【実施例】
【0040】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
<チタン酸塩化合物粒子の製造>
(実施例1)
Ti:K=3:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸カリウムを振動ミルにて粉砕しながら10分間混合した。得られた粉砕混合物をハイスピードミキサーにて乾式造粒した後、電気炉にて850℃で4時間焼成することで粉末を得た。
【0042】
得られた粉末は、X線回折測定装置(リガク社製、Ultima IV)により、K
2Ti
6O
13の単相であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2100)により169μmであった。
【0043】
得られた粉末の形状は、電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)を用いて観察した。
図1に粒子の全体像のSEM写真、
図2に粒子の内部構造のSEM写真を示した。
図1及び
図2より、得られた粉末が、微粒子間に1μmに満たない微細な空隙を有する球状粒子であることが分かる。
【0044】
得られた粉末の細孔は、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60−GT)を用いて測定し、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は21.1%、細孔分布の極大値は0.11μmであった。
【0045】
又、得られた粉末についてBET比表面積を測定した結果、5.9m
2/gであった。
【0046】
(実施例2)
Ti:Na=3:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸ナトリウムを振動ミルにて粉砕しながら10分間混合した。得られた粉砕混合物をハイスピードミキサーにて乾式造粒した後、電気炉にて850℃で4時間焼成することで粉末を得た。
【0047】
得られた粉末の評価は、実施例1と同様に行った。その結果、Na
2Ti
6O
13の単相であり、平均粒子径は56μm、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は24.0%、細孔分布の極大値は0.34μmの球状粒子であることを確認した。
【0048】
図3に粒子の全体像のSEM写真、
図4に粒子の内部構造のSEM写真を示した。
【0049】
又、得られた粉末についてBET比表面積を測定した結果、4.4m
2/gであった。
【0050】
(実施例3)
実施例1で得たチタン酸塩化合物粒子に対して、3−アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて表面処理を行うことで粉末を得た。表面処理は、チタン酸塩化合物粒子100質量%に対して3−アミノプロピルトリエトキシシランが0.5質量%となるように行った。
【0051】
(比較例1)
以下のようにして、上記特許文献2に開示された中空状のチタン酸塩化合物粒子を製造した。
【0052】
Ti:K=3:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸カリウムを振動ミルにて粉砕しながら10分間混合した。得られた粉砕混合物を、電気炉にて1050℃で4時間焼成し、焼成物を粉砕機にて粉砕し、平均短径1.9μm、平均長径3.1μm、平均アスペクト比1.7の柱状粉末を得た。
【0053】
得られた柱状粉末、エチルセルロース系バインダー、ポリカルボン酸アンモニウム塩を用いてスラリーを製造し、得られたスラリーを噴霧乾燥した。次に噴霧乾燥して得られた粉末を900℃で2時間熱処理を行った。
【0054】
得られた粉末の評価は、実施例1と同様に行った。その結果、K
2Ti
6O
13の単相であり、平均粒子径は141μm、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は2.8%、細孔分布の極大値は1.9μmの球状粒子であることを確認した。
図5に粒子の全体像のSEM写真、
図6に粒子の内部構造のSEM写真を示した。
図5及び
図6より、1〜5μmの空隙を多く持つ中空状球状粒子であることが分かる。
【0055】
又、得られた粉末についてBET比表面積を測定した結果、0.6m
2/gであった。
【0056】
(比較例2)
比較例1で得られた粉末を乳鉢で粉砕し、柱状粉末を得た。
図7に粒子の全体像のSEM写真を示した。
【0057】
(比較例3)
Ti:K:Li=1.73:0.8:0.27(モル比)となるように秤量した酸化チタン、炭酸カリウム及び炭酸リチウムを常法により混合し、原料混合物を振動ミルにて粉砕しながら30分間混合した。得られた粉砕混合物を電気炉にて1000℃で4時間焼成後、焼成物を粉砕することで、粉末を得た。得られた粉末を水中に分散させ10質量%スラリーを調製した。このスラリーの固形分を濾取し、乾燥することでチタン酸リチウムカリウム(K
0.8Li
027Ti
1.73O
4)を得た。
【0058】
得られたチタン酸リチウムカリウムを3.5質量%に調整した硫酸溶液に分散し、5質量%スラリーを調製した。このスラリーの固形分を濾取し、水洗、乾燥することでチタン酸(H
2Ti
2O
5)を得た。
【0059】
得られたチタン酸を5.3質量%に調整した水酸化カリウム溶液に分散し、10質量%スラリーを調製した。このスラリーの固形分を濾取し、水洗、乾燥した。このものを電気炉にて500℃で3時間焼成することで粉末を得た。
【0060】
得られた粉末は、X線回折測定装置により8チタン酸カリウム(K
2Ti
8O
17)であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により9μmであった。粉末の形状は、SEMを用いて板状粒子であることを確認した。
【0061】
(比較例4)
Ti:K:Li=1.73:0.8:0.27(モル比)となるように秤量した酸化チタン、炭酸カリウム及び炭酸リチウムを常法により混合し、原料混合物を振動ミルにて粉砕しながら30分間混合した。得られた粉砕混合物を電気炉にて1000℃で4時間焼成後、焼成物を粉砕することで、粉末を得た。得られた粉末を水中に分散させ10質量%スラリーとし、さらに酸を添加した。このスラリーの固形分を濾取し、乾燥した。乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成することで粉末を得た。
【0062】
得られた粉末は、X線回折測定装置によりレピドクロサイト型層状結晶のチタン酸リチウムカリウム(K
0.7Li
0.27Ti
1.73O
3.95)であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により15μmであった。粉末の形状は、SEMを用いて板状粒子であることを確認した。
【0063】
(比較例5)
Ti:K:Mg=4:2:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン、炭酸カリウム及び水酸化マグネシウムを常法により混合し、原料混合物を振動ミルにて粉砕しながら30分間混合した。得られた粉砕混合物を電気炉にて1000℃で4時間焼成後、焼成物を粉砕し、粉末を得た。得られた粉末を水中に分散させ10質量%スラリーとし、さらに酸を添加した。このスラリーの固形分を濾取し、乾燥した。乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成することで粉末を得た。
【0064】
得られた粉末は、X線回折測定装置によりレピドクロサイト型層状結晶のチタン酸マグネシウムカリウム(K
0.7Mg
0.4Ti
1.6O
3.95)であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により4μmであった。粉末の形状は、SEMを用いて板状粒子であることを確認した。
【0065】
(比較例6)
Ti:K=1:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸カリウムを常法により混合し、原料混合物を振動ミルにて粉砕しながら30分間混合した。得られた粉砕混合物を電気炉にて780℃で4時間焼成後、焼成物を粉砕することで、2チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)を得た。
【0066】
得られた2チタン酸カリウムを水中に分散させ15質量%スラリーを調製し、さらに酸を添加した。このスラリーの固形分を濾取し、乾燥した。乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成し、焼成物をハンマーミルにて解砕することで粉末を得た。
【0067】
得られた粉末は、X線回折測定装置により7.9チタン酸カリウム(K
2Ti
7.9O
16.8)であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により11μmであった。粉末の形状は、SEMを用いて不定形の形状を有し、不規則な方向に複数の突起が延びる形状(アメーバ形状)を有している粒子であることを確認した。
【0068】
<摩擦材の製造>
(実施例3)
表1に従う配合比率に従って材料を配合し、レーディゲミキサーにて混合後、得られた混合物を仮成形(25MPa)、熱成形(150℃、20MPa)を行い、更に熱処理220℃を行い、ディスクブレーキ用パッドを製造した。
【0069】
<摩擦材の評価>
摩擦試験は、汎用のフルサイズダイナモ試験機を用いてJASO C−406に準拠して行った。摩擦材の気孔率は、JIS D4418に準拠して、油中含浸により測定を行った。結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜3の多孔質チタン酸化合物粒子を用いた実施例3〜11は、比較例1〜6のチタン酸塩化合物粒子を用いた比較例7〜14に比べ、フェード試験項目における制動10回中の最低摩擦係数(μ)が高くなっており、銅粉末の含有の有無にかかわらず、優れた耐フェード性を示すことが分かる。