(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加圧式焼却炉から発生する燃焼排ガスにより過給機のタービンを回転駆動し、前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気を加圧式焼却炉に供給して被処理物を加圧下で焼却処理すると共に、設備起動時には前記過給機のコンプレッサ側に送風機から始動用空気を供給する加圧焼却方法であって、
前記送風機の前記始動用空気を設備起動時において選択して吐出し、前記過給機の前記圧縮空気を設備起動後においては選択して吐出する切替手段と、
前記過給機に設けられ、一端が前記切替手段の吐出口に接続され、他端が前記過給機のタービンインペラの背面に相対するハウジング側に開口するシールガス流路と、を有するシール手段を用いて、
前記送風機の前記始動用空気を設備起動時に取り込んでシールガスとして前記タービンインペラの背面に吹き込み、設備起動後には前記過給機の前記圧縮空気を取り込んで前記シールガスとして前記タービンインペラの背面に吹き込む
ことを特徴とする加圧焼却方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、周知のように上記過給機は、タービンインペラのタービン軸(回転軸)を所定の軸受機構によって支持するものであり、軸受機構は所定の潤滑油によって軸受性能を発揮する。軸受機構として回転軸をジャーナル軸受に所定の隙間で挿入し、外部から供給される加圧空気により回転軸を浮上させ支持する気体軸受装置は、装置が複雑となり高額であり、量産採用の実例はない。上記加圧焼却炉設備では、加圧流動床式焼却炉から排出された高温排気ガスが駆動流体として過給機に流入するが、この高温排気ガスの一部が上記軸受機構の潤滑油に作用して潤滑油を劣化させる場合がある。すなわち、高温排気ガスの成分は焼却対象物や焼却用燃料等に依存するものと思われるが、この成分には過給機の潤滑油を劣化させる成分が含まれている場合がある。このような場合には、潤滑油の劣化が促進されるので、当該潤滑油の交換頻度が高くなり、この結果としてランニングコストを上昇させる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、加圧流動床式焼却炉の排気ガスに起因する過給機の潤滑油の劣化を少なくとも抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、加圧焼却設備に係る第1の解決手段として、圧縮空気による加圧下で被処理物を焼却処理する加圧式焼却炉と、該加圧式焼却炉の燃焼排ガスによって回転駆動されることによって前記圧縮空気を生成する過給機と、を備える加圧焼却設備であって、ガスを吐出するガス供給源と、該ガス供給源から供給されたガスを前記過給機のタービンインペラの背面にシールガスとして吹き込むシール手段と
を備える、という手段を採用する。
【0007】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、設備起動時において前記加圧式焼却炉に始動用空気を供給する送風機をさらに備え、前記シール手段は、前記ガス供給源として機能する前記送風機の前記始動用空気を設備起動時に取り込んで前記シールガスとして前記タービンインペラの背面に吹き込み、設備起動後には前記ガス供給源として機能する前記過給機の前記圧縮空気を取り込んで前記シールガスとして前記タービンインペラの背面に吹き込む、という手段を採用する。
【0008】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記シール手段は、設備起動時において前記始動用空気を選択して吐出し、設備起動後においては前記圧縮空気を選択して吐出する切替手段と、前記過給機に設けられ、一端が前記切替手段の吐出口に接続され、他端が前記タービンインペラの背面に相対するハウジング側に開口するシールガス流路とを備える、という手段を採用する。
【0009】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記シール手段は、前記過給機に設けられ、前記圧縮空気を前記シールガスとして前記タービンインペラの背面に相対するハウジング側に案内するシールガス流路を備える、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記シール手段は、前記タービンインペラの背面の複数個所に前記シールガスを吹き込む複数の噴出口を備える、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記シール手段は、前記タービンインペラの背面において前記シールガスを前記タービンインペラの外周側に向けて吹き込む噴出口を備える、という手段を採用する。
【0012】
また、本発明では、加圧焼却設備に係る第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、前記シール手段は、前記タービンインペラの背面の前記シールガスを同心円状に吹き込む噴出口を備える、という手段を採用する。
【0013】
さらに、本発明では、加圧焼却方法に係る解決手段として、過給機で生成した圧縮空気を加圧式焼却炉に供給して被処理物を焼却処理すると共に、設備起動時には過給機の圧縮機側に送風機から始動用空気を供給する加圧焼却方法であって、過給機におけるタービンインペラの背面にシールガスを吹き込む、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過給機におけるタービンインペラの背面にシールガスを吹き込むので、加圧式焼却炉の排気ガスが過給機の軸受機構に侵入することを抑制あるいは防止することが可能である。したがって、本発明によれば、過給機の軸受機構における潤滑油の劣化を抑制あるいは防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る加圧焼却設備は、
図1に示すように、加圧流動床式焼却炉1(加圧式焼却炉)、供給装置2、エアフィルタ3、送風機4、過給機5、第1の開閉弁6、第2の開閉弁7、三方弁8(切替手段)、予熱器9、第1、第2の調節弁10A、10B、集塵機11、排ガス処理装置12及び煙突13等から構成されている。なお、これら各構成要素は、
図1に示すように所定の配管によって相互接続されている。
【0017】
加圧流動床式焼却炉1は、第1、第2の調節弁10A、10Bを介して送風機4から供給される始動用空気K、あるいは第1、第2の調節弁10A、10Bを介して過給機5から給供される圧縮空気Aを一次燃焼空気、二次燃焼空気として取り込むことにより、被処理物Pを加圧流動床方式で焼却処理する略円筒状の焼却炉である。この加圧流動床式焼却炉1は、被処理物Pを焼却処理することによって生成された高温高圧の燃焼排ガスGを排出する。
【0018】
また、この加圧流動床式焼却炉1は、本加圧焼却設備の起動時(設備起動時)に内部を昇温させるための起動設備が付属的に設けられている。この起動設備は、補助燃料タンク1aと昇温バーナ1b等から構成されており、補助燃料タンク1aまたは都市ガス等の補助燃料供給源(図示略)から昇温バーナ1bに供給された補助燃料を上記始動用空気Kを用いて加圧流動床式焼却炉1内で燃焼させることにより、当該加圧流動床式焼却炉1内を所定温度(例えば被処理物Pが自発燃焼する温度)まで昇温させる。
【0019】
供給装置2は、外部から受け入れた被処理物Pを上記加圧流動床式焼却炉1に供給する装置であり、例えばスクリューコンベアまたはポンプである。ここで、加圧流動床式焼却炉1が焼却対象としている被処理物Pは、各種バイオマス等の可燃性廃棄物である。エアフィルタ3は、空気中のゴミや塵埃等を取り除いて清浄化する装置であり、このように空気を清浄化して得られる清浄空気を過給機5のコンプレッサ(圧縮機)側に供給する。
【0020】
送風機4は、加圧流動床式焼却炉1の上記起動設備と同様に設備起動時にのみ作動する装置であり、加圧流動床式焼却炉1による被処理物Pの焼却処理を開始する際に、始動用空気Kを加圧流動床式焼却炉1に供給する。
【0021】
すなわち、設備起動時には、加圧流動床式焼却炉1が通常の燃焼状態にないので、過給機5のタービン側には当該過給機5を駆動するに十分な燃焼排ガスGが供給されない。このような設備起動時における過給機5の状態に対して、送風機4は、外気から取り込んだ始動用空気Kを一次燃焼空気、二次燃焼空気として加圧流動床式焼却炉1に供給する。このような送風機4は、本加圧焼却設備の起動が完了して本加圧焼却設備が定常運転状態に至った段階(設備起動後)においては作動を停止する。
【0022】
過給機5は、上記加圧流動床式焼却炉1の燃焼排ガスGによって回転駆動されることによって上記エアフィルタ3から吸い込んだ清浄空気を圧縮して圧縮空気Aを生成する。この過給機5は、タービンインペラ5aとコンプレッサインペラ5bとが回転軸5cに各々固定された回転機械であり、駆動流体としての燃焼排ガスGがタービンインペラ5aに吹き付けられて発生する回転動力によってコンプレッサインペラ5bを回転駆動するものであり、当該コンプレッサインペラ5bの回転によって圧縮空気Aを生成する。このような過給機5は、上記圧縮空気Aを第2の開閉弁7に供給する。
【0023】
さらに詳しく説明ると、この過給機5は、
図2に示すように、上述したタービンインペラ5aの背面5a1とコンプレッサインペラ5bの背面5b1とが回転軸5cの各端部に固定されて一体化された翼車が所定形状のハウジング内に回転自在に収容されたものである。なお、この
図2では、便宜上、
図1に示した過給機5が左右反転した状態、つまりタービンインペラ5aを左側とし、コンプレッサインペラ5bを右側とした状態を示している。
【0024】
過給機5のハウジングは、
図2に示すように、上記タービンインペラ5aを収容するタービンハウジング5dと上記コンプレッサインペラ5bを収容するコンプレッサハウジング5eとを上記回転軸5cを収容する軸受ハウジング5fを挟んでネジ止め固定したものである。なお、軸受ハウジング5fは、上記回転軸5cに加えて、当該回転軸5cを回転自在に支持する軸受機構5gをも収容する。また、軸受ハウジング5fの内部には軸受機構5gに潤滑油を供給する油流路が形成されている。
【0025】
また、このようなタービンハウジング5dと軸受ハウジング5fとの間には、燃焼排ガスGの熱が軸受機構5gに伝達することを抑制するために遮熱板5hが介装されている。この遮熱板5hは、中心に回転軸5cが挿通する開口が形成された略円板状の部材であり、外周部がタービンハウジング5dと軸受ハウジング5fとによって挟持されている。
【0026】
タービンハウジング5d内には、タービンインペラ5aの外周にスクロール流路5d1とタービンノズル5d2とが形成されている。このようなタービンハウジング5d内において、燃焼排ガスGは、上記スクロール流路5d1及びタービンノズル5d2を経由して外周方向からタービンインペラ5aに吹き付けられ、当該タービンインペラ5aに回転動力を発生させる。
【0027】
一方、コンプレッサハウジング5eの内部には、コンプレッサインペラ5bの外周にディフューザー5e1及びスクロール流路5e2が形成されている。このようなコンプレッサハウジング5e内において、清浄空気は、回転状態のコンプレッサインペラ5bの前方から流入することによりディフューザー5e1に吹き込まれ、当該ディフューザー5e1及びスクロール流路5e2を通過することにより圧縮空気Aとなる。
【0028】
さらに、
図2及び
図3に示すように、過給機5にはタービンインペラ5aの背面5a1にシールガスSを供給するシールガス流路5iが形成されている。このシールガス流路5iは、図示するように、軸受ハウジング5fの内部に形成され、一端が三方弁8の出力ポート(吐出ポート)に接続された流路、及び軸受ハウジング5fと遮熱板5hとの隙間によって形成されている。このようなシールガス流路5iの他端(先端部)は、上記軸受ハウジング5fと遮熱板5hとの隙間によって形成されたシールガスSの噴出口Nである。この噴出口Nは、タービンインペラ5aの背面5a1に相対するハウジング側に開口する。つまり、シールガス流路5iの他端は、回転軸5cの回りに円環状かつ狭幅に開口するノズルである。
【0029】
また、この噴出口Nは、
図3に示すように、シールガスSをタービンインペラ5aの背面5a1においてタービンインペラ5aの外周側に向けて吹き込むように、断面形状がタービンインペラ5aの外周側に向けて湾曲している。このような噴出口Nからタービンインペラ5aの背面5a1かつ外周側に向けて噴き出したシールガスSは、タービンインペラ5aの背面5a1において回転軸5cの回りに無端状のガス膜を形成するので、タービンインペラ5aの背面5a1に侵入した燃焼排ガスGが回転軸5cを支持する軸受機構5gまで侵入することを抑制あるいは防止する。
【0030】
ここで、燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入は、少なくとも回転軸5cの回りに無端状のガス膜が形成されることで達成されるので、シールガスSをタービンインペラ5aの外周側に向けて噴射することは必ずしも必須ではない。タービンインペラ5aの背面5a1に略垂直にシールガスSを吹き付けてもよく、また場合によってはタービンインペラ5aの多少内(回転中心側)側に向けてシールガスSを吹き付けてもよい。
【0031】
また、燃焼排ガスGの侵入に安定して対抗し得るガス膜を形成するためには、噴出口Nとタービンインペラ5aの背面5a1との対向距離をできるだけ小さくすることが好ましい。例えば、この対向距離がより小さくなるように軸受ハウジング5f及び遮熱板5hの形状を変形させてもよい。このようなシールガス流路5iには、三方弁8を介することにより、設備起動時には始動用空気Kの一部がシールガスSとして供給され、一方、設備起動後においては圧縮空気Aの一部がシールガスSとして供給される。
【0032】
第1の開閉弁6は、
図1に示すように、上記送風機4の吐出側配管に設けられている。この第1の開閉弁6は、設備起動時には全開状態に設定され、一方、設備起動後においては全閉状態に設定される。第2の開閉弁7は、
図1に示すように、上記過給機5の圧縮機側の吐出口に接続された配管、つまりスクロール流路5e2の出口に接続された配管に設けられている。この第2の開閉弁7は、設備起動時には全閉状態に設定され、一方、設備起動後においては全開状態に設定される。すなわち、設備起動時に送風機4から吐出された始動用空気Kは、配管を介して予熱器9にのみ供給される。
【0033】
三方弁8は、2つの入力ポートと1つの出力ポートとを備える切替手段であり、2つの入力ポートを択一的に選択して出力ポートと接続する。この三方弁8は、
図1、
図2に示すように一方の入力ポートが送風機4に接続され、一方、他方の入力ポートが過給機5の圧縮機側の吐出口(つまりスクロール流路5e2の出口)に接続されている。また、この三方弁8の出力ポートは、シールガス流路5iの一端(後端)に接続されている。このような三方弁8は、設備起動時には一方の入力ポートを選択することにより送風機4から供給される始動用空気Kをシールガス流路5iに供給し、一方、設備起動後においては他方の入力ポートを選択することにより過給機5から供給される圧縮空気Aをシールガス流路5iに供給する。
【0034】
このような三方弁8及び上述した過給機5のシールガス流路5iは、本加圧焼却設備において、起動用空気Kや圧縮空気Aを取り込んでタービンインペラ5aの背面5a1にシールガスSとして吹き込むシール手段を構成している。また、送風機4及び過給機5は、本加圧焼却設備におけるガス供給源としても機能するものである。
【0035】
予熱器9は、上記第1、第2の開閉弁6,7と第1、第2の調節弁10A、10Bとの間に設けられており、送風機4から供給される始動用空気K(設備起動時)あるいは過給機5から供給された圧縮空気A(設備起動後)を加圧流動床式焼却炉1から供給された燃焼排ガスGを利用することによって昇温させる熱交換器である。圧縮空気Aは上記コンプレッサインペラ5bによる圧縮作用によって清浄空気の温度(略大気温度)以上に昇温されるが、予熱器9は、高温な燃焼排ガスGと始動用空気Kあるいは圧縮空気Aとを熱交換させることによって始動用空気Kあるいは圧縮空気Aをさらに昇温させて第1、第2の調節弁10A、10Bに供給する。なお、この予熱器9は、始動用空気Kあるいは圧縮空気Aとの熱交換によって低温化された燃焼排ガスGを集塵機11に排出する。
【0036】
第1の調節弁10Aは、加圧流動床式焼却炉1の底部に一次燃焼空気として供給される圧縮空気Aの流量を調節する第1の制御弁である。一方、第2の調節弁10Bは、加圧流動床式焼却炉1において上記一次燃焼空気よりも高い位置に二次燃焼空気として供給される圧縮空気Aの流量を調節する第2の制御弁である。このような第1、第2の調節弁10A、10Bは、加圧流動床式焼却炉1内における被処理物Pの燃焼状態が最も良好となるように調節される。
【0037】
集塵機11は、予熱器9から供給された燃焼排ガスGに含まれる粉塵等の固形物を分離除去する装置であり、例えばバグフィルタである。この集塵機11は、固形物が分離除去された高圧の燃焼排ガスGを過給機5のタービン側に供給する。この燃焼排ガスGは、タービンインペラ5aに作用することによって低圧かつ低温化されて排ガス処理装置12に供給される。
【0038】
排ガス処理装置12は、このような集塵機11から供給される燃焼排ガスGから硫黄成分や窒素成分等の不純物を除去する装置であり、当該不純物が除去されて清浄化された排ガスを煙突13に供給する。煙突13は、周知のように所定高さを持つ筒状構造物であり、排ガス処理装置12から供給される排ガスを所定の高所から大気中に放出する。
【0039】
次に、本加圧焼却設備の動作、特に本加圧焼却設備において特徴的な構成要素であるシール手段の動作について詳しく説明する。
【0040】
最初に、本加圧焼却設備の起動時(設備起動時)の動作について説明する。この設備起動時において、第1の開閉弁6は全開状態、第2の開閉弁7は全閉状態にそれぞれ設定され、さらに切替手段である三方弁8は一方の入力ポートを選択するように設定される。この状態において送風機4が作動することにより、送風機4から吐出される始動用空気Kの殆どが加圧流動床式焼却炉1に供給され、また始動用空気Kの一部が三方弁8を介して過給機5のシールガス流路5iに供給される。
【0041】
すなわち、送風機4から吐出する始動用空気Kは、第1の開閉弁6、予熱器9を経由して第1、第2の調節弁10A、10Bに供給され、当該第1、第2の調節弁10A、10Bによって流量が最終的に調整されて加圧流動床式焼却炉1及び昇温バーナ1bに供給される。この加圧流動床式焼却炉1は、上記始動用空気Kを一次燃焼空気及び二次燃焼空気として取り込むことにより、また起動設備が一次燃焼空気及び二次燃焼空気を酸化剤として燃焼(補助燃料)を燃焼させることにより内部が徐々に昇温する。
【0042】
そして、加圧流動床式焼却炉1内の温度が所定温度(例えば被処理物Pが自発燃焼する温度)まで昇温されると、供給装置2が作動することによって加圧流動床式焼却炉1が被処理物Pの焼却処理(燃焼処理)を開始する。このようにして被処理物Pの焼却処理が始まると、加圧流動床式焼却炉1内では過給機5を駆動するのに十分な量の燃焼排ガスGが発生する。そして、燃焼排ガスGは、加圧流動床式焼却炉1から予熱器9及び集塵機10を経由して過給機5のタービン側に供給される。この結果、過給機5は、加圧流動床式焼却炉1から供給される燃焼排ガスGによって回転駆動される。
【0043】
このようにして過給機5が燃焼排ガスGによって回転駆動される状態に至ると、送風機4の作動が停止され、また第1の開閉弁6が全閉状態、第2の開閉弁7が全開状態にそれぞれ設定変更され、さらに三方弁8は他方の入力ポートを選択するように設定される。この結果、本加圧焼却設備は、設備起動状態(設備起動時)から定常運転状態(設備起動後)に移行する。
【0044】
このような設備起動後では、集塵機11において燃焼排ガスG中の固形物が分離除去されて過給機5に供給されると共に、過給機5から供給された圧縮空気Aが予熱器9によって予熱される。そして、過給機5の駆動に供された燃焼排ガスGは、過給機5から排ガス処理装置12に供給されて不純物が除去された後、煙突13から大気中に放出される。また、圧縮空気Aは、予熱器9で予熱された後に第1、第2の調節弁10A、10Bで流量調節されて加圧流動床式焼却炉1に供給され、一次燃焼空気及び二次燃焼空気として被処理物Pの燃焼に供される。
【0045】
以上が本加圧焼却設備の全体的な動作であるが、本加圧焼却設備は設備起動時及び設備起動後において以下のような特徴的動作を行う。
【0046】
すなわち、設備起動時には、始動用空気Kの一部が三方弁8を介して過給機5のシールガス流路5iに供給され、当該シールガス流路5iの先端に位置する噴出口Nからタービンインペラ5aの背面5a1かつ外周側に向けてシールガスSとして噴き出す。そして、このシールガスS(始動用空気K)は、タービンインペラ5aの背面5a1において回転軸5cの回りに無端状のガス膜を形成する。
【0047】
ここで、このような設備起動時には、第2の開閉弁7が全閉状態に設定されるので、送風機4から吐出した始動用空気Kの一部が過給機5の圧縮機における吐出口に供給されて過給機5の圧縮機に外乱を与えることがない。また、このような設備起動時には、一方の入力ポートを選択するように三方弁8が設定されるので、過給機5が定常的な回転数に達していないために圧力が不十分な過給機5の圧縮機の吐出空気ではなく、送風機4によって所定の流速が与えられた始動用空気Kがシールガス流路5iに供給される。
【0048】
この結果として、タービンインペラ5aの背面5a1に侵入した燃焼排ガスGは、上記シールガスS(始動用空気K)が形成するガス膜によって回転軸5c近傍に侵入することができず、よって軸受ハウジング5f内において回転軸5cを支持する軸受機構5gまで侵入することはできない。したがって、軸受機構5gの潤滑油に燃焼排ガスGが接触することを防止することができるので、設備起動時において潤滑油の劣化を防止することができる。
【0049】
一方、設備起動後においては、送風機4から吐出した始動用空気Kの一部に代えて、過給機5の圧縮機側から吐出される圧縮空気Aの一部が三方弁8を介してシールガス流路5iに供給される。この圧縮空気Aは、過給機5が定常回転することによって過給機5の圧縮機側から吐出されるものなので、十分な圧力を有するものである。そして、このような圧縮空気Aは、シールガスSとして噴出口Nからタービンインペラ5aの背面5a1かつ外周側に向けて噴き出す。そして、このシールガスS(圧縮空気A)は、タービンインペラ5aの背面5a1において回転軸5cの回りに無端状のガス膜を形成する。
【0050】
この結果として、タービンインペラ5aの背面5a1に侵入した燃焼排ガスGは、上記シールガスS(圧縮空気A)が形成するガス膜によって回転軸5c近傍に侵入することができず、よって軸受ハウジング5f内において回転軸5cを支持する軸受機構5gまで侵入することはできない。したがって、シールガスS(圧縮空気A)によって軸受機構5gの潤滑油に燃焼排ガスGが接触することを防止することができるので、設備起動後においても潤滑油の劣化を防止することができる。
【0051】
ここで、設備起動時にシールガスSとして用いる始動用空気Kは、過給機5の定常運転時における圧縮空気Aに比べて圧力が低い。しかしながら、設備起動時における燃焼排ガスGの圧力は、定常運転時における燃焼排ガスGの圧力よりも小さい。したがって、設備起動時において始動用空気KをシールガスSとしてタービンインペラ5aの背面5a1に噴き出すことにより、燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を十分に防止することができる。
【0052】
このように、本実施形態では、設備起動時に始動用空気KをシールガスSとして用い、また設備起動後においては圧縮空気AをシールガスSとして用いる。すなわち、本実施形態では、設備起動時には送風機4をシールガスSの供給源として用いることにより燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止し、また設備起動後には過給機5をシールガスSの供給源として用いることにより燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止する。このような本実施形態によれば、設備起動時及び設備起動後の何れにおいても燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止することが可能であり、以って潤滑油の劣化を抑制することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では設備起動後(定常運転状態)において設備起動時に始動用空気KをシールガスSとして用い、また設備起動後においては圧縮空気AをシールガスSとして用いるが、本発明はこれに限定されない。例えば、別途用意した空気供給源(例えばコンプレッサ)を用いる場合には、起動時に起動用送風機に代えて別途用意した空気供給源を用い、起動後に過給機からシールガスを供給するように切り替えてもよい。また、起動時には、起動用送風機からシールガスを供給し、起動後、別途用意した空気供給源に切り替えることも可能である。なお、起動時、起動後ともに別途用意した空気供給源を用いてもよい。
【0054】
(2)本実施形態では、加圧焼却設備が定常運転状態にある設備起動後だけではなく備起動時にもシールガスSをタービンインペラ5aの背面5a1に噴き出すが、本発明はこれに限定されない。燃焼排ガスGは、量も少なく、また圧力が低いので、燃焼排ガスGが軸受機構5g内に侵入する可能性が低い。この点を考慮すると、設備起動時におけるシールガスSの噴出を行わないことも考えられる。この場合には、設備起動後に圧縮空気Aをシールガス流路5iに供給するだけでよいので、三方弁8を削除して過給機5の圧縮機の吐出空気をシールガス流路5iに直接供給すればよい。すなわち、この場合のシール手段は、シールガス流路5iを備える過給機5のみから構成される。
【0055】
(3)上記実施形態ではタービンインペラ5aの背面5a1に円環状の噴出口Nを1つだけ設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば
図4に示すように、遮熱板5hを3枚のユニット板5h1,5h2,5h3から構成することにより、タービンインペラ5aの背面5a1に対向するように3つの噴出口5i1,5i2,5i3を設けてもよい。
【0056】
すなわち、
図4(a)に示すように、軸受ハウジング5fと第1のユニット板5h1とによってタービンインペラ5aの背面5a1にシールガスSを供給する第1の分岐流路5i1を形成し、また第1のユニット板5h1と第2のユニット板5h2とによって上記第1の分岐流路5i1に連通する第2の分岐流路5i2を形成し、さらに第2のユニット板5h2と第3のユニット板5h3とによって上記第2の分岐流路5i2に連通する第3の分岐流路5i3を形成する。これら第1〜第3の分岐流路5i1〜5i3の先端部は、回転軸5cの回りに3重円環状に設けられた狭幅の噴出口N1〜N3(ノズル)である。
【0057】
上記第1の分岐流路5i1は、図示するように、軸受ハウジング5fと第1のユニット板5h1との隙間によって形成されたものであり、第2の分岐流路5i2は、第1のユニット板5h1に形成された貫通孔及び第1のユニット板5h1と第2のユニット板5h2との隙間によって形成されたものであり、第3の分岐流路5i3は、第2のユニット板5h2に形成された貫通孔及び第2のユニット板5h2と第3のユニット板5h3との隙間によって形成されたものである。このような3つの噴出口N1〜N3を備えることにより、回転軸5cの回りに3重のガスシールが施されるので、燃焼排ガスGが軸受機構5g内に侵入して潤滑油に作用することをより確実に防止ることができる。
【0058】
ここで、
図4(a)では、3つの噴出口N1〜N3の全てがタービンインペラ5aの背面5a1に向けてシールガスSを吹き付けるように3つの噴出口N1〜N3を形成した状態を示しているが、例えば
図4(b)に示すように、回転軸5cにより近い2つの噴出口N1’,N2’については、タービンインペラ5aの外周側に向けてシールガスSを吹き付けるように形成してもよい。
【0059】
(4)上記実施形態ではタービンインペラ5aの背面5a1に円環状の噴出口Nを1つだけ設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば
図5に示すように、遮熱板5hにおいてタービンインペラ5aと最も近接する部位にラビリンスシール5kを補足的に設けることにより、当該ラビリンスシール5kとシールガスSによるガスシールによって燃焼排ガスGが軸受機構5g内に侵入して潤滑油に作用することをより確実に防止ることができる。
【0060】
(5)上記実施形態では過給機5の圧縮側における吐出口に送風機4の吐出口を接続したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように過給機5の圧縮側における吸入口とエアフィルタ3との間に送風機4を介装し、また当該送風機4の吐出口と過給機5における圧縮側の吸入口との間に第2の開閉弁7A及び第3の開閉弁14Aを設け、さらに過給機5の圧縮側における吸入口と吐出口との間をバイパス配管で接続すると共に当該バイパス配管に第1の開閉弁6Aを設ける構成を採用してもよい。また、
図6によれば、エアフィルタ3と過給機5との間に送風機4をバイパスするように第2のバイパス配管で接続されると共に当該第2のバイパス配管に第4の開閉弁14Bが設けられ、また三方弁8に代えて第5の開閉弁8A及び第6の開閉弁8Bが採用されている。
【0061】
このような加圧焼却設備では、設備起動時には、第1の開閉弁6A及び第3の開閉弁14Aが全開状態、かつ第2の開閉弁7A及び第4の開閉弁14Bが全閉状態にそれぞれ設定され、さらに第5の開閉弁8Aは全閉状態、第6の開閉弁8Bは全開状態に設定される。この状態において送風機4が作動することにより、送風機4から吐出される始動用空気Kの殆どが第1の開閉弁6Aを介して加圧流動床式焼却炉1に供給され、また始動用空気Kの一部が第6の開閉弁8Bを介して過給機5のシールガス流路5iに供給される。そして、この始動用空気Kは、シールガス流路5iを介してタービンインペラ5aの背面5a1にシールガスSとして噴き出し、燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止する。
【0062】
一方、設備起動後には、送風機4の作動が停止し、第1の開閉弁6A及び第3の開閉弁14Aが全閉状態、かつ第2の開閉弁7A及び第4の開閉弁14Bが全開状態にそれぞれ設定され、さらに第5の開閉弁8Aは全開状態、第6の開閉弁8Bは全閉状態となるように設定される。この結果、燃焼排ガスGで回転駆動される過給機5は、送風機4をスルーパスしてエアフィルタ3から供給される清浄空気を吸引して圧縮空気Aを生成し、加圧流動床式焼却炉1に供給する。また、圧縮空気Aの一部が第5の開閉弁8Aを介して過給機5のシールガス流路5iに供給され、当該シールガス流路5iを介してタービンインペラ5aの背面5a1にシールガスSとして噴き出して燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止する。
このような加圧焼却設備によっても、上述した実施形態と同様に、始動用空気Kあるいは圧縮空気AがシールガスSとしてタービンインペラ5aの背面5a1に噴き出すので、燃焼排ガスGの軸受機構5gへの侵入を防止し、以って潤滑油の劣化を抑制することができる。