特許第6030507号(P6030507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6030507-複合耐摩耗部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030507
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】複合耐摩耗部材
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/04 20060101AFI20161114BHJP
   F16B 35/06 20060101ALI20161114BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20161114BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20161114BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20161114BHJP
   B02C 23/02 20060101ALN20161114BHJP
   B65G 11/16 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   B22D19/04
   F16B35/06 J
   F16B35/04 M
   F16B35/00 J
   F16B35/00 L
   F16B35/06 G
   B22D19/00 W
   !B02C23/02
   !B65G11/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-121544(P2013-121544)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-237166(P2014-237166A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年2月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智史
(72)【発明者】
【氏名】三井 康徳
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−006347(JP,A)
【文献】 特開2012−224914(JP,A)
【文献】 特開平11−335827(JP,A)
【文献】 実開平03−031113(JP,U)
【文献】 特開平03−004012(JP,A)
【文献】 特開昭61−294207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属母材(11)の摩耗作用を受ける摩耗面を前記金属母材(11)による超硬材(12)を鋳ぐるみによって形成した複合耐摩耗部材(10)であって、
上記摩耗面から上記金属母材(11)を貫通した取付孔(13)が形成され、その取付孔(13)には取付用固定ボルト(20)が挿通され、前記取付孔(13)は、前記固定ボルト(20)の頭部(21)が嵌る前記摩耗面側部分(13a)から縮径して金属母材(11)の摩耗面反対面に通じており、
固定ボルト(20)の頭部(21)は、上記金属母材(11)と同一材の鋳込みによって形成されているとともに、その上記摩耗面となる表面が前記鋳込みによる上記超硬材(12)と同一材からなる超硬材(22)の鋳ぐるみによって形成されて、上記摩耗面側部分(13a)にピッタリ嵌り、固定ボルト(20)のねじ軸部(23b)は上記取付孔(13)から突出した部分に取付材(A)を介してナット(26)がねじ込まれており、かつ、前記金属母材(11)に鋳ぐるみされた超硬材(12)の突出面と上記固定ボルト(20)の頭部(21)の超硬材(22)の突出面が同一面上となっていることを特徴とする複合耐摩耗部材。
【請求項2】
上記固定ボルト(20)の頭部(21)及び取付孔(13)はその平面視が回り止め形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の複合耐摩耗部材。
【請求項3】
請求項1記載の複合耐摩耗部材の取付用固定ボルト(20)であって、その頭部(21)は、上記金属母材(11)と同一材の鋳込みによって形成されているとともに、その上記摩耗面となる表面が前記鋳込みによる上記超硬材(12)と同一材からなる超硬材(22)の鋳ぐるみによって形成されているとともに、前記取付孔(13)に挿通された際、前記金属母材(11)に鋳ぐるみされた超硬材(12)の突出面と前記頭部(21)の超硬材(22)の突出面が同一面上となることを特徴とする複合耐摩耗部材の取付用固定ボルト。
【請求項4】
上記頭部(21)はその平面視が回り止め形状をしていることを特徴とする請求項3に記載の複合耐摩耗部材の取付用固定ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高炉や転炉等の製鋼設備や、各種分野の製造設備、破砕機、粉砕機などの処理設備等において、落下する等の原料が当る部分等に設けられる複合耐摩耗部材及びその取付用固定ボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高炉等の製鋼設備において、その工程の途中に、鉄鉱石や石炭等の原料を誘導するためのシュートが設けられる。
このようなシュートでは、落下してきた原料が当る部位、及びその周辺にライナが設けられる。ライナは、高硬度な部材で構成されて、落下してきた原料との衝突と、その後の原料との摺動によって、シュート内の部材が摩耗することを防止する。
【0003】
そのライナに、金属母材の摩耗作用を受ける摩耗面を前記金属母材による超硬材の鋳ぐるみによって形成した複合耐摩耗部材が使用されている(特許文献1〜4参照)。
また、このライナの取付構造としては、シュート本体等の取付材にボルトナットでもってライナを取付固定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−137918号公報
【特許文献2】特開2001−165146号公報
【特許文献3】特開2009−006347号公報
【特許文献4】特開2010−58155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのボルトナットで取付るライナ1は、従来、複合耐摩耗部材の場合、図4に示すように、ボルト3を金属母材2に鋳ぐるみによって設けている(特許文献4図1(b)、同図3(b)、同図4(b)参照)。
このため、図4に示すように、複合耐摩耗部材(ライナ)1をシュート本体等の取付材Aに取付ける際、その取付スペースSが狭いと、同図矢印に示すように、そのスペースSに複合耐摩耗部材1を導くときに、そのボルト3が邪魔になって導けなかったり、その導入が煩雑となったりする場合がある。
【0006】
この発明は、以上の実状の下、複合耐摩耗部材の取付固定時、上記ボルトが邪魔にならないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、この発明は、まず、複合耐摩耗部材(ライナ)にボルトを鋳ぐるみではなく、嵌め込みによって設けるようにしたのである。
このように、ボルトを嵌め込みによって設ければ、複合耐摩耗部材を取付材に導いた後、その複合耐摩耗部にボルトを嵌め込むことができる。このため、複合耐摩耗部の取付材への導入時にボルトが邪魔になることはない。
つぎに、この発明は、複合耐摩耗部材の摩耗面に露出するボルト頭部の表面も、複合耐摩耗部材と同様に、超硬材からなる耐摩耗面としたのである。
ボルト頭部表面も耐摩耗面であれば、複合耐摩耗部材と同等な耐摩耗性を発揮し得るため、従来と同様の複合耐摩耗部材の耐摩耗性を担保できる。
【0008】
この発明の構成としては、金属母材の摩耗作用を受ける摩耗面を前記金属母材による超硬材の鋳ぐるみによって形成した複合耐摩耗部材において、前記摩耗面から金属母材を貫通した取付孔が形成され、その取付孔には取付用固定ボルトが挿通され、前記取付孔は、前記固定ボルトの頭部が嵌る前記摩耗面側部分から縮径して金属母材摩耗面反対面に通じており、固定ボルトの頭部は、その前記摩耗面となる表面が前記超硬材と同一材からなる超硬材からなって前記摩耗面側部分にピッタリ嵌り、固定ボルトのねじ軸部は前記取付孔から突出した部分に取付材を介してナットがねじ込まれる構成を採用することができる。
上記金属母材は、従来と同様に、高マンガン鋼、高クロム鋼、クロムモリブデン鋼等のそれ自体が耐摩耗性を具えた鋳鉄(鋼)を採用することができる。超硬材は、金属母材に対して十分に硬くて金属母材の摩耗に比べて遙かに耐摩耗性に優れた、例えば、炭化タングステンを主成分とするタングステンカーバイト−コバルト(WC−Co)等の超硬合金や窒化ケイ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)等のセラミックを採用することができる。
【0009】
この構成の複合耐摩耗部材は、固定ボルトをその取付孔に嵌めない状態において、取付材に導き、その状態で、摩耗面側から、取付孔にボルトを挿し込み、そのボルト頭部を取付孔の摩耗面側部分に嵌め込むと共に、そのねじ軸部を前記取付孔を介して取付材の取付孔に挿通する。このとき、ボルトは頭部が取付孔の摩耗面側部分にピッタリ嵌るため、その取付孔内面とボルト頭部側面の間隙も極めて小さいものとなる。また、ねじ軸部側部分は摩耗面側部分に対し縮径しているため、取付孔からボルトが抜け落ちることはない。
その後、ボルトの取付材の取付孔から突出した部分(ねじ軸部先端部)にナットをねじ込み、その締結によって、複合耐摩耗部材を取付材に固定する。この締結時、固定ボルトの頭部及び取付孔がその平面視が回り止め形状をしておれば、ナットのねじ込み時、固定ボルトが供回りすることはない。この回り止めは、そのボルト頭部を、平面視四角状等と従来周知の形状を採用する。
なお、図4に示す取付スペースSが狭い場合であっても、そのスペースSにおいて、固定ボルト頭部をスパナやペンチ等の何らかの手段によって固定し得れば、ナットねじ込み時、固定ボルトは供回りしないため、必ずしも、前記回り止め形状でなくても、例えば、平面視円状としても良い。
【0010】
上記固定ボルトは、その頭部が、表面が超硬材からなって上記摩耗面側部分にピッタリ嵌る形状となっていれば、種々の手段によって製作し得るが、例えば、鋼材からなる頭部付ボルトの頭部を、上記金属母材と同材でもって上記摩耗面側部分にピッタリ嵌るとともに回り止め形状に鋳込んで形成するとともに、その鋳込み時、超硬材を頭部表面(摩耗面)に露出するように鋳ぐるむことによって設けるようにすることができる。また、金属母材に鋳ぐるみされた超硬材の突出面と固定ボルトの頭部の超硬材の突出面が同一面上となっておれば、複合耐摩耗部材の摩耗全面が面一となるため、偏摩耗も生じ難い。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上のように構成して、複合耐摩耗部材に固定ボルトを嵌め込みによって設け、かつ、その複合耐摩耗部材の摩耗面に露出するボルト頭部の表面を、複合耐摩耗部材と同様に、超硬材からなる耐摩耗面としたので、複合耐摩耗部材の耐摩耗性を担保しつつ、その複合耐摩耗部材の取付性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る複合耐摩耗部材の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図
図2図1(b)の要部拡大断面図
図3】他の各実施形態のボルト頭部の平面図
図4】従来例の取付説明用概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る複合耐摩耗部材の一実施形態を図1図2に示し、この実施形態の複合耐摩耗部材10は、従来と同様に、金属母材11の摩耗作用を受ける摩耗面を金属母材11による円柱状(ピン状)超硬材12の鋳ぐるみによって形成している。
金属母材11は高クロム鋳鉄からなり、超硬材12は窒化ケイ素等のセラミックからなる。
【0014】
その金属母材11の鋳造時、図1(a)に示すように、平面視の適宜位置に取付孔13を形成する。その取付孔13の形成位置、形成数は、取付強度、取付性等を考慮して適宜に決定すれば良いが、例えば、同図のように、四方形の四隅の四個所とする。
取付孔13は、平面視、ほぼ正四辺形となっており、図2に示すように、摩耗面(図2の上面)から金属母材11を貫通し、摩耗面側から、平面視、ほぼ正四辺形の摩耗面側部分13aと、その摩耗面側部分13aから縮径して金属母材11の摩耗面反対面に通じる円錐台状のねじ軸部側部分13bとからなる。
【0015】
その取付孔13に嵌めて挿通される固定ボルト20は、その頭部21の表面が上記摩耗面となる超硬材22からなって、平面視、ほぼ正四辺形となっており、この頭部21を取付孔13(摩耗面側部分13a)に嵌めると、摩耗面側部分13aにピッタリ嵌って固定ボルト20は回り止めされる。この固定ボルト頭部21が摩耗面側部分13a(取付孔13)にピッタリ入り込んで嵌った状態では、図2に示すように、金属母材11に鋳ぐるみされた超硬材12の突出面と固定ボルト頭部21の超硬材22の突出面が同一面a上となる。
【0016】
その固定ボルト20は、図2に示すように、SS400等の鋼材からなる市販のボルト23の頭部23aに、金属母材11と同一材24でもって上記平面視正四辺形の頭部21を鋳込みによって形成し、その鋳込み時、上記超硬材12と同一材の円柱状超硬材22を鋳くるみによって設け、その超硬材22によって頭部表面を形成したものである。このとき、超硬材22は、鋳ぐるみ材24の側面に露出していないため、超硬材22の取付強度は高い。ボルト頭部21をなす部材24は金属母材11と同一材でなくても良い。また、ボルト頭部23aは、頂面のドライバ用プラス又はマイナス溝への鋳ぐるみ材24の侵入(充満)によって少なからず回り止め効果を得ることができるが、図2に鎖線で示すように、平面視円形の一部23cを欠如(図2では両側を欠如)して回り止め形状とすることができる(図3(a)参照)。
【0017】
この実施形態の複合耐摩耗部材10は以上の構成であり、その取付材Aへの取付は、まず、固定ボルト20をその取付孔13に嵌めることなく、取付材Aに導き、その状態で、摩耗面側から、取付孔13に固定ボルト20をそのねじ軸23b側から挿し込む。そのとき、そのボルト頭部21を取付孔13の摩耗面側部分13aにピッタリ嵌め込むと共に、そのねじ軸部23bを取付孔13のねじ軸部側部分13b及び取付材Aの取付孔に挿通する。
その後、取付材Aの取付孔から突出したねじ軸部23bにナット26を座金27を介してねじ込み、その締結によって、複合耐摩耗部材10を取付材Aに固定する。この締結時、ボルト頭部21は取付孔13の摩耗面側部分13aにピッタリ嵌って回り止め形状となっているため、ナット26のねじ込み時、ボルト20が供回りすることはない。また、金属母材11に鋳ぐるみされた超硬材12の突出面と固定ボルト頭部21の超硬材22の突出面が同一面a上となって、複合耐摩耗部材10の摩耗全面が面一となっているため、偏摩耗も生じ難い。
【0018】
この実施形態では、取付孔13のねじ軸部側部分13bの下端部を円筒状に形成しているが、円錐台状部を金属母材11の裏面(反摩耗面)に臨むようにし、その円錐台状部のみでねじ軸部側部分13bを形成するようにすることができる。
固定ボルト頭部21の回り止め形状としては、上記の平面視正方形状に限らず、例えば、図3(a)に示す、平面視で円形に一部25aを欠如したり、同(b)に示す、周囲に突起25bや凹部25cを設けたり、同(c)に示す、多角形としたり等と、回り止めし得れば任意である。突起25b、凹部25cの位置、形状、数は、等間隔、三角状、一つ等と回り止めし得れば、任意である。このとき、固定ボルト頭部21は取付孔13にピッタリ嵌るのであるから、その取付孔13もその平面視はボルト頭部21の平面視と同一形状とすることは勿論である。
【0019】
超硬材12、22は、上記窒化ケイ素等のセラミックに特定されないことは勿論であり、その位置、大きさ及び数も、例えば、図3(d)に示す、上下左右等間隔で9個を設ける等と任意であり、金属母材11の摩耗面を形成する超硬材12と同一配置態様とすることもできる。また、超硬材12、22は、円柱状に限らず、角柱状、球状等と鋳ぐるみ可能であれば、任意であり、図1(b)、図2のように縦置きでなく、横置きとすることができる。さらに、超硬材12、22は、粒状のものを鋳ぐるみ又は溶射により表面に固定(固着)したもの等ともし得る。金属母材11は、上記高クロム鋳鉄に特定されないことは勿論であり、その形状も板状に特定されず、板に近い塊状等とし得る。
【符号の説明】
【0020】
1、10 複合耐摩耗部材
2、11 金属母材
3 固定用ねじ軸
12 超硬材
13 複合耐摩耗部材の取付孔
13a 取付孔の摩耗面側部分
13b 取付孔のねじ軸部側部分
20 複合耐摩耗部材取付用固定ボルト
21 同ボルト頭部
22 固定ボルト頭部の超硬材
23 市販ボルト
23a 同市販ボルトの頭部
23b 同市販ボルト(固定ボルト20)のねじ軸部
24 固定ボルト頭部の鋳ぐるみ材
26 ナット
A 取付材
図1
図2
図3
図4