(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
補強部が設けられた前側部分と、車両前部に設置された車両部品に取り付けられる後側部分とを一体的に有して、車両の前部の下部部位に車両前後方向に延びるように配置される樹脂成形体からなり、前端部が、車両の前面に衝突した歩行者の脚部に接触することによって、該脚部を保護し得るように構成された車両用歩行者保護装置であって、
(a)前記前側部分の車幅方向に間隔を隔てた少なくとも三箇所に、車幅方向において互いに対向して車両前後方向に延びるようにそれぞれ配置された複数の縦リブと、(b)それら複数の縦リブの全ての上端部に跨るように横架した状態で、車両前後方向に延びるように配置されて、該複数の縦リブの上端部同士を一体的に連結する上側連結板部と、(c)該複数の縦リブの全ての下端部に跨るように横架した状態で、車両前後方向に延びるように配置されて、該複数の縦リブの下端部同士を一体的に連結する下側連結板部とによって、前記前側部分に、車両前後方向に延びる筒状構造体が、車幅方向に並んで複数形成されて、前記補強部が、それら複数の筒状構造体にて構成されており、且つ
前記互いに対向する縦リブの前記上端部同士の間に位置する複数の前記上側連結板部部位のうちの少なくとも一つと、該互いに対向する縦リブの前記下端部同士の間に位置する複数の前記下側連結板部部位のうちの少なくとも一つの両方、又はそれらのうちの何れか一方が、車幅方向の断面においてコ字状を呈する屈曲板部とされていると共に、前記下側連結板部の前端に前側壁部が一体的に立設され、この前側壁部に対して、前記複数の縦リブの前端と前記上側連結板部の前端とがそれぞれ一体的に連結されて、前記複数形成される筒状構造体の前端開口が、該前側壁部によって閉塞せしめられていることを特徴とする車両用歩行者保護装置。
前記縦リブが、前記下側連結板部の前端位置から前記後側部分の前記車両への取付箇所の近傍位置にまで達する前後方向の延出長さを有している請求項1又は請求項2に記載の車両用歩行者保護装置。
前記上側連結板部と前記下側連結板部のうちの少なくとも何れか一方が、前記後側部分の車両部品への取付状態下で、該車両部品の車両前方に配置される当接部を有していると共に、該後側部分の車両部品への取付状態下において、或いは該当接部を有する該上側連結板部又は該下側連結板部が前記前側部分への歩行者の衝突により後方に変位したときに、該当接部が、該車両部品に当接するようになっている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の車両用歩行者保護装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両においては、衝突時に生ずる衝撃エネルギーを吸収し、車体や乗員を保護することを主な目的として、車両の前面や後面、或いは側面等に、各種の保護装置が設置されている。また、近年では、車両の前面に歩行者が衝突(接触)した際に歩行者を保護する装置も、車両前面に設置されるようになってきている。
【0003】
そのような車両用歩行者保護装置(以下からは、単に、歩行者保護装置と言う)の一種として、所謂脚払い装置が、知られている。この脚払い装置は、一般に、フロントバンパの内側やフロントバンパよりも下部側の部位等、車両前部の下部部位に設置される。そして、歩行者が車両前面に衝突したときに、前端において、歩行者の脚部に接触することにより、歩行者の脚部を払って(すくい上げて)、歩行者をボンネット等の衝撃吸収可能な部材側に転倒させ、以て、歩行者の保護及び安全を図るようにしたものである。
【0004】
ところで、歩行者保護装置には、前端部に接触した歩行者の脚部のダメージをできるだけ軽減し得る構造を有していることが、要求される。そこで、例えば、特開2007−55543号公報(特許文献1)や特開2010−179671号公報(特許文献2)等には、そのような要求性能を満たし得る歩行者保護装置として、補強部が設けられた前側部分と、車両前部に設置された車両部品に取り付けられる後側部分とを一体的に有して、車両前部の下部部位に車両前後方向に延びるように配置される樹脂成形体にて構成されたものが、提案されている。
【0005】
すなわち、前者の公報に開示された歩行者保護装置は、車両前部の下部部位に車両前後方向に延びるように配置される平板状の樹脂製基板を有している。そして、この基板が、その後部において、車両部品にボルト固定されるようになっている。かかる基板の前部には、一方の板面の車幅方向に間隔を隔てた複数箇所に、平板状の縦リブが、車幅方向において互いに対向して車両前後方向に延びるように一体形成されている。また、基板前部における複数の縦リブの対向面間には、車幅方向に延びる平板状の横リブが、互いに対向する縦リブ同士を相互に連結するように一体形成されている。かくして、かかる歩行者保護装置では、基板前部に、複数の縦リブと複数の横リブとが組み合されてなるリブ構造体が設けられている。また、このリブ構造体にて、歩行者保護装置の前側部分に、補強部が形成されている。そして、この補強部によって、前側部分の剛性、即ち、車両前側から後側に向かう荷重に対する変形強度の増大が図られている。
【0006】
一方、後者の公報に開示された歩行者保護装置においては、樹脂製の基板の前部に、縦断面コ字形状をもって上方に突出し、下方に開口して、車両前後方向に延びる複数の上側補強ビードと、縦断面コ字形状をもって下方に突出し、上方に開口して、車両前後方向に延びる複数の下側補強ビードとが、車幅方向に1個ずつ交互に並んで位置するように一体形成されている。また、それら上側及び下側補強ビードのそれぞれの内側には、各補強ビードの互いに対向する縦壁部(縦リブ)間に跨って、車幅方向に延びる連結リブが、それら縦壁部同士を相互に連結するように一体形成されている。即ち、この歩行者保護装置では、その前側部分に、補強部が、基板前部に設けられた複数の上側及び下側補強ビードと複数の連結リブとによって形成されている。そして、それにより、歩行者保護装置の前側部分の剛性(車両前側から後側に向かう荷重に対する変形強度)が高められている。
【0007】
このように、従来の歩行者保護装置にあっては、前側部分に補強部が設けられて、かかる前側部分の剛性が高められており、それによって、歩行者の脚部が接触したときに生ずる衝撃荷重と、歩行者保護装置の変形量(変位量)との関係を示す荷重−変位曲線の形状が、理想的な矩形波に近付けられている。そして、その結果、歩行者の脚部の接触によって生ずる衝撃が、より効率的且つ十分に吸収され、以て、歩行者の脚部のダメージが効果的に軽減され得るようになっているのである。
【0008】
ところが、上記した従来の歩行者保護装置の構造について、本発明者が、様々な角度から検討を加えたところ、以下のような問題が内在していることが判明した。
【0009】
すなわち、車両前部の下部部位に設置された歩行者保護装置は、通常、車両の走行時に、その上面と下面の両方において走行風を受ける。そのため、そのような歩行者保護装置は、歩行者保護を可能とする構造に加えて、上面と下面とが、走行風をスムーズに後方に導き得るような構造を有していることが望ましい。何故なら、それにより、車両の空力性能が高められて、燃費の向上が効果的に図られ得るからである。
【0010】
しかしながら、前記した従来の歩行者保護装置においては、その前側部分に設けられた補強部が、前側部分の上面や下面において車幅方向に延びる平板状の横リブや連結リブを含んで構成されている。そのため、そのような従来の歩行者保護装置を車両前部の下部部位に設置した場合、車両の走行時に、走行風が、横リブや連結リブに衝突してしまい、それら横リブや連結リブによって、走行風の流れが遮られるようになる。即ち、従来の歩行者保護装置では、横リブや連結リブが空力抵抗となっており、それ故に、走行風をスムーズに後方に導くことが困難であった。従って、従来の歩行者保護装置は、車両前部の下部部位への設置によって、歩行者の保護を十分に且つ確実に実現できるものの、車両下部の空力性能を低下させる可能性があったのである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、
図1には、本発明に従う歩行者保護装置の一実施形態として、自動車の前面に設置されたフロントバンパの内側に取り付けられる脚払い装置が、その上面形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、本実施形態の脚払い装置10は、全体として、横長の矩形形状を呈する樹脂成形体にて構成されている。そして、脚払い装置10は、例えば、ポリプロピレンやABS樹脂等の合成樹脂材料を用いた射出成形によって成形されている。なお、以下からは、自動車のフロントバンパ(12)の内側への脚払い装置10の設置形態(
図4参照)に基づいて、
図1の紙面に直角な方向となる、脚払い装置10の厚さ(高さ)方向を上下方向と言い、
図1の左右方向となる、脚払い装置10の長手方向を車幅方向又は左右方向と言い、
図1の上下方向となる、脚払い装置10の長手方向と厚さ方向の両方に直角な方向を前後方向と言うこととする。
【0023】
図1乃至
図3に示されるように、脚払い装置10は、その後側の略半分を占める後側部分が、取付板部14とされている。この取付板部14は、一定の厚さを有する横長矩形の平板からなっている。また、取付板部14の後端部と前端部とには、固定ボルトが挿通可能な後側挿通孔15と前側挿通孔16とが、それぞれ、左右方向に所定間隔をおいて、複数個ずつ(ここでは、5個ずつ)設けられている。
【0024】
一方、脚払い装置10の取付板部14を除く前側部分は、補強部18とされている。そして、本実施形態では、この補強部18が、従来品には見られない特別な構造を有しているのである。
【0025】
すなわち、補強部18は、下側連結板部20と、この下側連結板部20に対して上方に所定距離を隔てて対向配置された上側連結板部22と、それら上側連結板部22と下側連結板部20との対向面間に立設された複数(ここでは、14個)の縦リブ24とを一体的に有している。
【0026】
より詳細には、下側連結板部20は、取付板部14の前端から前方に一体で延びる横長矩形の平板からなり、取付板部14と略同一の厚さ及び左右方向寸法(車幅方向の延出長さ)を有している。つまり、ここでは、下側連結板部20と取付板部14とが一枚の板材からなる単一部材にて構成されている。また、この下側連結板部20は、その前端面の形状が、フロントバンパ12の内面形状に対応した凸状湾曲面形状とされている。
【0027】
下側連結板部20の上面の前端には、前側壁部26が、一体的に立設されている。この前側壁部26は、上方に所定高さで突出し、且つ前側壁部26の前端縁に沿って、湾曲しつつ、左右方向に連続して全長に延びる湾曲板材からなり、下側連結板部20と略同一の厚さを有している。そして、このような前側壁部26の前面が、下側連結板部20の前端面と一体で、フロントバンパ12の内面形状に対応した凸状湾曲面形状を呈する衝撃入力面28とされている。
【0028】
複数の縦リブ24は、何れも、取付板部14や下側連結板部20と同一の厚さと、下側連結板部20の前後方向寸法(前後方向の延出長さ)よりも短い前後方向寸法と、前側壁部26と同一の高さとを有する矩形の平板からなっている。それら複数の縦リブ24は、下側連結板部20の前端側部分の上面上に、左右方向に互いに一定の距離を隔てて対向して、下側連結板部20の前端から後方に真っ直ぐに延びるように配置されている。そして、そのような配置状態下で、下側連結板部20に一体形成されている。
【0029】
換言すれば、下側連結板部20が、複数の縦リブ24の全ての下端部に跨るように横架した状態で配置されている。そして、複数の縦リブ24の下端部同士が、下側連結板部20の前端側部分にて相互に連結されている。つまり、複数の縦リブ24のうち、左右方向に対向して対を為す縦リブ24,24が、それらの下端部同士の間において水平に広がる下側連結板部部位20aにて、互いに連結されている。そして、そのように、複数の縦リブ24の下端部同士を連結する下側連結板部20の下面が、水平方向に広がる平面からなる下側導風面30とされている。
【0030】
なお、縦リブ24は、その前端において、下側連結板部20の前側壁部26の後面に一体化されている。即ち、縦リブ24は、下側連結板部20の上面に立設された状態で、前側壁部26の後面から下側連結板部20の前後方向の中間位置まで、前後方向に真っ直ぐに延び出しているのである。
【0031】
一方、上側連結板部22は、全体として、下側連結板部20と同様な横長矩形状を呈する平板からなっている。また、上側連結板部22も、下側連結板部20と同様に、前端面の形状が、フロントバンパ12の内面形状に対応した凸状湾曲面形状とされている。そして、そのような上側連結板部22の厚さ及び左右方向寸法が、下側連結板部20の厚さ及び左右方向寸法と略同一とされている一方、前後方向寸法が、下側連結板部20の前後方向寸法よりも所定寸法だけ大きくされている。具体的には、上側連結板部22の前後方向寸法が、下側連結板部20の前端から、下側連結板部20の後側に一体で設けられる取付板部14の前側挿通孔16よりも更に後側の部位までの前後方向寸法と同じ大きさとされている。換言すれば、上側連結板部22の前後方向寸法が、縦リブ24の前端位置から、取付板部14の前側挿通孔16の鉛直上方位置の近傍で、且つそれよりも後側の位置にまで達する大きさとされているのである。
【0032】
そして、このような上側連結板部22が、その前端を、下側連結板部20の前端に対して、前後方向において対応させた位置で、下側連結板部20に対して、その上方に対向配置されている。また、そのような配置状態下で、上側連結板部22の前端側の下面が、下側連結板部20に立設された前側壁部26と複数の縦リブ24のそれぞれの上面と一体化されている。これにより、上側連結板部22と下側連結板部20とが、前後方向に延びる複数の縦リブ24と左右方向に延びる前側壁部26とを介して、相互に連結されている。
【0033】
換言すれば、上側連結板部22が、複数の縦リブ24の全ての上端部に跨るように横架して、水平に広がる状態で配置されている。そして、それら複数の縦リブ24の上端部同士が、上側連結板部22の前端側部分にて相互に連結されている。つまり、複数の縦リブ24のうち、左右方向に対向して対を為す縦リブ24,24が、それらの上端部同士の間において水平に広がる上側連結板部部位22aにて、互いに連結されている。そして、そのように、複数の縦リブ24の上端部同士を連結する上側連結板部22の上面が、水平方向に広がる平面からなる上側導風面32とされている。
【0034】
また、前側壁部26が、複数の縦リブ24の全ての前端部に跨るように配置されている。そして、複数の縦リブ24の前端部同士が、前側壁部26にて相互に連結されている。さらに、上側連結板部22と下側連結板部20の前端部同士が、前側壁部26にて相互に連結されている。
【0035】
かくして、本実施形態の脚払い装置10の前側部分には、互いに対向する二つの縦リブ24,24を右及び左側の筒壁部とし、且つそれら二つの縦リブ24,24を相互に連結する上側連結板部部位22aと下側連結板部部位20aを上及び下側の筒壁部とした四角筒形状を有する筒状構造体34が、前後方向に延びるように複数設けられている。また、それら複数の筒状構造体34は、左右方向において並列して配置されている。更に、それら複数の筒状構造体34のうち、左右に隣り合うものは、それらの間に位置する一つの縦リブ24を、右側又は左側の筒壁部として、互いに共有している。そして、そのような複数の筒状構造体34にて、補強部18が構成されているのである。
【0036】
換言すれば、脚払い装置10の前側部分には、前後方向に延びる筒状構造体34の複数が、左右方向に一定の間隔を隔てつつ、並列して配置されている。そして、そのような複数の筒状構造体34のうちの互いに隣り合うものが、それらのうちの左側に位置する筒状構造体34の右側壁部を構成する縦リブ24と、それらのうちの右側に位置する筒状構造体34の左側壁部を構成する縦リブ24との間に架設された上側連結板部部位22aと下側連結板部部位20aとにて相互に連結されている。かくして、補強部18が、上側連結板部部位22aと下側連結板部部位20aとにて相互に連結された複数の筒状構造体34によって形成されているのである。
【0037】
そして、本実施形態の脚払い装置10では、補強部18の左右に隣り合う縦リブ24と、それらを相互に連結する上側及び下側連結板部部位22a,20aとが、従来の脚払い装置の、リブ構造体からなる補強部の縦リブと横リブの役割を、それぞれ果たしている。また、左右に隣り合う二つの縦リブ24,24と、それらの上端部同士を連結する上側連結板部部位22aとにて構成される断面コ字状部分が、従来の脚払い装置の補強部に設けられる補強ビードの役割を果たし、更に、下側連結板部部位20aが、補強ビードの縦壁部(縦リブ)同士を連結する連結リブの役割を果たしている。
【0038】
従って、かかる脚払い装置10においては、補強部18の剛性(変形強度)、具体的には、複数の筒状構造体34の延出方向となる前後方向に入力される衝撃荷重に対する剛性が、従来の脚払い装置の、リブ構造体からなる補強部や、複数の補強ビードと連結リブとを備えた補強部の剛性と略同程度の十分な大きさとされているのである。
【0039】
かくの如き構造を有する脚払い装置10は、例えば、
図4に示されるように、自動車の前部に位置するエンジンルーム:E内において、自動車の前面に設置されたフロントバンパ12の後方側に取り付けられるようになっている。
【0040】
すなわち、脚払い装置10が内側に取り付けられるフロントバンパ12は、全体として、車幅方向に湾曲して延びる湾曲形態を呈し、自動車前面から突出する上側突出部36と下側突出部38とを有している。それら上側突出部36と下側突出部38は、何れも、鉛直縦断面が、前方に向かって凸となる湾曲形状とされている。また、フロントバンパ12の下側突出部38よりも上側の部位には、外部からエンジンルーム:E内に走行風を取り入れるための空気取入口39が、上側突出部36にまで達する大きさを有して、形成されている。そして、かかるフロントバンパ12は、自動車の前面部分を構成する、例えばフロントグリル40に対してボルト固定等されて、設置されている。
【0041】
フロントバンパ12の後方のエンジンルーム:E内には、ラジエータ42が、配置されている。このラジエータ42は、エンジンルーム:E内に固設されたラジエータサポート44上に、枠状乃至は筒状のシュラウド46内に収容された状態で支持されて、固定されている。なお、
図4中、48は、ボンネットである。
【0042】
そして、脚払い装置10は、エンジンルーム:E内の下部部位において、フロントバンパ12とラジエータサポート44との間に、前後方向に延びるように配置される。また、そのような状態において、補強部18を構成する複数の筒状構造体34の前端部が、フロントバンパ12の下側突出部38の内側に突入している一方、取付板部14が、ラジエータサポート44の下方に配置される。そして、取付板部14が、複数の後側及び前側挿通孔15,16にそれぞれ挿通された取付ボルト50により、ラジエータサポート44の前面と後面から一体で延び出す取付フランジ部52,52に固定される。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、取付板部14の前側挿通孔16と後側挿通孔15の形成箇所が、それぞれ、取付板部14の自動車への取付箇所とされている。
【0043】
かくして、脚払い装置10が、自動車前部の下部部位において、フロントバンパ12の下側突出部38とラジエータサポート44との間に、複数の筒状構造体34を、前後方向、つまり、歩行者のフロントバンパ12への衝突に伴って生ずる衝撃荷重の入力方向に延びるように位置させた状態で、設置される。そして、そのような脚払い装置10の設置状態下で、補強部18の前側壁部26の衝撃入力面28が、フロントバンパ12の下側突出部38の内側に、衝撃荷重の入力方向に直交して、位置固定に配置される。
【0044】
それ故、本実施形態の脚払い装置10にあっては、自動車前部への設置状態下で、歩行者の脚部がフロントバンパ12に接触乃至は衝突せしめられた際に、その衝撃荷重に対する反力を、歩行者の脚部のすね付近の部分に対して、補強部18の前側壁部26の衝撃入力面28からフロントバンパ12を介して作用させ得るようになっている。このとき、脚払い装置10の前側部分を形成する補強部18が、衝撃荷重の入力方向に延びる複数の筒状構造体34にて構成されて、かかる補強部18の剛性(変形強度)が十分に確保されているところから、脚払い装置10が容易に変形しない。このため、フロントバンパ12に接触乃至は衝突した歩行者は、脚部のすね付近の部分が脚払い装置10にて払われて(すくい上げられて)、ボンネット48等の衝撃吸収可能な部材側に転倒する。これにより、歩行者の保護が図られて、その安全が効果的に確保されるようになる。
【0045】
また、かかる脚払い装置10においては、自動車前部への設置状態下で、補強部18の上側連結板部22の後端面が、ラジエータサポート44上のシュラウド46やラジエータ42の前面に対して、僅かな距離を隔てて対向位置させた状態で配置される。これにより、上側連結板部22の上面からなる上側導風面32が、エンジンルーム:E内の下部部位におけるフロントバンパ12の後面(内面)からラジエータ42の前面までの略全領域に亘って、水平方向に広がるように配置される。また、下側連結板部20の下面からなる下側導風面30が、エンジンルーム:Eの外部において、水平方向に広がるように配置される。
【0046】
このため、本実施形態の脚払い装置10は、自動車前部に設置された状態下において、フロントバンパ12の空気取入口39から取り入れられた走行風を、上側導風面32にて案内しつつ、ラジエータ42の前面にスムーズに導くことができる。また、フロントバンパ12の下側を通過する走行風を、下側導風面30にて案内しつつ、後方側に送り出すことができる。
【0047】
従って、本実施形態の脚払い装置10にあっては、自動車前部の下部部位への設置状態下で、自動車前部の下部部位の空力抵抗を十分に低下させて、自動車下部の空力性能を効果的に高めることができ、それによって、燃費の向上を有利に達成できるのである。
【0048】
しかも、脚払い装置10は、上側連結板部22の前後方向寸法が、縦リブの24の前後方向寸法よりも長くされている。また、下側連結板部20と取付板部14とが1枚の板材からなる単一部材にて構成されている。これによって、左右に隣り合う縦リブ24の上端部の間や下端部の間が、上側連結板部22や下側連結板部20にて完全に閉鎖されている。そのため、自動車前部の下部部位への設置状態下で、空気取入口39からエンジンルーム:E内に取り入れられた走行風や、脚払い装置10の下部側を流れる走行風が、互いに隣り合う縦リブ24の間に入り込んで、それらの走行風の流れが乱されたり、或いは遮られたりすることが有利に防止され得る。そして、その結果として、自動車下部での空力性能の向上が、より安定的に図られ得る。
【0049】
なお、脚払い装置10においては、補強部18の前端に、左右方向に延びる前側壁部26が設けられているが、脚払い装置10の自動車への設置状態下で、かかる前側壁部26は、フロントバンパ12の内側に突入位置させられる。そのため、そのような前側壁部26は、走行風に対して空力抵抗とならない。
【0050】
次に、
図5乃至
図9には、本発明に従う歩行者保護装置の別の実施形態としての脚払い装置54が、それぞれ示されている。それら
図5乃至
図9に示される、本実施形態の脚払い装置54は、前記第一の実施形態の脚払い装置10と補強部18の構造が異なるだけであって、それ以外の構造は、かかる脚払い装置10と同様とされている。従って、本実施形態の脚払い装置54に関する説明では、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10と同様な構造とされた部材及び部位について、
図1乃至
図4と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、
図10乃至
図12に示される、後述する別の実施形態についても、同様とする。
【0051】
すなわち、
図5から明らかなように、本実施形態の脚払い装置54は、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10と同様な樹脂材料を用いて成形された、全体として、略長手矩形状を呈する樹脂成形品からなっている。そして、後側の略半分を占める後側部分が、横長矩形平板状の取付板部14とされている一方、かかる取付板部14を除いた前側部分が、補強部18とされている。
【0052】
図5乃至
図8に示されるように、補強部18は、上下方向において互いに所定距離を隔てて対向配置された上側連結板部22及び下側連結板部20と、それら上側連結板部22と下側連結板部20との対向面間に立設された複数(ここでは、16個)の縦リブ24とを一体的に有している。
【0053】
下側連結板部20は、取付板部14と略同一の厚さ及び左右方向寸法(車幅方向の延出長さ)を有して、取付板部14の前端から前方に一体で延び出している。そして、本実施形態では、かかる下側連結板部20が、縦断面台形状を呈する山部と谷部とが左右方向において交互に連続して位置する波形の板材にて構成されている。
【0054】
すなわち、下側連結板部20には、上方に突出して、前後方向に真っ直ぐに延びる第一補強ビード56と、下方に突出して、前後方向に真っ直ぐに延びる第二補強ビード58とが、左右方向に一つずつ交互に並んで、それぞれ、複数個(ここでは、第一補強ビード56が8個で、第二補強ビード58が7個)ずつ一体形成されている。
【0055】
第一補強ビード56は、縦断面形状が、下方に開口するコ字状、又は上底よりも下底の方が長い台形状を呈している。そして、前後方向に水平に延びる平板状の水平板部60と、かかる水平板部60の左右方向両端から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ突出して、水平板部60に沿って前後方向に連続して延びる側方傾斜板部62,62とを一体的に有している。一方、第二補強ビード58は、縦断面形状が、上方に開口するコ字状、又は下底よりも上底の方が長い台形状を呈している。そして、前後方向に水平に延びる平板状の水平板部64と、かかる水平板部64の左右方向両端から左斜め上方と右斜め上方にそれぞれ突出して、水平板部64に沿って前後方向に水平に連続して延びる側方傾斜板部66,66とを有している。
【0056】
なお、互いに隣り合う第一補強ビード56と第二補強ビード58は、それらの間に位置する側方傾斜板部62,66を共有している。また、第二補強ビード58の水平板部64は、取付板部14の前端から一体で水平に延び出し、前後方向の中間部から前側部分が、前方に向かって上傾して延び出している。更に、第一補強ビード56の後端には、取付板部14の前端から一体で斜め上方に延びる後側傾斜板部68が、一体形成されている。これにより、第一補強ビード56が、前方に向かって開口する一方、後方側の開口部が、後方に向かって下傾する後側傾斜板部68にて閉塞されている。
【0057】
そして、本実施形態では、第一補強ビード56の上方への突出高さと、第二補強ビード58の下方への突出高さ、つまり、第一補強ビード56の水平板部60と第二補強ビード58の水平板部64の高低差(
図6にH
1 にて示される寸法)が、十分に低くされて、第一及び第二補強ビード56,58のそれぞれの側方傾斜板部62,66の幅(
図6にW
1 にて示される寸法)が可及的に小さくされている。
【0058】
なお、それら第一及び第二補強ビード56,58の突出高さ:H
1 は、特に限定されるものではない。しかしながら、第一及び第二補強ビード56,58の突出高さ:H
1 は、例えば、上側補強ビードと下側補強ビードとをそれぞれ複数個ずつ有する補強部を備えた、従来の脚払い装置における上側及び下側補強ビードのそれぞれの突出高さの1/2以下の寸法であって、具体的には、5〜10mm程度の寸法とされていることが望ましい。
【0059】
このように、第一及び第二補強ビード56,58の突出高さ:H
1 と、それら第一及び第二補強ビード56,58のそれぞれの側方傾斜板部62,66の幅とが、十分に小さくされることによって、下側連結板部20に対して、前側から後側に向かって衝撃荷重が入力された際に、第一補強ビード56の側方傾斜板部62,62が、それらの上端側部位を相互に離間させる方向に変形するようなことが可及的に防止されるようになっており、また、第二補強ビード58の側方傾斜板部66,66が、それらの上端側部位を相互に離間させる方向に変形するようなことも可及的に防止されるようになっている。
【0060】
ここで、下側連結板部20の構造の理解をより容易とするために、下側連結板部20の構造を、上記の説明とは観点を変えて補足的に説明すると、下側連結板部20には、複数の第一補強ビード56が、左右方向に一定の間隔を隔てて一直線に並んで配置した状態で一体形成されている。第一補強ビード56は、上記のように、水平板部60と、水平板部60の左右両端に一体形成された側方傾斜板部62,62と、それら水平板部60と側方傾斜板部62,62のそれぞれの後端に一体形成されて、水平板部60と側方傾斜板部62,62とを取付板部14の前端に連結する後方傾斜板部68とを有している。そして、そのような複数の第一補強ビード56のうちの左右方向に隣り合うもの同士が、それぞれの側方傾斜板部62,62の下端部において、取付板部14の前端から一体で延びる水平板部64により、相互に連結されているのである。
【0061】
また、下側連結板部20の上面の前端には、前側壁部26が、一体的に立設されている。この前側壁部26は、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10の下側連結板部20に一体形成される前側壁部26と同様な構造を有している。
【0062】
複数の縦リブ24は、何れも、取付板部14や下側連結板部20と同一の厚さと、下側連結板部20の前後方向寸法(前後方向の延出長さ)よりも短い前後方向寸法と、前側壁部26と同一の高さとを有する矩形の平板からなっている。そして、そのような複数の縦リブ24が、第一補強ビード56の水平板部60における前側部分の左右両端部において、左右方向に互いに対向した状態で、下側連結板部20の前端から、前後方向の中間位置まで、後方に真っ直ぐに延びるように配置されている。そして、そのような配置状態下で、複数の縦リブ24が、下側連結板部20に対して一体形成されている。
【0063】
換言すれば、下側連結板部20が、複数の縦リブ24の全ての下端部に跨るように横架して、水平に広がる状態で配置されている。そして、それら複数の縦リブ24のうち、互いに隣り合う縦リブ24の下端部同士が、第二補強ビード58により、或いは第一補強ビード56の水平板部60により、互いに連結されている。
【0064】
更に換言すれば、下側連結板部20は、前方に向かって上傾する後側傾斜板部68を介して、取付板部14の前端に一体形成されている。この下側連結板部20の前端側の上面上には、複数の縦リブ24が、左右方向において互いに間隔を隔てて対向して、前後方向に延びるように配置されて、一体形成されている。そして、それら複数の縦リブ24のうち、互いに対向する縦リブ24の下端部同士の間に位置する下側連結板部20部分に、上方に向かって開口する縦断面コ字状の屈曲板材からなる第二補強ビード58が、一体形成されているのである。
【0065】
なお、本実施形態でも、前記第一の実施形態と同様に、縦リブ24が、その前端において、下側連結板部20の前側壁部26の後面に一体化されている。また、下側連結板部20の下面の全面が、下側導風面30とされている。
【0066】
一方、上側連結板部22は、全体として、下側連結板部20を上下反転させたものと同様な形状を有する波形の板材からなっている。即ち、上側連結板部22も、上方に突出して、前後方向に真っ直ぐに延びる第一補強ビード70と、下方に突出して、前後方向に真っ直ぐに延びる第二補強ビード72とが、左右方向に一つずつ交互に並んで、それぞれ、複数個(ここでは、第一補強ビード70が7個で、第二補強ビード72が8個)ずつ一体形成されている。そして、この上側連結板部22の第一補強ビード70が、下側連結板部20の第二補強ビード58と同様な構造とされて、水平板部64と側方傾斜板部66,66とを一体的に有している。また、上側連結板部22の第二補強ビード72が、下側連結板部20の第一補強ビード56と、後側傾斜板部68が有しない以外同様な構造とされて、水平板部60と側方傾斜板部62,62とを一体的に有している。
【0067】
なお、ここでも、上側連結板部22の上面の全面が、上側導風面32とされている。また、上側連結板部22の第一及び第二補強ビード70,72のそれぞれの突出高さ(
図6にH
2 にて示される寸法)が、下側連結板部20の第一及び第二補強ビード56,58のそれぞれの突出高さ:H
1 と同程度の高さで、十分に低くされている。それによって、第一及び第二補強ビード70,72のそれぞれの側方傾斜板部66,62の幅(
図6にW
2 にて示される寸法)が、可及的に小さくされている。
【0068】
そして、上側連結板部22が、その前端を、下側連結板部20の前端に対して、前後方向において対応させた位置で、下側連結板部20に対して、その上方に対向配置されている。また、そのような配置状態下で、上側連結板部22が、各第一補強ビード70の側方傾斜板部66,66の下端部において、複数の縦リブ24のそれぞれの上端面に一体化されている。更に、上側連結板部22の下面の前端が、下側連結板部20に立設された前側壁部26の上端面と一体化されている。これにより、上側連結板部22と下側連結板部20とが、前後方向に延びる複数の縦リブ24と左右方向に延びる前側壁部26とを介して、相互に連結されている。
【0069】
換言すれば、上側連結板部22が、複数の縦リブ24の全ての上端部に跨るように横架して、水平に広がる状態で配置されている。そして、それら複数の縦リブ24のうち、互いに隣り合う縦リブ24の上端部同士が、第一補強ビード70により、或いは第二補強ビード72の水平板部60により、互いに連結されている。
【0070】
更に換言すれば、上側連結板部22の前端側の下面には、複数の縦リブ24が、左右方向において互いに間隔を隔てて対向して、前後方向に延びるように配置されて、一体的に立設されている。そして、それら複数の縦リブ24のうち、互いに対向する縦リブ24の上端部同士の間に位置する上側連結板部22部分に、下方に向かって開口する断面コ字状の屈曲板形態を呈する第一補強ビード70が形成されているのである。
【0071】
かくして、本実施形態の脚払い装置54の前側部分には、縦断面八角形状の第一筒状構造体74と、縦断面四角形状の第二筒状構造体76とが、左右方向に交互に一つずつ並んで、それぞれ複数個(ここでは、第一筒状構造体74が7個で、第二筒状構造体76が8個)ずつ設けられている。
【0072】
すなわち、第一筒状構造体74は、上側連結板部22の第一補強ビード70の水平板部64及び側方傾斜板部66,66と、下側連結板部20の第二補強ビード58の水平板部64及び側方傾斜板部66,66と、二つの縦リブ24,24とを、それぞれ、筒壁部として、前後方向に延びる八角筒形状を有している。第二筒状構造体74は、上側連結板部22の第二補強ビード72と下側連結板部20の第一補強ビード56のそれぞれの水平板部60,60と、二つの縦リブ24,24とを、筒壁部として、前後方向に延びる四角筒形状を有している。そして、そのような複数の第一筒状構造体74と複数の第二筒状構造体76とにて、補強部18が構成されているのである。なお、互いに隣り合う第一筒状構造体74と第二筒状構造体76は、それらの間に位置する縦リブ24を右側又は左側の筒壁部として共有している。
【0073】
そして、本実施形態の脚払い装置54では、複数の縦リブ24と、それらを相互に連結する上側及び下側連結板部22,20の第一及び第二補強ビード56,58,70,72の水平板部60,64,64,60とが、従来の脚払い装置の、リブ構造体からなる補強部の縦リブと横リブの役割を、それぞれ果たしている。また、左右に隣り合う二つの縦リブ24,24と、それらの上端部同士を連結する、上側連結板部22の第一補強ビード70とにて構成される断面コ字状部分や、左右に隣り合う二つの縦リブ24,24と、それらの上端部同士を連結する、上側連結板部22の第二補強ビード72の水平板部60とにて構成される断面コ字状部分が、従来の脚払い装置の補強部に設けられた上側補強ビードの役割を果たしている。更に、下側連結板部20の第二補強ビード58の水平板部64や第一補強ビード56の水平板部60が、従来装置の補強部に設けられた上側補強ビードの縦壁部(縦リブ)を連結する連結リブの役割を果たしている。或いは、左右に隣り合う二つの縦リブ24,24と、それらの下端部同士を連結する、下側連結板部20の第二補強ビード58とにて構成される断面コ字状部分や、左右に隣り合う二つの縦リブ24,24と、それらの下端部同士を連結する、下側連結板部20の第一補強ビード56の水平板部60とにて構成される断面コ字状部分が、従来の脚払い装置の補強部に設けられた下側補強ビードの役割を果たしている。また、上側連結板部22の第一補強ビード70の水平板部64や第二補強ビード72の水平板部60が、従来装置の補強部に設けられた下側補強ビードの縦壁部(縦リブ)を連結する連結リブの役割を果たしている。
【0074】
しかも、かかる脚払い装置54においては、従来の脚払い装置の補強部に設けられた上側補強ビードや下側補強ビードの役割を果たすコ字状部分に、或いはそれら第一及び第二補強ビードの縦壁部を連結する連結リブの役割を果たす部分に、縦断面コ字状乃至は台形状を呈する第一補強ビード56,70や第二補強ビード58,72が設けられている。
【0075】
従って、本実施形態の脚払い装置54は、前後方向に入力される衝撃荷重に対する剛性が、従来の脚払い装置の、リブ構造体からなる補強部や、複数の補強ビードと連結リブとを備えた補強部の剛性と略同等以上の大きさとされているのである。
【0076】
そして、かくの如き構造を有する脚払い装置54も、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10と同様にして、自動車前部の下部部位に設置されるようになっている。
【0077】
すなわち、例えば、
図9に示されるように、フロントバンパ12の下側突出部38の内側に、補強部18の前端部を突入させる一方、補強部18の上側連結板部22の後端面を、シュラウド46やラジエータ42の前面に対して僅かな距離を隔てて対向させた状態で、フロントバンパ12とラジエータサポート44との間に、前後方向に延びるように配置される。そして、取付板部14において、ラジエータサポート44の取付フランジ部52,52にボルト固定される。これによって、脚払い装置54が、自動車前部の下部部位において、フロントバンパ12の下側突出部38とラジエータサポート44との間に、複数の第一及び第二筒状構造体74,76を、衝撃荷重の入力方向となる前後方向に延びるように位置させた状態で、設置される。
【0078】
かくして、本実施形態の脚払い装置54にあっては、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10と同様に、自動車前部への設置状態下で、フロントバンパ12に接触乃至は衝突した歩行者の脚部を払って(すくい上げて)、歩行者をボンネット48等の衝撃吸収可能な部材側に転倒させ、以て、歩行者の保護及び安全を効果的に図ることが可能となっている。
【0079】
そして、かかる脚払い装置54では、特に、取付板部14がラジエータサポート44に固定された状態下で、補強部18の下側連結板部20に設けられた第一補強ビード56の後側傾斜板部68の後端が、ラジエータサポート44の前側に設けられた取付フランジ部52の前面に当接して、配置される。更に、上側連結板部22に設けられた第二補強ビード72の水平板部60の後端面が、ラジエータサポート44の前面に当接して、配置される。このことから明らかなように、本実施形態では、第一補強ビード56の後側傾斜板部68の後端部や第二補強ビード72の水平板部60の後端部にて、当接部が構成されている。
【0080】
また、上記したように、複数の縦リブ24の上端部同士或いは下端部同士を連結する部分が、縦断面コ字状乃至は台形状の第一補強ビード70や第二補強ビード72にて構成されている。
【0081】
そうして、本実施形態の脚払い装置54にあっては、前後方向に入力される衝撃荷重に対する剛性が、より有利に高められている。それ故、フロントバンパ12に接触乃至は衝突した歩行者の脚部を、より確実に払って、歩行者の保護及び安全を更に一層効果的に図ることができるのである。
【0082】
また、かかる脚払い装置54では、上側連結板部22に設けられる第一補強ビード70の突出高さ:H
2 や、下側連結板部20に設けられる第二補強ビード58の突出高さ:H
1 が、従来の補強ビードの突出高さよりも十分に低くされて、それら第一及び第二補強ビード70,58の側方傾斜板部66,66の幅:W
2 ,W
1 が可及的に小さくされている。このため、第一補強ビード70や第二補強ビード58が、補強部18に衝撃荷重が入力された際に、突出高さの大きな従来の第一及び第二補強ビードよりも変形し難い構造とされている。そして、それにより、補強部18の剛性が更に効果的に高められ、以て、歩行者の保護を、より効果的に図り、また、歩行者の安全を更に有利に確保することが可能となっている。
【0083】
そして、本実施形態の脚払い装置54においては、上側連結板部22の上面からなる上側導風面32が、エンジンルーム:E内の下部部位におけるフロントバンパ12の後面(内面)からラジエータ42の前面までの略全領域に亘って、水平方向に広がるように配置されている。また、下側連結板部20の下面からなる下側導風面30が、エンジンルーム:Eの外部において、水平方向に広がるように配置されている。
【0084】
従って、本実施形態の脚払い装置54にあっても、前記第一の実施形態に係る脚払い装置10と同様に、自動車前部の下部部位への設置状態下で、自動車前部の下部部位の空力抵抗を十分に低下させて、自動車下部の空力性能を効果的に高めることができ、それによって、燃費の向上を有利に達成できるのである。
【0085】
なお、本実施形態では、下側連結板部20に対して、左右方向に延びる後側傾斜板部68が設けられているが、これは、面積が十分に小さく、しかも後方に向かって下傾する形態を有しているため、走行風の流れを妨げるものとはならない。
【0086】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0087】
例えば、縦リブ24の前後方向寸法や上側連結板部22の前後方向寸法は、適宜に変更可能である。
【0088】
すなわち、例えば、
図10に示されるように、縦リブ24の前後方向寸法を、上側連結板部22の前後方向寸法と同程度の大きさとしても良い。これによって、上側連結板部22と下側連結板部20とを、それらの前後方向寸法の全長に亘って延びる縦リブ24にて相互に連結することが可能となる。その結果、補強部18の剛性を、より効果的に高めることができる。
【0089】
また、
図11に示されるように、縦リブ24の前後方向寸法を下側連結板部20の前後方向寸法よりも短くする一方、上側連結板部22の前後方向寸法を、縦リブ24の前後方向寸法と同程度の寸法としても良い。このような場合には、補強部18の剛性を十分に確保しつつ、上側連結板部22の前後方向寸法を短くした分だけ材料コストの削減が、有利に図られ得る。
【0090】
さらに、
図12に示されるように、縦リブ24の前後方向寸法を上側連結板部22の前後方向寸法よりも長くしても良い。この場合には、脚払い装置10を自動車前部の下部部位に設置した状態下で、縦リブ24の後端部を、例えば、ラジエータサポート44の前面に当接させ得る程度の長さにおいて、縦リブ24の前後方向寸法を設定することが望ましい。即ち、前記第一及び第二の実施形態とは異なり、上側連結板部22の後端部に代えて、縦リブ24の後端部を、当接部として構成しても良いのである。この場合には、上側連結板部22の前後方向寸法を長くして、その後端部にて当接部を形成する場合よりも、脚払い装置10の形成材料を有利に節約できる。
【0091】
また、筒状構造体34,74,76は、脚払い装置10,54の前側部分に、左右方向に並んで複数配置された状態で、前後方向に延びるように形成されるものであれば、その具体的な形状が、何等限定されるものではない。例えば、断面形状が、円形状、楕円形状、多角形状、無定形状とされたものが、筒状構造体34,74,76として、適宜に採用される。更に、そのような筒状構造体34,74,76の形成個数も、複数であれば、特に限定されるものではない。
【0092】
更にまた、平板形状を呈する上側連結板部22の後端面を、取付板部14が取り付けられるラジエータサポート44等の車両部品に当接する当接部としても良い。
【0093】
なお、補強部18に当接部を設ける場合には、脚払い装置10,54の自動車前部の下部部位への設置状態下で、当接部が、ラジエータサポート44等の車両部品に必ずしも当接している必要はない。かかる当接部は、歩行者のフロントバンパ12への衝突により生ずる衝撃荷重によって、補強部18が変形する前、或いは補強部18の変形の開始の初期段階で、補強部18が後方に変位したときに、車両部品に当接するようになっておれば、当接部と車両部品との間に隙間が形成されていても良い。
【0094】
また、前記第二の実施形態に係る歩行者保護装置54では、その前側部分に、縦断面八角形状の第一筒状構造体74と、縦断面四角形状の第二筒状構造体76とが、左右方向に交互に一つずつ並んで、それぞれ複数個ずつ設けられて、補強部18が構成されていた。しかしながら、そのような第一筒状構造体74と第二筒状構造体76の並び順を適宜に変更して、補強部18を構成することもできる。
【0095】
さらに、上側連結板部22と下側連結板部20のうちの何れか一方を、縦断面コ字状を呈する屈曲板部としての第一及び第二補強ビード56,58,70,72が設けられた波形の板材にて構成する一方、それらのうちの何れか他方を、それら第一及び第二補強ビード56,58,70,72が何等設けられていない平板にて構成しても良い。
【0096】
また、筒状構造体34,74,76を、上下方向に、複数段、積み重ねた状態で、車幅方向に、複数個、並べて配置して、補強部18を形成することも可能である。
【0097】
加えて、本発明は、自動車の前面に取り付けられたフロントバンパの内側に設置される歩行者保護装置の他、フロントバンパの内側以外に設置されるものや、自動車以外の車両の前部の下部部位に様々な形態で設置される歩行者保護装置の何れに対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
【0098】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。