(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において、放射線物質に接触した全てのコンポーネントは「原子力アイランド」に共に集められる。これは一次回路、オーバーフロー槽、および炉心キャッチャと共に安全容器(内側格納)を含む。水素爆発を防止するために雰囲気中に進入する水素の割合を減少させる目的で、安全容器の上部部分においては、触媒再結合器または再結合システムを導入することができる。
【0003】
原子力発電所において、特に加圧原子炉および沸騰水型原子炉において、冷却タンクにおいてだけでなく、核燃料棒と接触する水が存在する領域において、核燃料棒の表面において放射線分解により著しい量の水素および酸素が形成されえる。また、加熱金属と水(蒸気)の間の他の接触エリアにおいても、特に一次回路のコンポーネント中において、水の水素および酸素への分解が生じえる。原子力アイランドの建屋に水素が蓄積した場合、爆発性雰囲気が生じえ、万が一爆発した場合には、原子炉圧力容器および一次回路の他の領域を破壊しえ、その場合、大量の放射性物質の放出が予測される。そのような出来事の例として最大の事故とされるのは福島における核の大災害である。
【0004】
このような大災害をさけるために、最近、原子力発電所は再結合システムを備えるか後付している。これらは受動システムであり、その課題は大気条件において室温で形成される水素を触媒活性により再酸化することであり、それにより爆発性雰囲気の形成を避ける。このシステムは、特に緊急電源が落ちた場合において、例えば、加熱装置、送風機などの能動的な補助装置なしに自動的に始動し処理される必要があり、さらに外部の補助なしで実行される必要がある。
【0005】
反応の開始は、例えば、安全容器中に一般的な動作状態で保管もしくは置いてある触媒材料などの新しい触媒材料により安全に生じさせる必要がある。再結合器は、爆発性濃度まで上がる前に放出された水素を反応させて水を形成するのを確実なものにするが、冷却タンクおよび燃料要素容器にも使用することができる。言い換えれば、この触媒は現役の原子力発電所および閉鎖されている原子力発電所の両方、再処理工場および燃料貯蔵庫に有用である。
【0006】
この目的のために、0.4〜0.5質量%のPdがドープされたAl
2O
3床触媒が知られており、当該触媒は、有機ケイ素による複雑な工程において疎水化され、それにより温度が上昇を伴う不調により必然的に生じる高水蒸気濃度下で再結合触媒が作用することができる。この製造工程は高価であり、製造工程において重大な技術的な問題を有する。疎水化層は、約180℃より高い温度で、また分解する。通常の動作においては、安全容器の雰囲気からの有機物質が触媒上に堆積し、これらは表面をブロックすることで触媒の効率を減少させるので、これでは十分ではない。疎水化層の破壊なしに有機物質の燃焼による触媒の再生は、不可能である。このため、再調整において触媒の置換により新しい触媒の調達および状況下によっては残る古い触媒の廃棄に多大なコストが必要となる。さらに、放出された熱エネルギーにより疎水化層は、爆発を誘発しえる火花が生じえる。
【0007】
さらに、(たとえばAl
2O
3上のPd)の純粋無機コーティングを有する金属シートをベースとする再結合触媒が知られており、これらは隣接して吊るされて配置される。これは、再結合器中の圧力低下およびガス速度を減少させる。起動が自動対流により受動的に生じる必要があるため、重要である。さらに、再調整の間の燃焼により金属シートが再生されることができる。しかしながら、不利なことに、Al
2O
3の疎水性により、高い水負荷を阻害し効果を非活性化させるのに対抗し、機能する再結合触媒能を上げるために、比較的大量の貴金属が必要となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施形態例の記載において、用語、水素酸化および水素再結合は同義として使用される。さらに、水素酸化触媒は、また、触媒として簡略化され示されることもある。さらに、用語、ゼオライトおよびゼオライト材料は、以下の記載において同義として使用される。
【0018】
さらに、本発明の実施形態例を、白金または、白金およびパラジウムを含む疎水性ゼオライトをベースとして記載するが、本発明はこれらの貴金属に限定されない。
【0019】
実施形態例において、用語「含む」は「本質的になる」または「なる」を含み、これらと置き換えることができる。これは単語「含む」の文法的修飾も同様に受け入れ可能である。さらに、ここで値の範囲の場合において、代替的な狭い範囲または好ましい範囲とともに広い範囲が報告されている場合、示される下限範囲の制限と共に示される上限範囲の制限のあらゆる組み合わせで形成できる範囲が開示範囲として、解釈される。
【0020】
ある実施形態例においては、少なくとも一つの触媒活性貴金属もしくはその化合物を含むゼオライトを含有する水素酸化触媒が提供され、ここでゼオライトは疎水性ゼオライトである。疎水性ゼオライトは、例えば、94質量%、好ましくは98質量%を超える高い割合のSiO
2を含むことができる。用語「触媒活性貴金属もしくはその化合物」は、本発明の目的において、また、触媒活性貴金属の前駆体、または触媒活性貴金属の前駆体化合物を意味することができ、または、前駆体のそのような前駆体/化合物も包含する。
【0021】
驚くべきことに、本発明による触媒の実施形態例であれば、低い貴金属濃度においてさえ、水素酸化の優れた活性に加え優れた再生可能性を有することが可能である。本実施形態例において使用されるゼオライトの疎水性特性は、例えば、>98%のSiO
2を有し、貴金属含有ゼオライトをもたらし、その結果さらに、疎水性を有する実施形態例の触媒となる。その結果、新しい触媒および貯蔵されているか若しくは比較的長期間生された触媒の両方をさらなる測定器具なしに使用するために準備される。それにより、推移其の酸化が、自動的に導入され触媒され、そして、さらに過度の遅れがなしに触媒により長期間維持される。
【0022】
本発明の実施形態例において、貴金属がドープされたゼオライトはバルク材料として、またはハニカム構造もしくは金属シートに適用されても使用されることができる。その結果、その貴金属が低濃度であるために、貴金属の使用量が低く有利な調達価格を有する水素酸化触媒または再結合触媒を提供することが可能となる。
【0023】
さらに、実施形態例において使用されるゼオライトの疎水性特性があるために、例えば有機ケイ素化合物による外部のコーティングは必要なく、または、貴金属含有のゼオライトまたは触媒を疎水性にするために他の手段も必要ない。これにより、触媒に堆積していた(有機)材料の燃焼からの触媒の再生が可能となる。実施形態例において使用されるゼオライトの疎水性特性は、燃焼による減少がない。さらに、疎水性コーティングを有する触媒と比較して、燃焼により製造された分解生成物の量が十分に低減される。
【0024】
本発明の目的の範囲において、ゼオライトまたはゼオライト化合物は、国際鉱物学協会(International Mineralogical Association)の規定((D.S. Coombs et al., Can. Mineralogist, 35, 1997, 1571)によるものであり、骨格構造により特徴付けられる構造を有する結晶性物質は、相互接続した四面体により構成される。ここで各々の四面体は中心原子を囲む4つの酸素原子で構成され、溝の形の開口中空スペースを含む骨格構造、および通常水分子で占められるケージを有し、交換することができる余剰骨格構造のカチオンを有する。材料の溝は、ゲスト化合物の接近を許容できる大きさがある。水和された材料の場合、約400℃未満の温度において通常は脱水が生じ、そしれ、それは多くの場合可逆である。
【0025】
実施形態例において使用することができるゼオライト材料は、例えば、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、リン酸ケイ素アルミニウム、リンケイ酸金属アルミニウム、ケイ酸ガリウムアルミニウム、ケイ酸ボロアルミニウム、またはリン酸チタンケイ素アルミニウム(TAPSO)、また、とくに好ましくはケイ酸アルミニウムゼオライトであるケイ酸アルミニウムである。
【0026】
用語「ケイ酸アルミニウム」は、国際鉱物学協会(International Mineralogical Association)の規定((D.S. Coombs et al., Can. Mineralogist, 35, 1997, 1571)によれば、一般式M
n+[(AlO
2)
x(SiO
2)
y]xH
2Oの三次元構造を有する結晶性物質であり、SiO
4/2とAlO
4/2の四面体により構成され、共通の酸素原子により結合され、規則的な三次元構造を形成する。Si/Alの原子比=y/xであり、二つの近接する負電荷AlO
4/2の存在を禁止する“Lowenstein Rule”によれば、常にこれは1以上である。ケイ酸アルミニウムゼオライトにおけるSiO
2/Al
2O
3の比も、また、定数として示される。
【0027】
実施形態例の触媒において使用されるゼオライトは、本質的に疎水性であることが好ましい。すなわち、貴金属を有さないゼオライトが疎水性であることが好ましい。先行技術から既知の適切なドープ方法の選択において、これにより貴金属を含むゼオライトの選択に至り、また、実施形態例の触媒はさらなる補助剤または手段なしに疎水性であるものが選択される。前記ゼオライトの疎水性特性を生じさせたり増加させるための使用されるゼオライトの処理は必要ない。
【0028】
触媒のさらなる実施形態例においては、ゼオライトはケイ酸アルミニウムであり、かつ/または、>94質量%、好ましくは>98質量%の概算比率のSiO
2を有する。好ましい実施形態例においては、94質量%、好ましくは>98質量%の概算比率のSiO
2を有するゼオライトが使用される。
【0029】
係数SiO
2/Al
2O
3の関数としてのSiO
2の概算比率は以下である:
SiO
2/Al
2O
3 SiO
2の質量%
10 85
20 92
30 94
50 97
100 98
150 99
【0030】
本発明の実施形態例においては、使用されるゼオライトは好ましくは>30のSiO
2/Al
2O
3比を有し、より好ましくは>50であり、特に>100である。驚くべきことに、そのような高いSiO
2/Al
2O
3比率によってのみ、十分なゼオライトの疎水性特性を生じさせ、貴金属および/または完全な触媒としての貴金属含有ゼオライトを含ませない。ある実施形態例においては、使用するゼオライトのSiO
2/Al
2O
3比は>100または>140の範囲であり、例えば、100〜250または130〜170の範囲である。
【0031】
ある実施形態例においては、貴金属含有ゼオライトを含むウオッシュコートにより被膜されたハニカム構造もしくは成形品として触媒が製造される場合、ゼオライトは0.1〜10質量%の貴金属、このマイクは0.5〜8質量%の貴金属、さらに好ましくは1〜5質量%の貴金属を含むことができる。ハニカム構造または成形品として構成される最終触媒において、貴金属の含有量は、0.01〜5g/lであり、好ましくは0.1〜3g/lであり、そして、特に好ましくは0.3〜1.0g/lである。さらなる実施形態例において、バルク材料またはバルクもしくは粉体(schuttbare)押出成形物として製造される触媒である場合、貴金属の含有量は、貴金属含有ゼオライトをベースとして0.01〜0.5質量%、好ましくは0.02〜0.4質量%および、特に好ましくは0.03〜0.3質量%である。驚くべきことに、当該実施形態例の触媒であれば、このような少量の貴金属量であっても水素の酸化うにおいて優れた活性を示す。
【0032】
実施形態例において使用されるゼオライト材料としては、好ましくは以下の構造タイプの一つに対応するものとすることができる:ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUGおよびZON、それと共に、12員環の細孔システムを有するゼオライト材料(BEA、FAU)が好ましく、構造タイプベータ(BEA)の材料が特に好ましい。上記の3文字コード命名法は、“IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature”(IUPAC委員会のゼオライト命名法)のコードに対応する。さらに、本発明の実施形態によれば、ゼオライトは、AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TONおよびMFIから成る群から選択されることができる。ここで示されるゼオライトの構造タイプ本発明の目的に適している。なぜなら、これらであれば所望の疎水性特性が得られ、および/または、触媒における低濃度の貴金属量であっても特に有利に所望の活性が実現されるからである。
【0033】
実施形態例においては、貴金属としては、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、金および銀、並びにこれらの貴金属の組合せから成る群から選択されることができる。本発明の実施形態例においては、これらの金属は、水素の酸化触媒において特に所望の活性を示す。
【0034】
例の触媒のBET表面積は、10〜1000m
2/g、好ましくは300〜900m
2/g、特に好ましくは500〜700m
2/gであることができ、かつ/または、触媒の積分細孔容積は、100mm
3/gより大きく、好ましくは200mm
3/gより大きいとよい。個々のこれらの特性、またはこれらの特性の組合せは、水素酸化触媒の触媒活性に有利な影響を与えることができる。
【0035】
水素酸化触媒の好ましい実施形態例においては、貴金属が、ゼオライトの細孔中に本質的に位置することができる。同様に、これにより水素の酸化が促進される。ゼオライトの細孔中において触媒貴金属が高度な分散状態で存在する触媒金属が水素と特に容易に接触できるからである。さらに、触媒活性表面の損失につながりそれにより性能が劣ることを導く高い温度における貴金属粒子の凝集についても、十分に抑制され、それにより防止される。したがって、触媒は、酸化すべき水素が大量にある場合においても効果を十分に生じる。
【0036】
例えば、貴金属は、イオン交換または含侵によってゼオライトに導入することができる。貴金属は、ゼオライト中に、貴金属粒子の形態であっても、貴金属酸化物粒子の形態であっても、または、金属および金属酸化物の混合相であっても、存在できる。さらに、貴金属粒子は好ましくはXRD−アモルファスであり、さらに、5nm未満の平均粒径を有することが好ましい。
【0037】
本発明の触媒の実施形態例においては、触媒の全てが活性の触媒として、または被膜された触媒として存在していることが好ましい。例えば、全てが活性の触媒としては押出し成形品であり、例えば、物リスである。
【0038】
ある実施形態例においては、押出成形物または成形物として構成されることができる。さらなる実施形態例においては、ゼオライトまたはゼオライト含有ウオッシュコートが支持体上に適用された支持体を含むことができる。さらに、触媒および/または支持体は、ハニカム状構造または板状の構造とすることができる。これらのケースにおいては、貴金属の含有量を、特に触媒容積に基づいて、0.01〜5g/lとすることができる。
【0039】
例の触媒は、バルク材料として構成されることもできる。また、触媒は、例えば、ゼオライトが被膜された、押出成形物、成形物、または粒子として構成されてもよい。ある実施形態例においては、触媒は押し出されて紛体押出成形物または成形物が形成されることができる。例えば、バルク材料は、貴金属を含むゼオライトの懸濁液を加圧成形または押出成形することにより製造される成形物またはペレットにより成ることができる。これらのケースにおいては、貴金属の含有量を、貴金属含有ゼオライトに基づいて、0.01〜0.5質量%とすることができる。
【0040】
触媒または成形体の実例となる幾何学的形態としては、球状、リング状、シリンダー状、細孔を有するシリンダー、三葉状、または円錐が挙げられ、好ましくは、石柱状、例えば、石柱状ハニカム形態である。
【0041】
さらに、上記のように、触媒は、ゼオライトまたはゼオライト含有ウオッシュコートが支持体上に適用された支持体を含むことができる。ウオッシュコートとしては、任意に好ましくはシリカバインダーが添加された、例えば、懸濁媒体中、例えば、水中のゼオライト懸濁液またはスラリー製のものが使用される。例えば、ゼオライトは、懸濁液もしくはウオッシュコートを被膜することで、または溶液から支持体上で成長させることで適用されることができる。
【0042】
上記のように、触媒および/または支持体は、ハニカム構造、または板状構造を、例えば金属シートとして有することができる。板状の変形形態としては、原子力発電所の安全容器の上部部分において複数の水素酸化触媒を並列に設置することができ、その結果として、触媒における良好な水素ガスの流れが達成されることができる。
【0043】
さらに、ハニカム触媒として構成される場合、ウオッシュコートと組み合わせた触媒が好ましく、ハニカム本体の容積をベースとして、0.01〜5.0g/l、より好ましくは0.1〜3.0g/lおよびもっとも好ましくは0.3〜1.0g/lの貴金属含有量を有する。
【0044】
ある実施形態例においては、支持体は金属酸化物、好ましくは酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム−酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、または、上記酸化物の二つかそれ以上の混合物を、支持体材料として、含む。セラミック材料から成る支持体または支持体物体を使用することもできる。セラミック材料としては、しばしば、不活性の低表面積材料、例えば、コージライト、ムライト、アルファ−酸化アルミニウム、炭化ケイ素、または、チタン酸アルミニウムである。しかしながら、使用される支持体物体としては、また、高表面積材料から成ることもでき、例えば、ガンマ−酸化アルミニウム、またはTiO
2である。また、金属を支持体材料として使用することができる。そのため、好ましい支持体または支持体物体は、同様に、例えば、金属シートからできた支持体または支持体物体、あらゆる金属からできた支持体または支持体物体、金属箔または焼結金属箔または金網を含み、かつ、例えば、押し出し成形、巻き上げ、またはスタッキングにより製造された金属合金からできた支持体または支持体物体を含む。
【0045】
さらに、金属製支持体の場合、支持体を好ましくは500〜900℃で前焼成する、または/かつ、周知技術、例えば、酸による洗い、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2およびこれらの混合物などの金属酸化物による被膜(コーティング)などの、周知の適切な物理的、化学的および/または電気化学的方法による酸化結合層を有する支持体を提供することで有利に成り得る。
【0046】
特に、実施形態例における触媒は、原子力発電所、再処理工場または燃料貯蔵庫、例えば、原子力発電所の安全容器もしくは冷却水タンク、または、未照射燃料要素、照射燃料要素または焼け出された燃料要素のための容器中において、酸化触媒酸化触媒として、および/または水素再結合のために使用することができる。ここで、実施形態例における触媒は、水と接触する熱面、例えば、金属表面などのシステム中においても使用することができる。
【0047】
本発明は、また、原子力発電所、再処理工場または燃料貯蔵庫における水素再結合のための方法を提供し、当該方法においては、水素および酸素を上記実施形態のうちの一つの触媒に接触させる。この場合、上記の利益が達成される。
【0048】
例における触媒は、貴金属をゼオライト材料に導入するという方法により製造することができる。上記のように、上記の本質的に疎水性であるゼオライトをゼオライト材料として使用することができる。
【0049】
触媒を製造するための例としては以下を含む:a)金属化合物とも示される貴金属化合物をゼオライト化合物に導入する;b)金属化合物を含むゼオライト材料を多孔性支持体材料とともに湿式ミルを行う;c)含まれたゼオライト材料および支持体材料含む混合物を焼成する;そしてd)ゼオライト材料に含まれる金属化合物の金属を金属粒子から成るその金属形態に変換すること。ここで、固定段階を段階a)の後、かつ段落b)の前に行うことができ、当該段階においては当該段階は金属化合物を含むゼオライト材料の焼成を含み、金属化合物の金属をゼオライト材料に固定する。固定段階は金属化合物の金属のその金属形態もしくは酸化形態、または金属酸化混合相への変換を含む。さらに、支持された触媒を安定させる安定化段階を行うことができる。例えば、焼成を200〜800℃の温度で行うことができる。このような方法においては、多孔性支持体材料およびその内側表面が金属粒子が詰まっているゼオライト化合物を含む支持された金属触媒を得ることができる。
【0050】
本発明の目的において、「支持された触媒」は被膜された触媒とも示し、事実上触媒活性を有する種を含む典型的な多孔性層を有する支持体本体が被膜され製造された固体状態の触媒である。
【0051】
貴金属化合物(ここでは金属化合物とも示す)のゼオライト材料もしくはゼオライトへの導入は、固体状態の内部交換、固体状態のイオン交換により行うことができ、本発明の実施形態例のものが提供される。例えば、導入は、乾燥状態中でのボールミル中でのゼオライト材料を金属化合物と混合し、さらに、それに続く、好ましくは450〜650℃の熱による高温下の熱処理によって、成立する。もしくは代替的に、金属化合物の導入は、ゼオライト材料への金属化合物溶液による含侵、例えば、溶液をゼオライト材料への噴霧することで成立する。チャンバー中に適用される吸引により乱流が生じ、かつ、さらに大気中より低い大気が流入するチャンバー中においてもまた含侵を行うことができる。実施形態例を製造するための他の方法においては、金属化合物の導入は、細孔充填手段により金属化合物の溶液をゼオライト材料に含侵させることで成立する。ここで、ゼオライト材料は、使用されるゼオライト材料の細孔容積に体操する溶液の容積量に接触させることになる。
【0052】
貴金属化合物としては、触媒を製造するための方法中において、適切な硝酸塩、アセテート、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、アミン、亜硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物または水酸化物を使用することができる。
【0053】
実施形態例中において、触媒を製造するために使用されるゼオライト材料としては、微多孔性またはメソポーラス(メソ多孔性)のゼオライト材料、例えば、構造タイプベータ、またはMCMファミリーからの構造とすることができる。
【0054】
実施形態例における触媒は、例えば、微多孔性貴金属含有ゼオライト材料、および多孔性の、好ましくはSiO
2含有バインダーを含むことができ、ここで触媒は、例えば、粒径が<1nmである微小孔の割合が触媒の全孔容積をベースとして70%より大きい割合で有することができる。さらに、ゼオライト材料は、2モル%未満のアルミニウムの割合を有することができる。ゼオライト材料/バインダーの質量比は99:1〜50:50とすることができる。SiO
2含有バインダーとしては、純粋SiO
2バインダー、例えば、Bindzil 2034 DI懸濁液(Eka−Chemicals AB, Bohus/Sweden)を使用することができる。
【0055】
当該実施形態例におけるこのような触媒は、a)貴金属前駆体化合物を微多孔性ゼオライト化合物に導入する;b)貴金属前駆体化合物を含むゼオライト材料を焼成すること;c)得られた貴金属化合物を含むゼオライト材料を多孔性SiO
2含有バインダーおよび溶媒と混合すること;そしてd)貴金属化合物およびバインダーを含むゼオライト材料を含む混合物を乾燥および焼成することにより製造することができる。ここで段階c)で得られた混合物を支持体(ここでは支持体本体とも示す)上に適用または押出することもできる。さらにゼオライト材料に含まれる貴金属化合物の金属をその金属形態に変換することを行うことができる。貴金属化合物の対応する貴金属への変換は通常、熱分解、例えば、焼成段階のうちの一つにおいて、または還元、例えば水素による、によって行われる。
【0056】
実施形態例の触媒を製造するためのさらなる方法においては、2種類の金属から成る(バイメタリック)の触媒が製造される。この例としては、Pt−Pd含有触媒が得られる製造を以下にしめす:ゼオライト支持体材料へ、硫黄不含のPtおよびPd前駆体化合物を含侵させ、含侵されたゼオライト支持体材料を大気中で乾燥させ、含侵させ乾燥させたゼオライト支持体材料を空気中で焼成する。PtおよびPd前駆体化合物としては、硝酸塩の溶液を使用することができる。さらに、焼成は、350〜650℃の温度で行うことができる。特に、含侵されたゼオライト支持体材料の乾燥は、PtおよびPd前駆体化合物の分解点より下で行うことができる。この方法において、以下の段階もまた入れることができる:含侵され焼成されたゼオライト支持体材料からのウオッシュコートの製造、ウオッシュコートによる支持体本体の被膜、被膜された支持体本体の空気中での乾燥および焼成。焼成は、好ましくは300〜600℃、より好ましくは400〜550℃で行う。焼成時間は好ましくは1〜8時間より好ましくは2〜6時間、特に、約3〜5時間である。
【0057】
このように、実施形態例によれば、ゼオライト支持体材料上にPtおよびPdを含有する2種類の金属から成る触媒活性組成物を含む触媒を製造することができる。2種類の金属から成る触媒活性組成物は400m
2/gより大きいBET表面積を有しえる。
【0058】
一つの実施形態例として、ハニカム構造または他の成形体に触媒活性組成物を適用する場合、2種類の金属から成る触媒活性組成物を、貴金属含有ゼオライトをベースとして、貴金属の0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%含むことができる。さらなる本発明の実施形態例においては、触媒がバルク材料または粉体押出成形物として製造される場合、2種類の金属から成る触媒活性組成物の貴金属は、再び、貴金属含有ゼオライトをベースとして、0.01〜0.5質量%、好ましくは0.02〜0.4質量%および特に好ましくは0.03−0.3質量%である。上記の実施形態例の両方において、2種類の金属から成る触媒活性組成物は、6:1〜1:1のPd/Pt質量比を有することができる。この例の触媒において、PtおよびPdは、ゼオライト支持体材料の細孔の中および<5nmの凝集体中に、本質的に存在することができる。
【実施例】
【0059】
測定方法
ICPを使用した元素分析
元素組成およびSiO
2/Al
2O
3比を測定するためにICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分析)を、ICP Spectro Modula/Arcos装置を使用して行った。薬品としては、以下を使用した:硫酸98%AR、フッ化水素酸37%AR、塩酸37%AR。サンプルは、細かく粉砕した。
【0060】
SiおよびAlにおいては、100mgのサンプルをプラスチックビーカーに入れ、1mlの硫酸および4mlのフッ化水素酸を混合した。サンプルを水浴中85℃で5分間、透明な溶液が形成されるまで消化させた。混合物を冷却し、マークをつけ振った。全ての元素をICPとさらに対応する基準で測定した。Siは以下の設定を使用して測定した:波長:288,158nm。Alは以下の設定を使用して測定した:波長:396,152nm。
【0061】
Ptおよび/またはPdにおいては、約3mgのPtまたはPdがそこに存在するように、サンプルの量を秤量した。6mlのフッ化水素酸および6mlの塩酸をその後加えた。それから、攪拌しながら混合物を180℃で30分間加熱し、透明な溶液を生じさせた。混合物を冷却し、マークをつけ振った。全ての元素をICPとさらに対応する基準で測定した。Ptは以下の設定を使用して測定した:波長:214,423nm。Pdは以下の設定を使用して測定した:波長:324,270nm。
【0062】
全ての基準は、HFおよびHClまたはH
2SO
4を使用し、適合していた。評価は以下の計算により行った:w(E*、%)=β(E*測定値、mg/l)×V(容量フラスコ、l)×100/m(サンプル質量、mg)(E*=各元素。
【0063】
BET表面積:
測定はDIN66131に従いBET方法により行った;BET方法としては、J. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)より出版されている。測定するサンプルを、U字型の石英ガラス反応装置において200℃でAr雰囲気下(F=50ml(min)1.5時間)において乾燥させた。それから反応装置を室温に冷却させ、液体窒素を含むDewar容器中に排出し浸けた。窒素吸着は、RXM 100収着システム(Advanced Scientific Design, Inc.)を使用し、77Kにおいて行われた。
細孔容積および細孔サイズ:
積分孔容積は、DIN66134に従い測定し、細孔サイズ分布の測定および窒素収着によるメソ多孔性固体の比表面積はBJH法(Barrett, JoynerおよびHalendaの方法)で測定した。
【0064】
例1
1.貴金属含有粉末Pt−BEA−150の製造
バタフライ攪拌器を有するNetzschのミキサー中でPt−BEA−150粉末(SiO
2/Al
2O
3=150)を水で希釈したPt(NO
3)
2溶液により含侵させ、その後、120℃で6時間乾燥させた。当該Pt−ゼオライトを、その後、アルゴン雰囲気下(流速50l/h)550℃/5時間(加熱速度60K/h)で焼成した。Pt−BEA−150粉末のPt含有量は、1.8質量%であった。
【0065】
2.ウオッシュコートおよびハニカム被膜の製造
上記で製造した650gのPt−BEA−150粉末を、Ultra−Turrax攪拌器を使用して、沈殿物が存在しなくなるまで、432gのBindzil 2034 DI懸濁液(Eka−Chemicals AB,Bohus/Sweden)と共に約10分間分散させ、950gの水中の懸濁液を製造した。続いて、200cpsiのコージライト支持体を30秒間で懸濁液中に浸した。取り出したあとに、30.2gのウオッシュコートに被膜された支持体を圧縮空気で吹き付けて、一晩150℃で乾燥させた。最終的に、支持体は550℃で3時間にわたり対流加熱炉中で焼結した。
【0066】
例2
1.貴金属含有粉末PtPd−BEA−150の製造
バタフライ攪拌器を有するNetzschのミキサー中でPt−BEA−150粉末(SiO
2/Al
2O
3=150)を水で希釈したPt(NO
3)
2およびPd(NO
3)
2溶液により含侵させ、その後、90℃で6時間乾燥させた。当該Pt−ゼオライトを、その後、アルゴン雰囲気下(流速50l/h)550℃/5時間(加熱速度60K/h)で焼成した。Pt−BEA−150粉末のPt含有量は、0.8質量%であり、Pd含有量は、2.3質量%であった。
【0067】
2.ウオッシュコートおよびハニカム被膜の製造
上記で製造した650gのPt−Pd−BEA−150粉末を、Ultra−Turrax攪拌器を使用して、沈殿物が存在しなくなるまで、432gのBindzil 2034 DI懸濁液(Eka−Chemicals AB,Bohus/Sweden)と共に約10分間分散させ、950gの水中の懸濁液を製造した。続いて、200 cpsi コージライト支持体を30秒間で懸濁液中に浸した。取り出したあとに、27.1gのウオッシュコートに被膜された支持体を圧縮空気で吹き付けて、一晩150℃で乾燥させた。最終的に、支持体は550℃で3時間にわたり対流加熱炉中で焼結した。
【0068】
比較例
比較例としては、PdがドープされたAl
2O
3触媒、すなわち、Sud−Chemie AGからのE2051 PGBを使用した。これは、粒子径4〜6mmであり、Pdが0.4〜0.5質量%ドープされたバルク材料触媒であり、トリエトキシプロピルシランの層を適用された結果、疎水性特性を有する。適用されたトリエトキシプロピルシランの層は、180℃より高い温度で熱的に分解される。
【0069】
【表1】
製造された触媒の触媒活性を、石英ガラスが並ぶ固定床反応装置中で調べた。変換量の当量として、触媒入口と触媒出口の温度差を温度計で測定した。触媒入口と触媒出口の温度差が<5Kであるbな相、反応は触媒され、すなわち水素の酸化が「着火していない」と考えられる。差が>40Kである場合、水素の酸化が「着火した」と考えられ、すなわち、独立にそれが開始され進んでいる。
【0070】
図1は、水素着火試験(空気中0.67%のH
2および0.1%のH
2O)における例1および例2の着火挙動を示し、現在の例の触媒入口と触媒出口の温度差を「ホットスポット」として示し、触媒入口の温度に対してプロットした。
図2は、水素着火試験(空気中0.67%のH
2および0.1%のH
2O)における比較例の着火挙動を示し、触媒入口(下の曲線)および触媒出口(上の曲線)の温度を試験開始からの時間に対してプロットした。
【0071】
例1および2において各々比較例の14%および23%の量の貴金属しか使用していないにも関わらず、
図1および2においては2つの例1および2だけでなく比較例においても32℃の入口温度で着火している。これは、本発明の実施形態例による触媒が、低い貴金属濃度において水素酸化について優れた活性を有し、さらに十分にコストを削減できることを示す。
【0072】
例1および2において使用された貴金属がドープされたBEA−150ゼオライト、および対応する触媒は、例えば高い焼成温度(550℃)を示しているので、高い温度安定性も有している。これは、180℃において熱的に分解され得る有機ケイ素が適用されることによって疎水性特性が付与された比較例と比較すると顕著に適合されるものである。そのため、本発明の実施形態例の触媒を使用する場合、有機堆積物の燃焼による再結合システムの再生が可能になる。さらに、有機ケイ素の層が燃焼により文化し、それにより触媒の疎水性特性が減少するか消失さえする比較例の触媒と比較すると、これは非常に有利である。