(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記線間電圧検出手段は、前記商用電力系統における3つの線間電圧の実効値を、前記商用電力系統の電圧波形の半周期の期間で算出して、これらの3つの線間電圧の実効値に2の平方根を乗じることにより、前記3つの線間電圧の最大値を求めることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の系統連系用電力変換装置。
前記出力電流制御手段は、前記商用電力系統における三相交流電圧の不平衡時に、瞬時電圧低下の発生時点から、前記電圧波形の半周期の間は、前記インバータからの出力電流値を、所定の上限値までに抑制し、前記瞬時電圧低下検出手段によって前記瞬時電圧低下が検出されると、前記インバータからの出力電流値を、前記4つの電圧最大値のうちの最小値に応じた出力電流値に低下させることを特徴とする請求項4に記載の系統連系用電力変換装置。
前記出力電流制御手段は、前記瞬時電圧低下検出手段によって前記瞬時電圧低下が検出されたときに、前記瞬時電圧検出手段によって検出された前記瞬時電圧最大値と、前記線間電圧検出手段によって検出された前記3つの線間電圧の最大値との、4つの電圧最大値のうちの最小値が、予め設定された線間電圧下限値よりも小さいときに、前記インバータからの出力電流値を、前記線間電圧下限値に応じた出力電流値に低下させることを特徴とする請求項1乃至請求項5の少なくともいずれか一項に記載の系統連系用電力変換装置。
前記インバータのスイッチング素子のスイッチング方式は、三次高調波注入PWM方式(Third Harmonic Injected Pulse Width Modulation Method)であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の少なくともいずれか一項に記載の系統連系用電力変換装置。
前記商用電力系統における商用系統電源の各相が、Δ結線、又はY結線されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の少なくともいずれか一項に記載の系統連系用電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態による系統連系用電力変換装置、及びその出力電流制御方法について、図面を参照して説明する。本実施形態では、請求項における系統連系用電力変換装置が、太陽電池を三相の商用電力系統に連系するためのパワーコンディショナである場合の例について、説明する。
図1は、本実施形態によるパワーコンディショナ1を含む太陽光発電システム10の概略のシステム構成を示す。
【0032】
太陽光発電システム10は、分散型電源である太陽電池2と、太陽電池2で発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ1とを備えており、三相の商用電力系統(以下、「三相系統」と略す)3に連系可能である。パワーコンディショナ1は、DC/DCコンバータ4、直流バス電圧V
dcの平滑化用の電解コンデンサC
dc、インバータ5、LCフィルタ6、制御回路7、及び系統連系用リレーS
Gridを備えている。
【0033】
DC/DCコンバータ4は、太陽電池2の最大電力点追従制御(以下、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御という)を行い、太陽電池2からの出力電力が最大(最適)になるように、太陽電池2からの入力電圧を調整する。具体的には、DC/DCコンバータ4は、太陽電池2から最大出力電力を出せるように、所定の入力電圧まで昇降圧の動作をして、最大電力点追従制御を行う。但し、インバータ5が、出力制限の制御を行う場合は、DC/DCコンバータ4を、通常のMPPT制御から、直流出力電圧(直流バス電圧V
dc)をある一定の範囲内で上下させるCV(Constant Voltage)モードの制御に切り替えることが必要である。
【0034】
インバータ5は、DC/DCコンバータ4から出力された電力に基づく直流電力を、交流電力に変換する。具体的には、DC/DCコンバータ4からの最大出力電力を全て交流出力電力に変換し、安定した出力電力の制御をするために、インバータ5は、常に直流バス電圧の一定制御を行う必要があると考える。インバータ5は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)から構成されるスイッチング素子S1〜S6を備えており、これらのスイッチング素子は、パワーコンディショナ1の制御回路7から送られるPWM(Pulse Width Modulation)信号でスイッチングされる。
図1中のi
u、i
v、i
wは、ぞれぞれ、インバータ5から三相系統3の各電源ラインu,v,wに出力される電流(以下、「インバータ出力電流」という)を示す。
【0035】
LCフィルタ6は、三相の各電源ラインに直列に接続された3つのリアクトルL
invと、u−v、v−w、及びu−wの各電源ライン間に接続された3つのコンデンサC
invとから構成され、インバータ5の出力電流の高調波成分(主に、PWM信号のキャリア周波数)を除去する。図中におけるR
invとR
cとは、それぞれ、各リアクトルL
invの内部抵抗と各コンデンサC
invの内部抵抗とを示す。
【0036】
制御回路7は、いわゆるマイコンを用いて構成されており、主に、上記のDC/DCコンバータ4とインバータ5を制御する。
【0037】
系統連系用リレーS
Gridは、太陽電池2(及びパワーコンディショナ1)の三相系統3への連系状態と解列状態とを切り替えるためのスイッチである。
【0038】
三相系統3は、商用系統電源8と、系統インピーダンスとを含んでいる。
図1中のR
GridとL
Gridとは、系統インピーダンスの抵抗と誘導性リアクタンスとを示す。また、
図1中のZ
Loadは、三相系統側に接続している三相負荷を示す。この三相負荷Z
Loadは、抵抗成分(R
Load)とリアクタンス成分(±jX
Load)とを含んでいる。
図1において、測定される系統電圧は、u−v、v−w、及びu−wの各電源ライン間の線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwである。また、
図1の制御回路7の入力信号(の測定箇所)は、直流バス電圧V
dc、インバータ5の出力電流i
u、i
v、i
w、及び各電源ライン間の線間電圧e
uv、e
vw、e
uwである。そして、
図1の制御回路7の出力信号は、系統連系用リレーS
Gridの制御用の出力信号、及びインバータ5のスイッチング素子S1〜S6の制御用の出力信号である。
【0039】
図2は、パワーコンディショナ1の制御回路7の制御ブロック図である。
図2には、系統連系運転制御部11とPWM出力部12が示されている。
図2中の各回路は、マイコンが有する基本的な機能ブロックを用いて作成した回路である。パワーコンディショナ1の制御回路7は、直流バス電圧V
dcの一定制御、無効電力制御、及びインバータ5の出力電流制御を行う。
【0040】
また、
図2に示すように、系統連系運転制御部11は、直流電圧制御回路13、無効電力制御回路14、三相二相交流電圧変換回路15、出力電流指令値算出回路16、三相二相交流電流変換回路17、出力電流制御回路18、ゼロクロス検出回路25、線間電圧測定回路26、及び出力電流測定回路28を備えている。直流電圧制御回路13、無効電力制御回路14、三相二相交流電圧変換回路15、出力電流指令値算出回路16、出力電流制御回路18は、それぞれ、請求項における有効電力指令値出力手段、無効電力指令値出力手段、三相二相交流電圧変換手段、出力電流指令値算出手段、出力電流制御手段に相当する。
【0041】
直流電圧制御回路13は、DC/DCコンバータ4から入力される直流バス電圧V
dcの値が一定になるように制御する回路であり、インバータ5への入力電圧である直流バス電圧V
dcの値と、この直流バス電圧V
dcの指令値である直流バス電圧指令値V
*dcとの差分に基づいて、インバータ5から出力する有効電力の指令値を出力する。より具体的に言うと、直流電圧制御回路13は、入力された直流バス電圧指令値V
*dcと直流バス電圧V
dcの測定値から、直流バス電圧の一定制御を行うために必要な有効電力指令値P
*uvwを求めて、出力電流指令値算出回路16に入力する。また、無効電力制御回路14は、インバータ5から出力された無効電力のフィードバック値Qと、インバータ5から出力する無効電力の制御目標値である無効電力目標値Q
*との差分に基づいて、インバータ5から出力する無効電力の指令値を出力する。より具体的に言うと、無効電力制御回路14は、入力された無効電力制御目標値Q
*と無効電力のフィードバック値Qから、無効電力指令値Q
*uvwを求めて、出力電流指令値算出回路16に入力する。なお、系統電圧不平衡時において、式(9)、(10)より求めた有効電力のフィードバック値P(瞬時有効電力)、無効電力のフィードバック値Q(瞬時無効電力)は、2f成分(基本波周波数の2倍の周波数の成分)を含んでいる。本実施形態では、無効電力制御回路14の安定性を考慮するために、この2f成分を除去するためのローパスフィルタを導入することが望ましい。
【0042】
線間電圧測定回路26は、三相系統3における瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwを測定して、A/D変換後の瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwを出力する。三相二相交流電圧変換回路15は、下記の式(5)を用いて、線間電圧測定回路26により測定された瞬時線間電圧e
uv、e
vwを、α相の瞬時交流電圧e
αとβ相の瞬時交流電圧e
βに変換する。出力電流指令値算出回路16は、瞬時電圧検出回路19(請求項における瞬時電圧検出手段)と、平均電圧検出回路20(請求項における線間電圧検出手段)とを有している。
【数1】
【数2】
【0043】
瞬時電圧検出回路19は、三相系統3における瞬時電圧最大値を検出する。具体的には、瞬時電圧検出回路19は、上記の式(2)のように、三相二相交流電圧変換回路15で求めたα相の瞬時交流電圧e
αとβ相の瞬時交流電圧e
βの二乗和の平方根に、3の平方根を乗じて、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxを求める。また、平均電圧検出回路20は、三相系統3における3つの線間電圧の最大値を検出する。具体的には、平均電圧検出回路20は、線間電圧測定回路26から出力された各瞬時線間電圧e
uv(t)、e
vw(t)、e
uw(t)に基づき、上記の式(4)を用いて、各線間電圧の実効値に2の平方根を乗じることにより、各線間電圧の振幅E
uv.max、E
vw.max、E
uw.maxを算出する。式(4)において、T
Grid.avgは、三相系統3の線間電圧の平均周期である。平均電圧検出回路20は、各線間電圧e
uv、e
vw、e
uwの実効値を、三相系統3の電圧波形の半周期(半サイクル)の期間(T
Grid. avg/2)で算出する。
【0044】
ゼロクロス検出回路25は、線間電圧測定回路26により測定された瞬時線間電圧e
uv(t)のゼロクロスタイミングに基づいて、商用系統周波数f
Gridを計測する回路であり、交流電圧を分圧する分圧回路と、分圧された交流電圧信号を二値化する二値化回路とを含んでいる。出力電流指令値算出回路16は、ゼロクロス検出回路25で計測した商用系統周波数f
Gridを、上記の式(11)に代入して、平均周期T
Grid.avgを求め、この平均周期T
Grid.avgを平均電圧検出回路20に送る。ここで、ゼロクロス検出回路25を設ける理由は二つある。一つ目は、商用系統周波数f
Gridを正しく計測するためである。もう一つは、単独運転状態を発生した場合に、ゼロクロス検出回路25で測定した周波数の変化を捉え、速やかに単独運転状態を検出するためである。なお、式(11)において、zはz次のサンプリング周期(一周期)である。(y+1)は、平均周期T
Grid.avgを求めるためのサンプリング回数である。また、平均周期T
Grid.avgを求めるためのサンプリング回数(y+1)は、多ければ、多いほど、瞬時電圧低下による系統周波数の変動の影響を減らすと考えられる。仮に、u相とv相の二相短絡事故が発生した場合には、線間電圧e
uvがゼロとなり、ゼロクロス検出回路25で系統周波数を計測できなくなる。しかし、この場合でも、サンプリング回数(y+1)を多くすることにより、二相短絡事故が平均周期T
Grid.avgに与える影響が少なくなり、このような場合でも、正しく各線間電圧の最大値を求めることができると考える。
【0045】
次に、出力電流指令値算出回路16が行う処理について述べる。出力電流指令値算出回路16は、まず、上記の式(3)を用いて、瞬時電圧検出回路19で求めた三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと、平均電圧検出回路20で求めた3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、E
uw.maxとの4つの電圧最大値のうちの最大値を、三相系統3における総合系統電圧最大値E
maxとして、算出する。ここで、総合系統電圧最大値E
maxを求める考え方は、三相系統電圧平衡時においては、総合系統電圧最大値E
max=E
uvw.max=E
n.maxであると考える。また、三相系統電圧不平衡時においては、総合系統電圧最大値E
max=E
n.maxであると考える。なお、式(3)におけるE
n.maxは、式(4)から求めた各線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxである。
【0046】
一般的に、α相の瞬時交流電圧e
αとβ相の瞬時交流電圧e
βとの位相差は常に90°である。三相系統電圧平衡時において、α相の瞬時交流電圧e
αとβ相の瞬時交流電圧e
βの振幅値が同じであると考え、上記の式 (2)から求めた瞬時電圧最大値E
uvw.maxは、一定の値であると考える。しかし、三相系統電圧不平衡時には、α相の瞬時交流電圧e
αとβ相の瞬時交流電圧e
βの振幅値が異なり、上記の式(2)から求めた瞬時電圧最大値E
uvw.maxは、2f成分を含むと考える。この時、総合系統電圧最大値E
maxが、2f成分を含む瞬時電圧最大値E
uvw.maxにならないようにするために、上記の式(3)を用いて、総合系統電圧最大値E
maxを算出する。そして、出力電流指令値算出回路16は、上記の総合系統電圧最大値E
maxと、直流電圧制御回路13から出力された有効電力指令値P
*uvwと、無効電力制御回路14から出力された無効電力指令値Q
*uvwと、三相二相交流電圧変換回路15により求めた二相交流電圧e
α、e
βを、上記の式(1)に代入して、インバータ5の二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを算出する。
【0047】
出力電流測定回路28は、三相交流出力電流(インバータ出力電流)i
u、i
v、i
w(の瞬時値)を測定して、A/D変換後の三相交流出力電流i
u、i
v、i
wを、三相二相交流電流変換回路17に出力する。三相二相交流電流変換回路17は、上記の式(6)を用いて、出力電流測定回路28から出力された三相交流出力電流(インバータ出力電流)i
u、i
v、i
wを、二相交流出力電流i
α、i
βに変換する。
【0048】
出力電流制御回路18は、インバータ5からの出力電流を制御する。
図3は、出力電流制御回路18の制御ブロックを示す。通常運転モードでは、
図3に示されるように、出力電流制御回路18の電流ループコントローラG
inv(s)27は、上記の式(1)〜(4)により求めた二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βと、上記の式(6)により求めた二相交流出力電流i
α、i
βとを用いて、インバータ5からの二相交流出力電流i
α、i
βの値が、インバータ5の二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βに追従するように、フィードバック制御を行う。また、出力電流制御回路18は、
図3に示されるように、電流ループコントローラG
inv(s)27から出力された、二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βと二相交流出力電流i
α、i
βとの差に比例した調整値と、上記の式(5)により求めた二相交流電圧e
α、e
βと、直流バス電圧V
dcとに基づいて、α相とβ相の出力デューティ比d
α、d
βを算出する。この出力デューティ比d
α、d
βは、
図2に示されるPWM出力部12に入力される。
【0049】
図2に示されるように、PWM出力部12は、デューティ比二相三相変換回路22と、三次高調波注入回路23と、PWM出力制御回路24とを備えている。デューティ比二相三相変換回路22は、上記の式(7)により、αβ相の出力デューティ比d
α、d
βを、uvw相の出力デューティ比d
u、d
v、d
wに変換した後、上記の式(8)により、三次高調波注入成分を含めた出力デューティ比指令値d
*u、d
*v、d
*wを求めて、PWM出力制御回路24に入力する。PWM出力制御回路24は、入力された出力デューティ比指令値d
*u、d
*v、d
*wに対応するパルス幅のPWM信号を生成する。これらのPWM信号に基づいて、インバータ5の各スイッチング素子S1〜S6のオン・オフが制御される。
【0050】
本実施形態のパワーコンディショナ1に三次高調波注入PWM方式(Third Harmonic Injected Pulse Width Modulation Method)を用いる理由は、以下の通りである。
図4(a)(b)は、それぞれ、通常のSPWM(Sinusoidal Pulse width modulation)方式と、三次高調波注入方式のPWMにおける、キャリア信号と出力デューティ比の波形を示す。まず、
図4(a)に示されるように、三次高調波注入分を含めない場合の出力デューティ比d
u(正弦波の変調波)の波高値が、1であるとする。この出力デューティ比d
uに三次高調波を注入した出力デューティ比指令値d
*uの波高値は、元の出力デューティ比d
uの正弦波に三次高調波を重畳した波形の波高値である。この出力デューティ比指令値d
*uの波高値は、元の出力デューティ比d
uの正弦波の60度付近の高さと考える。出力デューティ比d
u=sin60°=√(3)/2の場合、この値を式(8)に代入すると、出力デューティ比指令値d
*uは、√(3)/2≒0.866と求められる。よって、
図4(b)に示されるように、三次高調波注入後の出力デューティ比指令値d
*uの波形の波高値は、0.866となる。
【0051】
つまり、インバータ5のような三相系統連系用インバータにおいて、三次高調波を適切に重畳することにより、線間電圧の三次高調波成分をキャンセルすることができ、出力電圧利用率 (直流バス電圧V
dcと、出力する商用系統電圧との比)も、約15.4%(1/0.866)改善することができる。従って、三相系統連系用インバータにおいて、三次高調波注入方式を採用することにより、通常のSPWMの変調方式を採用した場合と比べて、直流バス電圧の一定制御を行う際に、直流バス電圧の指令値を低くすることができ、その結果、三相系統連系用インバータの変換効率を向上させることができる。
【0052】
なお、制御回路7は、三相二相交流電圧変換回路15により求めた二相交流電圧e
α、e
βと、三相二相交流電流変換回路17により求めた二相交流出力電流i
α、i
βに基づいて、上記の式(9)により、上記の無効電力制御回路14に入力される無効電力のフィードバック値Qを算出する。
【0053】
また、上記の出力電流制御回路18は、瞬時電圧低下検出回路21(請求項における瞬時電圧低下検出手段)を有している。詳細は後述するが、瞬時電圧低下検出回路21は、三相系統3における瞬時電圧低下を検出する。
【0054】
上記のように、制御回路7が、インバータ5からの出力を、従来のdq軸に座標変換された値を用いた制御方法ではなく、αβ軸に座標変換された値を用いて制御する理由は、以下の通りである。
(1)三相二相変換にαβ相変換手法を用いる制御手法は、単相の系統連系用インバータ(以下、「単相インバータ」と略す)の制御方式に相当すると考えられる。何故なら、αβ相変換手法を用いる制御手法は、単相インバータ用の交流電流制御を、α相分とβ相分の2つしているのと同様だからである。
(2)従来のdq相変換手法を用いた制御方法を採用した場合と異なり、PLL回路を設ける必要がない。何故なら、dq相変換では、PLL回路で求めた系統電圧の位相に対応した余弦成分と正弦成分の信号に基づいて、αβ軸の座標をdq軸上の座標に変換するため、PLL回路が必要であるが、αβ相変換手法を用いる制御手法では、上記の式(1)〜(5)に示されるように、インバータ5の二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βの算出に、系統電圧の位相が不要だからである。
(3)仮に、一相短絡事故や二相短絡事故が発生した場合でも、単相インバータの制御方式と同様な制御方式で、インバータ5の継続運転を行うことができる。この理由は、一相短絡事故や二相短絡事故が発生した場合でも、αβ相のうち、少なくとも一相の制御ができるからである。
【0055】
次に、上記の(3)に関連して、本パワーコンディショナ1が、二相短絡事故発生時に安定した継続運転を行うことができる理由について、説明する。
【0056】
三相系統3において、系統事故が発生した場合、二相短絡状況が発生する可能性がある。従来のdq相変換手法を用いた制御方法では、二相短絡状況(二相短絡事故)が発生した場合、PLL回路で求めた系統電圧の位相角を喪失して(位相角を検出できなくなり)、継続運転を行うことができなくなってしまう。仮に、従来のdq相変換手法を用いて、二相短絡時に、インバータ5を継続運転するためには、特別なPLL回路を用いる必要があると考えられる。
【0057】
本パワーコンディショナ1は、上記のように、インバータ5からの出力の制御に、αβ相変換手法を用いているので、二相短絡事故が発生した場合に、二相のうち、少なくとも一相の継続運転を行うことができる。
【0058】
まず、三相系統3のu相とv相とが短絡した場合は、下記の式(12)に示すように、u−v間の線間電圧e
uvが0になり、式(12)と式(5)から、二相交流電圧e
α、e
βが、式(14)に示す値になる。この時、電圧不平衡の状態であるので、式(13)に示すように、E
max=E
vw.maxであると考える。次に、v相とw相とが短絡した場合は、式(15)に示すように、v−w間の線間電圧e
vwが0になり、式(15)と式(5)から、二相交流電圧e
α、e
βが、式(17)に示す値になる。この時、電圧不平衡の状態であるので、式(16)に示すように、E
max=E
uv.maxであると考える。また、u相とw相とが短絡した場合は、式(18)に示すように、u−w間の線間電圧e
uwが0になり、式(18)と式(5)に基づき、二相交流電圧e
α、e
βが、式(20)に示す値になる。この時、電圧不平衡の状態であるので、式(19)に示すように、E
max=E
vw.maxであると考える。つまり、二相短絡事故が発生した場合は、二相交流電圧e
α、e
βは、単相系統電圧と同様に、一種類の線間電圧から構成されており、式(12)〜式(20)を式(1)〜(4)に代入すると、単相系統連系用インバータの出力電流指令値と同様な、二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを得ることができる。そして、
図3に示す出力電流制御回路18の制御ブロックを用いることにより、二相短絡事故が発生しても、単相系統連系用インバータと同様な出力電流制御を行うことができる。なお、式(12)〜(20)は、全て、系統インピーダンスを考慮せずに、各二相短絡事故の状態から考えた二相交流電圧と線間電圧との関係式である。
【数3】
【数4】
【0059】
上記のように、本パワーコンディショナ1は、二相短絡事故発生時でも、安定した継続運転を行うことができる。
【0060】
次に、本パワーコンディショナ1における瞬時電圧低下時の出力電流制御方法を説明する。瞬時電圧低下時に、瞬時電圧低下検出回路21(
図2参照)は、平均電圧検出回路20が式(4)により求めた各線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、E
uw.maxと、瞬時電圧検出回路19が式(2)により求めた三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxとに基づいて、三相系統3における瞬時電圧低下を検出する。そして、出力電流制御回路18は、下記の式(22)を用いて、上記の3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxと、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxとの4つの電圧最大値のうちの最小値と、予め設定された各線間電圧の下限値E
cstから最小値E
minを求めた後、下記の式(21)を用いて、インバータ5の二相交流出力電流指令値を、上記の最小値E
minに応じた値に低下させることにより、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を絞る。式(21)において、i
*α.FRT、i
*β.FRTは、それぞれ、瞬時電圧低下時を含む、FRT(事故時運転継続)モード時におけるα相とβ相の二相交流出力電流指令値を示し、E
ratedは、三相系統3の線間電圧の定格電圧の実効値(202Vrms)を示す。なお、本パワーコンディショナ1では、三相短絡事故を発生する場合(三相系統3の三つの線間電圧が全てゼロである場合)には、下記の式(22)により、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、予め設定された各線間電圧の下限値E
cstに応じた出力電流値に制限するが、ゲートブロックにより、一時的にPWM信号の出力を停止させてもよい。
【数5】
【0061】
図5は、瞬時電圧低下時における、各線間電圧の最大値E
n.maxと、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと、u,v,w各相の出力電流の最大値I
n.maxとの関係を示す。式(2)に示すように、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxは、二相交流電圧e
α、e
βを用いて求められている。これに対して、式(4)に示すように、各線間電圧の最大値E
n.maxは、各線間電圧e
nの実効値に2の平方根を乗じて、求められており、この各線間電圧e
nの実効値は、三相系統3の電圧波形の半周期(半サイクル)の期間(T
Grid/2)で算出されている。この式(2)と式(4)の算出式の相違から、三相電圧平衡状態であれば、瞬時電圧低下検出回路21(
図2参照)は、各線間電圧の最大値E
n.maxの低下よりも、三相瞬時電圧の最大値E
uvw.maxの低下を、先に検出する。従って、三相電圧平衡状態のときには、出力電流制御回路18は、瞬時電圧低下検出回路21による検出結果に基づいて、
図5に示されるように、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを瞬時に絞る。
【0062】
これに対して、三相電圧不平衡状態のときには、上記のように、総合系統電圧最大値E
max=E
n.maxとなり、式(4)から、各線間電圧の最大値E
n.maxの算出に要する時間は、系統電圧の版サイクルの期間であるから、瞬時電圧低下検出回路21は、
図5に示されるように、瞬時電圧低下から半サイクル後に、各線間電圧の最大値E
n.maxの低下を検出する。従って、三相電圧不平衡状態のときには、出力電流制御回路18は、瞬時電圧低下検出回路21による検出結果に基づいて、
図5に示されるように、瞬時電圧低下から半サイクル後に、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞る。このとき、出力電流制御回路18は、式(21)に示すように、インバータ5の二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを、FRTモード時の二相交流出力電流指令値i
*α.FRT、i
*β.FRTに変更する。
【0063】
但し、出力電流制御回路18が、瞬時電圧低下検出回路21による検出結果に基づいて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞るのは、瞬時電圧低下の発生時点から半サイクル後である。この瞬時電圧低下の発生時点から半サイクルの間は、出力電流制御回路18は、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、インバータ5の出力電流の上限値I
limまでに制限(抑制)する。なお、系統電圧の半サイクルの間、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを、上限値I
limまで出力しても、上位系統に与える影響は少ないと考える。また、上記の式(3)、式(4)、式(21)、及び式(22)より、三相の系統電圧が平衡状態であるか、不平衡状態であるかに関わらず、系統電圧の復帰後に、各相のインバータ出力電力i
u、i
v、i
wの絞りを解除するのに必要な時間は、
図5に示されるように、系統電圧の復帰から半サイクル後である。この理由は、式(4)に示すように、系統電圧復帰後においても、各線間電圧の最大値E
n.maxを求めるために、常に半サイクルの遅延時間が必要だからである。また、式(22)から最小値E
minを求め、式(21)に代入すると、系統電圧復帰後から系統電圧の半サイクルの期間までの時間は、二相交流出力電流指令値が、FRTモード時の二相交流出力電流指令値i
*α.FRT、i
*β.FRTのままである。なお、
図5に記されているX%は、残電圧のX%を意味する。
【0064】
なお、式(22)に示されるように、出力電流制御回路18は、瞬時電圧低下検出回路21によって瞬時電圧低下が検出されたときに、瞬時電圧検出回路19によって検出された三相瞬時電圧の最大値(振幅)E
uvw.maxと、平均電圧検出回路20によって検出された3つの線間電圧の振幅E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとのうちの最小値E
minが、予め設定された各線間電圧の下限値E
cst(請求項における「線間電圧下限値」)よりも小さいときに、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、上記の各線間電圧の下限値E
cstに応じた出力電流値に低下させる。
【0065】
図6は、通常運転モードと、上記のFRTモードとの切り替えの方法を示す。瞬時電圧低下検出回路21(
図2参照)は、瞬時電圧検出回路19によって検出された三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと、平均電圧検出回路20によって検出された3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの4つの電圧最大値のうちの最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下になった時に、三相系統3が瞬時電圧低下の状態になったと検出する。瞬時電圧低下検出回路21が瞬時電圧低下の状態になったと検出すると、出力電流制御回路18は、FRTモードに移行し(切り替え)、式(19)及び(20)に基づき、出力電流制御を行い、その結果、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞る。また、瞬時電圧低下検出回路21は、上記の最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下である状態から、閾値E
FRT.cstよりもΔE
FRT以上高い状態に変化した時に、三相系統3の電圧が通常の電圧値に復帰したと検出する。ここで、ΔE
FRTは、制御系の安定性向上のために設けた、不感帯の電圧範囲である。瞬時電圧低下検出回路21が、通常の電圧値に復帰したと検出すると、出力電流制御回路18は、通常運転モードに移行し(切り替え)、式(1)〜(4)に従って、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの制御を行う。なお、通常運転モードの時に、三相系統3が瞬時電圧低下の状態になった場合でも、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの4つの電圧最大値のうちの最小値E
minが、閾値E
FRT.cstより高い場合には、出力電流制御回路18は、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、上限値I
limまでに抑制する。但し、この場合でも、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値が上限値I
limにまで達していない場合には、インバータ5(直流電圧制御回路13)は、直流バス電圧の一定制御を継続する。
【0066】
上記のように、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、一相短絡事故や二相短絡事故が発生した場合を含む瞬時電圧低下時に、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを抑制して、過電流の発生を防ぐことができるので、安定した継続運転を行うことができる。
【0067】
上記の本実施形態のパワーコンディショナ1が有する効果を確認するために、シミュレーションで検証を行った。
図7は、シミュレーションで設定したパラメータの値を示す。
図7中のT
dは、デッドタイム(インバータ5の各スイッチング素子S1〜S6における上アームと下アーム(例えば、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2)を両方ともオフにする時間)を示す。また、
図7中のスイッチング周波数は、インバータ5の各スイッチング素子S1〜S6のスイッチング周波数を示す。
【0068】
図8は、瞬時電圧低下時のシミュレーションの条件を示す。
図8の表中の各電圧値は、三相系統3における各相電圧e
u、e
v、e
wの実効値を示す。
図8に示されるように、全ての条件1〜6において、三相系統3における電源をΔ結線にしてシミュレーションを行った。条件1は、三相の系統電圧の平衡時において、三相系統3の瞬時電圧低下が発生したけれども、上記の最小値E
minが閾値E
FRT.cstより高い場合のシミュレーションの条件である。上記のパワーコンディショナ1(のインバータ5)の制御方式の優位性を確認するために、条件4では、瞬時電圧低下時における各相電圧e
u、e
v、e
wの実効値の低下幅に、50Vずつの差を設けた。すなわち、条件4において、瞬時電圧低下時における相電圧e
uの実効値の低下幅は、50Vであり、相電圧e
vの実効値の低下幅は、100Vであり、相電圧e
wの実効値の低下幅は、150Vである。条件4では、瞬時電圧低下の前における三相の系統電圧が不平衡であるだけではなく、瞬時電圧低下時における三相の系統電圧の低下幅も不平衡である。また、三相の系統電圧が不平衡の状態において、一相短絡の条件5、及び最も厳しい二相短絡の条件6で、シミュレーションを実施した。
【0069】
図9は、
図8の条件1のシミュレーション結果を示す。
図9では、上記の最小値E
minが閾値E
FRT.cstより高いレベルの瞬時電圧低下を発生した時に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wのピーク値は約50Aである。この時、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wのピーク値がインバータ出力電流の上限値I
lim(60A)より小さいため、インバータ5(直流電圧制御回路13)が、常に直流バス電圧の一定制御を行い、瞬時有効電力Pを、定格出力(10kW)まで出力し続けることを確認することができた。
【0070】
図10は、
図8の条件2のシミュレーション結果を示す。
図10乃至
図14におけるE
uv、E
vw、E
uwは、各線間電圧e
uv、e
vw、e
uwの瞬時値を示す。
図10における1.2秒付近で、各相電圧e
u、e
v、e
wの実効値を、202Vから41Vに変化させて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wが、
図5に示すように、瞬時電圧最大値E
uvw.maxに応じて、絞られている(低下している)ことを確認した。また、系統電圧は1.4秒付近で復帰しているが、系統電圧が復帰してから、約半サイクル後に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wが定格出力まで復帰することも確認した。その後、パワーコンディショナ1が、直流バス電圧V
dcの一定制御を行い、直流バス電圧V
dcが380Vの付近で、安定することを確認した。ここで、系統電圧復帰後、一時的に、瞬時有効電力Pが、定格出力(10kW)の1.5倍(15kW)まで出力されているが、これは、出力電力のリミッタ値が、シミュレーション上で、定格出力の1.5倍(インバータ出力電流の上限値I
lim=60A)で設計されたからである。なお、
図10における1.2秒から1.4秒までの間、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞っているため、インバータ5(直流電圧制御回路13)は、直流バス電圧の一定制御の能力を喪失する。この時、DC/DCコンバータ4は、通常のMPPT制御からCVモード制御に切り替わって、
図10に示されるように、直流バス電圧V
dcが一定の範囲内の値(420Vから440V)となる。この点は、後述する
図11〜13(
図8の条件3〜6のシミュレーション結果)についても、同様である。
【0071】
図11は、
図8の条件3のシミュレーション結果を示す。
図11における1.2秒付近で、各相電圧e
u、e
v、e
wの電圧低下を伴う位相急変の事象を発生させた。条件3では、電圧低下後に、三相の系統電圧が不平衡になるので、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値が、出力電流の上限値I
limまでに制限されることを確認した。そして、半サイクル後に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wが、絞られる。また、瞬低中において、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞って、継続運転を行っていることも確認した。系統電圧復帰後においても、半サイクル後に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wが定格出力まで復帰して、直流バス電圧V
dcの一定制御を行うことも確認した。
【0072】
図12は、
図8の条件4のシミュレーション結果を示す。この条件4のように、系統電圧が、極端に不平衡なケースにおいても、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞って、安定した継続運転を行っていることを確認した。
図12に示すように、1.2秒付近で、系統事故(瞬時電圧低下)を発生させ、1.4秒付近で、系統電圧が復帰した後においても、問題なく継続運転することができることを確認した。
【0073】
図13は、
図8の条件5のシミュレーション結果を示す。この条件5のように、系統電圧が不平衡な状態から、v相を短絡させた場合も、
図13に示すように、瞬時電圧低下中の期間(1.2秒から1.4秒の間)において、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞って、安定した継続運転を行っていることを確認した。また、1.4秒付近で、系統電圧が復帰した後においても、問題なく継続運転することができることを確認した。
【0074】
図14は、
図8の条件6のシミュレーション結果を示す。系統電圧が不平衡な状態から、u相とv相の二相を短絡させた。この二相短絡による瞬時電圧低下中の期間(1.2秒から1.4秒の間)において、αβ相の瞬時交流電圧(二相交流電圧)e
α、e
βが、式(14)に示すように、単相系統電圧と同様な一種類の線間電圧e
vwで構成されることから、このαβ相の瞬時交流電圧e
α、e
βに基づいて生成される二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βが、単相系統連系用インバータの出力電流指令値と同様な指令値となる。この時、PWM出力部12におけるPWM出力制御は、三次高調波注入PWM方式から、単相系統連系用インバータに用いられるSPWM方式の出力に変更し、瞬時電圧低下中の期間においても、問題なく継続運転することを確認した。その後、1.4秒付近で、系統電圧が復帰した後に、三相出力を行うことも確認した。なお、
図9〜
図14における瞬時有効電力Pと瞬時無効電力Qのシミュレーション結果は、全て2f成分を除去するためにローパスフィルタを通した値を示している。
【0075】
上記のシミュレーションの結果を要約すると、以下の通りである。
(1)上記の出力電流制御方式によれば、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータ5からの出力電流を安定させることができることを確認した。
(2)三相系統3の瞬時電圧低下時に、インバータ5の出力電流指令値を、三相の瞬時電圧最大値(E
uvw.max)と、3つの線間電圧の最大値(E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.max)の4つの電圧最大値のうちの最小値に応じて絞る(低下させる)ことにより、安定した継続運転を行うことができることを確認した。
(3)電圧不平衡の瞬時電圧低下時において、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞るまでの半サイクルの間は、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、出力電流の上限値I
limまでに制限することを確認した。
(4)三相系統3の瞬時電圧低下時において、一相短絡や二相短絡の状態にしても、継続運転を行うことができることを確認した。
【0076】
上記のシミュレーション結果から、本パワーコンディショナ1の制御方式の有用性が明らかになった。
【0077】
上記のように、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、三相系統3の瞬時電圧低下時に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、検出された三相の瞬時電圧最大値(振幅)E
uvw.maxと、検出された3つの線間電圧の最大値(振幅)E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの、4つの電圧最大値のうちの最小値E
minに応じた出力電流値に低下させることができる。ここで、上記のように、総合系統電圧最大値E
maxを求める考え方は、(三相の)電圧平衡時においては、総合系統電圧最大値E
max=三相の瞬時電圧最大値E
uvw.max=各線間電圧の最大値E
n.maxである。また、三相系統電圧の不平衡時においては、総合系統電圧最大値E
max=各線間電圧の最大値E
n.maxである。従って、上記のように、三相系統3の瞬時電圧低下時に、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、検出された三相の瞬時電圧最大値(振幅)E
uvw.maxと、検出された3つの線間電圧の最大値(振幅)E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの、4つの電圧最大値のうちの最小値E
minに応じた出力電流値に低下させることにより、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを抑制して、過電流の発生を防ぐことができるので、安定した継続運転を行うことができる。更に、瞬時電圧低下の検出時に、出力電流を抑制する(低下させる)ので、上位系統を不安定化させるおそれがない。
【0078】
また、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、出力電流指令値算出回路16が、直流電圧制御回路13から出力された有効電力指令値P
*uvwと、無効電力制御回路14から出力された無効電力指令値Q
*uvwと、三相二相交流電圧変換回路15により変換された二相交流電圧e
α、e
βとに基づいて、インバータ5のα相とβ相の二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを算出し、出力電流制御回路18は、出力電流指令値算出回路16により算出された二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βに基づいて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を制御するようにした。
【0079】
本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、上記のように、インバータ5からの出力を、従来のdq軸に座標変換された値を用いた制御方法ではなく、αβ軸に座標変換された二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを用いて制御するようにしたことにより、単相の系統連系用インバータ(単相インバータ)と同様な制御を行うことができる。また、従来のdq相変換手法を用いた制御方法を採用した場合と異なり、PLL回路を設ける必要がないので、パワーコンディショナ1の製造コストを削減することができると共に、PLL回路を使用するdq相変換手法を採用した場合と比べて、位相遅れによる制御系の遅れがないため、制御系の応答性を向上させることができる。さらに、上記のように、インバータ5からの出力を、αβ軸に座標変換された二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βを用いて制御するようにしたことにより、一相短絡事故や二相短絡事故が発生した場合でも、αβ相のうち、少なくとも一相の制御ができるので、単相インバータの制御方式と同様な制御方式で、インバータ5の継続運転を行うことができる。
【0080】
さらにまた、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、3つの線間電圧の実効値を、三相系統3の電圧波形の半周期(半サイクル)の期間で算出して、これらの3つの線間電圧の実効値に2の平方根を乗じることにより、上記の3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxを求めるようにした。ここで、三相系統電圧不平衡時においては、上記の最小値E
minは、E
n.max(各線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、E
uw.maxのうちの最小値)である。従って、上記のように、3つの線間電圧の最大値を、三相系統3の電圧波形の半サイクルの期間で算出するようにしたことにより、正確な各線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、E
uw.maxの算出に要する時間も、三相系統3の電圧波形の略半サイクルの期間となるので、三相系統電圧不平衡時において、三相系統3の瞬時電圧低下が発生した場合に、三相系統3の電圧波形の略半サイクルの期間で、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を低下させることができる。
【0081】
また、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、出力電流制御回路18は、瞬時電圧低下検出回路21によって瞬時電圧低下が検出されたときに、瞬時電圧検出回路19によって検出された三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと、平均電圧検出回路20によって検出された3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの、4つの電圧最大値のうちの最小値E
minが、予め設定された各線間電圧の下限値E
cst(請求項における「線間電圧下限値」)よりも小さいときに、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、上記の各線間電圧の下限値E
cstに応じた出力電流値に低下させる。これにより、4つの系統電圧(E
uvw.max、E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.max)のうちの最小値E
minが、例えば、0のときでも、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、上記の各線間電圧の下限値E
cstに応じた出力電流値にすることができるので、安定した継続運転を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、瞬時電圧低下検出回路21は、瞬時電圧検出回路19によって検出された三相瞬時電圧の最大値(振幅)E
uvw.maxと、平均電圧検出回路20によって検出された3つの線間電圧の振幅E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとのうちの最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下になった時に、瞬時電圧低下の状態になったと検出し、上記の最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下である状態から、閾値E
FRT.cstよりもΔE
FRT以上高い状態に変化した時に、三相系統3の電圧が通常の電圧値に復帰したと検出する。これにより、ノイズ等の影響による誤動作を防ぎ、インバータ5の出力電流制御の安定性を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態のパワーコンディショナ1によれば、インバータ5のスイッチング素子S1〜S6のスイッチングに、三次高調波注入PWM方式を採用した。これにより、線間電圧の三次高調波成分をキャンセルすることが可能になるので、出力電圧利用率を改善することができる。従って、通常のSPWMの変調方式を採用した場合と比べて、直流バス電圧の一定制御を行う際に、直流バス電圧の指令値を低くすることができ、その結果、インバータ5の変換効率を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態のパワーコンディショナ1の出力電流制御方法は、太陽電池2から入力された電力に基づく直流電力を三相交流電力に変換するインバータ5を備えた、パワーコンディショナ1の出力電流制御方法であって、三相系統3における三相の瞬時電圧最大値(振幅)E
uvw.maxを検出するステップと、三相系統3における3つの線間電圧の最大値(振幅)E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxを検出するステップと、三相系統3における瞬時電圧低下を検出するステップと、瞬時電圧低下を検出したときに、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を、検出された三相の瞬時電圧最大値(振幅)E
uvw.maxと、検出された3つの線間電圧の最大値(振幅)E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとの、4つの電圧最大値のうちの最小値E
minに応じた出力電流値に低下させるステップとを備えるものである。この制御方法により、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを抑制して、過電流の発生を防ぐことができるので、安定した継続運転を行うことができる。更に、瞬時電圧低下の検出時に、出力電流を抑制する(低下させる)ので、上位系統を不安定化させるおそれがない。
【0085】
変形例:
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
【0086】
変形例1:
上記の実施形態では、三相系統3における瞬時線間電圧e
uv、e
vw(三相交流電圧)を、α相とβ相の二相交流電圧e
α、e
βに変換して、これらの二相交流電圧e
α、e
βに基づいて、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxを求める場合の例について示したが、三相の瞬時電圧を直接測定する方法により、三相の瞬時電圧最大値を検出してもよい。
【0087】
変形例2:
上記の実施形態では、三相の瞬時電圧最大値(振幅)E
uvw.maxと、3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとのうちの最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下である状態から、閾値E
FRT.cstよりもΔE
FRT以上高い状態に変化した時に、三相系統3の電圧が通常の電圧値に復帰したと検出して、FRTモードから通常運転モードに切り替えるようにした。けれども、FRTモードから通常運転モードへの切替の条件は、これに限られず、三相の瞬時電圧最大値E
uvw.maxと、3つの線間電圧の最大値E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.maxとのうちの最小値E
minが、閾値E
FRT.cst以下である状態から、閾値E
FRT.cstよりも高い状態に変化した時に、三相系統の電圧が通常の電圧値に復帰したと検出して、FRTモードから通常運転モードに切り替えるようにしてもよい。
【0088】
変形例3:
上記の実施形態では、本発明の系統連系用電力変換装置が、太陽電池2を三相系統3に連系するためのパワーコンディショナ1である場合の例について説明した。けれども、本発明の適用対象となる系統連系用電力変換装置は、これに限られず、例えば、風力発電装置や燃料電池等の分散型電源を三相系統に連系するためのパワーコンディショナであってもよいし、分散型電源及び電力貯蔵装置と組み合わされた、蓄電ハイブリッド発電システム用の電力変換装置であってもよい。
【0089】
変形例4:
上記の実施形態では、制御回路7が、いわゆるマイコンを用いて構成されている場合の例を示したが、制御回路7は、これに限られず、例えば、システムLSIであってもよい。
【0090】
変形例5:
上記の実施形態では、瞬時電圧低下時に、式(22)を用いて、3つの線間電圧の最大値と三相の瞬時電圧最大値との4つの電圧最大値のうちの最小値と、予め設定された各線間電圧の下限値E
cstから最小値E
minを求めたが、瞬時電圧低下時に、下記の式(23)及び(24)に示すように、三相の瞬時電圧最大値を考慮せずに、3つの線間電圧の最大値のうちの最小値と、予め設定された各線間電圧の下限値E
cstとから最小値E
minを求めるか、又は3つ(三相)の相電圧の最大値のうちの最小値と、予め設定された各相電圧の下限値E
cstとから最小値E
minを求めて、この最小値E
minに応じて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を低下させてもよい。この時、式(23)及び(24)の性質から、電圧平衡時において、瞬時電圧低下の発生時点から出力電流を絞るまでの時間は、半サイクルであると考える。なお、3つの相電圧の最大値のうちの最小値と、予め設定された各相電圧の下限値E
cstとから最小値E
minを求める場合、上記の式(21)において、E
ratedは、三相系統3の相電圧の定格電圧の実効値に変更する必要がある。また、3つの相電圧の最大値のうちの最小値と、予め設定された各相電圧の下限値E
cstとから最小値E
minを求める場合、
図2中の平均電圧検出回路20が、3つの相電圧の最大値を検出する。この場合における平均電圧検出回路20が、請求項における相電圧検出手段に相当する。
【数6】
【0091】
変形例6:
上記の実施形態では、線間電圧測定回路26により瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwを測定して、瞬時電圧低下時に、式(22)に従い、これらの3つの線間電圧の測定値に基づいて求めた3つの線間電圧の最大値と、三相の瞬時電圧最大値との4つの電圧最大値のうちの最小値と、予め設定された各線間電圧の下限値E
cstから最小値E
minを求め、この最小値E
minに応じて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を低下させた。けれども、本発明における瞬時電圧低下時の出力電流制御方法は、これに限られず、例えば、3つの線間電圧のうちの任意の2つの線間電圧の瞬時値を測定し、3つ目の線間電圧(3つの線間電圧のうちの残り1つの線間電圧)の瞬時値については、測定した2つの線間電圧の瞬時値から計算(算出)し、瞬時電圧低下の発生時に、式(22)又は式(23)から計算した最小値E
minに応じて、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを絞る(インバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を低下させる)ようにしてもよい。
【0092】
具体的には、例えば、
図15に示すように、線間電圧測定回路26により、3つの瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwのうち、u−v間の瞬時線間電圧e
uvと、v−w間の瞬時線間電圧e
vwを測定した上で、これらの瞬時線間電圧e
uv、e
vwに基づき、線間電圧算出回路29により、下記の式(25)を用いて、u−w間の瞬時線間電圧e
uwを計算する。そして、平均電圧検出回路20が、線間電圧測定回路26により測定された2つの瞬時線間電圧e
uv、e
vwと、線間電圧算出回路29により算出された瞬時線間電圧e
uwとに基づいて、3つの線間電圧の最大値E
n.max(E
uv.max、E
vw.max、及びE
uw.max)を求める。そして、瞬時電圧低下時(FRTモード時)に、出力電流制御回路18が、平均電圧検出回路20により求めた3つの線間電圧の最大値E
n.maxを、上記の式(22)又は式(23)に代入することにより、3つの線間電圧の最大値E
n.maxのうちの最小値、又は3つの線間電圧の最大値E
n.maxと三相瞬時電圧の最大値E
uvw.maxとの4つの最大値のうちの最小値に応じて、出力電流を絞る。
【数7】
【0093】
変形例7:
上記の実施形態では、線間電圧測定回路26により、3つの瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwを測定し、出力電流測定回路28により、3つのインバータ出力電流i
u、i
v、i
w(の瞬時値)を測定したが、制御回路7における入力ポートやA/D変換用の機能ブロックの数を減らして、制御回路7のコストを削減することを可能にするために、線間電圧測定回路26(電圧センサ)、及び出力電流測定回路28(電流センサ)は、3つの瞬時線間電圧及びインバータ出力電流(の瞬時値)のうちの任意の2つを測定し、3つ目の瞬時線間電圧及びインバータ出力電流を計算で求めてもよい。具体的には、瞬時線間電圧については、例えば、線間電圧測定回路26により、3つの瞬時線間電圧e
uv、e
vw、及びe
uwのうち、u−v間の瞬時線間電圧e
uvと、v−w間の瞬時線間電圧e
vwを測定した上で、これらの瞬時線間電圧e
uv、e
vwに基づき、上記の式(25)を用いて、u−w間の瞬時線間電圧e
uwを計算する。また、インバータ出力電流については、例えば、出力電流測定回路28により、3つのインバータ出力電流i
u、i
v、i
w(の瞬時値)のうち、u相とv相のインバータ出力電流i
u、i
v(の瞬時値)のみを測定した上で、これらの測定値に基づいて、下記の式(26)により、w相のインバータ出力電流i
w(の瞬時値)を求める。
【数8】
【0094】
変形例8:
上記の実施形態では、瞬時電圧低下時に、式(21)を用いて、インバータ5の二相交流出力電流指令値を、上記の最小値E
minに応じた値に低下させることにより、各相のインバータ出力電流i
u、i
v、i
wの値を絞ったが、瞬時電圧低下時(FRTモード時)に、下記の式(27)を用いて、上記の式(1)〜(4)により求めた二相交流出力電流指令値i
*α、i
*βに、所定の係数yを掛けて、二相交流出力電流指令値i
*α.FRT、i
*β.FRTを抑制することにより、インバータ出力電流i
u、i
v、i
wを抑制してもよい。なお、式(27)における係数yの設定範囲は、0から1までである。
【数9】
【0095】
変形例9:
上記の実施形態では、三相系統における電源をΔ結線にして、瞬時電圧低下時のシミュレーションを行ったが、三相系統における電源をY結線にした場合にも、本発明を適用することができる。
【課題】系統連系用電力変換装置において、商用電力系統の瞬時電圧低下が発生した場合に、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータからの出力電流を抑制して、安定した継続運転を行う。
との、4つの電圧最大値のうちの最小値に応じた出力電流値に低下させるようにした。これにより、商用電力系統の瞬時電圧低下が発生した場合に、三相の系統電圧が平衡であるか、不平衡であるかに関わらず、インバータからの出力電流を抑制して、過電流の発生を防ぐことができるので、安定した継続運転を行うことができる。