特許第6030459号(P6030459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030459
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車両の操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20161114BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161114BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20161114BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D117:00
   B62D119:00
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-10764(P2013-10764)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141173(P2014-141173A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 悟
(72)【発明者】
【氏名】山野 尚紀
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−068777(JP,A)
【文献】 特開2008−018911(JP,A)
【文献】 特許第4969368(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0233181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10、117/00、119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵ハンドルの回動操作に対してアシスト力を付与する電動モータと、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って変化する複数の物理量のうち少なくとも前記操舵ハンドルを含む操舵系にて発生するトルク値と角速度とをそれぞれ検出するトルクセンサ及び角速度センサを含む複数のセンサと、少なくとも前記トルクセンサによって検出された前記トルク値及び前記角速度センサによって検出された前記角速度を用いて前記操舵ハンドルの回動操作に対するアシスト制御量を演算し、この演算したアシスト制御量に基づいて前記電動モータを駆動制御する制御手段とを備えた車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記角速度センサによって検出された前記角速度を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して増加させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量に対して、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って入力されるトルクの大きさを「0」とみなして前記制御量を「0」として演算する不感帯を設定することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前記不感帯における前記操舵ハンドルの回動操作に伴って入力されるトルクの大きさを「0」とみなす範囲を拡大することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量の前記トルク値の変化に対する最大勾配を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項6】
前記角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量は、
前記角速度に比例して、前記操舵ハンドルの回動操作方向に発生した振動を抑制するためのダンピング制御量である請求項1に記載した車両の操舵制御装置。
【請求項7】
前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量は、
前記微分値に比例して、外部から前記操舵系に入力される外乱に起因して前記操舵ハンドルに発生する振動を収束させる微分制御量である請求項2に記載した車両の操舵制御装置。
【請求項8】
前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を用いて演算する制御量は、
前記トルク値に対して単調増加する関係にあって、前記操舵ハンドルの回動操作に対するアシスト特性を決定する基本制御量である請求項3に記載した車両の操舵制御装置。
【請求項9】
前記トルクセンサは、
その検出作動に異常が発生したときには、前記制御手段が前記電動モータを駆動制御するための前記アシスト制御量を演算する制御演算周期よりも長い検出周期により、前記トルク値を検出するものである請求項1ないし請求項8のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前回までの検出周期により前記トルクセンサが検出した前記トルク値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、
前記検出周期内で前記トルクセンサが前記トルク値を複数回検出したときには、
前記検出周期内で前記検出された複数のトルク値のうち、最終回に検出された前記トルク値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載した車両の操舵制御装置において、
前記制御手段は、更に、
前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、
前回までの検出周期により前記トルクセンサが検出した前記トルク値を時間微分した微分値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵ハンドルの回動操作に対してアシスト力を付与する電動モータと、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って変化する複数の物理量のうち少なくとも前記操舵ハンドルを含む操舵系にて発生するトルク値及び角速度をそれぞれ検出するトルクセンサと角速度センサとを含む複数のセンサと、少なくとも前記トルクセンサによって検出されたトルク値及び前記角速度センサによって検出された角速度を用いて前記操舵ハンドルの回動操作に対するアシスト量を演算し、この演算したアシスト量に基づいて前記電動モータを駆動制御する制御手段とを備えた車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような、電動ステアリング装置の制御方法は知られている。この従来の電動ステアリング装置の制御方法は、操舵トルクセンサにより検出された操舵トルク及びこの操舵トルクの微分値に応じて操舵アシスト量を制御するものであり、操舵トルクセンサの異常時には、操舵トルクセンサのセンシング間隔よりもセンシング間隔が長い車内ネットワークを介して取得した車両の状態情報に基づいて操舵トルクを推定し、この推定操舵トルクを操舵トルクの代わりに用いることにより、推定操舵トルク及び推定操舵トルクの微分値に基づいて操舵アシスト量の制御を行うようになっている。そして、この従来の電動ステアリング装置の制御方法では、操舵トルクセンサの異常時における操舵アシスト量の制御において、推定操舵トルクの微分値に基づく制御ゲインを、操舵トルクセンサが正常時の操舵トルクの微分値に基づく制御ゲインよりも大きく設定するようになっている。
【0003】
このような従来の電動ステアリング装置の制御方法によれば、操舵トルクセンサの異常時には、車両の状態情報に基づいて推定した推定操舵トルク及びこの推定操舵トルクの微分値に基づいて操舵アシスト量を制御することができる。更に、このような操舵アシスト量の制御においては、車内ネットワークを介して取得する車両の状態情報のセンシング間隔が操舵トルクセンサのセンシング間隔よりも大きくなるものの、推定操舵トルクの微分値に基づく制御ゲインを操舵トルクセンサが正常時の操舵トルクの微分値に基づく制御ゲインよりも大きく設定することにより、操舵トルクセンサ異常時に操舵アシストの応答性が低下することを抑制することができ、正常時に近い操舵フィーリングが得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4969368号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記従来の電動ステアリング装置の制御方法では、車内ネットワークを介して取得する車両の状態情報のセンシング間隔が操舵トルクセンサのセンシング間隔よりも大きいため、推定操舵トルクの更新周期が低下する。このため、例えば、ロードノイズ等の外乱に起因して、電動ステアリング装置に外力によるトルク振動が入力された場合には、エイリアシングが発生する可能性がある。すなわち、上記従来の電動ステアリング装置の制御方法においては、トルク検出周期が振動周期の半分よりも長くなった場合、所謂、ナイキストのサンプリング定理に反した場合にエイリアシングが発生し、エイリアシングが発生した状態で推定操舵トルクを推定すると、所望のアシスト量(アシストトルク)が得られない可能性がある。
【0006】
このことを図12を参照してより具体的に説明すると、図12(a)は、例えば、上記従来の電動ステアリング装置に入力される入力トルク(推定操舵トルク)の波形が正弦波状に周期的に変化している場合において、エイリアシングの影響により、トルク検出周期ごとのサンプル位置にて検出されるトルク値(推定操舵トルク)が破線により示す平均値よりも大きい一定値として検出される場合を示している。この場合には、一定値として検出されたトルク値(推定操舵トルク)は平均値よりも大きいため、アシスト量が増加する可能性があるとともに、このように検出されたトルク値(推定操舵トルク)を用いた微分値は「0」となるため、微分値を増加させても操舵アシストの応答性を維持することが難しくなる。
【0007】
又、図12(b)は、例えば、上記従来の電動ステアリング装置に入力される入力トルク(推定操舵トルク)の波形が正弦波状に周期的に変化している場合において、エイリアシングの影響により、破線により示す平均値が一定であるにもかかわらず、トルク検出周期ごとのサンプル位置にて検出されるトルク値(推定操舵トルク)が見かけ上のトルク変動周期に従って変動するように検出される場合を示している。この場合には、一定の平均値に対して、検出されるトルク値(推定操舵トルク)が入力トルクの周期的な変化(振動)とは異なる周期で見かけ上変動しているため、アシスト量が意図せず変動してしまう可能性があるとともに、微分値も意図せず変動して操舵アシストの応答性を維持することが難しくなる。
【0008】
このように、エイリアシングの影響を受け得るトルク値(推定操舵トルク)や微分値を用いた場合においては、特に、トルク値(推定操舵トルク)の微分値を操舵アシストの制御に適切に用いることが難しくなる可能性があり、その結果、入力トルクに起因する操舵ハンドルの回動操作方向における振動(自励振動)が発生しやすくなる。従って、運転者は、操舵トルクセンサに異常が発生したときには、自身が把持する操舵ハンドルを介して、ロードノイズ等の外乱に起因する不快な自励振動を知覚する場合があり、不快感を覚える可能性がある。
【0009】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的の一つは、トルクセンサによるトルクの検出に異常が生じた場合であっても、安定して運転者による操舵ハンドルの操作をアシストすることができる車両の操舵制御装置を提供することにある。
【0010】
上記目的を達成するための本発明による車両の操舵制御装置は、電動モータと、少なくともトルクセンサ及び角速度センサと、制御手段とを備えている。前記電動モータは、操舵ハンドルの回動操作に対してアシスト力を付与するものである。前記トルクセンサは、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って変化する複数の物理量のうち少なくとも前記操舵ハンドルを含む操舵系にて発生するトルク値を検出するものである。前記角速度センサは、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って変化する複数の物理量のうち少なくとも前記操舵ハンドルを含む操舵系にて発生する角速度を検出するものである。前記制御手段は、少なくとも前記トルクセンサによって検出された前記トルク値及び前記角速度センサによって検出された前記角速度を用いて前記操舵ハンドルの回動操作に対するアシスト制御量を演算し、この演算したアシスト制御量に基づいて前記電動モータを駆動制御するものである。
【0011】
本発明による車両の操舵制御装置の特徴の一つは、前記制御手段が、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記角速度センサによって検出された前記角速度を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して増加させることにある。この場合、前記角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量は、例えば、前記角速度に比例して、前記操舵ハンドルの回動操作方向に発生した振動を抑制するためのダンピング制御量とすることができる。尚、これらの場合、前記制御手段が、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したか否かを判定する異常判定手段と、前記異常判定手段によって異常が発生したと判定されたとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記角速度センサによって検出された前記角速度を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して増加させて演算する角速度関連制御量演算手段とを備えることが可能である。
【0012】
これらによれば、トルクセンサの検出作動に異常が発生した場合には、制御手段が、アシスト制御量を構成する制御量のうち、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)を増加させて演算することができる。これにより、例えば、操舵系に対する外乱等の入力に伴って操舵ハンドルの回動操作方向に自励振動が発生した場合であっても、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)によってこの発生した自励振動を速やかに減衰させて収束させることができる。従って、仮にトルクセンサの検出作動に異常が発生した場合であっても、正常時に近いアシスト制御を実行することができて、安定したアシストを提供することができ、運転者が違和感を覚えることを効果的に抑制することができる。
【0013】
又、トルクセンサの検出作動に異常が発生した場合には、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)を増加させることができるため、例えば、トルクセンサの検出作動に異常が発生し、仮に検出されたトルク値に検出に伴うエイリアシングの影響が及んでいる場合であっても、意図しない操舵ハンドルの自励振動を抑制することができる。従って、エイリアシングの影響により、運転者による操舵ハンドルの回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0014】
この場合、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させることができる。この場合、前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量を、例えば、前記微分値に比例して、外部から前記操舵系に入力される外乱に起因して前記操舵ハンドルに発生する振動を収束させる微分制御量とすることができる。尚、これらの場合、前記制御手段が、前記異常判定手段によって異常が発生したと判定されたとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させて演算するトルク値関連制御量演算手段とを備えることが可能である。
【0015】
これらによれば、制御手段は、トルクセンサの検出作動に異常が発生しているときには、トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量(具体的には、微分制御量)を減少させることができる。これにより、トルクセンサの検出作動に異常が発生しており、エイリアシングによる影響を受けて、トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量(具体的には、微分制御量)が、例えば、アシスト制御において狙いよりも大きい制御量又は小さい制御量を演算してしまうことが生じることを効果的に低減することができて、安定したアシストを提供することができる。
【0016】
尚、この場合には、前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量(具体的には、微分制御量)が小さくなって外乱に起因して操舵ハンドルの回動操作方向に振動が発生し易くなる。しかしながら、この場合においても、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)を増加させることができる。従って、トルクセンサの検出作動に異常が発生し、仮に検出されたトルク値に検出に伴うエイリアシングの影響が及んでいる場合であっても、意図しない操舵ハンドルの自励振動を抑制することができる。これにより、運転者による操舵ハンドルの回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0017】
又、これらの場合、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量に対して、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って入力されるトルクの大きさを「0」とみなして前記制御量を「0」として演算する不感帯を設定することができる。更に、この場合には、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前記不感帯における前記操舵ハンドルの回動操作に伴って入力されるトルクの大きさを「0」とみなす範囲を拡大することができる。この場合、前記トルクセンサによって検出された前記トルク値を用いて演算する制御量は、例えば、前記トルク値に対して単調増加する関係にあって、前記操舵ハンドルの回動操作に対するアシスト特性を決定する基本制御量とすることができる。尚、これらの場合、前記トルク値関連制御量演算手段が、前記異常判定手段によって異常が発生したと判定されたとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量に対して、前記操舵ハンドルの回動操作に伴って入力されるトルクの大きさを「0」とみなして前記制御量を「0」として演算する不感帯を設定することが可能である。
【0018】
これらによれば、制御手段は、トルクセンサの検出作動に異常が発生しているときには、トルクセンサによって検出されたトルクを用いて演算する制御量(具体的には、基本制御量)に対して、操舵ハンドルの中立位置近傍に不感帯を設定することができる。これにより、トルクセンサの検出作動に異常が発生している場合において、例えば、運転者が車両を直進させているとき(言い換えれば、運転者が回動操作するために入力するトルクが「0」のとき)には、エイリアシングによる影響を受けて、トルクセンサによって検出されたトルクを用いて演算する制御量(具体的には、基本制御量)が変動することを効果的に防止することができる。
【0019】
又、この場合においても、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)を増加させたり、トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量(具体的には、微分制御量)を減少させることができる。従って、トルクセンサの検出作動に異常が発生し、仮に検出されたトルク値に検出に伴うエイリアシングの影響が及んでいる場合であっても、意図しない操舵ハンドルの自励振動を抑制することができる。これにより、運転者による操舵ハンドルの回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0020】
更に、これらの場合、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量の前記トルク値の変化に対する最大勾配を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させることができる。尚、この場合、前記トルク値関連制御量演算手段が、前記異常判定手段によって異常が発生したと判定されたとき、前記アシスト制御量を構成する制御量のうち、前記トルクセンサによって検出された前記トルクを用いて演算する制御量の前記トルク値の変化に対する最大勾配を、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動が正常であるときに比して減少させることが可能である。
【0021】
これによれば、制御手段は、トルクセンサの検出作動に異常が発生しているときには、トルクセンサによって検出されたトルクを用いて演算する制御量のトルク値の変化に対する最大勾配を減少させることができる。従って、トルクセンサの検出作動に異常が発生している場合であっても、安定して運転者による操舵ハンドルの回動操作をアシストすることができる。又、この場合においても、角速度センサによって検出された角速度を用いて演算する制御量(具体的には、ダンピング制御量)を増加させたり、トルクセンサによって検出された前記トルク値を時間微分した微分値を用いて演算する制御量(具体的には、微分制御量)を減少させることができる。従って、トルクセンサの検出作動に異常が発生し、仮に検出されたトルク値に検出に伴うエイリアシングの影響が及んでいる場合であっても、意図しない操舵ハンドルの自励振動を抑制することができる。これにより、運転者による操舵ハンドルの回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0022】
又、本発明による車両の操舵制御装置の他の特徴は、前記トルクセンサが、その検出作動に異常が発生したときには、前記制御手段が前記電動モータを駆動制御するための前記アシスト制御量を演算する制御演算周期よりも長い検出周期により、前記トルク値を検出することにもある。
【0023】
この場合、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前回までの検出周期により前記トルクセンサが検出した前記トルク値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することができる。又、この場合、前記制御手段は、前記検出周期内で前記トルクセンサが前記トルク値を複数回検出したときには、前記検出周期内で前記検出された複数のトルク値のうち、最終回に検出された前記トルク値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することができる。更に、これらの場合、前記制御手段は、前記トルクセンサによる前記トルク値の検出作動に異常が発生したとき、前回までの検出周期により前記トルクセンサが検出した前記トルク値を時間微分した微分値を次回の検出周期により前記トルクセンサが前記トルク値を検出するまで維持して、前記アシスト制御量を演算することができる。
【0024】
これらによれば、トルクセンサの検出作動に異常が発生した場合には、トルクセンサの検出周期が、制御手段による制御演算周期よりも長くなるように延長される。この場合、制御手段は、前回の検出周期により検出されたトルク値及び同トルク値を時間微分した微分値を次回の検出周期まで維持することができる。これにより、維持したトルク値及び微分値を用いてアシスト制御量を演算することができるため、トルクセンサの検出作動に異常が発生した場合であっても、安定したアシスト制御を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る操舵制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の構成を示す概略図である。
図2図1の電子制御ユニットにより実行されるコンピュータプログラム処理(アシスト制御)を機能的に表す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係り、図2のサンプリング&ホールド部によるトルク値のサンプリングとホールドの動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係り、図2の基本制御量演算部が参照するトルク値(制御用トルク値)と基本制御量との関係を表す基本制御量マップを示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係り、図2の微分制御量演算部が参照するトルク微分値(制御用トルク微分値)と微分制御量との関係を表す微分制御量マップを示すグラフである。
図6図2のダンピング制御量演算部が参照する角速度とダンピング制御量との関係を表すダンピング制御量マップを示すグラフである。
図7】本発明の実施形態の第1変形例に係り、図2の微分制御量演算部が参照するトルク微分値(制御用トルク微分値)と微分制御量との関係を表す微分制御量マップを示すグラフである。
図8】本発明の実施形態の第2変形例に係り、図2の基本制御量演算部が参照するトルク値(制御用トルク値)と異常時に不感帯を有する基本制御量との関係を表す基本制御量マップを示すグラフである。
図9】本発明の実施形態の第2変形例に係り、図2の基本制御量演算部が参照するトルク値(制御用トルク値)と正常時及び異常時に不感帯を有する基本制御量との関係を表す基本制御量マップを示すグラフである。
図10】本発明の実施形態の第3変形例に係り、図2の基本制御量演算部が参照するトルク値(制御用トルク値)と異常時の最大勾配を抑えた基本制御量との関係を表す基本制御量マップを示すグラフである。
図11】本発明の実施形態の第4変形例に係り、図2のサンプリング&ホールド部によるトルク値のサンプリングとホールドの動作を説明するための図である。
図12】エイリアシングの影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵制御装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の操舵制御装置を適用可能な電動パワーステアリング装置10を概略的に示している。
【0027】
この電動パワーステアリング装置10は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵させるために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は、ステアリングシャフト12の上端に固定されており、ステアリングシャフト12の下端は、転舵ギアユニットUに接続されている。尚、操舵ハンドル11、ステアリングシャフト12及び転舵ギアユニットUを含む系を操舵系と称呼する。
【0028】
転舵ギアユニットUは、例えば、ラックアンドピニオン式を採用したギアユニットであり、ステアリングシャフト12の下端に一体的に組み付けられたピニオンギア13の回転がラックバー14に伝達されるようになっている。又、転舵ギアユニットUには、運転者によって操舵ハンドル11に入力される操作力(より具体的には、操舵トルク)を軽減する(アシストする)ための電動モータ15(以下、この電動モータをEPSモータ15と称呼する。)が設けられている。そして、EPSモータ15が発生するアシスト力(より具体的には、アシストトルク)がラックバー14に伝達されるようになっている。
【0029】
この構成により、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴うステアリングシャフト12の回転力がピニオンギア13を介してラックバー14に伝達されるとともに、EPSモータ15のアシストトルクがラックバー14に伝達される。これにより、ラックバー14は、ピニオンギア13からの回転力及びEPSモータ15のアシストトルクによって軸線方向に変位する。従って、ラックバー14の両端に接続された左右前輪FW1,FW2は、左右方向に転舵されるようになっている。
【0030】
尚、本実施形態における電動パワーステアリング装置10は、EPSモータ15が転舵ギアユニットUのラックバー14にアシストトルクを伝達するラックアシストタイプとして実施する。しかし、その他の電動パワーステアリング装置10として、EPSモータ15がピニオンギア13にアシストトルクを伝達するピニオンアシストタイプや、EPSモータ15が所定の減速機構を介してステアリングシャフト12を形成するコラムメインシャフトにアシストトルクを伝達するコラムアシストタイプを採用して実施可能であることは言うまでもない。
【0031】
次に、上述したEPSモータ15の作動を制御する、操舵制御装置としての電気制御装置20について説明する。電気制御装置20は、車速センサ21を備えるとともに、トルクセンサを構成する操舵トルクセンサ22及び角速度センサを構成するモータ回転角センサ23を備えている。車速センサ21は、車両の車速Vを検出し、この車速Vに応じた信号を出力する。
【0032】
操舵トルクセンサ22は、ステアリングシャフト12に組み付けられていて、運転者が操舵ハンドル11を回動操作してステアリングシャフト12に入力する操舵トルクTを所定の検出周期により検出し、この操舵トルクTに応じた信号を出力する。尚、操舵トルクセンサ22は、操舵ハンドル11が右方向に回動操作されたときの操舵トルクTを正の値として出力し、操舵ハンドル11が左方向に回動操作されたときの操舵トルクTを負の値として出力する。
【0033】
ここで、本実施形態における操舵トルクセンサ22は、ステアリングシャフト12の途中に設けられたトーションバーの捩れ角度に応じて電気抵抗又は磁気抵抗を変化させ、それに応じた電圧信号を出力するタイプのセンサが用いられる。このため、本実施形態においては、操舵トルクセンサ22として、2組のレゾルバセンサを採用して実施する。尚、レゾルバセンサは、広く知られているように、トーションバーとともに回転するレゾルバロータと、レゾルバロータと向い合って車体側に固定されるレゾルバステータとを備え、レゾルバロータ又はレゾルバステータの一方に励磁コイルである1次巻線が設けられ、他方に検出用コイルである一対の2次巻線がπ/2だけ位相をずらして設けられる。そして、1次巻線をSIN相信号により励磁することにより、2次巻線が回転角度に応じた2種類の誘起電圧信号としてSIN相出力信号とCOS相出力信号を出力する。
【0034】
従って、レゾルバセンサを用いた操舵トルクセンサ22は、これらSIN相出力信号とCOS相出力信号の振幅比を求めることによって回転角位置を所定の検出周期により検出し、この回転角位置に対応する信号を操舵トルクTに応じた信号として出力する。尚、操舵トルクセンサ22は、周知の異常判定方法等に基づいて、その検出作動が正常であるときには、電気制御装置20によるEPSモータ15の作動制御、言い換えれば、アシスト制御の制御演算周期と同じ、或いは、より短い検出周期によって操舵トルクTに応じた信号を出力し、その作動に異常が生じたときには、制御演算周期よりも長い検出周期によって操舵トルクTに応じた信号を出力するようになっている。
【0035】
モータ回転角センサ23は、EPSモータ15に組み付けられていて、予め設定された基準回転位置からの回転角Θを検出し、この回転角Θに応じた信号を出力する。尚、モータ回転角センサ23は、EPSモータ15の回転方向に関し、EPSモータ15が左右前輪FW1,FW2を右方向に転舵させるためにラックバー14に対してアシストトルクを付与するときの回転角Θを正の値として出力し、左右前輪FW1,FW2を左方向に転舵させるためにラックバー14に対してアシストトルクを付与するときの回転角Θを負の値として出力する。
【0036】
又、電気制御装置20は、EPSモータ15の作動を制御する電子制御ユニット24を備えている。電子制御ユニット24は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、EPSモータ15の作動を制御する。このため、電子制御ユニット24の入力側には、上記各センサ21〜23が接続されており、これら各センサ21〜23によって検出された各検出値を用いて、後述するように、EPSモータ15の駆動を制御する。一方、電子制御ユニット24の出力側には、EPSモータ15を駆動させるための駆動回路25が接続されている。
【0037】
次に、上記のように構成した電気制御装置20(より詳しくは、電子制御ユニット24)によるEPSモータ15の駆動制御、すなわち、アシスト制御について、電子制御ユニット24内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて説明する。電子制御ユニット24は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴う負担を軽減するために、EPSモータ15の駆動を制御して適切なアシスト力を付与する。
【0038】
このため、電子制御ユニット24は、操舵トルクセンサ22によって検出される操舵トルクT(以下、操舵トルクTをトルク値Tとも称呼する。)に関連する制御量である基本制御量Ta及び微分制御量Tbを演算するトルク値関連制御量演算部30と、モータ回転角センサ23によって検出される回転角Θに関連する制御量であるダンピング制御量Tcを演算する回転角関連制御量演算部40と、トルク値関連制御量演算部30によって演算された基本制御量Ta及び微分制御量Tbと回転角関連制御量演算部40によって演算されたダンピング制御量Tcとを用いて、アシスト制御量としてのアシスト量Ttを演算してEPSモータ15を駆動制御するアシスト制御部50とから構成される。以下、まず、トルク値関連制御量演算部30から具体的に説明する。
【0039】
トルク値関連制御量演算部30は、操舵トルクセンサ22から出力された操舵トルクT(トルク値T)に応じた信号を入力し、トルク値Tを演算するトルクセンサを構成するトルク値演算部31を備えている。トルク値演算部31は、トルク値Tを演算すると、演算したトルク値Tをトルク微分演算部32及びサンプリング&ホールド部33(以下、単に、S&H部33と称呼する。)に出力する。ここで、上述したように、操舵トルクセンサ22は、検出作動が正常であるときには電子制御ユニット24の制御演算周期以下の検出周期によってトルク値Tに応じた信号を出力し、検出作動に異常が生じたときは制御演算周期よりも長い検出周期によってトルク値Tに応じた信号を出力する。従って、トルク値演算部31からトルク微分演算部32及びS&H部33に出力されるトルク値Tも、操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時における検出周期に合わせた周期により出力されることは言うまでもない。
【0040】
トルク微分演算部32は、トルク値演算部31から供給されたトルク値Tを入力する。そして、トルク微分演算部32は、入力したトルク値Tを時間微分し、トルク値Tの時間微分値dT/dt(以下、単に、トルク微分値T'と称呼する。)をサンプリング&ホールド部34に出力する。尚、サンプリング&ホールド部34も、以下、単に、S&H部34と称呼する。
【0041】
S&H部33は、操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるときには、トルク値演算部31から出力されたトルク値Tをそのまま基本制御量演算部35に出力する。一方で、S&H部33は、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が生じたときには、操舵トルクセンサ22の検出周期に合わせてトルク値演算部31から出力された、すなわち、サンプリングしたトルク値Tを次回のサンプリングまでホールド(維持)し、このホールドしているトルク値Tを演算制御周期に合わせて基本制御量演算部35に出力する。
【0042】
S&H部34は、操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるときには、トルク微分演算部32から出力されたトルク微分値T'をそのまま微分制御量演算部36に出力する。一方で、S&H部34は、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が生じたときには、操舵トルクセンサ22の検出周期に合わせてトルク微分演算部32によって演算された、すなわち、サンプリングしたトルク微分値T'を次回のサンプリングまでホールド(維持)し、このホールドしているトルク微分値T'を演算制御周期に合わせて微分制御量演算部36に出力する。以下、このS&H部33及びS&H部34のそれぞれによるサンプリングとホールドを具体的に図3を用いて説明する。
【0043】
検出作動に異常が生じると、操舵トルクセンサ22は、電子制御ユニット24による制御演算周期よりも長い検出周期(以下、トルク検出周期と称呼する。)によって操舵トルクT(トルク値T)に応じた信号を出力する。この場合、図3に示すように、トルク検出周期がトルク検出可能期間とトルク検出不能期間とからなり、トルク検出可能期間が制御演算周期よりも長い場合には、制御演算周期ごとにトルク値演算部31によるトルク値Tの演算処理が複数回(図3においては、2回)実行される。
【0044】
そして、トルク値演算部31は、トルク検出可能期間内で複数回のトルク値Tの演算処理を実行すると、最終回の演算処理によって演算したトルク値TをS&H部33に出力する。ここで、トルク検出周期において、トルク検出可能期間が経過した後は、トルク検出不能期間となり、トルク値演算部31からトルク値Tの出力が中断する。このため、S&H部33は、図3に示すように、次回のトルク検出周期(より詳しくは、トルク検出可能期間)まで最終回の演算処理によって演算されたトルク値Tをサンプル点としてホールド(維持)し、このホールド後のトルク値Tを制御演算周期に合わせて制御用トルク値Thとして基本制御量演算部35に出力する。これにより、図3にて長破線により示す実際のトルクに対して、離散的ではあるものの、操舵トルクセンサ22によって検出されたトルク値Tすなわちトルク検出周期ごとに一定にホールドされた制御用トルク値Thを基本制御量演算部35に供給することができる。
【0045】
又、トルク値演算部31がトルク検出可能期間内で複数回トルク値Tを演算処理する場合には、この演算処理に伴って演算された複数(図3においては、2つ)のトルク値Tをトルク微分演算部32に出力することができる。これにより、図3に示すように、トルク微分演算部32は、トルク値演算部31から供給された複数のトルク値Tを時間微分してトルク微分値T'を演算する。ここで、上述したように、トルク検出周期において、トルク検出可能期間が経過した後は、トルク検出不能期間となり、トルク値演算部31からトルク値Tの出力が中断する。このため、トルク微分演算部32は、図3に示すように、トルク検出可能期間内で複数回のトルク微分値T’の演算処理を実行すると、最終回の演算処理によって演算したトルク微分値T'をS&H部34に出力する。
【0046】
これにより、S&H部34は、図3に示すように、次回のトルク検出周期(より詳しくは、トルク検出可能期間)まで最終回の演算処理によって演算されたトルク微分値T'をサンプル点としてホールド(維持)し、このホールド後のトルク微分値T'を制御演算周期に合わせて制御用トルク微分値T'hとして微分制御量演算部36に出力する。そして、トルク微分値T'の場合においても、図3にて長破線により示す実際のトルクの時間変化に対して、離散的ではあるものの、操舵トルクセンサ22によって検出されたトルク値Tの時間変化すなわちトルク検出周期ごとに一定にホールドされた制御用トルク微分値T'hを微分制御量演算部36に供給することができる。
【0047】
再び、図2に戻り、基本制御量演算部35は、操舵トルクセンサ22における検出作動の正常又は異常に合わせて、S&H部33からトルク値T又は制御用トルク値Thを入力し、トルク値T又は制御用トルク値Thの絶対値の増加に伴って単調増加する基本制御量Taを演算する。このため、基本制御量演算部35は、例えば、図4に示すような二次関数的に単調増加して変化する基本制御量マップを参照して、入力したトルク値T又は制御用トルク値Thに対応する基本制御量Taを演算する。尚、図4に示す基本制御量マップにおいて、第3象限は原点対称となる。そして、基本制御量演算部35は、演算した基本制御量Taをアシスト制御部50のアシスト量演算部51に出力する。ここで、特に、操舵トルクセンサ22に異常が生じてS&H部33から制御用トルク値Thを入力する場合において、基本制御量演算部35は高周波領域の位相を調整するための入力フィルタを介して制御用トルク値Thを入力し、位相を補償した制御用トルク値Thを用いて基本制御量Taを演算する。
【0048】
尚、基本制御量演算部35が参照する基本制御量マップは、代表的な車速Vごとに設定されるものであり、車速Vの増大に伴って基本制御量Taが相対的に小さくなり、車速Vの減少に伴って基本制御量Taが相対的に大きくなるように設定されている。このため、基本制御量演算部35は、図2に示すように、車速センサ21から車速Vを入力し、入力した車速Vに応じた基本制御量Taを演算する。そして、このような基本制御量マップを用いることに代えて、例えば、基本制御量Taをトルク値T又は制御用トルク値Th、及び、車速Vの関数として表し、この関数を用いて基本制御量Taを演算するように実施することも可能である。
【0049】
微分制御量演算部36は、操舵トルクセンサ22における検出作動の正常又は異常に合わせて、S&H部34からトルク微分値T'又は制御用トルク微分値T'hを入力し、トルク微分値T'又は制御用トルク微分値T'hの絶対値の増大に伴って増大する微分制御量Tbを演算する。ここで、微分制御量Tbは、例えば、ロードノイズ等の外乱の入力に伴って操舵ハンドル11の回動操作方向に生じた振動(自励振動)を良好な応答性を確保して抑制するための制御量である。そして、微分制御量Tbが大きいほど操舵ハンドル11の回動操作方向に生じた自励振動を速やかに収束させることができ、微分制御量Tbが小さいほど操舵ハンドル11の回動操作方向に生じた自励振動が収束されにくくなる。
【0050】
このため、微分制御量演算部36は、例えば、図5に示すような比例関数的に変化する微分制御量マップを参照して、入力したトルク微分値T'又は制御用トルク微分値T'hの絶対値に対応する微分制御量Tbを演算する。尚、図5に示す微分制御量マップにおいて、第3象限は原点対称となる。そして、微分制御量演算部36は、演算した微分制御量Tbをアシスト制御部50のアシスト量演算部51に出力する。尚、このような微分制御量マップを用いることに代えて、例えば、微分制御量Tbをトルク微分値T'又は制御用トルク微分値T'hの関数として表し、この関数を用いて微分制御量Tbを演算するように実施することも可能である。
【0051】
再び図2に戻り、回転角関連制御量演算部40は、モータ回転角センサ23から出力された回転角Θに応じた信号を入力し、回転角Θを演算する角速度センサを構成する回転角演算部41を備えている。回転角演算部41は、回転角Θを演算すると、演算した回転角Θを角速度演算部42に出力する。
【0052】
角速度演算部42は、回転角演算部41から供給された回転角Θを入力する。そして、角速度演算部42は、入力した回転角Θを時間微分し、回転角Θの時間微分値dΘ/dtを角速度Θ'としてダンピング制御量演算部43に出力する。
【0053】
ダンピング制御量演算部43は、角速度演算部42から供給されたEPSモータ15の角速度Θ'の絶対値に応じて変化するダンピング制御量Tcを演算する。このため、ダンピング制御量演算部43は、例えば、図6に示すような比例関数的に変化するダンピング制御量マップを参照して、入力した角速度Θ'の絶対値に対応するダンピング制御量Tcを演算する。尚、図6に示すダンピング制御量マップにおいて、第2象限は原点対称となる。ここで、ダンピング制御量Tcは、操舵ハンドル11の回動操作方向に発生する振動を減衰させるための制御量である。このため、ダンピング制御量Tcは、上述したように、特に、微分制御量Tbが小さいほど操舵ハンドル11の回動操作方向に生じた振動が収束されにくい状況、より詳しくは、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生していて検出周期が長くホールドされた制御用トルク微分値T'hが制御演算周期ごとに供給される状況では、操舵ハンドル11に発生した回動操作方向の振動を効果的に抑制するように機能する。
【0054】
すなわち、ホールドされた制御用トルク微分値T'hが制御演算周期ごとに微分制御量演算部36に対して供給される状況では、実際のトルク変動に対応したトルク微分値T'が供給されないため、微分制御量演算部36が適切な大きさの微分制御量Tbを演算できない可能性がある。この場合、微分制御量Tbによって操舵ハンドル11の回動操作方向に生じた振動を速やかに収束させることが難しくなるものの、ダンピング制御量Tcを適切に付与することによって操舵ハンドル11の回動操作方向における振動を効果的に抑制することができる。
【0055】
従って、ダンピング制御量演算部43は、操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるときに演算するダンピング制御量Tcと、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が生じているときに演算するダンピング制御量Tcとを異ならせる。すなわち、ダンピング制御量演算部43は、図6にて実線により示すように操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生しているとき(言い換えれば、制御用トルク微分値Thが供給されているとき)のダンピング制御量Tc(絶対値)を、図6にて破線により示すように操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるとき(言い換えれば、トルク微分値T'が供給されているとき)のダンピング制御量Tc(絶対値)に比して大きくなるように増加させて演算する。これにより、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生しており、例えば、相対的に制御用トルク微分値T'hが小さくなって外乱に起因して操舵ハンドル11の回動操作方向に振動が発生し易い場合であっても、角速度Θ'に基づくダンピング制御量Tcの絶対値を大きく(増加させて)演算して付与することにより、操舵ハンドル11の回動操作方向に発生した振動を速やかに減衰させて収束させることができる。
【0056】
そして、ダンピング制御量演算部43は、演算したダンピング制御量Tcをアシスト制御部50のアシスト量演算部51に出力する。尚、このようなダンピング制御量マップを用いることに代えて、例えば、ダンピング制御量Tcを角速度Θ'の関数として表し、この関数を用いてダンピング制御量Tcを演算するように実施することも可能である。
【0057】
アシスト制御部50においては、図2に示すように、アシスト量演算部51が、トルク値関連制御量演算部30の基本制御量演算部35から供給された基本制御量Ta及び微分制御量演算部36から供給された微分制御量Tbを入力するとともに、回転角関連制御量演算部40のダンピング制御量演算部43から供給されたダンピング制御量Tcを入力する。そして、アシスト量演算部51は、入力した基本制御量Taと微分制御量Tbとを加算し、この加算値(Ta+Tb)からダンピング制御量Tcを減じて、アシスト制御量としてのアシスト量Tt(=Ta+Tb−Tc)を演算する。このようにアシスト量Ttを演算すると、アシスト量演算部51は、演算したアシスト量Ttをモータ駆動制御部52に出力する。
【0058】
モータ駆動制御部52は、アシスト量演算部51から供給されたアシスト量Ttを入力する。そして、モータ駆動制御部52は、入力したアシスト量Tt(アシストトルクに相当)の大きさと予め定めた関係にあり、EPSモータ15に供給する電流を表すモータ電流指令値を決定する。そして、モータ駆動制御部52はこのように決定したモータ電流指令値を駆動回路25に供給し、駆動回路25は供給されたモータ電流指令値に相当する駆動電流をEPSモータ15に供給する。これにより、EPSモータ15は、基本制御量Ta、微分制御量Tb及びダンピング制御量Tcを反映したアシスト量Ttをラックバー14に伝達することにより、運転者は良好なフィーリングを知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができる。
【0059】
以上の説明からも理解できるように、上述した実施形態によれば、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生した場合には、ダンピング制御量演算部43がアシスト量Ttを構成するダンピング制御量Tcの絶対値を大きく演算することができる。これにより、例えば、操舵系に対する外乱等の入力に伴って操舵ハンドル11の回動操作方向に自励振動が発生した場合であっても、ダンピング制御量Tcによってこの発生した自励振動を速やかに減衰させて収束させることができる。従って、仮に操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生した場合であっても、正常時に近いアシスト制御を実行することができ、運転者が違和感を覚えることを効果的に抑制することができる。
【0060】
又、ダンピング制御量Tcを増加させてアシスト量Ttを演算することができるため、例えば、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生し、仮に検出されたトルク値Tやトルク微分値T'に検出に伴うエイリアシングの影響が及んでいる場合であっても、意図しない操舵ハンドル11の自励振動を抑制することができる。従って、エイリアシングの影響により、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0061】
更に、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生した場合には、検出周期が延長される。この場合、S&H部33及びS&H部34がそれぞれ前回の検出周期により検出されたトルク値T及びトルク微分値T'をサンプリングして次回の検出周期までホールドすることができる。これにより、ホールドされた制御用トルク値Th及び制御用トルク微分値T'hを用いて基本制御量Ta及び微分値制御量Tbを演算することができ、更に、上述したダンピング制御量Tcを加えることができるため、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生した場合であっても、安定したアシスト制御を実施することができる。
【0062】
a.第1変形例
上記実施形態においては、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が生じた場合には、検出作動が正常時に比して検出周期が長くなることに伴い、S&H部33から基本制御量演算部35にホールドされた制御用トルクThが供給され、S&H部34から微分制御量演算部36にホールドされた制御用トルク微分値T'hが供給される。この場合、上記実施形態では、基本制御量演算部35は操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時に関わらず図4に示した基本制御量マップを用いて基本制御量Taを演算し、微分制御量演算部36は操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時に関わらず図5に示した微分制御量マップを用いて微分制御量Tbを演算するように実施した。一方、上記実施形態では、ダンピング制御量演算部43は、図6に示したように、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生しているときのダンピング制御量Tc(絶対値)を、操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるときのダンピング制御量Tc(絶対値)に比して大きく演算するように実施した。
【0063】
この場合、ダンピング制御量演算部43によって演算されたダンピング制御量Tcによる振動抑制効果をより適切に発揮させるために、操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時に合わせて、微分制御量演算部36が微分制御量Tb(絶対値)を異ならせて演算するように実施することも可能である。すなわち、微分制御量演算部36は、図7にて実線により示すように操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生しているとき(言い換えれば、制御用トルク微分値T'hが供給されているとき)の微分制御量Tb(絶対値)を、図7にて破線により示すように操舵トルクセンサ22の検出作動が正常であるとき(言い換えれば、トルク微分値T'が供給されているとき)の微分制御量Tb(絶対値)に比して小さく演算する。
【0064】
これにより、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生しており、上述したエイリアシングによる影響を受けて、例えば、アシスト制御において狙い通りの微分制御量Tbよりも大きい制御量又は小さい制御量を演算してしまうことが生じることを効果的に低減することができる。又、この場合には、微分制御量Tbが小さくなって外乱に起因して操舵ハンドル11の回動操作方向に振動が発生し易くなるものの、上記実施形態と同様にダンピング制御量演算部43がダンピング制御量Tcの絶対値を大きく演算することにより、操舵ハンドル11の回動操作方向に発生した振動を速やかに減衰させて収束させることができる。従って、上記実施形態と同様に、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0065】
b.第2変形例
上記実施形態及び第1変形例においては、基本制御量演算部35は操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時に関わらず図4に示した基本制御量マップを用いて基本制御量Taを演算するように実施した。ところで、操舵トルクセンサ22に異常が生じた場合には、上述したように、S&H部33からホールドされた制御用トルク値Thが制御演算周期ごとに供給されて、基本制御量演算部35が制御用トルク値Thを用いて基本制御量Taを演算するため、演算される基本制御量Taもエイリアシングの影響を受ける可能性がある。このようなエイリアシングの影響は、特に、運転者が車両を直進させる状態、言い換えれば、操舵ハンドル11を回動操作することなく中立位置近傍で把持している状態(すなわち、操舵ハンドル11に回動操作に伴う操舵トルクTを入力しない状態)であるときに、運転者によって知覚され易い。
【0066】
この場合、上記実施形態及び第1変形例において、基本制御量演算部35が参照した図4に示した基本制御量マップに代えて、図8に示すように、少なくとも操舵トルクセンサ22の異常時に操舵ハンドル11の中立位置近傍に不感帯を設けた基本制御量マップを参照するように実施することが可能である。すなわち、不感帯においては、基本制御量演算部35は、S&H部33から供給される制御用トルク値Thに対して基本制御量Taを「0」として演算する。具体的に、基本制御量演算部35は、操舵トルクセンサ22が正常であるときには図8にて破線により示すように不感帯を設定していない基本制御量マップを参照し、操舵トルクセンサ22に異常が生じたときには図8にて実線により示すように所定の大きさの不感帯を設定した基本制御量マップを参照することができる。或いは、基本制御量演算部35は、図9に示すように、操舵トルクセンサ22が正常であるときには狭い不感帯の設定された基本制御量マップ(破線)を参照し、操舵トルクセンサ22に異常が生じたときには正常時に比して広い不感帯の設定された基本制御量マップ(実線)を参照することができる。
【0067】
これにより、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生している場合において、特に、車両を直進させているとき(言い換えれば、運転者が操舵ハンドル11を回動操作するために入力する操舵トルクTが「0」のとき)に、上述したエイリアシングによる影響を受けて基本制御量Taが変動することを効果的に防止することができる。そして、上記実施形態及び第1変形例と同様に、ダンピング制御量Tcの絶対値を大きく演算したり、微分制御量Tbの絶対値を小さく演算したりすることにより、操舵ハンドル11の回動操作方向に発生した振動を速やかに減衰させて収束させることができる。従って、この第2変形例においても、上記実施形態及び第1変形例と同様に、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0068】
c.第3変形例
上記実施形態及び上記第1,2変形例においては、操舵トルクセンサ22の正常時又は異常時に関わらず、基本制御量マップにおけるトルク値T又は制御用トルク値Thの変化に対する基本制御量の変化特性、より詳しくは、基本制御量マップの最大勾配(すなわち、ゲイン)を変更することなく実施した。この場合、操舵トルクセンサ22に異常が生じたときに、基本制御量マップの最大勾配が小さくなるように基本制御量マップを設定し、アシスト制御が安定するように実施することも可能である。
【0069】
具体的には、上記実施形態及び第1,2変形例において基本制御量演算部35が参照した図4に示した基本制御量マップに代えて、操舵トルクセンサ22の異常時に最大勾配が小さくなる基本制御量マップを参照するように実施することが可能である。すなわち、基本制御量演算部35は、図10に示すように、操舵トルクセンサ22が正常であるときには図4に示したような変化特性を有する基本制御量マップを参照し、操舵トルクセンサ22に異常が生じたときには正常時に比して最大勾配が小さくなるように設定された基本制御量マップを参照することができる。このとき、図10に示すように、例えば、予め設定された制限勾配以下の領域では、正常時及び異常時で共通する基本制御量マップを参照することができる。
【0070】
これにより、操舵トルクセンサ22の検出作動に異常が発生している場合であっても、安定して運転者による操舵ハンドル11の回動操作をアシストすることができるとともに、基本制御量マップを一部領域で共用することによって正常時と異常時との間の違和感の発生を抑えることができる。そして、上記実施形態及び第1,2変形例と同様に、ダンピング制御量Tcの絶対値を大きく演算したり、微分制御量Tbの絶対値を小さく演算したり、更には、基本制御量Taに不感帯を設定することにより、直進時における違和感を抑えるとともに操舵ハンドル11の回動操作方向に発生した振動を速やかに減衰させて収束させることができる。従って、この第3変形例においても、上記実施形態及び第1,2と同様に、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して意図しない不快なアシストが発生することを効果的に防止することができる。
【0071】
d.第4変形例
上記実施形態及び第1〜3変形例においては、操舵トルクセンサ22に異常が生じた場合、図3に示したように、トルク検出可能期間が制御演算周期よりも長く、トルク検出可能期間内で複数回(2回)の制御演算が実行されるように実施した。これに対して、長い検出周期によって1回ずつトルクが検出されるときには、図11に示すように、トルク値演算部31は、トルクが検出されるごとに1回のトルク値Tの演算処理を実行し、演算したトルク値TをS&H部33に出力する。そして、この場合においては、S&H部33は、図11に示すように、演算されたトルク値Tをサンプル点として次回のトルク検出までホールド(維持)し、このホールド後のトルク値Tをトルク値Thとして制御演算周期ごとに基本制御量演算部35に出力する。従って、この場合においても、図11にて長破線により示す実際のトルクに対して、離散的ではあるものの、操舵トルクセンサ22によって検出されたトルク値Tすなわちトルク検出周期内で一定にホールドされた制御用トルク値Thを制御演算周期ごとに基本制御量演算部35に供給することができる。
【0072】
又、図11に示すように、トルク検出可能期間内(より詳しくは、1回のみのトルク検出)で1回の制御演算が実行されるときには、この演算処理に伴って演算されたトルク値Tがトルク微分演算部32に出力される。この場合、トルク微分演算部32は、図11に示すように、前回のトルク値T(より詳しくは、前回の制御用トルク値Th)と今回のトルク値T(より詳しくは、今回の制御用トルク値Th)との間の傾きをトルク微分値T’とする演算処理を実行し、演算したトルク微分値T'をS&H部34に出力する。
【0073】
これにより、S&H部34は、図11に示すように、次回のトルク検出可能期間まで演算されたトルク微分値T'をサンプル点として次回のトルク検出までホールド(維持)し、このホールド後のトルク微分値T'を制御用トルク微分値T'hとして制御演算周期ごとに微分制御量演算部36に出力する。そして、トルク微分値T'の場合においても、図11にて長破線により示す実際のトルクの時間変化に対して、離散的ではあるものの、操舵トルクセンサ22によって検出されたトルク値Tの時間変化すなわちトルク検出周期内で一定にホールドされた制御用トルク微分値T'hを制御演算周期ごとに微分制御量演算部36に供給することができる。
【0074】
従って、この第4変形例においても、上記実施形態及び第1〜3変形例と同等の効果が得られる。
【0075】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態及び各変形例においては、モータ回転角センサ23から出力された電気信号を用いて回転角演算部41が回転角Θを演算し、この回転角Θを用いて角速度演算部42が角速度Θ'を演算するように実施した。この場合、モータ回転角センサ23を用いることに代えて、車両に搭載されて操舵ハンドル11の回動操作に伴って変化する物理量を検出する各種センサ、例えば、運転者による操舵ハンドル11の回動操作量を検出する操舵角センサや、左右前輪FW1,FW2の転舵量(ラックバー14の移動量)を検出する転舵角センサ、EPSモータ15に設けられて駆動電流を検出するモータ電流検出センサ、EPSモータ15のモータ端子電圧を検出するモータ電圧センサ等を採用することができる。そして、これらの各種センサによって検出された物理量を表す電気信号を用いて回転角演算部41が回転角を演算し、この回転角を用いて角速度演算部42が角速度を演算することができる。尚、角速度演算部42が各種センサによって検出された物理量を表す電気信号を用いて直接的に角速度を演算することも可能である。従って、上記実施形態及び各変形例と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0077】
FW1,FW2…左右前輪、10…電動パワーステアリング装置、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、13…ピニオンギア、14…ラックバー、15…EPSモータ、20…電気制御装置、21…車速センサ、22…操舵トルクセンサ、23…モータ回転角センサ、24…電子制御ユニット、25…駆動回路、30…トルク値関連制御量演算部、31…トルク値演算部、32…トルク微分演算部、33…S&H部、34…S&H部、35…基本制御量演算部、36…微分制御量演算部、40…回転角関連制御量演算部、41…回転角演算部、42…角速度演算部、43…ダンピング制御量演算部、50…アシスト制御部、51…アシスト量演算部、52…モータ駆動制御部、U…転舵ギアユニット
図1
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図12