(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出システムが、前記第1の強度信号を前記第2の強度信号から減算して、前記検出ビームのファラデー回転に対応する差信号を生成するように構成された差構成要素を含み、前記検出システムが、該差信号を復調してセンサ出力信号を生成するように構成されたセンサ・コントローラを備える、請求項2に記載のシステム。
前記フィードバック信号が、前記光学プローブ・ビームの前記中心周波数を、前記アルカリ金属蒸気による前記光学プローブ・ビームの実質的な最大吸収に対応する周波数に維持するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記光学プローブ・ビームが、前記中心周波数を中心に両側にあるほぼ等しい正の振幅および負の振幅を有する方形波信号によって周波数変調される、請求項1に記載のシステム。
前記方形波信号の前記正の振幅が、前記光学プローブ・ビームに関連した第1の方向の実質的な最大ファラデー回転に対応し、前記方形波信号の前記負の振幅が、前記光学プローブ・ビームに関連した、該第1の方向とは反対の第2の方向の実質的な最大ファラデー回転に対応する、請求項6に記載のシステム。
前記光学プローブ・ビームの前記中心周波数を安定させる工程が、前記光学プローブ・ビームの前記中心周波数を、前記アルカリ金属蒸気による前記光学プローブ・ビームの実質的な最大吸収に対応する周波数に維持することを含む、請求項11に記載の方法。
前記光学プローブ・ビームの前記周波数を変調する工程が、前記光学プローブ・ビームの前記周波数を、前記中心周波数を中心に両側にあるほぼ等しい正の振幅および負の振幅を有する方形波信号として構成された前記変調信号に基づいて、前記中心周波数を中心にして変調することを含む、請求項11に記載の方法。
前記検出システムが、前記第1の強度信号を前記第2の強度信号から減算して、前記検出ビームのファラデー回転に対応する差信号を生成するように構成された差構成要素を含み、前記検出システムが、該差信号を復調してセンサ出力信号を生成するように構成されたセンサ・コントローラを備える、請求項15に記載のシステム。
前記フィードバック信号が、前記光学プローブ・ビームの前記中心周波数を、前記アルカリ金属蒸気による前記光学プローブ・ビームの実質的な最大吸収に対応する周波数に維持するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
方形波信号の前記正の振幅が、前記光学プローブ・ビームに関連した第1の方向の実質的な最大ファラデー回転に対応し、前記方形波信号の前記負の振幅が、前記光学プローブ・ビームに関連した、該第1の方向とは反対の第2の方向の実質的な最大ファラデー回転に対応する、請求項18に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は一般にセンサ・システムに関し、詳細には、原子センサ・システムにおけるプローブ・ビーム周波数の安定化に関する。NMRセンサ・システムは、例えばNMRジャイロスコープまたは原子磁力計として実施することができる。NMRプローブ・システムは、光学ポンプ・ビームを生成するように構成されたポンプ・レーザと、光学プローブ・ビームを生成するように構成されたプローブ・レーザとを含む。この光学ポンプ・ビームを、ビーム光学部品などを介して蒸気セルを通過させて、蒸気セル内のアルカリ金属蒸気を刺激することができる。光学プローブ・ビームを、光学ポンプ・ビームに対して直角に蒸気セルを通過させて、アルカリ金属蒸気の偏極に反応した光学プローブ・ビームの特性を測定することができる。アルカリ金属蒸気は、貴ガス同位体の歳差運動に反応して、アルカリ金属蒸気と貴ガス同位体との相互作用に基づいて変調され得る。従って、この光学プローブ・ビームを実施して、NMRジャイロスコープの例では受感軸の周りの回転を測定し、または、原子磁力計の例では外部磁場の大きさを測定することができる。
【0009】
一例として、この光学プローブ・ビームを、方形波変調信号などの変調信号を用いて、中心周波数を中心にして変調することができる。蒸気セルを出たときに、この光学プローブ・ビームを、偏光ビームスプリッタに関して直角に配置された一対の光検出器に供給することができる。従って、この光学プローブ・ビームを、光学プローブ・ビームの直交する偏光にそれぞれ対応する第1の強度信号および第2の強度信号に分割することができる。この第1の強度信号と第2の強度信号とを加算して、加算信号を生成することができ、この加算信号を、方形波信号の周波数にほぼ等しい周波数において復調することができる。このようにすると、復調された加算信号の振幅に基づいて光学プローブ・ビームを安定させることができる。一例として、このシステムが、復調された加算信号を、定常状態条件にある中心周波数を挟んだ正および負のそれぞれの振幅において中心周波数を中心に両側にあるほぼ等しいファラデー回転に対応する実質的に一定の振幅に維持することができるような態様で、この中心周波数は、アルカリ金属蒸気による光学プローブ・ビームの最大吸収の周波数に対応することができる。例えば、第1の強度信号と第2の強度信号の差に対応する差信号の復調が、外部磁場または受感軸の周りのシステムの回転に起因するファラデー回転を決定することができるような態様で、変調信号の正および負のそれぞれの振幅は、定常状態条件にあるほぼ等しい両方向の最大ファラデー回転に対応することができる。
【0010】
図1は、原子センサ・システムの例10を示す。原子センサ・システム10は、受感軸の周りの回転を測定するように構成されたNMRジャイロスコープ、外部から加えられた磁場の大きさを測定するように構成された原子磁力計など、さまざまなNMRセンサのうちの任意の1つのNMRセンサに対応し得る。従って、原子センサ・システム10は、航行用途および防衛用途のうちの少なくとも一方などのさまざまな用途のうちの任意の1つの用途に提供することができる。
【0011】
原子センサ・システム10は、光学ポンプ・ビームOPT
PMPを生成するように構成されたポンプ・レーザ12と、光学プローブ・ビームOPT
PRBを生成するように構成されたプローブ・レーザ14とを含む。光学ポンプ・ビームOPT
PMPは、光学ポンプ・ビームOPT
PMPを円偏光させるように構成された4分の1波長板16を通過するように供給されて、光学ポンプ・ビームOPT
PMPが蒸気セル18を通過するように供給される。
図1の例では、光学ポンプ・ビームOPT
PMPおよび光学プローブ・ビームOPT
PRBが、互いに直交する軸に沿って蒸気セル18を通過するように供給される。光学ポンプ・ビームOPT
PMPは、原子センサ・システム10の受感軸とほぼ平行に(例えば同一直線上に)供給される。原子センサ・システム10は、さらに、光学ポンプ・ビームOPT
PMPと実質的に平行な方向に蒸気セル18を通過するように供給されるバイアス磁場B
BIASを発生させるように構成された磁場発生装置20を含む。バイアス磁場B
BIASは、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気の歳差運動を共鳴条件で刺激して、光学ポンプ・ビームOPT
PMPに対して直角に加えられた磁場(例えば直交する外部磁場成分)に反応した蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気の偏極ベクトルの変調を実質的に増幅するように構成することができる。
【0012】
一例として、蒸気セル18は、アルカリ金属蒸気(例えばセシウム(Cs)またはルビジウム(Rb))を含むとともに、貴ガス同位体(例えばアルゴン(Ar)またはキセノン(Xe))を含むことができる透明または半透明のケーシングを有する密封されたセルとして構成される。光学ポンプ・ビームOPT
PMPの波長は、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気の輝線(例えばD1またはD2)に対応している。従って、蒸気セル18は、原子センサ・システム10の有効物理現象部分(operative physics portion)を構成し得る。具体的には、光学ポンプ・ビームOPT
PMPを蒸気セル18に通過させて、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気をスピン偏極させることができる。一例として、バイアス磁場B
BIASの存在下で、蒸気セル18内の貴ガス同位体は歳差運動することで、スピン偏極したアルカリ金属蒸気粒子が変調されたスピン偏極を有して、正味のスピン偏極の一成分が歳差運動している貴ガス同位体と整列することとなる。従って、蒸気セル18を出た光学プローブ・ビームOPT
PRBに対応する検出ビームOPT
DETによって、貴ガス同位体の歳差運動を測定することができる。一例として、光学ポンプ・ビームOPT
PMPに直交する軸に沿った蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気のスピン偏極の射影(projection)に基づいて、蒸気セル18を出た直線偏光した検出ビームOPT
DETのファラデー回転を決定することができる。従って、貴ガス同位体の歳差運動の決定に応答して原子センサ・システム10の回転、外部磁場の大きさ、またはスピン歳差運動の周波数もしくは位相を測定することができる。
【0013】
本明細書で説明する場合に、光学プローブ・ビームOPT
PRBと検出ビームOPT
DETは同じ光学ビームに対応し、光学プローブ・ビームOPT
PRBは蒸気セル18に供給され、検出ビームOPT
DETは、蒸気セル18を出た光学プローブ・ビームOPT
PRB、従ってファラデー回転を受けた光学プローブ・ビームOPT
PRBに対応することを理解すべきである。従って、本明細書で説明する場合には、光学プローブ・ビームOPT
PRBと検出ビームOPT
DETが、ファラデー回転に関して交換可能であると説明することができる。具体的には、光学プローブ・ビームOPT
PRBは、蒸気セル18を通過するときにファラデー回転をもたらし、そのようなファラデー回転が、検出ビームOPT
DET上で測定される。
【0014】
図1の例では、原子センサ・システム10が、偏光ビームスプリッタ24を含む光検出器アセンブリ22を含み、偏光ビームスプリッタ24は、検出ビームOPT
DETを直交する偏光群に分離するように構成されている。光検出器アセンブリ22はさらに、それぞれの直交偏光に関連づけられた第1の光検出器26および第2の光検出器28(例えば第1のフォトダイオードおよび第2のフォトダイオード)を含む。第1の光検出器26は、第1の強度信号INTS
1を生成するように構成されており、第2の光検出器28は、第2の強度信号INTS
2を生成するように構成されている。これらの強度信号はそれぞれ、検出ビームOPT
DETのそれぞれの直交成分の強度に対応する。従って、第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の差は、検出ビームOPT
DETのファラデー回転に対応し得る。強度信号INTS
1およびINTS
2は検出システム30に供給される。検出システム30は、強度信号INTS
1およびINTS
2によって決定されるような検出ビームOPT
DETのファラデー回転に基づいて原子センサ・システム10の測定可能な外部パラメータSNSを計算するように構成されている。測定可能な外部パラメータSNSは、例えば、原子センサ・システム10の回転、外部磁場の大きさ、およびスピン歳差運動の周波数または位相のうちの1つまたは複数に対応する。
【0015】
上記で説明したようにして測定される検出ビームOPT
DETのファラデー回転の変化は、測定対象の外部パラメータに起因し得る。しかしながら、このファラデー回転の変化が、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気による光学プローブ・ビームOPT
PRBの光子の最大吸収に対応する吸収ピークに関連した波長に対する光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長の変化に起因することもある。吸収ピークのこのような波長において、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気は、ほぼゼロの円偏光複屈折を示し、従って、外部パラメータが存在しないときには、検出ビームOPT
DETのファラデー回転を示し得ない。従って、光学プローブ・ビームOPT
PRBは、吸収ピークに関連した波長よりも短かったりまたは長かったりするような離調された波長を有することがある。しかしながら、環境条件(例えば温度変化)およびプローブ・レーザ14の電流励振の不安定性のうちの少なくとも一方の結果、光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数(すなわち波長)が変化することがあり、この変化が、検出ビームOPT
DETの伝搬方向と平行な単位アルカリ偏極ベクトル成分当たりのファラデー回転に影響を及ぼすことがある。検出ビームOPT
DETのファラデー回転に対するこのような影響と、外部パラメータが原子センサ・システム10に影響を及ぼした結果により生じたファラデー回転とを識別できないことがあり、その結果、測定可能な外部パラメータSNSに誤差が生じることがある。
【0016】
光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数を安定させるため、検出システム30はプローブ・コントローラ32を含む。
図1の例では、プローブ・レーザ14が、変調信号DTHで変調される。一例として、変調信号DTHは、光学プローブ・ビームOPT
PRBを生成するために、プローブ・レーザ14の活性領域に供給される電流上に変調される方形波信号とすることができる。従って、光学プローブ・ビームOPT
PRBを、吸収ピークに関連した波長に対応する周波数に維持することができる中心周波数を中心にして変調することができる。例えば、変調信号DTHは、ほぼ等しい検出ビームOPT
DETのファラデー回転と、両方向の検出ビームOPT
DETのファラデー回転とに対応する最小振幅および最大振幅を有することができる。その結果、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数が吸収ピークの周波数にほぼ等しいことに応答して、変調信号DTHの最小振幅における第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の和が、最大振幅における第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の和とほぼ等しくなる。その結果、変調信号DTHの最小振幅における第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の和と最大振幅における第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の和との差は、プローブ・レーザ14によって生成されるような光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数ドリフトを示し得る。従って、プローブ・コントローラ32は、
図1の例に示されたプローブ・レーザ14の変調をフィードバック信号FDBKを介して調整して、フィードバック方式で、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数を吸収ピークにほぼ維持することができる。
【0017】
図2は、変調信号波形のタイミング図の例50を示す。一例として、
図50は、時間の関数としてプロットされた変調信号DTHを例示する。
図2の例では、変調信号DTHが、中心波長λ
Cを中心にして振動する方形波信号として例示されている。この変調信号DTHは、第1の波長λ
MAXに対応する最大振幅と、第2の波長λ
MINに対応する最小振幅とを有する信号として例示されている。
図2の例では、第1の波長λ
MAXと第2の波長λ
MINが、中心波長λ
Cを中心に両側に、波長差λ
1だけ等しく隔てられている。
【0018】
図3は、光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長に関連したグラフの例を示す。具体的には、
図3は、光学プローブ・ビームOPT
PRBの方向と平行な単位アルカリ偏極ベクトル成分当たりのファラデー回転を波長の関数として示したグラフ100を示す。
図3はさらに、検出ビームOPT
DETの強度を波長の関数として示したグラフ102を示す。
【0019】
グラフ100は、ゼロを中心とする任意単位の縦軸のファラデー回転の大きさと、中心波長λ
Cのところに例示された、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気の共鳴による光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長離調とを例示する。前述のとおり、検出ビームOPT
DETのファラデー回転を測定して、例えば原子センサ・システム10の回転または外部磁場の大きさを決定することができる。しかしながら、グラフ100によって例示されているとおり、検出ビームOPT
DETのファラデー回転は、光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長に強く左右され得る。従って、光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長が不安定な場合には、検出ビームOPT
DETのファラデー回転が影響を受け、それによって、測定可能な外部パラメータSNS(例えば原子センサ・システム10の回転または外部磁場の大きさ)の測定に誤差が生じることがある。従って、プローブ・コントローラ32は、中心波長λ
Cに関連した中心周波数を中心にした光学プローブ・ビームOPT
PRBの変調に基づいて、光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長を安定させることができる。
【0020】
グラフ102は、任意単位の縦軸に、検出ビームOPT
DETの強度の大きさを例示する。
図3の例では、この強度が、第1の光検出器26および第2の光検出器28によって、それぞれの電圧V
INTS1およびV
INTS2として測定される。従って、検出ビームOPT
DETの強度は、V
INTS1とV
INTS2の和に基づいて決定することができる。検出ビームOPT
DETの強度の逆の大きさは、蒸気セル18中のアルカリ金属蒸気による光学プローブ・ビームOPT
PRBの光子の吸収に対応し、電圧V
INTS1とV
INTS2の和のより小さな値が、光学プローブ・ビームOPT
PRBの光子のより大きな吸収に対応する。従って、この強度の最小値は、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気による光学プローブ・ビームOPT
PRBの光子の吸収の吸収ピーク104に対応する。
【0021】
加えてタイミング
図50を参照すると、中心波長λ
Cが吸収ピーク104に設定され、従って、中心波長λ
Cが外部パラメータが存在しないときに光学プローブ・ビームOPT
PRBが実質的にゼロのファラデー回転をもたらす波長に設定されるように変調信号DTHが提供される。しかしながら、第1の波長λ
MAXに対応する変調信号DTHの最大振幅を、
図3の例では正のピーク「A」として例示された第1の方向の最大ファラデー回転に関連づけることができる。従って、第1の波長λ
MAXを光学プローブ・ビームOPT
PRBの赤方離調に関連づけて、ピーク「A」が中心波長λ
Cから波長差λ
1だけ隔てられる第1の方向の実質的な最大ファラデー回転が提供される。同様に、第2の波長λ
MINに対応する変調信号DTHの最小振幅を、
図3の例では負のピーク「B」として例示された、第1の方向とは反対の第2の方向の最大ファラデー回転に関連づけることができる。従って、第2の波長λ
MINを、光学プローブ・ビームOPT
PRBの青方離調に関連づけて、ピーク「B」が、中心波長λ
Cからピーク「A」とは反対側にピーク「A」に対する波長差に等しい波長差λ
1だけ隔てられる第2の方向の実質的な最大ファラデー回転が提供される。従って、第2の方向の最大ファラデー回転は、第1の方向の最大ファラデー回転とは反対の、第1の方向の最大ファラデー回転と実質的にほぼ等しいファラデー回転となる。その結果、本明細書に記載されているとおり、測定可能な外部パラメータSNSを検出するための信号対雑音比(SNR)を実質的に最大にすることができ、同時に、光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数は実質的に安定する。
【0022】
一例として、ファラデー回転のピーク「A」と「B」の波長差は、蒸気セル18内のアルカリ金属蒸気の吸収スペクトルの半値全幅波長線幅に対応する。従って、ファラデー回転のピーク「A」および「B」にそれぞれ対応する最大振幅および最小振幅における変調信号DTHの振幅は、それぞれ、(例えば1種または数種のバッファガスを含む)蒸気セル18内のガス混合物およびガス数密度(gas number density)の関数であるアルカリ共鳴(すなわち吸収)線幅の関数とすることができる。従って、任意の原子センサ・システム10の特性に基づいて最大振幅および最小振幅における変調信号DTHの振幅を選択および最適化して、変調信号DTHの最大振幅および最小振幅のそれぞれにおいて、ファラデー回転のピーク「A」および「B」を達成することができる。
【0023】
図4は、検出システムの例150を示す。一例として、検出システム150は、
図1の例の検出システム30に対応する。
図4の例では、検出システム150が、第1の強度信号INTS
1および第2の強度信号INTS
2、ならびに変調信号DTHを受け取る。検出システム150は、測定可能な外部パラメータSNSおよびフィードバック信号FDBKを出力として供給するように構成されている。一例として、第1の強度信号INTS
1および第2の強度信号INTS
2は、それぞれ、
図1の例の光検出器アセンブリ22内の第1の光検出器26および第2の光検出器28から供給される。
【0024】
検出システム150は、第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2とを加算して、第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2の和に対応する加算信号SUMを生成するように構成された加算構成要素152を含む。加算信号SUMは、
図1の例のプローブ・コントローラ32に対応するプローブ・コントローラ154に供給される。
図4の例では、プローブ・コントローラ154が、変調信号DTHの周波数において加算信号SUMを復調するように構成された復調器156を含む。前述のとおり、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数が吸収ピーク104の周波数にほぼ等しいことに応答して、加算信号SUMは、変調信号DTHの最小振幅および最大振幅のそれぞれにほぼ等しい振幅を有する。その結果、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数の中心波長λ
Cからの周波数ドリフト、即ち吸収ピーク104からの周波数ドリフトに応答して、加算信号SUMの振幅は、変調信号DTHの最小振幅と最大振幅の間で変動する。従って、復調された加算信号SUMは、光学プローブ・ビームOPT
PRBの波長と中心波長λ
Cの差を示し、中心波長λ
Cに対応する中心周波数からの光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数ドリフトの大きさを示す。従って、フィードバック信号FDBKを供給して、関連したプローブ・レーザ(例えば
図1の例のプローブ・レーザ14)に供給される電流および関連したプローブ・レーザの温度のうちの一方を補正することで、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数を、アルカリ金属蒸気による光学プローブ・ビームOPT
PRBの最大吸収に対応する中心波長λ
Cに維持することができる。
【0025】
検出システム150はさらに、差構成要素158およびセンサ・コントローラ160を含む。差構成要素158は、第1および第2の強度信号INTS
1、INTS
2を減算して、第1の強度信号INTS
1と第2の強度信号INTS
2との差に対応する差信号DIFFを生成するように構成されている。差信号DIFFは、測定可能な外部パラメータSNS(例えば受感軸の周りの回転および外部磁場の大きさのうちの少なくとも一つ)を計算するように構成されたセンサ・コントローラ160に供給される。前述のとおり、変調信号DTHは、中心波長λ
Cにある吸収ピーク104に関して光学プローブ・ビームOPT
PRBのファラデー回転を等しくかつ両方向に提供する。従って、ファラデー回転のこのような極性反転の結果、差信号DIFFも極性反転する。
【0026】
一例として、
図3の例のそれぞれのピーク「A」および「B」におけるファラデー回転を、大きさがゼロの差信号DIFFを生成するように設定することができる。一例として、強度信号INTS
1とINTS
2は、ほぼ等しい振幅を有する。例えば、ゼロであるファラデー回転が、それぞれの光検出器26および28に等しい強度信号を提供するとき、ファラデー回転の大きさはπ/2の整数倍である。従って、強度信号INTS
1と強度信号INTS
2の振幅が等しいときには、ファラデー回転の極性反転において、光検出器26および28の応答度(responsivity)および利得の変化を実質的に打ち消すことができる。このような打消しは、検出ビームOPT
DETの直交成分の強度に、光検出器26および28の利得および応答度に基づく任意の因数を乗じることによって生じ、ファラデー回転が2つのピーク「A」と「B」の間で切り替わるときに、より小さな乗算された信号とより大きな乗算された信号の誤差の絶対値における差によって残余誤差が生じる。
【0027】
図4の例では、センサ・コントローラ160が、変調信号DTHの周波数において差信号DIFFを復調するように構成された復調器162を含む。従って、復調された差信号DIFFは、光検出器26および28に関連したオフセットの差分変化とは無関係に、検出ビームOPT
DETのファラデー回転を示す。光検出器26および28と関連する応答度および利得のドリフトは、ファラデー回転の極性反転における光検出器26および28の応答度および利得の変化の打消しに基づいて実質的に抑制される。従って、センサ・コントローラ160は、検出ビームOPT
DETの測定されたファラデー回転に基づいて、測定可能な外部パラメータSNSを計算することができる。従って、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数が中心波長λ
Cにおいて安定することに基づいて、光学プローブ・ビームOPT
PRBの周波数ドリフトに起因する測定可能な外部パラメータSNSの計算における誤差を大幅に軽減することができる。
【0028】
原子センサ・システム10が
図1〜4の例だけに限定されることは意図されていないことを理解すべきである。一例として、本明細書では、プローブ・コントローラ32が、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心波長λ
Cに関連した中心周波数を、おおよその吸収ピーク104において安定させるものとして説明しているが、光学プローブ・ビームOPT
PRBの中心周波数を異なる周波数基準点に維持するようにプローブ・コントローラ32をプログラムすることもできることを理解すべきである。例えば、蒸気セル18内の偏極したアルカリ蒸気の状態分布によっては、吸収ピーク104に対するオフセットが、SNRの向上を提供する可能性がある。このオフセットは、最大振幅と最小振幅がゼロを挟んで非対称であるようなオフセットを含む信号DTHに基づいて、または復調された加算信号SUMが特定の非ゼロ・ターゲット値に設定/維持されるように調整された中心波長λ
Cに基づいて達成することができる。この場合、ゼロであるターゲット値は吸収ピーク104に対応することができる。
【0029】
加えて、変調信号DTHの最大振幅および最小振幅はそれぞれ、ファラデー回転のピーク「A」および「B」だけに限定されない。例えば、セル温度が十分に高いときなどに起こり得るような、セルを通過する距離の単位長さ当たりのプローブ・ビームの吸収が十分に大きい蒸気セル18では、光学プローブ・ビームOPT
PRBの実質的に全ての光子が吸収されることに基づいて、最大ファラデー回転に対応する波長における光学プローブ・ビームOPT
PRBの吸収が、検出可能なプローブ・ビーム光がセルを透過しないほどに十分に大きくなることがある。別の例として、光学プローブ・ビームOPT
PRBの光強度が十分であると、変調信号DTHのそれぞれの最大振幅および最小振幅がそれぞれ、ファラデー回転のピーク「A」よりも大きくなり、かつファラデー回転のピーク「B」よりも小さくなることがあり、その結果、例えば、測定可能な外部パラメータSNSを測定するためのSNRがより大きくなることがある。また、
図2の例では変調信号DTHが、約50%のデューティサイクルを有する信号として例示されているが、測定可能な外部パラメータSNSを測定するためのSNRを実質的に最大にするために、蒸気セル18の特性および蒸気セル18の内容物に応じて、変調信号DTHに対して他のデューティサイクルを実施することもできる。従って、変調信号DTHの最大振幅および最小振幅ならびにデューティサイクルを調節して、測定可能な外部パラメータSNSのSNRを実質的に最大にすることができる。従って、原子センサ・システム10は、さまざまな異なる方式で構成することができる。
【0030】
以上で説明した構造上および機能上の特徴を考慮すれば、
図5を参照することによって、本発明のさまざまな態様に基づく方法がより完全に理解される。説明を簡単にするために、
図5の方法は、逐次的に実行するものとして示され説明されるが、本発明に基づくいくつかの態様は、本明細書に示され記載された順序とは異なる順序で実施すること、および他の態様と同時に実施することのうちの少なくとも一方とすることができるため、本発明は、示された順序によって限定されないことを理解すべきである。また、本発明の態様に基づく方法を実施するのに、示された全ての特徴が必要なわけではない。
【0031】
図5は、原子センサ・システム(例えば原子センサ・システム10)において光学プローブ・ビーム(例えば光学プローブ・ビームOPT
PRB)の周波数を安定させる方法の例200を示す。202で、歳差運動をしているアルカリ金属蒸気を含む原子センサ・システムの蒸気セル(例えば蒸気セル18)に光学プローブ・ビームを通過させる。204で、蒸気セルを出た光学プローブ・ビーム(例えば検出ビームOPT
DET)を、直交する偏光成分にビーム分割する。206で、直交するそれぞれの偏光成分の強度を測定して、第1の強度信号(例えば第1の強度信号INTS
1)および第2の強度信号(例えば第2の強度信号INTS
2)を生成する。208で、この第1の強度信号と第2の強度信号とを加算して、加算信号(例えば加算信号SUM)を生成する。210で、この加算信号の大きさに関連したフィードバック信号(例えばフィードバック信号FDBK)を生成する。212で、このフィードバック信号に基づいて、光学プローブ・ビームの周波数(例えば中心周波数)を(例えば中心波長λ
Cにおいて)安定させる。
【0032】
以上に記載したのは本発明の例である。当然ながら、構成要素または方法の考え得る全ての組合せを記載することは不可能である。しかしながら、本発明の他の多くの組合せおよび置換が可能であることを当業者は認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求項を含む本出願の範囲に含まれる全てのそのような変更、改変および変形を包含することが意図されている。