(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中央領域内の前記ホールが、前記内部領域内の前記ホールの平均ホールサイズ、及び前記外部領域内の前記ホールの平均ホールサイズを上回る平均ホールサイズを有する、請求項1に記載のマスク。
目に見える回折パターンを発生させるホールの傾向が、第1のホールサイズ、形状、又は間隔を有する複数のホール、及び前記第1のホールサイズ、形状、又は間隔とは異なる第2のホールサイズ、形状、又は間隔を有する少なくとも別の複数のホールを有することにより抑制される、請求項1に記載のマスク。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願は、患者の眼の焦点深度を改善する角膜インレイ(例えばマスク)、並びに前記角膜インレイを作製するための方法及び用具に関連する。マスクは、ピンホール式の視力矯正を一般的に利用し、またいくつかの実施形態では栄養輸送構造物を有する。マスクは、例えば角膜内インプラント(「角膜インレイ」と呼ばれることもある)として眼に装着可能であり、方式、場所を問わない。またマスクは、レンズに埋め込み可能又はこれと併用可能であり、例えばコンタクトレンズ若しくは眼内レンズとして、又はこれと併用して眼のその他の領域に装着することも可能である。いくつかの出願では、以下でさらに説明されるように、マスクは、安定な材料、例えば永久に埋め込み可能な材料から形成される。開口部を備えた角膜インレイも、無虹彩症を治療するのに利用可能である。
【0017】
I. 焦点深度視力矯正法の概要
これまでに説明されたように、ピンホールアパーチャを有するマスクは、ヒト眼の焦点深度を改善するのに利用可能である。上記で説明したように、老眼は、より高齢のヒト成人で一般的に生ずるヒト眼の問題であり、この場合、焦点を定める能力が不適切な範囲に限定されるようになる。
図1〜
図6は、老眼はどのように眼の正常な機能を阻害し、またピンホールアパーチャを備えたマスクがどのようにこの問題を軽減するかを説明している。
【0018】
図1は、ヒトの眼を示し、
図2は眼10の側方図である。眼10には、角膜12及び角膜12の後方の眼内レンズ14が含まれる。角膜12は、眼10の第1の焦点設定要素である。眼内レンズ14は眼10の第2の焦点設定要素である。眼10には、眼10の裏面の内側を覆う網膜16も含まれる。網膜16には、視覚に主に関係する受容体細胞が含まれる。網膜16には、網膜黄斑として公知の極めて敏感な領域が含まれ、そこでシグナルが受け取られ、視神経18を経由して脳の視覚中枢に伝達される。網膜16には、網膜中心窩として公知の特に高い感度を有する点20も含まれる。
図8と関連してより詳細に説明されるように、網膜中心窩20は眼10の対称軸からわずかにずれている。
【0019】
眼10には、虹彩22として公知の色素組織のリングも含まれる。虹彩22には、虹彩22内にある瞳孔として公知の開口部24のサイズを制御及び調整する平滑筋が含まれる。入射瞳26は、角膜12を経由して視認される虹彩22の画像として認められる(
図7を参照)。入射瞳の中心点28は
図7に図示されており、以下でさらに説明される。
【0020】
眼10は、頭蓋骨内の眼窩内に存在し、同内で回転軸30の周りを回転することができる。
【0021】
図3は、老眼患者の眼10を経由する光の透過を示す。角膜12若しくは眼内レンズ14で収差が生じること、又は筋肉制御が失われることのいずれかにより、眼10に進入し、角膜12及び眼内レンズ14を通過する光線32は、光線32が網膜16上に単一の焦点を結ばないような様式で屈折作用を受ける。
図3は、老眼患者では、光線32は、多くの場合、網膜16後方の点に焦点を結ぶことを示す。その結果、患者は視力障害を経験する。
【0022】
ここで
図4に目を転じると、マスク34が装着された眼10を経由する光の透過が示されている。マスク34は、
図4の角膜12内に埋め込まれた状態で示されている。しかし、以下で説明するように、マスク34は、様々な装着様式で、角膜12内に埋め込み可能(示す通り)、角膜12上に配置されたコンタクトレンズとして利用可能、眼内レンズ14(患者生来のレンズ又は埋め込まれたレンズを含む)内に組み込み可能、さもなければ眼10の上部若しくは内部に配置可能であると理解される。図示された実施形態では、マスク34、角膜12、及びレンズ14を通過する光線32は、網膜16上に単一の焦点を結ぶ。網膜16上に単一の焦点を結ばない光線32は、マスク34により遮断される。以下で説明するように、マスク34を通過する光線32が網膜中心窩20上に焦点を結ぶように、眼10の上にマスク34を配置するのが望ましい。
【0023】
ここで
図6に目を転ずると、マスク34の一実施形態が示されている。マスク34の様々な変形形態が以下で説明される。セクションIIIでは、マスク34及び以下で説明されるその任意の変形形態を作製するのに利用可能ないくつかの材料について説明される。認められる通り、マスク34には、好ましくはマスク34上において実質的に中心に位置するピンホール状の開口部又はアパーチャ38を取り巻く円環領域36が含まれる。ピンホール状のアパーチャ38は、一般的に本明細書でマスク34の光軸と呼ぶ、中心軸39を取り囲むように位置する。ピンホール状のアパーチャ38は、好ましくは円形である。円形のアパーチャ、例えばアパーチャ38では、患者によってはいわゆる「ハロー効果」が生じる可能性があり、その場合、患者は視認対象物の周囲で画像のぎらつきを感じることが報告されている。したがって、いわゆる「ハロー効果」を抑制する、低減する、又は完全に取り除く形状でアパーチャ38を提供するのが望ましいと考えられる。
【0024】
II. 焦点深度矯正を利用するマスク
図7〜
図42は、老眼患者の視力を改善することができるマスクの様々な実施形態を説明する。
図7〜
図42に関連して記載されるマスクは、マスク34に類似するが、但し下記に別途記載される場合を除く。下記で説明されるマスク、例えば
図7〜
図42に示すようなマスクは、いずれも下記のセクションIIIで説明される材料から作製可能である。マスク34及び下記で説明されるいずれのマスクにも、例えば「OCULAR INLAY WITH LOCATOR」と題する、2005年4月14日出願の米国特許公開第2006/0235428号で説明されるような所在指示構造物(locator structure)が含まれるが、その全体が本明細書に参考として援用される。
図7〜
図42と関連して記載されるマスクは、マスク34と同様に利用可能、及び患者の眼10に装着可能である。例えば、
図7は六角形の形状で形成されたアパーチャ38aを含むマスク34aの実施形態を示す。
図8は、八角形の形状で形成されたアパーチャ38bを含むマスク34bの別の実施形態を示す。
図9は、楕円形の形状で形成されたアパーチャ38cを含む別のマスク34cの実施形態を示し、一方、
図10は、尖った楕円形の形状で形成されたアパーチャ38dを含む別のマスク34dの実施形態を示す。
図11は、アパーチャ38eが星型又はスターバーストの形状で形成された別のマスク34eの実施形態を示す。
【0025】
図12〜
図14は、涙滴形状のアパーチャを有するさらなる実施形態を示す。
図12は、マスク34fの真の中心よりも上に位置する涙滴形状のアパーチャ38fを有するマスク34fを示す。
図13は、マスク34gの中心に実質的に位置する涙滴形状のアパーチャ38gを有するマスク34gを示す。
図14は、マスク34hの真の中心よりも下に位置する涙滴形状のアパーチャ38hを有するマスク34hを示す。
図12〜
図14は、アパーチャの位置は、異なる効果を得るために、例えば中心に又は中心からずれて特別に設定可能であることを説明する。例えば、マスクの真の中心よりも下に位置するアパーチャは、アパーチャ34の上の部分は患者の目蓋により覆われないので、一般的により多くの光が眼に進入するのを可能にする。反対に、マスクの真の中心よりも上に位置するアパーチャの場合、アパーチャは目蓋により部分的に覆われる可能性がある。したがって、中心より上に位置するアパーチャでは、眼に進入する光をより少なくすることができる。
【0026】
図15は、四角形に形成されたアパーチャ38iを含むマスク34iの実施形態を示す。
図16は、腎臓の形状のアパーチャ38jを有するマスク34jの実施形態を示す。
図7〜
図16に示すアパーチャは、単に非円形のアパーチャの例示であると認識される。その他の形状及び配置も規定することができ、それらも本発明の範囲内である。
【0027】
以下で説明するように、マスク34は好ましくは一定の厚さを有する。しかし、いくつかの実施形態では、マスクの厚さは内周(アパーチャ38近傍)と外周との間で変化する。
図17は、凸面状の外形を有する、すなわち内周から外周に向かって厚さが徐々に減少するマスク34kを示す。
図18は、凹面状の外形、すなわち内周から外周に向かって厚さが徐々に増加するマスク34lを示す。その他の断面形状も可能である。
【0028】
円環領域36は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に不透明性である。円環領域36の不透明性は、光がマスク32を経由して透過するのを阻止する(
図4に一般的に示す通り)。円環領域36の不透明性は、任意のいくつかの異なる方法で実現可能である。
【0029】
例えば、一実施形態では、マスク34を作製するのに用いられる材料は、本来不透明性である。或いは、マスク34を作製するのに用いられる材料は実質的に透明であるが、しかし領域36を実質的に又は完全に不透明性にするように色素又はその他の色素形成剤で処理される。なおも別の例では、マスク34の表面は、マスク34の屈折特性及び透過特性を変えるために、並びに光の透過性を低下させるために、物理的又は化学的(例えば、エッチング)に処理される。
【0030】
なおも別の代替法では、マスク34の表面は、その上に配置される微粒子で処理可能である。例えば、マスク34の表面には、マスク34の表面に不透明性を付与するために、チタン、金、又は炭素の微粒子を配置することが可能である。別の代替法では、
図19に一般的に示すように、微粒子はマスク34の内部にカプセル化可能である。最後に、
図24〜
図33に一般的に示すように、マスク34は、光透過性が変動する部位を付与するようにパターン化されるが、それは後ほど詳細に説明される。
【0031】
図20に目を転ずると、そこには織物、例えばポリエステル繊維からなるメッシュにより形成、又は作製されたマスク34mが示されている。メッシュは繊維製のクロスハッチメッシュである。マスク34mには、アパーチャ38mを取り巻く円環領域36mが含まれる。円環領域36mは、織物中に複数の一般的に規則的に配置されたアパーチャ36mを含み、一部の光がマスク34mを通過するのを可能にする。光透過量は、所望次第に、例えば繊維を互いにより接近させて、又はさらに隔てて移動させることにより変更可能及び制御可能である。繊維をより密集して分布させると、円環領域36mを通過する光をより少なくすることができる。或いは、メッシュの開口部を通過する光がより多く又はより少なくなるように、繊維の太さを変化させることができる。繊維ストランドをより太くさせると、その結果、開口部はより小さくなる。
【0032】
図22は、異なる不透明度のサブ領域を有する円環領域36nを含むマスク34nの実施形態を示す。円環領域36nの不透明度は、所望次第に、段階的に及び連続的に増加又は低下する。
図22は、アパーチャ38nに最も近い第1の部位42が約43%の不透明度を有する一実施形態を示す。この実施形態では、第1の部位42に対して外側に位置する第2の部位44の不透明度はより高く、例えば70%である。この実施形態では、第2の部位44に対して外側に位置する第3の部位46の不透明度は、85%〜100%である。上記した、及び
図22に示す種類の段階的な不透明性は、一実施形態では、例えばマスク34nの部位42、44、及び46に対して、異なる程度で色素形成することにより達成される。別の実施形態では、段階的な不透明性を実現するために、程度が異なる上記した種類の光遮蔽材が、マスクの表面上に選択的に配置される。
【0033】
別の実施形態では、マスクは異なる光透過特性を有する材料から作製された同時押出成形棒(co-extruded rod)から形成される。次に、同時押出成形棒は、複数のマスク、例えば本明細書に記載するマスク等で用いられるディスクを提供するためにスライスされる。
【0034】
図24〜
図33は、異なる不透明度の領域を提供するように改変されたマスクの例を示す。例えば、
図24は、アパーチャ38o、及びアパーチャ38o近傍からマスク34oの外周50に向かって延在する、心向きスポークパターンの複数の切り抜き48を含むマスク34oを示す。
図24は、外周50近傍のマスク円周付近の切り抜き48の分布よりも、アパーチャ38o近傍のマスク円周付近の切り抜き48の分布の方がよりいっそう密集していることを示す。したがって、周辺部50近傍よりも、アパーチャ38oにより近いマスク34oの方が、通過する光は多い。マスク34oを透過する光の変化は段階的である。
【0035】
図26〜
図27は、マスク34pの別の実施形態を示す。マスク34pには、アパーチャ38p、及び複数の円形の切り抜き49p、及び複数の切り抜き51pが含まれる。円形の切り抜き49pは、アパーチャ38pに近接して位置する。切り抜き51pは、円形の切り抜き49pと周辺部50pとの間に位置する。円形の切り抜き49pの密度は、アパーチャ38p近傍から周辺部50pに向かって一般的に低下する。マスク34pの周辺部50pは、内側から周辺部50pに延在する切り抜き51の存在によりホタテ貝模様(scalloped)となっており、一部の光が周辺部50pのマスクを通過するのを可能にする。
【0036】
図28〜
図29は、
図26〜
図27の実施形態に類似した別の実施形態を示しており、この実施形態では、マスク34qには、複数の円形の切り抜き49q及び複数の切り抜き51qが含まれる。切り抜き51qはマスク34qの外周50qに沿って配置されるが、しかしホタテ貝模様の周辺部ほどには設けられていない。
【0037】
図30及び
図31は、パターン化された円環領域36r、及び非円形のアパーチャ38rが含まれるマスク34rの実施形態を示す。
図30に示す通り、アパーチャ38rはスターバーストの形状である。アパーチャ38rの周りには、アパーチャ38rに向かってより密集した間隔を有する一連の切り抜き51rが存在する。マスク34rには、外周50rで光がさらに透過するようにホタテ貝模様を有する外周50rが含まれる。
【0038】
図32及び
図33は、円環領域36s及びアパーチャ38sが含まれるマスク34sの別の実施形態を示す。円環領域36sは、マスク34sの外周50sとアパーチャ38sとの間に位置する。円環領域36sはパターン化されている。特に、複数の円形の開口部56sが、マスク34sの円環領域36s全体にわたり分布している。開口部56sの密度は、マスク34sの周辺部50s近傍よりもアパーチャ38s近傍のほうが大きいと認識される。上記の例と同様に、これは、マスク34sの不透明度をアパーチャ38sから周辺部50sに向かい連続的に増加させる結果となる。
【0039】
図34〜
図36は、さらなる実施形態を示す。特に、
図34は、第1のマスク部分58t及び第2のマスク部分60tが含まれるマスク34tを示す。マスク部分58t、60tは、一般的に「C字形」である。
図34に示す通り、マスク部分58t、60tは、マスク部分58t、60tがピンホール又はアパーチャ38tを規定するように埋め込まれる又は挿入される。
【0040】
図35は別の実施形態を示し、マスク34uには、2つのマスク部分58u、43uが含まれる。各マスク部分58u、43uは半月形状であり、2つの半月部分が光の通過を可能にする中央のギャップ部又は開口部45uを規定するように埋め込まれ又は挿入されるように構成される。開口部45uは円形のピンホールではないが、マスク部分58u、43uは患者の目蓋(破線47で示す通り)と組み合わされてピンホール効果と同等の効果をもたらす。
【0041】
図36は、アパーチャ38vを含み、半月形状であるマスク34vの別の実施形態を示す。以下でより詳細に説明されるように、マスク34vは角膜12の下の部分に埋め込み可能又は挿入可能であり、上記のようにマスク34vと目蓋45が組み合わされてピンホール効果をもたらす。
【0042】
別の実施形態では、マスクを通過する光の透過率を制御する異なる方法が利用される。例えば、マスクは
図19に示すようにゲル充填ディスクである。ゲルは、マスク材料と生体適合性を有し、またマスクの内側に導入可能なヒドロゲル若しくはコラーゲン、又はその他の適する材料である。マスク内のゲルには、ゲル内に懸濁された微粒子53が含まれる。適する微粒子の例として、金、チタン、及び炭素微粒子が挙げられ、或いは上記で説明されたように、マスクの表面上に配置される。
【0043】
マスク34の材料は、任意の生体適合性のポリマー材料である。ゲルが用いられる場合には、材料はゲルを保持するのに適する。マスク34の用途で適する材料の例として、好適なポリメタクリル酸メチル又はその他の適するポリマー、例えばポリカーボネート等が挙げられる。もちろん、これまでに示したように、非ゲル充填材料の場合、好適な材料として、繊維性の材料、例えばダクロンメッシュが該当する。
【0044】
マスク34は、マスク34を患者の眼の中に装着、挿入、又は埋め込んだ後に選択的に放出される薬剤の流体又は物質、例えば抗生物質又はその他の創傷治癒モジュレーター(wound healing modulator)等を含むように作製することも可能である。装着、挿入、又は埋め込み後に抗生物質又はその他の創傷治癒モジュレーターを放出させることにより、切開部の治癒は速まり、及び/又は改善する。また、マスク34はその他の所望の薬物又は抗生物質でコーティングすることも可能である。例えば、コレステロール沈着物が眼の上に形成することが公知である。したがって、マスク34は遊離性のコレステロール抑制剤と共に提供される。薬物は、マスク34の表面にコーティング可能、又は別の実施形態では、マスク34が形成される原料となるポリマー材料(例えばPMMA)内に組み込み可能である。
【0045】
図37及び
図38は、マスク34wが複数のナナイト68を含む一実施形態を示す。「ナナイト」とは、患者の眼に進入する光を選択的に透過させる又は遮断するように構成された小さい微粒子構造物である。粒子は、ナノテクノロジーの用途で用いられる粒子に典型的な、非常に小さいサイズの粒子である。ナナイト68は、
図37及び
図38に一般的に示すようにゲル中に懸濁される、さもなければマスク34wの内部に挿入される。ナナイト68は、異なる光環境に反応するように事前プログラム可能である。
【0046】
したがって、
図37に示す通り、明るい光環境では、光の一部が眼に進入するのを実質的に及び選択的に遮断するように、ナナイト68はそれ自体を転回及び配置させる。しかし、より多くの光が眼に進入するのが望ましい暗い光環境では、
図38に示すように、ナナイトは転回することにより反応することができ、さもなければより多くの光が眼に進入できるように配置される。
【0047】
ナノデバイス又はナナイトは、実験室で成長する結晶性の構造物である。ナナイトは、これが光等の異なる刺激に対して反応性となるように処理可能である。本発明の1つの態様によれば、ナナイトが上記及び
図38に一般的に示すように暗い光環境及び明るい光環境に反応して回転する場合には、ナナイトにはエネルギーが付与される。
【0048】
ナノスケールデバイス及びシステム、並びにそれらの製造は、Smithらの「Nanofabrication」、Physics Today、1990年2月、24〜30頁、及びCraigheadの「Nanoelectromechanical Systems」、Science、2000年11月24日、第290巻、1502〜1505頁に記載されており、この両方の全体が本明細書において参考として援用される。光学的用途で用いる小型の粒子の特性を特別に設定するステップは、Chenらの「Diffractive Phase Elements Based on Two-Dimensional Artificial Dielectrics」、Optics Letters、1995年1月15日、第20巻、2号、121〜123頁に開示されており、これもそのまま本明細書において参考として援用する。
【0049】
本発明に基づき作製されるマスク34は、その他の特性を備えるようにさらに改変される。
図39はバーコード66又はその他の印刷された証印を含むマスク34xの一実施形態を示す。
【0050】
本明細書に記載するマスクは、異なる方法で患者の眼の中に組み込み可能である。例えば、
図49と関連して下記でより詳細に説明されるように、マスク34は、眼球10の表面上に配置されるコンタクトレンズとして提供される。或いは、マスク34は、患者の生来のレンズ14に置き換えるように設計された人工的な眼内レンズに組み込まれる。しかし、好ましくは、マスク34は角膜インプラント又はインレイとして提供され、この場合、角膜12の層の間に物理的に挿入される。
【0051】
角膜インプラントとして用いられる場合には、角膜12の層はマスク34が挿入可能となるように剥ぎ取られる。一般的に、光学外科医は(レーザーを用いて)、角膜上皮を覆う皮弁を切除し、剥ぎ取る。次に、マスク34が挿入され、皮弁は初期の位置に再配置されるが、やがて皮弁はそこで再増殖し、眼球を塞ぐ。いくつかの実施形態では、マスク34は、
図40に示す、またその全体が本明細書において参考として援用される米国特許第4,976,732号に一般的に記載される支持ストランド72及び74により、眼10に取り付けられ又は固定される。
【0052】
状況によっては、マスク34を装着するために、外科医は角膜組織をさらに除去することが必要となる場合がある。したがって、一実施形態では、外科医は、マスク34を受け入れるポケットを設けるために、レーザーを使用して角膜12の層をさらに剥ぎ取ることができる。患者の眼10の角膜12にマスク34を装着するステップは、
図50A〜
図51Cに関連してより詳細に記載される。
【0053】
マスク34の除去は、単に角膜12をさらに切開し、皮弁を持ち上げ、マスク34を除去することにより実現可能である。或いは、マスク34を完全に除去するのにアブレーション法が利用可能である。
【0054】
図41及び
図42は、繊維性の又はその他の材料からなるコイル状のストランド80を含むマスク34yの別の実施形態を示す。ストランド80は、マスク34yを形成するように、それ自体がコイル状に巻かれ、したがって渦巻き様のマスクとして記載される。この構成では、ピンホール又はアパーチャ38yは、実質的にマスク34yの中心に設けられる。マスク34yは、角膜12の皮弁内に形成された開口部を経由して、ピンセット82でストランド80を保持する技師又は外科医により除去可能である。
図42はこの除去法を示す。
【0055】
さらなるマスクの詳細は、1990年12月11日発行の米国特許第4,976,732号、及び2004年5月26日出願の米国特許出願第10/854,033号に開示されており、この両方をそのまま本明細書において参考として援用する。
【0056】
III. 好ましいUV-抵抗性ポリマーマスク材料
マスクは非常に高い比表面積を有し、また埋め込み後には多量の日光に曝露されるので、マスクは、紫外(UV)又はその他の波長の光に対する曝露に起因する分解を含め、分解に対して良好な抵抗性を有する材料を含むのが好ましい。UV吸収添加物を含むポリマー、又はUV吸収性モノマー(コモノマーを含む)で作製されたポリマーを含め、UV吸収成分を含むポリマーが、UV照射による分解に対して抵抗性の、本明細書で開示されるようなマスクを形成するのに利用可能である。前記ポリマーの例として、非限定的に米国特許第4,985,559号、及び同第4,528,311号に記載されるポリマーが挙げられ、両号をそのまま本明細書により参考として援用する。好ましい実施形態では、マスクは、それ自体がUV照射による分解に対して抵抗性の材料を含む。一実施形態では、マスクは、UV照射に対して実質的に反射性又は透過性であるポリマー材料を含む。
【0057】
或いは、マスクは分解抵抗効果を付与する成分を含むことができ、又は好ましくは少なくとも前面上を分解抵抗性を付与するコーティング物で被覆することができる。例えば、1つ又は複数の分解抵抗性のポリマーを、1つ又は複数のその他のポリマーと混合することにより、前記成分を含めることができる。前記混合物は、望ましい特性を提供する添加物、例えばUV吸収材料も含む。一実施形態では、混合物は、全部で約1〜10重量%、5〜15重量%、及び10〜20重量%を含む、好ましくは約1〜20重量%の1つ又は複数の分解抵抗性ポリマーを含む。別の実施形態では、混合物は、全部で約80〜90重量%、85〜95重量%、及び90〜100重量%を含む、好ましくは約80〜100重量%の1つ又は複数の分解抵抗性ポリマーを含む。別の実施形態では、混合物はより等しい材料割合を有し、全部で約50〜60重量%及び40〜50重量%を含む、約40〜60重量%の1つ又は複数の分解抵抗性ポリマーを含む。マスクは、異なる種類の分解抵抗性ポリマーの混合物も含むことができ、これにはUV吸収添加物又はモノマーを組み込んだ1つ又は複数のポリマーと共に、1つ又は複数の一般的にUV透過性又は反射性ポリマーを含む混合物が含まれる。これらの混合物には、全部で約1〜10重量%、5〜15重量%、及び10〜20重量%を含む、約1〜20重量%の1つ又は複数の一般的にUV透過性ポリマー、全部で約80〜90重量%、85〜95重量%、及び90〜100重量%を含む、約80〜100重量%の1つ又は複数の一般的にUV透過性ポリマー、及び全部で約50〜60重量%、及び40〜50重量%を含む、約40〜60重量%の1つ又は複数の一般的にUV透過性ポリマーを有する混合物が含まれる。ポリマー又はポリマー混合物は、以下で説明するように、混濁形成剤、ポリアニオン性化合物、及び/又は創傷治癒モジュレーター化合物を含む、但しこれらに限定されない、その他の材料と混合可能である。上記その他の材料と混合される場合、マスクを構成する材料中のポリマー又はポリマー混合物の量は、約60%〜90重量%、約65〜85重量%、約70〜80重量%、及び約90〜99重量%を含む、好ましくは約50%〜99重量%である。
【0058】
好ましい分解抵抗性ポリマーとして、ハロゲン化ポリマーが挙げられる。好ましいハロゲン化ポリマーとしては、フッ素化ポリマー、すなわち少なくとも1つの炭素-フッ素結合を有するポリマーが挙げられ、これには高度にフッ素化されたポリマーが含まれる。本明細書で用いられる場合、用語「高度にフッ素化された」とは、通常の意味で用いられる広い用語であり、これには少なくとも1つの炭素-フッ素結合(C-F結合)を有するポリマーが含まれ、この場合、C-F結合の数は、炭素-水素結合(C-H結合)の数と等しいか、又はこれを上回る。高度にフッ素化された材料には、ペルフルオロ材料、又は完全にフッ素化された材料、塩素等のその他のハロゲン置換基を含む材料、及び酸素-又は窒素-含有官能基を含む材料も含まれる。ポリマー材料の場合、結合数はポリマーを形成するモノマー又は反復単位を調べることにより、またコポリマーの場合には、各モノマーの相対的な量(モル濃度に基づく)により計測可能である。
【0059】
好適な高度にフッ素化されたポリマーとして、ポリ四フッ化エチレン(PFTE又はテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF又はKynar(登録商標))、ポリ-1,1,2-トリフルオロエチレン、及びペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)が挙げられるが、但しこれらに限定されない。その他の高度にフッ素化されたポリマーとしては、下記のモノマー単位のうちの1つ又は複数を含むホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、但しこれらに限定されない:テトラフルオロエチレン-(CF
2-CF
2)-、フッ化ビニリデン-(CF
2-CH
2)-、1,1,2-トリフルオロエチレン-(CF
2-CHF)-、ヘキサフルオロプロペン-(CF(CF
3)-CF
2)-、フッ化ビニル-(CH
2-CHF)-(ホモポリマーは「高度にフッ素化された」に該当しない)、酸素-含有モノマー、例えば-(O-CF
2)-、-(O-CF
2-CF
2)-、-(O-CF(CF
3)-CF
2)-、塩素-含有モノマー、例えば-(CF
2-CFC1)-。その他のフッ素化ポリマー、例えば十分なフッ素化度を有するフッ素化ポリイミド及びフッ素化アクリレートも、好ましい実施形態に基づくマスクで使用される高度にフッ素化されたポリマーとして検討される。本明細書に記載するホモポリマー及びコポリマーは、商業的に入手可能であり、及び/又は市販材料からそれらを調製する方法は、幅広く公表されており、またポリマー技術分野の当業者にとって公知である。
【0060】
高度にフッ素化されたポリマーが好ましいものの、1つ又は複数の炭素-フッ素結合を有するが、上記で説明されたような「高度にフッ素化された」ポリマーの定義に該当しないポリマーも利用可能である。前記ポリマーとして、C-F結合数よりもC-H結合数の方が大きいポリマー材料を形成するように、前段の1つ又は複数のモノマーと、エチレン、フッ化ビニル又はその他のモノマーとから形成されたコポリマーが挙げられる。その他のフッ素化ポリマー、例えばフッ素化ポリイミドも利用可能である。単独で又はフッ素化された又は高度にフッ素化されたポリマーと併用して、いくつかの用途で利用可能なその他の材料は、米国特許第4,985,559号及び同第4,538,311号に記載されており、両号をそのまま本明細書により参考として本明細書において援用する。
【0061】
高度にフッ素化されたという上記定義は、いくつかの例を用いて最適に説明される。1つの好ましいUV抵抗性ポリマー材料は、-(CF
2-CH
2)
n-の式で表される構造を有するフッ化ポリビニリデン(PVDF)である。各反復単位は、2つのC-H結合、及び2つのC-F結合を有する。C-F結合の数はC-H結合の数と等しいか、又はこれを上回るので、PVDFホモポリマーは「高度にフッ素化された」ポリマーである。別の材料は、2:1のモル比で2つのモノマーから形成されたテトラフルオロエチレン/フッ化ビニルコポリマーである。形成されたコポリマーがブロック型、ランダム型、又は任意のその他の構成いかんによらず、2:1のテトラフルオロエチレン:フッ化ビニルの組成物に由来するのであれば、それぞれ4つのC-F結合を有する2つのテトラフルオロエチレン単位、及び3つのC-H結合及び1つのC-F結合を有する1つのフッ化ビニル単位を含む「反復単位」であるとみなすことができる。2つのテトラフルオロエチレン及び1つのフッ化ビニルに関する全結合は、9個のC-F結合及び3個のC-H結合である。C-F結合数がC-H結合数と等しいかこれを上回るので、このコポリマーは、高度にフッ素化されているとみなされる。
【0062】
PVDF等のある種の高度にフッ素化されたポリマーは、フッ素化されていない又はあまり高度にフッ素化されていない対応するカウンターパートポリマーと比較して1つ又は複数の望ましい特徴、例えば比較的化学的に不活性であり、またUV透過性が比較的高いという特徴を有する。本出願人は理論に束縛されるのは良しとしないが、フッ素の電気陰性度が、比較的多数のC-F結合を有する材料の望ましい特性の多くに関わっている可能性があるものと推定される。
【0063】
好ましい実施形態では、マスクを形成する高度にフッ素化されたポリマー材料の少なくとも一部分は、所望の不透明度を付与する混濁形成剤を含む。一実施形態では、混濁形成剤は、例えば透過性のアパーチャと併用して本明細書に記載する被写界深度を改善するのに十分な不透明度を提供する。一実施形態では、混濁形成剤は材料を不透明性にさせる。別の実施形態では、混濁形成剤は入射光の透過を約90%以上阻止する。別の実施形態では、混濁形成剤は材料を不透明性にさせる。別の実施形態では、混濁形成剤は入射光の透過を約80%以上阻止する。好ましい混濁形成剤として、有機色素及び/又は顔料、好ましくは黒いもの、例えばアゾ色素、ヘマトキシリンブラック、及びスダンブラック;鉄酸化物ブラックやイルメナイト等の金属酸化物、シリコンカーバイド、及び炭素(例えば、カーボンブラック、サブミクロン粉末炭素)を含む無機色素及び/又は顔料が挙げられるが、但しこれらに限定されない。上記材料は、単独で又1つ又は複数のその他の材料と併用して利用可能である。混濁形成剤は、マスクの1つ又は複数の表面に、そのすべて又は一部の表面について塗布可能であり、又はポリマー材料(例えば、ポリマー溶融段階(polymer melt phase)で混合される)と混合又は併用可能である。任意の上記材料が利用可能であるが、多くの有機色素が劣化するように経時で劣化することがないこと、及び紫外線を吸収することにより材料のUV安定性にも役立つことから、炭素が特に有用であることが判明している。一実施形態では、炭素が、得られる組成物の約2重量%〜約20重量%を占めるように、例えば得られる組成物の約12重量%、約13重量%、及び約14重量%を含む約10重量%〜約15重量%を占めるように、炭素は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は高度にフッ素化されたポリマーを含むその他のポリマー組成物と混合される。
【0064】
マスクの部分を黒色化し、暗黒化し、又は不透明化するために添加される顔料等のいくつかの混濁形成剤は、このような薬剤を含まないマスク材料よりも高いレベルまで入射光線を吸収するようにマスクをさせることができる。顔料を担持する、又は含むマトリックスポリマーは、吸収光線により分解作用を受ける可能性があり、こうした理由から、薄く、表面積が大きいことからそれ自体を環境上の分解に対して脆弱にしている前記マスクは、それ自体が紫外線等の分解作用に対して抵抗性の材料を原料に作製される、又はマスクは紫外線に対して一般的に透過性又は紫外線非吸収性であるのが好ましい。高度にUV抵抗性及び分解抵抗性の材料、例えば紫外線に対してきわめて透過性であるPVDFを使用すれば、特定の混濁形成剤を選択することにより引き起こされるポリマー損傷の可能性は大幅に低減されるので、混濁形成剤の選択により柔軟性を持たせることができる。
【0065】
分解抵抗性構築物に関する上記実施形態のいくつかの変形形態が検討される。1つの変形形態では、マスクは、ほぼ独占的にUV分解を受けない材料で作製される。例えば、マスクは金属、高度にフッ素化されたポリマー、又は別の類似した材料から作製される。金属を用いたマスクの構築物は、2004年12月1日出願の「Method of Making an Ocular Implant」と題する米国特許出願第11/000,562号、及びやはり「Method of Making an Ocular Implant」と題する2005年4月14日出願の同第11/107,359号でより詳細に説明されており、両号をそのまま本明細書において参考として援用する。本文脈で用いる場合、「独占的に」とは広い用語であり、若干の非機能的な物質(例えば、不純物)の存在、及び上記で説明されたような混濁形成剤を許容する。その他の実施形態では、マスクは材料の併用を含む。例えば1つの変形形態では、マスクは任意の埋め込み可能な材料から主に形成され、またUV抵抗性材料でコーティングされる。別の変形形態では、マスクは、通常の使用条件下において分解に対して十分な機能性を維持して、少なくとも約5年間、好ましくは少なくとも約10年間、及びある種の実施状態では少なくとも約20年間、医学的に有効な状態を保つように、マスクは十分な濃度で1つ又は複数のUV分解阻害剤、及び/又は1つ又は複数のUV分解抵抗性ポリマーを含む。
【0066】
図54は、高度にフッ素化されたポリマー及び混濁形成剤を含む組成物からマスクを作製する1つの方法を示すフローチャートである。ステップ2000では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ペレットを溶媒、例えばジメチルアセトアミド(DMAC又はDMA)中で、PVDFが完全に溶解されるまで加熱しながら溶解することにより、液体状態のポリマーが作製される。一実施形態では、溶液は、PVDFが完全に溶解されることを保証するために最低12時間混合される。ステップ2200では、PVDF/DMAC溶液が、高速剪断ミキサーを用いて混濁形成剤、例えばカーボンブラックと混合される。一実施形態では、カーボンブラックは、得られる組成物の13重量%を占め、一方、PVDFは得られる組成物の87重量%を占める。ステップ2300では、PVDF/カーボンブラック溶液が、溶液中のあらゆる大型の炭素凝集体を破壊するために高速ミル、例えばEiger高速ミル内で粉砕される。PVDF/カーボンブラック溶液は、あらゆる炭素凝集体をさらに破壊するために、2回ミルで処理される場合もある。ステップ2400では、得られた溶液は、シリコーンディスク上にポリマーフィルムを形成するためにシリコーンウェファーに塗布される。ここで、約55gのPVDF/カーボンブラック溶液が、シリコーンウェファー上に塗布するために分注筒に注入される。シリコーンディスクは、スピン流延機(spin casting machine)のスピナー上に配置され、分注筒は、シリコーンウェファーにPVDF/カーボンブラック溶液のビードを、ディスク中央部の直径1インチは未処理にして円形のパターンで塗布するのに用いられる。ディスク上にPVDF/カーボンブラック溶液を分散し、厚さ10ミクロンの均一なフィルムが形成されるように、スピナーサイクルを作動する。コーティングされたシリコーンディスクは、次にDMACを蒸発させるためにホットプレート上に置かれる。ステップ2500では、コーティングされたシリコーンウェファーはエキシマレーザー下に置かれる。レーザーカッティングマスクがレーザーに取り付けられ、レーザーが作動する。レーザーカッティングマスクを用いて、約150個の角膜マスクパターンが、PVDF/カーボンブラックフィルムにレーザー加工される。角膜マスクパターンは、シリコーンディスクの縁端部から約5mm延在する材料は用いられないように調整される。レーザー加工期間中、シリコーンディスクは表面を冷却するために窒素ガス中に浸漬される。ステップ2600では、レーザー加工されたマスクが、レザーブレードを用いてシリコーンディスクから取り出され、凸面状のテフロン(登録商標)製二次成形型の下半分に配置される。テフロン(登録商標)製二次成形型の上半分がマスク上部に配置され、及び鋳型は約160℃のオーブン内に配置される。ステップ2700では、鋳型は加熱され、マスクを硬化させるために焼成される。鋳型は約160℃で約2時間、焼成処理を受ける。2時間後、オーブン温度は約30℃まで下げられ、マスクは約2時間又はオーブン温度が約40℃未満に低下するまで焼成される。
【0067】
IV. 角膜沈着物を低減する及び/又は健全な治癒を促進する添加物
状況によっては、角膜インプラントは、角膜上の沈着物と関連する。1つ又は複数のポリアニオン性化合物を角膜インプラントのポリマー材料内に負荷すれば、おそらくは増殖因子を引き付ける、及び/又は保持することにより、角膜上の沈着物を低減する、及び/又は実質的に取り除くことがでる。
【0068】
好ましい実施形態では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物として、炭水化物、タンパク質、天然のプロテオグリカン、及び/又はプロテオグリカンのグリコサミノグリカン部分、並びに化合物、例えば上記分類に含まれる化合物の誘導体(例えば、硫酸化誘導体)及び塩が挙げられる。好ましいポリアニオン性化合物として、1つ又は複数のデルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、ポリ硫酸ペントサン、キサンタン、カラゲナン、フィブロネクチン、ラミニン、コンドロネクチン、ビトロネクチン、ポリL-リジン塩が挙げられ、またアニオン性の、好ましくは硫酸化された炭水化物、例えばアルギン酸塩の他、掲載する化合物の塩及び誘導体も利用可能である。好ましいアニオン性化合物、及びポリアニオン性化合物の組み合わせの例として、ケラタン硫酸/コンドロイチン硫酸-プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン、及びデキストラン硫酸が挙げられる。
【0069】
一実施形態では、ポリアニオン性化合物は酸性硫酸塩部分を含み、またイオウ含有量は約5重量%を上回り、好ましくは約10重量%を上回る。なおもより好ましい実施形態では、ポリアニオン性化合物の平均分子量は約40,000〜500,000ダルトンである。
【0070】
好ましい実施形態では、負荷されるポリマー材料中の1つ又は複数のポリアニオン性化合物の総重量は、約5重量%〜約20重量%、約12重量%〜約17重量%、約0.5重量%〜約4重量%、及び約5重量%〜約15重量%を含む、約0.1重量%〜約50重量%である。ポリアニオン性化合物、混濁形成剤、及び創傷治癒モジュレーター化合物に関連して本明細書で割合(%)と表現する場合、それは、すべての添加物を含む全マスク組成物の総重量を100%としたときの重量割合(%)であることに留意されたい。
【0071】
一実施形態では、マスク本体は、1つ又は複数のこれに負荷されたポリアニオン性化合物を有するポリマー材料から形成される。ポリアニオン性化合物の負荷は、マスク本体を成形又は流延する前に、ポリアニオン性化合物をポリマー材料の樹脂及び任意のその他の添加物と混合することにより実施される。ポリマー材料内に負荷されるいくつかのポリアニオン性化合物は、マスク表面上に存在するが、コーティングされた材料では、ポリアニオン性材料をマスクのバルク全体にわたり含むことはできないという点で負荷はコーティングとは区別される。
【0072】
負荷されるポリマー材料は、好ましくは、ポリマー、1つ又は複数のポリアニオン性化合物、及びあらゆるその他の添加物(例えば、下記に記載するような創傷治癒モジュレーター)を溶媒又は溶媒系内で懸濁又は溶解し、次にフィルム流延し、これにより溶媒又は溶媒系を例えば蒸発により除去することにより作製される。好ましい流延法として、当技術分野で公知の方法を含む、比較的均一な厚さの薄い材料を形成可能なスピン流延法(spin casting)及びその他の方法が挙げられる。押出し成形法(extrusion)等の薄い基材を作製するその他の方法も利用可能であるが、溶媒流延法は、いくつかのポリアニオン性化合物の分解を引き起こす可能性がある高温で実施される必要がないので、同法が一般的に好ましい。マスク作製の一環として、懸濁、溶解、又は溶融する前に、ポリマー、ポリアニオン性化合物、及び/又はその他の添加物は、材料の粒子サイズを低減するために、例えばボールミル粉砕法により微粉化又は粉砕可能である。
【0073】
溶媒流延法を用いる方法では、好ましい溶媒として、ポリマー材料、ポリアニオン性化合物、及び/又はその他の添加物を溶解する能力を有する溶媒が挙げられる。適する溶媒又は溶媒系(すなわち、2種類以上の溶媒の組み合わせ)は、所定のポリマー材料について公知の溶解度、及び/又は化学的原理に基づいたルーチン実験に基づき、当業者により選択可能である。溶媒流延法では、溶媒又は溶液の温度は、溶媒又は溶媒系の沸点よりも高温であってはならず、好ましくは約10℃〜約70℃である。フィルムを形成するために溶液を流延している期間中又はその後は、沸点よりも高い温度を含め温度を上昇させることができる。
【0074】
一実施形態では、PVDF、デキストラン硫酸、及び炭素を含むマスク、例えばインレイ等はスピン流延法により作製された。ペレット形態のPVDC(約71重量%)100グラムが、ジメチルアセトアミド400グラムに溶解された。炭素(約12重量%)17グラム、及びデキストラン硫酸(約17重量%)24グラムが、粒子サイズを低減するためにボール粉砕され、次にPVDF/DMA溶液に添加される。重量割合(%)は固形部分、すなわち溶媒ではない部分の割合(%)である。溶液は室温(約17℃〜約25℃)であった。次に、溶液はフィルムを形成するためにスピン流延された。
【0075】
一実施形態では、デバイスには創傷治癒モジュレーターが含まれる。存在する場合には、創傷治癒モジュレーターは、少なくとも1つの表面上に存在し、又はポリマー材料内に負荷される。創傷治癒モジュレーターは、例えば治癒速度の増加、炎症の軽減、免疫反応の緩和又は抑制、瘢痕化の軽減、細胞増殖の低減、感染症の低減、コラーゲンを貯蔵する細胞内への角膜実質細胞の分化転換促進等により創傷の健全な治癒を支援する化合物として定義される。創傷治癒モジュレーターとして、非限定的に、抗生物質、抗有糸分裂薬を含む抗悪性腫瘍薬、抗代謝薬や抗生物質のタイプ、抗炎症薬、免疫抑制剤、及び抗真菌薬が挙げられる。好ましい化合物として、非限定的に、フルオロウラシル、マイトマイシンC、パクリタキセル、NSAID(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、カルプロフェン、スプロフェン、ケトプロフェン)、及びシクロスポリンが挙げられる。その他の好ましい化合物として、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、及びこれらの塩及び誘導体、並びに上記で開示されたものを含むその他の炭水化物及び/又はタンパク質が挙げられる。
【0076】
創傷治癒モジュレーターは、ポリアニオン性化合物に関して上記で説明したように、ポリマー材料内にこれを負荷することによりマスク内に組み込み可能である。創傷治癒モジュレーターは、デバイスの1つ又は複数の表面にこれを結合させることにっても組み込み可能である。デバイスへの創傷治癒モジュレーターの「結合」は、吸着、水素結合、ファンデルワールス力、静電引力、イオン性結合等を含む、化学結合に一般的に関係しない現象によって生じる、又は化学結合を含む現象によって生じる。好ましい実施形態では、負荷されるポリマー材料内の1つ又は複数の創傷治癒モジュレーター化合物の総重量は、約5重量%〜約20重量%、約12重量%〜約17重量%、約0.5重量%〜約4重量%、及び約5重量%〜約15重量%を含む、約0.1重量%〜約50重量%である。
【0077】
一実施形態では、マスク表面上の炭素、金、又はその他の材料は、吸着剤として作用し、さもなければ1つ又は複数の創傷治癒モジュレーターがインプラントと結合することに関与する。創傷治癒モジュレーターの結合に関与するマスク表面上の材料は、例えば以下のどこかに記載する混濁形成剤等のように、インプラントを構成するバルク材料(インプラント全体に分布した、又はインプラント形成期間中及び/又は後に表面に移動する)の一部であり、、及び/又はマスク表面上に配置される。次に、インプラントは、例えば少なくとも1つの創傷治癒モジュレーターを含む溶液(分散物及び乳化物を含む)に浸漬すること等により、1つ又は複数の創傷治癒モジュレーターに曝露され、創傷治癒モジュレーターがインプラントに結合するのを可能にする。創傷治癒モジュレーターをインプラントに塗布し、結合させる際にこれを支援するのに用いられる溶媒は、好ましくは生体適合性であり、有害な残留物を残さず、及び/又はマスクのポリマー材料の溶解又は膨張を引き起こさない。2種類以上の創傷治癒モジュレーターが用いられる場合には、結合は、すべての所望の創傷治癒モジュレーターを含有する単一の溶液に浸漬することにより実施可能であり、又は2種類以上の溶液であって、1つ又は複数の所望の創傷治癒モジュレーターをそれぞれ含有する前記溶液に連続してインプラントを浸漬することにより実施可能である。創傷治癒モジュレーターをインプラントに結合させるプロセスは、時期を問わず実施可能である。一実施形態では、少なくとも創傷治癒モジュレーターの一部は、製造プロセスの一環としてインプラントに結合する。別の実施形態では、眼科医等の医師は、埋め込み直前に少なくとも創傷治癒モジュレーターの一部をインプラントに結合させる。
【0078】
別の実施形態では、1つ又は複数の創傷治癒モジュレーターは、薬物又はその他の有用な化合物をインプラントに結合させる任意の適する方法及び医療機器を用いて、及び/又は薬物を埋め込み部位又は留置部位で長期にわたり局所的に送達する薬物送達デバイスを作製する方法を用いて、インプラントに結合される。
【0079】
V. 目に見える回折パターンを低減するように構成されたマスク
上記マスクの多くは、患者の焦点深度を改善するのに利用可能である。様々なさらなるマスクの実施形態が以下で説明される。以下に記載するいくつかの実施形態には、マスクを横断する栄養の輸送を促進することにより、隣接した組織間の栄養の流れを亢進する又は維持するように構成された栄養輸送構造物が含まれる。以下に記載するいくつかの実施形態の栄養輸送構造物は、隣接した組織における栄養の枯渇を少なくとも実質的に防止するように構成される。マスクが角膜内に埋め込まれたときに、角膜層に隣接してマスクが存在し、マスクの寿命が増加することから、栄養輸送構造物は、有害効果を低減することができる。本発明者らは、栄養輸送構造物がある種の構成をとると、本明細書に記載するマスクの視力改善効果を阻害する回折パターンが生成することを発見した。したがって、回折パターンを生成しない、さもなければマスク実施形態の視力増強効果を阻害しない栄養輸送構造物が含まれる、ある種のマスクが本明細書に記載される。
【0080】
図43〜
図44は、老眼罹患患者の眼の焦点深度を増加させるように構成されたマスク100の一実施形態を示す。マスク100は、以下で別途記載する場合を除き、本明細書で上記するマスクに類似する。マスク100は、セクションIIIで説明される材料を含め本明細書で説明される材料から作製可能である。また、マスク100は、任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、前記プロセスの変形形態と関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク100は、例えば患者の角膜内に埋め込むことにより患者の眼に装着されるように構成される。マスク100は、任意の適する方式、例えば
図50A〜
図51Cと関連して上記で説明される方式で角膜内に埋め込むことができる。
【0081】
一実施形態では、マスク100には、前面108及び後面112を有する本体104が含まれる。一実施形態では、本体104は、第1の角膜層と第2の角膜層との間の本来の栄養の流れを実質的に維持する能力を有する。一実施形態では、材料は、第1の角膜層(例えば、層1210)と第2の角膜層(例えば、層1220)との間の少なくとも1つの栄養(例えば、グルコース)について、本来の流れの少なくとも約96%を維持するように選択される。本体104は、連続気泡発泡体材料(open cell foam material)、膨張した固体材料、及び実質的に不透明な材料のうちの少なくとも1つを含む、任意の適する材料から形成される。一実施形態では、本体104を形成するのに用いられる材料は、比較的高い水分含有量を有する。
【0082】
一実施形態では、マスク100には栄養輸送構造物116が含まれる。栄養輸送構造物116は、複数のホール120を含む。ホール120は、マスク100の一部分についてのみ示されているが、しかしホール120は、好ましくは、一実施形態において本体104全体にわたり位置する。一実施形態では、ホール120は、六角形パターンで配置されており、
図45Aでは複数の位置120'で表されている。以下で説明するように、複数の位置は、マスク100上の複数のホール120の形成を後ほど定義され、後ほど使用される。マスク100は本体104の外端部を規定する外周124を有する。いくつかの実施形態では、マスク100には、外周124によって少なくとも部分的に取り囲まれているアパーチャ128、及び外周124とアパーチャ128との間に位置する非透過性部分132が含まれる。
【0083】
好ましくは、マスク100は対称であり、例えばマスク軸136について対称である。一実施形態では、マスク100の外周124は円形である。マスクは、一般的に約3mm〜約8mmの範囲内、多くの場合約3.5mm〜約6mmの範囲内、及び一実施形態では約6mm未満の直径を有する。別の実施形態では、マスクは円形であり、4〜6mmの範囲の直径を有する。別の実施形態では、マスク100は円形であり、4mm未満の直径を有する。別の実施形態では、外周124は約3.8mmの直径を有する。いくつかの実施形態では、マスクの軸について非対称の又は対称的ではないマスクは、例えば眼の解剖学的構造に応じてマスクを選択された位置に配置、又は維持できるようにする等の利益をもたらす。
【0084】
マスク100の本体104は、眼の特別な解剖学的領域に嵌合するように構成される。マスク100の本体104は、マスクが装着される眼の本来有する解剖学的構造の領域に適合するように構成される。例えばマスク100が、曲率を有する眼球構造と嵌合する場合には、本体104はマスク軸136に沿って、解剖学的曲率に対応するある量の曲率が設定される。例えば、マスク100が配置可能な1つの環境は、患者の眼の角膜内である。角膜は、識別可能な群、例えば成人内では実質的に一定である平均値について、個人間では異なるある量の曲率を有する。マスク100を角膜内に装着する場合、マスク100の前面108及び後面112のうち少なくとも1つには、マスク100が間に装着される角膜の層の曲率と関連するある量の曲率が設定される。
【0085】
いくつかの実施形態では、マスク100は、所望の量の屈折力を有する。屈折力は、前面108及び後面112のうち少なくとも1つが曲率を有するように構成することにより提供可能である。一実施形態では、前面108及び後面112には、異なる量の曲率が設けられる。この実施形態では、マスク100は外周124からアパーチャ128にかけて異なる厚さを有する。
【0086】
一実施形態では、本体104の前面108及び後面112のうちの1つは実質的に平面である。1つの平面の実施形態では、平面全体にわたり一定の曲率はきわめてわずかしか、又は全く測定されない。別の実施形態では、前面108及び後面112の両方は、実質的に平面である。一般的に、インレイの厚さは、約1ミクロン〜約40ミクロンの範囲内、多くの場合、約5ミクロン〜約20ミクロンの範囲内である。一実施形態では、マスク100の本体104は、約5ミクロン〜約10ミクロンの間の厚さ138を有する。一実施形態では、マスク100の厚さ138は約5ミクロンである。別の実施形態では、マスク100の厚さ138は約8ミクロンである。別の実施形態では、マスク100の厚さ138は約10ミクロンである。
【0087】
角膜内の比較的浅い部位(例えば、角膜の前面近傍)にマスク100を埋め込む場合、マスクが薄いほど、一般的に装着により適する。より薄いマスクでは、マスク100の光学性能に悪影響を及ぼさずに、マスクと嵌合する構造物の曲率に適合可能なように、本体104は十分に可撓性である。1つの応用形態では、マスク100は、角膜前面の下方約5umに埋め込まれるように構成される。別の応用形態では、マスク100は、角膜前面の下方約52umに埋め込まれるように構成される。別の応用形態では、マスク100は、角膜前面の下方約125umに埋め込まれるように構成される。マスク100を角膜内に埋め込むステップに関するさらなる詳細は、
図50A〜
図51Cと関連して上記で説明されている。
【0088】
実質的に平面のマスクは、非平面マスクと比較していくつかの長所を有する。例えば、実質的に平面のマスクは、特定の曲率に形成されなければならないマスクよりも容易に製造可能である。特に、マスク100に曲率を導入するステップに係わるプロセスステップを除去することができる。また、実質的に平面のマスクは、本体104にしかるべき量の曲率を導入するために、各患者の角膜の曲率を利用するので、実質的に平面のマスクは、患者母集団のより広い分布において(又はより広い患者母集団の異なる部分群において)使用するのに、より受け入れられやすいと考えられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、マスク100は、特に眼と嵌合する方式及び場所に対応するように構成される。特に、マスク100は、コンタクトレンズとして眼上に装着される場合にはより大型となり、又は例えば、眼のレンズ表面に近接して角膜の後方の眼内に装着される場合には、より小型となる。上記で説明されたように、マスク100の本体104の厚さ138は、マスク100が埋め込まれる場所に基づき変化する。角膜内のより深いレベルに埋め込む場合、より厚いマスクが有利である。より厚いマスクは、いくつかの用途で有利である。例えば、そのようなマスクは、一般的に取り扱いがより容易であり、したがって製造及び埋め込みがより容易である。より厚いマスクは事前形成済みの曲率を有することから、より薄いマスクよりも多くの利益を得ることができる。より厚いマスクは、これが装着時に生来の解剖学的構造の曲率に適合するように構成される場合には、埋め込み前は、ほとんど又は全く曲率を有さないように構成される。
【0090】
アパーチャ128は、マスク軸136に沿って実質的にすべての入射光が透過するように構成される。非透過性部分132は、アパーチャ128の少なくとも一部分を取り巻き、その上の入射光の透過を実質的に阻止する。上記マスクと関連して説明されるように、アパーチャ128は本体104中の貫通ホール、又は実質的に光透過性(例えば、透明)のマスク部分である。マスク100のアパーチャ128は、一般的にマスク100の外周124内に規定される。アパーチャ128は任意の適する形態、例えば
図6〜
図42と関連して上記した形態をとる。
【0091】
一実施形態では、アパーチャ128は実質的に円形であり、実質的にマスク100の中心に位置する。アパーチャ128のサイズは、老眼罹患患者の眼の焦点深度を増加させるのに効果的な任意のサイズである。例えば、アパーチャ128は円形であり、一実施形態では直径は約2.2mm未満である。別の実施形態では、アパーチャの直径は約1.8mm〜約2.2mmである。別の実施形態では、アパーチャ128は円形であり、直径は約1.8mm以下である。別の実施形態では、アパーチャの直径は約1.6mmである。ほとんどのアパーチャは、約1.0mm〜約2.5mmの範囲内、多くの場合約1.3mm〜約1.9mmの範囲内の直径を有する。
【0092】
非透過性部分132は、マスク100を通過する放射エネルギーの透過を阻止するように構成される。例えば、一実施形態では、非透過性部分132は、入射放射エネルギーのスペクトルの少なくとも一部分について、実質的にそのすべての透過を阻止する。一実施形態では、非透過性部分132は、実質的にすべての可視光、例えば、ヒトの目に見える電磁スペクトルに含まれる放射エネルギーの透過を阻止するように構成される。非透過性部分132は、いくつかの実施形態ではヒトに見える範囲外の放射エネルギーの透過を実質的に阻止する。
【0093】
図3と関連して上記で説明されたように、非透過性部分132を通過する光の透過を阻止することにより、網膜及び網膜中心窩に到達するが、網膜及び網膜中心窩で焦点を結んで鮮明な画像を形成しない光の量が低減する。
図4と関連して上記で説明されたように、アパーチャ128のサイズは、これを通過する光が一般的に網膜又は網膜中心窩で焦点を結ぶようなサイズである。したがって、マスク100がない場合よりもいっそう鮮明な画像が眼にもたらされる。
【0094】
一実施形態では、非透過性部分132は、入射光の約90%について透過を阻止する。別の実施形態では、非透過性部分132は、すべての入射光の約92%について透過を阻止する。マスク100の非透過性部分132は、光の透過を阻止するために不透明性であるように構成される。本明細書で用いる場合、用語「不透明性」とは、放射エネルギー、例えば光エネルギーの透過を阻止する能力を意味する広い用語となるように意図されており、またすべての、又はすべてに満たない、又は少なくとも実質的な部分の光を吸収する、さもなければ遮断する構造及び構成もその範囲に含む。一実施形態では、本体104の少なくとも一部分は、本体に入射する光の99%より多くの光に対して不透明性であるように構成される。
【0095】
上記で説明されたように、非透過性部分132は、入射光を吸収せずに光の透過を阻止するように構成される。例えばマスク100は、反射性であるように作製され、又は本明細書によりそのまま参考として本明細書において援用する2003年4月29日発行の米国特許第6,551,424号で説明されているように、より複雑な方式で光と相互作用するように作製される。
【0096】
上記で説明されたように、マスク100は、いくつかの実施形態では複数のホール120を含む、栄養輸送構造物も有する。複数のホール120(又はその他の輸送構造物)が存在すると、より多くの光がマスク100を通過するのを潜在的に可能にすることから、非透過性部分132を通過する光の透過に影響を及ぼす。一実施形態では、非透過性部分132は、ホール120が存在しないマスク100を通過する入射光の約99%以上を吸収するように構成される。複数のホール120が存在すると、非透過性部分132上に入射する光の約92%しか、非透過性部分132を通過するのを阻止しないように、より多くの光が非透過性部分132を通過するのを可能にする。ホール120は、より多くの光が非透過性部分を網膜まで通過するのを許すことにより、眼の焦点深度に対するアパーチャ128の利点を低減する可能性がある。
【0097】
ホール120に起因してアパーチャ128の焦点深度に対する利点が低減するが、それはホール120がもたらす栄養透過の利点と釣り合っている。一実施形態では、輸送構造物116(例えば、ホール120)は、第1の角膜層(すなわち、マスク100の前面108に隣接した層)から第2の角膜層(すなわち、マスク100の後面112に隣接した層)への自然な栄養の流れを実質的に維持する能力を有する。複数のホール120は、前面108と後面112との間で栄養がマスク100を通過するのを可能とするように構成される。上記で説明されたように、
図43に示すマスク100のホール120は、マスク100上の任意の場所に位置することができる。本明細書の下記に記載するその他のマスクの実施形態は、実質的にすべての栄養輸送構造物をマスクの1つ又は複数の領域に配置する。
【0098】
図43のホール120は、マスク100の前面108と後面112との間に少なくとも部分的に延在する。一実施形態では、ホール120のそれぞれには、ホール入口140及びホール出口164が備わる。ホール入口140は、マスク100の前面108に隣接して位置する。ホール出口164はマスク100の後面112に隣接して位置する。一実施形態では、ホール120のそれぞれは、マスク100の前面108と後面112との間の全長にわたり延在する。
【0099】
輸送構造物116は、マスク100を横断する1つ又は複数の栄養の輸送を維持するように構成される。マスク100の輸送構造物116は、少なくとも第1の角膜層及び第2の角膜層(例えば、層1210及び層1220)のうちの一方において栄養の枯渇を防止するように、マスク100を横断する1つ又は複数の栄養の十分な流れを提供する。隣接する角膜層の生存にとって特に重要な1つの栄養はグルコースである。マスク100の輸送構造物116は、隣接する角膜組織を害するグルコースの枯渇を防止するために、第1の角膜層と第2の角膜層との間のマスク100を横断するグルコースの十分な流れを提供する。したがって、マスク100は、隣接する角膜層間の栄養の流れ(例えば、グルコースの流れ)を実質的に維持する能力を有する。一実施形態では、栄養輸送構造物116は、第1の角膜層及び第2の角膜層のうちの少なくとも一方の隣接組織内のグルコース(又はその他の生物学的物質)が約4%を超えて消耗するのを防止するように構成される。
【0100】
ホール120は、マスク100を横断する栄養の輸送を維持するように構成される。一実施形態では、ホール120は、約0.015mm以上の直径を有するように形成される。別の実施形態では、ホールは約0.020mmの直径を有する。別の実施形態では、ホールは約0.025mmの直径を有する。別の実施形態では、ホールは約0.027mmの直径を有する。別の実施形態では、ホール120は約0.020mm〜約0.029mmの範囲の直径を有する。複数のホール120内のホール数は、ホール120のすべてのホール入口140の表面積の合計が、マスク100の前面108の表面積の約5%以上を占めるように選択される。別の実施形態では、ホール120の数は、ホール120のすべてのホール出口164の表面積の合計が、マスク100の後面112の表面積の約5%以上を占めるように選択される。別の実施形態では、ホール120の数は、ホール120のすべてのホール出口164の表面積の合計がマスク100の後面112の表面積の約5%以上を占め、かつホール120のすべてのホール入口140の表面積の合計が、マスク100の前面108の表面積の約5%以上を占めるように選択される。別の実施形態では、複数のホール120は約1600個の微小穿孔を含む。
【0101】
ホール120それぞれは比較的一定の断面積を有する。一実施形態では、ホール120それぞれの断面形状は、実質的に円形である。ホール120それぞれは前面108と後面112との間に延在する円筒を含む。
【0102】
ホール120の相対的位置は、いくつかの実施形態では重要である。上記で説明されたように、マスク100のホール120は6方充填であり、例えば六角形パターンで配置されている。特に本実施形態では、ホール120それぞれは、本明細書でホールピッチと呼ぶことがある実質的に一定の距離だけ隣接するホール120から離れている。一実施形態では、ホールピッチは約0.045mmである。
【0103】
六角形パターンでは、対称中心線間の角度は約43°である。ホールの任意の線に沿ったホール同士の間隔は、一般的に約30ミクロン〜約100ミクロンの範囲内であり、一実施形態では、約43ミクロンである。ホールの直径は、一般的に約10ミクロン〜約100ミクロンの範囲内であり、一実施形態では約20ミクロンである。入射光の量を制御したい場合には、ホールの間隔と直径とは関連する。光の透過量は、本明細書の開示に鑑み当業者により理解されるように、ホール面積の合計の関数である。
【0104】
図43の実施形態は、第1の角膜層から第2の角膜層への栄養の流れを有利に可能にする。本発明者らは、輸送構造物116が存在することにより、有害な視覚効果が生じることを発見した。例えば、場合によっては、ホール120が六方充填の構成をとると、患者にとって目に見える回折パターンを生成する。例えば、患者は複数のスポット、例えばホール120で中心の光を取り巻いた、六角形のパターンを有する6つのスポットを認める。
【0105】
本発明者らは、回折パターン及びその他の有害な視覚的効果が、マスクのその他の視覚的利益を実質的に阻害しないような、輸送構造物の有利な構成を生み出す様々な技法を発見した。一実施形態では、回折効果が識別できる場合には、栄養輸送構造物は、識別可能なスポットを除去するために、回折光が画像全体に均一に行き渡るように構成される。別の実施形態では、栄養輸送構造物は、回折パターンを実質的に取り除く、又はパターンを画像の周辺部に押しやるパターンを利用する。
【0106】
図45B〜
図45Cは、マスクに適用可能である、さもなければマスク100に実質的に類似したホール220のパターンに関する2つの実施形態を示す。
図45B〜
図45Cに示すホールパターンのホール220は、ランダムなホール間隔又はホールピッチで相互に間隔が設けられている。下記で説明されるその他の実施形態では、ホールは不均一な量、例えばランダムではない量で相互に間隔が設けられている。一実施形態では、ホール220は、実質的に均一な形状(実質的に一定の断面積を有する円筒の軸)を有する。
図45Cは、ランダムな間隔で隔てられている複数のホール220を示し、ホール密度は
図45Bの同密度を上回る。一般的に、ホールを有するマスク本体の占める割合(%)が高いほど、マスクは栄養を生来の組織に類似した方式でより多く輸送する。高い割合(%)のホール面積を得る1つの方法は、ホール密度を増加させることである。ホール密度が高まれば、より小さなホールが、これよりも低密度、大型のホールで実現される栄養輸送と同じ輸送を実現することも可能にする。
【0107】
図46Aは、下記で別途記載する場合を除きマスク100と実質的に類似した別のマスク200aの一部分を示す。マスク200aは、セクションIIIで説明される材料を含め、本明細書で説明される材料から作製可能である。マスク200aは、任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、及び前記プロセスの変形形態と関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク200aは、複数のホール220aを含む栄養輸送構造物216aを有する。相当な数のホール220aは不均一サイズを有する。ホール220aは断面形状が均一である。ホール220aの断面形状は、一実施形態では実質的に円形である。ホール220aは円形形状であり、またホール入口からホール出口まで同一の直径を有するが、さもなければ少なくとも1つの側面、例えばサイズについて不均一である。相当な数のホールのサイズがランダムな量で変化するのが好ましいといえる。別の実施形態では、ホール220aは、サイズが不均一(例えば、ランダム)であり、不均一(例えば、ランダム)な間隔で隔てられている。
【0108】
図46Bは、下記で別途記載する場合を除き、マスク100と実質的に類似したマスク200bの別の実施形態を示す。マスク200bは、セクションIIIで説明される材料を含め、本明細書で説明される材料から作製可能である。また、マスク200bは任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、及び前記プロセスの変形形態と関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク200bには本体204bが含まれる。マスク200bは、不均一なファセット方向を有する複数のホール220bを含む輸送構造物216bを有する。特に、ホール220bのそれぞれは、マスク200bの前面に位置するホール入口を有する。ホール入口のファセットは、ホール入口を取り巻くマスク200bの本体204bの部分により規定される。ファセットとは、前面におけるホール入口の形状である。一実施形態では、ほとんどの又はすべてのファセットは、細長い形状、例えば長軸及び長軸に対して垂直である短軸を有する長楕円形状を有する。ファセットは、実質的に均一な形状である。一実施形態では、ファセットの方向は一定ではない。例えば、相当な数のファセットは不均一な方向を有する。1つの構成では、相当な数のファセットはランダムな方向を有する。いくつかの実施形態では、ファセットは形状が不均一(例えば、ランダム)であり、方向も不均一(例えば、ランダム)である。
【0109】
上記側面の1つ又は複数を含む少なくとも1つの側面が異なり、目に見える回折パターン、さもなければアパーチャを備えたマスクにより提供される視力の改善を低減するパターン、例えば上記の任意のパターン等を生成するホールの傾向を低減する複数のホールからなる、その他の実施形態が提供される。例えば、一実施形態では、少なくとも相当な数のホールのホールサイズ、形状、及び方向がランダムに変化するが、さもなければ不均一である。
【0110】
図47は、下記で別途記載する場合を除き、本明細書でこれまでに記載する任意のマスクと実質的に類似したマスク300の別の実施形態を示す。マスク300は、セクションIIIで説明される材料を含め、本明細書で説明される材料から作製可能である。また、マスク300は、任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、及び前記プロセスの変形形態に関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク300には、本体304が含まれる。本体304は外側周辺領域(outer peripheral region)305、内側周辺領域(inner peripheral region)306、及びホール領域307を有する。ホール領域307は、外側周辺領域305と内側周辺領域306との間に位置する。本体304はアパーチャ領域も含むことができ、この場合、アパーチャ(以下で説明される)は貫通ホールではない。マスク300には栄養輸送構造物316も含まれる。一実施形態では、栄養輸送構造物には複数のホールが含まれる。少なくともホールの実質的な部分(例えば、すべてのホール)は、ホール領域307内に位置する。上記と同様、単純化するために栄養構造物316の一部分のみを示す。但し、ホールは、ホール領域307全体にわたり位置すると理解されるべきである。
【0111】
外側周辺領域305は、マスク300の外周324からマスク300の選択された外円周325まで延在する。マスク300の選択された外円周325は、マスク300の外周324から選択された半径方向の距離を置いて位置する。一実施形態では、マスク300の選択された外円周325は、マスク300の外周324から約0.05mmに位置する。
【0112】
内側周辺領域306は、内部の場所、例えばマスク300のアパーチャ328に隣接する内周326からマスク300の選択された内円周327まで延在する。マスク300の選択された内円周327は、マスク300の内周326から、選択された半径方向の距離を置いて位置する。一実施形態では、マスク300の選択された内円周327は、内周326から約0.05mmに位置する。
【0113】
マスク300は、複数の場所のランダムな選択、及び前記場所に対応するマスク300上へのホールの形成と関係するプロセスから生み出されたものである。以下でさらに説明されるように、方法は、選択された場所が1つ又は複数の基準を満たすかどうか判定するステップにも関係する。例えば、1つの基準では、ホールのすべて、少なくとも大部分、又は少なくとも実質的な部分が外側周辺領域305又は内側周辺領域306に対応する場所に形成されることが禁じられる。別の基準では、ホールのすべて、少なくとも大部分、又は少なくとも実質的な部分が相互に接近しすぎて形成されることが禁じられる。例えば、前記基準は、壁の厚さ、例えば隣接したホール間の最短距離が事前に決定された量未満とならないことを保証するために利用される。一実施形態では、壁の厚さは約20ミクロン未満となるのを阻止される。
【0114】
図47の実施形態の変形形態では、外側周辺領域305が取り除かれ、ホール領域307は内側周辺領域306から外周324まで延在する。
図47の実施形態の別の変形形態では、内側周辺領域306が取り除かれ、ホール領域307は外側周辺領域305から内周326まで延在する。
【0115】
図44Bは、下記で別途記載する場合を除き、マスク100に類似したマスク400を示す。マスク400は、セクションIIIで説明される材料を含め、本明細書で説明される材料から作製可能である。マスク400は、任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、及び前記プロセスの変形形態と関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク400には、前面408及び後面412を有する本体404が含まれる。またマスク400には、一実施形態では複数のホール420を含む、栄養輸送構造物4316も含まれる。ホール420は、栄養輸送が提供されるが、但しホール420を経由して網膜中心窩に隣接する網膜の場所まで達する放射エネルギー(例えば、光)の透過が実質的に阻止されるように、本体404内に形成される。特に、ホール420は、マスク1000と嵌合した眼が視認対象物の方向に向けられた時に、ホール420に進入する前記対象物の画像を伝達する光が、網膜中心窩近傍で終焉する経路に沿ってホールから漏出不能なように形成される。
【0116】
一実施形態では、ホール420のそれぞれは、ホール入口460及びホール出口464を有する。ホール420のそれぞれは、輸送軸466に沿って延在する。輸送軸466は、ホール420を経由して前面408から後面412に光が伝播するのを実質的に阻止するように形成される。一実施形態では、少なくとも相当な数のホール420は、マスク400の厚さよりも小さいサイズを輸送軸466に対して有する。別の実施形態では、少なくとも相当な数のホール420は、少なくとも前面408又は後面412の一方(例えば、ファセット)において、マスク400の厚さよりも小さい最長寸法の周囲長を有する。いくつかの実施形態では、輸送軸466は、マスク軸436に対して、光がホール420を経由して前面408から後面412に伝播するのを実質的に阻止するような角度で形成される。別の実施形態では、1つ又は複数のホール420の輸送軸466は、マスク軸436に対して、大半のホール入口460の投影面がホール出口464と重なり合うのを阻止するのに十分大きい角度で形成される。
【0117】
一実施形態では、ホール420の断面は円形であり、また直径は約0.5ミクロン〜約8ミクロンであり、また輸送軸466の角度は5〜85°である。ホール420のそれぞれの長さ(例えば、前面408と後面412との間の距離)は、約8〜約92ミクロンである。別の実施形態では、ホール420の直径は約5ミクロンであり、輸送角度は約40°以上である。ホール420の長さが増加するときには、追加ホール420を含めるのが望ましい場合がある。場合によっては、ホールがより長くなるとマスク400を経由する栄養の流量が低下してしまう傾向があるが、ホール420を追加すれば、そのような傾向は相殺される。
【0118】
図44Cは、下記で別途記載する場合を除き、マスク100に類似したマスク500の別の実施形態を示す。マスク500は、セクションIIIで説明される材料を含め、本明細書で説明される材料から作製可能である。マスク500は、任意の適するプロセス、例えば
図48a〜
図48dと関連して以下で説明されるプロセス、及び前記プロセスの変形形態と関連して以下で説明されるプロセスにより形成可能である。マスク500には、前面508、前面508に隣接する第1のマスク層510、後面512、後面512に隣接する第2のマスク層514、及び前記第1のマスク層510と前記第2のマスク層514との間に位置する第3のマスク層515を有する本体504が含まれる。またマスク500には、一実施形態では複数のホール520を含む、栄養輸送構造物516が含まれる。ホール520は、上記で説明されたように、栄養がマスク横断して輸送されるが、但しホール520を経由して網膜中心窩に隣接する網膜の場所まで達する放射エネルギー(例えば、光)の透過が実質的に阻止されるように、本体504内に形成される。特に、ホール520は、マスク500と嵌合した眼が視認対象物の方向に向けられた時に、ホール520に進入する前記対象物の画像を伝達する光が、網膜中心窩近傍で終焉する経路に沿ってホールから漏出不能なように形成される。
【0119】
一実施形態では、ホール520の少なくとも1つは、少なくとも1つのホールを経由して前面から後面に光が伝播するのを実質的に阻止する非直線的な経路に沿って延在する。一実施形態では、マスク500は、第1の輸送軸566aに沿って延在する第1のホール部分520aを含み、第2のマスク層514は、第2の輸送軸566bに沿って延在する第2のホール部分520bを含み、及び第3のマスク層515は、第3の輸送軸566cに沿って延在する第3のホール部分520cを含む。第1の輸送軸566a、第2の輸送軸566b、及び第3の輸送軸566cは、好ましくは同一直線上にない。一実施形態では、第1の輸送軸566a及び第2の輸送軸566bは平行であるが、第1の選択された量だけずれている。一実施形態では、第2の輸送軸566b、及び第3の輸送軸566cは平行であるが、第2の選択された量だけずれている。図示された実施形態では、輸送軸566a、輸送軸566b、輸送軸566cのそれぞれは、ホール部分520a、ホール部分520b、ホール部分520cの幅の半分だけずれている。したがって、軸536からホール部分520bの最も外側の端部までの距離と等しいかこれを上回る距離だけ、軸536からホール部分520aの最も内側の端部は隔てられている。この間隔は、光がホール520を経由して前面508から後面512を通過するのを実質的に阻止する。
【0120】
一実施形態では、第1の量及び第2の量は、それを通して光が透過するのを実質的に阻止ように選択される。第1の量及び第2の量のずれは、任意の適するやり方で達成可能である。所望のずれを有するホール部分520a、ホール部分520b、ホール部分520cを形成する1つの技法は、層状構造を設けることである。上記で説明されたように、マスク500には、第1の層510、第2の層514、第3の層515が含まれる。
図44Cは、マスク500は3層で形成可能であることを示す。別の実施形態では、マスク500は3層より多くの層から形成される。より多くの層を設ければ、光がホール490を経由して網膜まで透過する傾向はさらに有利に低減する。これは、患者が、マスク500の視力上の利益を減じるようなパターンを認識する、さもなければ知覚する可能性を低減する利益を有する。さらなる利益として、マスクに形成されたピンホールサイズのアパーチャにより、マスク500を通過する光がさらに減少し、これにより焦点深度の増加が強化されるという点が挙げられる。
【0121】
任意の上記するマスクの実施形態では、しかるべき栄養輸送が得られるように、また有害な光学的効果、例えば上記で説明されたような回折を実質的に阻止するように選択された材料からマスクの本体は形成される。様々な実施形態では、マスクは連続気泡発泡体材料から形成される。別の実施形態では、マスクは膨張した固体材料から形成される。
【0122】
図45B及び
図45Cと関連して上記で説明されたように、様々なランダムパターンのホールが、栄養輸送用として有利に提供される。いくつかの実施形態では、いくつかの側面において不均一な規則的パターンを設けることで十分である。ホールの不均一な側面は任意の適する技術により提供される。
【0123】
1つの技法の第1ステップでは、複数の場所220'が作り出される。場所220'は不均一なパターン又は規則的なパターンを含む一連の座標である。場所220'はランダムに生成される、又は数学的関連性(例えば、固定された間隔、又は数学的に規定可能な量で隔てられた)により関連付けされる。一実施形態では、場所は一定のピッチ又は間隔で隔てられるように選択され、六方充填である。
【0124】
第2ステップでは、複数の場所220'のうちの部分集合をなす場所は、マスクの性能特性を維持するように改変される。性能特性はマスクの性能特性であれば任意である。例えば、性能特性は、マスクの構造的な完全性と関連する。複数の場所220'がランダムに選択される場合には、部分集合をなす場所を改変するプロセスでは、マスク内に得られるホールのパターンは、「擬似ランダム」パターンにさせることができる。
【0125】
第1ステップで六方充填パターンの場所が選択される場合(例えば
図45Aの場所120')には、部分集合をなす場所は、第1ステップで選択されたそれらの場所の初期の位置から移動される。一実施形態では、部分集合をなす場所内の各場所は、ホール間隔の分数部分に等しい量だけ移動される。例えば、部分集合をなす場所内の各場所は、ホール間隔の四分の一に等しい量だけ移動される。部分集合をなす場所が一定量移動される場合には、移動される場所は、好ましくはランダム又は擬似ランダムに選択される。別の実施形態では、部分集合をなす場所はランダム又は擬似ランダムな量だけ移動される。
【0126】
1つの技法では、マスクの外周と前記外周から約0.05mmの選択された半径方向の距離との間に延在する外側周辺領域が規定される。別の実施形態では、マスクのアパーチャと前記アパーチャから約0.05mmの選択された半径方向の距離との間に延在する内側周辺領域が規定される。別の実施形態では、マスクの外周と、選択された半径方向の距離との間に延在する外側周辺領域が規定され、またマスクのアパーチャと、前記アパーチャから選択された半径方向の距離との間に延在する内側周辺領域が規定される。1つの技法では、部分集合をなす場所は、内側周辺領域又は外側周辺領域内に形成されるホールに関連する場所を排除することにより改変される。外側周辺領域及び内側周辺領域のうちの少なくとも1つの中にある場所を排除することにより、前記領域におけるマスクの強度は高まる。いくつかの利点が、内側周辺領域及び外側周辺領域の強度を高めることにより得られる。例えばマスクは、製造期間中又は患者に装着する時に、マスクに損傷を引き起こすさずに取り扱うことがより容易となる。
【0127】
別の実施形態では、部分集合をなす場所は、ホールの間隔を下限値及び/又は上限値と比較することにより改変される。例えば、最小値より接近する2つの場所が存在しないように保証することが望ましいと考えられる。いくつかの実施形態では、これは、隣接したホール同士の間隔に相当する壁の厚さが最低量を下回らないよう保証するのに重要である。上記で説明されたように、間隔の最小値は、一実施形態では約20ミクロンであり、こうして約20ミクロンを下回らない壁の厚さが確保される。
【0128】
別の実施形態では、マスクの光学特性を維持するように、部分集合をなす場所は改変され、及び/又は場所のパターンが増加される。例えば、光学特性は不透明性であり、及び部分集合をなす場所は、マスクの非透過性部分の不透明性を維持するように改変される。別の実施形態では、部分集合をなす場所は、本体の第2の領域内のホール密度と比較して、本体の第1の領域内のホール密度を等しくすることにより改変される。例えば、マスクの非透過性部分の第1の領域及び第2の領域に対応する場所が識別される。一実施形態では、第1の領域及び第2の領域は、実質的に等しい面積の弓状の領域(例えば、ウェッジ)である。場所の第1の面密度(例えば、1インチ角当たりの場所の数)は、第1の領域に対応する場所について計算され、また場所の第2の面密度は、第2の領域に対応する場所について計算される。一実施形態では、少なくとも1つの場所が、第1の面密度と第2の面密度との比較に基づき、第1の領域又は第2の領域のいずれか一方に付加される。別の実施形態では、少なくとも1つの場所が、第1の面密度と第2の面密度との比較に基づき除去される。
【0129】
部分集合をなす場所は、マスクの栄養輸送を維持するように改変される。一実施形態では、部分集合をなす場所はグルコース輸送を維持するように改変される。
【0130】
第3ステップでは、ホールは、マスクの本体内の、改変された、増加された、又は改変されかつ増加された場所のパターンに対応した場所に形成される。ホールは、目に見える回折パターンを発生させることなく、第1の層から第2の層への本来の栄養の流れが実質的に維持されるように構成される。
【0131】
VI. ピンホールアパーチャデバイスを装着する方法
本明細書で説明される様々なマスクが、老眼患者、並びにその他の視力問題を有する患者の視力を改善するために利用可能である。本明細書で説明されるマスクは、擦過、収差、及び角膜内の沈着物の影響を除去するために、LASIK手技と併用して配置可能である。また、本明細書で開示されるマスクは、例えば、網膜の影響を受けていない部分に光線の方向を定め、こうして患者の視力を改善することにより、網膜黄斑変質に罹患した患者を治療するのにも利用可能であると考えられる。どのような治療が検討されようとも、ピンホールアパーチャを有するマスクの中央領域を、患者の視線又は視軸とより正確に位置を合わせることが、患者により大きな臨床的利益をもたらすと考えられる。ピンホールアパーチャを必要としないその他の眼球デバイスも、以下で説明される位置合わせ法から利益を得ることができる。また、眼球デバイスを除去するのに利用可能な様々な構造及び技法も以下で説明される。
【0132】
A. ピンホールアパーチャと患者の視軸との位置合わせ
ピンホールアパーチャ38の中央領域、特にマスク34の光軸39と眼10の視軸との位置合わせは、様々な方法で実現可能である。1つの技法では、光学デバイスは、マスク34を埋め込む手技と関連して視軸を配置するのに、患者からのインプットを利用する。この技法は2004年12月1日出願の米国特許出願第11/000,562号でより詳細に記載されており、同号の全内容を本明細書により参考として本明細書において明示的に援用する。
【0133】
別の実施形態では、システム及び方法は、視線と相互に関連する1つ又は複数の目に見える眼球の特徴を識別する。1つ又は複数の目に見える眼球の特徴は、マスクが目に装着される際に認められる。目に見える眼球の特徴を用いて位置合わせを行うと、マスクが適切に焦点深度を増加させるのを可能にする。いくつかの用途では、治療法は、目に見える眼球の特徴と視線との相互関係を強化して、マスクの軸と視線との一致性を維持または改善する。
【0134】
マスクを正確に位置合わせすれば、マスクの臨床的利益は向上すると考えられる。しかし、マスクの光軸及び患者の視線のいずれも、マスクの埋め込みについて検討される外科手技中に目に見えることは一般的にあり得ない。しかし、マスクの光軸と視線との実質的な位置合わせは、マスクの目に見える特徴を眼の目に見える特徴、例えば目に見える眼球の特徴と一致させることにより実現可能である。本明細書で用いる場合、用語「目に見える眼球の特徴」とは、視聴補助具、例えば外科用の顕微鏡又はルーペを用いて見ることができる特徴の他、肉眼でも目に見える特徴を含む広い用語である。目に見える眼球の特徴を用いて、マスクを配置する精度を高める様々な方法が、下記で説明される。これらの方法は、目に見える眼球の特徴の場所と視線との間の相互関係を強化するように、又は眼球の特徴の視認性を高めるように眼を治療するステップを一般的に含む。
【0135】
図48は、目に見える眼球の特徴を用いてマスクを眼の軸に合わせる1つの方法を示すフローチャートである。この方法には、目に見える眼球の特徴を識別するステップ、目に見える眼球の特徴同士の組み合わせ、又は目に見える眼球の特徴と眼の視線の場所と十分な相互関係を有する光学的効果との組み合わせが含まれる。1つの技法では、入射瞳又はその他の目に見える眼球の特徴が視線の場所を推定するために単独で用いられる。別の技法では、視線の場所は、入射瞳の中央部と第1のプルキンエ像との間、例えば中間に位置するものと推定することができる。その他の推定法は、第1のプルキンエ像、第2のプルキンエ像、第3のプルキンエ像、及び第4のプルキンエ像のうちの2つ以上を組み合わせたものに基づくことができる。その他の推定法は、1つ又は複数のプルキンエ像、及び1つ又は複数のその他の解剖学的な特徴に基づくことができる。別の技法では、視線の場所は、第1のプルキンエ像が入射瞳の中央部に近接して位置する場合には、瞳孔の中央部に位置するものとして推定することができる。単一のプルキンエ像は、プルキンエ像が眼の表面に対して固定された入射角度又は既知の入射角度を有するビームにより生成される場合には、視線の場所を適切に推定することができる。この方法には、以下でさらに説明されるように、目に見える眼球の特徴に位置を合わせる対象となるマスクの目に見える特徴を識別するステップも含まれる。
【0136】
ステップ1000では、好ましくは一時的に、目に見える眼球の特徴に影響を与える又は変更を加えるために、眼が治療される。いくつかの実施形態では、眼球の特徴の場所と眼の視線との相互関係を強化するように、眼の特徴に変更が加えられる。場合によっては、ステップ1000の治療は、眼球の特徴について外科医の視認性を高める。眼球の特徴は、瞳孔等の任意の適する特徴、又は患者の視線と関連性を有する、若しくは関連性を有するように治療により変更を加えることが可能な任意のその他の特徴である。いくつかの技法は、マスクの特徴と瞳孔又は瞳孔の一部との位置合わせに関係する。瞳孔の視認性、又は瞳孔の場所と視線との相互関係を強化する1つの技法は、瞳孔のサイズを操作する、例えば瞳孔のサイズを増加又は低下させるステップと関係する。
【0137】
図48の方法と関連して、眼とピンホールアパーチャを有するマスクとの位置合わせを確認するのに、任意の適する基準が利用可能である。例えば、ピンホールアパーチャの中心を貫通する軸と眼の光軸とが、同一直線上にある又は実質的に同一直線上にあるように、マスクの任意の特徴が、眼上の任意の解剖学的な目印、例えば視線、及び入射瞳の中心を貫通する軸、及び眼球の中心等と位置合わせされるときには、マスクは眼と位置合わせされた状態にあると考えることができる。本明細書で用いる場合、「解剖学的な目印」とは、目に見える眼球の特徴、例えば入射瞳の中心、視線と選択された角膜層との交点、虹彩の内周、虹彩の外周、強膜の内周、虹彩と瞳孔との境界、虹彩と強膜との境界、第1のプルキンエ像の場所、第2のプルキンエ像の場所、第3のプルキンエ像の場所、第4のプルキンエ像の場所、プルキンエ像が任意に組み合わされたときの各像の相対的な位置、プルキンエ像の場所及び任意のその他の解剖学上の目印の組み合わせ、並びに上記特徴又はその他の解剖学的特徴の任意の組み合わせを含む広い用語である。
【0138】
瞳孔サイズは、薬理学的操作及び光操作を含む任意の適する技法により小さくすることができる。瞳孔サイズの薬理学的操作で用いられる1つの薬剤はピロカルピンである。ピロカルピンは、眼に適用された時、瞳孔のサイズを小さくする。ピロカルピンを適用する1つの技法は、効果的な量を眼内に注射することである。瞳孔サイズを小さくするその他の薬剤として、カルバコール、デメカリウム、イソフルロフェート、フィゾスチグミン、アセクリジン、及びエコチオフェートが挙げられる。
【0139】
ピロカルピンは、場合によっては鼻側に瞳孔の場所を変化させることが公知である。これはいくつかの眼球手技、例えば遠見視力の改善を目指した手技の場合、問題となる。しかし、本出願者らは、前記変化により、本明細書に記載するマスクの有効性が顕著に低減することは無いことを発見した。
【0140】
一方、本明細書に記載するマスクと視線との位置合わせは、ピロカルピンを使用することにより、顕著に損なわれるものではないが、瞳孔の鼻側への変化を矯正する任意選択的なステップが実施されてもよい。
【0141】
一変形形態では、ステップ1000の治療は、瞳孔サイズを増加させるステップと関係する。この技法は、マスクの外周近傍の目に見えるマスクの特徴と瞳孔とを位置合わせするのが望ましい場合には、より適すると考えられる。これらの方法は、以下でさらに説明される。
【0142】
上記で説明されたように、ステップ1000の治療は、目に見える眼球の特徴を操作する非薬理学的方法に関係する。1つの非薬理学的技法は、光を使用して瞳孔サイズに変化を引き起こすことに関係する。例えば、瞳孔の収縮を引き起こすために、眼に明るい光が導入される。このアプローチは、いくつかの薬理学的方法と関連して認められた瞳孔の変位を実質的に避けることができる。光は瞳孔サイズを大きくするのにも利用可能である。例えば瞳孔の拡張を引き起こすように、環境光を低減することができる。拡張した瞳孔は、以下で説明するように、マスクの外周に隣接した目に見えるマスクの特徴に位置合わせすることに関連して、いくつかの長所を提供する。
【0143】
ステップ1004では、マスクの目に見える特徴が、ステップ1000に関連して認められた眼球の特徴と位置合わせされる。上記で説明されたように、マスクは、内周、外周、及び前記内周内に位置するピンホールアパーチャを有する。ピンホールアパーチャは、マスク軸上にその中心を有する。上記で説明されたその他の有利なマスクの特徴は、
図48で示した方法により装着されるマスク内に含まれる。例えば、このような特徴として、回折パターンを実質的に取り除くように構成された栄養輸送構造物、隣接する角膜組織内の栄養枯渇を実質的に防止するように構成された構造物、及びその他のマスクと関連して上記で説明された任意のその他のマスクの特徴を挙げることができる。
【0144】
1つの技法は、マスク内周の少なくとも一部分を解剖学的な目印と位置合わせするステップと関係する。例えば、マスクの内周は虹彩の内周と位置合わせすることができる。これは、肉眼又は視聴補助具、例えばルーペ又は外科用の顕微鏡を用いて実現する。マスクは、マスクの内周と虹彩の内周との間で実質的に同一の間隔が設けられるように位置合わせされる。この技法は、上記で説明されたように虹彩を収縮させることにより、容易となる。視聴補助具は、マスクを解剖学的な目印と位置合わせするのにさらに役立つように配置される。例えば、視聴補助具は、外科医がマスクの位置を決定するのに利用可能な複数の同心円状のマーキングを含む。虹彩の内周がマスクの内周よりも小さい場合には、第1の同心円状のマーキングを虹彩の内周と位置合わせすることができ、またマスクは、第2の同心円状のマーキングをマスクの内周と位置合わせするように、位置決定される。この例では、第2の同心円状のマーキングは、第1の同心円状のマーキングよりも共通の中心から遠ざかって位置する。
【0145】
別の技法では、マスクの外周は解剖学的な目印、例えば虹彩の内周と位置合わせされる。この技法は瞳孔の拡張により容易となる。この技法は、上記で説明されたように、複数の同心円状のマーキングを含む視聴補助具の使用により強化される。別の技法では、マスクの外周が、解剖学的な目印、例えば虹彩と強膜との間の境界と位置合わせ可能である。この技法は、視聴補助具、例えば複数の同心円状のマーキングを使用することにより容易となる。
【0146】
別の技法では、マスクは、マスクの内周と虹彩の内周との間に実質的に同一の間隔が設けられるように位置合わせ可能である。この技法では、瞳孔は、好ましくは、瞳孔の直径がピンホールアパーチャの直径よりも小さくなるように収縮される。
【0147】
或いは、適切な位置合わせの視覚的手がかりを提供する人工物が、マスク内に形成可能である。例えば、マスク内に形成された1つ又は複数のウィンドウ部分が存在し、これを通して瞳孔の端部が認識される。前記ウィンドウ部分は透明な目盛りであり、又は少なくとも部分的に不透明な領域であり、これを通して瞳孔が認識される。1つの技法では、外科医は、ピンホールアパーチャのいずれかの側の対応するウィンドウ部分内に瞳孔が認識可能となるまでマスクを移動する。ウィンドウ部分は、外科医が、マスクの非透明なセクションの下に位置する目に見える眼球の特徴をマスクの特徴と位置合わせすることを可能にする。この構成は、極端に瞳孔収縮を行わずに、例えば瞳孔が内周の直径よりも小さいサイズまで十分に収縮していない場合でも、位置合わせを可能にする。
【0148】
好ましくは、眼球の特徴を1つ又は複数の目に見えるマスクの特徴と位置合わせすることにより、マスク軸を眼の視線と実質的に位置合わせされた状態にさせる。マスク軸と眼、例えば眼の視線との「実質的な位置合わせ」(及び類似した用語、例えば「実質的に同一直線」)は、患者の視力がマスクの埋め込みにより改善して初めて達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の5%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の10%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の15%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の20%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の25%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。場合によっては、マスク軸が、視線上に中心を有し、マスク内周の半径の30%以下の半径を有する円内にあるとき、実質的な位置合わせが達成されたということができる。上記で説明されたように、マスク軸と患者の視線とを位置合わせすることにより、マスクの臨床的利益は強化されると考えられる。
【0149】
ステップ1008では、マスクは患者の眼に装着される。好ましくは、マスクが患者の眼に装着されている間、マスクの光軸と患者の視線との位置合わせは維持される。場合によっては、この位置合わせは、マスクの特徴、例えば目に見えるマスクの特徴と、瞳孔の特徴、例えば目に見える瞳孔の特徴との位置合わせを維持することにより、維持される。例えば、1つの技法は、マスクが患者の眼に装着されている間、マスクの内周及び外周のうちの少なくとも一方と瞳孔との位置合わせを維持する。
【0150】
上記で説明されたように、様々な方法がマスクを患者の眼に装着するために利用可能である。マスクを装着する任意の適する技術が、
図48に示す方法と関連して利用可能である。例えば、
図50A〜
図51Cと関連して上記した通り、様々な方法が、マスクを異なる深さで、又は角膜内の異なる層の間に配置するのに利用可能である。特に、1つの技法では、適する深さの角膜皮弁がヒンジ切開される(hinged open)。皮弁の深さは、1つの技法では、角膜の厚さの最外側から約20%である。別の技法では、皮弁の深さは、角膜の厚さの最外側から約10%である。別の技法では、皮弁の深さは、角膜の厚さの最外側から約5%である。別の技法では、皮弁の深さは、角膜の厚さの最外側から約5%〜最外側から約10%の範囲内にある。別の技法では、皮弁の深さは、角膜の厚さの最外側から約5%〜最外側から約20%の範囲内にある。その他の深さ及び範囲がその他の方法で可能である。
【0151】
その後、1つの技法では、マスクは、マスク内周及び外周のうちの少なくとも一方が、瞳孔に対して選択された位置にあるように、角膜の層の上に配置される。この技法に関する変形形態では、マスクのその他の特徴を、その他の眼球の特徴と位置合わせしてもよい。その後、反転した角膜皮弁はマスク上に配置される。
【0152】
マスクを装着するさらなる技法が、
図52A〜
図53と関連して上記で説明されている。これらの方法は、目に見える特徴を用いて位置合わせすることに関連して利用するために改変される。これらの方法は、マスクが眼から持ち上げられた角膜層上に初期に配置されることを可能にする。持ち上げられた角膜層上にマスクを初期に配置する場合、それは目に見える眼球の特徴を目に見えるマスク特徴と位置合わせする前であっても、また後であってもよい。いくつかの技法では、持ち上げられた角膜層上にマスクを初期に配置する前後で、一次及び二次の位置合わせステップが実施される。
【0153】
上記方法の多くのさらなる変形形態も可能である。目に見える特徴を位置合わせするステップに関係する位置合わせ方法は、患者の視線を光学的に配置するステップと関連して上記で説明された任意の技法と併用される。1つの技法は、上皮シートを除去するステップ、及びボーマン膜内又は角膜実質内にくぼみを形成するステップに関係する。また、マスクは、角膜内に形成されるチャンネル内、例えば角膜実質の最上層内又は近傍にも配置可能である。角膜を調製する別の有用な技法は、角膜内にポケットを形成することに関係する。角膜の調製に関連するこれらの方法は、上記でかなり詳細に記載されている。
【0154】
いくつかの技法は、皮弁が治癒するまで皮弁上に一時的な術後の被覆物、例えばコンタクトレンズ又はその他の被覆物を配置することから利益を得ることができる。1つの技法では、上皮シートがマスクに接着する、又は露出した層、例えばボーマン膜上に増殖するまで、被覆物が皮弁上に配置される。
【0155】
B. マスクを装着する方法
眼10の視軸、又はその場所を示す目に見える眼球の特徴を配置する方法、及び視軸を可視的にマーキングする方法を記載してきたが、マスクを眼に装着する様々な方法が説明される。
【0156】
図49は、患者の焦点深度を増加させる対象としてふさわしいかどうか患者をスクリーニングする1つの技法を示す。このプロセスは、ステップ1100より始まり、同ステップでは、患者にソフトコンタクトレンズが装着される、すなわち患者の眼それぞれにソフトコンタクトレンズが配置される。必要であれば、ソフトコンタクトレンズには、視力矯正が含まれてもよい。次に、ステップ1110では、患者の眼のそれぞれの視軸が上記したように配置される。ステップ1120では、マスク、例えば上記した任意のマスクが、マスクのアパーチャの光軸が眼の視軸と位置合わせされるように、ソフトコンタクトレンズ上に配置される。この配置では、マスクは患者の瞳孔と一般的に同心円となるように位置する。さらに、マスクの曲率は、患者の角膜の曲率と平行であるべきである。このプロセスはステップ1130に継続し、同ステップでは、患者は第2の1組のソフトコンタクトレンズが装着される、すなわち第2のソフトコンタクトレンズが患者の眼それぞれの中にあるマスク上に配置される。第2のコンタクトレンズは、実質的に一定の位置でマスクを保持する。最後に、ステップ1140では、患者の視力が試験される。試験期間中、マスクのアパーチャの光軸が眼の視軸と実質的に同一直線上に位置することを保証するために、マスクの位置をチェックするように推奨される。試験のさらなる詳細情報は、2003年4月29日発行の米国特許第6,551,424号に記載されており、そのまま本明細書において参考として援用する。
【0157】
本発明のなおもさらなる実施形態に基づき、マスクは、患者の焦点深度を増加する対象としてふさわしい患者の眼の中に外科的に埋め込まれる。例えば患者は、上記で説明されたように、老眼に罹患している可能性がある。マスクは本明細書に記載するマスク、先行技術に記載するマスクに類似したマスク、又はこれらの特性の1つ又は複数を組み合わせたマスクである。さらに、マスクは視覚的収差を矯正するように構成される。外科医が、マスクを患者の眼の中に外科的に埋め込むのに役立つように、マスクは埋め込みを容易にするために事前に丸められ又は折りたたまれてもよい。
【0158】
マスクは、いくつかの場所に埋め込まれる。例えば、マスクは、角膜の上皮シートの下、角膜のボーマン膜の下、角膜の実質の最上層内、又は角膜の実質内に埋めこまれる。マスクが角膜の上皮シートの下に配置される場合、マスクを除去する際には角膜の上皮シートを除去しさえすればよい。
【0159】
図50a〜
図50cは上皮シート1210の下に挿入されたマスク1200を示す。この実施形態では、外科医は、上皮シート1210を最初に除去する。例えば
図50aに示す通り、上皮シート1210は、めくり返すことができる。次に、
図50bに示す通り、外科医は、眼の視軸に対応して、ボーマン膜420内にくぼみ1215を形成する。眼の視軸は、上記のように位置することができ、また位置合わせ用具1200又はその他の類似した用具を使用することにより目印を付けることができる。くぼみ1215は、角膜実質1240の最上層1230を露出させ、またマスク1200を収容することの両方を実施するに十分な深さと幅を有するものであるべきである。次にマスク1200は、くぼみ1215内に配置される。くぼみ1215は、患者の眼の視軸に対応する位置に位置するので、マスク1200のピンホールアパーチャの中心軸は、眼の視軸と実質的に同一直線上に位置する。これは、マスク1200を用いて可能な最大の視力改善をもたらす。最後に、上皮シート1210は、マスク1200上に配置される。経時すると共に、
図50cに示す通り、上皮シート1210は増殖し、角膜実質1240の最上層1230、並びに、当然ながら、マスク1200の組成に応じてマスク1200と接着する。必要に応じて、マスクを保護するために、コンタクトレンズが切開された角膜上に配置される。
【0160】
図51a〜
図51cは、眼のボーマン膜1320の下に挿入されたマスク1300を示す。この実施形態では、
図51aに示す通り、外科医は最初にボーマン膜1320をヒンジ切開する。次に、
図51bに示す通り、外科医は、眼の視軸に対応してくぼみ1315を角膜実質1340の最上層1300に形成する。眼の視軸は上記のように位置するが、また任意の適する技法、例えば目に見える眼球の特徴を用いる技法、又は患者からのインプット利用する技法により目印を付けることができる。くぼみ1315は、マスク1300を収容するのに十分な深さ及び幅を有するものであるべきである。次に、マスク1300は、くぼみ1315内に配置される。くぼみ1315は、患者の眼の視軸に対応する位置に位置するので、マスク1300のピンホールアパーチャの中心軸は、眼の視軸と実質的に同一直線上に位置する。これは、マスク1300を用いて可能な最大の視力改善をもたらす。最後に、ボーマン膜1320はマスク1300上に配置される。経時すると共に、
図51cに示す通り、上皮シート1310はボーマン膜1320の切開部位上で増殖する。必要に応じて、マスクを保護するために、コンタクトレンズが切開された角膜上に配置される。
【0161】
別の実施形態では、十分な薄さ、すなわち実質的に20ミクロン未満のマスクが上皮シート1210の下に配置される。別の実施形態では、厚さ約20ミクロン未満を有するマスク又はオプティックが、角膜実質の最上層内にくぼみを形成せずにボーマン膜1320の下に配置される。
【0162】
マスクを患者の眼の中に外科的に埋め込む別の方法では、マスクは、角膜実質の最上層内に形成されたチャンネル内に縫いこまれる。この方法では、湾曲したチャンネル形成ツール(channeling tool)が角膜実質の最上層内にチャンネルを形成し、前記チャンネルは角膜表面と平行する平面内に位置する。チャンネルは眼の視軸に対応する位置に形成される。チャンネル形成ツールは、角膜表面を貫通する、また別の方法では小さい表在性の放射状切開(superficial radial incision)を経由して挿入される。別の方法では、アブレーションビーム(ablative beam)を生成するレーザーが角膜実質の最上層にチャンネルを形成する。この実施形態では、マスクは裂け目を有する単一のセグメントであっても、または2つ以上のセグメントであってもよい。いずれにしても、この実施形態におけるマスクは、チャンネル内に配置され、こうしてマスクにより形成されるピンホールアパーチャの中心軸が患者の視軸と実質的に同一直線上に位置して患者の焦点深度に最大の改善がもたらされるように配置される。
【0163】
患者の眼にマスクを外科的に埋め込む別の代替法では、マスクは角膜実質の最上層内に注入される。この実施形態では、ストップ機構を備えた注入ツールが、規定された深さまで角膜表面を貫通する。例えば、注入ツールは、1回の注入でマスクを形成する能力を有するリング状の複数の針である。別の方法では、チャンネルは、患者の視軸に対応する位置内にある角膜実質の最上層内にまず形成される。次に、注入ツールは、マスクをチャンネル内に注入する。この実施形態では、マスクは顔料であり、生体適合性媒体中に懸濁された顔料系の材料の断片である。顔料材料は、ポリマーから、又は別の方法では縫合材料から作製可能である。いずれにしても、チャンネル内に注入されるマスクは、こうして顔料材料により形成されるピンホールアパーチャの中心軸が患者の視軸と実質的に同一直線上に位置するように配置される。
【0164】
マスクを患者の眼内に外科的に埋め込む別の方法では、マスクは角膜切除術中に、角膜の最外側から20%がヒンジ切開されるときに形成された角膜皮弁の下に配置される。上記で説明された埋め込み方法と同様に、角膜切除術中に形成された角膜皮弁の下に配置されるマスクは、上記で説明されたように、最大の効果を得るために患者の視軸と実質的に位置合わせされるべきである。
【0165】
マスクを患者の眼内に外科的に埋め込む別の方法では、マスクは患者の視軸と位置合わせされ、角膜の実質内に形成されたポケット内に配置される。
【0166】
位置合わせ用具に関するさらに詳細な情報は、2004年5月26日出願の米国特許出願第10/854,032号に開示されており、同号をそのまま本明細書において参考として援用する。位置合わせ又はその他の目的のための薬理学的操作が関係する技法に関するさらなる変形形態は、2005年10月24日出願の米国特許出願第11/257,505号で説明されており、同号をそのまま本明細書により参考として本明細書において援用する。
【0167】
VII. 患者を治療するさらなる方法
上記で説明されたように、様々な方法が、本明細書で開示されるようなマスクを眼に装着することにより、患者を治療するのに特に適する。例えば、いくつかの技法では、外科医のための映像形態の可視的な手がかりが、マスクを装着する手技の実施中に提供される。さらに、患者を治療するいくつかの技法は、目印が付けられた参照ポイントの助けを借りてインプラントの位置決めするステップと関係する。これらの方法は、
図52〜
図53Bにより図示されている。
【0168】
1つの方法では、患者は、角膜1404内にインプラント1400を配置することにより治療される。角膜皮弁1408は角膜1404の表面(例えば、角膜内表面)を露出するように持ち上げられる。任意の適するツール又は技法が、角膜1404の表面が露出するように角膜皮弁1408を持ち上げるのに利用可能である。例えば、ブレード(例えば、マイクロケラトーム)、レーザー、又は電気外科用ツールが角膜皮弁を形成するのに用いられる。角膜1404上の参照ポイント1412が識別される。参照ポイント1412には、以下でさらに説明されるように、1つの技法では、その後目印が付けられる。インプラント1400は角膜内表面上に配置される。一実施形態では、皮弁1408は、次にインプラント1400の少なくとも一部分を被覆するように閉鎖される。
【0169】
露出する角膜の表面は、1つの技法では角膜実質表面である。角膜実質表面は、角膜皮弁1408上にあり、又は角膜皮弁1408が除去されるところの露出表面上である。
【0170】
参照ポイント1412は、任意の適する方式で識別可能である。例えば、位置合わせ用デバイス及び上記方法が、参照ポイント1412を識別するのに利用可能である。1つの技法では、参照ポイント1412を識別するステップは、光のスポット(例えば、可視光、例えば赤色光に対応する放射エネルギーのすべて又は区分された部分により形成される光のスポット)を照射するステップと関係する。上記で説明されたように、参照ポイントを識別するステップは、角膜内表面上に液体(例えば、フルオレセイン色素又はその他の色素)を配置するステップをさらに含む。好ましくは、参照ポイント1412を識別するステップは、本明細書に記載する任意の方法を用いた位置合わせと関係する。
【0171】
上記で説明されたように、識別された参照ポイントに目印を付けるのに様々な技法が利用可能である。1つの技法では、参照ポイントには、色素を角膜に適用すること、さもなければ公知の反射特性を有する材料を角膜上に塗布することにより目印が付けられる。上記で説明されたように、色素は、放射エネルギーと相互作用して、目印を付けた標的の視認性又はその他の可視的な手がかりを増大させる物質である。参照ポイントには、任意の適するツールを用いて色素により目印を付けることができる。ツールは、これが角膜層、例えば上皮の前層に侵入するように、また一実施形態では、薄いインクのラインを角膜層内に導入するように構成される。ツールは上皮に侵入するために鋭利にさせることができる。1つの用途では、上記で説明されたように、ツールは、眼に対して軽く圧迫されたときに色素を送達するように構成される。この構成は、より大きな痕跡を眼に形成しないという点で有利である。別の技法では、参照ポイントには、色素の送達をさらに追加して、またはしないで角膜の表面上に痕跡(例えば、物理的くぼみ)を形成することにより目印を付けることができる。別の技法では、参照ポイントには、光又はその他の放射エネルギー源、例えばマーキングターゲット照明器具(marking target illuminator)を照射し、その光を角膜上に投影することにより(例えば、マーキングターゲットを投影することにより)目印を付けることができる。
【0172】
参照ポイントに目印を付ける任意の上記技法は、眼の軸の場所、例えば眼の視軸又は視線を示す目印を作る技法と組み合わせることができる。1つの技法では、目印は視軸と角膜の表面との交点近傍を示す。別の技法では、目印は、視軸と角膜の表面との交点付近に、ほぼ放射状に、対称的に配置せしめられる。
【0173】
上記で説明されたように、いくつかの技法は、角膜内表面上に目印を付けるステップに関係する。目印は、任意の適する技法により作成可能である。1つの技法では、目印は角膜内表面に対して器具を圧迫することにより作成される。前記器具は、マスクの留置を容易にするサイズ及び形状を有するくぼみを形成することができる。例えば、1つの形態では、器具は、埋め込まれるマスクの外径よりもわずかに大きい直径を有する円形のリング(例えば、色素の細い線、若しくは物理的くぼみ、又は両方)を形成するように構成される。円形のリングは、約4mm〜約5mmの直径を有するように形成可能である。角膜内表面は、1つの技法では、角膜皮弁1408上にある。別の技法では、角膜内表面は、皮弁が除去されて露出した角膜の表面上にある。この露出した表面は、組織床と呼ばれることもある。
【0174】
別の技法では、角膜皮弁1408は持ち上げられ、その後角膜1404の隣接表面1416上に置かれる。別の技法では、角膜皮弁1408は、除去可能な支持体1420、例えばスポンジ上に置かれる。1つの技法では、除去可能な支持体は、角膜皮弁1408の本来の曲率を維持するように構成された表面1424を有する。
【0175】
図52は、目印が付けられた参照ポイント1412が角膜内表面でインプラントの位置を決めるのに役立つことを示す。特に、目印が付けられた参照ポイント1412は、インプラントが眼の視軸に対応して位置決定されるのを可能にする。図示された実施形態では、インプラント1400は、M
CLとして示すインプラントの中心線が、目印が付けられた参照ポイント1412を通過して延在するように位置決定される。
【0176】
図52Aは、参照1412'がリング又はその他の二次元の目印である別の技法を示す。この場合、インプラント1400は、インプラントの外端部とリングとが対応関係にある、例えばリング及びインプラント1400が同一又は実質的に同一の中心を共有するように配置される。好ましくは、リング及びインプラント1400は、上記で説明されたように、インプラントの中心線M
CLが眼の視軸上にあるように位置合わせされる。図示上の技法としてリングを破線で示すが、これは角膜皮弁1408の前面上に形成される。
【0177】
1つの技法では、角膜皮弁1408は、角膜皮弁1408を、角膜皮弁1408上のインプラント1400と共に角膜1404に戻すことにより閉鎖される。別の技法では、角膜皮弁1408は、以前は組織床(露出した角膜内表面)上に配置されていた角膜皮弁1408を、インプラント1400を覆うように角膜1404に戻すことにより閉鎖される。
【0178】
角膜内表面が角膜実質表面であるとき、インプラント1400は角膜実質表面上に配置される。インプラント1400の少なくとも一部分が被覆される。いくつかの技法では、インプラント1400は、角膜実質表面を被覆するように、皮弁を、その上のインプラント1400と共に角膜1404に戻すことによって被覆される。1つの技法では、角膜実質表面が、上皮層を持ち上げることにより露出されて、角膜実質が露出する。別の技法では、角膜実質表面が、上皮層を除去することにより露出されて、角膜実質が露出する。いくつかの技法では、上皮層を置換する追加ステップが、少なくとも部分的にインプラント1400を被覆するために実施される。
【0179】
皮弁1408が、インプラント1400の少なくとも一部分を被覆するために閉鎖された後、インプラント1400は、いくつかの用途で、ある程度、再配置可能である。1つの技法では、参照ポイント1412と位置が合うようにインプラントを移動させるために、インプラント1400に圧力が加えられる。圧力はインプラント1400の端部近傍(例えば、直上、インプラント1400の外周投影部の外側上部、又はインプラント1400外周投影部の内側上部)の角膜1404の前面に付加される。こうすることで、圧力が付加される近傍の端部からインプラントをわずかに遠方に移動させることができる。別の技法では、圧力はインプラントに直接加えられる。参照ポイント1412が皮弁1408上に目印が付けられていた場合、又は参照ポイント1412が組織床に目印が付けられていた場合には、インプラント1400はこの方式で再配置可能である。好ましくは、加圧は、薄いツールを皮弁下に、又はポケット内に挿入することにより、及び直接インレイを移動することにより実現される。
【0180】
図53は、患者は、角膜1504内、例えば角膜ポケット1508内にインプラント1500を配置する方法によっても治療されることを示す。任意の適するツール又は技法が、角膜ポケット1508を作製又は形成するのに利用可能である。例えば、ブレード(例えば、マイクロケラトーム)、レーザー、又は電気外科用器具が、角膜1504にポケットを作製又は形成するために用いられる。参照ポイント1512は、角膜1504上に認められる。参照ポイントは、任意の適する技法、例えば本明細書で説明される技法により識別可能である。参照ポイント1512は、任意の適する技法、例えば本明細書で説明される技法により目印が付けられる。角膜ポケット1508は、角膜内表面1516を露出させるために作製される。角膜ポケット1508は、任意の適する深さ、例えば角膜1504の前面から約50ミクロン〜約300ミクロンの範囲内の深さで作製される。インプラント1500は、角膜内表面1516上に配置される。目印が付けられた参照ポイント1512は、角膜内表面1516上でインプラント1500を位置決めするのに役立つ。目印が付けられた参照ポイント1512は、上記で説明されたように、インプラント1500が眼の視軸に対応して位置決定されるのを可能にする。図示された実施形態では、インプラント1500は、インプラント1500の中心線M
CLが、目印が付けられた参照ポイント1512を通過して、又はこれと隣接して延在するように配置される。
【0181】
図53Aは、参照1512'がリング又はその他の二次元の目印である別の技法を示す。そのような場合、インプラント1500は、インプラントの外端部とリングが対応関係にある、例えばリング及びインプラント1500が、同一の又は実質的に同一の中心を共有するように配置される。好ましくは、リング及びインプラント1500は、上記で説明されたように、インプラントの中心線M
CLが眼の視線上にあるように位置合わせされる。図示的な実施形態であるので、リングは実線で示されているが、これはポケット1508の上にある角膜1504の前面上に形成される。
【0182】
インプラント1500がポケット1508内に配置された後、インプラント1500は、いくつかの用途である程度再配置することができる。1つの技法では、参照ポイント1512と位置が合うようにインプラントを移動させるために、インプラント1500に圧力が加えられる。圧力は、インプラント1500の端部近傍(例えば、直上、インプラント1500外周投影部の外側上部、又はインプラント1500外周投影部の内側上部)の角膜1504の前面に付加される。こうすることで、圧力が付加される端部からインプラント1500をわずかに遠方に移動させることができる。別の技法では、圧力はインプラント1500に直接付加される。
【0183】
VIII. 眼にみえる回折パターンを低減し、栄養輸送を提供するように構成されたさらなるマスク
栄養輸送を提供するために角膜インレイを穿孔するステップは、光もホールを通過してしまうという点で不利益を有する。光の透過は、条件によっては、インレイの光学性能を劣化させる程度にまで円環の不透明性を低下させる。遠見視力の場合、薄暗い光の条件では、円環を経由する光の透過量が増やせば、網膜の照度が増すことによって全体的な光学性能を向上させることができる。前記光は、薄暗い条件において遠見視力に役立つが、一方、近見視力の質を低下させるおそれがある。したがって、栄養の透過量を増強しつつ、光の透過量を制限するのが望ましい。
【0184】
本発明者らは、角膜を経由する栄養輸送は概して後方から前方の方向であるが、また栄養はインレイの端部付近を横方向に流動することに気付いた。栄養の横方向の流れは、例えば濃度勾配により促進される。したがって、不浸透性のバリアが角膜のごく一部分に配置されたとしても、バリア上の組織は横方向の拡散から利益を得るが、また横方向の拡散がない場合と比較して、それほどに栄養が枯渇した状態にはならない。角膜組織領域が栄養バリアの端部に近づくほど、この組織が栄養枯渇となるリスクは低減する。したがって、インレイは、端部近傍の場所では、端部から遠ざかった場所と比較して、それほど多くの穿孔を有する必要はない。反対に、枯渇は栄養バリアの中央部で最大となる。したがって、栄養バリアの中央領域では栄養の横方向の流れは比較的低めであり、これを補うために、前記栄養バリアの中央部近傍の空隙率を増加させることには利点がある。したがって、インレイは、角膜の健全性を維持するように最適化可能である。
【0185】
全体的に光の透過がより少ないホールパターンであるが、インレイの栄養遮断構造の中央領域に向かって増加する空隙率の勾配を形成することにより、栄養輸送が最も必要とされる場所により良好な栄養輸送を提供するホールパターンを設計することが可能である。例えば、空隙率の勾配がインレイの円環の端部で最低となり、かつ中央セクションで最大となる構成が提供可能である。空隙率を増加させるステップはいくつかの方法で実現可能である。例えば、
図55は、空隙率を提供するホール3102を備えた円環状の角膜インレイ3100を示しているが、ホール3102は一般的にランダムに配置されており、ホール3102は円環全体にわたり実質的に同一の直径を有する。このパターンは、いくつかの実施形態では、円環の中央領域に向かってより多くのホールを有するように改変される。中央領域に向かってホールの数は増加するが、いくつかの実施形態では、ホールが目に見える回折パターン又はその他の光学的有害効果を生成するのを阻止するために、ホールの配置は一般的にランダムに維持される。
【0186】
上記セクションVで記載したように、目に見える回折パターン、さもなければアパーチャ又は開口部を備えたマスクにより提供される視力の改善を低減するパターンを生成するホールの傾向を抑制するように、複数のホールの少なくとも1つの側面が異なる、その他の実施形態が提供される。例えば、一実施形態では、少なくとも相当な数のホールのホールサイズ、形状、及び方向は、ランダムに変化する、さもなければ不均一である。またマスクは、複数のホールのホールサイズ、形状、方向、及び間隔のうち少なくとも1つは、目に見える回折パターンを発生させるホールの傾向を抑制するように変更が加えられるという点においても特徴付けられる。特定の実施形態では、目に見える回折パターンを発生させるホールの傾向は、第1のホールサイズ、形状、又は間隔を有する複数のホール、及び少なくとも前記第1のホールサイズ、形状、又は間隔とは異なる第2のホールサイズ、形状、又は間隔を備える別の複数のホールを有することにより抑制される。その他の実施形態では、マスクは、目に見える回折パターンを発生させるホールの傾向を抑制するために、複数あるホールのうち相当な数のホールのホールサイズ、形状、方向、及び間隔のうち少なくとも1つが、少なくとも別の複数あるホールのうち相当な数のホールのホールサイズ、形状、方向、及び間隔のうち少なくとも1つのとは異なるという点において特徴付けられる。さらなる実施形態では、ホールは不規則な場所に配置される。例えば、ホールは、ホールを経由する光の透過に起因する目に見える有害効果の発生を最低限に抑えるように不規則な場所に配置される。
【0187】
図56は、栄養輸送のために空隙率を提供するホールを備えた円環状の角膜インレイを示し、ホールは一般的にランダムに配置されている。
図56の実施形態のホールでは、その直径は円環全体にわたり実質的に同一でない。むしろ、マスクの領域が異なれば、ホールの直径も異なる。例えば、以下でより詳細に説明されるように、ホールは、中央領域に向かってインレイの空隙率が高まるように、インレイの内円周及び外円周近傍よりもインレイの中央領域においてより大きな直径を有する。栄養の流れについて最適化されたさらなるホールパターン及び構成は、米国特許第7,628,810号、米国特許公表第2006-0113054号、及び米国特許公表第2006-0265058号で説明されており、各号をそのまま本明細書により参考として援用する。
【0188】
図55に示すマスクは、実質的に同一サイズのホールによる不規則なホールパターンを有する。一実施形態では、ホールは約10ミクロンの直径を有する。
図56に示すマスクの実施形態は、不規則なホールパターンを有する。マスクには、マスクの内周と隣接した(例えば、直接隣接した)内側周辺領域、マスクの外周と隣接した(例えば、直接隣接した)外側周辺領域、及び内周領域(inner periphery region)と外周領域(outer periphery region)との間の複数の円環状のバンドが含まれる。バンドは、内周領域又は外周領域のうちの少なくとも一方から円環の中央部分に向かって一般的に増加する空隙率が存在するように改変可能である。例えば、1つの構成では、ホールのサイズが、円環の中心からより遠くにあるバンド内よりも、円環の中心により近いバンド内でより大きくなるように、固定数のホールが各バンド内に位置する。
【0189】
図57は、アパーチャ又は開口部3002を備えた本体3004を含む、マスク3000の実施形態を示す。本体3004には、本体3004の外周3012と内周3014との間にホール領域3010が含まれる。ホール領域3010には栄養輸送構造物3030が含まれる。単純化するために栄養輸送構造物3030の一部分のみを示す。ホール領域3010は、さらに2つのサブ領域を含むが、各サブ領域には複数のホールが含まれる。各サブ領域は、別のサブ領域の少なくとも1つの特性とは異なる少なくとも1つの特性を有する。例えば、サブ領域の特性として平均(average)又は平均(mean)ホールサイズ(半径、直径、面積、周囲等)、単位面積当たりのホール数(例えば、ホール密度)、単位面積当たりのホール面積(例えば、ホールを含むサブ領域面積の割合(%))、ホールの形状、ホール同士の間隔、光透過率(%)、栄養枯渇の割合(%)、栄養輸送率(例えば、単位面積当たりの栄養輸送率)、又は空隙率を挙げることができる。
図57は、内部領域3020、外部領域3022、及び内部領域3020と外部領域3022との間の中央領域3024を含む3つのサブ領域を備えた一実施形態を示す。内部領域3020は、内周3014と選択された第1の円周3026との間に位置し、外部領域3022は外周2012と選択された第2の円周3028との間に位置し、及び中央領域は選択された第1の円周3026と選択された第2の円周3028との間に位置する。サブ領域のそれぞれは、別のサブ領域の面積と同一又は異なる面積を有する。例えば各サブ領域は、アパーチャの中心から半径方向に均等に間隔が置かれても、また置かれなくてもよい。特定の実施形態では、各サブ領域は円環状のバンドである。
【0190】
これまでに説明されたように、本体3004には、実質的にホールを欠いている内側周辺領域3008及び/又は外側周辺領域3006も含まれる。内側周辺領域3008は、内周3014と選択された内円周3018との間に延在可能であり、また外側周辺領域3006は、外周3012と選択された外円周3016との間に延在可能である。
【0191】
栄養の枯渇は、円環の中央近傍(例えば、外周3012と内周3014との間のほぼ中央)で最大となる。したがって、円環の中央近傍のマスク3000を経由する栄養輸送を可能にするホール面積又は空隙率がより高ければ、マスク3000により引き起こされる栄養枯渇を低減することができる。特定の実施形態では、中央領域3024は、内部領域3020及び/又は外部領域3022よりも高い栄養輸送能力を有する。例えば、中央領域3024は中央面積(central area)を有し、中央領域3024内の複数のホールは、中央面積のうち第1の割合(%)を占める。同様に、内部領域3020は内部面積(inner area)を有し、内部領域3020内の複数のホールは、内部面積のうち第2の割合(%)を占めることができ、また外部領域3022は外部面積(outer area)を有し、外部領域3022内の複数のホールは外部面積のうち第3の割合(%)を占めることができる。第1の割合(%)は、第2の割合(%)及び/又は第3の割合(%)を上回ることができる。別の例では、中央領域3024は第1の空隙率を含むことができ、内部領域3020は第2の空隙率を含むことができ、外部領域3024は第3の空隙率を含むことができ、第1の空隙率は第2の空隙率及び/又は第3の空隙率を上回る。換言すれば、中央領域3024、内部領域3020、及び外部領域3022は、マスク3000を経由する栄養輸送を改善する栄養輸送特性を含む。中央領域3024は、第1の栄養輸送特性値を含むことができ、内部領域3020は、第2の栄養輸送特性値を含むことができ、外部領域3022は、第3の栄養輸送特性値を含むことができ、第1の栄養輸送特性値は、第2及び/又は第3の栄養輸送特性値を上回ることができる。栄養輸送特性は、例えば空隙率、ホールの割合(%)、ホールサイズ、単位面積当たりのホール数、又は栄養輸送率である。
【0192】
サブ領域の位置は様々な構成をとることができる。特定の実施形態では、中央領域は、内周からマスクの円環状の幅の約10〜約90%の間に位置する。さらなる実施形態では、中央領域は、内周からマスクの円環状の幅の約20〜約60%の間、約30〜約50%の間、又は約30〜40%の間に位置する。
【0193】
ホール領域3010は、上記した3つの領域(例えば、内部、外部、及び中央の領域)よりも多くの領域を含む。ホール領域3010は、2つから無限大までの任意数の領域を含む。例えば、ホール領域3010では、マスク本体3004全体にわたり半径方向に、1つの又は複数の特性が徐々に変化するが、段階的に変化しなくてもよい。一実施形態では、空隙率は、内周から外周に向かって半径方向に増加し、次に低下する。例えば、空隙率は、内周又はその近傍では実質的に0であり、最大空隙率まで徐々に増加し、次に徐々に低下して外周又はその近傍では実質的に0である。
【0194】
一構成では、
図56に示すように、10個の円環状のバンドが内周領域と外周領域との間に配置される。10個の円環状のバンドの第1のバンドは内周領域に隣接(例えば、直接隣接)し、第2のバンドは第1のバンドに隣接し、以下同様である。第10番目のバンドは外周領域に隣接する。各バンドは、一実施形態では840個のホール含む。内周領域及び外周領域は任意の適する形態をとるが、好ましくはホールを全く含まない。内周領域及び外周領域のサイズの半径方向の幅は、任意の適する幅であり、例えばインレイの機械的完全性が維持されるように、又はユーザーによる操作性が提供されるように最適化される。一実施形態では、内周領域及び外周領域は約50ミクロンの幅である。いくつかの実施形態では、内周領域及び外周領域のうちの1つのみが提供される。換言すれば、ホールを備えたバンドの1つが内周又は外周に位置することができる。
【0195】
一実施形態が、表1にさらに記載される。バンドのそれぞれは、表1に示すように、バンド幅、バンドを経由する光透過率(%)、及びバンド内のホールのホール直径を有する。表1の実施形態では、バンドは等しい面積を有するものとして構成され、したがってインレイの内周から遠ざかるに従い幅は徐々に減少する。しかし、円環状のバンドは、いくつかの実施形態では、内周と外周との間において異なる面積で提供される。
【0197】
いくつかの実施形態では、インレイの光遮断部分の中央部分(例えば、円環の中線)は、横方向の栄養流出源から最も遠い。このような実施形態では、中央部分又はその近傍で最大の空隙率を有する部分(例えば、バンド)を配置するのが望ましいと考えられる。その他の実施形態では、ピーク空隙率は円環の中線と内周との間に位置する。小型のアパーチャインレイのいくつかの用途では、インレイの内周に位置するアパーチャから拡散し、円環の前方及び/又は後方にあるの角膜組織を経由して外側に伝播する横方向の流れは、組織から半径方向に外周の外側に向かって拡散し、円環の前方及び/又は後方にある角膜組織を経由して内側に伝播する横方向の流れよりも少ないと予想される。一実施形態では、ピーク空隙率の場所は、内周からインレイの円環が有する幅の約40%以内にある。このような構成では、栄養流動構造物(nutrient flow structure)から円環の内側部分の前方及び/又は後方にある組織への総合的な栄養の流れの方が、円環の外側部分に隣接した類似組織への同様の流れよりも高い効率(%)が得られる。
【0198】
表1に記載する
図56のインレイの実施形態では、モデル化された平均光透過率は約5%である。
図55のインレイの実施形態では、モデル化された平均光透過率は約6.75%である。
図55及び
図56のインレイは、0.8mmの内径(例えば、直径1.6mmのアパーチャ)、及び1.9mmの外径(例えば、アパーチャの中心からインレイの外周までの半径方向の距離)を有する。
【0199】
図58は角膜内のモデル化されたグルコースの枯渇に関する比較を示し、同図では
図55及び
図56のインレイが、インレイ又はアパーチャの中心から半径方向の距離の関数として埋め込まれている。
図58は、ヒト角膜におけるグルコース輸送の有限要素モデルから得られた。
図55及び
図56のインレイは、半径方向の距離が0.8mmの内周から半径方向の距離が1.9mmの外周まで延在する。
図58にプロットされているアパーチャの中心から半径方向の距離は、0mm(例えば、アパーチャの中心)で始まり、1.9mmを超えたところ(例えば、インレイの外周よりも大きい値)に至る。
図58から、空隙率が増加、この図の場合には円環中線近傍のホールサイズを大きくすることにより空隙率が増加すれば、グルコースの枯渇が低減するのは明白である。特に
図58は、
図56の実施形態はグルコースの枯渇を抑制し、同時に全体的な空隙率又はホール密度を6.75%から5%に低減することを示している。
図55のマスクと比較して
図56のマスクの光透過量は低下しており、それはマスクにより生み出される視力を改善する。したがって、
図55のマスクと比較して、
図56のマスクは栄養輸送と視力の両方を有利に改善した。
【0200】
様々な実施形態が上記のように記載された。本発明は、これらの具体的な実施形態を参照しながら記載されているが、記載内容は説明を目的とするように意図されており、限定を意図するものではない。当技術分野の技術者ならば、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正や応用例を思いつくであろう。