(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
テープ状の基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、
前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、
前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され、
このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上20量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下であることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
テープの基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、
前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、
前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され、
このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上10量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり165μg以下であることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、
テープ状の基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、
前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、
前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され、
このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上10量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり50μg以下であることを特徴とするプラスチックレンズ成型用粘着テープ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、粘着剤に起因する白濁がプラスチックレンズに発生しにくいプラスチックレンズ成型用粘着テープを提供することを課題とする。また、粘着剤に起因する白濁が発生しにくいプラスチックレンズの成型方法を提供することを併せて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤に含まれる低分子量シロキサン(3〜20量体の環状、直鎖状のジメチルポリシロキサン)の総量が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下となるようにすれば、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤からの低分子量シロキサンのプラスチックレンズの重合性モノマーへの溶出が低減でき、成型レンズの白濁発生を抑制できること、さらに、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤に含まれる低分子量シロキサン(3〜10量体の環状、直鎖状のジメチルポリシロキサン)の総量が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり165μg以下となるようにすれば成型レンズの白濁発生をより一層抑制できることを見いだし、本発明をなすに至った。
本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープは、所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、テープ状の基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され
、このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上20量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープは、所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、テープの基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、
前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され
、このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上10量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり165μg以下であることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープは、所定間隔を隔てて対向配置した一対のモールドの外周縁部に貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーを充填するキャビティを形成するために使用するプラスチックレンズ成型用粘着テープにおいて、テープ状の基材と、該基材を前記モールドに粘着させる粘着層と、を備え、前記基材はポリエチレンテレフタレートを主成分とし、前記粘着層は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤で構成され
、このシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3量体以上10量体以下のジメチルポリシロキサンの含有量は、所定量の前記粘着テープをアセトンに室温で24時間浸漬し、得られた浸漬液をGC−FID装置を用い、カラム温度を50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持して定量測定したとき、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり50μg以下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係るプラスチックレンズ成型方法は、上記のような本発明に係るプラスチック成型用粘着テープを使用してプラスチックレンズを製造する方法であって、一対のモールドを所定の間隔を隔てて対向配置し、前記両モ
ールドの外周縁部に前記プラスチックレンズ成型用粘着テープを貼り付け、前記両モールド間に形成された空間の開口を封止して、プラスチックレンズの重合性モノマーが充填されるキャビティを形成するキャビティ形成工程と、前記キャビティ内に前記重合性モノマーを充填するモノマー充填工程と、前記キャビティ内に充填された前記重合性モノマーを重合する重合工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープを使用すれば、プラスチックレンズの製造時に、粘着剤に起因する白濁がプラスチックレンズに発生しにくい。また、本発明に係るプラスチックレンズの成型方法によれば、粘着剤に起因する白濁がプラスチックレンズに発生しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るプラスチックレンズ成型用粘着テープ及びプラスチックレンズ成型方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープの断面図(テープの長手方向に直交する平面で切断した断面図)であり、
図2は、本実施形態のプラスチックレンズ成型方法を説明する図である。なお、以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0015】
本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100は、
図1に示すように、テープ状の基材(以降においてはテープ基材と記すこともある)10の片面のほぼ全面に、これをモールド30,30に粘着させる粘着層20を設けた構造を有している。
【0016】
次に、このようなプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を使用してプラスチックレンズを成型する方法を説明する。
【0017】
まず、
図2に示すように、例えば略円板状をなす一対のモールド30,30を所定の間隔を隔てて対向配置させた後に、両モールド30,30の外周縁部にプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を周方向に沿って巻き付けるように貼り付け、前記間隔を保持しつつ両モールド30,30間に形成された空間の開口を連続的に封止する。これによって、
図2に示すように、モールド30,30同士がほぼ平行をなして連結されるとともに、その間に平板状又は円筒状のキャビティCが区画形成される(キャビティ形成工程)。
【0018】
そして、このようなキャビティCが形成されたら、
図2に示すように、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100の一端を剥離して隙間を開け、その隙間からキャビティCに図示しないノズルを差し込む。そして、そのノズルからキャビティC内に液状の樹脂(重合性モノマー)を注入して充填した後に、再びその隙間をプラスチックレンズ成型用粘着テープ100で塞ぐ(モノマー充填工程)。
【0019】
樹脂(重合性モノマー)としては、m−キシリレンジイソシアネートとペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネートとの混合物、又は、m−キシリレンジイソシアネートとビス(メルカプトエチル)トリチオグリセリンとの混合物などが使用されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
さらに、その後、図示しない固定治具を装着して、前記間隔が変動しないようにモールド30,30を固定する。モールド30,30が固定治具によって固定されているため、キャビティCの内圧が変化しても前記間隔は変化することはなく、常に一定の間隔が維持される。そして、キャビティC内の樹脂(重合性モノマー)を加熱又は光照射によって重合反応させて、硬化させる(重合工程)。樹脂(重合性モノマー)が十分に硬化した後、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100を全て剥離してモールド30,30を取り外すと、プラスチックレンズが得られる。
【0021】
このようなプラスチックレンズ成型用粘着テープ100において、粘着層20は、付加反応型シリコーン粘着剤または過酸化物硬化型シリコーン粘着剤を主成分とし、このシリコーン粘着剤100質量部に対して、前記シリコーン粘着剤に有効な架橋剤0.10質量部以上0.25質量部以下を混合してなる粘着剤で構成されている。
【0022】
このような粘着層20は、十分な粘着力を有しているため、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100と一対のモールド30,30とによって形成されたキャビティCに樹脂(重合性モノマー)を注入した際に、その樹脂(重合性モノマー)が漏洩しないようにキャビティC内に樹脂(重合性モノマー)を確実に封止することができる。
【0023】
また、シリコーン粘着剤は、低分子量シロキサン(主に3〜20量体の環状及び/又は直鎖状のジメチルポリシロキサン)を不純物として含有しているが、これらの不純物が粘着層20から溶出して樹脂(重合性モノマー)に混入するため、従来においては、硬化後のプラスチックレンズの内部及び外周縁部に、前述したような白濁が発生するおそれがあった。
【0024】
しかしながら、本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100に使用される粘着剤は、該粘着剤中の低分子量シロキサンの含有量を、例えば後述する処理を施すなどして、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下としているので、低分子量シロキサン(主に3〜20量体の環状及び/又は直鎖状のジメチルポリシロキサン)の溶出量が大幅に低減される。よって、硬化後のプラスチックレンズの内部及び外周縁部に白濁が発生しにくい。
【0025】
本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100に使用される粘着剤中の低分子量シロキサンの含有量を低減する処理の方法は、特に限定されるものではないが、シリコーン粘着剤の原材料あるいはシリコーン粘着剤に熱処理や減圧処理を施し、低分子量シロキサンを揮発させ低減させる方法が好ましい。低分子量シロキサンの量は、
図4に示すGC−FID装置を用いた定量分析のチャート(
図4中のD−n(n=3〜20の整数)は低分子量シロキサンのn量体を表す)において、3〜20量体のジメチルポリシロキサンの量が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下、好ましくは3〜10量体のジメチルポリシロキサンの量が165μg以下、さらに好ましくは3〜10量体のジメチルポリシロキサンの量が50μg以下、すなわち白濁の発生が十分に抑制されるような量が好ましい。なお、ジメチルポリシロキサンは環状でも直鎖状でもよく、上記ジメチルポリシロキサンの量は、環状ジメチルポリシロキサンと直鎖状ジメチルポリシロキサンを合わせた量である。
【0026】
低分子量シロキサンを揮発させ低減させる方法としては、例えば、(1)シリコーン粘着剤を形成するシリコーンガムやMQ(M単位:(CH
3)
3SiO
1/2、Q単位:SiO
2)レジンをあらかじめ原材料の段階で減圧下で高温攪拌や混練(減圧ストリップ)して低分子量シロキサンを揮発させることにより低減処理する方法、(2)シリコーンガムやMQレジンを混合しベース粘着剤を製造する段階で減圧あるいは常圧下で熱を加え、低分子量シロキサンを揮発させることにより低減処理する方法、あるいは、(3)シリコーン粘着剤溶液の基材への塗布・乾燥工程において熱を加え、低分子量シロキサンを粘着層から揮発させることにより低減処理する方法などが挙げられる。これらの処理方法を組み合わせることも可能である。生産性、コストを考慮すると、(3)に略該当する処理方法が、粘着剤をウェブ状に広げて低分子量シロキサンを効率的に揮発させることが出来る点で最も好ましい。これらの処理を施すことによって、シリコーン粘着剤からの低分子量シロキサンの溶出量を大幅低減することが出来る。よって、硬化後のプラスチックレンズの内部及び外周縁部に白濁が発生しにくい。
【0027】
低分子量シロキサンの量を低減する処理時の温度は、特に限定されるものではないが、レンズ成型時における、樹脂(重合性モノマー)の重合温度以上、特に重合時における到達最高温度以上での熱処理が好ましい。このような熱処理により、低分子量シロキサンをシリコーン粘着剤より揮発させることができる。熱処理の温度は、樹脂(重合性モノマー)の種類によって異なるが、130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。なお、200℃を超える温度では、処理時間によっては、逆に、オルガノポリシロキサンの主鎖が切断され、かえって低分子量シロキサンが増加してしまう恐れや、上記(3)の処理方法では基材の変形の恐れがあるので、上限は200℃とすることが好ましい。
【0028】
また、熱処理時の温度以外の条件、例えば処理時間や雰囲気(雰囲気ガスの種類、気圧、気流速度)も特に限定されるものではなく、熱処理条件を、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中の3〜20量体のジメチルポリシロキサンの量がシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg以下、好ましくは3〜10量体のジメチルポリシロキサンの量がシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり165μg以下、さらに好ましくは3〜10量体のジメチルポリシロキサンの量がシリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり50μg以下となるように、すなわち白濁の発生が十分に抑制されるように設定すればよい。なお、本処理を施さない場合には、低分子量シロキサン(3〜20量体のジメチルポリシロキサン)の量は、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4850μg超過となる。
【0029】
さらに、低分子量シロキサンの量を低減する処理を粘着剤に対して施すタイミングは特に限定されるものではなく、シリコーン粘着剤と架橋剤とを混合する以前の単独のシリコーン粘着剤に施してもよいし、前記架橋剤を混合した後に施してもよい。すなわち、粘着剤の原料の段階で前記処理を施してもよいし、完成した粘着剤に対して前記処理を施してもよい。また、粘着剤溶液をテープ基材10に塗工して粘着層20を形成する際、又は、粘着層20の完成後に前記処理を施してもよい。
【0030】
このように、本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を使用してプラスチックレンズを製造すれば、硬化後のプラスチックレンズの内部及び外周縁部に白濁が発生しにくいので、収率よくプラスチックレンズを製造することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、テープ基材10の片面(粘着面)全体に粘着層20を設けたが、
図3に示すように、テープ基材10のうち各モールド30,30に粘着する領域(両サイド)のみに粘着層20を設けるようにしてもよい。このような構成とすれば、粘着層20を構成する粘着剤の使用量を削減できるとともに、粘着剤中の低分子量シロキサンのモノマー中への溶出を抑制でき、また、粘着剤の一部が成型品に付着するという不都合も生じにくい。
【0032】
以下に、本実施形態のプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を構成するテープ基材10,粘着層20、及び、粘着剤の原材料であるシリコーン粘着剤(すなわち、付加反応型シリコーン粘着剤,過酸化物硬化型シリコーン粘着剤),架橋剤について詳細に説明する。
【0033】
付加反応型シリコーン粘着剤は特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR3700、KR3701、X−40−3237−1、X−40−3240、X−40−3291−1、X−40−3229、X−40−3270、X−40−3306や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37−B9204や、東レ・ダウコーニング株式会社製のSD4584、SD4585、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593があげられる。
【0034】
また、過酸化物硬化型シリコーン粘着剤は特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKR100、KR101−10や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610−SM、XR37−B6722や、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH4280があげられる。
【0035】
付加反応型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤は特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のX−92−122や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のCR50や、東レ・ダウコーニング株式会社製のBY24−741があげられる。
【0036】
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤は特に限定されるものではないが、有機過酸化物の種類としては、例えば、ベンゾイールペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1′−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン等があげられる。
【0037】
シリコーン粘着剤に有効な架橋剤は、前記付加反応型シリコーン粘着剤、または、前記過酸化物硬化型シリコーン粘着剤100質量部に対して0.10質量部以上0.25質量部以下混合することが好ましい。0.10質量部未満であると、重合性モノマーの重合時に粘着剤の粘着力が不十分となり、前記間隔が保持できないおそれがある。その結果、重合性モノマーの膨張によりキャビティCから液漏れが発生して、得られたプラスチックレンズに欠けが生じるおそれがある。
【0038】
一方、0.25質量部超過であると、粘着剤の粘着力が強すぎるため、重合性モノマーの重合時に重合性モノマーが収縮しても前記間隔が保持されるので、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100がモールド30の径方向中心側に引張られる。その結果、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100にシワが発生し、プラスチックレンズの外周面にレンズシワが入るおそれがある。
【0039】
次に、基材10の材質は特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料が最適である。ただし、これに限定されるものではなく、他の材料を用いることもできる。
【0040】
例えば、ステンレススチール,軟質アルミニウム等の金属箔や、ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリフェニレンサルファイド,二軸延伸ポリプロピレン,ポリイミド,アラミド,ポリシクロオレフィン,フッ素系樹脂等の樹脂フィルムを用いることもできる。また、アルミニウム箔と樹脂フィルムとをラミネートした複合フィルムや、アルミナ,二酸化ケイ素等の金属酸化物薄膜を樹脂フィルムの表面に形成したフィルムと樹脂フィルムとをラミネートした複合フィルムを用いることもできる。
【0041】
テープ基材10としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、その厚さを20μm以上75μm以下の範囲内とすることが好ましい。20μm未満では、基材10の剛性が低いため、2つのモールド30,30間の間隔を保持することができないおそれがある。また、樹脂(重合性モノマー)が膨張する力に抗しきれずに割れ,切断等が生じ、キャビティC内へ空気が侵入したり、樹脂(重合性モノマー)の収縮する力に抗しきれずに幅方向に縮まって、テープシワを作る原因となるおそれがある。一方、75μmを超えると、基材10の剛性が高いため伸縮性が低下してしまうおそれがある。また、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100のラップ部分において隙間が発生してしまい、樹脂(重合性モノマー)の液漏れが発生するおそれがある。
【0042】
プラスチックレンズ成型用粘着テープ100の製造方法としては、付加反応型シリコーン粘着剤、または、過酸化物硬化型シリコーン粘着剤を、トルエン、キシレン等の有機溶剤に溶解した粘着剤溶液に、付加反応型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤、または、過酸化物硬化型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤を添加し、この溶液を基材10に、乾燥後の粘着層20の厚さが均一になるように、コンマコーター,リップコーター等で塗工した後、所定温度で乾燥・硬化させる方法があげられる。必要に応じて、粘着層と基材10の間に、アンカー処理層を設けても構わない。
【0043】
ただし、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100の製造方法は、上記のような方法に限定されるものではなく、シリコーン系粘着剤層を基材に形成するために採用されている通常の製造方法は、いずれも採用することができる。なお、温度等を適切な条件に設定すれば、乾燥・硬化させる際の熱処理によって低分子量シロキサンの量を低減することができる。
【0044】
粘着層20の厚さは、通常10μm以上35μm以下の範囲である。10μm未満であると、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100同士の重ね合わせ部及びモールド30との接着強度が不十分となり、液漏れや空気の侵入が起きやすい。また、35μm超過であると、プラスチックレンズ成型用粘着テープ100の総厚さが厚くなりすぎて、ラップ部に隙間が生じやすい。さらに、粘着層20からの低分子量シロキサンの溶出量も多くなり、プラスチックレンズに白濁が生じやすいことに加えて、例えば、粘着剤溶液を塗工・乾燥する際に、低分子量シロキサンの量を低減する処理を施しても、低分子量シロキサンの量が低減されにくい。
【0045】
このようなプラスチックレンズ成型用粘着テープ100を使用してプラスチックレンズを製造するが、その際に用いるモールド30の形状・材質などは特に限定されるものではない。ただし、一般的には、円板状をしたガラス(二酸化ケイ素)製のものや金属製のものが多用される。
【0046】
また、プラスチックレンズの原料となる樹脂(重合性モノマー)の種類も、特に限定されるものではない。メガネレンズの場合であれば従来公知の材料が用いられ、例えば超高屈折率(1.65≦Ne)のメガネレンズの場合には、エピスルフィド系樹脂(三井化学株式会社製MR−174、三菱瓦斯化学株式会社製IU−20)やチオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR−7)のモノマーなどが用いられる。
【0047】
また、高屈折率(1.58≦Ne<1.65)のメガネレンズの場合は、チオウレタン系樹脂(三井化学株式会社製MR−6、三井化学株式会社製MR−8)、ポリエステルメタクリレート(株式会社トクヤマ製TS−26)、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製Panlite)のモノマーなどが用いられる。また、中屈折率(1.55≦Ne<1.58)のメガネレンズの場合は、ウレタンメタクリレート(株式会社クレハ製K−23)、エポシキメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製MCR−50)、ジアリルカーボネート(PPGインダストリーズ社製HIRI)、ジアリルフタレート系樹脂(日油株式会社製NK−55)などのモノマーが用いられる。
【0048】
さらに、低屈折率(Ne<1.55)のメガネレンズの場合は、ウレタン系樹脂(PPGインダストリーズ社製TRIVEX)、ウレタンメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製MCR−10)、メタクリレート(株式会社クレハ製K−55)、アリルジグリコールカーボネート(PPGインダストリーズ社製CR−39)、ジアリルカーボネート(PPGインダストリーズ社製CR−607)、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリ酸メチル)などのモノマーを用いることができる。
【0049】
本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープの粘着剤に含まれる低分子量シロキサンの定量は、GC−FID(水素炎イオン化検出器付ガスクロマトグラフ)装置を用いて、以下の方法で行った。まず、試料の前処理として、細断した粘着テープ試料0.25gをアセトン(内標準として20μg/mLのn−テトラデカンを含む)10mLに浸漬し、密閉の後に室温で24時間放置した。
【0050】
次いで、得られた浸漬液を試験液として、GC−FID(水素炎イオン化検出器付ガスクロマトグラフ)装置Agilent Technologies社製7890Aを用いて、低分子量シロキサンの定量測定を行った。用いたカラムは、J&W製DB−5(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)である。カラム温度は、50℃で5分保持した後に昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で60分間保持した。また、注入口温度は300℃、検出器温度は300℃、キャリヤーガスはHe、注入方法はパルスドスプリットレス法、試験液の注入量は1μLである。シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤中に含まれる3〜20量体の各低分子量シロキサンの量は、n−テトラデカン(n−C14)を標準物質として、それぞれピーク面積換算して算出した。このとき、得られた結果は、試料中の基材の質量を減じた、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤の質量1g当たりに含まれる低分子量シロキサンの質量である。低分子量シロキサンのn−テトラデカンとの相対感度は2.62とした。
【実施例】
【0051】
本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープの構成について、実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明のプラスチックレンズ成型用粘着テープはこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
付加反応型シリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製X−40−3240)100質量部、前記付加反応型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製X−92−122)0.18質量部をトルエン中にて均一に攪拌混合して、粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が40μmになるように東レ株式会社製ポリエステル(PET)フィルム基材(厚さ50μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が180℃となるゾーンで1分間乾燥し、総厚90μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープ(以降は、粘着テープと記すこともある)を得た。
【0053】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を145℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(付加反応型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり5μg未満(検出限界未満)、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり3631μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、白化(レンズの白濁)が生じておらず、レンズ周縁部の研磨やレンズ表面の切削が不要の良品レンズであった。よって、この粘着テープは、レンズ成型に必要な特性を有していると言える。
【実施例2】
【0054】
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR130)100質量部、前記過酸化物硬化型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(ベンゾイールペルオキシド)0.10質量部をトルエン中にて均一に攪拌混合して、粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように帝人デュポン株式会社製PETフィルム基材(厚さ24μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が180℃となるゾーンで3分間乾燥し、総厚44μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
【0055】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を140℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり50μg、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり3652μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、白化(レンズの白濁)が生じておらず、レンズ周縁部の研磨やレンズ表面の切削が不要の良品レンズであった。よって、この粘着テープは、レンズ成型に必要な特性を有していると言える。
【実施例3】
【0056】
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR130)100質量部、前記過酸化物硬化型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(ベンゾイールペルオキシド)0.20質量部をトルエン中にて均一に攪拌混合して、粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるようにアジヤアルミ株式会社製アルミニウム/ポリエステルフィルム複合基材(厚さ50μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が170℃となるゾーンで3分間乾燥し、総厚70μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
【0057】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を140℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり103μg、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり3670μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、レンズ成型において外周部に一部白化(レンズの白濁)は見られたが、レンズ周縁部の研磨を施すことにより、良品レンズを得ることができた。
【実施例4】
【0058】
付加反応型シリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社SD−4580)100質量部、前記付加反応型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製X−92−122)0.25質量部をトルエン中にて均一に攪拌混合して、粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東レ社製ポリエステルフィルム基材(厚さ38μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が150℃となるゾーンで1分間乾燥し、総厚58μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
【0059】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を140℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(付加反応型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり164μg、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4803μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、レンズ成型において外周部に一部白化(レンズの白濁)は見られたが、レンズ周縁部の研磨を施すことにより、良品レンズを得ることができた。
【0060】
(比較例1)
【0061】
過酸化物硬化型シリコーン粘着剤(信越化学工業株式会社製KR101−10)100質量部をトルエン中にて密閉容器内で均一に攪拌混合し、粘着剤を真空脱気しながら150℃まで熱処理し、低分子量シロキサンの一部を除去した後、室温まで温度を下げ、前記過酸化物硬化型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(ベンゾイールペルオキシド)0.15質量部を均一に攪拌混合して粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東洋紡績株式会社製PET基材(厚さ25μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が150℃となるゾーンで1分間乾燥し、総厚45μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
【0062】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を160℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり169μg、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり4891μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、レンズ成型において、白化がレンズ全体に見られ、レンズ周縁部の研磨を施しても使用可能なレベルのレンズを得るには至らなかった。
【0063】
(比較例2)
【0064】
付加反応型シリコーン粘着剤(東レ・ダウコーニング株式会社製SD4560)100質量部、前記付加反応型シリコーン粘着剤に有効な架橋剤(信越化学工業株式会社製のX−92−122)0.15質量部を均一に攪拌混合して、粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、粘着層厚が20μmになるように東洋紡績製PET基材(厚さ25μm)に塗工し、乾燥炉の前半部において、40〜90℃にて初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が130℃となるゾーンで3分間乾燥し、総厚45μmのプラスチックレンズ成型用粘着テープを得た。
【0065】
この粘着テープを使用し作製したプラスチックレンズは、表1に示すとおり、重合性モノマーの重合時最高温度を140℃としてレンズの成型を行っている。また、低分子量シロキサンの量は、3〜10量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤(付加反応型シリコーン粘着剤と架橋剤からなる粘着剤)1g当たり697μg、3〜20量体が、シリコーン粘着剤を主成分とする粘着剤1g当たり6253μgであった。さらに、得られたプラスチックレンズは、レンズ成型において、白化がレンズ全体に見られ、レンズ側面の研磨を施しても使用可能なレベルのレンズを得るには至らなかった。
【0066】
【表1】