(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030224
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】通信プロトコル
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20161114BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20161114BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H02M1/08 A
H03K17/687 A
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-506294(P2015-506294)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-519793(P2015-519793A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】GB2013050572
(87)【国際公開番号】WO2013156749
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】1206921.7
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390035459
【氏名又は名称】マシイネンフアブリーク・ラインハウゼン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】クローニン、 アイヴァン
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−042557(JP,A)
【文献】
特開2006−238635(JP,A)
【文献】
特開2011−078178(JP,A)
【文献】
特開2008−288809(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0046489(US,A1)
【文献】
特開2010−273042(JP,A)
【文献】
特開2006−109686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00
H02M 1/08
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデバイスとドライバーを含むデバイスサイド回路と、ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を備える電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するために、感知能力をデバイスドライバーに追加する方法であって、
前記デバイスドライバーは、通信リンクによって、前記ドライバーコントローラと結合するように配置され、
前記デバイスドライバーは、前記通信リンクで前記ドライバーコントローラから受信されるスイッチング信号に応答して、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフドライブするように構成され、
前記デバイスドライバーは、受信される前記スイッチング信号に応答して、アクノリッジ信号を前記ドライバーコントローラに送信するようにさらに構成され、前記アクノリッジ信号は有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラに検知される前記方法において、
前記デバイスサイド回路の状態を出力するための感知回路を提供する工程と、
伝送前の状態情報に対応して、前記アクノリッジ信号を変調する変調回路を提供する工程であって、変調された前記アクノリッジ信号は、受信された前記スイッチング信号に応答して、前記デバイスドライバーから前記ドライバーコントローラに伝送されるべき前記アクノリッジ信号であって、前記ドライバーコントローラで有効な前記アクノリッジ信号として検出可能である工程とを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ドライバーコントローラ側で有効であるとして検出される前記アクノリッジ信号は、あらかじめ定められた最小値および/または最大値に準拠する継続時間を有する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記状態情報は、前記デバイスサイド回路のステータス、または前記デバイスサイド回路のパラメータの測定値を示し、
前記変調回路を提供する工程は、一つ以上の前記アクノリッジ信号に前記ステータスまたは測定された値を符号化するように、一つ以上の前記アクノリッジ信号を変調する工程を含み、各前記スイッチング信号に応答して、前記アクノリッジ信号または各前記アクノリッジ信号が生成される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記ステータスは、前記デバイスサイド回路のパラメータが閾値未満であるか否かを示し、パワースイッチングデバイスが当該デバイスの安全動作の限界値の中で動作しているか否かを示す方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、
前記パラメータには、
前記デバイスの温度、電圧または電流;または
前記デバイスのピーク電圧またはピーク電流等のイベントのタイミングが含まれる方法。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の方法において、
前記パラメータは、
パワースイッチングデバイスのゲート電圧またはゲートエミッター電圧;
前記デバイスサイド回路の電源電圧;
パワースイッチングデバイスのコレクター−エミッター間飽和電圧;
パワースイッチングデバイスのコレクター電圧またはコレクター−エミッター電圧;
前記デバイスサイド回路の周囲温度;または
パワースイッチングデバイスのスイッチング時間を含む方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、
前記変調回路を提供する工程は、前記状態情報を示すマルチビット値の少なくとも1つのビットを示すように、複数の前記アクノリッジ信号のそれぞれを変調し、それによって前記デバイスドライバーから前記マルチビット値を伝送する方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、
前記変調回路を提供する工程は、前記状態情報を示すマルチビット値の複数のビットを示すように、前記アクノリッジ信号を変調する方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、
前記アクノリッジ信号はパルスを含み、前記変調回路を提供する工程は、前記状態情報に対応してパルス信号の継続時間を調節し、調節された前記継続時間は有効なアクノリッジパルスの最小継続時間と最大継続時間の間である方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
有効な前記アクノリッジパルスの前記最小継続時間は略0.6μsであり、有効な前記アクノリッジパルスの前記最大継続時間は略1.8μsである方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
前記変調回路を提供する工程において、略0.8μsである前記継続時間が、データビットを示し、略1.6μsである前記継続時間が、別のデータビットを示すように調節する方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法において、
前記変調回路を提供する工程は、周波数変調、振幅変調、および/またはパルス幅変調を含み、好ましくは、前記変調回路を提供する工程は、マルチレベルのデジタルデータを符号化する方法。
【請求項13】
電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するためのデバイスドライバーを制御するためのドライバーコントローラに、モニタリング能力を付加する方法であって、
前記電力スイッチング装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、前記ドライバーコントローラを備えるコントロールサイド回路を含み、
前記ドライバーコントローラは通信リンクによってデバイスドライバーと結合するように配置され、
前記ドライバーコントローラは、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフ駆動する前記デバイスドライバーを制御するために、前記通信リンクにスイッチング信号を伝送するように配置され、
前記ドライバーコントローラは、前記スイッチング信号に応答して前記通信リンクからアクノリッジ信号を受信し、受信された前記アクノリッジ信号が有効であることを検知するようにさらに配置され、
前記方法には、
前記デバイスサイド回路の状態を出力するために、検出された有効な前記アクノリッジ信号を復調する復調回路を提供する工程であって、前記状態は前記アクノリッジ信号に符号化される工程を含む方法。
【請求項14】
電力スイッチング装置に感知能力とモニタリング能力を追加する方法であって前記電力スイッチング装置はドライバーコントローラとデバイスドライバーを含み、
前記デバイスコントローラは少なくとも1つの高電圧スイッチングデバイスを駆動し、
前記ドライバーコントローラは前記デバイスドライバーを制御して前記デバイスのスイッチをオンオフするように配置され、
前記方法は、前記デバイスドライバーに感知能力を追加するための請求項1の方法と前記ドライバーコントローラにモニタリング能力を追加する請求項13の方法を含む方法。
【請求項15】
電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するためのデバイスドライバーであって、
前記電力スイッチング装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を含み、
前記デバイスドライバーは、通信リンクによって前記ドライバーコントローラと結合するように構成され、
前記デバイスドライバーは、前記通信リンクで前記ドライバーコントローラから受信されるスイッチング信号に応答して、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフドライブするように構成され、
前記デバイスドライバーは、受信される前記スイッチング信号に応答して、アクノリッジ信号を前記ドライバーコントローラに送信するようにさらに構成され、前記アクノリッジ信号は有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラに検知される前記デバイスドライバーであって、
前記デバイスドライバーは、
前記デバイスサイド回路の状態情報を受信するように構成される入力と、
受信される前記状態情報に応じて、前記アクノリッジ信号を変調するように構成される変調器を含み、前記アクノリッジ信号が有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラに検知されるように、変調された前記アクノリッジ信号を伝送するように構成される前記デバイスドライバー。
【請求項16】
デバイスドライバーを制御して、電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動させるためのドライバーコントローラであって、
前記電力スイッチング装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、前記ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を備え、
前記ドライバーコントローラは前記デバイスドライバーと通信リンクによって結合するように構成され、
前記ドライバーコントローラは少なくとも1つの前記デバイスをオンオフ駆動する前記デバイスドライバーをコントロールするスイッチング信号を前記通信リンクで伝送するように構成され、
前記ドライバーコントローラは前記デバイスドライバーから前記通信リンクでアクノリッジ信号を受信し、および、受信された前記アクノリッジ信号が有効であることを検知するように構成される前記ドライバーコントローラであって、前記ドライバーコントローラは、
受信された前記アクノリッジ信号を復号し、前記アクノリッジ信号に符号化されたデータを決定するように構成される復号器と、
決定された前記データに基づいて、前記デバイスサイド回路の状態情報を提供するように構成される出力を備える前記ドライバーコントローラ。
【請求項17】
少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスと、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するように構成される請求項15に記載のデバイスドライバーを含むデバイスサイド回路、および、少なくとも1つの前記高電圧パワースイッチングデバイスをオンオフスイッチさせるように、前記デバイスドライバーを制御するように構成される請求項16に記載のドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を含む電力スイッチング装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電力スイッチング装置において、
前記電力スイッチング装置はインバータである電力スイッチング装置。
【請求項19】
請求項17または18の電力スイッチング装置において、
前記パワースイッチングデバイスは、JFETまたはMOSFETなどのIGBTまたはFETを含み、前記デバイスドライバーは前記IGBTまたは前記FETを駆動するように構成される電力スイッチング装置。
【請求項20】
パワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムの構成データ/測定データを通信する方法であって、前記パワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムは、調整制御システムと、それぞれが前記調整制御システムと結合し、それぞれが一つ以上の個別パワー半導体スイッチングデバイスを構成する複数のスイッチングデバイスコントローラを含み、前記方法は、
一つ以上の前記スイッチングデバイスコントローラをスイッチング制御するためのデータを含む制御データを送信する工程と、
前記調整制御システムでアクノリッジ信号を受信する工程であって、前記アクノリッジ信号は立ち上がりエッジ、および、立ち下がりエッジを持つパルスを含み、前記立ち上がりエッジ、および、前記立ち下がりエッジ間の時間間隔は、前記アクノリッジ信号が有効信号であるとして許容される範囲内の変動がある工程を含み、
前記方法は、さらに、
前記アクノリッジ信号が符号化されたアクノリッジ信号になるように、許容される前記変動の中で規定される時間ウィンドウ内で、前記アクノリッジ信号に前記構成データ/測定データを符号化する工程と、
前記スイッチングデバイスコントローラから前記調整制御システムへ符号化されたアクノリッジ信号を送信する工程と、
前記調整制御システムで、符号化された前記アクノリッジ信号から前記構成データ/測定データをデコードする工程と、を含み、
前記構成データ/測定データは、それぞれ前記スイッチングデバイスコントローラまたは前記パワー半導体スイッチングデバイスの構成または測定のデータを含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載された方法において、
前記符号化する工程は、タイミング間隔を変更し、前記アクノリッジ信号が有効となるように、前記パルスの継続時間に許容された変動範囲内で前記構成データ/測定データを符号化する工程を含む方法。
【請求項22】
既存のパワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムに対して構成能力/測定能力を改良する方法であって、前記パワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムは、調整制御システム、並びに、それぞれが前記調整制御システムと結合し、および、一つ以上の各前記パワー半導体スイッチングデバイスを制御するように構成される複数のスイッチングデバイスコントローラを含み、前記方法は、
前記既存のパワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムで、請求項20または21に記載の方法を使用して、前記アクノリッジ信号が有効となるように、前記パルスの継続時間に許容された変動範囲内で前記構成データ/測定データを符号化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、IGBT等の高電圧パワースイッチングデバイスを駆動する装置に関する、特に、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するデバイスドライバーに感知能力を付加する方法と、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するデバイスドライバーを制御するドライバーコントローラにモニタリング能力を付加する方法と、ドライバーコントローラとデバイスドライバーを備える電力スイッチング装置に感知能力およびモニタリング能力を付加する方法である。該デバイスドライバーは少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動し、該ドライバーコントローラは少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するデバイスドライバーを制御する。該電力スイッチング装置、より詳細にはインバータは、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを備える。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体スイッチングデバイスは、電力用途の広い範囲にわたって幅広く使用されている。対象とするパワー半導体スイッチングデバイスは、典型的には、1アンペアよりも大きい電流を通電する能力があり、および、100ボルトよりも大きい電圧で動作可能である。例えば、デバイスは、10アンペア、50アンペアまたは100アンペアよりも大きい電流を搬送でき、および/または、デバイスに印可される電圧差が500ボルトまたは1KVよりも大きい電圧差を維持できる。
【0003】
該デバイスの実施例は、MOSFETS(バーティカルまたはラテラル)およびJFETなどのFETだけではなく、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含み、潜在的には、LILET(ラテラル反転層エミッタトランジスタ)、SCRおよび、同種のものなどのデバイスを含む。開示される技術は、任意の特定の種類デバイスのアーキテクチャに限定されるものではないので、パワースイッチングデバイスは、たとえば、バーティカルまたはラテラルデバイスのどちらでもよい。これに限定されるわけではないが、シリコン、および炭化ケイ素を含む技術範囲で製造される。
【0004】
このタイプのスイッチングデバイスの用途には、特に、たとえば、沖合の風力設備からの電力伝送等のタイプのDC伝送ラインにおける高電圧伝送ラインのスイッチング、および、モーター、たとえば機関車のモーターおよび同種のものための中間電圧(たとえば1KVよりも大きい)のスイッチングを含む。特に、IGBTは、低レベルの電圧または低レベルの電流用途で大きな電流を制御するために使用され、たとえば、いくつかのIGBTは、1600Vおよび1200Aの定格を持つ。
【0005】
このタイプの用途では、典型的に、数十個または数百個のデバイスが直列および/または並列に接続されて所望の電圧/電流で動作する。電気的環境は比較的ノイズが多く、負荷電流および気温などの動作環境は連続的に変化し、および、スイッチングされる電圧/電流が大きいので、該デバイスのスイッチング制御には、デバイスの故障という重要な危険につながる特定の問題がある。さらに該システムの一つのデバイスが故障すると、システムの他のスイッチングデバイスは、結果として簡単に故障し得る。
【0006】
一般に、中または高電圧をスイッチングするシステムは、高価および/またはスイッチング速度が遅い高電力デバイスの使用を避けるために、直列接続形態で配置された複数のデバイスを使用して容易に構成できる。例示的なインバータでは、単一のレッグインバーターまたは複数のレッグインバーターのフェーズレッグを示す、例えば
図1aに示すようなフェーズレッグを形成するように、IGBTを積み重ねて、電源供給元の配線間に配置する。
図1bは、各フェーズレッグの上側と下側のそれぞれに二つのIGBTが積み重ねられた複数のフェーズレッグインバーターを示す。複数のIGBTを直列に供給することによって、たとえば、インバータフェーズレッグまたはインバータフェーズレッグの上側または下側のIGBTにわたる、全電圧をIGBTに分圧できるので、低電圧IGBTを使用でき、および/または、全体が高電圧の用途に使用できる。それでもなお、例えば上述されたように信頼性に関しては、IGBTの直列接続を使用しても困難性は依然として残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような観点から、パワースイッチングデバイスのネットワークのモニタリングおよび/または制御を改良する必要性が残っており、例えば、とりわけ、故障予測/故障回避、信頼性の向上、拡張性(たとえば、直列に接続されるIGBTの数を増やすことを可能にすること)、費用対効果、電力効率(すなわち、たとえば、スイッチング損失を低減することによる低電力損失)、および/または出力電圧および/または電流波形の品質向上を可能にすることである。
【0008】
より詳細には、当該モニタリングおよび/または制御の改良は、既知の製造業者のデバイスの製造許容値という観点、および/または、異なる製造業者のパワースイッチングデバイス間の差異という観点で、望ましい。当該デバイスは、パワースイッチングデバイスの動作特性が、インバータ等の装置のネットワークにわたるデバイス毎に変化するように、パワースイッチングデバイスのネットワークと組み合わされ得る。これによって、例えば、一つ以上のフェーズレッグの半分に直列接続された異なるパワースイッチングデバイス間の不適切な電圧の共有によって、上述されたような信頼性の低下等の不利益が生じる。例えば、当該不適切な共有は、デバイスターンオンおよび/またはターンオフ時間の相違によって発生し得る。したがって、各デバイス動作の遠隔モニタリングおよび/または制御は有益であり得る。
【0009】
このような困難、および/または、その他の困難を、最も好ましくは、既存のパワースイッチングデバイスを制御する製品の互換性を有する態様で克服することが望ましい。
【0010】
これらおよび他の問題に対処する技術をわれわれは説明する。
【0011】
本発明の理解に使用するために、以下の開示を参照する。
【0012】
1SP0335V/1SP0335S/1SP0335Dの仕様書およびアプリケーションマニュアル(http://www.igbt−driver.com/fileadmin/PublIc/PDF/Products/ENG/SCALE−2/PnP/1SP0335/Manual/1SP0335_Manual.pdf.
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、デバイスドライバーに感知能力を追加する方法が提供される。少なくとも1つのデバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を備える電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するために、前記デバイスドライバーは通信リンクによって、前記ドライバーコントローラと結合するように配置される。前記デバイスドライバーは、前記通信リンクで前記ドライバーコントローラから受信されるスイッチング信号に応答して、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフドライブするように構成される。前記デバイスドライバーは、前記受信されるスイッチング信号に応答して、アクノリッジ信号を前記ドライバーコントローラに送信するようにさらに構成される。前記アクノリッジ信号は有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラに検知される。該方法は:前記デバイスサイド回路の状態を出力するための感知回路を提供する工程;前記伝送前に前記状態情報によって、前記アクノリッジ信号を変調する変調回路を提供する工程であって、前記変調されたアクノリッジ信号は、前記受信されるスイッチング信号に応答して、前記デバイスドライバーから前記ドライバーコントローラに伝送されるべき前記アクノリッジ信号であり、前記ドライバーコントローラで有効な前記アクノリッジ信号として検出可能である工程を含む。例えば、前記ドライバーコントローラ側で有効であるとして検出される前記アクノリッジ信号には、たとえば、ドライバーコントローラ側での継続時間および/または到着時間に関する(該到着時間は、例えば関連する、先行するスイッチング信号の伝送時間に対する到着時間)、あらかじめ定められた最小および/または最大値に準拠する継続時間、振幅、周波数等の特性が含まれる。具体的には、最小継続時間は約(たとえば、正確にもしくは+−1、2、5または10%の範囲内である)0.6μおよび/または最大継続時間は約1.8μsである。より一般には、変調された信号の有効性は、変調された信号がドライバーコントローラで有効なアクノリッジ信号として認識できるか否かによって決定され得る。
【0014】
したがって、インバータ等の電力スイッチング装置の既存のデバイスドライバーは、感知回路および変調回路に適合するように修正され得る。有利なことに、修正されたデバイスドライバーは、既存の機能を提供するために、既存のドライバーコントローラと通信を継続でき、特にスイッチング信号に対する応答として、ドライバーコントローラが認識可能なアクノリッジ信号をドライバーコントローラに提供する。したがって、デバイスドライバーからドライバーコントローラへ感知信号を通信するために、いかなる更なる送信器および/または通信リンクも要求しないで、該装置に対する電力スイッチング装置またはデバイスドライバーの感知能力を増すように改良され得る。好ましくは、感知されたデバイス状態のデータ、たとえば、高電圧スイッチングデバイスの温度は、変調によって既存のアクノリッジ信号の中に隠される「hidden」。
【0015】
さらに以下の方法が提供される。該方法では、状態情報が、デバイスサイド回路、たとえば、パワースイッチングデバイスのステータス、または、デバイスサイド回路、たとえば、パワースイッチングデバイスのパラメータの測定値を示し、前記変調によって、一つ以上の前記アクノリッジ信号に前記ステータスまたは測定された値を符号化するように、一つ以上の前記アクノリッジ信号を変調する工程を含み、各前記スイッチング信号に応答して、前記アクノリッジ信号または各前記アクノリッジ信号が生成される。例えば、複数のアクノリッジ信号のそれぞれが、単一ビット値を示すように変調され、および/または単一のアクノリッジ信号が複数のビットの値を示すように変調されてもよい。該状態情報によって、デバイスのパラメータ、たとえば、温度、電圧および/または電流が閾値未満であるか、例えばパワースイッチングデバイスが前記デバイスの安全動作の限界値の中で動作しているか否かが示される。例えば、閾値を超えている場合には、閾値を超えていない場合よりも、長い継続時間のアクノリッジ信号によって示される。
【0016】
該パラメータには:デバイスの温度、電圧または電流;または電圧ピークまたは電流ピーク等のイベントのタイミングが含まれる。より詳細には、該パラメータには:パワースイッチングデバイスのゲート電圧またはゲートエミッター電圧;電源電圧;パワースイッチングデバイスのコレクター−エミッター間飽和電圧;パワースイッチングデバイスのコレクター電圧またはコレクター−エミッター電圧;周囲温度;またはパワースイッチングデバイスのスイッチング時間(たとえば、ターンオンまたはターンオフのための、たとえばオンステート電流の約10%から約90%の間のスイッチング時間)が含まれる。したがって、該方法は、デバイスドライバーからドライバーコントローラへ感知された信号を通信するために、いかなる追加の送信器および/または通信リンクも要求することなく、デバイスドライバーからドライバーコントローラへマルチビットデータの通信を可能にする。したがって、追加の通信手段を加えないで、総合的なモニタリング機能を提供するために、高電圧スイッチングデバイスのいずれかの一つ以上のパラメータをモニタすることが可能である。
【0017】
さらに以下の方法が提供される。該方法は、前記状態を示すマルチビット値の中の各単一ビットを示すように、変調工程によって複数の前記アクノリッジ信号のそれぞれを変調し、それによってデバイスドライバーから前記マルチビット値を伝送する。あるいは、前記値を示す2つ以上のビットの少なくとも2つのビットが一つ以上のアクノリッジ信号に符号化されてもよい。
【0018】
例示的な実施形態では、複数のアクノリッジ信号を符号化することによって、好ましくはあらかじめ定められた構造を持つデータのパケットを出力し、例えば一つ以上の連続するアクノリッジ信号のサブセットは各アナログデジタル変換器(ADC)に基づいて示される状態を示す。オプションで、該パケットは、同期、パケットまたはデータ識別および/またはエラーチェックなどの制御データを含み得る。いずれの場合にも、デバイスサイドから一つ以上の状態情報を伝送する工程が、好ましくは該パケットによって、その場で発生し、たとえば、デバイスサイドの電源供給元のスイッチオン等のイベントによってトリガされ、または、好ましくはいかなる外部トリガが無くても継続的に繰り返され得る。
【0019】
さらに以下の方法が提供される。該方法は、状態を示すマルチビット値の複数のビットを示すように、変調工程でアクノリッジ信号を変調する。例えば、アクノリッジパルスは、有効アクノリッジパルスの最小継続時間と最大継続時間によって規定される期間内で、複数の遷移および/またはサブパルスを提供するように変調される。該期間は値が決められていない(don’t care)期間として参照され、例えば、アクノリッジパルスの開始後の0.6μsと1.8μsの間で拡張され得る。
【0020】
さらに方法が提供される。該方法では、アクノリッジ信号がパルスを含み、変調によってパルス信号の継続時間が調節され、調節された継続時間は有効な前記アクノリッジパルスの最小継続時間と最大継続時間の間になる。実施形態では、前記最小継続時間は略(たとえば、正確に、もしくは+−1、2、5または10%の範囲内である)0.6μs、および/または、前記最大継続時間は略1.8μsである。例えば、前記変調によって、継続時間が略0.8μsに調節されるとデータビット(たとえば、「1」または「真(true)」)を示し、および/または、略1.6μsに調節されると他のデータビット(たとえば、「0」または「偽(false)」)を示す。したがって、データの単一ビットをアクノリッジ信号に符号化する工程が達成され得る。しかしながら、該方法は、複数の二進データビットを単一の有効なアクノリッジ信号に符号化する拡張が可能であり、例えば中間の継続時間、たとえば、1.2μsは、「0」または「1」以外の値を示すことができ、たとえば、2ビットの二進値またはn変数系(n>2)のビットを示すことができる。
【0021】
さらに以下の方法が提供される。該方法は、前記変調は、周波数変調、振幅変調、および/またはパルス幅変調を含み、好ましくは、前記変調はマルチレベルのデジタルデータを符号化する方法である。例えば、より異なるように規定された周波数、振幅および/またはパルス幅の3つの中の一つが、各データビットを表現するように使用されてもよい。したがって、単一のアクノリッジ信号の変調は、単一ビットの二進値、すなわち、「0」/」1」または「真(true)」/」偽(false)」を示すことには限定されない。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するためのデバイスドライバーを制御するためのドライバーコントローラに、モニタリング能力を追加する方法が提供される。前記装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、前記ドライバーコントローラを備えるコントロールサイド回路を含む。前記ドライバーコントローラは、通信リンクによってデバイスドライバーと結合するように配置される。前記ドライバーコントローラは、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフ駆動する前記デバイスドライバーを制御するために、前記通信リンクにスイッチング信号を伝送するように配置される。前記ドライバーコントローラは、前記スイッチング信号に応答して、前記通信リンクからアクノリッジ信号を受信し、受信された前記アクノリッジ信号が有効であることを検知するようにさらに配置される。前記方法は:前記デバイスサイド回路の状態を出力するために、検出された有効な前記アクノリッジ信号を復調する復調回路を提供する工程であって、前記状態は前記アクノリッジ信号に符号化される工程を含む。前記状態は、前記第1の態様に関するものであり、例えば、前記デバイスの状態(たとえば、ステータスまたはパラメータの測定値)である。
【0023】
好ましくは、ドライバーコントローラは上述のデバイスドライバーと通信するように配置される、すなわち、デバイスをオン/オフスイッチするために、デバイスドライバーを制御するスイッチング信号を送信し、デバイスドライバーからの有効なアクノリッジ信号を認識する。この点に関して、ドライバーコントローラは、アクノリッジ信号が有効である場合に検出される継続時間を識別する。好ましくは、復調回路は、このアクノリッジ信号または別のアクノリッジ信号を使用し、継続時間に対応してアクノリッジ信号に符号化されている一つ以上のデータビットを決定するために、継続時間を識別する。
【0024】
有利なことに、インバータ等の電力スイッチング装置の既存のドライバーコントローラは、復調回路を調節することによって修正され得る。好ましくは修正されたドライバーコントローラは、既存の機能を提供するために、既存のデバイスドライバーとの通信を継続し、特に、前記デバイスドライバーにスイッチング信号を供給し、および前記スイッチング信号に応答して、前記デバイスドライバーから有効なアクノリッジ信号を受信して認識する。したがって、該装置のための電力スイッチング装置またはドライバーコントローラは、モニタリング能力を追加するように改良でき、デバイスドライバーからドライバーコントローラへの感知信号の通信のために、さらなる受信器および/または通信リンクを必要としない。好ましくは、感知されたデバイス状態のデータ、たとえば、高電圧スイッチングデバイスの温度は、既存のアクノリッジ信号に隠され「hidden」て、前記ドライバーコントローラの復調によって検出される。
【0025】
さらに、電力スイッチング装置に感知能力およびモニタリング能力を追加する方法が提供される。前記電力スイッチング装置は、ドライバーコントローラとデバイスドライバーを含み、前記デバイスコントローラは少なくとも1つの高電圧スイッチングデバイスを駆動し、前記ドライバーコントローラは前記デバイスドライバーを制御して前記デバイスのスイッチをオンオフするように配置される。前記方法は、感知能力を前記デバイスドライバーに追加する上記方法、および、モニタリング能力を前記ドライバーコントローラに追加する上記方法を含む。このように、インバータ等の電力スイッチング装置の高電圧スイッチングデバイスの既存のネットワークを駆動する、各ドライバーコントローラとデバイスドライバーのペアは、更新されて、全デバイスをモニタリングでき、好都合にも、サイズ、コストおよび/または複雑性を追加する追加の通信手段を要求しない。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するためのデバイスドライバーが提供される。前記装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路と、ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を含む。前記デバイスドライバーは、前記通信リンクで前記ドライバーコントローラから受信されるスイッチング信号に応答して、通信リンクによって前記ドライバーコントローラと結合するように構成される。前記デバイスドライバーは少なくとも1つの前記デバイスをオンオフドライブするように構成される。前記デバイスドライバーは、前記受信されるスイッチング信号に応答して、アクノリッジ信号を前記ドライバーコントローラに送信するようにさらに構成され、前記アクノリッジ信号は有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラで検知される。前記デバイスドライバーは:前記デバイスサイド回路の状態情報を受信するように構成される入力;および受信される前記状態情報に応じて、前記アクノリッジ信号を変調するように構成される変調器を含む。前記デバイスドライバーは、前記アクノリッジ信号が有効アクノリッジ信号として前記ドライバーコントローラに検知されるように、変調された前記アクノリッジ信号を伝送するように構成される。
【0027】
好ましくは、電力スイッチング装置の既存のデバイスドライバーは、前記装置の前記既存の機能を実質的に劣化させないで、上述のデバイスドライバーによって代替され得る。特にデバイスドライバーを制御して、実質的に代替以前と同様に継続できる。さらに、実施形態のデバイスドライバーは、好都合にも、以下のドライバーコントローラなどの互換性のある電気回路の使用によって前記高電圧パワースイッチングデバイス(単数または複数)をモニタリングするデータを入手でき、好ましくは既存の回路に最小限の修正、たとえば、さらなる通信リンクを要求することなく提供されて使用できる。
【0028】
本発明のさらなる実施形態によれば、デバイスドライバーを制御して、電力スイッチング装置の少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動させるためのドライバーコントローラが提供される。前記装置は、少なくとも1つの前記デバイスと前記ドライバーを含むデバイスサイド回路、および、前記ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を含む。前記ドライバーコントローラは、前記デバイスドライバーと通信リンクによって結合するように構成される。前記ドライバーコントローラは、少なくとも1つの前記デバイスをオンオフ駆動する前記デバイスドライバーをコントロールして、スイッチング信号を前記通信リンクで伝送するように構成される。前記ドライバーコントローラは、前記デバイスドライバーから前記通信リンクでアクノリッジ信号を受信し、および、受信された前記アクノリッジ信号が有効であることを検知するように構成される。前記ドライバーコントローラは:前記アクノリッジ信号に符号化されたデータを決定するように、受信された前記アクノリッジ信号を復号する復号器;および、前記決定されたデータに基づいて、前記デバイスサイド回路の状態情報を提供するように構成される出力を含む。好ましくは、ドライバーコントローラは、上述した実施形態のデバイスドライバーを制御する。
【0029】
デバイスドライバーと関連して上記で述べたものと同様に、電力スイッチング装置の既存のドライバーコントローラは、上述のドライバーコントローラによって代替され得る。好ましくは、前記装置の前記既存の機能を実質的に劣化させないで、特に、代替以前と実質的に同様に、デバイスドライバー(単数または複数)のコントロールを継続させることができる。さらに、好都合にも、実施形態のドライバーコントローラは、前記高電圧パワースイッチングデバイス(単数または複数)をモニタリングするために、アクノリッジ信号に符号化されたモニタリングデータを検出できる。したがって、前記デバイス(単数または複数)をモニタリングする工程は、好ましくは、既存の回路に最小限の修正を加えることで、たとえば、さらなる通信リンクを要求することなく実現できる。
【0030】
さらに電力スイッチング装置が提供される。該電力スイッチング装置は、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスと、少なくとも1つの高電圧パワースイッチングデバイスを駆動するように構成される上述のデバイスドライバーを含むデバイスサイド回路、並びに、前記デバイスドライバーを制御して、少なくとも1つの前記高電圧パワースイッチングデバイスをオンオフスイッチさせるように構成される上記ドライバーコントローラを含むコントロールサイド回路を備える。コントロールサイド回路およびデバイスサイド回路は、分離されるように通信リンクの両端に配置され、それぞれの電源供給元から電源が供給され得る。したがって、少なくとも1つの前記デバイスと関連するデバイスドライバー(単数または複数)は、ドライバーコントローラの電源とは分離された電源供給元によって電力が供給され得る。該電力スイッチング装置は、例えばインバータでもよく、好ましくは、複数のフェーズレッグを含み、および/または、各フェーズレッグの各半分/各フェーズレッグに複数の高電圧パワースイッチングデバイスを含む。前記インバータは、例えば、電気自動車に使用されてもよく、また、機関車の牽引または船舶の駆動用、産業用モーターの駆動用、風力タービンまたは太陽光インバータ、無停電電源を有するデータセンターまたは電力供給網の高電圧DCインフラ構造に使用されてもよい。
【0031】
さらに電力スイッチング装置が提供される。前記パワースイッチングデバイスはJFETまたはMOSFETなどのIGBTまたはFETを含み、前記デバイスドライバーは前記IGBTまたはFETを駆動するように構成される。
【0032】
さらなる態様では、本発明はパワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムの構成データ/測定データを通信する方法を提供する。前記パワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムは、調整制御システムと、それぞれが前記調整制御システムと結合し、それぞれが一つ以上の個別パワー半導体スイッチングデバイスを構成する複数のスイッチングデバイスコントローラを含む。前記方法は:一つ以上の前記スイッチングデバイスコントローラをスイッチング制御するためのデータを含む制御データを送信する工程;前記調整制御システムでアクノリッジ信号を受信する工程を含み、前記アクノリッジ信号は立ち上がりエッジ、および、立ち下がりエッジを持つパルスを含み、および、前記立ち上がりエッジ、および、前記立ち下がりエッジ間の時間間隔は、前記アクノリッジ信号が有効信号である範囲内で許容される変動内にある。前記方法は、さらに、前記アクノリッジ信号が符号化されたアクノリッジ信号になるように、前記許容される変動内で規定される時間ウィンドウ内で、前記アクノリッジ信号に前記構成データ/測定データを符号化する工程;前記スイッチングデバイスコントローラから前記調整制御システムへ符号化されたアクノリッジ信号を送信する工程;および前記調整制御システムで、前記符号化されたアクノリッジ信号から前記構成データ/測定データをデコードする工程を含み、前記構成データ/測定データは、それぞれ前記スイッチングデバイスコントローラまたは前記パワー半導体スイッチングデバイスの構成または測定のデータを含む。
【0033】
好ましい実施形態では、前記符号化する工程は、前記タイミング間隔を変更し、前記アクノリッジ信号が有効となるように、前記アクノリッジパルスの継続時間に許容された変動範囲内で前記構成データ/測定データを符号化する工程を含む。
【0034】
システム内で有効なアクノリッジ信号の許容タイミング内に構成データ/測定データを符号化するこの技術を使用して、本発明は既存のパワー半導体スイッチングデバイスコントロールシステムに対する構成/測定能力を改良するための方法も提供する。
【0035】
好ましい実施形態は添付の従属請求項で規定される。
【0036】
上述の態様のいずれかの一つ以上は、好ましい実施形態のオプションの特徴の一つ以上と組み合わせてまたは組み合わせないで、順番が変更されてもよい。
【0037】
本発明をより良く理解するために、本発明がどのように実施されるかを、一例として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1a】単一のレッグを有するインバータ(1つのインバータは一つ以上のレッグを有してもよく、各レッグの半分には、一つ以上のパワースイッチングデバイス、たとえば、一つ以上のIGBTが存在する)を示す。
【
図1b】パワースイッチングデバイスのネットワークを有する例示の多重フェーズレッグインバーターを示す。
【
図2a】インバータ等の電力スイッチング装置内の制御回路ブロックであって、該装置は一つ以上のフェーズレッグの各フェーズレッグの半分に一つ以上のパワースイッチングデバイスを備え、および、各デバイスドライバー2はそれぞれのドライバーコントローラ1に結合し、および/または、複数のデバイスドライバー2は共通の1つのドライバーコントローラ1に結合してもよい制御回路ブロックを示す。
【
図3】光による信号伝達を示し、パワースイッチングデバイスは、ファイバーRxラインの光を使用してターンオンし、次に、ターンオン信号のアクノリッジはファイバーTxラインの「光ではない(no light)」パルスとして伝送される。
【
図4】光による信号伝達を示す実施形態であって、パワースイッチングデバイスは
図3で図示されるようにターンオンされ、ファイバーTxラインのアクノリッジパルスの継続時間は0.8マイクロ秒(μs)でデータ「0」を示し、または1.6マイクロ秒でデータ「1」を示す。
【
図5】実施形態を実施するためのゲートドライバーの回路/ゲートドライバー内の回路のブロック図を示す。
【
図6】デバイスサイドの変調およびコントロールサイドの復調を含む実施形態の方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図2aは、たとえば、インバータ等の電力スイッチング装置4の実施形態を示す。これは、ゲートドライバー2の態様の各デバイスドライバーに制御されて結合する、一つ以上のパワースイッチングデバイス5a、5bをデバイスサイドに備える。デバイスドライバーは、コントロール側の、例えばゲートドライバーコントローラ1等の少なくとも1つのドライバーコントローラに制御されて結合する。
【0040】
図2aのパワースイッチングデバイス5a、5bがIGBTとして示される。しかしながら、追加的にあるいは代替的に、一つ以上のFET(たとえば、MOSFETSまたはJFET)、LILET、SCR、等を備えてもよい。各該デバイス5a、5bは、逆電圧および電流からスイッチングデバイスを保護するためのオプションの還流ダイオードが並列に接続されて示される。
【0041】
各デバイスドライバーとそれに対応するドライバーコントローラとの結合は、例えば変圧器結合または光結合によって、電圧分離されることが好ましい。したがって、
図2aの各双方向リンク3は、光ファイバー(たとえば、両方向に通信する光ファイバー、または各方向のための各該ファイバー)または変圧器を備えることができる。
【0042】
当業者にはわかるように、
図2aに示されない回路も存在し、特に電源配線の片側または両側ラインに一つ以上のパワースイッチングデバイスも存在する(たとえば、VSSおよび0V)。これらのラインはこれを示すために
図2で分断される。
【0043】
図2bの拡大図では、類似するより大きなシステムであって、各デバイスがたとえば炭化ケイ素ダイである、9つのパワー半導体スイッチングデバイス210を含む単一の制御可能なスイッチ202を示し、並列に接続されて電圧レベルを形成する複数のデバイス、直列に接続されて電圧レベルを直列接続して形成する前記複数のデバイスの複数の組を含む。他の実施形態では単一のスイッチングデバイスコントローラは、2つ以上のスイッチまたはデバイスダイを制御することができる。各スイッチ210は、順番に、サブコントローラ120a、120bの一つに結合されるスイッチングデバイスコントローラ130を有する。図示されるように、各スイッチングデバイスコントローラに対して該バスが1つ存在するように、分離されたバスがサブコントローラとスイッチングデバイスコントローラの間を走るが、これは実施例の一つにすぎない。複数のスイッチを備える高電圧および/または高電流の電力電子回路では、数百個または可能性としては数千個の半導体スイッチングデバイスが直列および/または並列に接続されて採用され得る。そしてスイッチングデバイスコントローラシステムは、同期して、実際には実質的に同時にスイッチするようにこれらのデバイスのスイッチングを制御する。該システムで構成データ/測定データ伝送の通信オーバヘッドを低減することは好都合である。既存のシステムを改良して、存在しない、または限られた形態でのみ存在する該能力を付与することができることも有用である。
【0044】
例えば、好ましくは実現可能な短い遅れ時間で、スイッチングデバイスコントローラからハイレベルなフォールト情報を受信するための、中央コントローラのメカニズムを持つことが望ましい。これによって、適切な動作を取るために、フォールト状態を検出することができるようになる。とりわけ、スイッチングデバイスコントローラ(SD)およびサブコントローラ(SC)に、フォールト診断情報、初期のデバイス構成を問い合わせ、および、フォールト予測などのために測定データを読み取る、中央コントローラのメカニズムが記載される。好ましくは、それは可能性がある全ての既存の通信部材のなかでできるだけ小さい。
【0045】
戻ってきた測定データには、ほんの一例としてであるが:電流または電圧データ;電流データまたは電圧データの変化速度;温度データ;または、すべての望ましい/関連のあるデータが挙げられる。例えば、この状態で、どのようにどのような動作を取るかを決定するために、結果が調整制御システムに採用される。これには、スイッチングデバイスのいくつか、または、すべての温度を低減するための一つ以上の動作、および、例えば回路の他の部分をスイッチングオフすることによって(半)永久的に、スイッチングデバイスのいくつかまたはすべてから電圧を低減または除去するための動作が含まれる。送信デバイスのアドレスまたは他の記述子が含まれることも可能であるが、プロトコルのいくつかの好ましい実施形態では、データの1ビットまたはいくつかのビットだけが、アクノリッジプロトコルで符号化される例を説明する。戻ってくる例示の構成/制御データは、スイッチングデバイス/ノードがスリープモード、シャットダウンモード等であることを規定するデータである。
【0046】
図3は、実施形態が動作可能な第1の信号プロトコルを示す。駆動信号、たとえば、IGBTのオン/オフスイッチングを指示するデータを示すスイッチング信号が、ゲートドライバーコントローラ1からゲートドライバー2に伝送される。例えば、通常動作では、IGBTを導通することが意図される場合には、いつもファイバーRxラインで光はオンであり得るし、他の場合にはオフである。駆動信号に応答して、アクノレッジ(「ack」)信号は、リンク3によってゲートドライバー2からゲートドライバーコントローラ1に伝送される。各駆動信号がゲートドライバーで検出されること、たとえば、駆動信号の各スイッチングエッジ(遷移)の検出に応答して該アクノリッジ信号が伝送される。
【0047】
実際の継続時間は、たとえば、ゲートドライバーコントローラで受信されるアクノリッジ信号(好ましくはパルス)の700nsから1μsであり、たとえば、該回路のRC時定数のキャパシタンスによる。リンク3に結合する受信回路および/または送信回路の遅延にも依存する。しかしながら、一般にゲートドライバーコントローラは、受信信号が特定の要件を満たす場合にだけアクノリッジ信号を有効であると認識する。たとえば、その特定の要件は、継続時間が最小時間(たとえば、0.6μs)と最大時間(たとえば、1.8μs)の間であり、および/または、駆動信号の伝送後にあらかじめ定められた期間内に到着する場合であって、たとえば、伝送後の固定時間(たとえば、約380ns)および/または該伝送に対して最小および/または最大時間で規定される期間内に到着する場合である。
【0048】
したがって、IGBTはファイバーRxラインの光のスイッチングオンによってターンされ、およびファイバーTxラインのパルスによってアクノレッジされる。ファイバー光の各オン−オフ遷移またはオフ−オン遷移は光がない期間である短いアクノリッジパルスによってアクノレッジされ、それはファイバーRxラインの遷移後、典型的には380nsで発生する。コントローラに戻るべき有効アクノリッジパルスの最小継続時間は0.6μsであり、最大継続時間は1.8μsである。
【0049】
ゲートドライバーからゲートドライバーコントローラに伝送され得るさらなる信号は、例えば
図3または
図4のファイバーTxラインでは、フォールト信号である。該信号は、例えばパワースイッチングデバイスでの回路の短絡を示す。典型的には、フォールト信号は光のないパルスであり、アクノリッジ信号よりも長い継続時間を持つので、アクノリッジ信号とは区別される。例えば、有効アクノリッジパルスの継続時間は0.6μs〜1.8μsの間であり、フォールト信号は1.8μsよりも長いいずれかの継続時間を持つことが要求される。
【0050】
ゲートドライバーコントローラでの有効なアクノリッジ信号の検出によって、一般に、双方向リンク3が両方向動作しており、駆動信号がゲートドライバーで受信されたことが少なくとも示される。アクノリッジ信号が、駆動信号の伝送に続く期待される時間内に検出されない場合には、ファイバー光リンク3の少なくとも1つの方向のチャンネルが適切に動作していないことを示し、たとえば、ファイバーの接続がはずれた、および/または、故障した、および/または、関連する電気光受信回路および/または送信回路が故障したことを示す。
【0051】
実施形態では
図3の通信プロトコルを実装するが、しかしながらパワースイッチングデバイスの状態情報を伝送するように修正され、たとえば、たとえば、
図4に示されるように、変調されたアクノリッジ信号を使用してゲート駆動制御モニタリングデータを伝送する。該実施形態は
図2に示される構造体に実装され得る。実施形態は、該修正されたプロトコルにしたがって、および/または、
図3にしたがって動作可能に構成され得る。
図4の修正されたプロトコルでは、状態情報は、タイミングを変化させることによってアクノリッジパルスに符号化され得る。たとえば、ゲートドライバーのための伝送ファイバーのパルスの幅を変動させることによって、アクノリッジパルスでデータビットを伝送することが可能になる。例えば、
図3のアクノリッジパルスは符号化され、スイッチングエッジ毎に1ビットのデータを提供する。例示のタイミングは
図4に示され、モニタリングデータを送信するために、800nsアクノリッジパルスはデータ「1」を示し、および、1600nsアクノリッジパルスはデータ「0」を示す。
【0052】
より詳細には、PWMを使用して、有効な該パルスの最小継続時間の後に、アクノリッジ信号の終端遷移で特定のタイミングが発生する。例えば、アクノリッジパルスの開始後のパルスの「値が決められていない(don’t care)」領域である1.6μs〜1.8μsの間に、データビットが示される。つまり、複数のオン/オフ遷移が該パルス/領域に提供されて一つ以上の追加の、比較的短い、パルスを提供し、これらの短いパルスのそれぞれは単独、または、組み合わせてデータビット(単数または複数)を示す。
【0053】
有利なことに、コントローラが
図4にしたがって動作するように構成された代替ゲートドライバー2に結合しても、
図3にしたがって動作するように構成されたシステムのゲートドライバーコントローラ1の動作は実質的に影響されない。同様に、
図4にしたがって動作するように構成される代替ゲートドライバーコントローラ1と結合しても、
図3にしたがって動作するように構成されたシステムのゲートドライバー2の動作は実質的に影響されない。さらに、既存の電力スイッチング装置は実施形態のゲートドライバーコントローラ1および/またはゲートドライバー2によって改良さるが、実質的に以前の機能を継続できる。
【0054】
アクノリッジ信号の中に符号化されたデータはパワースイッチングデバイスのステータスに関連する1ビット情報であり、たとえば、モニタされるステータスによって異なるが、オン/オフ、「1」/「0」あるいは「真(true)」/「偽(false)」を示す。例えば、ステータス情報は、温度、パワースイッチングデバイスの印可される電圧(たとえばVce)および/またはパワースイッチングデバイスを流れる電流(たとえばIc)等のパラメータ(単数または複数)が、好ましくはデバイスデータシートで提供されるデバイス定格に対応する、事前にプログラムされた限界(単数または複数)内にあるか否かを示す。1ビットデータ伝送は、一般に、該ステータス情報を提供するためには十分である。
【0055】
追加的あるいは代替的に、アクノリッジ信号(単数または複数)に符号化されるデータはパワースイッチングデバイスのパラメータの測定値を示し、それらには、例えば、デバイスの温度、電圧(たとえばコレクター電圧Vcまたはコレクター−エミッター間電圧Vce)または電流(たとえばコレクター電流Ic)、若しくは、イベントのタイミング、たとえば、例えば、該デバイスのスイッチング(ターンオンまたはターンオフ)あるいは該電圧のピークまたは電流のピークの絶対時間または相対時間、または継続時間が挙げられる。
【0056】
測定されたパラメータは、パワースイッチングデバイスを備える装置の供給電流または供給電圧等のパラメータの評価、または、演算が可能な情報であり得る。例えば、パワースイッチングデバイスのネットワーク構成によって異なるが、全供給電圧は1つのパワースイッチングデバイスに印可される電圧の伝送された測定値を積算することによって推定され得る。
【0057】
したがって、有利なことに、たとえば、ゲートドライバーとゲートドライバーコントローラとの間の通信のための特別な光ファイバー、および/または、電気光受信器および/または送信器などのいずれかの追加の通信部品を要求することなく、全供給電圧等のパラメータはモニタできる。回路設計には、電力スイッチング装置に存在する高電圧を考慮した電圧絶縁が要求されるので、該追加の回路を準備することは一般には困難である。
【0058】
デバイスのゲートドライバーの一つ以上のパラメータ、たとえば、温度、フォールト状態、プログラム可能な抵抗値、制御されるべきデバイス電圧(たとえばデバイスコレクター電圧)に対するドライバーのフィードバック制御の参照電圧等は、同様にモニタされ得る。
【0059】
好都合なことに、スイッチング信号に応答してアクノリッジ信号が発生する。例えば、デバイスサイドのパラメータをサンプリングするために、デバイスのターンオン/オフをサンプリングウィンドウとして使用することができる。ここでターンオン/オフは定期的に発生し、該サンプリングは、平均レート、たとえば、1kHzで発生できる。この点では、パラメータのサンプリングは実質的にターンオン(オフ)のタイミングで発生し、好ましくはデバイスが比較的長い継続時間オフ(オン)になった場合に発生する。したがってパワースイッチングデバイス電流は実質的に安定し得るので、測定のタイミングでは低ノイズ、すなわち、低EMI状態が存在する。それにもかかわらず、いくつかの形態のメモリが提供される場合には、しばらく経って、パラメータが測定され、対応する測定データがアクノリッジ信号(単数または複数)中で伝送されることに留意されるべきである。
【0060】
上述したステータスまたは該パラメータのモニタリングは、例えば、パワースイッチングデバイスおよび/またはドライバーでの推定される故障を警告するように、ドライバーコントローラ、または、一つ以上のドライバーコントローラから状態情報(単数または複数)を受信するように結合する中央制御設備で実施され得る。その次に、モジュールまたはデバイスの交換等の適切な予防処置が取られ得る。
【0061】
一つ以上のアクノリッジ信号に符号化されたデータは、以下の6個の主なパラメータの一つ以上を示す。
パワースイッチングデバイスのゲート電圧Vg、またはゲートエミッター電圧Vge;
正の二次供給電圧V+、たとえば、通信リンクのゲートドライブ側の絶縁された電源供給元の電圧;
パワースイッチングデバイスのコレクター−エミッター間飽和電圧Vcesat;
パワースイッチングデバイスのコレクター電圧またはコレクター−エミッター電圧Vce;
パワースイッチングデバイスおよび/またはゲートドライバーの周囲温度;および/または、
パワースイッチングデバイスのスイッチング時間(コマンドオンから(たとえばゲートドライバーでのスイッチング信号の検出から)Vce飽和までの時間)。
【0062】
これらの主なパラメータの一つ以上から、例えば、ゲートドライバーコントローラ、または、それに結合する中央制御設備で、パワースイッチングデバイスの以下の二次的パラメータの一つ以上が演算または推測され得る。
デバイスVgeプラトー(plateau)電圧
デバイスのゲート電荷量(たとえば、所望の量だけゲートを開くために、または、フルスイッチングを達成するためにのいずれかのために、ゲートに供給されなければならない電荷量。たとえば、5%、10%または20%などのデバイスの劣化程度を示す電荷量の大きな変化を示す情報である。該変化は、あらかじめ定められた量だけゲート電圧を変化させるために、または、たとえば最終的な電流の約10%以内のフルスイッチングを達成するための、例えば(好ましくは一定)ゲート電流および/または該ゲート電流を供給する時間をモニタリングすることで検出できる。)
ドライバー供給電流(たとえば、どのくらいの電流をデバイスドライバー、たとえば、ゲートドライブが消費するかを示す。この電流の一部がデバイスをスイッチさせるために使用されるので、経時的には、この電流が該デバイスに供給される電荷量の情報を与えるものであって、好都合にもゲート電荷量と相関があるものとして使用される。したがって、実施形態の状態情報は、ゲートを駆動する制御供給電流を示し、制御側は電荷の情報をモニタできる、たとえば、5%、10%または20%の変化がデバイスの劣化を示すものと捉えることができる。)
デバイスのコレクター過電圧(該デバイス(たとえばIGBT)のターンオフで、コレクター(Vce)で測定される電圧は、回路の寄生インダクタンスによってオーバシュートし得る。このオーバシュートが特定の限界以内に維持されなければ、このオーバシュートによってデバイスが損傷する場合がある。デバイスドライバーは、好ましくはこの値を制限するための回路を備える。伝送される状態情報にVce値が符号化される実施形態では、制限回路が機能してデバイスが仕様の範囲内で駆動されいるか、該回路が適合していないかをチェックするために、この情報は制御サイドでモニタされる。)
デバイスの(たとえばIGBT)温度
デバイスのコレクター電流Ic
デバイスのdVce/dt
【0063】
上述されたように、実施形態では各アクノリッジ信号で単一ビットの情報を伝送する。したがって、1ビットよりも多くのビットを要求する値は、一連の、好ましくは連続するアクノリッジ信号によって表現される。この点に関して、モニタリングデータは、アナログデジタル変換器(ADC)によってサンプリングされ得る。マイクロコントローラはデータのパケットを組み立て、次にこのデータをプログラム可能な論理デバイス、たとえば、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)、PALまたはFPGAに適用できるように直列変換する。これらのデバイスは、「0」または「1」の場合に適切に幅を変化させるファイバー出力を駆動する。
図5の実施形態のブロック図は、このような態様で値を伝送するためには好適である。
【0064】
図5は、リンク3のゲートドライバーサイドのマイクロコントローラ(uC)を示し、好ましくはゲートドライバー2のメイン/唯一のマイクロコントローラである。uCは、サンプル/ホールド回路でサンプルされ、その後にマイクロコントローラに入力されるアナログ信号を変換するアナログデジタルコンバータ(ADC)を備える。(あるいは、ADCは、マイクロコントローラの外部にあってもよい)。一つ以上のアナログ信号(単数または複数)のサンプリングのタイミングは、サンプル/ホールド回路へ接続されるマイクロコントローラによって制御され得る。温度値は、温度センサー(「TEMP SENSOR」)からのデジタル値として直接提供され、すなわち、上述のアナログ信号と同様にサンプリングおよび/または変換される。たとえば、ファイバーTxラインの通信リンクを介してゲートドライバーコントローラに出力するために、結果として得られるデジタルデータは、uCから、好ましくはプログラム可能論理デバイス(PLD)が実装される回路に提供される。PLDは、マイクロコントローラからのデジタルデータにしたがって、好ましくは上述したように一つ以上のアクノリッジ信号を変調するように構成される。
【0065】
したがって、マイクロコントローラ(uC)は以下の工程を実行する。
1.ADC(単数または複数)を使用して、電圧(単数または複数)および/または温度(単数または複数)をサンプリングする。
2.チェックサムを演算する。
3.シフトレジスターにヘッダー、値およびチェックサムを書き込む。
4.アクノリッジ信号毎に1ビットをシフトアウトする、すなわち、スイッチング信号のエッジ毎に1ビットをシフトアウトする。
5.1に戻る。
アクノリッジ信号にシフトアウトされるデータのフォーマットは、たとえば、64−ビットの1パケットであって、例えば、
[16−ビット]ヘッダー
[16−ビット]カウント
[16−ビット]温度
[16−ビット]ADC0
[16−ビット]ADC1
[16−ビット]ADC2
[16−ビット]ADC3
[16−ビット]チェックサムを含む。
【0066】
ここで、ADCチャンネル0〜3は、以下の電圧などの一つ以上の測定される状態を通信するために使用される。
ADC0:Vge ゲート電圧
ADC1:Vdd 正の供給電圧(通信リンクのゲートドライブ側の絶縁されたPSUからの二次出力)
ADC2:Vcesat 飽和電圧(Vce<50V、IGBTがONの場合のいずれかの時間で測定される)
ADC3:Vce コレクター電圧(デバイスがオフの場合に測定される)
好ましくは、ヘッダーによって受信器はデータの同期を取ることができる。カウントはパケットを特定するようにインクリメントされる。ADC0〜3は、測定されたパラメータ、たとえば、電圧等に対応するアナログからデジタルへのチャンネルである。チェックサムは、好ましくは、データ破損および/または受信器の同期はずれのイベントがあった場合に、データが有効でないデータとして決定されるようにする。
【0067】
しかしながら、このプロトコルはゲートドライブで収集されるいかなる量の情報をも書くことができるように拡張され得る。
【0068】
上述の実施形態に対してさらなる変形形態が可能であり、アクノリッジパルスに対する一つ以上のさまざまな種類の変調方法、たとえば、振幅変調(AM;たとえば、マルチレベル(2、3またはそれよりも多いレベル)のデジタルデータ符号化)、周波数変調(FM)、パルス幅変調(PWM)等によって、アクノリッジ信号毎に一つまたは複数のビットを符号化することが可能である。当業者であれば理解できるように、周波数変調では、実施形態で、データによって光の波長を変化させるように構成することもできる。したがって該実施形態では、波長変換のためにデバイスドライバーサイドに送信器を備えることができ、波長が変換された信号からデータを取り出すために制御サイドに受信器を備えることができる。他方では、振幅変調を実装した実施形態では、受光される光の異なるレベルを区別できる受信器が要求される。
【0069】
上述の記載によれば、いくつかの実施形態で有利な点は、既存の光リンクを介して遠隔でパラメータを測定できることであって、すなわち、たとえば、いずれかの特別な光ファイバー等の追加の通信リンクを必要としないことである。さらに、符号化されるアクノリッジパルスを伝送するように構成される実施形態のゲートドライバーは、既存のゲートドライバーコントローラの従来の動作と互換性がある。同様に、符号化されたアクノリッジパルスを受信して応答するように構成される実施形態のゲートドライバーコントローラは、既存のゲートドライバーの従来の動作と互換性がある。したがって、実施形態の部品は、好都合にも、既存の駆動回路と下位互換性がある。
【0070】
さらに、既存のシステムコントローラが、通信プロトコルを動作させるゲートドライブを制御しているか否かを知ること「knowing」無しに、実施形態ではドライブから出力されるべきデータをモニタリングできる。この場合には、データ符号化のためのアクノリッジパルスのタイミング変化は、好ましくは制約事項の範囲内であり、たとえば、アクノリッジパルスが有効アクノリッジパルスであると認識できる最小および/または最大継続時間の範囲内である。したがって、既存のシステムコントローラにいかなる修正も必要なく、ゲートドライブを制御できる、すなわち、好ましくは、既存のゲートドライバーコントローラの従来の動作には影響を及ぼさない。
【0071】
実施形態の特別なメリットには、1)既存のゲートドライブの制御を適切に機能させ続けながら、より複雑な診断機能が可能になること;および/または2)ゲート駆動ユーザが、複数の電力デバイスを備える既存の構成の既存の通信プロトコル機能を維持して、交換されるべきゲートドライブ(単数または複数)を選択できることが挙げられる。
【0072】
さらに、本発明は、例えば組み込みプロセッサーで上述のシステムおよび制御手順を実施するためのプロセッサー制御コードを提供する。コードは、ディスク、CD−ROMまたはDVD−ROM等の媒体、読み出し専用メモリ(ファームウエア)等のプログラムメモリで提供され、または、光または電気信号媒体等のデータ媒体で提供される。本発明の実施形態を実装するためのコード(および/またはデータ)には、C、またはアッセンブリコード等の従来のプログラミング言語(インタープリートまたはコンパイルされる)のソースコード、オブジェクトコードまたは実行可能コード、ASIC(特定用途向け集積回路)またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を設定または制御するためのコード、または、Verilog(登録商標)またはVHDL(超高速集積回路設計用ハードウェア記述言語)等のハードウェア記述言語用のコードが含まれる。当業者であれば、上述のコードおよび/またはデータは、お互いに通信する複数の結合要素の間に分散されてもよいことを理解するであろう。
【0073】
多くの他の効果的な代替実施形態が当業者には明らかである。例えば、有効なアクノリッジ信号の許容タイミング内で構成データ/測定データを符号化することを記載したが、本発明の態様には他のアプローチも含まれる。例えば、構成データ/測定データが信号のいくつかの他のパラメータの許容範囲内で符号化されるが、好ましくは、スイッチングデバイスコントローラから調整システムコントローラに返信されるアクノリッジ信号が必要なアプローチである。例えば返信信号の振幅許容値または周波数許容値が、スイッチングデバイスコントローラから調整システムコントローラに返信されるデータを符号化するために採用されてもよい。われわれが記載した方法の実施形態である、特に、許容される許容値変動内で通常は正常動作するシステムにおいて、信号の許容値を使用して。スイッチングデバイスコントローラから調整システムコントローラに返信されるアクノリッジ信号である返信データに、信号パラメータを符号化するように能力を改良することは特に有益であることを当業者は理解するであろう。またさらなる実施形態では、許容される符号化技術(タイミング値および/またはビット数など)はシステムの動作中に獲得され得る。
【0074】
本発明は記載された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に添付されたクレームの要旨および精神の範囲内で修正形態を含むことは当業者にとって明らかであることを理解するべきである。