(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電話の受話器や携帯電話端末等のように、一方の耳に当て付けて使用される装置の場合には、左右どちらの耳に当て付けられているのかが分からなかった。したがって、例えば、携帯電話端末の音量設定が左耳に対して最適な設定となっている場合に、その携帯電話端末を右耳に当て付けて使用してしまうと、音量が大きすぎたり、音量が小さすぎたりするという問題があった。
【0005】
このように、左右の耳で聴力差のある利用者の場合、ひとつの音響特性をもつ受話器では、両方の聞こえの差異に対応できず、必ずしも聞きやすい状態にならなかった。
【0006】
また、左右の耳の聴力差に加えて、補聴器を装用しているか否かによっても、適切な音響特性は異なる。したがって、補聴器を使用しない状況と装着している状況では、ひとつの音響特性をもつ受話器では、両方の聞こえの差異に対応できず、必ずしも聞きやすい状態にならなかった。
【0007】
本発明の課題は、左右いずれの耳に当て付けて使用されているのかを自動的に判断して、適切な音響特性に自動的に切り替えて、利用者にとって聞き取りやすい音声出力を行える音声出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
(1)本発明は、音声を出力する音声出力部(104)と、前記音声出力部から出力する音声の音響特性について、少なくとも2つ以上の音響特性の設定を記憶する記憶部(514)と、前記記憶部に記憶された音響特性を用いて前記音声出力部を駆動する駆動回路部(552)と、利用者が左右どちらの耳で当該音声出力装置を使用しているか検出する検出部(512)と、前記検出部の検出結果に応じて、左右どちらの耳で使用されているかを判断し、前記駆動回路部が用いる音響特性を変更するように制御する制御部(511)と、を備える音声出力装置(100,200)を提案している。
【0010】
この発明によれば、音声出力部は、音声を出力する。記憶部は、音声出力部から出力する音声の音響特性について、少なくとも2つ以上の音響特性の設定を記憶する。駆動回路部は、記憶部に記憶された音響特性を用いて音声出力部を駆動する。検出部は、利用者が左右どちらの耳で当該音声出力装置を使用しているか検出する。制御部は、検出部の検出結果に応じて、左右どちらの耳で使用されているかを判断し、駆動回路部が用いる音響特性を変更するように制御する。したがって、音声出力装置は、左右いずれの耳に当て付けて使用されているのかを自動的に判断して、適切な音響特性に自動的に切り替えて、利用者にとって聞き取りやすい音声出力を行える。
【0011】
(2)本発明は、(1)に記載の音声出力装置において、前記検出部(512)は、重力加速度により利用者が左右どちらの耳で使用しているかを検出すること、を特徴とする音声出力装置(100,200)を提案している。
【0012】
この発明によれば、検出部は、重力加速度により利用者が左右どちらの耳で使用しているかを検出する。したがって、音声出力装置は、簡単な構成により利用者が音声出力装置を左右どちらの耳で使用しているのかを検出可能となる。特に、従来からスマートフォン等の携帯電話端末に内蔵されている加速度センサを利用することにより、センサを新たに追加することなく、本発明を実現可能となる。
【0013】
(3)本発明は、(1)又は(2)に記載の音声出力装置において、前記制御部(511)は、前記検出部(512)が検出する加速度の大きさ及び/又は加速度の方向に基づいて、左右どちらの耳で使用されているかを判断すること、を特徴とする音声出力装置(100,200)を提案している。
【0014】
この発明によれば、制御部は、検出部が検出する加速度の大きさ及び/又は加速度の方向に基づいて、左右どちらの耳で使用されているかを判断する。したがって、音声出力装置は、簡単な構成により利用者が音声出力装置を左右どちらの耳で使用しているのかを検出可能となる。
【0015】
(4)本発明は、(3)に記載の音声出力装置において、磁気を発生させる装用具から生じる磁気の検出が可能な磁気センサ(516)を備え、前記制御部(511)は、前記磁気センサが検出する磁気の大きさ及び/又は方向を加味して、当該音声出力装置が左右どちらの耳に使用されているか、及び/又は、補聴器を装用中であるのか否か、を判断すること、を特徴とする音声出力装置(200)を提案している。
【0016】
この発明によれば、磁気センサは、磁気を発生させる装用具から生じる磁気の検出が可能である。制御部は、磁気センサが検出する磁気の大きさ及び/又は方向を加味して、当該音声出力装置が左右どちらの耳に使用されているか、及び/又は、補聴器を装用中であるのか否か、を判断する。したがって、音声出力装置は、音声出力装置が左右どちらの耳に使用されているかを、より正しく判断できる。
【0017】
(5)本発明は、(1)から(4)までのいずれか1項に記載の音声出力装置において、前記制御部(511)は、前記駆動回路部(552)が用いる音響特性を変更するときに、変更前の音響特性を用いたときの出力と変更後の音響特性を用いたときの出力との差が所定値を越える場合には、急激な音響特性の変化が生じないように制御を行うこと、を特徴とする音声出力装置(100,200)を提案している。
【0018】
この発明によれば、制御部は、駆動回路部が用いる音響特性を変更するときに、変更前の音響特性を用いたときの出力と変更後の音響特性を用いたときの出力との差が所定値を越える場合には、急激な音響特性の変化が生じないように制御を行う。したがって、音声出力装置は、急激な音量変化で利用者に違和感を与えたり、利用者を驚かせたりすることがない、滑らかな音響特性の変化をさせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、音声出力装置は、左右いずれの耳に当て付けて使用されているのかを自動的に判断して、適切な音響特性に自動的に切り替えて、利用者にとって聞き取りやすい音声出力を行える。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明による音声出力装置である携帯電話端末100の第1実施形態を示す図である。
なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
以下の説明では、
図1中で見えている側の面を表面と呼び、見えていない側の面を裏面と呼ぶ。
また、
図1中には、それぞれが直交するX軸、Y軸、Z軸の直交座標を示した。
【0023】
携帯電話端末100は、筐体110の表面側に、保護パネル101と、操作キー102と、マイク103と、音声出力部104とを備えた音声出力装置である。
【0024】
保護パネル101は、表示画面上に設けられている。
本実施形態の保護パネル101は、タッチパネルとして構成されており、携帯電話端末100の各種情報を表示する表示部としての機能と、数字や文字入力、各種選択等を行うときに操作される操作部としての機能とを有している。
【0025】
操作キー102は、タッチパネルを用いなくとも、操作入力を行えるように設けられた操作部材である。
【0026】
マイク103は、通話時の音声を入力するマイクである。
【0027】
音声出力部104は、通話時の受話音等の音声を出力する。音声出力部104には、従来から用いられている小型の電磁式スピーカを用いてもよいが、圧電素子を用いた振動子の振動により音声を出力する音声出力部としてもよい。
【0028】
図2は、第1実施形態の携帯電話端末100の内部構成の概略を示すブロック図である。
携帯電話端末100は、上述した構成の他、制御部511と、検出部512と、加速度センサ513と、記憶部514と、設定部515と、通信部551と、駆動回路部552とを備えている。
【0029】
制御部511は、検出部512の検出結果に応じて、本携帯電話端末100が左右どちらの耳で使用されているかの判断を行い、その判断結果に応じて、駆動回路部552が用いる音響特性を適切な特性に自動的に変更するように制御を行う。制御部511が行う制御の詳細については、後述する。
【0030】
検出部512は、加速度センサ513を有している。
加速度センサ513は、携帯電話端末100に作用する加速度を検出する。加速度センサ513は、携帯電話端末100が大きく動いていないときには、重力加速度の方向、すなわち、重力が作用する方向を検出することができる。よって、制御部511は、加速度センサ513から得た情報により、携帯電話端末100がどのような向きを向いているのかを検出することが可能となる。
したがって、検出部512は、加速度センサ513が検出した重力加速度により、利用者が携帯電話端末100を左右どちらの耳で使用しているかを検出することができる。
本実施形態の加速度センサ513は、端末本体の動きを検出するモーションセンサーとして、多くの携帯電話端末等に従来から内蔵されている加速度センサを利用している。なお、加速度センサ513としては、従来からある加速度センサを利用せずに、左右検出のために専用のセンサを設けてもよい。
また、加速度センサ513のサンプリング周波数が高い場合は、静的な重力加速度を安定して検出するために、手ぶれによる高周波成分を低減させるローパスフィルタを通して安定させることが好ましい。
【0031】
図3は、第1実施形態の携帯電話端末100が重力加速度の方向を検出する状態を示す概略図である。
発着信時に、加速度センサ513は、携帯電話端末100に作用している加速度を検出する。具体的には、
図1に示した、レシーバー面をXY軸とするX軸方向の加速度の「方向」と「大きさ」を主に計測し、制御部511に伝える。
図3に示すように、携帯電話端末100を左耳にかざす場合と右耳にかざす場合とでは、X軸における加速度の方向が反対になっている。
この加速度の向きの検出結果に基づいて、制御部511は、携帯電話端末100が左耳にあてがわれているのか、右耳にあてがわれているのかを判断する。
なお、この
図3に示す例では、利用者が頭を起こしている状態にあることを前提としている。
【0032】
制御部511は、検出部512の検出結果に応じて携帯電話端末100が左耳にあてがわれているのか、右耳にあてがわれているのかを判断し、駆動回路部552が用いる音響特性を自動的に選択して、駆動回路部552へコマンドを送る。
具体的には、制御部511は、携帯電話端末100が左耳にあてがわれていると判断したときには、「左耳用モード」の設定を記憶部514から呼び出して、駆動回路部552へ指示する。
一方、制御部511は、携帯電話端末100が右耳にあてがわれていると判断したときには、「右耳用モード」の設定を記憶部514から呼び出して、駆動回路部552へ指示する。
【0033】
また、加速度センサ513の検知結果から制御部511が判断した設定をユーザが画面表示を見て確認する場合等に、耳から携帯電話端末100を一時的に離す動作を行う場合に対する処理として、以下の処理を行ってもよい。すなわち、携帯電話端末100を耳から離して重力加速度の方向が変わった場合、最初に安定した重力加速度での左右判断結果のまま一定時間(例えば15秒間)は保持し、音響出力を変更するまでのカウントダウンを画面表示するように制御を行う。このようにすることにより、自動で判断された設定を利用者が画面表示を見て確認することが可能となる。
【0034】
記憶部514は、駆動回路部552の動作設定(音響特性)を記憶する。
記憶部514は、左耳で聞き取りやすい音を出力する「左耳用モード」と、右耳で聞き取りやすい音を出力する「右耳用モード」との少なくとも2つの音響特性の設定を記憶する。「左耳用モード」と「右耳用モード」とは、それぞれ、利用者毎に異なるものであるから、予め設定しておくこととなる。
【0035】
設定部515は、駆動回路部552における音声処理に関して、画面表示及び操作入力の受け付けを行う。
設定部515は、「左耳用モード」と「右耳用モード」のそれぞれについて、音量設定やイコライジング、ダイナミックレンジ圧縮等の音響特性の詳細な設定を受け付ける。どのような音響特性が利用者にとって適切であるのかは、利用者によって異なるので、設定部515では、操作入力にしたがって、各モードでの音声処理についてのカスタマイズが可能となっている。カスタマイズされた「左耳用モード」又は「右耳用モード」の設定内容は、記憶部514に記憶される。なお、この設定は、医療機関で行ってもよいし、携帯電話サービスを提供する事業者が行ってもよい。また、利用者自身が携帯電話端末100を操作して設定可能としてもよい。
【0036】
図4は、設定部515が音響特性の設定入力を受け付けるときの表示部における表示例を示す図である。
設定部515は、例えば、上下キーに10段階の音量の設定ができ、「左耳用モード」と「右耳用モード」のそれぞれについて、音量の設定が可能である。また、設定部515は、左右キーによって、右キーを押せば右耳の音響特性の設定を呼び出し、左キーでは左耳用の設定を呼び出すことを行ってもよい。なお、
図4中の操作キーは、表示部に表示されたものであり、タッチパネル操作によって、実現される操作部であるが、実際の操作部材にこれらの機能を割り当ててもよい。
【0037】
また、設定部515は、「左耳用モード」と「右耳用モード」とを強制的に切り替える利用者の操作入力の受け付けも行う。利用者の操作入力による設定部515への各モードの強制的な設定が行われた場合は、その設定を優先する。この場合、制御部511は、検出部512の動作を終了させ、設定部515から指示されたモード設定を記憶部514から呼び出し、駆動回路部552に指示する。
【0038】
通信部551は、通話を管理する回路である。通信部551からは、音声信号が駆動回路部552へと出力される。
【0039】
駆動回路部552は、音声出力部104を駆動する信号を生成する回路である。駆動回路部552は、イコライザ部(EQ)554と、ダイナミックレンジ圧縮部(DRC)555と、アウトプットパワーコントローラ(OPC)556と、アンプ(AMP)557とを備えている。
【0040】
イコライザ部(EQ)554は、周波数イコライジングを行う。イコライザ部554は、通信部551から得た音声信号に、必要な場合に周波数イコライジングを行って、ダイナミックレンジ圧縮部555へ送る。イコライザ部554の具体的な動作については、後述する。
【0041】
ダイナミックレンジ圧縮部(DRC)555は、DRC(ダイナミックレンジコンプレション)機能により、聞きやすい音の作成を行う。ダイナミックレンジ圧縮部555は、イコライザ部554から得た音声信号に、必要な場合にダイナミックレンジの圧縮処理を行い、アウトプットパワーコントローラ556へ送る。ダイナミックレンジ圧縮部555の具体的な動作については、後述する。
【0042】
アウトプットパワーコントローラ(OPC)556は、出力の制限を行う。アウトプットパワーコントローラ556のこの機能は、ダイナミックレンジ圧縮部555の3バンドDRCの結果出力を加算するときに、不都合となる過大出力が発生することを防ぐ機能である。本機能により過大出力で聴覚機能を損傷する事を防止できる。
【0043】
アンプ(AMP)557は、アウトプットパワーコントローラ556から得た音声信号を増幅して、音声出力部104へ送る増幅部である。このアンプ557としては、例えば、新日本無線社製の、NJW1263を用いることができる。
【0044】
次に、特に難聴者が利用する場合に適した「左耳用モード」と「右耳用モード」について説明する。本実施形態の携帯電話端末100は、難聴者の利用に際して聞き取りやすくなるように、音響特性を調整する。
【0045】
「左耳用モード」と「右耳用モード」のいずれにおいても、補聴器を装用していない難聴者が用いる場合には、駆動回路部552は、アンプ557による信号の増幅率を大きくし、イコライザ部554及びダイナミックレンジ圧縮部555を機能させる。
【0046】
また、イコライザ部554は、EQ機能による難聴者の聞こえ対策と、EQ機能による音漏れ対策とを行っている。
難聴者は、様々な聞こえの周波数特性を持つため、各々の聞こえ特性に合わせた高度な周波数イコライジング(例:10バンドEQ機能)を施す事により、より聞こえやすい音声伝達が可能となる。よって、この難聴者用のイコライジングは、利用者個々に合わせた設定値とすることが望ましい。
また、音声出力部104に圧電素子からなる振動子を用いる場合には、圧電素子は、2から4KHzの周波数帯の出力が大きい特性をもっている。必要以上に出力されているこれらの帯域をイコライジング処理で抑制することで周波数特性を向上させながら、音漏れとして耳に付きやすい2から4kHzの周波数帯域の出力を抑制することができる。
【0047】
次に、ダイナミックレンジ圧縮について説明する。
難聴者は、小さい音が聞こえづらく、反面大きな音は健聴者と変わらない程度に聞こえる特性を持つ場合が多い。つまり、単に大音量にしても逆にうるさく不快に感じてしまう場合がある。そこで、本実施形態では、ダイナミックレンジ圧縮部555により小さい音を大きくし、大きい音は小さい音よりも増幅しないダイナミックレンジ圧縮処理を行う。ダイナミックレンジ圧縮処理は、例えば周波数帯域毎に(例えば低域、中域、高域に三分割して)、それぞれ異なるダイナミックレンジ圧縮を行うことで、様々な難聴の聞こえのタイプに対応できる。本実施形態では、先に示した
図2に示すように、低域用ダイナミックレンジ圧縮部555aと、中域用ダイナミックレンジ圧縮部555bと、高域用ダイナミックレンジ圧縮部555cとの3つのダイナミックレンジ圧縮部が設けられている。
【0048】
上述した信号の増幅率と、イコライジング処理と、ダイナミックレンジ圧縮とは、難聴者の左右の耳それぞれに対して、最適な設定値が存在する。そこで、本実施形態の記憶部514には、左右それぞれの耳に最適な信号の増幅率と、イコライジング処理の設定と、ダイナミックレンジ圧縮の設定がなされた「左耳用モード」と「右耳用モード」の設定値が記憶されている。
【0049】
また、上述したように、制御部511は、「左耳用モード」と「右耳用モード」とを切り替える。しかし、この切り替え時に、急激に音量等の変化が生じることは好ましくない。そこで、本実施形態の制御部511は、「左耳用モード」の最小音量時の総ゲインと、「右耳用モード」の最大音量時の総ゲインの差が、例えば6dBを越える場合、利用者が滑らかな音量変化と感じるように、これが6dB以下の差となるように段階的ゲインを設定する1ステップ以上の中間的出力を挿入する。このとき、画面表示にも左右の設定の中間設定である旨の表示を行うとよい。
【0050】
以上説明したように、第1実施形態によれば、携帯電話端末100は、加速度センサ513が重力加速度の方向を検出することにより、利用者が左右どちらの耳で携帯電話端末100を使用しているかを検出し、自動的に「左耳用モード」と「右耳用モード」とを切り替える。よって、携帯電話端末100は、利用者が特別な操作を行うことなく、利用者にとって聞き取りやすい音声出力を行える。よって、利用者は、より自然な音声を聞き取ることができる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態の携帯電話端末200は、検出部512が行う、利用者が携帯電話端末200を左右どちらの耳で使用しているかの検出の手法が異なる他は、第1実施形態と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0052】
図5は、第2実施形態の携帯電話端末200の内部構成の概略を示すブロック図である。
第2実施形態の携帯電話端末200の検出部512は、加速度センサ513に加えて、磁気センサ516を備えている。
第2実施形態の携帯電話端末200では、ユーザの耳に磁気ピアスや磁気イヤリング、磁気イヤーカフス等の磁気装飾具(装用具)を装着することにより、左右の耳で異なる磁力の方向を発生させ、磁気センサ516によりその磁力を検出する。これにより、第2実施形態の携帯電話端末200では、第1実施形態よりも、より精度よく左右耳を判定することが可能となる。
【0053】
磁気装飾具に使用する磁石は、幅1mm×高さ0.5mm程度の小型磁石で市販されているもので充分である。小型であっても磁石による磁力は地磁気より強力なため、近年のスマートフォンに搭載されている磁気センサや折り畳み型携帯電話機の開閉検知に使用される磁気センサを流用することでも検知可能である。
【0054】
磁気装飾具に取り付ける磁石は、左の磁気装飾具に取り付ける磁石と、右の磁気装飾具に取り付ける磁石とで、表側を向く極がそれぞれ異なるように、磁石を左右それぞれの磁気装飾具に取り付ける。磁石の磁気装飾具への取り付けは、磁石が外から見えないように内蔵されていることが望ましいが、例えば、両面テープ等を用いて簡易的に取り付けてもよい。
制御部511は、検出部512により検出した磁気の磁力線の向きにより、左右いずれの耳であるのかを判断する。
【0055】
図6は、第2実施形態の携帯電話端末200が磁気装飾具(装用具)に取り付けた磁石601L,601Rから生じる磁界を検出する状態を示す概略図である。
図6に示すように、左右を識別させるため左右の磁気装飾具には極を逆にして磁石601L,601Rを取り付ける。そうすることで音声出力装置を耳に当接させた際に磁気センサ516を通る磁力線は地磁気より強力であり、左右で磁力の方向が反対方向になる。なお、携帯電話端末200の磁気センサ516の配置位置としては、携帯電話端末200の使用時に磁気装飾具に取り付けた磁石に近くなる位置、すなわち、耳あて部分(音声出力部104)の近傍に配置することが好ましい。
【0056】
図6の例では、右の磁気装飾具にS極を表として磁石601Rを取り付け、左の磁気装飾具にN極を表として磁石601Lを取り付けている。これにより、検出部512が検出する磁気の磁力線の向きは、右の耳に近づいた場合と左の耳に近づいた場合とで逆向きとなる。これにより、制御部511は、携帯電話端末200が左右いずれの耳にあてがわれているのかを判断可能である。なお、上記極性の配置例は、一例であって、表側の極性がそれぞれ逆に配置されていればよい。
【0057】
発着信が行われたときには、制御部511から検出部512を呼び出し、検出部512は、加速度センサ513で検出した重力加速度の方向及び大きさと、磁気センサ516で検出した磁力の方向及び大きさを、制御部511へ伝える。
【0058】
ここで、左右判定は、加速度センサ513と磁気センサ516の計測値から特別大きい値の測定値を左右判定に用いることによりさらに精度が向上する。例えば、加速度センサ513が検出した加速度のX軸値が絶対値3.0m/s
2以上(参考:重力加速度は9.8m/s
2)あった場合、信憑性のある値と考えられる。また、磁気センサ516が検出した磁気のZ軸の値が、地磁気の数十μテスラ台を越える百μテスラ以上から、そのセンサの測定範囲までの磁力を検出した場合、信憑性のある値と判断できる。
【0059】
なお、加速度センサ513と磁気センサ516との両方を用いて左右判定を行う場合は、誤動作の少ない検出部品での検出結果を優先させるとよい。一般的には、地磁気検出用の磁気センサ516は、測定範囲外の強磁界に近付けると誤動作を起こす可能性があるため、加速度センサ513の方が誤動作は少ない。
【0060】
制御部511が、検出部512の検出結果に応じて携帯電話端末100が左耳にあてがわれているのか、右耳にあてがわれているのかを判断した後の動作については、第1実施形態と同様である。すなわち、制御部511は、駆動回路部552が用いる音響特性、例えば、「左耳用モード」と「右耳用モード」とを自動的に選択して、駆動回路部552へコマンドを送る。
【0061】
なお、第2実施形態の音声出力部104には、従来から用いられている小型の電磁式スピーカを用いてもよいが、磁気センサ516への影響がないように、圧電素子を用いた振動子の振動により音声を出力する音声出力部とすることが望ましい。
【0062】
以上説明したように、第2実施形態によれば、携帯電話端末200は、加速度センサ513に加えて、磁気センサ516を備え、磁気装飾具が発生する磁気をさらに検出する。よって、携帯電話端末200は、より高い精度で左右いずれの耳に携帯電話端末200があてがわれているのかを判断できる。
【0063】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0064】
(変形形態)
(1)第2実施形態において、磁気装飾具を利用する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、手の指に装用する指輪から小型永久磁石により磁気を発生させ、携帯電話端末が左右どちらの手で握られているかを検出し、例えば左手なら左耳に使用されるとしてもよい。
【0065】
(2)第2実施形態において、永久磁石を利用する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、永久磁石の代わりに、左右の有意信号(パルス)等を発生させる磁気装置を用いて、携帯電話端末が左右どちらの耳で使用されるか磁気信号解析し判定に用いてもよい。
【0066】
(3)第2実施形態において、磁気センサ516の検出結果は、携帯電話端末が左右どちらの耳で使用されるかの判断にのみ用いる例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、補聴器に永久磁石を取り付ける等して、補聴器が装用されている場合に磁気を検出可能として、磁気センサ516の検出結果を、補聴器装用状況を検出する目的にも用いてもよい。この場合には、左右の他、補聴器の装用有無についても状態を区別して、それぞれの状態に適した音響特性を自動的に選択可能に構成するとよい。
【0067】
(4)各実施形態において、携帯電話端末は、左右それぞれの耳に適した音響特性として、増幅率と、イコライジング、及び、ダイナミックレンジの圧縮処理を設定値として記憶部に記憶している例を挙げて説明した。しかし、これは、一例を示したに過ぎず、様々な処理形態とすることができる。例えば、単純に音量の設定(増幅率)のみを左右で異なる設定として記憶しておくだけとしてもよい。
【0068】
(5)各実施形態において、音声出力装置は、携帯電話端末である例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、固定電話や無線機等、他の種類の音声出力装置であってもよい。
【0069】
(6)第2実施形態において、加速度センサ513及び磁気センサ516を検出部512の一部として構成した例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、各センサを検出部から切り離して別々に構成してもよい。
【0070】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。