特許第6030397号(P6030397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6030397-カプロラクタム及びその製造法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030397
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】カプロラクタム及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   C07D 201/08 20060101AFI20161114BHJP
   C07D 223/10 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C07D201/08
   C07D223/10
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-217623(P2012-217623)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70048(P2014-70048A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】望月 学
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−502728(JP,A)
【文献】 特表2006−508955(JP,A)
【文献】 特表2011−529087(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/142490(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/099029(WO,A1)
【文献】 特開2002−121183(JP,A)
【文献】 米国特許第02877220(US,A)
【文献】 特表2010−519297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 201/00−201/18
C07D 217/00−227/12
C07C 1/00−409/44
C08G 69/00− 69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、6−アミノ−2−クロロカプロン酸及び6−アミノカプロン酸を経由することを特徴とするε−カプロラクタムの製造方法。
【請求項2】
リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、酸性条件下、ジアゾ化剤及び塩素源と反応させることを特徴とする請求項1記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
【請求項3】
前記リジン及び/またはリジンの塩が、バイオマス由来であることを特徴とする請求項1又は2記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
【請求項4】
前記ジアゾ化剤が、亜硝酸アルカリ金属塩、炭素数2〜6の亜硝酸アルキルエステル、塩化ニトロシル、ニトロシル硫酸、一酸化窒素およびこれらの混合物からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
【請求項5】
前記塩素源が、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩素、塩酸、塩化チオニル、塩化アルキル、N−クロロスクシイミドである請求項2〜4いずれか1項に記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
【請求項6】
前記6−アミノ−2−クロロカプロン酸を脱ハロゲン化することを特徴とする請求項1記載の6−アミノカプロン酸の製造方法。
【請求項7】
前記脱ハロゲン化方法が接触水素化であることを特徴とする請求項6記載の6−アミノカプロン酸の製造方法。
【請求項8】
前記6−アミノカプロン酸を溶媒中で加熱して脱水環化縮合することを特徴とする請求項1記載のε−カプロラクタムの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項8記載のε−カプロラクタムの製造方法。
【請求項10】
前記アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項9記載のε−カプロラクタムの製造方法。
【請求項11】
前記加熱温度が150〜230℃であることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項に記載のε−カプロラクタムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカプロラクタム及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくはバイオマスを原料とするカプロラクタム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6は、原料モノマーであるε−カプロラクタムの開環重合により製造されており、世界中では年間約240億トンが製造されている。該原料モノマーであるε−カプロラクタムは、石油の精製によって製造されているベンゼンを出発原料とするものである。該ベンゼンをシクロヘキサン又はフェノールに変換した後、シクロヘキサノンを経てシクロヘキサノンオキシムへと変換される。該シクロヘキサノンオキシム中間体は、硫酸中で加熱されベックマン転移として知られている転移反応によってε−カプロラクタムに変換される。さらに、該ε-カプロラクタムを原料とし、開環重合によりポリアミド6を得ることが出来る(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、アミノ基を有する化合物のアミノ基の脱離反応としては、以下(1)〜(5)の反応が知られている。
【0004】
式(1):
【化1】
式(2):
【化2】
式(3):
【化3】
式(4):
【化4】
式(5):
【化5】
【0005】
非特許文献1には、一つのアミノ基を有する脂肪族化合物または一つのアミノ基を有する芳香族化合物を原料とし、ヒドロキシルアミン−O−スルホン酸(HOSA)存在下、アミノ基を脱離させる反応が開示されている(式(1)参照)。特許文献3には、一置換芳香族アミノ化合物をリン酸トリアルキル中で加熱し、分子内脱アミノ反応によりアミノ基を脱離させ、二重結合を生じさせる反応が開示されている。得られた二重結合を含む該化合物は、公知の水素化方法などで還元することにより原料化合物からアミノ基を離脱させた化合物を得ることができる(式(2)参照)。また、一つのアミノ基を有する脂肪族化合物は、過剰のヨウ化メチルにより四級アミンを生成させ酸化銀と加熱することで、いわゆるホフマン分解脱離反応を起こし二重結合を生じさせる反応が知られている。該二重結合を有する化合物は、前述の式(2)と同様に還元することにより原料化合物からアミノ基を脱離させた化合物を得ることができる(式(3)参照)。非特許文献2には、アルキル−2−N,N―ジスルホイミドを原料とし、塩基処理(t−BuOH−DMSO、MeONa−MeOH)にてアミノ基を脱離させ二重結合を生じさせる反応が開示されている。該二重結合を含む化合物は、式(2)(3)と同様に公知の水素化方法などで還元することにより原料化合物からアミノ基を離脱させた化合物を得ることができる(式(4)参照)。
しかしながら、上記(1)〜(4)のいずれの反応においても、リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、リジンの2位のアミノ基を選択的に脱離する方法については開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,142,007号明細書
【特許文献2】米国特許第2,241,321号明細書
【特許文献3】特公昭60−24780号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,100,341(1978)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,97,6873(1975)
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,61,2418(1939)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、石油由来のε−カプロラクタムは、3−メチル−ε−カプロラクタム、7−メチル−ε−カプロラクタムなどの不純物を多く含んでいることからこれら不純物とナイロン6の重合反応との関係を詳細に検討したところ、該不純物の存在によりナイロン6の重合反応に影響があり、さらに重合されたナイロン6は、該不純物の存在により、ポリマーの結晶性や結晶化速度が低下し、該ナイロン6を射出成型などの成型加工するに際しては成型加工性に劣るなど種々の問題があることがわかった。加えて、ナイロン6から該不純物を除去する精製工程に多くの費用がかかるなどの問題もあった。
【0009】
本発明者らは、石油由来の原料を用いるのではなく、バイオマス由来の原料を用い特定の反応を経由することにより、得られるε−カプロラクタム中の不純物の量を著しく低減させ得ることを初めて見出した。
【0010】
前述の式(1)〜(4)の1置換アミノ化合物のアミノ基脱離反応の条件を、2置換アミノ化合物であるリジンに適用すると、いずれも反応特異性が低くリジンの2位のアミノ基に加え6位のアミノ基も脱離してしまうために目的化合物を高い収率で得ることができないことが分かった。また、式(1)〜(4)に用いられている脱離反応に必要な薬剤は高価であり、経済的にも産業上も好ましくないものであった。
【0011】
また、非特許文献3に開示されている前述の式(5)の脂肪族アミノ化合物を原料としたジアゾ化反応の反応条件を、本発明のリジン及び/またはリジンの塩に適用した場合、ジアゾ化の反応特異性が高くリジンの2位のアミノ基において優先的に脱離反応が進行するものの、該脱離した2位に水酸基が導入されてしまうという問題が生じることが分かった。これは、該アミノ基にベンゼン環が隣接していないためにジアゾニウム塩の脱離により発生するカルボカチオンが共鳴安定化しなくなり、副反応により生じる水酸基が該部位を攻撃するためと推測される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、2位(α位)のアミノ基を選択的に脱離しクロロ化した6−アミノ−2−クロロカプロン酸及び6−アミノカプロン酸を経由してε−カプロラクタムを合成することにより上記の不純物の発生を抑えられることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明(1)〜(14)の要旨は以下の通りである。
(1)3−メチル−ε−カプロラクタムの含有率が0.004質量%以下であることを特徴とするε−カプロラクタム。
(2)7−メチル−ε−カプロラクタムの含有率が0.025質量%以下であることを特徴とする(1)記載のε−カプロラクタム。
(3)(1)又は(2)記載のε−カプロラクタムを用いて重合されたことを特徴とするポリアミド6。
(4)リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、6−アミノ−2−クロロカプロン酸及び6−アミノカプロン酸を経由することを特徴とする(1)又は(2)記載のε−カプロラクタムの製造方法。
(5)リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、酸性条件下、ジアゾ化剤及び塩素源と反応させることを特徴とする(4)記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
(6)前記リジン及び/又はリジンの塩が、バイオマス由来であることを特徴とする(4)又は(5)記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
(7)前記ジアゾ化剤が、亜硝酸アルカリ金属塩、炭素数2〜6の亜硝酸アルキルエステル、塩化ニトロシル、ニトロシル硫酸、一酸化窒素およびこれらの混合物からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする(5)又は(6)記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
(8)前記塩素源が、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩素、塩酸、塩化チオニル、塩化アルキル、N−クロロスクシイミドである(5)〜(7)いずれかに記載の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法。
(9)前記6−アミノ−2−クロロカプロン酸を脱ハロゲン化することを特徴とする(4)記載の6−アミノカプロン酸の製造方法。
(10)前記脱ハロゲン化方法が接触水素化であることを特徴とする(9)記載の6−アミノカプロン酸の製造方法。
(11)前記6−アミノカプロン酸を溶媒中で加熱して脱水環化縮合することを特徴とする(4)記載のε−カプロラクタムの製造方法。
(12)前記溶媒がアルコールであることを特徴とする(11)記載のε−カプロラクタムの製造方法。
(13)前記アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする(12)記載のε−カプロラクタムの製造方法。
(14)前記加熱温度が150〜230℃であることを特徴とする(11)〜(13)いずれかに記載のε−カプロラクタムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ε−カプロラクタム中の不純物の量を、石油由来のものに比べ低減することができるため、該ε−カプロラクタムを原料としたポリアミド6の重合反応をよりスムーズに進行させることができ、さらに得られるポリアミド6は、結晶化度が高くなり、加えて結晶化速度が速くなることから、射出成型などの成型加工での成型性が向上するという顕著な効果を奏することができる。また、ε−カプロラクタムの原料となる前述の6−アミノ−2−クロロカプロン酸などの製造方法において、不純物の含有量が非常に少ない中間体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ε−カプロラクタムの化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0016】
本発明のε−カプロラクタムは、図1に示すように、アゼパン―2―オン(azepan−2−one)を言い、ポリアミド6の原料となるものである。
【0017】
本発明のε−カプロラクタムは、3−メチル−ε−カプロラクタムの含有率が0.004質量%以下である必要があり、より良好な重合速度の観点から、0.003質量%以下が好ましく、0.001質量%がより好ましく、0.0005質量%以下がいっそう好ましい。
【0018】
前記3−メチル−ε−カプロラクタムの含有率を0.004質量%以下とすることにより、該ε−カプロラクタムを原料としてポリアミド6を重合するに際しては、該重合反応がスムーズに進み、石油由来のε−カプロラクタムを原料とした場合に比べ重合速度が増大するという顕著な効果を奏するものである。
【0019】
本発明のε−カプロラクタムは、7−メチル−ε−カプロラクタムの含有率が0.025質量%以下である必要があり、良好な重合速度の観点から、0.020質量%以下が好ましく、0.010質量%がより好ましく、0.005質量%以下がいっそう好ましい。
【0020】
前記7−メチル−ε−カプロラクタムの含有率を0.025質量%以下とすることにより、該ε−カプロラクタムを原料としてポリアミド6を重合するに際しては、該重合反応がスムーズに進み、石油由来のε−カプロラクタムを原料とした場合に比べ重合速度が増大するという顕著な効果を奏するものである。
【0021】
さらに、上記3−メチル−ε−カプロラクタム、7−メチル−ε−カプロラクタムの含有率を特定量以下としたε−カプロラクタムを原料として重合したポリアミド6は、結晶性が良好となるとともに、該ポリアミド6を用いて射出成型などの成型加工する際には、結晶化速度が低下しないためサイクル時間が短くなるなど、コスト的にも非常に有利なものとなる。該ポリアミド6は、ε−カプロラクタムを開環重合する公知の重合方法により得ることができる。
【0022】
上記ε−カプロラクタムの製造方法について以下に説明する。
【0023】
本発明のε−カプロラクタムの製造方法においては、リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、6−アミノ−2−クロロカプロン酸及び6−アミノカプロン酸を経由することが必要である。
【0024】
以下、各ステップについて具体的に説明する。
【0025】
<6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法>
本発明の6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造方法(以下、クロロ化反応と略する場合がある)は、リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、酸性条件下、ジアゾ化剤及び塩素源と反応させることが必要である。
【0026】
本発明におけるリジンは、L−リジン、D−リジン、それらの塩、それらの混合物を好適に用いることができる。該リジンの塩としては特定の形態に限定されないが、例えば、二塩酸L−リジン、塩酸L−リジン、リン酸L−リジン、二リン酸L−リジン、酢酸L−リジン、L−リジンなど。これら、リジン及び/またはリジンの塩などが挙げられる。これらのリジン及び/又はリジンの塩は、例えば、味の素、大成生化科技集団(有)(香港、GBTグループと称される場合がある)、CJ第一製糖(CJグループと称される場合がある)、Archer Daniels Midland(米国、ADM社と称される場合がある)などで製造されており、L−リジン塩酸塩粉末として容易に入手することができる。また、好ましくはバイオマス由来のリジン及び/又はリジンの塩を用いると、不純物の精製の負荷が少なく得ることができる。
【0027】
本発明におけるジアゾ化剤としては、例えば亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸アルカリ金属塩、亜硝酸t−ブチル、亜硝酸イソアミルなどの炭素数2〜6の亜硝酸アルキルエステル、塩化ニトロシル、ニトロシル硫酸、一酸化窒素などが挙げられる。これらの中でも亜硝酸ナトリウムは、安価で容易に入手できる観点から好ましい。亜硝酸アルカリ金属塩は常温で固体であるので、あらかじめ水に溶解した後に使用しても良い。
【0028】
前記ジアゾ化剤の量は、リジン及び/又はリジンの塩に対して1〜4モル倍が好ましく、1〜2モル倍がより好ましく、1.0〜1.2モル倍がさらに好ましい。
【0029】
本発明における塩素源としては、例えば、金属塩化物、塩素化剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して使用してもよい。金属塩化物としては、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ニッケルなどが挙げられる。塩素化剤としては、塩素、塩酸、塩化チオニル、塩化アルキル、N−クロロスクシイミドなどが挙げられる。これらの中でも、塩酸は低価格であり、収率を高める観点から好ましい。
【0030】
該塩素源においては、該6−アミノ−2−クロロカプロン酸の反応とともに、6−アミノ−2−ヒドロキシカプロン酸を生じる副反応を抑えるために、溶媒に対する塩化物イオンの濃度を高めることが好ましい。具体的には、リジンに対する塩素源の量としては、0.5モル等量〜12モル等量が好ましく、1〜10モル等量がより好ましく、2〜8モル等量がいっそう好ましい。
【0031】
溶媒は水の他に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒が挙げられる。溶媒の種類は特に限定されないが、後処理の容易性などの観点から、水であることが好ましい。
【0032】
本発明のクロロ化反応においては、バッチ式とフロー式のいずれの反応形態も使用することができるが、耐圧性を持つ反応形態が好ましい。バッチ式の場合は、例えばリジン及び/またはリジンの塩の溶液を攪拌しながらジアゾ化剤を滴下して混合する。フロー式の場合は、リジン及び/またはリジンの塩の溶液とジアゾ化剤をT字ミキサーなどを使って混合する。該フロー式の場合は、一度に全量混合しても良いが、濃度などの条件によっては数度に分けて混合してもよい。
【0033】
上記クロロ化反応は、雰囲気下でも行うことができるが、副反応を抑えるため窒素雰囲気下など酸素濃度が低い条件で行うことが望ましい。
【0034】
上記クロロ化反応は、低温下でリジン及び/またはリジンの塩をジアゾ化剤及び塩素源と混合し一定時間低温で静置した後、温度を上げて静置することで反応を完結させることが好ましい。この場合、低温下で静置する際の温度は、バッチ式の容器を用いる場合は、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、0℃以下がいっそう好ましい。フロー式の場合は、50℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、5℃以下がいっそう好ましい。該静置後の温度を上げて静置する際の温度は、100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、30℃以下がいっそう好ましい。なお、フロー式の装置をもちいる場合は静置せずに一定速度で流し続けることができる。
【0035】
反応中の圧力は、バッチ式の場合は0.l〜10MPaが好ましく、0.1〜1MPaがより好ましく、0.1〜0.5MPaがさらに好ましい。フロー式の場合は0.1〜20MPaが好ましく、0.1〜10MPaがより好ましく、0.1〜5MPaがさらに好ましい。
【0036】
クロロ化反応の低温で静置する時間は、亜硝酸ナトリウム滴下完了後、1〜5時間が好ましく、2〜4時間がより好ましく、2.5〜3.5時間がさらに好ましい。該静置後の温度を上げて静置する時間は、30分以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、4時間以上がさらに好ましく、12時間以上がいっそう好ましい。
【0037】
<6−アミノカプロン酸の製造方法>
本発明の6−アミノカプロン酸の製造方法(以下、脱ハロゲン化反応と略する場合がある)は、前記6−アミノ−2−クロロカプロン酸を用い脱ハロゲン化することにより6−アミノカプロン酸を製造することが必要である。
【0038】
脱ハロゲン化反応は、還元剤を用いた還元反応や接触水素化による脱ハロゲン化反応、電極との直接反応などの公知の脱ハロゲン化反応を適用することができる。還元剤としては、還元能を有する有機化合物もしくは無機化合物であれば特に限定されないが、例えば水素化ホウ素アルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどが使用できる。
【0039】
接触水素化による脱ハロゲン化反応は、公知の水素化反応を適用することができる。すなわち、金属触媒存在下で水素と反応させることによってハロゲン還元し、脱離させることができる。金属触媒は水素化や水素化分解に用いられる触媒であれば種類は限定されないが、例えばNi、Pt、Pd、Rd、Rh、Re、Ir、Co、Cuなどの触媒を用いることができる。これらの触媒はそのまま用いても担体に保持したものを使用しても良い。担体の種類は特に限定しないが、炭素、SiO、TiO、ZrO、NiO、Al、CaCO、BaCO、BaSO、シリカーチタニア、チタニアーアルミナ、アルミノ珪酸塩などを用いることができる。これらの触媒は単独でも二つ以上を同時に用いても、後から追加しても良い。水素化に使う容器はバッチ式の圧力容器が一般的であるが、フロー式のリアクターなど、別の形態でも構わない。
【0040】
脱ハロゲン化反応の溶液のpHは5.0〜12.0が好ましく、6.0〜11.0がより好ましく、7.0〜10.0がいっそう好ましい。pHは後処理で除去しやすい無機塩で調整することが好ましく、該無機塩の種類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0041】
脱ハロゲン化反応の温度は通常0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、20〜70℃がいっそう好ましい。
【0042】
脱ハロゲン化反応の圧力は、0.1〜10MPaが好ましく、0.1〜5MPaがより好ましく、0.1〜1MPaがいっそう好ましい。
【0043】
得られた6−アミノカプロン酸は、精製した後にポリアミド6の重合に供することも可能である。ただ、ε−カプロラクタムの方が6−アミノカプロン酸よりも精製が容易であり、既存の重合設備を活用できるため、6−アミノカプロン酸からε−カプロラクタムを製造した後にナイロン6を重合する方が望ましい。
【0044】
<ε−カプロラクタムの製造方法>
本発明のε−カプロラクタムの製造方法は、6−アミノカプロン酸を溶媒中で加熱して脱水環化縮合することが必要である。該反応には溶媒を用いることが必要であり、極性溶媒が好ましく、アルコール溶媒がより好ましい。中でもエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールに例示されるアルコール溶媒が特に好ましい。
【0045】
本発明のε−カプロラクタムの製造方法においては、反応温度は水と溶媒を共沸除去が出来る温度が必要である。該反応温度としては100〜250℃が好ましく、120〜240℃がより好ましく、150〜230℃がさらに好ましい。反応時間としては、15分〜4時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましく、1〜2時間がさらに好ましい。なお、超臨界水・亜臨界水など高圧条件下で反応させて製造することも可能であるため、圧力については特に限定しない。ただし、この場合の最適な温度や反応時間は溶媒によって異なる。
【0046】
反応容器はバッチ式とフロー式のいずれも用いることができるが、逆反応の進行による収率低下を防ぐため、反応によって発生した水を除去する装置を備えていることが好ましい。該反応は、成分の酸化を防ぐために窒素雰囲気下など酸素濃度が低い条件で行うことが好ましい。
【0047】
<後処理>
得られたε-カプロラクタムは精製することが好ましい。精製方法としては、再結晶、晶析、蒸留、昇華、カラム分離などが挙げられ、再結晶、晶析、蒸留が好ましく用いられる。
本発明においては、合成後、冷却する前に減圧蒸留した方が製造コストを抑えられるので好ましい。なお、通常の経済的な方法では、石油由来のε-カプロラクタムから7−メチル−ε−カプロラクタム、3−メチル−ε−カプロラクタムを除くことは困難である。
【0048】
<ε-カプロラクタム>
上記の方法で得られたε-カプロラクタムの純度は95〜100wt%が好ましく、98〜100wt%がより好ましく、99.9〜99.999wt%がさらに好ましい。純度が低すぎると、重合時に反応速度が低下したり、分子量が上がらなくなったり、ゲル化したり、加工性が悪くなるなどするために好ましくない。純度が高すぎると、精製に費用がかかり、製造コストが高くなるために望ましくない。
【0049】
以下に、本発明を実施例にてさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例、比較例に限定されるものではない。本実施例、比較例における測定方法は以下の通りである。
【0050】
1.3−メチル−ε−カプロラクタム
ε−カプロラクタム中の3−メチル−ε−カプロラクタムの含有量は、以下のHPLC条件にて分取したサンプルをH−NMRにて分析した。なお、該HPLC分析条件での3−メチル−ε−カプロラクタムの保持時間は12.12minであった。またH−NMR分析は常法により行った。
【0051】
<HPLC分析条件>
カラム:ODS(C18)
移動層:メタノール:水=30(vol%):70(vol%)
流速 :0.7ml/min
検出 :UV(210nm)
試料量:280μg(70wt%×0.4μL)
なお、検出限界は、10ppmであった。
【0052】
2.7−メチル−ε−カプロラクタム
上記3−メチル−ε−カプロラクタムと同様の分析条件にて含有量を特定した。なお、7−メチル−ε−カプロラクタムの該保持時間は10.16minであった。
【0053】
<6−アミノ−2−クロロカプロン酸の製造>
実施例1
内容量300mLの三ツ口フラスコにリジン塩酸塩(協和発酵フーズ社製、商品名:L−リジン協和(バイオマス由来))9.1gと5M 塩酸水溶液65mLを仕込み、0℃まで冷却した。これにあらかじめ0℃まで冷却しておいた22wt%亜硝酸水溶液20mLを1分間に1mLずつ滴下し、反応させた。滴下終了後、0℃で3時間静置し、常温で一晩放置して反応を進行させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加え反応液のpHを1.6に調製した後、ジエチルエーテル20mLにより液液分離を行った。得られた水層を減圧乾燥して得られたサンプルをH−NMRとLC/MSで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸が85mol%含まれていることを確認した。なお、7−メチル−ε−カプロラクタム及び3−メチル−ε−カプロラクタム由来のピークは見られなかった。
【0054】
実施例2
塩酸水溶液の濃度を5Mから10Mへ変更した以外は実施例1と同様の方法により6−アミノ−2−クロロカプロン酸を得た。H−NMRとLC/MSで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸が94mol%含まれていることを確認した。なお、7−メチル−ε−カプロラクタム及び3−メチル−ε−カプロラクタム由来のピークは見られなかった。
【0055】
実施例3
リジン塩酸塩の量を9.1gから27.3gへ変更した以外は実施例1と同様の方法により6−アミノ−2−クロロカプロン酸を得た。H−NMRとLC/MSで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸が72mol%含まれていることを確認した。なお、7−メチル−ε−カプロラクタム及び3−メチル−ε−カプロラクタム由来のピークは見られなかった。
【0056】
上記のように、リジン及び/またはリジンの塩を原料とし、酸性条件下、ジアゾ化剤及び塩素源と反応させることにより、効率良く6−アミノ−2−クロロカプロン酸が得られることが分かった。
【0057】
<6−アミノカプロン酸の製造>
実施例5
実施例1で得られた6−アミノ−2−クロロカプロン酸1wt%水溶液を、連続水素化反応装置(ThalesNano社製H−Cube、ThalesNano社製触媒カートリッジ(10%Pd/C))を用い、温度50℃、フルHモード、流速1mL/minの条件で水素化した。得られたサンプルをH−NMRで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸が6−アミノカプロン酸に定量的に変換されていることを確認できた。
【0058】
実施例6
実施例2にて得られた6−アミノ−2−クロロカプロン酸1wt%水溶液を用いた以外は実施例5と同様にして水素化した。得られたサンプルをH−NMRで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸が6−アミノカプロン酸に定量的に変換されていることを確認できた。
【0059】
上記のように、6−アミノ−2−クロロカプロン酸を脱ハロゲン化することにより、効率良く6−アミノカプロン酸が得られることが分かった。
【0060】
<ε−カプロラクタムの製造>
実施例7
実施例5にて得られたアミノカプロン酸3.95gをtetra−EG(和光純薬工業社製試薬)120gに溶解し、ディーンスターク管を取り付けた300mL丸底フラスコ中で185℃で2時間加熱した。反応後、100Pa、135℃で減圧蒸留した。得られたサンプルを1H−NMRで分析したところ、アミノカプロン酸を定量的にε−カプロラクタムに変換できていることを確認できた。また、得られたε−カプロラクタムを上記HPLC及びH−NMRで分析したところ、7−メチル−ε−カプロラクタム及び3−メチル−ε−カプロラクタム由来のピークは見られなかった。
【0061】
実施例8
実施例6にて得られた6−アミノカプロン酸を用いた以外は実施例7と同様にして水素化した。得られたサンプルをH−NMRで分析したところ、6−アミノ−2−クロロカプロン酸がアミノカプロン酸に定量的に変換されていることを確認できた。また、得られたε−カプロラクタムを上記HPLC及びH−NMRで分析したところ、7−メチル−ε−カプロラクタム及び3−メチル−ε−カプロラクタム由来のピークは見られなかった。
【0062】
上記のように、6−アミノカプロン酸を溶媒中で加熱して脱水環化縮合することにより、効率良く不純物が検出されない純度が極めて高いε−カプロラクタムが得られることが分かった。
【0063】
比較例1
三菱化学製の石油由来のカプロラクタムを上記HPLC及びH−NMRで分析したところ、7−メチル−ε−カプロラクタムを0.027質量%、3−メチル−ε−カプロラクタムを0.005質量%含んでいた。
図1