B 27/30
B32B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高分子物質を含んで形成されるフィルム状の通音層と、
前記通音層の少なくとも一面に積層され、所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成されるウェブ状の顔料層とを含み、
前記通音層は、無気孔層であり、一面から他面に空気を通さず、
前記第2高分子物質は、前記第1高分子物質より融点が高いことを特徴とする、防水通音シート。
【請求項2】
前記第1高分子物質は、ポリウレタン(PU;Polyurethane)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の防水通音シート。
【請求項3】
前記第2高分子物質は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF;Polyinylidene difluoride)を含んでなることを特徴とする、請求項2に記載の防水通音シート。
【請求項4】
前記通音層と前記顔料層との間に形成され、前記第2高分子物質で形成される結合層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の防水通音シート。
【請求項5】
前記顔料層は、
前記通音層の一面に形成され、前記所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成される第1顔料層と、
前記通音層の他面に形成され、前記所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成される第2顔料層とを含んで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の防水通音シート。
【請求項6】
前記通音層と前記第1顔料層との間に形成され、前記第2高分子物質で形成される結合層をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の防水通音シート。
【請求項7】
前記顔料層において前記通音層と当接する側面には、前記通音層の第1高分子物質が染み込んでいることを特徴とする、請求項1に記載の防水通音シート。
【請求項8】
前記第1顔料層、前記通音層、および前記第2顔料層の全体的な空気透過度は、125psiで0.1cfm未満であることを特徴とする、請求項5に記載の防水通音シート。
【請求項9】
母材の上部に、所定色の顔料および第2高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の顔料層を形成するステップと、
前記顔料層の上部に、前記第2高分子物質より融点の低い第1高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の通音層を形成するステップと、
前記通音層が溶けて層構造が再構成されるように、前記顔料層および前記通音層に対して熱処理し、前記通音層を一面から他面に空気を通さない無気孔タイプのフィルム層に形成するステップとを含むことを特徴とする、防水通音シートの製造方法。
【請求項10】
前記第1高分子物質は、ポリウレタン(PU;Polyurethane)を含んでなることを特徴とする、請求項9に記載の防水通音シートの製造方法。
【請求項11】
前記第2高分子物質は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF;Polyinylidene difluoride)を含んでなることを特徴とする、請求項10に記載の防水通音シートの製造方法。
【請求項12】
前記顔料層を形成するステップと前記通音層を形成するステップとの間に、
前記顔料層の上部に、前記第2高分子物質からなる放射溶液を放射し、ウェブ状の結合層を形成するステップをさらに含み、
前記熱処理するステップは、前記顔料層、前記通音層、および前記結合層に対して熱処理することを特徴とする、請求項9に記載の防水通音シートの製造方法。
【請求項13】
前記通音層を形成するステップと前記熱処理するステップとの間に、
前記通音層の上部に、前記第2高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の他面の顔料層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の防水通音シートの製造方法。
【請求項14】
前記熱処理するステップの後に、
前記顔料層および前記通音層に対してオレオフォビック処理するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の防水通音シートの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防水通音シートが音響ホールに付着していることを特徴とする、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水通音シートに関するものであって、特に、音伝達効率を高め、かつ防水性を向上させた防水通音シートおよびその製造方法に関するものである。本発明は、2012年12月11日付で出願された韓国特許出願第10−2012−0143370号、および2013年12月11日付で出願された韓国特許出願第10−2013−0153945号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用端末、デジタルカメラ、ノートパソコンなどのようなモバイル電子機器の使用がますます増加している。このようなモバイル電子機器は、携帯しながら使用することから、防水機能を有することが要求されている。しかし、スピーカやマイクなどが設けられる部分には、音を放出させる音響ホールが形成され、この音響ホールを通して水や埃が電子機器の内部に侵入する。
【0003】
したがって、音響ホールには、音は通過させ、水や埃を遮断する防水通音シートが設けられる。このような防水通音シートは、防水性および音伝達効率をすべて考慮して製造されなければならない。
【0004】
防水通音シートに関連して、特許文献1は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜で形成された構成を開示している。しかし、従来の防水通音膜は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜だけで構成されるため、使用期間が長くなるにつれ、外部から加えられる衝撃や音の圧力などによって多孔質膜の微細孔が次第に大きくなり、これにより、防水性能が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第10−2010−0041839号公報(2010年4月22日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、無気孔の通音層を含み、防水性能がより向上した防水通音シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
そして、本発明は、防水通音シートの厚さ調節を容易にすることを目的とする。特に、本発明は、通音層の厚さを薄く形成しやすくし、通音性能を極大化させることができる防水通音シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、層間結合力が高い防水通音シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための、本発明にかかる防水通音シートは、第1高分子物質を含んで形成されるフィルム状の通音層と、前記通音層の少なくとも一面に積層され、所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成されるウェブ状の顔料層とを含み、前記第2高分子物質は、前記第1高分子物質より融点が高いことを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1高分子物質は、ポリウレタン(PU;Polyurethane)を含んでなってよい。
【0011】
また、前記第2高分子物質は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF;Polyinylidene difluoride)を含んでなってよい。
【0012】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、防水通音シートは、前記通音層と前記顔料層との間に形成され、前記第2高分子物質で形成される結合層をさらに含むことができる。
【0013】
また、本発明の好ましい他の実施形態によれば、前記顔料層は、前記通音層の一面に形成され、前記所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成される第1顔料層と、前記通音層の他面に形成され、前記所定色の顔料を添加した第2高分子物質を含んで形成される第2顔料層とを含んで構成されてよい。
【0014】
また、本発明の好ましいさらに他の実施形態によれば、防水通音シートは、前記通音層と前記第1顔料層との間に形成され、前記第2高分子物質で形成される結合層をさらに含むことができる。
【0015】
また、本発明は、前記顔料層において前記通音層と当接する側面には、前記通音層の第1高分子物質が染み込んでいてよい。
【0016】
また、本発明において、前記第1顔料層、前記通音層、および前記第2顔料層の全体的な空気透過度は、125psiで0.1cfm未満であることを特徴とする。
【0017】
一方、上記の目的を達成するための、本発明にかかる防水通音シートの製造方法は、母材の上部に、所定色の顔料および第2高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の顔料層を形成するステップと、前記顔料層の上部に、前記第2高分子物質より融点の低い第1高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の通音層を形成するステップと、前記通音層が溶けて層構造が再構成されるように、前記顔料層および前記通音層に対して熱処理するステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、防水通音シートの製造方法は、前記顔料層を形成するステップと前記通音層を形成するステップとの間に、前記顔料層の上部に、前記第2高分子物質からなる放射溶液を放射し、ウェブ状の結合層を形成するステップをさらに含み、前記熱処理するステップは、前記顔料層、前記通音層、および前記結合層に対して熱処理することができる。
【0019】
また、本発明は、前記通音層を形成するステップと前記熱処理するステップとの間に、前記通音層の上部に、前記第2高分子物質を含んでなる放射溶液を放射し、ウェブ状の他面の顔料層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0020】
また、本発明は、前記熱処理するステップの後に、前記顔料層および前記通音層に対してオレオフォビック処理するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無気孔の通音層を含んで形成されるため、防水性能がより向上した防水通音シートを提供することができる。
【0022】
そして、本発明は、通音層および顔料層を電気放射で形成し、防水通音シートの全体的な厚さ調節が容易である。特に、本発明によれば、通音層の厚さを薄く形成しやすくし、通音性能の良い防水通音シートを提供することができる。同時に、本発明は、防水通音シートの厚さ調節が容易であるため、空気透過度の調節が容易であり、このため、優れた音響特性を実現することができる。
【0023】
また、本発明によれば、通音層と顔料層との間の結合力が高い防水通音シートを形成することができる。
【0024】
さらに、本発明は、通音層と顔料層との間に結合層をさらに形成し、防水通音シートを母材から分離する時に、通音層と顔料層とが剥離する現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態にかかる防水通音シートの構成を示す図である。
図2】本発明の他の実施形態にかかる防水通音シートの構成を示す図である。
図3】本発明の他の実施形態にかかる防水通音シートの母材からの離型作業について説明するための図である。
図4】本発明の実施形態にかかる防水通音シートの製造方法について説明するための図である。
図5】本発明の実施形態にかかる防水通音シートが適用された電子機器の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を添付した図面を参照して詳細に説明する。ここで、繰り返される説明、本発明の要旨を不明にする可能性がある公知の機能、および構成に関する詳細な説明は省略する。本発明の実施形態は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状および大きさなどは、より明確な説明のために誇張されることがある。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態にかかる防水通音シートの構成を示す図である。
【0028】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態にかかる防水通音シート100は、通音層10と、第1顔料層20と、第2顔料層30とを含んで構成される。
【0029】
通音層10は、第1高分子物質で形成され、フィルム状に形成される。この時、第1高分子物質は、ポリウレタン(PU;Polyurethane)を含む物質で形成されてよい。そして、通音層10は、無気孔タイプで、通音層10の一面から他面に空気を通さないように形成されてよい。このような通音層10は、第1高分子物質を電気放射し、ウェブ状の第1高分子物質層を形成した後、第1高分子物質層に対する熱処理をしてウェブ状の構造を溶かすことによって形成されてよい。この時、前記第1顔料層20と、前記通音層10と、前記第2顔料層30とを含んで構成される防水通音シート100は、125psiで空気透過度が0.1cfm未満に形成されてよい。
【0030】
通音層10は、電気放射で形成され、厚さ調節が容易である。特に、電気放射工程を用いて通音層の厚さを薄く形成しやすいため、全体的な防水通音シート100の通音性を優れたものとする。気孔タイプの防水通音シートは、気孔を通して音を伝達するため、シートの厚さに相対的により敏感でない。反面、無気孔タイプの防水通音シート100は、シートの厚さを薄くしてはじめて、一面からの音の振動を他面により効果的に伝達することができる。
【0031】
また、通音層10が無気孔タイプに形成されるため、気孔タイプの通音層を含む防水通音シートに比べて高い防水性を実現することができる。
【0032】
第1顔料層20は、通音層10の一面に形成される。そして、第1顔料層20は、所定色の顔料を添加した第2高分子物質で形成される。この時、第2高分子物質は、通音層10をなす第1高分子物質より融点が高く形成されてよい。このような第2高分子物質は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF;Polyinylidene difluoride)を含む物質で形成されてよい。
【0033】
同時に、第1および2高分子物質は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのような芳香族ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジフェノキシホスファゼン、ポリ{ビス[2−(2−メトキシエトキシ)ホスファゼン]}のようなポリホスファゼン類、ポリウレタンおよびポリエーテルウレタンを含むポリウレタン共重合体、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどを使用することができる。また、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、パーフルオロポリマー、ポリビニルクロライドまたはポリビニリデンクロライドおよびこれらの共重合体、およびポリエチレングリコールジアルキルエーテルおよびポリエチレングリコールジアルキルエステルを含むポリエチレングリコール誘導体、ポリ(オキシメチレン−オリゴ−オキシエチレン)、ポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイドを含むポリオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリ(ビニルピロリドン−ビニルアセテート)、ポリスチレンおよびポリスチレンアクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルメチルメタクリレート共重合体を含むポリアクリロニトリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート共重合体およびこれらの混合物で形成されてもよい。この時にも、第2高分子物質は、第1高分子物質より融点の高い物質で形成される。
【0034】
第1顔料層20は、ウェブ状に形成されてよい。より具体的には、第1顔料層20は、所定色の顔料が添加された第2高分子物質を通音層10の一面に電気放射して超極細繊維糸条を作り、この超極細繊維糸条が蓄積されて多数の気孔を有する形態に形成される。このような第1顔料層20は、防水通音シート100の色層の役割を果たす。この時、防水通音シート100の適用機器に応じて、多様な色の顔料が使用可能である。また、第1顔料層20は、繊維糸条の集合体であるウェブ状に形成され、表面の防水性能を実現する。
【0035】
本発明の実施形態にかかる防水通音シート100は、電子機器に付着した時、外部に露出する第1顔料層20および第2顔料層30だけ顔料を添加した高分子物質で形成するため、顔料の使用を節減することができる。第2顔料層30は、通音層10の他面に積層される。このような第2顔料層30は、第1顔料層20および通音層10に対して形成される位置だけが異なるようにし、第1顔料層20と同じ材質で電気放射されて形成されてよい。したがって、第2顔料層30に関する説明は、第1顔料層20に関する説明に切り替える。
【0036】
本発明の一実施形態にかかる防水通音シート100において、通音層10の両面に第1顔料層20および第2顔料層30が形成された構成を説明したが、適用機器に応じて、通音層10の一面にのみ顔料層が形成されていてよい。
【0037】
そして、通音層10の熱処理は、通音層10、第1顔料層20、および第2顔料層30がすべて積層された後に行われる。これにより、第1顔料層20および第2顔料層30のウェブの気孔に通音層10の高分子物質が溶けて染み込み、層間結合力がより強固になり得る。図1には、通音層10、第1顔料層20、および第2顔料層30が互いに明確に区画されたように示されているが、これは、本発明の一実施形態にかかる防水通音シート100を簡素化して示したからである。すなわち、第1顔料層20において通音層10の当接する側面には、通音層10の第1高分子物質が染み込んでいる。また、第2顔料層30において通音層10の当接する側面には、通音層10の第1高分子物質が染み込んでいる。このように、第1顔料層20および第2顔料層30のウェブ上に、通音層10の第1高分子物質が熱処理によって染み込んで固体化されているため、層間結合力が高く形成される。
【0038】
以下では、本発明の他の実施形態にかかる防水通音シートの構成について説明する。
【0039】
図2は、本発明の他の実施形態にかかる防水通音シートの構成を示す図である。図3は、本発明の他の実施形態にかかる防水通音シートの母材からの離型作業について説明するための図である。
【0040】
図2および図3を参照すれば、本発明の他の実施形態にかかる防水通音シート200は、図1による防水通音シート100に結合層40をさらに備えたことを特徴とする。したがって、以下、本発明の他の実施形態にかかる防水通音シート200は、結合層40を中心に説明する。また、図1による防水通音シート100と同一または類似の部分については同一の図面符号を用い、ここで詳細な説明は省略する。
【0041】
本発明の他の実施形態にかかる防水通音シート200は、通音層10と、第1顔料層20と、第2顔料層30と、結合層40とを含んで構成される。
【0042】
結合層40は、通音層10と第1顔料層20との間に積層される。そして、結合層40は、高分子物質を電気放射して形成されたウェブ状の層であってよい。この時、結合層40をなす高分子物質は、第1顔料層20をなす第2高分子物質と同じ高分子物質であってよい。すなわち、結合層40は、ポリビニリデンフルオライドを含む物質で形成されてよい。
【0043】
このような結合層40は、電気放射時に、通音層10において母材の位置した面に形成されてよい。第1顔料層20は、第2高分子物質に顔料が含まれているため、相対的に通音層10との結合力が低く形成され得る。したがって、母材から防水通音シート200を分離する時に、通音層10と第1顔料層20とが分離されることがある。これを防止するために、通音層10と第1顔料層20との間に、結合力の良い高分子物質で形成された結合層40を形成し、防水通音シート200の層間結合力を向上させることができる。図3は、電気放射母材から防水通音シート200を剥離させる様子を示すものである。
【0044】
以下では、本発明の実施形態にかかる防水通音シートの製造方法について説明する。
【0045】
図4は、本発明の実施形態にかかる防水通音シートの製造方法について説明するための図である。
【0046】
図4を参照すれば、本発明の実施形態にかかる防水通音シートの製造方法は、まず、通音層、第1顔料層、第2顔料層、および結合層を形成するための放射溶液を形成する(S10)。この時、通音層を形成するための第1高分子物質の融点は、第1顔料層、第2顔料層、および結合層を形成するための第2高分子物質の融点より低い。より具体的には、通音層の放射溶液は、ポリウレタンに基づいて形成されてよく、第1顔料層および第2顔料層は、ポリビニリデンフルオライドに顔料をさらに含む物質に基づいて形成されてよく、結合層は、ポリビニリデンフルオライドに基づいて形成されてよい。
【0047】
そして、防水通音シートを形成するための電気放射工程を実施するが、前進する母材の上部に、第1顔料層を形成するための放射溶液を放射し、ウェブ状の電気放射層を形成する(S20)。S20ステップの後、第1顔料層の上部に、結合層を形成するための放射溶液を放射し、ウェブ状の結合層を形成する(S30)。そして、結合層の上部に、通音層を形成するための放射溶液を放射し、ウェブ状の通音層を形成する(S40)。その後、通音層の上部に、第2顔料層を形成するための放射溶液を放射し、ウェブ状の第2顔料層を形成する(S50)。
【0048】
S10〜S50ステップにより形成された防水通音シートを乾燥させる(S60)。この時、乾燥は、赤外線ランプによって行われてよい。
【0049】
そして、乾燥した防水通音シートに対して熱処理をして通音層だけを溶かし、無気孔タイプの防水通音シートを形成する(S70)。より具体的には、通音層をなす高分子物質の融点より高く、第1顔料層、第2顔料層、および結合層をなす高分子物質の融点より低い温度で乾燥した防水通音シートに熱処理を進行させ、ウェブ状の通音層を気孔の塞がれた無気孔タイプのフィルム層に形成する。この時、熱処理によって通音層の高分子物質が結合層および第2顔料層のウェブ上に染み込んで固体化されている。
【0050】
そして、S70ステップの後の防水通音シートには、オレオフォビック処理がさらに施されてよい。
【0051】
図5は、本発明の実施形態にかかる防水通音シートが適用された電子機器の一例を概略的に示す図である。
【0052】
図5を参照すれば、電子機器、すなわち、モバイル端末のケースCの内部が示されている。この場合、モバイル端末のケースCにおいて、音響ホール、すなわち、マイクまたはスピーカホール側に、本発明の実施形態にかかる防水通音シート100a、100bが適用される。この時、防水通音シート100aには、形状支持のための支持フォーム100a’が防水通音シート100aの外側端部側に形成されてよい。図5のケースC内部の説明されていない実線は、モバイル端末の内部に形成可能な回路またはケースなどを示す。
【0053】
以上、本発明にかかる防水通音シートおよびその製造方法は、上記のように説明された実施形態の構成および方法が限定されて適用されるのではなく、上記の実施形態は、多様な変形が可能となるように各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わされて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 通音層
20 第1顔料層
30 第2顔料層
40 結合層
100 防水通音シート
200 防水通音シート
C モバイル端末のケース
100a 防水通音シート
100a’ 支持フォーム
100b 防水通音シート
図1
図2
図3
図4
図5