(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2記載の画像表示装置用透明両面粘着シートを、画像表示装置用構成部材に貼合し、熱又は紫外線により硬化することを特徴とする、透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材の製造方法。
請求項1に記載の少なくとも一方の画像表示装置用構成部材が、高さ50μm〜100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有することを特徴とする、請求項3に記載の透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材の製造方法。
少なくとも対面する2つの画像表示装置用構成部材を備え、少なくとも一方の画像表示装置用構成部材が高さ50μm〜100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有し、対面する2つの画像表示装置用構成部材の平坦面部同士が成す間隔が200μm以下である画像表示装置において、
前記2つの画像表示装置用構成部材の間が、請求項1又は2記載の画像表示装置用透明両面粘着シートで充填されてなる構成を備えた画像表示装置。
貼合する少なくとも一方の画像表示装置用構成部材が、高さ50μm〜100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用透明両面粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明が下記実施形態に制限されるものではない。
【0016】
[本粘着シート]
本実施形態に係る画像表示装置用透明両面粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する。)は、高さ50μm〜100μmの段差部を貼合面に有する画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材とを貼合して一体化させるために用いられる粘着シートであって、粘着剤層(A)と粘着剤層(B)との重畳層を有し、透明で且つ、表裏両面を粘着面としてなる透明両面粘着シートである。
【0017】
<本粘着シートの構成>
本粘着シートは、少なくとも粘着剤層(A)と粘着剤層(B)との重畳層を有する。具体的には、粘着剤層(A)/粘着剤層(B)の2層構成のほか、粘着剤層(A)/粘着剤層(B)/粘着剤層(A)の3層構成を挙げることができる。また、本粘着シートは、粘着剤層(A)と粘着剤層(B)以外に他の層を有していてもよく、具体的には、粘着剤層(A)/粘着剤層(B)/粘着剤層(C)のような構成であっても構わない。
【0018】
好適な例示としては、粘着剤層(A)と粘着剤層(B)の2層構成のほか、粘着剤層(A)/粘着剤層(B)/粘着剤層(A)の3層構成などの構成を挙げることができる。
【0019】
<粘着剤層(A)>
粘着剤層(A)は、高さ50μm〜100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材と接し、かかる貼合面での段差追随性及び耐発泡性の役割を担う層である。
粘着剤層(A)は、かかる役割を担うために、熱又は紫外線による硬化性を有することが好ましい。熱又は紫外線による硬化性を有することで、画像表示装置構成部材との貼合後に、本粘着シートを熱又は紫外線により硬化させて使用すれば、貼合面での耐発泡性を兼ね備えた段差追随性を確保することができる。
【0020】
粘着剤層(A)が、熱又は紫外線による硬化性を有するためには、例えば、下述するように、光硬化型粘着剤組成物や熱硬化型粘着剤組成物により、粘着剤層(A)を形成すれば良い。
【0021】
このように粘着剤層(A)は、熱又は紫外線による硬化性を有し、比較的柔軟な性質をも兼ね備えている。
したがって、粘着剤層(A)は、画像表示装置構成部材が高さ50〜100μmの段差部を有していても、このような構成部材の段差に追随し、段差部によって圧迫されて受ける応力を緩和することができ、この部分に生じる歪みを小さくすることができるという、段差追随性を有する。
【0022】
<粘着剤層(B)>
粘着剤層(B)は、本粘着シートに、カット性や保管安定性を付与する役割を担う層である。かかる役割を担うために、粘着剤層(B)は、粘着剤層(A)よりも硬い性質を有することが好ましい。このような所望の性質を付与するためには、下述するように本粘着シートの物性を調整すればよい。
【0023】
<厚み>
本粘着シートは、粘着シートの最大厚み部分の厚みが200μm以下であって、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとが(A)/(B)>1.0の関係を満たすことが好ましい。
本粘着シートが、この厚み関係を満たす粘着剤層(A)及び粘着剤層(B)を備えることにより、粘着シートの厚みが200μm以下であるという制限の下で、高さ50〜100μmの段差部を有する画像表示装置構成部材と貼合しても、凹凸や屈曲した面への追随性に劣ることがなく、被着体への貼着直後又は経時的に、段差部において発泡しにくいという作用を有する。
【0024】
かかる観点から、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとが、1.0<(A)/(B)<8.0の関係を満たすことがより好ましく、1.0<(A)/(B)<4.0の関係を満たすことがさらに好ましい。
なお、粘着剤層(A)/粘着剤層(B)/粘着剤層(A)のような構成の場合、いずれか一方の粘着剤層(A)の厚みと、粘着剤層(B)の厚みとが上記関係を満たせばよい。
【0025】
(粘着剤組成物)
本粘着シートを形成するのに好適に用いることができる構成材料の一例(以下、「本粘着剤組成物」と称する。)について説明する。ただし、あくまでも一例であって、これに限定されるものではない。
【0026】
粘着剤層(A)は、熱又は紫外線による硬化性を備えるために、本粘着剤組成物として、所定範囲の分子量を有するベースポリマーと、光架橋開始剤と、必要に応じて架橋剤とを含む光硬化型粘着剤組成物や、ベースポリマーと熱架橋剤とを含む熱硬化型粘着剤組成物を用い形成することが好ましい。
【0027】
(ベースポリマー)
本粘着剤組成物のベースポリマーは、粘着性、透明性及び耐候性などの観点から、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、「アクリル酸エステル系(共)重合体」とも称する。)であるのが好ましい。
ベース樹脂としてのアクリル酸エステル系(共)重合体は、これを調整するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等を適宜選択することによって、ガラス転移温度(Tg)や分子量等の物性を適宜調整して製造することが可能である。
【0028】
アクリル酸エステル(共)重合体を構成するアクリルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等を主原料として挙げることができる。
これらの他に、凝集力付与や極性付与等の目的に応じて、さまざまな官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを上記アクリルモノマーと共重合させてもよい。
当該官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、N−置換アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含フッ素アルキルアクリレート、オルガノシロキシ基含有アクリレートなどを挙げることができる。
この他にも、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な酢酸ビニルやアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜重合に用いることができる。
【0029】
本粘着剤組成物はシート状に成形した後、1次硬化させた段階で、適当な粘着力を有し、かつ、被着体表面の凹凸や異物に追随できる柔軟性を有しているのが好ましい。
ベースポリマーの分子量が大き過ぎても、小さ過ぎても本発明の効果を発揮することができない。
ベースポリマーの分子量が小さ過ぎると、貼合前の硬化(架橋)時に、粘着力を発揮しなかったり、柔らか過ぎてハンドリング性に劣っていたりする可能性があり、逆に分子量が大き過ぎると、貼合前の硬化(架橋)段階で硬くなり、被着体表面の凹凸や異物に追随できない可能性がある。
よって、かかる観点から、ベースポリマーの質量平均分子量は10万〜70万、特に20万以上、或いは60万以下、中でも特に25万以上或いは50万以下であるアクリル酸エステル系(共)重合体を用いるのが好ましい。
【0030】
その中でも、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が5〜10、中でも6以上或いは9以下のアクリル酸エステル系(共)重合体を用いるのがさらに好ましい。質量平均分子量/数平均分子量が大きいということは、分子量分布が広いことを意味しており、この値が5〜10程度に大きければ、低分子量成分及び高分子量成分のそれぞれが流動性や粘濡れ性、凝集力といった分子量見合いの性能に寄与するため、分子量分布が狭い(均一の)ものより、加工性や粘着性能が良くなる傾向がある。
【0031】
(架橋剤)
アクリル酸エステル系(共)重合体を架橋する際に用いる架橋剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
架橋剤の量は、ベースポリマー100質量部に対して0〜30質量部、特に20質量部以下、中でも10質量部以下、その中でも特に5質量部以下とするのが好ましい。
【0033】
(架橋開始剤)
本粘着剤組成物に用いる架橋開始剤としては、分子間水素引抜型光重合性開始剤(「水素引抜型光開始剤」とも称する)を特に好ましい一例として挙げることができる。
【0034】
光重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生させて系中の重合反応の起点となる。(メタ)アクリル酸エステルやビニルエステル系中のラジカル発生機構は大きく2つに分類され、光重合開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させる分子内開裂型と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させる水素引抜型とに大別される。
【0035】
分子内開裂型は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となるため、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなるのに対し、水素引抜型は、一度励起されても、開始剤のうち反応しなかったものは基底状態に戻るため、反応開始剤として再度利用可能である。このため、分子内開裂型の光重合開始剤と比較して、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線によって組成物を1次硬化した後も、系中に活性種として残存し易い。よって、貼合後に紫外線を照射し、さらに架橋(2次硬化)させる際の反応開始剤として用いることができる。更に、水素引抜型の光重合開始剤は、分子内開裂型と比較して、低分子量の分解生成物が少なく、分解物由来のアウトガスや溶出物の発生が少ないという点でも優れている。
【0036】
水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ジベンゾスベロン等のベンゾフェノン系化合物を挙げることができる。
その他にも、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2ーイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン系化合物や、ベンジルやカンファーキノンなどのα−ジカルボニル系化合物を挙げることができる。
これらは二種類以上の組み合わせからなる混合成分として用いることもできる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。また、分子内開裂型の光重合開始剤を種々の割合で併用してもよい。
【0037】
光重合開始剤の添加量は、特に制限されるものではなく、一般的にはベース樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で調整するのが好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0038】
(熱架橋剤)
熱架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0039】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーおよびこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物や、イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。
前記で例示したイソシアネート化合物は、加工性や保管安定性を向上させる為にイソシアネート基を適当なブロック剤で保護していてもよい。
ブロック剤としては、例えばフェノール系、オキシム系、カプロラクタム系、メルカプタン系、イミド系、アミド系、イミダゾール系、アルコール系、活性メチレン系や各種アミン化合物が挙げられ、ブロック剤の解離温度や作業性に応じて公知のものを適宜選択することができる。
【0040】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンなどを挙げることができる。
【0041】
なお、これら架橋剤の含有量は、ベースポリマーの架橋性官能基導入量に対して、0.5〜2等量の範囲であることが好ましい。
【0042】
(その他)
アクリル酸エステル系(共)重合体を架橋する際には、必要に応じて各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0043】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、押し込み硬度(C2アスカー硬度)が40以上50未満であることが好ましく、43以上47未満であることがより好ましい。
押し込み硬度が、40以上であることにより、十分な粘着力と凝集力を有することになり、また50未満であることにより、硬すぎて段差追随性に劣るなどの懸念をなくすことができる。
本粘着シートにおいて、押し込み硬度は、粘着剤層(A)の厚みを粘着剤層(B)に対して厚くすること、すなわち粘着剤層(A)の比率を大きくすることで、その値を小さく調整することができる。
なお、このアスカー硬度は、本粘着シートの厚みが2mm〜3mmの範囲となるように順次積層したものについて、アスカー硬度計(AskerC2L)で測定し得る値である。
【0044】
本粘着シートは、引張弾性率が0.2MPa以上であることが好ましい。
本粘着シートが、このような性質を有することで、比較的硬く、変形し難い状態となり、優れたカット性や保管安定性を付与することができる。
かかる観点から、本粘着シートの引張弾性率は、0.18MPa以上0.26MPa以下であることが好ましく、0.20MPa以上0.24MPa以下であることがより好ましい。
【0045】
本粘着シートの引張弾性率は、例えば粘着剤層(B)を構成する粘着剤組成物、特に架橋剤及び光重合開始剤の種類、量、架橋条件によって調整することが好ましい。
【0046】
<製造方法>
本粘着シートは、ベースポリマーを適宜選択し、それぞれに適した架橋方法を用いて、粘着剤層(A)及び粘着剤層(B)として形成し作製することができる。
【0047】
例えば、ベースポリマーとしてアクリル酸エステル重合体を選択し、架橋剤及び反応開始剤或いは反応触媒等を添加して攪拌混合し、離型フィルム上に目的の厚さになるように製膜し、加熱乾燥或いは紫外線照射して架橋させることで、粘着剤層(A)形成シート又は粘着剤層(B)形成シートを得ることができる。
【0048】
このようにして、粘着剤層(A)形成シート及び粘着剤層(B)形成シートをそれぞれ作製しておき、後工程で重ね合わせて透明両面粘粘着シートを作製することもできる。
また、どちらか一方のシートを作製しておき、このシートに他方の組成物をコートして透明両面粘粘着シートを作製することもできる。
また、離型フィルム上に、順番に粘着剤層(A)形成用組成物及び粘着剤層(B)形成用組成物を多段コートして透明両面粘粘着シートを作製することもできる。
さらにまた、粘着剤層(A)形成用組成物及び粘着剤層(B)形成用組成物を共押出することにより透明両面粘粘着シートを作製することもできる。
【0049】
本粘着シートは、表裏に離型フィルムを積層した形態として提供することもできる。
この際、離型フィルムは、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムに、シリコーン樹脂を塗布して離型処理したものや、離型紙などを適宜選択して用いることができ、特に剥離力の異なる離型フィルムや厚さの異なる離型フィルムを粘着シートの表裏に用いるのが好ましい。
【0050】
<透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材>
本粘着シートはまた、画像表示装置用構成部材の裏面に予め積層することで、透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材として提供することができる。
透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材(以下、単に本粘着シート付画像表示装置用構成部材と称する。)は、上記の本粘着シートを画像表示装置用構成部材に貼合し、熱又は紫外線により硬化して得られる透明両面粘着シート付き構成部材である。
本粘着シートが、画像表示装置用構成部材への貼合後に、熱又は紫外線により硬化されることで、優れた耐発泡性を実現することができる。
【0051】
以上から、本粘着シート付画像表示装置用構成部材において、本粘着シートと貼合される画像表示装置用構成部材としては、高さ50μm〜100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有するものが好ましい。
【0052】
<画像表示装置>
本粘着シートは、段差部を備えた画像表示装置用構成部材を有する画像表示装置に好適に使用することができる。
例えば、少なくとも対面する2つの画像表示装置用構成部材を備え、少なくとも一方の画像表示装置用構成部材は貼合面に高さ50〜100μmの段差部と平坦面部とを有し、対面する2つの画像表示装置用構成部材の平坦面部同士が成す間隔が200μm以下である画像表示装置において、当該2つの画像表示装置用構成部材の間に、本粘着シートを充填することによって画像表示装置を構成することができる。
【0053】
この際、貼合面に高さ50〜100μmの段差部と平坦面部とを有する画像表示装置用構成部材としては、例えば周縁部に枠状隠蔽印刷部が形成された構成を有する保護パネルなどの画像表示装置用構成部材を挙げることができる。
またそのほかにも、タッチパネル機能が一体化したタッチオンレンズ型の表面保護パネルを使用することもできる。
他方、これと貼合する画像表示装置用構成部材としては、例えば、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができる。
【0054】
前記画像表示パネルとしては、液晶層がガラス基板によって挟持された構成を有する液晶パネルのほか、表面反射による画質の低下を防ぐために、液晶パネルの視認側に偏光フィルムが積層された構成を有するものなどを挙げることができる。
また、前記画像表示パネル内に、タッチパネルを組み込んだオンセル型のほか、液晶の画素の中にタッチセンサ機能を組み込んだインセル型の画像表示パネルを用いることもできる。
【0055】
以上から、画像表示装置としては、少なくとも対面する、貼合面に高さ50〜100μmの段差部と平坦面部とを有する画像表示装置用構成部材と、タッチパネル又は表面保護パネルのいずれかの画像表示装置部材との間が、本粘着シートで充填されてなる構成を有するものを好ましい例として挙げることができる。
【0056】
(貼合方法)
2つの画像表示装置用構成部材を貼合する方法としては、一方の画像表示装置構成部材に本粘着シートをロール貼合した後、他方の画像表示装置構成部材を大気圧下でロール貼合したり、大気圧乃至減圧下において、対向したステージに各画像表示構成部材を固定し、部材同士を一体化したりする方法が挙げられる。
この際、本粘着シート及び画像表示装置構成部材を加熱しながら行うと更に好適である。加熱によって粘着シートが柔軟化するため、被着体に印刷段差等の凹凸がある場合や異物をかみこんだ場合における粘着シートの被着面への追随性が増し、貼合不良や凹凸への濡れ不足による残留気泡を抑制するという効果が得られる。かかる観点から、40℃から100℃、さらに好ましくは60℃から80℃に加熱することが好ましい。
【0057】
本粘着シートは、熱又は紫外線による硬化性を有する粘着剤層(A)を有している。このため、画像表示装置に適用させた場合、すなわち、画像表示装置構成部材に貼合させた後に、熱又は紫外線により硬化して使用することが好ましい。
特に、高さ50〜100μmの段差部を有する画像表示装置用構成部材の貼合に適用させる場合、1次硬化の段階では、段差部に十分追随させることができ、しかも柔軟すぎることのない程度に架橋することで、段差部に追随して気泡などを発生させることなく隅々まで十分に浸透し、かつ段差部による応力を緩和することができ、さらには、段差部に接する部分が、高温高湿環境下に晒されたり、急激な温度変化に晒されたりしても、貼合界面での発泡や剥離の問題が生じないようにすることができる。
そしてさらに、貼合後に2次硬化することで、平坦面部の凝集力、すなわち貼着力を高めて、粘着シート全体として2つの画像表示装置用構成部材をしっかりと貼り合わせることができ、優れた耐発泡性を発現することができる。
【0058】
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0059】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<構成部材の作製>
先ず、後述する透明両面粘着シート1〜4を作製するための構成部材を次のようにして作製した。
【0062】
(粘着剤層(A):感圧粘着剤用組成物)
2−エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーTg(2−エチルヘキシルアクリレートのみを重合してなるポリマーのガラス転移点):−70℃、)75質量部と、酢酸ビニル(ホモポリマーTg+32℃)20質量部と、アクリル酸(ホモポリマーTg+106℃)5質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体A(Mw=440000、Mn=62000、Mw/Mn=8、理論Tg−50℃)を用意した。
このアクリル酸エステル共重合体A1kgに、分子間水素引抜型光重合開始剤としての4−メチルベンゾフェノン20gを添加混合して、粘着剤層(A)を構成する感圧粘着剤用組成物(A−1)を調製した。
【0063】
(粘着剤層(B):中間樹脂層用組成物)
前記アクリル酸エステル共重合体A1kgに、架橋剤としての紫外線硬化樹脂トリメチロールプロパントリアクリレートを200gと、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンを15gとを混合して、粘着剤層(B)を構成する中間樹脂層用組成物(B−1)を調製した。
【0064】
[実施例1]
<透明両面粘着シート1の作製>
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂性「MRA75」、厚み75μm)上に、中間樹脂層用組成物(B−1)及び感圧粘着剤用組成物(A−1)を、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)となるように共押出しして、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)=60/30/60μm(樹脂層(A)となるように塗工形成し、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製「MRA50」、厚み50μm)を被覆して、PETフィルム/(A−1)/(B−1)/(A−1)/PETフィルムからなる、多層シートを形成した(厚み関係:(A)/(B)=2.0)
次に、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、高圧水銀ランプにて積算光量1000mJ/cm
2の紫外線を照射し、(A−1)及び(B−1)を紫外線架橋させて、2次硬化前透明両面粘着シート1(総厚み150μm)を作製した。
【0065】
[比較例1]
<透明両面粘着シート2の作製>
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂性「MRA75」、厚み75μm)上に、中間樹脂層用組成物(B−1)及び感圧粘着剤用組成物(A−1)を、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)となるように共押出しして、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)=50/50/50μmとなるように塗工形成し、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製「MRA50」、厚み50μm)を被覆して、PETフィルム/(A−1)/(B−1)/(A−1)/PETフィルムからなる多層シートを形成し
た(厚み関係:(A)/(B)=1.0)。
次に、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、高圧水銀ランプにて積算光量1000mJ/cm
2の紫外線を照射し、(A−1)及び(B−1)を紫外線架橋させて、2次硬化前透明両面粘着シート2(総厚み150μm)を作製した。
【0066】
[比較例2]
<透明両面粘着シート3の作製>
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂性「MRA75」、厚み75μm)上に、中間樹脂層用組成物(B−1)及び感圧粘着剤用組成物(A−1)を、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)となるように共押出しして、感圧粘着剤層(A−1)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−1)=35/70/35μmとなるように塗工形成し、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製「MRA50」、厚み50μm)を被覆して、PETフィルム/(A−1)/(B−1)/(A−1)/PETフィルムからなる多層シートを形成し
た(厚み関係:(A)/(B)=0.5)。
次に、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、高圧水銀ランプにて積算光量1000mJ/cm
2の紫外線を照射し、(A−1)及び(B−1)を紫外線架橋させて、2次硬化前透明両面粘着シート3(総厚み140μm)を作製した。
【0067】
[比較例3]
(粘着剤層(A):感圧接着剤層)
アクリル酸ブチル(Tg−56℃)73質量部と、メタクリル酸メチル(Tg105℃)25質量部と、アクリル酸(Tg106℃)2質量部とを共重合してなるアクリル酸エステル共重合体B1kg(Mw=110万)に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(旭化成デュラネート24A−100)を0.15g加えて感圧接着剤用組成物(A−2)を調製し、これを、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「MRF75」厚み75μm)上に、厚みが35μmとなるようにシート状に塗工して成形し、表面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製「E7006」厚み38μm)を被覆し感圧接着剤層(A−2)を作製した。厚さ35μmの感圧接着剤層(A−2)を作製した。なお、かかる感圧接着剤層(A−2)は、熱又は紫外線による硬化性を保持していない。
【0068】
(粘着剤層(B):中間樹脂層形成用積層シート)
片側面を剥離可能に処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック社製PETフィルム「NP75Z01」、厚み75μm)の当該片側面に、前記中間樹脂層用組成物(B−1)を加熱溶融して厚み80μmとなるようにアプリケータにて塗工した後、片側面を剥離可能に処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製PETフィルム「E7006」、厚み38μm)の当該片側面を当接させるように被覆し、PETフィルム/中間樹脂層(B−1、厚さ80μm)/PETフィルムからなる、粘着剤層(B)を構成する中間樹脂層形成用積層シートを作製した。
【0069】
<透明両面粘着シート4の作製>
前記中間樹脂層(B−1)の表裏両側の剥離フィルム剥がして露出した面に、感圧接着剤層(A−2)の工程用剥離フィルムを剥がして露出した粘着面をラミネータで積層し、感圧粘着剤層(A−2)/中間樹脂層(B−1)/感圧粘着剤層(A−2)=35/80/35μmの透明両面粘着シート4を作製した(厚み関係:(A)/(B)=0.4)。
【0070】
<評価方法>
上記の如く得られた透明両面粘着シート1〜4について、次のような評価を行った。
【0071】
(裁断加工性・保管安定性評価)
上記透明両面粘着シート1〜4を、剥離フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて55mm×85mmのトムソン刃で100枚カットした。裁断直後と、裁断品100枚を積層して25℃、50%湿度環境下にて1週間保管した後の端部の形状を観察した。
貼合直後もしくは保管後に、糊のはみ出しや端部の潰れが10枚以上みられたものを「×」と評価し、糊のはみ出しや端部の潰れが10枚以上無かったものを「○」と判定した。
【0072】
(印刷段差追随性試験)
60mm×90mm×厚さ0.5mmのソーダライムガラスの周縁部に、幅10mm、厚み80μmの白色の印刷(全光線透過率0%)を施し、周縁部に80μmの印刷段差をもつ評価用ガラス基板を作製した。
この評価用ガラス基板に貼合する試験用被着体として、偏光板(日東電工製NWF−KDSEGHC−ST22)を予めガラス板上(60×90mm×t0.5mm)の片面に全面貼合したものを作製した。
前記加工性評価にて裁断した透明両面粘着シート1〜4の一方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面を上記ガラス基板の印刷段差部を覆うようにハンドローラにて貼着した。次いで、残る剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面に未処理のソーダライムガラスを減圧下(絶対圧5kPa)にてプレス貼合した後、オートクレーブ処理(60℃0.3MPa20分)を施して仕上貼着し、印刷段差追随性評価用積層体を作製した。
前記印刷段差追随性評価用積層体を、常態(温度23℃湿度50%)で一日静置した後、外観を目視観察し、印刷段差付近に粘着シートの浮きもしくは剥離が発生したものを「×」と評価し、浮きもしくは剥離が無かったものを「○」と評価した。
【0073】
(耐発泡性試験)
上記印刷段差追随性試験と同様に作製した印刷段差追随性評価用積層体を、印刷を施したガラス基板を介して、365nmの紫外線が積算光量にて2000mJ/cm
2に到達するように、透明両面粘着シート1〜3に紫外線照射し、印刷部に囲まれた内側の開口部の粘着シートを紫外線架橋し(2次硬化)、耐発泡性試験のサンプルを作製した。
一方、熱又は紫外線による硬化性を保持していない透明両面粘着シート4に対しては、前述の印刷段差追随性試験にて作製した積層体をそのまま耐発泡性試験のサンプルとして使用した。
各サンプルを、常態(温度23℃湿度50%)で一日静置した後、温度85℃の恒温機にて6時間養生し、養生後の外観を目視観察した。
養生後に新たな浮きや発泡が生じたものを「×」と評価し、新たな浮きや発泡が生じなかったものを「○」と評価した。
【0074】
(押し込み硬度)
粘着シートの押込硬度は、透明両面粘着シート1〜3について、それぞれを複数枚重ねて厚みを2mm±0.3mmとし、アスカー硬度計を用いて2.5mm深さの測定端子を、押込加重1000g押込速度3mm/分にて垂直に押し込むようにして測定した。
【0075】
(引張弾性率)
透明両面粘着シートの引張弾性率は、透明両面粘着シート1〜4について、それぞれを幅20mm×長さ80mmで切り出し、引張試験機を用いて切り出した粘着シートの長さ方向を試験速度300mm/minで引張り、測定した。
【0076】
それぞれの評価結果を表1に示した。
【表1】
【0077】
<考察>
上記透明両面粘着シート1は、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとの関係が、(A)/(B)=2.0であり、厚み80μmの印刷を追随すると共に優れた耐発泡性を有するものであった。また、加工・保管安定性についても優れるものであった。
【0078】
上記透明両面粘着シート2、3は、表裏の粘着剤層(A)が薄く、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとの関係は、それぞれ(A)/(B)=1.0、(A)/(B)=0.5であり、厚み80μmの印刷を追随することはできなかった。なお、加工保安安定性、耐発泡性は優れるものであった。
【0079】
上記透明両面粘着シート4は、表裏の粘着剤層(A)は薄く、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとの関係は、(A)/(B)=0.44であり、さらに、粘着剤層(A)は熱又は紫外線による硬化性を保持しておらず、硬い性質を有するため、厚み80μmの印刷を追随することはできず、また耐発泡性にも劣るものであった。