特許第6030554号(P6030554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030554キメラIL−1受容体1型アゴニストおよびアンタゴニスト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030554
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】キメラIL−1受容体1型アゴニストおよびアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161114BHJP
   C07K 14/545 20060101ALI20161114BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20161114BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20161114BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20161114BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/545
   C07K14/715
   C07K19/00
   C12N1/21
   A61K37/02
   A61P43/00 111
   A61P37/02
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P19/02
   A61P27/02
   A61P27/14
   A61P25/14
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P1/04
   A61P11/06
   A61P17/06
   A61P3/10
   A61P19/06
   A61P21/02
【請求項の数】28
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2013-522011(P2013-522011)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-535204(P2013-535204A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】US2011045995
(87)【国際公開番号】WO2012016203
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】61/493,966
(32)【優先日】2011年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/436,178
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/493,967
(32)【優先日】2011年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/436,184
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/368,799
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513020179
【氏名又は名称】イレブン・バイオセラピユーテイクス・インコーポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バーネス,トーマス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ジンジヤオ
(72)【発明者】
【氏名】キング,ブラツケン・エム
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0082379(US,A1)
【文献】 特表2002−501496(JP,A)
【文献】 Cellular Immunology,1996年,Vol.169,p.226-237
【文献】 Annual Review of Immunology,2009年,Vol.27,p.519-550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、IL−1βまたはIL−1Raのアゴニストまたはアンタゴニストとして機能する、単離されたタンパク質
【請求項2】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、またはP03(SEQ ID NO:19)に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
タンパク質が、P04(SEQ ID NO:20)に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項5】
タンパク質が、P05(SEQ ID NO:21)に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項6】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に少なくとも90%同一である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項7】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に少なくとも95%同一である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項8】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に少なくとも98%同一である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項9】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)、P04(SEQ ID NO:20)、またはP05(SEQ ID NO:21)に対して15以下の置換を有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項10】
タンパク質が、P01(SEQ ID NO:17)、P02(SEQ ID NO:18)、P03(SEQ ID NO:19)またはP04(SEQ ID NO:20)に同一である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項11】
タンパク質が、P05(SEQ ID NO:21)に同一である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項12】
タンパク質が、IL−1βおよびIL−1Raよりも大きな熱安定性を有する、請求項1〜11のいずれかの請求項に記載のタンパク質。
【請求項13】
タンパク質が、IL−1βおよびIL−1Raよりも少なくとも2度高いTを有する、請求項1〜12のいずれかの請求項に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質は、細胞シグナル伝達アッセイにおいて、IL−1β(0.1ng/ml)の阻害に対し10ng/ml未満のIC50を有する、請求項1〜13のいずれかの請求項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質はヒトIL−1Raよりも高い親和性KD、遅い解離速度、および/または早い結合速度でIL−1RIに結合する、請求項1〜14のいずれかの請求項に記載のタンパク質。
【請求項16】
請求項1−15のいずれかに記載のタンパク質を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1−15のいずれかに記載のタンパク質を含む局所用医薬組成物。
【請求項18】
請求項1−15のいずれかに記載のタンパク質を含む眼用医薬組成物。
【請求項19】
水性であり、0.001−5%の濃度でタンパク質を含む、請求項16〜18のいずれかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
免疫または炎症反応を調節するための、16〜19のいずれかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
全身性自己免疫障害を有するまたはそのリスクがある被験体を治療するための、16〜20のいずれかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
関節リウマチを有するまたはそのリスクがある被験体を治療するための、16〜20のいずれかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ドライアイ疾患またはアレルギー性結膜炎を有するまたはそのリスクがある被験体を治療するための、16〜20のいずれかの請求項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれかに記載のタンパク質をコードする配列を含む単離核酸。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれかに記載のタンパク質をコードする配列を含む単離核酸ベクターであって、前記配列は、転写制御配列に動作可能に結合される、単離核酸ベクター。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれかに記載のタンパク質をコードする組換え核酸を含む、組換え宿主細胞。
【請求項27】
大腸菌宿主細胞である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
組換えタンパク質を調製する方法であって、
請求項26または27に記載の宿主細胞を、組換えタンパク質の発現を可能にする条件下で培養すること;
前記組換えタンパク質を細胞ライセートまたは細胞培地から精製すること;および
被験体への投与のために、前記組換えタンパク質を製剤化すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照および優先権の主張
本出願は、2010年7月29日に出願された米国特許仮出願第61/368,799号、2011年1月25日に出願された第61/436,178号、2011年1月25日に出願された第61/436,184号、2011年6月6日に出願された第61/493,966号、および2011年6月6日に出願された第61/493,967号について優先権を主張し、米国特許出願に関し、2010年7月29日に出願された第61/368,799号、2011年1月25日に出願された第61/436,184、および2011年6月6日に出願された第61/493,967号を参照により組み込む。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−1α(IL−1α)およびβ(IL−1β)は、免疫調節サイトカインのファミリーのプロトタイプメンバーであり、免疫系の制御においていくつかの顕著な役割を有する。IL−1αおよびIL−1βは、インターロイキン−1受容体I(IL−1RI)に結合し、二次受容体、インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1RAcP)の結合へと導く。IL−1αおよびIL−1βにより刺激されたシグナル伝達は増幅T細胞応答へと導き、未処理T細胞の増殖および生存およびT17細胞の発生が含まれる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、とりわけ、障害を治療するために、細胞受容体ならびに他の薬剤を検出しおよび/または結合するために、インターロイキン−1受容体I(IL−1RI)に応答する細胞シグナル伝達を調節するために使用することができる非自然発生的サイトカインドメインを特徴とする。
【0004】
1つの態様では、この開示は少なくとも2つの親サイトカインドメイン由来のアミノ酸残基、例えば、少なくとも2つの親サイトカインドメイン由来の受容体結合特徴、表面特徴、βストランド、およびループを含む、サイトカインドメインを含む単離タンパク質を特徴とする。
【0005】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインはIL−1RIに結合し、異なる親サイトカインドメイン由来、例えば、受容体アゴニストおよび受容体アンタゴニスト(例えばIL−1βおよびIL−1Ra、またはIL−1αおよびIL−1Ra)由来、IL−1βおよびIL−1α由来、またはIL−1Ra、IL−1αおよびIL−1Raの3つ全て由来の受容体結合特徴を含む。受容体結合特徴は、サイトAおよびBにおける残基、セグメント、または領域に対応する。サイトAおよびBに対応するそのような残基、セグメント、および領域に関しては、IL−1(IL−1β、IL−1α、およびIL−1Ra)との関連で、さらに下記定義を参照されたい。
【0006】
サイトAに関しては、サイトカインドメインは下記を有し得る:(a)(i)第1の親サイトカインドメインにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトA残基;(a)(ii)第1の親サイトカインドメインにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一である拡張サイトA残基;(a)(iii)第1の親サイトカインドメインの対応する領域に少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一であるサイトAセグメントA1およびA2;および/または(a)(iv)第1の親サイトカインドメインの対応する領域に少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一であるサイトA領域。
【0007】
サイトBに関しては、サイトカインドメインは下記を有し得る:(b)(i)第2の親サイトカインドメインにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトB残基;(b)(ii)第2の親サイトカインドメインにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一である拡張サイトB残基;(b)(iii)第2の親サイトカインドメインの対応する領域に少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一であるサイトBセグメントB1、B2、およびB3および/または(b)(iv)第2の親サイトカインドメインの対応する領域に少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一であるサイトB領域。
【0008】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、特徴(a)(i)およびb(i)、(a)(ii)およびb(ii)、(a)(iii)および(b)(iii)、または(a)(iv)および(b)(iv)を含み、例えば、ここで、各特徴はさらに、80、85、88、90、92、95、または100%同一性により規定される。例えば、第1の親サイトカインドメインはIL−1βとすることができ、第2の親サイトカインドメインはIL−1Raとすることができる。例えば、第1の親サイトカインドメインはIL−1αとすることができ、第2の親サイトカインドメインはIL−1Raとすることができる。
【0009】
サイトカインドメインはまた、ドメイン内の1つ以上の位置に第2の親サイトカインドメイン由来のアミノ酸を含むことができ、これはサイトカイン二次受容体(例えば、IL−1RAcP)との相互作用を障害する。例えば、第2の親サイトカインドメインはIL−1Raである。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1Ra由来の1つ以上のサイトCおよび/またはDセグメント(例えば、C1、D1、D2、D3、D4、および/またはD5)、またはそのようなセグメントに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一な配列を含む。例えば、サイトカインドメインは下記を含む:(i)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトC残基、(ii)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトD残基、(iii)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも70、75、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるC1セグメント;または(iv)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも3、4、5残基で同一であるD2セグメント。サイトカインドメインは特徴(i)および(ii)、または(ii)および(iii)、(例えば、ここで、各特徴はさらに、80、85、88、90、92、95、または100%同一性により規定される)、または(iii)および(iv)を含むことができる。
【0010】
ドメインは、少なくとも2つの異なるヒトIL−1ファミリーサイトカインドメイン由来の領域を含むことができ、領域は、A領域(A1およびA2セグメントを有する)、B領域(B1、B2、およびB3セグメントを有する)、C領域、およびD領域(D1、D2、D3、D4、およびD5セグメントを有する)からなる群より選択される。
【0011】
サイトカインドメインは、異なるサイトカインドメイン由来のサイトA領域およびサイトB領域を含むことができる。サイトA領域は、自然発生的受容体アゴニストまたはアンタゴニスト由来とすることができ;サイトB領域は、自然発生的受容体アゴニスト由来とすることができる。自然発生的受容体アンタゴニスト由来のサイトC領域および/または自然発生的受容体アンタゴニスト由来のサイトD領域を含むことができる。
【0012】
例えば、ドメインは、少なくとも5、6、10、15、20、または25アミノ酸長であり、少なくとも2つ異なる親サイトカインドメイン、例えば第1および第2の親サイトカインドメイン由来の対応するセグメントに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一であるセグメントを有するキメラドメインとすることができる。親サイトカインドメインは、IL−1RI結合サイトカイン、例えばIL−1β、IL−1α、およびIL−1Raとすることができる。いくつかの実施形態では、第1の親サイトカインドメイン由来のセグメント中に存在しないアミノ酸は、2つ以上の他の親サイトカインドメインに由来する。
【0013】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、第1の親サイトカインドメインの対応するセグメントに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である、少なくとも5、6、10、15、20、または25アミノ酸長の少なくとも2つのセグメントを含み、そのようなセグメント中にないアミノ酸は、主に第2の親サイトカインドメインにおける対応する残基に(例えば、少なくとも50、60、70、80、85、88、90、92、95、または100%)同一である。
【0014】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、(i)第1の親サイトカインドメインの対応するセグメントに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である、少なくとも5、6、10、15、20、または25アミノ酸長の少なくとも2つのセグメントおよび(ii)第2の親サイトカインドメインに同一である、例えば、少なくとも5、6、7、8、10、または15アミノ酸長の少なくとも1、2または3つのセグメントを含む。
【0015】
例えば、サイトカインドメインは、20−50、25−50、30−45、または30−40アミノ酸(例えば、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40)の第1のセグメント、および20−45、20−40、25−40、または25−35アミノ酸(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35)の第2のセグメント(それぞれ第1の親サイトカインドメイン(例えば、IL−1Ra)に同一(または少なくとも80、85、88、90、92、95、または98%同一))、および第2の親サイトカインドメイン(例えば、IL−1βまたはIL−1α)に同一(または少なくとも80、85、88、90、92、95、または98%同一)である第3のセグメントを含むことができる。例えば、第3のセグメントは、55−90、60−90、60−85、または70−85アミノ酸長、例えば、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、または85アミノ酸長とすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では:第1のセグメントは、WDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNV(SEQ ID NO:9、本明細書ではA1セグメントとも呼ばれ、SEQ ID NO:3の残基16−40およびIL−1βナンバリングによる残基11−36に対応する)に対し少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%のセグメントとすることができる。第2のセグメントは、残基121−139または121−140(IL−1βナンバリングによる)に対応するSEQ ID NO:3(IL−1Ra)の残基120−140または120−141に対し少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%のセグメントとすることができる。第3のセグメントは、IL−1β由来の残基45−100または42−120(SEQ ID NO:1)に対し少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%とすることができる。
【0017】
場合によっては、第1のセグメントは、SEQ ID NO:3の残基14−45(IL−1βナンバリングによる残基9−41に対応する)に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%のセグメントとすることができる。第2のセグメントはSEQ ID NO:3の残基120−145(IL−1βナンバリングによる残基121−145に対応する)またはSEQ ID NO:3の残基120−147(IL−1βナンバリングによる残基121−147に対応する)に対し少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%のセグメントとすることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも残基11−41および120−147(IL−1βナンバリングによる)は、IL−1Raにおける対応する残基に合わせて少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一である。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のIL−1ファミリーサイトカインドメインのセグメントの1つの末端は、SEQ ID NO:1のアミノ酸41の5、4、3、2、または1のアミノ酸内に位置し、第1のIL−1ファミリーサイトカインドメインのセグメントの1つの末端は、SEQ ID NO:1のアミノ酸121の5、4、3、2、または1のアミノ酸内に位置する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ドメインは、SEQ ID NO:1のアミノ酸42の5、4、3、2、または1のアミノ酸内の位置のN−末端およびSEQ ID NO:1のアミノ酸120の5、4、3、2、または1のアミノ酸内のC末端を有するセグメント、および/またはSEQ ID NO:1のアミノ酸121の5、4、3、2、または1のアミノ酸内の位置のN−末端およびSEQ ID NO:1のアミノ酸145の5、4、3、2、または1のアミノ酸内のC末端を有するセグメントを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、11−41および120−147(IL−1βナンバリングによる)に対応する位置のドメイン中の残基は、合わせてIL−1Raにおける対応する残基に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一である。ドメインはまた、IL−1サイトカインファミリーメンバー由来の、例えば、前記に類似する位置の配列に基づくことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは1、2、3つ以上の下記配列を含む:WDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNV(SEQ ID NO:9);NLEEK(SEQ ID NO:10);RIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEK(SEQ ID NO:11);AMEADQP(SEQ ID NO:12);FLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFY(SEQ ID NO:13);および/または前記に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一の配列。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、1、2、3つ以上の下記配列を含む:VQGEESNDKI(SEQ ID NO:14);KKKMEKRF(SEQ ID NO:15);およびFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKN YPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFES(SEQ ID NO:16);および/または前記に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一の配列。
【0022】
いくつかの実施形態では、β1β2、β2β3、β8β9およびβ10β11ループの1つ以上または全てがIL−1アンタゴニスト、例えば、IL−1Ra由来の対応するループに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である。いくつかの実施形態では、β4β5、β5β6、β6β7およびβ7β8ループの1つ以上または全てが、β1β2、β2β3、β8β9およびβ10β11ループに最も類似するヒト親サイトカインとは異なるIL−1ファミリーサイトカインドメイン由来の対応するループに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である。例えば、β4β5、β5β6、β6β7およびβ7β8ループの1つ以上または全てが、IL−1アゴニスト、例えばIL−1β由来のそのようなループに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である。いくつかの実施形態では、β11β12ループはIL−1アンタゴニスト、例えば、IL−1Ra由来の対応するループに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である。
【0023】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1Raのβストランドβ2、β3、β10およびβ11の1、2、3、または全てに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1βのβ4、β6、β7、およびβ8、またはIL−1βのβ4、β5、β6、β7、およびβ8の1、2、3、または全てに少なくとも80、85、88、90、92、95、または100%同一である配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸I46−G59、A55−G59、A55−V83、I60−V83、N84−D95、I46−S110、V49−S110、またはI46−G118に80、85、90、95、または100%超同一であるセグメントを含まない。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインはSEQ ID NO:1のアミノ酸N7−V41、R11−M36、N102−D145、またはY121−D145に80、85、90、95、または100%超同一であるセグメントを含まない。
【0025】
一般に、サイトカインドメインは、自然発生的ではない。ヒトIL−1ファミリーサイトカインドメインとは異なる。例えば、IL−1Ra(SEQ ID NO:3)、IL−1β(SEQ ID NO:1)、および/またはIL−1α(SEQ ID NO:2)に98、95、90、85、80、75、70、65、60、または55%未満同一である。サイトカインドメインはまた、そのようなサイトカインに少なくとも30、40、45、50、55、60、65、70%同一とすることができる。例えば、キメラドメインは、IL−1Ra、IL−1β、およびIL−1αに30−95%、40−90%、または45−85%同一とすることができる。例えば、キメラドメインは、IL−1βに40−90%同一およびIL−1Raに35−85%同一;IL−1βに40−80%同一およびIL−1Raに45−80%同一;IL−1βに45−72%同一およびIL−1Raに45−80%同一;IL−1βに45−72%同一およびIL−1Raに53−80%同一;IL−1βに50−72%同一およびIL−1Raに53−70%同一;IL−1βに60−72%同一およびIL−1Raに53−68%同一;IL−1βに65−72%同一およびIL−1Raに54−60%同一;またはIL−1βに68−72%同一およびIL−1Raに54−57%同一とすることができる。例えば、キメラドメインは、IL−1αに40−90%同一およびIL−1Raに35−85%同一;IL−1αに40−80%同一およびIL−1Raに45−80%同一;IL−1αに45−72%同一およびIL−1Raに45−80%同一;IL−1αに45−72%同一およびIL−1Raに53−80%同一;IL−1αに50−72%同一およびIL−1Raに53−70%同一;IL−1αに60−72%同一およびIL−1Raに53−68%同一;IL−1αに65−72%同一およびIL−1Raに54−60%同一;またはIL−1αに68−72%同一およびIL−1Raに54−57%同一とすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインはIL−1Raと異なり、受容体に結合し、自然発生的受容体アンタゴニスト(例えばIL−1Ra)に特徴的なサイトCおよび/またはサイトDを含む。例えば、ドメインは、ヒトIL−1βおよび/IL−1Raから98、95、92、90、85、および80%未満同一である。例えば、ドメインは、IL−1Raに40−95%、40−90%または45−85%同一である。ドメインはまた、IL−1ファミリーサイトカインアゴニスト、例えばIL−1αまたはIL−1βに対し40−95%、40−90%または45−85%とすることができる。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは下記を含む:サイトカインシグナル伝達のアゴニストである第1の親サイトカインドメイン由来の少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80または85%のアミノ酸。
【0027】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)よりも受容体アゴニスト(例えばIL−1βまたはIL−1α)に対しより大きなアミノ酸同一性(例えば、少なくとも5、10、15、または20%超)を有するが、IL−1RIのアンタゴニストとして機能する。
【0028】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは完全にキメラであり、例えば、ドメイン内の各アミノ酸は、親サイトカインドメインの1つ、例えば、2つの親サイトカインドメインの1つまたは3つ以上の親サイトカインドメインの1つ由来である。例えば、親サイトカインドメインはヒトサイトカインドメインまたは非ヒト霊長類サイトカインドメインである。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは部分的にキメラであり、例えば、ドメイン内のアミノ酸全てが、親サイトカインドメインの1つに由来するわけではない。
【0029】
例えば、単離タンパク質はIL−1RIに結合し、受容体によるシグナル伝達を調節する、例えば、IL−1RI受容体シグナル伝達活性を刺激するまたは拮抗する。いくつかの実施形態では、タンパク質はIL−1β応答性ヒト細胞に接触されると実質的にはIL−6産生を誘導せず、および/または例えば、10μg/ml、100μg/ml、または1mg/mlの濃度では、IL−1β応答性レポーター遺伝子の産生を実質的には誘導しない。一般に、タンパク質は、IL−1βによるシグナル伝達を阻害し(例えば、本明細書で記載される細胞アッセイにおけるように0.1ng/mlの濃度で)、IC50は100、50、20、10、または5nM未満である。タンパク質は、IL−1βによるシグナル伝達を阻害することができ、IC50はIL−1Raのそれより低く、例えば、少なくとも10、20、または50%低い。
【0030】
ある実施形態では、サイトカインドメインは例えば、親サイトカインドメインの1つと同じか、または良好な親和性で結合する。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1RIに100、50、20、10、5、または1nM未満、あるいは500、400、100、または50pM未満のKで結合する。例えば、会合定数は、1×10、3×10、1×10、または1×10−1−1超とすることができ、解離は1×10−3、1×10−4、6×10−4、または6×10−5−1未満とすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインはIL−1RIに、IL−1βまたはIL−1Raよりも、より良好な親和性(例えば、より低いK)および/またはより遅い解離速度で結合する。例えば、サイトカインドメインは、IL−1RIにIL−1Raのそれ以下の解離定数で、および/またはIL−1βのそれ以上の会合定数で結合することができる。
【0032】
サイトカインドメインは、約120−180、140−170、または148−160、または150−156アミノ酸長とすることができる。いくつかの実施形態では、ドメインは152または153アミノ酸長である。典型的には、ドメインは少なくとも10、11、または12のβ−ストランドを含み、安定に折り畳まれる。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、本明細書で記載されるように、少なくとも38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、または64℃のTmを有する。51−61、51−66、56−61、または56−66℃のTmを有することができる。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、少なくとも48、50、51、55、57、58、または59℃までアンフォールディングし始めない。例えば、生理的緩衝液中で、IL−1Raおよび/またはIL−1βのTmの少なくとも10℃または5℃以内であるTmを有する。いくつかの実施形態では、生理的緩衝液中で、IL−1Raおよび/またはIL−1βよりも熱安定性である。例えば、ドメインは、生理的緩衝液中で、IL−1Raおよび/またはIL−1βのTmよりも少なくとも2、4、6、7、または8℃高い、例えば、約0.5mg/mlの濃度で、IL−1Raおよび/またはIL−1βのTmよりも約5−12、5−10、または7−10℃高いTmを有することができる。
【0033】
タンパク質は、本明細書で記載される他の特徴を含むことができる。
【0034】
別の態様では、本開示は、キメラIL−1ファミリーサイトカインドメインを含む単離タンパク質を特徴とする。IL−1サイトカインファミリーメンバーの例としては、IL−1α、IL−1β、IL−1Ra、IL−18、IL−1F5、IL−1F6、IL−1F7、IL−1F8、IL−1F9、IL−1F10、およびIL−33が挙げられる。サイトカインドメインは、前記サイトカインの1つの受容体結合領域または1つ以上のそのようなサイトカインの要素を含むタンパク質配列を含むことができる。例えば、サイトカインドメインは、2つ以上のIL−1サイトカインファミリーメンバーのキメラを含むことができる。
【0035】
1つの実施形態では、キメラドメインは、少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70アミノ酸の長さの、第1のIL−1ファミリーサイトカインに対しアミノ酸同一性(または少なくとも80、82、85、87、90、92、94、95、96、97、98、または99%同一性)を有する少なくとも1つのセグメント、および少なくとも5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40アミノ酸の長さの、第2のIL−1ファミリーサイトカインに対しアミノ酸同一性(または少なくとも80、82、85、87、90、92、94、95、96、97、98、99%同一性)を有する別のセグメントを含む。キメラドメインは、第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインの1つまたは両方に90、85、80、75%未満同一とすることができる。
【0036】
1つの実施形態では、第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインはIL−1β、IL−1αおよびIL−1Raからなる群より選択される。別の実施形態では、第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインは、IL−1F5、IL−1F6、IL−1F7、およびIL−1F8からなる群より選択される。別の実施形態では、第1のIL−1ファミリーサイトカインはアゴニストの群から選択され、第2は、アンタゴニストの群から選択される。いくつかの実施形態では、キメラドメインは同じ親サイトカインドメイン由来の120、110、100、90、または80より少ない近接アミノ酸を含む。
【0037】
1つの実施形態では、キメラドメインは、少なくとも位置50、60、70、80、90、100、110、または120で第1のIL−1ファミリーサイトカインに同一であり、少なくとも位置50、60、70、80、90、100、110、または120(個々に、そのようなサイトカインの両方に同一であり得る位置を含む)で第2のIL−1ファミリーサイトカインに同一である。
【0038】
1つの実施形態では、キメラドメインは、少なくとも2、3、または4つの不連続セグメントを含み、それぞれ、少なくとも5、6、7、8、9、10、15、または20アミノ酸の長さであり、第1のIL−1ファミリーサイトカインの対応するセグメントに対しアミノ酸同一性(または少なくとも80、82、85、87、90、92、94、95、96、97、98、99%同一性)を有し、残りの位置では主に第2のIL−1ファミリーサイトカイン由来のアミノ酸を含む。1つの実施形態では、キメラドメインは4、5、6、または7つのセグメントを含み、隣接セグメントは、異なる親IL−1ファミリーサイトカインドメイン由来である。例えば、ドメイン中の各アミノ酸は、自然発生的ヒトIL−1ファミリーサイトカインドメイン由来の少なくとも5または6つのアミノ酸長のペプチド中に位置する。1つの実施形態では、キメラドメインは、少なくとも1、2、または3つの下記を含む:(i)IL−1β由来の少なくとも50、60、65、70、または75アミノ酸長のセグメント、(ii)IL−1Ra由来の少なくとも15、20、25アミノ酸長のセグメント;および(iii)IL−1Ra由来の少なくとも15、20、25アミノ酸長の別のセグメント。
【0039】
1つの実施形態では、不連続セグメントは、IL−1βにおけるそのような位置のナンバリングに従い、残基(i)1−6および45−61、(ii)1−6および86−95、(iii)45−61および86−95、(iv)1−6および148−153、(v)45−61および148−153、または(vi)86−95および148−153を含む。第1のIL−1ファミリーサイトカイン由来の3つの不連続セグメントは、例えば、IL−1βにおけるそのような位置のナンバリングに従い、残基1−8、42−120、および141−153、残基1−10、37−125、および131−153、または残基1−6、45−61、86−95、および148−153を含むことができる。キメラドメインは、残りの位置で第2のIL−1ファミリーサイトカインに少なくとも80、82、85、87、90、92、94、95、96、97、98、99、または100%同一であり得る。1つの実施形態では、不連続セグメントの境界の1つ以上が第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインが同一である、または保存されている位置に配置される。タンパク質は、本明細書で記載される他の特徴を有することができる。
【0040】
別の態様では、この開示は、IL−1RIに結合するIL−1ファミリーサイトカインドメインを含む単離されたIL−1阻害剤を特徴とする。例えば、IL−1阻害剤は上記または本明細書の別の箇所の1つ以上の特徴を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは下記を含む:
(a)下記位置:ARG11、SER13、GLN14、GLN15、GLU25、LYS27、LEU29、HIS30、LEU31、GLN32、GLY33、GLN34、ASP35、MET36、GLN38、GLN39、ALA127、GLU128、ASN129、MET130、およびGLN141(IL−1βのナンバリングによる)、でIL−1Raに同一なアミノ酸、および
(b)下記位置:ALA1、PRO2、VAL3、ARG4、LEU6、PHE46、GLN48、GLU51、SER52、ASN53、LYS55、ILE56、PRO57、LYS92、LYS93、LYS94、LYS103、GLU105、ASN108、GLN149、PHE150、およびSER152、でIL−1βに同一なアミノ酸。
いくつかの実施形態では、サイトAセグメントA1およびA2は、IL−1Raの対応するセグメントに少なくとも80%同一(まとめて)である。いくつかの実施形態では、サイトBセグメントB1、B2、およびB3は、IL−1βの対応するセグメントに少なくとも80%同一(まとめて)である。例えば、サイトAセグメントA1およびA2は、IL−1Raの対応するセグメントに少なくとも90%同一(まとめて)であり;サイトBセグメントB1、B2、およびB3はIL−1βの対応するセグメントに少なくとも90%同一(まとめて)である。例えば、サイトAセグメントA1およびA2は、IL−1Raの対応するセグメントに同一であり;サイトBセグメントB1、B2、およびB3はIL−1βの対応するセグメントに同一である。
【0041】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1Raのβストランドβ2、β3、β10およびβ11に少なくとも80%同一(まとめて)である配列およびIL−1βのβストランドβ4、β6、β7、およびβ8に少なくとも80%同一(まとめて)である配列を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1Raのβストランドβ2、β3、β10およびβ11に同一である配列およびIL−1βのβストランドβ4、β6、β7、およびβ8に同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、IL−1βから上記で同定されたセグメントおよび特徴はIL−1α、またはIL−1βもしくはIL−1αの組み合わせに由来する。
【0042】
いくつかの実施形態では、IL−1阻害剤は、下記特性の1つ以上(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、または7つ)を含む:(i)IL−1β、IL−1α、またはIL−1Raにおける対応する残基に少なくとも60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトAまたはサイトB残基(および/または拡張サイトAおよび拡張サイトB残基);(ii)IL−1Raにおける対応する残基に合わせて少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるA1およびA2セグメント;(iii)IL−1βまたはIL−1αにおける対応する残基に合わせて少なくとも80%同一であるB1、B2、およびB3セグメント;(iv)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトA領域;(v)IL−1βまたはIL−1αにおける対応する残基に対して少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%であるサイトB領域;(vi)IL−1RaまたはIL36Raにおける対応する残基に少なくとも50、60、70、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるサイトCおよび/またはサイトD残基、(vii)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも70、75、80、85、88、90、92、95、98、または100%同一であるC1セグメント;(viii)IL−1Raにおける対応する残基に少なくとも3、4、または5残基で同一であるD2セグメント。サイトカインドメインは、IL−1Raとは異なり、例えば、サイトカインドメインは、IL−1Raに99、98、95、90、85、80、75、70、65、60%未満同一であり、および/またはIL−1Raに少なくとも30、40、45、50、55、60、65、70%同一であり、例えば、IL−1Raに40−95%、40−90%、または45−85%同一である。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸I46−G59、A55−G59、A55−V83、I60−V83、N84−D95、I46−S110、V49−S110、またはI46−G118に80、85、90、95、または100%超同一であるセグメントを含まない。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:1のアミノ酸N7−V41、R11−M37、N102−D144、またはY121−D144に80、85、90、95、または100%超同一であるセグメントを含まない。
【0043】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、IL−1RIに結合し、Kは100、50、20、10、5、または1nM未満である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、IL−1βまたはIL−1Raよりも良好な親和性(例えば、より低いK)および/またはより遅い解離速度で、IL−1RIに結合する。
【0044】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、IL−1β応答性ヒト細胞と接触されても実質的にIL−6発現を誘導しない。一般に、阻害剤はIL−1βによるシグナル伝達を阻害し、例えば、IC50は100、50、20、10、または5nM未満である。
【0045】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、1、2、3つ以上の下記配列を含む:WDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNV(SEQ ID NO:9);NLEEK(SEQ ID NO:10);RIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEK(SEQ ID NO:11);AMEADQP(SEQ ID NO:12);FLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFY(SEQ ID NO:13);および/または前記に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一な配列。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、1、2、3つ以上の下記配列を含む:VQGEESNDKI(SEQ ID NO:14);KKKMEKRF(SEQ ID NO:15);およびFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKN YPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFES(SEQ ID NO:16);および/または前記に少なくとも80、85、88、90、92、95、98、または100%同一な配列。阻害剤は本明細書で記載される他の特徴を含むことができる。
【0046】
別の態様では、本開示は、本明細書で開示される配列、例えば、表4または実施例1で列挙される配列、例えば、P01、P02、P03、P04、P05、P06、またはP07のアミノ酸配列、または実施例1、5、6、または本明細書の他の場所における配列に少なくとも80、82、85、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む単離タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、少なくとも1つの置換、挿入、または欠失を含む。アミノ酸配列は、15、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2より少ない非保存的置換または15、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2より少ない総置換を含むことができる。アミノ酸配列は少なくとも1、2、3、4、または5つの置換、例えば、保存的置換を含むことができる。
【0047】
P01、P02、P03、P04、P05、P06、またはP07のアミノ酸配列、または実施例1、5、6、または本明細書の他の場所における配列に対するメチオニンN末端を含む単離タンパク質、およびP01、P02、P03、P04、P05、P06、またはP07のアミノ酸配列、または実施例1、5、6または本明細書の他の場所の配列を含み、ここで、N−末端のアラニンが存在しない単離タンパク質もまた提供される。前記配列は、本明細書で開示される他の特徴を含むことができる。例えば、配列はさらに、タグ、例えばヘキサヒスチジン配列、例えば、IL−1RI結合配列に対するNまたはC末端を含むことができる。配列はさらに、IL−1RI結合配列の安定性または薬物動態を修飾する部分を含むことができる。配列はさらに、血清アルブミンおよび/またはFcドメイン、またはその1つ以上のドメイン、例えば、1つ以上の免疫グロブリン定常ドメインまたは1つ以上のアルブミンドメインを含むことができる。タンパク質は本明細書で記載される他の特徴を有することができる。いくつかの実施形態では、単離タンパク質は、本明細書で開示される配列またはキメラドメインから構成され、または本質的に構成される。
【0048】
さらに別の態様では、本開示は本明細書で記載されるサイトカインドメイン、例えば、表4に列挙されるサイトカインドメインおよび/またはSEQ ID NO:3を含むドメインの循環置換形態を有するドメインを含む単離タンパク質を提供する。タンパク質はさらに、置換え済形態のNまたはC末端に、任意でリンカーにより離された異種配列(例えば、Fcドメインまたはアルブミン)を含むことができる。タンパク質は本明細書で記載される他の特徴を有することができる。
【0049】
本開示はまた、本明細書で記載される1つ以上の受容体結合剤(例えば、キメラサイトカインドメインを含むタンパク質)を含む医薬組成物を特徴とする。組成物は眼用医薬組成物、局所用組成物、非経口投与のための組成物とすることができる。
【0050】
別の態様では、本開示は被験体において免疫または炎症反応を調節する方法を特徴とする。方法は、本明細書で記載される受容体結合剤を含む組成物を、被験体において免疫または炎症反応を調節するのに有効な量で、被験体に投与することを含むことができる。
【0051】
別の態様では、本開示は被験体においてIL−1媒介障害を治療する方法を特徴とする。方法は、IL−1RIに結合することができるタンパク質、例えば、本明細書で記載される受容体結合剤を含む組成物を被験体に投与することを含む。例えば、障害は自己免疫障害、例えば、関節リウマチまたは若年性関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、炎症性腸疾患、喘息、血管炎、または乾癬とすることができる。障害は、凝集物形成と関連する障害、例えば、高尿酸血症、痛風、糖尿病(インスリン非依存性糖尿病を含む)、アルツハイマー病、続発性反応性アミロイドーシス、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、またはパーキンソン病とすることができる。障害はまた、CAPS(CIAS1関連周期性症候群)障害または本明細書で記載される他の障害とすることができる。
【0052】
別の態様では、本開示は被験体においてIL−1媒介眼障害を治療する方法を特徴とする。方法は、IL−1RIに結合することができるタンパク質、例えば、本明細書で記載される受容体結合剤を含む組成物を被験体に投与することを含むことができる。例えば、組成物は、被験体の眼または周囲領域に局所的に投与される眼用組成物である。1つの実施形態では、障害は、ドライアイ障害である。いくつかの実施形態では、被験体は、全身性自己免疫疾患の徴候を示さない。いくつかの実施形態では、被験体はシェーグレン症候群を有する。いくつかの実施形態では、被験体は、移植片対宿主病(GVHD)を有する。さらに他の実施形態では、障害はブドウ膜炎である。
【0053】
さらに別の態様では、本開示はIL−1活性を阻害する方法を特徴とする。方法は、IL−1RIに結合することができる受容体結合剤を、IL−1に応答する細胞または被験体に接触させることを含む。一般に、タンパク質は、細胞と関連する、または被験体において、IL−1活性を阻害するのに有効な量で提供される。タンパク質は、エクスビボで被験体由来の細胞に接触させることができる。
【0054】
別の態様では、この開示は、本明細書で記載されるタンパク質をコードする1つ以上の配列または本明細書で開示される核酸(例えば、表5において)、そのような核酸にハイブリダイズする、またはそのような核酸に80、82、85、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%または100%同一である配列を含む単離核酸を特徴とする。例示的なハイブリダイズ配列は、少なくとも200、300、400、420、または450ヌクレオチド長、例えば、420−480ヌクレオチド長とすることができる。核酸はまた、本明細書で開示される他の特徴を含むことができる。
【0055】
本明細書で記載されるタンパク質およびそのポリペプチド鎖をコードする1つ以上の配列を含む核酸を含む組換え宿主細胞もまた特徴とする。受容体結合剤は、宿主細胞を、受容体結合剤の発現を可能にする条件下で維持し、任意で受容体結合剤を、例えば、細胞または宿主細胞と関連する培地から回収することを含む方法により生成させることができる。例えば、受容体結合剤は、細胞由来のライセートから精製することができる。精製された受容体結合剤は、例えば、1つ以上の賦形剤、安定剤、緩衝剤と共に製剤化することができる。
【0056】
キメラタンパク質ドメインを提供する方法もまた特徴とする。方法は、共通の折り畳みを有する少なくとも2つの親タンパク質を同定すること(例えば、第1の親タンパク質および第2の親タンパク質)、第1の親タンパク質内の少なくとも2つセグメントを見いだすこと、および第1の親タンパク質由来の2つのセグメントおよび残りの位置に主に第2の親タンパク質由来の残基を含むキメラアミノ酸配列をコードする配列を有する核酸を構築することを含む。ドメインは、主にβ−シートから構成されるドメイン、または主にα−へリックスから構成されるドメイン、またはそのような要素の組み合わせを有するドメインとすることができる。例えば、ドメインは、サイトカインの折り畳みを有することができる。第1および第2の親タンパク質は、相同性、例えば、10−40%アミノ酸同一性により関連させることができる。いくつかの実施形態では、第1のタンパク質由来のセグメントは、単一の折り畳みタンパク質ドメイン内にあり、キメラアミノ酸配列は第1および第2の親タンパク質における対応するドメインに非同一である折り畳みタンパク質ドメインの形態を含む。いくつかの実施形態では、2つの親タンパク質は異なる機能特性を有し、キメラドメインは、親タンパク質の1つまたは両方の特性を有することができる。いくつかの実施形態では、キメラドメインは、第1の親タンパク質由来の1つの結合面、および第2の親タンパク質由来の別の結合面を有する。
【0057】
本明細書では、サイトA、B、C、およびDとの関連で、IL−1ファミリーサイトカインにおける様々な領域、セグメント、および残基に言及する。ヒトIL−1β(SEQ ID NO:1)の配列におけるそのような残基、セグメント、および領域の場所および対応する位置は下記および図1で提供される:
【0058】
サイトA.IL−1βにおけるサイトA残基は下記を含む:ARG11、SER13、GLN14、GLN15、SER21、GLU25、LYS27、LEU29、HIS30、LEU31、GLN32、GLY33、GLN34、ASP35、MET36、GLU128、ASN129、およびMET130、ならびに他のIL1サイトカインファミリーメンバーの対応する残基(本明細書では「サイトA残基」と呼ばれる)。特定の状況では、特にIL−1βに関連して、サイトA残基ならびにGLN149、およびPHE150、ならびに他のIL1サイトカインファミリーメンバーの対応する残基を含む「拡張サイトA残基」に言及される。さらに、図4に示されるように「サイトA領域」を規定することができ、例えば、A1セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の11−36に対応する)およびA2セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の125−131に対応する)、および他のIL1サイトカインファミリーメンバーにおける対応するセグメントを含む。
【0059】
サイトB.IL−1βにおけるサイトB残基は下記を含む:ALA1、PRO2、ARG4、GLN48、GLU51、ASN53、ILE56、LYS92、LYS93、LYS94、LYS103、GLU105、およびASN108、および他のIL1サイトカインファミリーメンバーの対応する残基(本明細書では「サイトB残基」と呼ばれる)。特定の状況では、特にIL−1βに関連して、サイトB残基ならびにPHE46およびSER152(図4におけるサイトB領域の外側にある)を含む「拡張サイトB残基」に言及される。さらに、図4に示されるように「サイトB領域」を規定することができ、例えばB1セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の1−5に対応する)、B2セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の48−56に対応する)、およびB3セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の92−98に対応する)、および他のIL1サイトカインファミリーメンバーにおける対応するセグメントを含む。
【0060】
サイトC.IL−1βにおけるサイトC残基は下記を含む:ILE104、ILE106、ASN107、LYS109、GLU111、THR137、LYS138、GLY139、GLY140、GLN141、THR144、およびASP145および他のIL1サイトカインファミリーメンバーの対応する残基(本明細書では「サイトC残基」と呼ばれる)。さらに、図4に示されるように「サイトC領域」を規定することができ、例えばC1セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の136−145に対応する)、および他のIL1サイトカインファミリーメンバーにおける対応するセグメントを含む。
【0061】
サイトD.IL−1βにおけるサイトD残基は下記を含む:LEU6、THR9、LYS63、GLU64、LYS65、およびASN66および他のIL1サイトカインファミリーメンバーの対応する残基(本明細書では「サイトD残基」と呼ばれる)。さらに、図4に示されるように「サイトD領域」を規定することができ、例えば、D1セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の6−9に対応する)、D2セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の37−41に対応する)、およびD3セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の63−66に対応する)、D4セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の86−91に対応する)、およびD5セグメント(IL−1βにおいて、SEQ ID NO:1の150−153に対応する)および他のIL1サイトカインファミリーメンバーにおける対応するセグメントを含む。
【0062】
サイトA、B、C、およびDに対する残基および領域の場所のさらなる同定は、問題のサイトカインを図4で示される配列にアライメントすることにより見いだされ得る。
【0063】
本明細書で言及されるIL−1β(ヒト)のアミノ酸配列は下記である:APVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS(SEQ ID NO:1)。
【0064】
本明細書で言及されるIL−1α(ヒト)のアミノ酸配列は下記である:SAPFSFLSNVKYNFMRIIKYEFILNDALNQSIIRANDQYLTAAALHNLDEAVKFDMGAYKSSKDDAKITVILRISKTQLYVTAQDEDQPVLLKEMPEIPKTITGSETNLLFFWETHGTKNYFTSVAHPNLFIATKQDYWVCLAGGPPSITDFQILENQA(SEQ ID NO:2)。
【0065】
本明細書で言及されるIL−1Ra(ヒト)のアミノ酸配列は下記である:RPSGRKSSKMQAFRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKIDVVPIEPHALFLGIHGGKMCLSCVKSGDETRLQLEAVNITDLSENRKQDKRFAFIRSDSGPTTSFESAACPGWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYFQED (SEQ ID NO:3)。本明細書で使用されるIL−1β、IL−1α、およびIL−1Raという用語は、個々の成熟タンパク質を示す。
【0066】
本明細書で言及され、図4に示されるβシートは、下記配列を示す:
【表1】
【0067】
2つの配列の間の「相同性」または「配列同一性」の計算は(これらの用語は、本明細書では同じ意味で使用される)は下記の通りに実施される。配列は、本明細書で提供されるアライメントに従い整列され、または、適切なアライメントがない場合、EMBOSSパッケージのNeedleアルゴリズムに実装されたNeedleman and Wunschアルゴリズムを使用し、Blosum 62スコアリングマトリクスを、10のギャップペナルティで、および1のギャップ拡張ペナルティで使用し、最高スコアとして決定した最適アライメントに従い整列される。Needleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453; Kruskal, J. B. (1983) An overview of sequence comparison In D. Sankoff and J. B. Kruskal, (ed.), Time warps, string edits and macromolecules: the theory and practice of sequence comparison, pp. 1-44 Addison Wesley, and tools available from the European Bioinformatics Institute (Cambridge UK) EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite (2000), Rice, P. et al., A., Trends in Genetics 16, (6) pp. 276--277 およびhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/ align/index.html および http://emboss.open-bio.org/wiki/Appdoc:Needleで利用可能なオンラインを参照されたい。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドがその後比較される。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書では、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」に等しい)。2つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数である。参照配列の群に対する対象の1つの配列の集団同一性を決定するために、位置は参照配列の群の任意の1つ以上において対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸に同一である場合、同一であると考えられる。セグメント、特徴、または領域のリストに関しては、同一性は、そのようなリストのすべてのメンバーに対してまとめて計算することができ、全体のパーセンテージ同一性が到達される。
【0068】
本明細書では、本明細書で開示される配列に少なくとも80、82、85、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である配列が提供される。
【0069】
本明細書では、「対応する」という用語は、参照ポリペプチドに関し対象のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置を指定するために使用される。一般に、位置は本明細書で提供されるアライメントにより示されるものである(例えば、図4)。
【0070】
本明細書では、「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイぜーションおよび洗浄のための条件を記載する。ハイブリダイぜーション反応を実施するためのガイダンスは、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6(参照により組み込まれる)において見いだすことができる。水性および非水性方法が、その参考文献に記載されており、いずれかを使用することができる。高ストリンジェンシーハイブリダイぜーション条件は、約45℃での6X SSCにおけるハイブリダイぜーション、続いて、0.2X SSC、0.1% SDSにおける65℃での1つ以上の洗浄、または実質的に同様の条件を含む。本明細書では、高ストリンジェンシー条件下、本明細書で開示されるアミノ酸配列をコードする核酸および本明細書、例えば、実施例1で開示される核酸にハイブリダイズする配列を含む単離核酸が提供される。
【0071】
本明細書で言及される自然発生的タンパク質は特定的に、そのようなタンパク質のヒト型、および他の哺乳類種由来の型を含む。
【0072】
全ての特許、公開された特許出願、および本明細書で引用される公開された参考文献は全ての目的のために参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】X線結晶学的データから決定されるP04の構造の図である。IL−1Ra由来の残基のバックボーンは黒色で示され、IL−1β由来の残基のバックボーンは灰色で示される。
図2】ヒトIL−1RIの細胞外ドメインに結合されたP05タンパク質のモデルの3つの図である。P05では、IL−1Ra残基は黒色で示され、IL−1β残基は白色で示される。
図3-1】キメラタンパク質のモデルを示し、ここで、IL−1Ra残基が黒色で示され、IL−1β残基が白色で示される。モデルは、タンパク質:P01(図3A)、P03(図3B)、P04(図3C)。を示す。
図3-2】キメラタンパク質のモデルを示し、ここで、IL−1Ra残基が黒色で示され、IL−1β残基が白色で示される。モデルは、タンパク質:P05(図3D)、P07(図3E)、およびP06(図3F)を示す。
図4】いくつかのヒトIL−1ファミリーサイトカインのアライメントを提供する:IL−1β(SEQ ID NO:1)、IL−1α(SEQ ID NO:2)、IL−1Ra(SEQ ID NO:3)、IL−33(SEQ ID NO:4)、IL−36Ra(SEQ ID NO:5)、IL−36α(SEQ ID NO:6)、IL−36β(SEQ ID NO:7)、およびIL−36γ(SEQ ID NO:8)。本明細書においてテキストで言及されたセグメントは、アライメント下で同定される。さらに、β-シートおよびそのようなシート間のループが同定される。
図5-1】図5Aは、P01のアミノ酸配列のリスティングである(SEQ ID NO:17)。図5Bは、P02のアミノ酸配列のリスティングである(SEQ ID NO:18)。図5Cは、P03のアミノ酸配列のリスティングである(SEQ ID NO:19)。IL−1β由来のセグメントはボールドイタリックで示される。下記実施例1もまた参照されたい。
図5-2】図5DはP04のアミノ酸配列のリスティングである(SEQ ID NO:20)。図5EはP05のアミノ酸配列のリスティングである(SEQ ID NO:21)。IL−1β由来のセグメントはボールドイタリックで示される。下記実施例1もまた参照されたい。
図6】受容体結合剤を発現する大腸菌細胞由来の精製されたタンパク質の例示的な試料を示すSDS−PAGEゲルの画像である。15および20kDa分子量マーカーが左に示される。レーンは下記の通りである:分子量マーカー(レーン1および6)、抽出物(レーン2および7)、カチオン交換クロマトグラフィーにより精製された材料(レーン3および8)、さらにアニオン交換クロマトグラフィーにより精製された材料(レーン4および9)、およびそのような材料の還元試料(レーン5および10)。レーン2−5はP05精製のものであり、レーン6−10はP04精製のものである。実施例2も参照されたい。
図7A図7AはP06、P07、およびP01タンパク質の、IL−1βおよび陰性対照、β−グルクロニダーゼ(GUS)タンパク質に対するシグナル伝達を刺激する能力を示す表および付随する棒グラフである。
図7B図7Bは、様々なIL−1β濃度でのP01によるIL−1βの拮抗作用を示すグラフである。
図8A図8Aは、P03(ヘキサヒスチジンタグ)、P04(ヘキサヒスチジンタグ)、P05(ヘキサヒスチジンタグ)、およびIL−1Raによる、0.1ng/ml IL−1β(ヒト)の存在下でのIL−1β拮抗作用を示すグラフである。
図8B図8Bは、P01、P02、P03、P04、およびP05のタグが付けられていない形態、およびIL−1Raを含むライセートによる、0.1ng/ml IL−1β(ヒト)の存在下での、個々のライセート中のタンパク質濃度の推定値を使用した、IL−1β拮抗作用を示すグラフである。
図9-1】下記タンパク質に対する固定された可溶性IL−1RIの結合動力学を示すSPRデータのグラフを含む:IL−1β(図9A)、IL−1Ra(図9B)。
図9-2】下記タンパク質に対する固定された可溶性IL−1RIの結合動力学を示すSPRデータのグラフを含む:P04(図9C)、およびP05(図9D)。
図10A図10Aは実施例7で記載されるIL−1Ra、IL−1β、P03、P04、およびP05の熱変性を示すグラフである。
図10B図10Bは、図10Aのグラフの負の一次導関数を示す。
図11A】ドライアイモデルのマウスに対する0、3、7、9、および11日での、2つの独立した研究の各眼あたりの角膜のフルオレセイン染色により試験した平均角膜染色スコア±SEMを示す棒グラフである。マウスは、処置なし(n=18)、10mg/ml P05(n=19)、または1.25×PBS、ビヒクル(n=20)を受けた。アスタリスクは、下記のように、ビヒクルに対するP05の統計的有意性を示す:(P<0.05)および**(P<0.005)。
図11B】ドライアイモデルのマウスに対する0、3、7、9、および11日での各眼あたりの角膜の平均角膜染色スコア±SEMを示す、別の実験からのデータを表す棒グラフである。マウスは、処置なし(n=8)、1.25×PBSビヒクル(n=8)、10mg/mlマウス血清アルブミン(MSA)(n=8)、または10mg/ml P05(n=9)を受けた。アスタリスクは、下記のように、マウス血清アルブミンに対するP05の統計的有意性を示す:(P<0.05)および***(P<0.0005)。
図11C図11Bと同じ実験における、Restasis(登録商標)(0.05%シクロスポリンエマルジョン)(n=8)で処置したマウスに対するデータを含む棒グラフである。アスタリスクは、下記のように、Restasis(登録商標)に対するP05の統計的有意性を示す:**(P<0.005)および***(P<0.0005)。
図12A図12Aは、その構造の計算モデル(灰色)上に重ね合わせたP04のX線結晶構造(黒色)の構造を示す。
図12B図12Bは、P04のK64およびE39間の相互作用を示す。
図12C図12Cは、P04のC末端残基Q149およびS152とK40およびR9の間の相互作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
サイトカインのIL−1ファミリーはいくつかのメンバーを含み、全てが別の6つのβ−ストランドによりキャップされたβ−バレルを形成する6つのβ−ストランドから構成される共通のβ−トレフォイル折り畳みを有する。これらのサイトカインのヒトおよび他の哺乳類形態の一次構造は知られている。いくつかのヒトIL−1ファミリーメンバーの例示的な構造アライメントは図1に示される。
【0075】
とりわけ、IL−1折り畳みは非常に柔軟であるということを我々は発見した。特に、異なるメンバー由来の要素を組み合わせて、サイトカインシグナル伝達を刺激するまたは拮抗するタンパク質を提供することができる。これらのタンパク質の例としては、キメラサイトカインドメインが挙げられ、これらは、例えば1つのサイトカイン由来の2つ以上のセグメントまたは表面残基を、別のサイトカインまたはサイトカインコンセンサス配列との関連で含み、よって、異なるIL−1ファミリーサイトカイン由来の受容体相互作用部位の非自然発生的な組み合わせが生成される。
【0076】
IL−1ファミリーサイトカインは、少なくとも2つの一次受容体相互作用部位を含むことができ、サイトAおよびサイトBと呼ばれる。サイトAおよびBは、一次サイトカイン受容体(例えば、IL−1RI)への接触に関与する。IL−1RaおよびIL−1βの場合、例えば、2つのタンパク質は、サイトAおよびBに関して実質的に異なり、そのため、IL−1Raは、サイトAよりもサイトBでは、より少ない受容体接触を形成する。
【0077】
我々は1つのサイトカイン由来のサイトAおよび別のサイトカイン由来のサイトBを含む機能的キメラサイトカインドメインを構築することが可能であることを見いだした。IL−1折り畳みの柔軟性により、IL−1シグナル伝達に拮抗する様々なキメラサイトカインドメインの構築が可能である。
【0078】
さらに、IL−1ファミリーサイトカインは、2つの二次受容体相互作用部位を含むことができ、サイトCおよびサイトDと呼ばれ、これらは、アゴニズムおよび/または拮抗作用に関与し、サイトカインのその二次サイトカイン受容体(例えば、IL−1RAcP)と相互作用する能力を決定することができる。天然受容体アンタゴニスト(例えばIL−1Ra)由来のサイトCおよび/またはサイトD残基を含むと、アンタゴニスト特性を付与することができる。1つ以上のIL−1アゴニスト(例えばIL−1βおよびIL−1α)および/またはIL−1受容体アンタゴニスト(例えばIL−1Ra)由来のサイトAおよびBの1つまたは両方ならびにIL−1受容体アンタゴニスト(例えばIL−1Ra)由来の部位CおよびDの1つまたは両方を含むキメラサイトカインドメインを構築することができる。したがって、シグナル伝達に拮抗し、IL−1アゴニスト由来のサイトB残基を含むキメラサイトカインドメインを生成させることができる。
【0079】
例示的な組み合わせはまた、下記表2で提供される:
【表2】
【0080】
起源配列は、同定されたサイトカインドメインに対するヒト配列に同一とすることができ、またはヒト配列に対し変異を含むことができ、例えば、そのため、それらは、各それぞれの領域において、ヒト配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%以上同一であり、例えば、それらは各領域由来の1つ以上のセグメントを含むことができる。
【0081】
サイトA残基およびサイトB残基のための起源は、一次受容体への親和性を最大とするように選択することができる。例えば、IL−1RIに結合するために、サイトA残基は、IL−1Ra由来とすることができ、サイトB残基はIL−1β由来とすることができる。
【0082】
キメラサイトカインドメインは、IL−1ファミリー受容体、例えば、ヒトIL−1RIに結合する能力を有することができ、Kは10−8、10−9、または10−10未満であり、例えば、Kは、同じ条件下で天然受容体リガンド(例えば、IL−1β、IL−1α、またはIL−1Ra)の10または100倍以内であり、または同じ条件下で天然リガンド(例えば、IL−1β、IL−1α、またはIL−1Ra)のそれ未満である。さらに、ある実施形態では、キメラサイトカインドメインは、その親サイトカインドメインの少なくとも1つより低いK、速いKon、または遅いKoffで結合する。
【0083】
IL−1ファミリー受容体に結合し、受容体シグナル伝達に拮抗するキメラサイトカインドメインは、受容体結合剤として、例えば、下記で記載されるIL−1ファミリーサイトカインシグナル伝達により媒介される障害を治療するために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、キメラサイトカインドメインはIL−1RIに結合し、IL−1シグナル伝達に拮抗する。例えば、100、10、1、0.6、または0.3nM未満のIC50を有する。
【0084】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、第1のIL−1ファミリーサイトカインドメインに少なくとも40、45、または50%同一であるが、完全に同一未満であり、例えば95、90、85、または80%同一とすることができる。同時に、サイトカインドメインはまた、第2のIL−1ファミリーサイトカインドメインに少なくとも40、45、または50%同一であるが、完全に同一未満であり、例えば、95、90、85、または80%未満同一とすることができる。第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインドメインは、互いに50%未満同一とすることができる。例えば、第1のIL−1ファミリーサイトカインドメインはアゴニストすることができ(例えば、IL−1βまたはIL−1α)、一方、第2のIL−1ファミリーサイトカインドメインは受容体アンタゴニストとすることができる(例えば、IL−1Ra)。
【0085】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメイン内の少なくとも80、85、90、92、94、95、97、98、99、または100%の位置が、そのような各位置で、存在するアミノ酸が第1のIL−1ファミリーサイトカインドメインまたは第2のIL−1ファミリーサイトカインドメインのいずれか(または第1および第2のIL−1ファミリーサイトカインが、特定の位置で同一である場合両方)に同一であるという特性を有する。サイトカインドメイン内のアミノ酸位置の100%がこの特性を有する場合、ドメインは、2つのサイトカインの完全キメラである。キメラサイトカインドメインはまた、2を超えるサイトカインから生成させることができ、その親サイトカインに対し変異(例えば、存在するアミノ酸がその親サイトカインの各々における対応するアミノ酸とは異なる場合の、1つ以上の特定の位置)を有することができる。
【0086】
サイトカインドメインは、異なるIL−1サイトカインドメイン由来のサイトA、B、C、およびD残基を有することができ、同様に、異なるIL−1サイトカインドメイン由来のサイトA、B、C、およびD領域を有することができる。
【0087】
サイトA.例えば、ある実施形態では、サイトカインドメインは、上記で同定されるサイトA残基の少なくとも5、10、12、15、16、17、18で、または、上記で同定される拡張サイトAの残基の少なくとも5、10、12、15、16、17、18、19、または20で受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra)またはアゴニスト由来の残基を含み、または、そのような残基の保存的置換、またはそのような残基の少なくとも50、65、75、80、90、95、または100%を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra)またはアゴニスト(例えば、IL−1βまたはIL−1α)におけるセグメントA1、A2、またはA1+A2に少なくとも70、75、80、85、88、90、92、95、または100%同一である残基を含む。
【0088】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、本明細書で同定されるサイトA残基の少なくとも5、10、12、15、16、17、または18で、または上記で同定される拡張サイトA残基の少なくとも5、10、12、15、16、17、または18でIL−1アゴニスト(例えば、IL−1β残基)に同一な残基、またはそのような残基の保存的置換、またはそのような残基の少なくとも50、65、75、80、90、95、または100%を含む。
【0089】
サイトB.ある実施形態では、サイトカインドメインは、本明細書で同定されるサイトB残基の少なくとも2、3、5、8、9、10、11、12、13、14、または15でIL−1アゴニスト(例えば、IL−1βまたはIL−1α残基)に同一な残基、またはそのような残基の保存的置換、またはそのような残基の少なくとも50、65、75、80、90、95、または100%を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1サイトカインアゴニスト(例えば、IL−1βまたはIL−1α)におけるセグメントB1、B2、B3、B1+B2、B1+B3、B2+B3、またはB1+B2+B3に少なくとも70、75、80、85、88、90、92、95、または100%同一である残基を含む。
【0090】
サイトC.ある実施形態では、サイトカインドメインは、本明細書で同定されるサイトC残基の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12で受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra残基)に同一な残基、またはそのような残基の保存的置換、またはそのような残基の少なくとも50、65、75、80、90、または100%を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra)におけるセグメントC1に少なくとも50、65、75、80、90、または100%同一である残基を含む。
【0091】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、例えば、下記の1つ以上を含むことができる:SEQ ID NO:1のTHR137に対応する位置の疎水性アミノ酸(例えば、MetまたはIle)、またはSEQ ID NO:1のGLN141に対応する位置の疎水性、例えば、脂肪族アミノ酸(例えば、ValまたはIle)、およびSEQ ID NO:1のASP145に対応する位置の非酸性アミノ酸、例えば塩基性アミノ酸(例えば、LysまたはArg)、および他のIL−1サイトカインにおけるそれらに対応する位置のそのような残基。証拠により、Asp145が、IL−1RAcPのリクルートメントには重要であることが示され、したがって非酸性残基への変異はアゴニスト活性を妨害し、アンタゴニスト特性を付与するために使用することができる。したがって、ある実施形態では、非酸性アミノ酸、例えば塩基性アミノ酸(例えば、LysまたはArg)または疎水性アミノ酸が、SEQ ID NO:1のASP145に対応する位置に配置される。
【0092】
サイトD.ある実施形態では、サイトカインドメインは本明細書で同定されるサイトD残基の少なくとも1、2、3、4、5、または6つで受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra残基)に同一な残基、またはそのような残基の保存的置換、またはそのような残基の少なくとも50、65、75、80、90、95、または100%を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1Ra)におけるセグメントD1、D2、D3、D4、D5、D1+D2、D1+D2+D3、およびそれらの組み合わせに少なくとも50、65、75、80、90、95、または100%同一である残基を含む。
【0093】
IL−1βにおけるいくつかの残基はIL−1RIと接触し、近接し、例えば下記である:ALA1、PRO2、VAL3、ARG4、LEU6、ARG11、SER13、GLN14、GLN15、GLU25、LYS27、LEU29、HIS30、LEU31、GLN32、GLY33、GLN34、ASP35、MET36、GLN38、GLN39、PHE46、GLN48、GLU51、SER52、ASN53、LYS55、ILE56、PRO57、LYS92、LYS93、LYS94、LYS103、GLU105、ASN108、ALA127、GLU128、ASN129、MET130、GLN141、GLN149、PHE150、およびSER152。上記で記載される部位への指定に加えて、これらの残基は2つの組に分類することができる:セット1およびセット2。
【0094】
IL−1βにおける例示的なセット1残基としては下記が挙げられる:ARG11、SER13、GLN14、GLN15、GLU25、LYS27、LEU29、HIS30、LEU31、GLN32、GLY33、GLN34、ASP35、MET36、GLN38、GLN39、ALA127、GLU128、ASN129、MET130、およびGLN141ならびに他のIL−1サイトカインファミリーメンバーにおける対応する残基。拡張セット1残基としては、相互作用セット1残基および1ITB構造中の前記の4オングストローム内の残基が挙げられる。IL−1βにおける例示的なセット2残基としては下記が挙げられる:ALA1、PRO2、VAL3、ARG4、LEU6、PHE46、GLN48、GLU51、SER52、ASN53、LYS55、ILE56、PRO57、LYS92、LYS93、LYS94、LYS103、GLU105、ASN108、GLN149、PHE150、およびSER152ならびに他のIL−1サイトカインファミリーメンバーにおける対応する残基。拡張セット2残基としては、相互作用セット2残基および1ITB構造中の前記の4オングストローム内の残基が挙げられる。ある実施形態では、サイトカインドメインは、上記で同定されるセット1残基の少なくとも15、16、17、18、19、20、または21でIL−1β残基を含む。ある実施形態では、サイトカインドメインは、上記で同定されるセット2残基の少なくとも15、16、17、18、19、20、21、または22でIL−1β残基を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、拡張セット1残基の少なくとも15、16、17、18、19、20、または21でIL−1β残基を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは、拡張セット2残基の少なくとも15、16、17、18、19、20、または21のIL−1β残基を含む。
【0095】
受容体結合剤として使用することができる他の変異体としては、2つ以上のIL−1サイトカインファミリーメンバー由来の配列を有するタンパク質が挙げられる。そのような変異体の例としては、IL−1βおよびIL−1Raに基づくキメラドメインが挙げられる。例えば、変異体はIL−1Raのセット1由来の1つ以上のアミノ酸残基(例えば、IL−1Ra由来の全てのセット1残基)およびIL−1βのセット2由来の1つ以上のアミノ酸残基(例えば、IL−1β由来の全てのセット2残基)を含むことができる。
【0096】
例示的なキメラタンパク質は、IL−1βに下記アミノ酸位置で(すなわち、IL−1βにおけるこれらの位置への対応に基づき)主に(例えば、少なくとも50、60、70、75、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、97、98、99、または100%)同一である:SEQ ID NO:1の残基1−8、42−120、および141−153;SEQ ID NO:1の残基1−6、45−61、86−95、および148−153;およびSEQ ID NO:1の残基1−10、37−125、および131−153。
【0097】
残りの残基はIL−1Raに主に(例えば、少なくとも50、60、70、75、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、97、98、99、または100%)同一である。例えば、下記アミノ酸位置はIL−1Raに主に同一であり得る:SEQ ID NO:1の残基9−41および121−140;SEQ ID NO:1の残基7−44、62−85、および96−147;およびSEQ ID NO:1の残基11−36および126−130。
【0098】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、IL−1βのアミノ酸位置Gln48−Asn53に加えて少なくとも2、4、5、10、または20位置でIL−1βに同一であり、例えば、サイトカインドメインはIL−1β以外のサイトカインに主に、例えば、少なくとも50、60、70、75、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、97、98、99、または100%同一である。
【0099】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:1の1−8に対応する位置で、IL−1βに同一な少なくとも3、4、5、6、7、または8つの残基を含む。例えば、下記の3、4、または5つ全てに対応する位置でIL−1βに同一な残基を含む:ALA1、PRO2、VAL3、ARG4、およびLEU6。
【0100】
ある実施形態では、サイトカインドメインはSEQ ID NO:1の45−61に対応する位置でIL−1βに同一な少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17の残基を含む。例えば、下記の3、4、5、6、7または8に対応する位置でIL−1βに同一な残基を含む:PHE46、GLN48、GLU51、SER52、ASN53、LYS55、ILE56、およびPRO57。
【0101】
ある実施形態では、サイトカインドメインはSEQ ID NO:1の86−95に対応する位置でIL−1βに同一な少なくとも5、6、7、8、9、または10の残基を含む。例えば、LYS92、LYS93、およびLYS94の1、2、または3つ全てに対応する位置でIL−1βに同一な残基を含む。
【0102】
ある実施形態では、サイトカインドメインはSEQ ID NO:1の148−153に対応する位置でIL−1βに同一な少なくとも3、4、5、または6つの残基を含む。例えば、GLN149、PHE150、およびSER152の1、2、または3つ全てに対応する位置でIL−1βに同一な残基を含む。
【0103】
ある実施形態では、サイトカインドメインはIL−1βにおけるTHR147に対応する位置のスレオニンを含まない。例えば、この位置は芳香族、例えばチロシンとすることができる。IL−1βにおけるTHR147に対応する位置の芳香族は、いくつかの実施形態では位置11(IL−1βナンバリングによる)に存在する別の芳香族(例えば、トリプトファン)に対して詰めることができる。
【0104】
ある実施形態では、サイトカインドメインはIL−1βにおけるCYS8に対応する位置で芳香族を含まない。例えば、この位置はフェニルアラニン以外、または芳香族以外のアミノ酸とすることができる。例えば、システイン、バリン、セリン、スレオニンまたはアラニンとすることができる。この位置は他の嵩高い残基、特にMET44およびMET148(IL−1βナンバリングによる)近くに位置する。好ましくは、3つの位置8、43、および148すべてが嵩高い残基ではない。
【0105】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:1の30−36に対応する位置でIL−1Raに同一な少なくとも5、6、または7つの残基、例えば、YLQGPNV(SEQ ID NO:43)に同一な少なくとも5、6、または7つの残基を含む。例えば、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:1の11−36に対応する位置でIL−1Raに同一な少なくとも10、12、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、または26の残基を含む。サイトカインドメインはまた、SEQ ID NO:1の145に対応する位置で塩基性残基を含むことができる。
【0106】
ある実施形態では、サイトカインドメインは下記を含む:(a)IL−1βのVal40に対応する位置のグルタミン酸およびIL−1βのLys65に対応する位置のリシン;(b)IL−1βのThr9に対応する位置のアルギニンおよびIL−1βのGln149に対応する位置のグルタミン;および/または(c)IL−1βのV41に対応する位置のリシンおよびIL−1βのSer152に対応する位置のセリン。
【0107】
サイトカインドメインはまた、126−132に対応する位置でIL−1Raに同一な少なくとも4、5、6、または7つの残基、例えば、MEADQPVS(SEQ ID NO:44)に同一な少なくとも4、5、6、または7つの残基を含むことができる。
【0108】
ある実施形態では、サイトカインドメインは、SEQ ID NO:1の62−85に対応する位置でIL−1βに同一な少なくとも10、12、14、16、18、19、20、21、22、23、または24の残基を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、サイトカインドメインは下記アミノ酸配列の1つ以上(例えば、4つ全て):RSLAFR(SEQ ID NO:45)、IDVSFV(SEQ ID NO:46)、KKMDKR(SEQ ID NO:47)、およびKFYMQF(SEQ ID NO:48)の1つ以上(例えば、4つ全て);下記RSLAFR(SEQ ID NO:45)、IDVSFV (SEQ ID NO:46)、NKLSFE(SEQ ID NO:49)、およびKFYMQF(SEQ ID NO:48)の1つ以上(例えば、4つ全て);下記RSLAFR(SEQ ID NO:45)、EEKFSM(SEQ ID NO:50)、RFVFIR(SEQ ID NO:51)、およびVTKFTM(SEQ ID NO:52)の1つ以上(例えば、4つ全て);下記RSLAFR(SEQ ID NO:45)、EEKFSM(SEQ ID NO:50)、FESAAC(SEQ ID NO:53)、およびVTKFTM(SEQ ID NO:54)の1つ以上(例えば、4つ全て);または下記LNCRIW(SEQ ID NO:55)、EEKFSM(SEQ ID NO:50)、PNWFLC(SEQ ID NO:56)、およびKFYMQF(SEQ ID NO:48)の1つ以上(例えば、4つ全て)を含む。
【0110】
キメラタンパク質は様々な目的のために使用することができる。例えば、それらは、受容体シグナル伝達活性を増加または減少させるため、受容体を発現する細胞を検出するため、またはそれらが結合する細胞またはタンパク質を精製するために、使用することができる。
【0111】
IL−1βおよびIL−Raに基づくキメラサイトカインドメインの具体例は、下記実施例1で提供され、IL−1シグナル伝達に拮抗する下記例示的なサイトカインドメインを含む:
【0112】
P01.P01ドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸Ala12−Val48、Ile60−Val83、およびAsp95−Tyr147に対応するIL−1Ra由来の3つのセグメントおよびIL−1β由来の残りの4つのセグメントを含む。全体で、P01ドメインは、IL−1β由来の153のアミノ酸の74を(約48%同一性)およびIL−1Ra由来の119のアミノ酸(約77%同一性)有する。これらのパーセンテージは加算すると100%を超えるが、これは、P01および本明細書で開示される他の例示的なタンパク質中のアミノ酸の多くが、IL−1βおよびIL−1Raの間で保存されるアミノ酸であり、したがってIL−1βおよびIL−1Raの両方に対するパーセンテージ同一性に寄与するからである。
【0113】
P02.P02ドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸Ala12−Val48、Ile60−Val83、およびSer110−Tyr147に対応するIL−1Ra由来の3つのセグメント、およびIL−1β由来の残りの4つのセグメントを含む。全体で、P02ドメイは、IL−1β由来の153のアミノ酸の85(約55%同一性)およびIL−1Ra由来の108のアミノ酸(約70%同一性)を有する。
【0114】
P03.P03ドメインはSEQ ID NO:3のアミノ酸Ala12−Lys45およびPhe100−Lys145に対応するIL−1Ra由来の2つのセグメント、およびIL−1β由来の残りの3つを含む。全体で、P03ドメインは、IL−1β由来の153のアミノ酸の94(約61%同一性)およびIL−1Ra由来の91のアミノ酸(約64%同一性)を有する。
【0115】
P04.P04ドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸Ala12−Lys45およびAla114−Lys145に対応するIL−1Ra由来の2つのセグメント、およびIL−1β由来の残りの3つのセグメントを含む。全体で、P04ドメインは、IL−1β由来の153のアミノ酸の104(約68%同一性)およびIL−1Ra由来の89のアミノ酸(約58%同一性)を有する。
【0116】
P05.P05ドメインは、SEQ ID NO:3のアミノ酸Arg14−Lys45およびPhe120−Tyr147に対応するIL−1Ra由来の2つのセグメント、およびIL−1β由来の残りの3つのセグメントを含む。全体で、P05ドメインは、IL−1β由来の153のアミノ酸の108(約70%同一性)およびIL−1Ra由来の85のアミノ酸(約55%同一性)を有する。
【0117】
他のキメラタンパク質は同様に構築することができる。例えば、キメラタンパク質は、IL−1αおよびIL−1Ra間で作製することができ、例えば、特定的にIL−1Raの同定されたセグメントを、上記例の各々に対し、IL−1βではなくIL−1α由来の対応する残基と組み合わせて含むドメインとすることができる。
【0118】
タンパク質修飾および置換
タンパク質配列、例えば本明細書で記載されるものは、例えば、1つ以上の保存的置換を生成させることにより変化させることができる。機能を保持する、機能をわずかに変化させるように保存的置換を生成させることができる。例示的な保存的置換は下記表で記載される:
【表3】
【0119】
置換は、(a)置換付近のバックボーン構造、例えば、シートまたはヘリカル構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のボリュームおよび分枝へのそれらの潜在的な効果に基づき選択することができる。アミノ酸残基は、側鎖の特性に基づき分類することができる:(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;(2)中性親水性:cys、ser、thr;asn;gln;(3)酸性:asp、glu;(4)塩基性:his、lys、arg;(5)バックボーン構造に影響する残基:gly、pro;および(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0120】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと置換することを含むことができる。保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを同じクラスの別のメンバーと置換することを含むことができる。
【0121】
特定の残基の重要性はまた、アミノ酸に対するヒドロパシー指標との関連で評価することができる。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づきヒドロパシー指標が割り当てられている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。ヒドロパシーアミノ酸指標およびその重要性の考察については、例えばKyte et al., 1982, J. Mol. Biol. 157:105-131を参照されたい。
【0122】
タンパク質の配列は任意の方法により変化させることができ、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、(Carter et al., Nucl. Acids Res.,13:4331, 1986; Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10:6487, 1987)、カセット変異誘発(Wells et al.、Gene、34:315、1985)、選択制限変異誘発(Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London, 317:415, 1986)、およびPCR変異誘発が挙げられる。In Vitro Mutagenesis Protocols: Third Edition, Braman (ed.), Humana Press, (2010) ISBN: 1607616513 and PCR Cloning Protocols: From Molecular Cloning to Genetic Engineering, Chen and Janes (ed.), Humana Press, (2002) ISBN: 0896039730も参照されたい。
【0123】
走査アミノ酸分析を使用して、近接配列に沿って1つ以上のアミノ酸を評価することができる。方法は、ある領域の各またはほとんど各アミノ酸を特定のアミノ酸、例えば、比較的小さい、中性アミノ酸、例えばアラニン、セリン、またはバリンに変異させることを含む。アラニンが典型的には選択され、というのも、それはβ−炭素を超える側鎖を排除し、変異体の主鎖構造を変化させる可能性が低いからである(Cunningham and Wells, Science, 244: 1081-1085, 1989)。それはまた、最も一般的なアミノ酸であり、しばしば、埋もれたおよび露出した位置の両方で見いだされる(Creighton, The Proteins, (W. H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1, 1976)。走査過程はまた、より顕著な変化を生成させるように適合させることができ、例えば、荷電残基は反対の電荷の残基に変化させることができ、短い側鎖を有する残基は嵩高い側鎖を有するものと置換することができる。例えば、アルギニン走査は、アラニン走査の代わりに、またはそれに加えて使用することができるアプローチである。走査は、領域内の各残基に、または特定の特性の残基、例えば、タンパク質の表面または表面近くの、あるいはタンパク質の表面または表面近くにある可能性のある残基に適用することができる。
【0124】
タンパク質、そのドメインの1つ、またはタンパク質を含む複合体の構造は、例えば、相同性ベースモデリング、エネルギー極小化および/または知られている解決された構造を使用する他のモデリングを実施することによりモデル化することができる。そのような方法としては下記が挙げられる: Accelrys Software Inc., Discovery Studio(登録商標), Release 3.0 、San Diego: Accelrys Software Inc., 2010, AMBER(商標)モデリングソフトウエア (Case et al. (2005) J. Computat. Chem. 26, 1668-1688 および Case et al. (2010), AMBER 11, University of California, San Francisco, CA USA)およびCHARMM(商標)モデリングソフトウエア(Molecular Simulations Inc.)。一般に Baker and Sali, Science 294(5540):93-6, 2001)もまた参照されたい。構造はまた、直接、例えば、X線結晶解析および/またはNMR分光法を使用して決定することができる。
【0125】
IL−1ファミリーサイトカインの構造を説明する例示的なPDB構造としては下記が挙げられる:1I1B、1ILR、1IRA、1ITB、2I1B、2ILA、2KLL、4I1B、5I1B、6I1B、7I1B、8I1B、9ILB、および1MD6(RCSB-Rutgers, Piscataway NJ, USA, およびNational Library of Medicine (Bethesda, MD, USA)からのwww.pdb.orgからのhttpにより入手可能)。例えば、単独および受容体IL−1RIと複合したIL−1βの構造が解析されている。例えば、Finzel et al. (1989) J. Mol. Biol. 209: 779-791, PDB 1ITB,およびVigers et al. (1997) Nature 386: 190-194を参照されたい。IL−1RIとのIL−1Raの構造も解析されている。例えば、PDB 1IRA およびSchreuder et al., (1997) Nature 386: 194-200を参照されたい。
【0126】
相同性モデリングは、配列のアライメントにより、例えば、コンピュータソフトウェア、例えばBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)、PSI−BLAST、PHI−BLAST、WU−BLAST−2、および/またはMEGABLASTを使用して支援され得る。Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410; Altschul et al., 1996, Methods in Enzymology 266, 460-480;およびKarlin et al., 1993, PNAS USA 90, 5873-5787を参照されたい。巨大分子(アミノ酸配列および核酸配列)を整列させるための追加のアルゴリズムとしてはFASTA(Pearson, 1995, Protein Science 4, 1145-1160)、ClustalW(Higgin et al., 1996, Methods Enzymol. 266, 383-402)、DbClustal(Thompson et al., 2000, Nucl. Acids Res. 28, 2910-2926)、およびMolecular Operating Environment(Chemical Computing Group, Montreal, Quebec Canada H3A 2R7)が挙げられる。さらに、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージのALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMyersおよびMillerのアルゴリズム(Myers & Miller, CABIOS 4, 11-17, 1988)が使用され得る。
【0127】
IL−1βおよびIL−1Raに対するコンセンサス配列は、2つの配列を比較し、同一である、または高度に保存されている残基を同定することにより得ることができる。本明細書で記載されるキメラサイトカインドメインは、少なくとも60、70、80、90、95、または100%のそのような同一残基または高度に保存された残基を有することができる。例示的なコンセンサス配列は下記であり:DXXQKX{8−9}L−AXXLQGX{18−28}LGX{7}LSCVXXXDXXXLQLEXVX{8−9}KXXKRFXFX{10}FESAXXPXWXXXTXXXXXXPVXLX{5−6}GXXXTXFXXQ(SEQ ID NO:57)、ここでXは独立して任意のアミノ酸であり、下付き数字または範囲は、出現数である。本明細書で記載されるキメラサイトカインドメインは、コンセンサス配列に少なくとも60、70、80、90、95、または100%同一性を有することができる(ここで、X残基は同一性に対しカウントされない)。他のコンセンサス配列は、同様に同定することができる。
【0128】
IL−1サイトカインファミリーメンバーのさらなる変異体は、ディスプレイベースシステムまたは他のライブラリベーススクリーニングを用いて、製造、評価することができる。例えば、タンパク質変異体は、表示および発現させ、IL−1サイトカインファミリーメンバーのための受容体に結合する能力に対し、評価することができる。例えば、IL−1β、IL−1Ra、または本明細書で記載されるサイトカインドメインの変異体は、IL−1RIの可溶性細胞外ドメインへ結合する能力に対し評価することができる。ディスプレイベースシステムの一般的な説明としては下記が挙げられる:細胞ディスプレイでは、Chao et al. Nat Protoc. 2006;1(2):755-68; Colby et al. Methods Enzymol. 2004;388:348-58; Boder et al., Methods Enzymol. 2000;328:430-44)、ファージディスプレイでは(例えば., Viti et al., Methods Enzymol. 2000;326:480-505 and Smith (1985) Science 228:1315-1317)、およびリボソームディスプレイでは(例えば, Mattheakis et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022 and Hanes et al. (2000) Nat Biotechnol. 18:1287-92; Hanes et al. (2000) Methods Enzymol. 328:404-30; およびSchaffitzel et al. (1999) J Immunol Methods 231(1-2):119-3。
【0129】
本明細書における多くの実施形態が、ヒトIL−1サイトカイン配列を親ドメインとして使用して例示されているが、他の配列を使用することができる。多くの他のIL−1サイトカイン、例えば、他の種由来が知られており、入手可能であり、公開データベース、例えばEntrez(the National Library of Medicine, Bethesda MD)およびEBI−EMBL(Hinxton, Cambridge UK)において見いだすことができる。UNIPROTデータベース由来のそのような配列の例(UniProt.orgで入手可能、The UniProt Consortium, Nucleic Acids Res. D142-D148 (2010)を参照されたい)は下記を含む:
【表4】
【0130】
本明細書で記載されるサイトカインドメインはまた、IL−1RIに結合することができる変異サイトカインドメイン中に存在する置換を含むことができる。例えば、SEQ ID NO:1の位置15(SEQ ID NO:3の位置20に対応する)はMetまたはAsnとすることができる。SEQ ID NO:1の位置30(SEQ ID NO:3の位置34に対応する)はGly、His、Trp、またはMetとすることができる。
【0131】
IL−1βおよびIL−1Raの追加の例示的な変異体としては、Boraschi et al. (1996) Frontiers in Bioscience: A Journal and Virtual Library 1、d270-308、Evans et al.、J. Biol. Chem.、270:11477 (1995)および Greenfeder et al.、J. Biol. Chem.、270:22460 (1995)に記載されるものが挙げられる。例えば、IL−1βの変異体としてはR11G、R11A、Q15H、E105G、およびT147Gが挙げられる。例えば、Evans et alを参照されたい。IL−1Raの変異体としては、W16Y、Q20M、Q20N、Y34G、Y34H、Y34W、Y34M、Y147G、Y147H、Y147M、K145D、H54P、V18S、T108K、C116F、C122S、C122A、Y147G、H54P、H54I、およびEvans et al. and Greenfeder et al.、J. Biol. Chem.、270:22460 (1995)における他のものが挙げられる。サイトカインドメインはまた、IL−1Raに前記位置の1つで同一な残基を含むことができる。サイトカインドメインはまた、前記変異の1つと、対応する位置で異なる残基を含むことができる。
【0132】
さらに、IL−1ファミリーサイトカインは、1つ以上の不対システイン残基を含むことができる。1つ以上の、例えば、2、3または全てのそのような不対システイン残基は、別のアミノ酸、例えば、無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンに変異させることができる。例えば、P01は、SEQ ID NO:17の位置67、70、116、および122にシステインを含む。1、2、3、または4つ全てのそのようなシステインは、別のアミノ酸、例えば無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンで置換することができる。P02は、SEQ ID NO:18の位置67、70、116、および122にシステインを含む。1、2、3、または4つ全てのそのようなシステインは、別のアミノ酸、例えば無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンで置換することができる。P03はSEQ ID NO:19の位置70、116、および122にシステインを含む。1、2、または3つ全てのそのようなシステインは、別のアミノ酸、例えば無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンで置換することができる。P04は、SEQ ID NO:20の位置70、116、および122にシステインを含む。1、2、または3つ全てのそのようなシステインは、別のアミノ酸、例えば無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンで置換することができる。P05は、SEQ ID NO:21の位置8、70、および122にシステインを含む。1、2、または3つ全てのそのようなシステインは、別のアミノ酸、例えば無電荷アミノ酸、例えばアラニンまたはセリンで置換することができる。
【0133】
IL−1ファミリーサイトカインドメイン(本明細書で記載されるキメラサイトカインドメインを含む)はまた、循環置換することができる。例えば、ドメイン由来のC末端セグメントを、再配置することができ、オリジナルN−末端に対するN末端およびN末端セグメント(一般に、C末端セグメントの切除後オリジナルタンパク質の残りを含む)となる。2つの再配置セグメントは、リンカー(例えば、約3〜10のアミノ酸)により分離することができる。一般に、置換え前のドメイン内のアミノ酸は全て、順序の変化以外は保持される。いくつかの実施形態では、置換えのためのカットポイントは、可動性領域、例えば、可動性ループ、例えばβ6−β7(例えば、SEQ ID NO:3の71−80に対応するアミノ酸)またはβ7−β8ループ(例えば、SEQ ID NO:3の84−99に対応するアミノ酸)内に存在し得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載される受容体結合剤、例えば、IL−1ファミリーサイトカインドメインを含む受容体結合剤は、30、25、22、20、19、18、または約17kDa未満の分子量を有する。いくつかの実施形態では、受容体結合剤は、18、19、20、22、25、30、40、45、または50kDa超の分子量を有する。例えば、受容体結合剤は、他のポリペプチド、ポリマまたは非ポリマ構成成分、例えば、薬物動態、安定性、免疫原性、および/または分子量を修飾する構成成分を含むことができる。タンパク質は他の修飾、例えば、翻訳後または合成修飾を含んでもよい。ある実施形態では、受容体結合剤はグリコシル化されない。他の実施形態では、受容体結合剤は少なくとも1つのグリコシル化を含む。
【0135】
例えば、本明細書で記載される受容体結合剤は、追加のドメインおよび特徴を含むことができる。例えば、受容体結合剤は、直接または間接的に、抗体タンパク質のドメイン、例えば、Fcドメインまたは1つ以上の定常ドメイン(例えば、CH1、CH2、またはCH3)に融合させることができる。例えば、ドメインはヒトドメインまたはヒトドメインの変異体とすることができる。Fcドメインまたは1つ以上の定常ドメインは、受容体結合剤のN末端またはC末端に配置され得る。
【0136】
Fcドメインは、任意の好適な免疫グロブリンから、例えば、ヒト抗体、例えば、例としてIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプの抗体、IgA、IgE、IgDまたはIgMから得ることができる。一例では、Fcドメインは、Fcドメインのカルボキシル末端に対し、約位置Cys226のアミノ酸残基由来、または約位置Pro230由来の配列を含む。Fcドメインは一般に2つの定常ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、ならびに任意でCH4ドメインを含む。そのFc領域内の置換および増加した血清半減期を有する抗体もまた、WO00/42072、WO02/060919; Shields et al., J. Biol. Chem. 276:6591-6604 (2001); Hinton, J. Biol. Chem. 279:6213-6216 (2004))に記載される。IgG重鎖中の残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NH1, MD (1991)におけるEU指標のものであり、その中のヒトIgG1 EU抗体のナンバリングを参照する。
【0137】
1つの実施形態では、受容体結合剤は、例えば、米国特許第5,739,277号およびGhetie et al.、Ann. Rev. Immunol. 18:739-766 (2000))で記載されるように、インビボ血清半減期を増加させるサルベージ受容体結合エピトープを含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、受容体結合剤に融合されるFc領域に含まれる。
【0138】
1つの実施形態では、受容体結合剤は、血清アルブミン配列、またはFcRn受容体に結合するそのような配列の一部、または血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンに結合する配列を含む。例えば、血清アルブミンと結合する特定のペプチドは受容体結合剤、例えば、配列DICLPRWGCLW(SEQ ID NO:22)と関連し得る。また、Dennis et al. J. Biol. Chem. 277:35035-35043 (2002)を参照されたい。
【0139】
受容体結合剤は、修飾され、その薬剤のサイズおよび安定性を増加させる配列、例えば、WO2008/155134またはWO2009/023270に記載される配列を含むことができる。そのような配列は、一般に生物学的に不活性とすることができ、例えば、IL−1サイトカインファミリーメンバーにより媒介されるシグナル伝達を調節しない。様々な安定化ポリペプチド配列を使用することができ、例えば、グリシンおよび/またはセリン、ならびに他のアミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、アラニンまたはプロリンに富む配列である。例えば、配列は、少なくとも30、40、50、60、70、80、90または100%のグリシンおよび/またはセリン残基を有するように設計することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質に結合された安定化ポリペプチド配列の合わされた長さは、少なくとも20、25、35、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900または1000もしくは2000超のアミノ酸とすることができる。安定化配列は、例えば、生物学的に活性なポリペプチド、例えば受容体結合剤のNまたはC末端に融合させることができる。安定化配列の融合により、非修飾タンパク質に比べ融合タンパク質の流体力学半径が著しく増加することになり得る(例えば、超遠心分離法、サイズ排除クロマトグラフィー、または光散乱により検出できる)。いくつかの実施形態では、安定化配列は下記アミノ酸をほとんどまたは全く含まない:システイン(ジスルフィド形成および酸化を避けるため)、メチオニン(酸化を避けるため)、アスパラギンおよびグルタミン(脱アミドを避けるため)およびアスパラギン酸。安定化配列はタンパク質分解に対する感度を減少させる傾向があるプロリン残基を含むように設計することができる。
【0140】
結合アッセイ
受容体結合剤およびその標的の相互作用は任意の好適なアプローチ(例えばラジオイムノアッセイ、細胞結合アッセイ、および表面プラズモン共鳴(SPR)を含む)を用いて分析することができる。放射性ヨウ素標識タンパク質競合を使用する例示的な細胞結合アッセイがBoraschi、J. Immunol.、155(10):4719-25 (1995)で記載される。
【0141】
SPRまたは生体分子相互作用分析(BIA)は実時間で相互作用物のいずれも標識せずに、生体分子特異的相互作用を検出することができる。BIAチップの結合表面での質量変化(結合事象を示す)は、表面付近での光の屈折率の変化となる(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学事象)。屈折率の変化は検出可能なシグナルを発生させ、これは、生体分子間の実時間反応の指標として測定される。SPRを使用する方法は、例えば、Raether、1988、Surface Plasmons Springer Verlag; Sjolander and Urbaniczky、1991、Anal. Chem. 63:2338-2345; Szabo et al.、1995、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705およびBIAcore International AB (Uppsala、Sweden)により提供されるオンライン資源において記載される。BIACORE(登録商標)システムまたはReichert SR7000DC Dual Channel SPRを使用して、動力学、親和性または特異性の観点で、標識を使用せずに、実時間で相互作用を比較し、ランク付けすることができる。サイトカイン受容体細胞外ドメイン(例えば、IL−1RIの細胞外ドメイン)に対する受容体結合剤の結合親和性は、SPRを用いておよそ生理的条件、例えば、10mM HEPES pH 7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% Tween−20下で測定することができる。例えば、結合および親和性を測定するために、SPRに頼らない他の方法もまた使用することができる。
【0142】
結合アッセイからの情報を使用して、受容体結合剤の標的への結合に対する平衡解離定数(K)、および動力学パラメータ(例えば、KonおよびKoff)の正確なおよび定量的測定値を提供することができる。そのようなデータを使用して、異なるタンパク質、標的、および条件を比較することができる。この情報を使用して、構造−活性関係(SAR)を発生させることもできる。例えば、変異タンパク質の動力学および平衡結合パラメータを、参照または親タンパク質のパラメータと比較することができる。特定の結合パラメータ、例えば、高親和性および遅いKoffと相関する一定の位置の変異アミノ酸は同定することができる。この情報は構造モデリング(例えば、相同性モデリング、エネルギー極小化、またはX線結晶解析またはNMRによる構造決定を用いる)と組み合わせることができる。
【0143】
親和性を評価するために使用されるタンパク質は、組換え型で生成させることができ、精製または固定に好適なタグ、例えば、FLAGタグ、mycタグ、ヘマグルチニンタグ、Hisタグ、またはFcドメイン融合を含むことができる。受容体タンパク質(例えばIL−1RI、およびIL−1RAcP)の細胞外ドメインは、例えば、細菌または昆虫細胞において発現させることにより、例えば、Sf9細胞におけるバキュロウイルス発現を用いて、組換え型で生成させることができる。可溶性受容体タンパク質は、BIAcoreシステムにおいて、例えば、それらのタグに結合する試薬を含むチップ、例えば、Fcドメインまたは他のタグに特異的なIgGでコートされたチップを用いて固定することができる。
【0144】
細胞活性アッセイ
受容体結合剤の受容体アンタゴニストとして機能する能力は、例えば、細胞ベースアッセイにおいて評価することができる。例えば、受容体結合剤によるIL−1RI阻害を評価することができる。IL−1活性のためのいくつかの例示的なアッセイがBoraschi et alにおいて記載されており、T細胞増殖アッセイ、IL−6およびIL−8生成アッセイ、およびカルシウム流入の阻害が挙げられる。
【0145】
1つの例示的なアッセイでは、受容体結合剤の能力がヒト線維芽細胞からのIL−6のIL−1β刺激放出を阻害する能力に対し評価される。MRC5細胞におけるIL−1β刺激サイトカイン放出の阻害は、薬剤の、IL−1媒介活性をインビボで阻害する能力と相関する。アッセイの詳細は、Dinarello et al., Current Protocols in Immunology, Ch. 6.2.1-6.2.7, John Wiley and Sons Inc., 2000に記載される。簡単に言うと、ヒトMRC5ヒト線維芽細胞(ATCC # CCL−171、Manassas VA、USA)をマルチウェルプレートにおいて培養密度まで増殖させる。細胞を滴定された用量の受容体結合剤および対照で処理する。細胞をその後、100pg/mlのIL−1βと、滴定された薬剤および/または対照の存在下で接触させる。陰性対照細胞は、IL−1βで刺激しない。処理細胞の各群において放出されたIL−6の量を、IL−6 ELISAキットを用いて測定する(例えば、BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ, USA)。使用することができる対照としては、緩衝剤のみ、IL−1Ra、およびIL−1βに対する抗体が挙げられる。
【0146】
受容体結合剤の有効性はまた、インビボで評価することができる。例示的なアッセイは、Economides et al., Nature Med., 9:47-52 (2003)に記載される。簡単に言うと、マウスに、滴定された用量の受容体結合剤および対照を腹腔内に注射する。注射24時間後、マウスに組換えヒトIL−1βを、1μg/kgの用量で皮下に注射した。IL−1β(ピークIL−6応答時間)の注射2時間後、マウスを屠殺し、血液を収集し、血清に対し処理する。血清IL−6レベルをELISAによりアッセイする。パーセント阻害は、実験動物血清において検出されたIL−6の対照において検出されたIL−6に対する比に基づき計算することができる。
【0147】
インビボでのIL−1活性に対する他の例示的なアッセイは、Boraschi et al.において記載されており、食欲不振、低血糖、および好中球増加症アッセイが挙げられる。
【0148】
生成
受容体結合剤は組換え宿主細胞での発現により生成させることができるが、他の方法、例えばインビトロ転写および翻訳ならびに化学合成によっても生成させることができる。
【0149】
細胞発現では、受容体結合剤をコードする1つ以上の核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)がクローニングまたは発現のために複製可能なベクターに挿入され得る。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスゲノム、ファージミド、ファージゲノム、または他の自己複製配列とすることができる。適切なコード核酸配列は、ベクター中に、様々な手順により挿入され得る。例えば、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位を操作することができる(例えば、PCRを使用して)。その後、制限消化およびライゲーションを使用してコード核酸配列を適切な場所に挿入することができる。ベクター構成成分は一般に複製開始点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列の1つ以上を含む。
【0150】
受容体結合剤は、単離において組換えにより生成され得るが、また、1つ以上の他の構成成分、例えばシグナル配列、エピトープまたは精製部分、および標識への融合によっても生成される。受容体結合剤は、インターロイキン−1ファミリーメンバーのプロドメインを含むことができ、例えば、これはその後、タンパク質分解プロセシングにより除去することができる。
【0151】
細菌発現では、受容体結合剤はシグナル配列あり、またはなしで生成させることができる。例えば、細胞内で生成させることができ、そのため、封入体中、または可溶性画分中に蓄積する。例えば、原核生物シグナル配列、例えば、適切なリーダー配列、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、または熱安定性エンテロトキシンII由来のものを追加することにより、分泌させることもできる。発現のための例示的な細菌宿主細胞としては、任意の形質転換性大腸菌K−12株(例えば大腸菌BL21、C600、ATCC 23724;大腸菌HB101 NRRLB−11371、ATCC−33694;大腸菌MM294 ATCC−33625;大腸菌W3110 ATCC−27325)、枯草菌株、シュードモナス、および他の桿菌が挙げられる。細菌系で生成されるタンパク質は典型的にはグリコシル化を欠く。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で記載される受容体結合剤は、実質的にグリコシル化がなく、例えば、哺乳類または他の真核細胞のグリコシル化修飾がない。
【0152】
受容体結合剤は酵母宿主細胞、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ハンゼヌラ(Hanseula)、またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現させることができる。酵母発現では、受容体結合剤はまた、細胞内でまたは分泌により、例えば、酵母インベルターゼリーダーまたはα因子リーダー(サッカロマイセスおよびクリベロマイセス型を含む)、または酸ホスファターゼリーダー、またはC.アルビカンス(C. albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日に公開されたEP362,179)を用いて生成させることができる。哺乳類細胞発現では、哺乳類シグナル配列、例えば同じまたは関連種の分泌されたポリペプチド由来のシグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダーを使用してタンパク質の分泌を誘導することができる。また、受容体結合剤は、インターロイキン−1ファミリーメンバーのプロドメイン、例えば、IL−1αまたはIL−1βプロドメインを用いて生成させることができる。
【0153】
発現およびクローニングベクターはどちらもベクターが1つ以上の選択された宿主細胞で複製することを可能にする核酸配列を含む。そのような配列は様々な細菌、酵母、およびウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製開始点がほとんどのグラム陰性細菌で好適であり;2μプラスミド開始点は酵母で好適であり;様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳類細胞におけるクローニングベクターで有用である。
【0154】
発現およびクローニングベクターは典型的には選択遺伝子またはマーカーを含む。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する、(b)栄養要求性欠乏を補う(例えば、サッカロマイセスにおけるURA3マーカー)、または(c)複合培地から得ることができない重大な栄養分を供給するタンパク質をコードし、例えば、桿菌ではD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。様々なマーカーがまた、哺乳類細胞に使用でき、例えば、DHFRまたはチミジンキナーゼである。DHFRは、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)により記載されるように調製および増殖された、DHFR活性を欠く細胞系(例えばCHO細胞系)と共に使用することができる。
【0155】
発現およびクローニングベクターは通常、mRNA合成を駆動するために、受容体結合剤をコードする核酸配列に動作可能に結合されたプロモーターを含む。原核生物宿主と共に使用するのに好適な例示的なプロモーターとしては、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature, 275:615 (1978); Goeddel et al., Nature, 281:544 (1979))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776)、およびハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983))が挙げられる。細菌系において使用するためのプロモーターはまた、適切に配置されたShine−Dalgarno配列を含むことができる。T7ポリメラーゼ系もまた、T7プロモーターの制御下に配置された核酸コード配列の発現を駆動するために、使用することができる。例えば、pETベクター(EMD Chemicals, Gibbstown NJ, USA)および例えば、EMD Chemicalsから入手可能なNovagen User Protocol TB053およびUS 5,693,489に記載される宿主細胞を参照されたい。例えば、そのようなベクターをBL21(DE3)細胞およびBL21(DE3)pLysS細胞と組み合わせて使用し、タンパク質、例えば、少なくとも0.05、0.1、または0.3mg/mlの細胞培養物を生成させることができる。使用することができる他の細胞系としては、B834、BLR、HMS174、NovaBlueのDE3溶源菌、例えばpLysSプラスミドを有する細胞が挙げられる。
【0156】
酵母細胞と共に使用するための例示的なプロモーターとしては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:2073 (1980))または他の糖分解酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968); Holland, Biochemistry, 17:4900 (1978))、例えばエノラーゼ、グリセロアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、およびピルビン酸キナーゼのためのプロモーターが挙げられる。他の例示的な酵母プロモーターが誘導性であり、増殖条件により制御される転写の追加の利点を有する。誘導性プロモーターの例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、メタロチオネイン、およびマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素のためのプロモーター領域が挙げられる。
【0157】
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの受容体結合剤をコードするmRNAの発現は例えば、ウイルス、例えばポリオーマウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)のゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、および熱ショックプロモーターにより制御することができる。異種プロモーター系、例えば、テトラサイクリン応答性プロモーターもまた使用することができる。Urlinger, S., et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(14):7963‐7968を参照されたい。転写はまた、シスまたはトランスで配置されたエンハンサー配列により駆動させることができる。例示的な哺乳類ンハンサー配列としては、グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリンに対するものが挙げられる。追加の例としては、複製開始点の後側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは受容体結合剤のためのコード配列に対し5’または3’位でベクター中にスプライスされてもよいが、好ましくはプロモーターから5’部位に配置される。
【0158】
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターはまた、転写の終止およびmRNAの安定化ために必要な配列を含むことができる。そのような配列は通常、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および、時々3’、非翻訳領域から得ることができる。これらの領域は、受容体結合剤をコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。発現ベクターはまた、1つ以上のイントロン配列を含み得る。
【0159】
受容体結合剤はまた、昆虫細胞、例えば、Sf9またはSF21細胞において、例えば、pFAST−BAC(商標)系を用いて発現させることができる。追加の例示的なバキュロウイルス発現ベクターは、Invitrogen,Life Technologies,Carlsbad CA,USAから入手可能である。受容体結合剤はまた、哺乳類細胞において発現させることができる。例えば、哺乳類起源の細胞系もまた使用され得る。哺乳類宿主細胞系の例としては、サル腎細胞のCOS−7系(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., Cell 23:175, 1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、およびBHK(ATCC CRL 10)細胞系、およびアフリカミドリザル腎細胞系CV1由来のCV1/EBNA細胞系(ATCC CCL 70)(McMahan et al. (EMBO J. 10: 2821, 1991)により記載)が挙げられる。DNAを哺乳類細胞に導入するための確立された方法は記載されている(Kaufman, R. J., Large Scale Mammalian Cell Culture, 1990, pp. 1569)。
【0160】
組換え細胞における受容体結合剤の合成に対する適応に好適なさらに他の方法、ベクター、および宿主細胞はMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Ed., Sambrook et al. (eds.), Cold Spring Harbor Press, (2001) (ISBN: 0879695773)に記載される。
【0161】
細胞中で発現されるとすぐに、受容体結合剤は、培地、封入体、細胞ライセートから回収することができる。細胞は、様々な物理的および化学的手段、例えば凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤(例えば、洗剤)により破壊することができる。
【0162】
受容体結合剤は、細胞ライセートまたは細胞培地中で見いだされ得る他の細胞タンパク質またはポリペプチドから精製することができる。様々なタンパク質精製方法を使用することができ、そのような方法は当技術分野において知られており、例えばDeutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990);およびScopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (2010) (ISBN: 1441928332)において記載される。例示的な精製手順としては下記が挙げられる:イオン交換カラム上での分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはカチオン交換樹脂、例えばDEAE上でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、セファデックスG−75を使用するゲル濾過;IgGなどの汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースカラム;および親和性カラム(例えば、タンパク質のエピトープ−タグ形態に結合する金属キレート化カラムおよび受容体結合剤と関連する任意の精製部分に結合する様々なリガンドを有するカラム)。精製方法は、2つの異なるイオン交換クロマトグラフィーステップの組み合わせ、例えば、カチオン交換クロマトグラフ、続くアニオン交換クロマトグラフィー、またはその逆を含むことができる。受容体結合剤は、様々な方法によりイオン交換樹脂から溶離させることができ、塩および/またはpH勾配またはステップが含まれる。いくつかの実施形態では、受容体結合剤は精製部分(例えば、エピトープタグおよび親和性ハンドル)を含む。そのような部分は、親和性クロマトグラフィーのために使用することができ、任意でタンパク質分解切断により除去することができる。
【0163】
イオン交換クロマトグラフィーはまた、イオン交換分離技術として使用され得る。イオン交換クロマトグラフィーは、分子の全体電荷間の違いに基づき分子を分離し、受容体結合剤の無傷な形態を、そのようなタンパク質の他の形態から分離するために使用することができる。
【0164】
アニオンまたはカチオン置換基は、クロマトグラフィーのためのアニオンまたはカチオンサポートを形成するためにマトリクスに結合させることができる。アニオン交換置換基としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)、第4級アミノエチル(QAE)および第4級アミン(Q)基が挙げられる。カチオン置換基としては、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、リン酸(P)およびスルホン酸(S)が挙げられる。セルロースイオン交換樹脂、例えばDE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52がWhatman Ltd.(Maidstone、Kent、U.K)から入手可能である。セファデックス(商標)および他の架橋イオン交換体も知られている。例えば、DEAE−、QAE−、CM−、およびSP−セファデックス(商標)ならびにDEAE−、Q−、CM−およびS−セファロース(商標)およびセファロース(商標)Fast FlowがPharmacia ABから入手可能である。DEAEおよびCM誘導体化エチレングリコール−メタクリレートコポリマ、例えばTOYOPEARL DEAE−650SまたはMおよびTOYOPEARL CM−650SまたはMがToso Haas Co.(Philadelphia、PA、USA)から入手可能である。
【0165】
カチオン交換表面は、共有結合された負に帯電したリガンドを有するイオン交換表面であり、よって、表面と接触する溶液中のカチオンとの交換のために遊離カチオンを有する。例示的な表面としてはカチオン交換樹脂、例えば共有結合された基がカルボン酸またはスルホン酸であるものが挙げられる。市販のカチオン交換樹脂としてはCMC−セルロース、SP−セファデックス(商標)およびFast S−セファロース(商標)(Pharmacia)が挙げられる。
【0166】
イオン交換表面は、共有結合された正に帯電した基、例えば第4級アミノ基を有するイオン交換表面である。例示的なアニオン交換表面は、アニオン交換樹脂、例えばDEAEセルロース、TMAE、QAE セファデックス(商標)およびFast Qセファロース(商標)(Pharmacia)である。
【0167】
受容体結合剤のための例示的な精製スキームは、溶解緩衝剤中に大腸菌細胞を溶解すること、続いて、深層濾過を含む。材料はその後、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)に供せられる。CEX溶出液はその後、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)ステップにおいてアニオン交換媒質上に流される。AEXFTは、研磨ステップに供せられる。材料はその後、限外濾過/ダイアフィルトレーションにより処理することができ、例えば、材料が濃縮または脱塩される。限外濾過/ダイアフィルトレーション膜は、名目分画分子量(「NMWCO」)に基づき選択されてもよく、よって、残余分中にタンパク質が保持され、低分子量材料、例えば塩が濾液に移行することができる。任意の緩衝溶液または滅菌水が、例えば、生成物の所望の最終pHおよび伝導率によって、最終緩衝剤交換ステップ中に使用され得る。
【0168】
受容体結合剤は、様々な溶液、例えば水、PBS、および緩衝溶液中で貯蔵することができる。例示的な緩衝溶液としては酢酸ナトリウムpH4.5、酢酸ナトリウムpH4.7、酢酸ナトリウムpH4.9、酢酸ナトリウムpH5.1、酢酸ナトリウムpH5.3、酢酸ナトリウムpH5.5、コハク酸pH5.2、コハク酸pH5.4、コハク酸pH5.6、コハク酸pH5.8、ヒスチジンpH5.7、ヒスチジンpH6.0、ヒスチジンpH6.3、ヒスチジン6.6、リン酸ナトリウムpH6.5、リン酸ナトリウムpH6.7、リン酸ナトリウム7.0、リン酸ナトリウムpH7.3、リン酸ナトリウムpH7.7、イミダゾールpH6.5、イミダゾールpH6.8、イミダゾールpH7.2、Tris pH7.0、Tris pH7.5、Tris pH7.7が挙げられる。緩衝剤は、例えば、約1−100mM、5−50mM、10−50mM、または5−25mMの濃度で存在することができる。溶液はさらに、塩、例えばNaCl(例えば、50mM、150mM、または250mM、およびそれらの間の範囲)、アルギニン(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、およびそれらの間の範囲)、スクロース(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、8.5%、10%、15%、およびそれらの間の範囲)、および/またはグリセロール(例えば、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、8.5%、10%、15%、およびそれらの間の範囲)を含むことができる。
【0169】
受容体結合剤は組成物中に、少なくとも50mg、100mg、500mg、1g、5g、10g以上の量で存在することができる。
【0170】
分析方法
宿主細胞タンパク質(HCP)は、受容体結合剤とは異なる調製物中のタンパク質を示し、例えば、受容体結合剤が調製された宿主細胞の内在性タンパク質、典型的には大腸菌タンパク質である。好ましくは、宿主細胞タンパク質は、10000、1000、900、800、または700ppm(百万分率)より少ない量で存在する。HCPは、例えば、ELISAまたは他の検出方法により検出することができる。例えば、ELISAは、HCPに対するポリクローナル抗体を使用することができる。例示的なキットは、Cygnus Technologies(CN# F410;Southport NC USA)から入手可能である。別の例示的なキットはAlphaScreen技術を使用する(AlphaLisa(登録商標)大腸菌HCPキット、製品番号AL261 C/F、Perkin Elmer、Waltham MA USA)。
【0171】
受容体結合剤を含むまたは潜在的に含む材料は、例えば、高圧液体クロマトグラフィーを使用して評価することができる。例示的な分析技術としては、弱カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(wCEX−HPLC)、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)、逆相液体クロマトグラフィー、ESI−MS、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、熱スプレーイオン化質量分析、音波スプレーイオン化質量分析、SELDI−MSおよびMALDI−MSが挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態では、受容体結合剤のN末端領域は、IL−1βのN末端領域由来のペプチド、例えば、ペプチドAPVRS(SEQ ID NO:58)に同一な配列を含む。そのようなタンパク質を発現する組換え細胞(特に大腸菌細胞)は、無傷なタンパク質ならびに他のアイソフォーム、例えばdes−Alaアイソフォームおよび追加のメチオニン(例えば、Ala1へのN末端)を有するアイソフォームを生成することができる。アミノ酸位置2(ここでは、N末端残基が位置1である)にプロリンを含む受容体結合剤は、大腸菌プロテアーゼ、例えばX−PROに対し切断特異性を有するアミノペプチダーゼPによる切断を受けやすい。この切断は、N末端アミノ酸を除去することができる。例えば、P03、P04、およびP05は位置2にプロリンを有する。P03、P04、およびP05の無傷な形態は、153アミノ酸長であり、アラニンから始まり、des−Ala種は152アミノ酸長であり、プロリンから始まる。
【0173】
上記のものなどの分析技術を使用して、無傷な形態と他の形態、例えば、des−Ala種の間で区別することができる。例示的な分析技術はwCEX−HPLCである。例えば、P05は、下記実施例9で記載されるようにDionex ProPac(登録商標)WCX−10 4x250mmカラム(製品番号054993)を用いて評価することができる。WCX−HPLCピークは質量分析とオンラインのC4逆相(RP)−HPLCにより評価することができる。無傷なP05は、理論的質量:17700.4Daを有し、17700.4Daとして検出できる。des−Ala種は、17629.4Daとして検出でき、これは無傷なP05の質量よりも71Da少ない。71Daの質量の減少は、単一のアラニン残基の除去に対応する。
【0174】
医薬組成物
受容体結合剤は医薬組成物として製剤化することができる。典型的には、組成物は無菌であり、1つ以上の緩衝剤、薬学的に許容される塩、および賦形剤または安定剤を含む。例えば、組成物は水性組成物とすることができる。本明細書で記載される受容体結合剤は、生物製剤のための標準方法に従い、製剤化することができる。例えば、Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000) (ISBN: 0683306472); Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed.., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727); Kibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd ed. (2000) (ISBN: 091733096X); Protein formulation and delivery, McNally and Hastedt (eds.), Informa Health Care (ISBN: 0849379490) (2007)を参照されたい。
【0175】
医薬組成物のための受容体結合剤は、典型的には少なくとも10、20、50、70、80、90、95、98、99、または99.99%純粋であり、典型的にはヒトタンパク質を含まない。組成物中の唯一のタンパク質または組成物中の唯一の活性タンパク質とすることができる。また、1つ以上の他の活性タンパク質、例えば、1つ以上の他の精製活性タンパク質、例えば、関連または非関連タンパク質と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、組成物は、受容体結合剤を、約0.001−10%、例えば、0.001−0.1%、0.01−1%、または0.1%−10%の濃度で含むことができる。
【0176】
したがって、本明細書では、本明細書で記載される薬剤の精製および単離形態もまた特徴とする。「単離」という用語は、そのオリジナル環境(例えば、受容体結合剤が生成される細胞または材料)から取り出された材料を示す。医薬組成物は、実質的に発熱性材料を含まず、実質的に核酸を含まず、および/または実質的に細胞酵素および構成成分、例えばポリメラーゼ、リボソームタンパク質、およびシャペロンタンパク質を含まない。
【0177】
医薬組成物は薬学的に許容される担体を含むことができる。本明細書では、「薬学的に許容される担体」は任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、および生理的に適合可能な同様なものを含む。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性効果を与えない塩(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)、例えば、酸付加塩および塩基付加塩を示す。
【0178】
1つの実施形態では、受容体結合剤は、1つ以上の賦形剤、例えば塩化ナトリウム、およびリン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素ナトリウム七水和物、リン酸二水素ナトリウム)、およびポリソルベートと共に製剤化される。例えば、緩衝溶液中、例えば、約5−100、5−30、30−50、または50−100mg/mlの濃度で提供することができ、2−8℃で貯蔵することができる。医薬組成物はまた、様々な他の形態とすることができる。これらとしては、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば液体溶液(例えば、注射可能および注入可能な溶液)、分散物または懸濁液、およびリポソームが挙げられる。好ましい形態は、対象の投与方法および治療適用に依存し得る。本明細書で記載される薬剤のための組成物は、典型的には注射可能または注入可能な溶液の形態であり、または局所または眼送達用である(下記を参照されたい)。
【0179】
医薬組成物は典型的には製造および貯蔵条件下で無菌および安定である。医薬組成物はまた、投与のための規制および業界標準を満たすことを保証するために試験することができる。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、または他の高い薬物濃度に好適な秩序構造として製剤化することができる。無菌注射用溶液は、本明細書で記載される薬剤を、必要量で適切な溶媒中に、要求に応じて、上記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、続いて、濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散物は、本明細書で記載される薬剤を、塩基性分散媒および上記で列挙されたものから要求される他の成分を含む無菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、本明細書で記載される薬剤+追加の所望の成分の粉末が前に無菌濾過されたその溶液から得られる。溶液の適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンを使用することにより、分散物の場合要求される粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンの含有により操作することができる。
【0180】
例えば、受容体結合剤は、ポリマ、例えば、実質的に非抗原性ポリマ、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドと関連させることができる。いくつかの実施形態では、ポリマは受容体結合剤に、例えば、直接または間接的に共有結合される。好適なポリマは、実質的に重量変動する。約200〜約35,000ダルトン(または約1,000〜約15,000、および2,000〜約12,500)の範囲の数平均分子量を有するポリマが使用され得る。例えば、受容体結合剤は、水溶性ポリマ、例えば、親水性ポリビニルポリマ、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンにコンジュゲートさせることができる。そのようなポリマの非制限的リストとしては、ポリアルキレンオキシドホモポリマ、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、そのコポリマおよびそのブロックコポリマが挙げられ、ただし、ブロックコポリマの水溶性が維持されることを条件とする。追加の有用なポリマとしては、ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマ(プルロニック);ポリメタクリレート;カルボマー;サッカライドモノマD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例えば、ポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびノイラミン酸を含む分枝または非分枝多糖、例えばホモ多糖およびヘテロ多糖、例としてラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストラン硫酸、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸ムコ多糖の多糖サブユニット、例えば、ヒアルロン酸;糖アルコールのポリマ、例えばポリソルビトールおよびポリマンニトール;ヘパリンまたはヘパランが挙げられる。
【0181】
ある実施形態では、受容体結合剤は、急速放出に対し化合物を保護する担体と共に調製され得る。放出制御製剤として、インプラントまたはマイクロカプセル化送達システムにより送達させることができる。生分解性、生体適合性ポリマ、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸が使用され得る。一般に、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0182】
投与
受容体結合剤は、被験体、例えば、ヒト被験体に、様々な方法、例えば、ボーラスとしてまたは一定期間にわたる持続注入による静脈内投与により、筋内、筋内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、滑膜内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外注射、胸骨内注射および注入により投与することができる。さらに他の投与方法としては、局所(例えば、皮膚または粘膜)あるいは吸入(例えば、鼻内または肺内)経路が挙げられる。多くの適用に対し、投与経路は、静脈内注射または注入、皮下注射、または筋内注射の1つである。
【0183】
受容体結合剤は、一定用量またはmg/kg用量で投与することができる。静脈内(IV)または皮下(SC)投与することができる。受容体結合剤は、例えば、毎日、1日おき、2、3もしくは4日おき、毎週、3〜5週に一回、例えば、4週おき、または毎月投与することができる。
【0184】
医薬組成物は、「治療的有効量」の本明細書で記載される薬剤を含み得る。薬剤の治療的有効量は、因子、例えば個体の病態、年齢、性別、および体重、および化合物の個体における所望の応答を引き起こす能力、例えば、少なくとも1つの障害パラメータの寛解、または少なくとも1つの障害の症状の寛解(および任意で投与される任意の追加の薬剤の効果)に従い変動し得る。治療的有効量はまた、組成物の毒性または有害効果より、治療的に有益な効果が上回るものである。受容体結合剤は、典型的には治療的有効量で投与される。
【0185】
医薬組成物は、医療装置、例えば、インプラント、注入ポンプ、皮下針、無針皮下注射装置を使用して投与することができる。装置は、例えば、医薬組成物を貯蔵するための1つ以上のハウジングを含むことができ、単位用量の受容体結合剤、および任意で第2の薬剤を送達するように構成することができる。用量は一定用量、すなわち、治療される被験体のための単位用量として適合された物理的に別々の単位とすることができ;各単位は、医薬担体と共に、任意で別の薬剤と共に所望の治療効果を生成させるように計算された、予め決められた量の受容体結合剤を含むことができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載される障害を治療するために、受容体結合剤を、障害を有する被験体に、障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において持続する改善を誘導するのに十分な量および時間で投与することができる。改善は、被験体が1〜4週だけ離れた少なくとも2つの場合において改善を示した場合、「持続する」と考えられる。改善度は、徴候または症状に基づいて決定することができ、被験体に与えられる質問票、例えば、生活の質に関する質問票を採用することもできる。
【0187】
治療の量および時間が十分かどうかを決定するために疾病の程度を反映する様々な指標を評価することができる。選択した1つまたは複数の指標のためのベースライン値は、第1の用量の受容体結合剤の投与前の被験体の検査により確立される。好ましくは、ベースライン検査は第1の用量を投与する約60日以内に実施される。
【0188】
改善は、被験体が選択された1つまたは複数の指標に対するベースラインを超える改善を明示するまで、ある用量の受容体結合剤を繰り返し投与することにより誘導することができる。慢性病状を治療する際には、改善度は、少なくとも1ヶ月以上、例えば、1、2、または3ヶ月以上の期間にわたり、あるいは無限に繰り返し投与することにより得られ得る。急性病状を治療する際には、薬剤は、1〜6週の期間、または単回投与で投与することができる。
【0189】
1つ以上の指標により、治療後の疾病の程度は改善されたように見えるが、治療は無限に同じレベルで、または低減された用量または頻度で、続けられることがある。治療はまた、例えば、症状の改善または消失時に、中断され得る。いったん治療が低減され、または中断されると、症状が再出現した場合に再開され得る。
【0190】
治療
受容体結合剤、例えば、IL−1RIに結合し、IL−1シグナル伝達に拮抗するものは、「IL−1媒介障害」を治療するために使用することができ、その障害としては(i)少なくとも一部はIL−1アゴニズムにより引き起こされ、(ii)IL−1シグナル伝達構成成分(例えば、IL−1α、IL−1β、またはIL−1RI)の活性のレベルの上昇またはIL−1シグナル伝達の上昇と関連し、および/または(iii)IL−1活性を減少させることにより寛解される任意の疾患または病状が挙げられる。IL−1媒介障害は急性および慢性障害を含み、自己免疫障害および炎症性障害が挙げられる。IL−1媒介障害は、全身性および非全身性障害を含む。IL−1αおよびIL−1βは感染性応答ならびに炎症性疾患、例えば関節リウマチに関与する強力な炎症促進性サイトカインであることが確立している。IL−1生成の増加がいくつかの自己免疫障害、虚血、および様々な癌を有する患者において観察されており、よって、これらのおよび関連疾患にIL−1が関与する。
【0191】
一般にSims and Smith, The IL-1 family: regulators of immunity, Nature Reviews Immunology, doi:10.1038/nri2691 (2010)もまた、参照されたい。
【0192】
「治療する」という用語は、本明細書で記載される薬剤の被験体、例えば患者への、統計学的に有意な程度または当業者に検出可能な程度のいずれかまでの、障害、例えば、本明細書で記載される障害と関連する病状、症状、またはパラメータを改善する、または障害の進行を防止するのに有効な量、様式および/または方法での投与を示す。治療は、障害、障害の症状または障害への素因を治す、治癒する、緩和する、軽減する、変化させる、是正する、寛解する、和らげる、改善するまたは影響することを意図することができる。有効量、様式、または方法は被験体によって変動し、被験体に合わせてもよい。例示的な被験体としては、ヒト、霊長類、および他の非ヒト哺乳類が挙げられる。受容体結合剤はまた、障害またはその症状の出現のリスクを減少させるために予防的に与えることもできる。
【0193】
IL−1媒介障害は自己免疫障害であり得る。IL−1媒介自己免疫障害の例としては下記が挙げられる:関節リウマチ、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、喘息、乾癬、I型糖尿病、および本明細書で同定される他の障害。本明細書で記載される受容体結合剤は、そのようなIL−1媒介自己免疫障害を有するまたはそのリスクがある被験体に投与することができる。IL−1媒介障害は、炎症性障害、例えば下記で記載されるものとすることができる。本明細書で記載される受容体結合剤は、IL−1媒介炎症性障害を有するまたはそのリスクがある被験体に投与することができる。
【0194】
例示的なIL−1媒介障害としては下記が挙げられる:
【0195】
関節リウマチおよび関連関節炎.受容体結合剤は、関節リウマチを有するまたはそのリスクがある被験体を治療するために使用することができる。関節リウマチ(RA)は、関節内の滑膜に影響し、関節軟骨を損傷する慢性全身性自己免疫性炎症性疾患である。RAの病因は、Tリンパ球依存性であり、リウマチ因子として知られている自己抗体の生成を含み得る。リウマチ因子および抗原の複合体が形成し、関節液および血液中に蓄積する可能性があり、リンパ球、好中球、および単球の滑膜への浸潤を誘導する。関節は典型的には対称的なパターンで影響されるが、関節外疾患もまた起こることがあり、例えば、肺線維症、血管炎、および皮膚潰瘍、またはFelty症候群(好中球減少症、血小板減少症および脾腫として現れ得る)が引き起こされる。患者はまた罹患した関節の領域内のリウマトイド結節、心膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、および肺線維症を伴う間質性肺炎を示し得る。IL−1Raの型が中程度〜重度に活動性RAで示される。例えば、Cohen, S. et al. Arthritis & Rheumatism 46, 614-24 (2002); Fleischmann, R.M. et al. Arthritis & Rheumatism 48, 927-34 (2003); Nuki, G., et al. Arthritis & Rheumatism 46, 2838-46 (2002); Schiff, M.H. et al. Arthritis & Rheumatism 50, 1752-60 (2004)を参照されたい。
【0196】
活動性RAの症状としては疲労、食欲欠如、微熱、筋肉および関節痛、およびこわばりが挙げられる。筋肉および関節のこわばりは通常、午前中、不活性期間後に最も顕著である。フレア中、関節は、一般に滑膜炎の結果として、しばしば赤くなり、腫脹し、痛くなり、および圧痛がある。RAおよびRAの症状を評価するために有用なスケールとしては、関節リウマチ重症度スケール(RASS; Bardwell et al., (2002) Rheumatology 41(1):38-45)、SF−36関節炎特異的健康指標(Arthritis Specific Health Index )(ASHI; Ware et al., (1999) Med. Care. 37(5 Suppl):MS40-50)、関節炎衝撃測定スケールまたは関節炎衝撃測定スケール2(Arthritis Impact Measurement Scales or Arthritis Impact Measurement Scales 2 )(AIMS or AIMS2; Meenan et al. (1992) Arthritis Rheum. 35(1):1-10); Stanford健康評価質問票(HAQ)、HAQII、または改良HAQ(例えば、 Pincus et al. (1983) Arthritis Rheum. 26(11):1346-53を参照されたい)が挙げられる。
【0197】
本明細書で記載される受容体結合剤は、RAを有するまたはそのリスクがある被験体に、発症を遅らせるおよび/または前記徴候および症状の1つ以上を寛解させるために投与することができる。被験体は、中程度〜重度の活動性RAを有し得る。被験体は、TNF阻害剤療法(例えば、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、またはREMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)を用いた療法)に対するノンレスポンダーである可能性があり;被験体は前に、TNF阻害剤を投与されたことがある可能性があり;または被験体はTNF阻害剤を摂取し続けている可能性がある(応答性がある、および応答性がない)。
【0198】
被験体はまた、メトトレキサートが投与され得る。被験体は、1つ以上の他のDMARDS(疾患修飾性抗リウマチ薬)、コルチコステロイド、および/または非ステロイド性炎症薬が投与され得る。受容体結合剤と同時投与することができるさらに他の薬物としては、CD28の阻害剤(例えば、CTLA4−Ig)、RANKL、IFNγ、IL−6、IL−8、およびIL−17の阻害剤が挙げられる。阻害剤としては、そのようなメディエーターに対する抗体、そのようなメディエーターに特異的な可溶性受容体、および/またはそのようなメディエーターのための受容体に対する抗体が挙げられる。
【0199】
若年性関節リウマチ.受容体結合剤は、例えば、21、18、17、16、15、または14歳未満の被験体において、若年性関節リウマチを治療するために使用することができる。若年性関節リウマチはいくつかの点でRAに類似する。被験体はリウマチ因子陽性であり得る。被験体は、その疾患の小関節、多関節、または全身型を有し得る。関節炎は、関節強直および発育遅延を引き起こす可能性があり、また、慢性前部ブドウ膜炎および全身性アミロイドーシスに至る場合もある。受容体結合剤は、そのような症状の1つ以上の発症を遅らせる、または寛解させるために使用することができる。
【0200】
受容体結合剤は、若年性特発性関節炎、例えば全身型若年性特発性関節炎(SO−JIA)を治療するために使用することができる。被験体は前のコルチコステロイド治療に失敗し、または0.3mg/kg以上の一日量でのコルチコステロイド治療を要求した可能性がある。例えば、Quartier et al. (2011) Ann Rheum Dis. 70(5):747-54を参照されたい。
【0201】
他のリウマチ性障害.本明細書で記載される受容体結合剤はまた、他のリウマチ性障害、例えば強皮症、全身性エリテマトーデス、痛風、骨関節炎、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎および慢性ライム関節炎、随意筋および他の筋肉の炎症、例えば皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性筋炎、およびリンパ脈管筋腫症、発熱性関節炎症候群、小児肉芽腫性関節炎(PGA)/Blau症候群、および本明細書で記載される他のリウマチ性障害を治療するために使用することができる。
【0202】
受容体結合剤は、代謝性リウマチ性障害、例えば、高尿酸血症と関連する障害、例えば、慢性急性痛風を含む痛風、および他の結晶媒介関節症を治療するために使用することができる。薬剤は、痛風に関連する薬剤性フレア、例えば、例としてキサンチンオキシダーゼ阻害剤、尿酸オキシダーゼ、または尿酸排泄促進薬により誘発されるフレアを治療するために使用することができる。痛風では、尿酸の結晶がインフラマソームを活性化し、IL−1βの放出を引き起こし得る。
【0203】
脊椎関節症.受容体結合剤は、脊椎関節症(障害、例えば強直性脊椎炎、Reiter症候群、炎症性腸疾患と関連する関節炎、乾癬と関連する脊椎炎、若年発症型脊椎関節症および未分化脊椎関節症を含む)を治療するために使用することができる。脊椎関節症はしばしばHLA−B27遺伝子と関連する。被験体は、リウマチ因子を欠く可能性があり、脊椎炎および炎症性非対称性関節炎を有するまたは有しない仙腸関節炎を示す可能性がある。被験体はまたは眼炎症を有する可能性がある(下記を参照されたい)。
【0204】
強皮症.受容体結合剤は、強皮症または全身性硬化症を治療するために使用することができる。強皮症は、局所性または全身性であり得る皮膚の硬結により特徴づけられる。血管病変および微小血管系における内皮細胞損傷もまた存在し得る。被験体は、皮膚病変における単核細胞浸潤を示し、抗核抗体を有し得る。病因を示す他の器官としては、下記が挙げられる:胃腸管(平滑筋肉萎縮および線維症を有し、異常蠕動/運動となることがある);腎臓(小さな弓状および小葉間動脈に影響する同心円状内皮下内膜増殖を有し、その結果、腎皮質血流が減少する可能性があり、および、タンパク質尿、高窒素血症および高血圧を引き起こし得る);骨格筋(萎縮、間質性線維症、炎症、肺、間質性肺炎および間質性線維症を引き起こし得る);心臓(例えば、収縮帯壊死および瘢痕/線維症を示す可能性がある)。本明細書で記載される受容体結合剤は、強皮症を有するまたはそのリスクがある被験体に、前記徴候および症状の1つ以上を寛解させるために投与することができる。
【0205】
シェーグレン症候群.受容体結合剤はシェーグレン症候群を治療するために使用することができる。シェーグレン症候群は、免疫媒介炎症およびその後の涙腺および唾液腺の機能破壊により特徴づけられる。疾患は、炎症性結合組織疾患と関連する、またはこれを伴う可能性がある。疾患はRoおよびLa抗原(どちらも、低分子RNA−タンパク質複合体である)に対する自己抗体産生と関連する。病変は乾性角結膜炎、口内乾燥となる可能性があり、他の徴候または関連、例えば、胆汁性肝硬変、末梢性または感覚性ニューロパチー、および触知可能紫斑病を有する。シェーグレンに関連する眼障害の治療はまた、下記で記載される。
【0206】
甲状腺障害.受容体結合剤は、甲状腺障害を治療するために使用することができる。例示的な甲状腺障害としては、Graves病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ性甲状腺炎、および萎縮性甲状腺炎が挙げられ、甲状腺抗原に対する自己免疫応答の結果であり、甲状腺に存在し、しばしばこれに特異的なタンパク質と反応する抗体が産生する。自然モデルを含む実験モデルが入手可能である:ラット(BUFおよびBBラット)およびニワトリ(肥満ニワトリ株)およびサイログロブリン、甲状腺ミクロソーム抗原(甲状腺ペルオキシダーゼ)のいずれかによる動物の免疫化により作製された誘導モデル。
【0207】
糖尿病&代謝性障害.受容体結合剤は、糖尿病障害、例えば若年発症型糖尿病(自己免疫糖尿病およびインスリン−依存性糖尿病を含む)および成人発症型糖尿病(インスリン非依存性および肥満媒介糖尿病)、I型糖尿病およびII型糖尿病を治療するために使用することができる。例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病は、自己抗体および自己反応性T細胞により引き起こされる膵島細胞の自己免疫破壊と関連する。さらに、IL−1β活性の減少は、グルコース制御およびβ細胞機能を改善することができ、II型糖尿病を治療するために使用することができる。例えば、Owyang et al. Endocrinology. 2010;151(6):2515-27を参照されたい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載される受容体結合剤を、インスリンが投与されていない被験体、例えば、インスリン依存性でない被験体に投与することができる。例えば、被験体は前糖尿病である可能性がある。被験体は、耐糖能障害または空腹時高血糖のいずれかを有し得る。被験体は肥満である、または23、25、30、35、または40kg/m超の肥満度指数を有する可能性がある。被験体は、インスリン抵抗性であり、および/または高血糖または高インスリン血症により特徴づけられる可能性がある。被験体は、II型糖尿病へ進行するリスクがあり得る。 Larsen, et al. (2007) NEJM 356:1517-26およびLarsen, et al. (2009). Diabetes Care 32:1663-8もまた、参照されたい。いくつかの実施形態では、被験体は、6.1、6.5、7、または8mmol/Lを超える空腹時血糖値を有する。いくつかの実施形態では、被験体は、5.5、5.7、6、6.4、7、7.5、または8%を超えるA1Cレベルを有する。
【0208】
いくつかの実施形態では、被験体はまた、インスリン分泌促進物質、例えば、例としてスルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド)および/またはメグリチニド(例えば、レパグリニド、ナテグリニド)(インスリン分泌を促進する)が投与される。被験体はまた、ビグアナイド(例えば、メトホルミン)が投与され得る。受容体結合剤は、膵臓β細胞の損失および/またはそれへの損傷を減少させるために投与することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、被験体は遺伝子IL1RNの5’付近に位置するrs4251961のCアレルにヘテロ接合性またはホモ接合性である。
【0210】
受容体結合剤による治療は、糖尿病に関連する二次的疾患、例えば糖尿病網膜症、糖尿病患者における腎臓移植片拒絶、肥満媒介インスリン抵抗性、および腎不全(それ自体、タンパク質尿および高血圧と関連し得る)の悪化を寛解または防止することを含む。
【0211】
胃腸障害.本明細書で記載される受容体結合剤は、炎症性胃腸障害、例えば、例としてセリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、特発性胃不全麻痺膵炎、例えば慢性膵炎、急性膵炎、炎症性腸疾患および潰瘍、例えば胃および十二指腸潰瘍を治療するために使用することができる。
【0212】
肺障害.受容体結合剤は、IL−1により媒介される肺疾患を治療するために使用することができる。治療することができる例示的な肺疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫および慢性気管支炎)、肺胞蛋白症、ブレオマイシン誘導肺疾患および線維症、肺線維症、例えば特発性肺線維症および放射線誘導肺線維症、肺サルコイドーシス、嚢胞性線維症、肺内でのコラーゲン蓄積、ARDS、気管支肺異形性症(BPD)、慢性閉塞性肺疾患、および未熟児の慢性線維性肺疾患が挙げられる。さらに、本明細書で記載される受容体結合剤は、職業性肺疾患、例えば石綿肺、炭坑夫塵肺、珪肺症または微小粒子への長期暴露と関連する同様の病状を治療するために使用することができる。好酸球性肺炎、特発性肺線維症、および過敏性肺炎を含む炎症性および線維性肺疾患は、間違って制御された免疫−炎症反応を含む場合があり、これは受容体結合剤を使用して治療することができる。
【0213】
サルコイドーシスは、身体内のほぼ任意の組織中の類上皮細胞肉芽腫の存在により特徴付けられ;肺の関与が最も一般的である、病因がわかっていない病状である。病因は、疾患部位での活性化マクロファージおよびリンパ球細胞の持続が関与し、これらの細胞型により放出された局所的および全身的に活性な活性生成物の放出に起因するその後の慢性続発症が存在する。
【0214】
心血管障害.本明細書で記載される受容体結合剤は、心血管障害または損傷、例えば大動脈瘤、急性冠動脈症候群、動脈炎、血管閉塞、例えば大脳動脈閉塞、冠動脈バイパス術の合併症、虚血/再灌流障害、心疾患、例えばアテローム硬化性心疾患、心筋炎、例えば慢性自己免疫性心筋炎およびウイルス性心筋炎、心不全、例えば慢性心不全、うっ血性心不全、心筋梗塞、心臓手術後または頸動脈バルーン血管形成手順後の再狭窄および/またはアテローム性動脈硬化、無症候性心筋虚血、左心室ポンプ機能不全、左心室補助装置の移植後合併症、Raynaud現象、血栓性静脈炎、血管炎、例えばKawasaki血管炎、静脈閉塞症、巨細胞動脈炎、Wegener肉芽腫症、およびSchoenlein−Henoch紫斑病を治療するために使用することができる。受容体結合剤はまた、予防的に、例えば、そのような心血管障害のリスクを減少させるために提供することができる。いくつかの実施形態では、受容体結合剤は、アテローム性動脈硬化を治療するために、またはそのリスクを減少させるために患者に投与される。
【0215】
IL−1媒介シグナル伝達は、急性心筋梗塞により活性化され梗塞周囲心筋細胞におけるアポトーシス細胞死を開始し、梗塞ゾーンのサイズを拡張することができる。本明細書で記載される受容体結合剤は、心筋梗塞により引き起こされる損傷を減少させるために投与することができる。例えば、受容体結合剤は、心筋梗塞のリスクがある被験体、または心筋梗塞、特に急性心筋梗塞を、例えば、この2、4、6、12、24、または48時間以内に経験した被験体に投与することができる。薬剤は、他の薬剤、例えば、ヘパリンおよびアスピリンと組み合わせて投与することができる。
【0216】
受容体結合剤はまた、脳卒中、くも膜下出血、頭部外傷または脳損傷、および/または心血管障害と関連する炎症を治療するために使用することができる。例えば、IL−1βのレベルの上昇は、脳卒中および脳損傷と関連する神経炎症を示す(Rothwell, N. J., et al., TINS 23(12): 618-625, 2000)。受容体結合剤は、そのような炎症および虚血および/または低酸素と関連する他の炎症を減少させるために投与することができる。さらに、受容体結合剤はまた、例えば、そのような障害および/またはそのような障害と関連する炎症のリスクを減少させるために、予防的に提供することができる。例えば、受容体結合剤は、脳卒中、虚血事象、他の心血管事象、または出血事象(例えばくも膜下出血)のリスクがある被験体、または脳卒中、虚血事象、他の心血管事象、または出血事象(例えば、くも膜下出血)を、例えば、この2、4、6、12、24、または48時間以内に経験した被験体に投与することができる。
【0217】
尿生殖器および腎障害.尿生殖器系の障害もまた、本明細書で記載される受容体結合剤で治療することができる。そのような障害としては、糸球体腎炎、例えば自己免疫性糸球体腎炎、毒素への暴露による糸球体腎炎または溶血性連鎖球菌または他の感染病原体による感染に続発する糸球体腎炎が挙げられる。免疫媒介腎疾患、例えば糸球体腎炎および尿細管間質性腎炎は、腎抗原に対する自己反応性抗体またはT細胞の産生の結果として直接的に、または他の非腎抗原に対して反応性である抗体および/または免疫複合体の腎臓中での堆積の結果として間接的に、腎組織への抗体またはTリンパ球媒介損傷の結果である。よって、免疫複合体の形成となる他の免疫媒介疾患はまた、間接的続発症として免疫媒介腎疾患を誘導することができる。直接および間接免疫メカニズムはどちらも、腎組織中での病変発症を生成/誘導する炎症反応となり、結果的に臓器機能障害となり、場合によっては腎不全へと進行する。体液性および細胞免疫メカニズムはどちらも病変の病因に関与し得る。
【0218】
受容体結合剤はまた、尿毒症症候群およびその臨床的合併症(例えば、腎不全、貧血、および肥大型心筋症)、例えば環境毒素、薬物または他の原因への暴露と関連する尿毒症症候群を治療するために使用することができる。胆嚢壁の炎症から生じ、吸収機能に変化をもたらす合併症もまた、治療することができる。そのような合併症には、胆石症(胆石)および総胆管結石症(胆管結石)ならびに胆石症および総胆管結石症の再発が含まれる。治療することができるさらなる病状は、血液透析の合併症;前立腺病状、例えば良性前立腺肥大、非細菌性前立腺炎および慢性前立腺炎;および血液透析の合併症である。受容体結合剤はまた、慢性疼痛状態、例えば慢性骨盤痛、例えば慢性前立腺炎/骨盤痛症候群、およびヘルペス後疼痛を治療するために使用することができる。
【0219】
血液および腫瘍障害.本明細書で記載される受容体結合剤は、様々な形態の癌、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、Epstein−Barrウイルス−陽性上咽頭癌、グリオーマ、結腸、胃、前立腺、腎細胞、頸部および卵巣癌、肺癌(SCLCおよびNSCLC)、例えば癌関連悪液質、疲労、無力症、悪液質の傍腫瘍性症候群および高カルシウム血症を治療するために使用することができる。例えば、Voronov et al. (2003) PNAS 100:2645-2650を参照されたい。固形腫瘍、例えば肉腫、骨肉腫、および癌腫、例えば腺癌(例えば、乳癌)および扁平上皮癌もまた治療可能である。一定の腫瘍におけるIL−1βの役割に関しては、例えば、Krelin et al. (2007) Cancer Res. 67:1062-1071を参照されたい。追加の癌としては、食道癌、胃癌、胆嚢癌腫、白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄性白血病、慢性または急性リンパ芽球性白血病およびヘアリー細胞白血病が挙げられる。浸潤性転移性能力を有する他の悪性腫瘍、例えば多発性骨髄腫は、受容体結合剤により治療することができる。例えば、Lust et al. (2009) Mayo Clin Proc 84(2):114-122を参照されたい。
【0220】
受容体結合剤はまた、貧血および血液障害、例えば慢性特発性好中球減少症、慢性疾患の貧血、再生不良性貧血、例えばFanconi再生不良性貧血;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);血栓性血小板減少性紫斑病、骨髄異形成症候群(不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰芽球を伴う不応性貧血、過剰芽球変化を伴う不応性貧血を含む);骨髄線維症/骨髄化生;および鎌状赤血球血管閉塞性発作を治療するために使用することができる。
【0221】
自己免疫溶血性貧血、免疫汎血球減少症、および発作性夜間血色素尿症は、赤血球(および場合によっては、他の血液細胞、例えば血小板)の表面で発現された抗原と反応する抗体の生成に起因する可能性があり、補体媒介溶解および/またはADCC/Fc−受容体媒介メカニズムを介するそれらの抗体コート細胞の除去の結果である。自己免疫血小板減少症、例えば血小板減少性紫斑病、および他の臨床的設定では免疫媒介血小板減少症では、血小板破壊/除去は、血小板への抗体または補体のいずれかの結合およびその後の補体溶解、ADCCまたはFC−受容体媒介メカニズムによる除去の結果として起こる。
【0222】
受容体結合剤はまた、様々なリンパ球増殖性障害、例えば自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS)、慢性リンパ芽球性白血病、ヘアリー細胞白血病、慢性リンパ性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫、Epstein−Barrウイルス−陽性T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、Hodgkin病、びまん性侵攻性リンパ腫、急性リンパ性白血病、Tγリンパ球増殖性疾患、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(すなわち、菌状息肉腫)およびSezary症候群を有するまたはそのリスクがある被験体に投与することができる。
【0223】
肝障害.本明細書で開示される受容体結合剤はまた、肝臓の病状、例えば肝炎、例として急性アルコール肝炎、急性薬剤性またはウイルス肝炎、A、BおよびC型肝炎、硬化性胆管炎、肝類洞上皮、および未知の原因による肝臓の炎症を治療するのに有用である。
【0224】
聴覚障害.受容体結合剤はまた難聴を伴う、および異常IL−1発現と関連する障害を治療するために使用することができる。そのような障害としては、自己免疫過程に起因すると考えられる蝸牛神経関連難聴、例えば、自己免疫難聴、メニエール症候群および真珠腫、しばしば難聴と関連する中耳障害が挙げられる。
【0225】
骨障害.本明細書で記載される受容体結合剤で治療可能な骨および関節の非関節炎障害。これは、骨または関節の炎症性障害、骨減少に至る破骨細胞障害、例えば限定はされないが骨粗鬆症、例えば閉経後骨粗鬆症、骨関節炎歯の緩みまたは損失に至る歯周炎、および関節置換後の人工関節の緩み(一般に摩耗デブリに対する炎症反応と関連する)、例えば、整形外科的インプラント骨溶解を含む。
【0226】
アミロイド障害.さらに、本明細書で記載される受容体結合剤は、原発性アミロイドーシスおよび様々な病状を特徴とする続発性アミロイドーシス、例えばアルツハイマー病、続発性反応性アミロイドーシス;Down症候群;および透析関連アミロイドーシスを治療するために使用することができる。さらに、受容体結合剤は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、およびパーキンソン病を治療するために使用することができる。これらの疾患はまた、凝集物およびアミロイドの形成を伴うことがあり、これが炎症反応を誘発する可能性がある。
【0227】
神経障害.受容体結合剤はまた、中枢および末梢神経系の神経炎症および脱髄疾患、例えば多発性硬化症;特発性脱髄多発ニューロパチーまたはGuillain−Barre症候群;および慢性炎症性脱髄多発ニューロパチーを治療するために使用することができる。これらの障害は、自己免疫基礎を有し、オリゴデンドロサイトまたはミエリンに直接引き起こされる損傷の結果として神経脱髄となると考えられる。多発性硬化症疾患誘導では、Tリンパ球が関与する。多発性硬化症は、再発寛解過程または慢性進行性過程のいずれかを有する。病変は、主にTリンパ球媒介、ミクログリア細胞の浸潤および浸潤性マクロファージを含み;CD4Tリンパ球は、病変での主な細胞型である。オリゴデンドロサイト細胞死およびその後の脱髄のメカニズムはわかっていないが、Tリンパ球駆動のようである。
【0228】
ミオパチー.受容体結合剤は炎症および自己免疫と関連するミオパチーを治療するために使用することができる。特発性炎症性ミオパチー、例えば皮膚筋炎、多発性筋炎などは、筋力低下に至る病因のわからない慢性筋炎の障害である。筋肉損傷/炎症はしばしば、対称的で進行性である。自己抗体はほとんどの形態と関連する。これらの筋炎特異的自己抗体は、タンパク質合成に関与する構成成分、タンパク質およびRNAに対して作られ、その機能を阻害する。
【0229】
血管炎障害.本明細書で記載される受容体結合剤は、血管炎障害、例えば、全身性血管炎を治療するために使用することができる。全身性血管炎は、原発病変が炎症であり、その後血管への損傷がおこり、これにより影響を受けた血管により供給される組織への虚血/壊死/変性が起こり、場合によっては最終的には末端器官機能不全となる、疾患を含む。血管炎はまた、特に免疫複合体の形成とも関連する疾患において、他の免疫−炎症性媒介疾患、例えば関節リウマチ、全身性硬化症、などに対する二次病変または続発症として起こり得る。
【0230】
原発性全身性血管炎群における疾患としては下記が挙げられる:全身性壊死性血管炎:結節性多発動脈炎、アレルギー性血管炎および肉芽腫症、多発性血管炎;Wegener肉芽腫症;リンパ腫様肉芽腫症;および巨細胞動脈炎。様々な血管炎としては下記が挙げられる:皮膚粘膜リンパ節症候群(MLNSまたはKawasaki病)、単離CNS血管炎、Behcet病、閉塞性血栓血管炎(Buerger病)および皮膚壊死性細静脈炎。これらの血管炎障害の発症メカニズムは、主に、免疫グロブリン複合体の血管壁中での堆積およびその後の、ADCC、補体活性化、または両方のいずれかを介する炎症反応の誘導によると考えられている。
【0231】
CAPS.受容体結合剤は、CAPS障害、すなわち、CIAS1関連周期性症候群を治療するために使用することができる。CAPSは3つの遺伝的症候群を含む:新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)、Muckle−Wells症候群(MWS)、および家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)。(Hoffman et al. 2001 Naure 29:301-305; Feldmann et al. 2002 Am J Hum Genet 71:198-203; Aksentijevich et al. 2002 Arthritis Rheum 46:3340-3348)。CAPSは、常染色体優性様式で孤発性または家族性パターンで遺伝する。CIAS1はNALP3、「インフラマソーム」、細胞内酵素複合体(カスパーゼ1の活性を制御する)のタンパク質構成成分をコードする。CIAS1の変異により、IL−1の生成および多くの病的結果が増加する(Aksentijevich et al. 2002 上記)。IL−1は、肝臓中の急性相反応物、例えばC−反応性タンパク質(CRP)および血清アミロイドA(SAA)の生成を強く誘導する。
【0232】
CAPS障害は共通の臨床的特徴を共有し、様々な臨床的重症度として現れる。NOMIDは最も重篤な障害であり、MWSは幾分重篤ではなく、FCASが最も重篤ではない。CAPS障害は、いくつかの重なる特徴を有し、個体は徴候および症状の独特な群を有し得る。これらの病状全てに共通な特徴としては、発熱、蕁麻疹様皮疹、関節炎または関節痛、筋肉痛、倦怠感、および結膜炎が挙げられる。
【0233】
NOMIDでは、慢性無菌性髄膜炎は精神遅滞に至る可能性あり、これらの患者はまた、骨端および膝蓋骨での酷いおよび障害を引き起こす骨過成長を患う可能性がある。これらの患者はまた、頭蓋内圧の増加に起因する視神経萎縮による失明を患うこともある。MWSおよびNOMIDは、通常、聴覚系、髄膜、および関節を含み得る重篤な炎症と関連する。これらの患者は、毎日、高いスパイク熱および分布および強度がしばしば変わる慢性皮疹を患う。患者は、難聴または聴覚消失を患う可能性がある。結膜炎およびうっ血乳頭がしばしば観察される。アミロイドーシスが発症し、慢性炎症および急性相反応物(特にSM)の過剰産生による腎不全に至ることもある。受容体結合剤は、NOMID、MWS、またはFCASを有する、またはNOMID、MWS、またはFCASと関連する遺伝子型を有すると診断された被験体に投与することができる。さらに、受容体結合剤は、TRAPS(TNF受容体関連周期性症候群)を有する被験体に投与することができる。
【0234】
皮膚障害.受容体結合剤は、皮膚障害、例えば炎症性皮膚障害または自己免疫もしくは免疫媒介皮膚疾患を治療するために使用することができる。例示的な障害は乾癬である。追加の自己免疫または免疫媒介皮膚疾患、例えば水疱性皮膚疾患、多形成紅斑、および接触皮膚炎は自己抗体により媒介され、その起源はTリンパ球依存性である。乾癬はTリンパ球媒介炎症性疾患である。病変は、Tリンパ球、マクロファージおよび抗原処理細胞、およびいくつかの好中球の浸潤を含む。
【0235】
治療することができる皮膚または粘膜の追加の障害としては、棘融解疾患、例えばDarier病、毛包性角化症および尋常性天疱瘡が挙げられる。さらなる追加の障害としては下記が挙げられる:ざ瘡、酒さ性ざ瘡、円形脱毛症、アフタ性口内炎、水疱性類天疱瘡、火傷、湿疹、紅斑、例えば多形成紅斑および多形水疱性紅斑(Stevens−Johnson症候群)、炎症性皮膚疾患、扁平苔癬、リニアIgA水疱性疾患(小児慢性水疱性皮膚症)、皮膚弾力の喪失、粘膜表面潰瘍、例えば胃潰瘍、好中球皮膚炎(Sweet症候群)、皮膚筋炎、毛孔性紅色粃糠疹、乾癬、壊疽性膿皮症、多中心性細網組織球症、および中毒性表皮剥離症。受容体結合剤により治療可能な他の皮膚関連病状としては、疱疹状皮膚炎(Duhring病)、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、および蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹を含む)が挙げられる。
【0236】
アレルギー性障害.受容体結合剤は、アレルギー性障害、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症、アレルギー性結膜炎(下記を参照されたい)および蕁麻疹を治療するために使用することができる。これらの疾患はしばしば、Tリンパ球誘導炎症、IgE媒介−炎症、または両方により媒介される。
【0237】
喘息は、呼吸器系が関与する慢性病状であり、しばしば1つ以上のトリガーに応答して、気道が時々狭窄し、炎症し、過剰量の粘液で覆われる。エピソードは、環境刺激物質(またはアレルゲン)例えば、冷気、暖気、湿り空気、運動または労作、情緒的ストレス、およびウイルス疾病への暴露などのことによりトリガされ得る。気道狭窄は、症状、例えば喘鳴、息切れ、胸部絞扼感、および咳を引き起こす。受容体結合剤は、喘息を治療するために使用することができ、そのような治療薬の局所または肺送達のために製剤化することができる、または非経口的に送達することができる。
【0238】
移植.受容体結合剤は、移植を受ける予定である、受けている、またはそれから回復している被験体に投与することができる。移植関連疾患、例えば移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)はTリンパ球依存性であり;Tリンパ球機能の阻害は寛解性である。角膜移植は、血管新生と関連する可能性があり、これは、受容体結合剤による治療によって寛解され得る。受容体結合剤はまた、実質臓器移植、例えば心臓、肝臓、皮膚、腎臓、肺(肺移植片気道閉塞)または他の移植片、例えば骨髄移植片に起因する合併症を治療するために使用することができる。
【0239】
感染疾患.本明細書で記載される受容体結合剤は、原生動物疾患、例えばマラリアおよび住血吸虫症を治療する、およびらい性結節性紅斑;細菌またはウイルス髄膜炎;結核、例えば肺結核;および細菌またはウイルス感染、例えばインフルエンザ感染および感染性単核球症に続発する間質性肺炎を治療するのに有用である。
【0240】
遺伝的周期熱症候群、例えば家族性地中海熱、高グロブリンD血症および周期熱症候群およびTNF−受容体関連周期性症候群(TRAPS)、および成人発症Still病、Schnitzler症候群、および線維性肺胞炎もまた、受容体結合剤により治療可能である。
【0241】
いくつかの実施形態では、受容体結合剤は、被験体におけるIL−6の活性または発現を減少させるために、被験体に投与される。例えば、被験体は、少なくとも一部はIL−6に関連するまたはこれに媒介される障害を有し得る。
【0242】
眼障害および眼送達
本明細書で記載される受容体結合剤は、眼障害、例えば眼の表面に影響する眼障害、炎症性眼障害、および少なくとも一部は自己免疫反応により媒介される眼障害を治療するために使用することができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、眼障害は、眼の表面に影響するドライアイ障害である。障害は、乾性角結膜炎、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼球乾燥症、涙膜障害、涙液産生減少、水性涙液欠乏、およびマイボーム腺機能不全とも呼ばれる病状を含む。ドライアイは、シェーグレン症候群(SS)と関連する形態、例えば、シェーグレン症候群関連乾性角結膜炎を含み得るが、関連しない形態、例えば、非シェーグレン症候群関連乾性角結膜炎も含み得る。患者は、全身性自己免疫障害の他の徴候を有する場合もあり、有さない場合もある。IL−1は、ドライアイ障害の病因に関与している。例えば、Enriquez de Salamanca et al. (2010), Mol. Vis. 16:862-873を参照されたい。
【0244】
ドライアイ症候群を有する被験体は、眼の乾燥の炎症を示すことがあり、ひりひり、刺すような、かゆい、焼けるまたは圧力感覚、刺激、疼痛、および発赤を経験することがある。ドライアイは、過剰な流涙および逆に不十分な涙液産生の両方と関連し得る。受容体結合剤は、1つ以上のそのような症状の発症または悪化を寛解または防止するために、そのような被験体に投与することができる。受容体結合剤はまた、疼痛、例えば、眼疼痛(例えば神経炎症による)を、そのような疼痛を経験している被験体において緩和するために使用することができる。
【0245】
いくつかの実施形態では、眼障害は、全身性自己免疫障害(例えばシェーグレン症候群および関節リウマチ)またはIL−1もしくは別のIL−1サイトカインファミリーメンバーと関連する障害と関連する眼障害である。患者は、全身性自己免疫障害または全身性自己免疫障害の他の徴候を有しても、有さなくてもよい。
【0246】
受容体結合剤はまた、眼の表面、例えば角膜に影響する他の障害を治療するために使用することができる。そのような障害としては、角膜眼表面炎症性状態、角膜血管新生、角膜炎、例えば末梢性潰瘍性角膜炎および細菌性角膜炎が挙げられる。受容体結合剤は、角膜創傷治癒を受けている被験体(例えば、角膜創傷を有する被験体)を治療するために使用することができる。受容体結合剤は、眼に関係する手順、例えば、角膜移植/角膜形成、人工角膜移植手術、表層移植、選択的内皮移植を受ける予定である、受けている、またはそれから回復している被験体に投与することができる。例えば、Dana (2007) Trans Am Ophthalmol Soc 105: 330-43; Dekaris et al. (1999) Curr Eye Res 19(5): 456-9;およびDana et al. (1997) Transplantation 63:1501-7を参照されたい。受容体結合剤は、結膜に影響する障害、例えば結膜瘢痕障害および結膜炎を治療するために使用することができる。受容体結合剤は、さらに他の障害、例えば類天疱瘡症候群およびStevens−Johnson症候群を治療するために使用することができる。本明細書で記載される受容体結合剤は、眼内またはその周りの血管新生を調節するために、被験体に投与することができる。例えば、Dana (2007) Trans Am Ophthalmol Soc 105: 330-43を参照されたい。
【0247】
受容体結合剤は、眼に影響するアレルギー性反応を有する被験体、例えば、重篤なアレルギー性(アトピー性)眼疾患、例えばアレルギー性結膜炎を経験している被験体に投与することができる。例えば、受容体結合剤は、局所的に投与することができる。例えば、Keane-Myers AM et al. (1999) Invest Ophthalmol Vis Sci, 40(12): 3041-6も参照されたい。
【0248】
受容体結合剤は、眼に影響する自己免疫障害を有する被験体に投与することができる。例示的な自己免疫眼障害としては、交感性眼炎、Vogt−Koyanagi Harada(VKH)症候群、バードショット脈絡網膜炎、眼瘢痕性類天疱瘡、Fuchs異時性虹彩毛様体炎、および様々な形態のブドウ膜炎が挙げられる。受容体結合剤は、前記障害のいずれかを治療するために被験体に投与することができる。
【0249】
受容体結合剤は、糖尿病網膜症を有するまたはそのリスクがある被験体に投与することができる。例えば、Demircan et al. (2006) Eye 20:1366-1369 and Doganay et al. (2006) Eye, 16:163-170を参照されたい。
【0250】
ブドウ膜炎は急性および慢性形態を含み、虹彩、毛様体、および脈絡膜の1つ以上の炎症を含む。慢性形態は、全身性自己免疫疾患、例えば、ベーチェット症候群、強直性脊椎炎、若年性関節リウマチ、Reiter症候群、および炎症性腸疾患と関連する場合がある。別のブドウ膜炎では、炎症は主に虹彩においてである(虹彩炎もまた)。前部ブドウ膜炎は、全身性自己免疫疾患を有する被験体に影響する可能性があるが、全身性自己免疫疾患を有しない被験体にもそうである。中間ブドウ膜炎は、前部硝子体、末梢性網膜、および毛様体の炎症を伴い、しばしば、前部または脈絡網膜炎症はほとんどない。毛様体扁平部炎は、虹彩と脈絡膜の間の毛様体扁平部の炎症に起因する。後部ブドウ膜炎は、ブドウ膜および主に脈絡膜を含み、脈絡膜炎とも呼ばれる。後部ブドウ膜炎は、全身性感染または自己免疫疾患と関連する可能性がある。何ヶ月も、何年も持続する可能性がある。受容体結合剤は、ブドウ膜炎の前記形態のいずれかを治療するために、被験体に投与することができる。例えば、Tsai et al. (2009) Mol Vis 15:1542-1552 and Trittibach P et al. (2008) Gene Ther. 15(22): 1478-88も参照されたい。
【0251】
いくつかの実施形態では、受容体結合剤は、加齢黄斑変性(AMD)を有するまたはそのリスクがある被験体を治療するために使用される。受容体結合剤は、局所的に眼に適用され、注射され(例えば、硝子体内)または全身的に提供され得る。例えば、Olson et al. (2009) Ocul Immunol Inflamm 17(3):195-200を参照されたい。
【0252】
本明細書で記載される受容体結合剤は、眼疾患を治療するために任意の方法により投与することができる。薬剤は、非経口方法により送達させることができる。または、もしくはさらに、薬剤は眼に直接、または眼の付近に送達させることができる。例えば、タンパク質は、例えば、下記で記載されるように局所または眼内投与することができる。
【0253】
眼送達のための製剤および方法
受容体結合剤を含む眼用製剤は、局所投与のために、例えば、液滴または軟膏としての投与のため、例えば、眼の前房または結膜嚢内への移植のために送達させることができる。液滴は、点眼器を用いて送達させることができる。眼送達のために製剤化される場合、受容体結合剤は、0.0001−0.1%、0.001−5%、例えば、0.005−0.5%、0.05−0.5%、0.01−5%、0.1−2%または1%−5%濃度で存在することができる。しばしば、眼用製剤は直接、眼に適用され、まぶたへの局所適用または眼球とまぶたの間の空間(結膜嚢)への滴下が含まれる。眼用製剤は、涙液と容易に混合し、角膜および結膜の表面にわたって広がるように設計され得る。通常の投与技術を用いると、薬物の大部分は下円蓋部中に堆積される。毛管現象、拡散力、およびまばたき反射は、薬物の前角膜への組み込みを駆動し、ここから、角膜中におよびこれを通って浸透する。
【0254】
眼用製剤はまた、1つ以上の他の薬剤、例えば、抗炎症性ステロイド、例えばリメキソロン、ロテプレドノール、メドリゾンおよびヒドロコルチゾン、または非ステロイド性炎症薬を含むことができる。例えば、ステロイドは、0.001〜1%の濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、ステロイドは存在しない。例えば、受容体結合剤は製剤中、唯一の活性剤である。
【0255】
製剤はまた、下記構成成分の1つ以上を含むことができる:界面活性剤、等張化剤、緩衝剤、保存剤、共溶媒および粘性構築剤。等張化剤は、組成物の浸透圧を、例えば、天然涙に調整するために使用することができる。例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロースおよび/またはマンニトールを添加して、適切な浸透圧、例えば、生理的浸透圧を達成してもよい。等張化剤は、約150−450mOsmまたは250−350mOsmの浸透圧を提供するのに十分な量で添加することができる。
【0256】
製剤はまた、眼用送達に好適な緩衝剤を含むことができる。緩衝剤は、とりわけ貯蔵条件下でのpH変化に対し、1つ以上の緩衝構成成分(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸)を含むことができる。例えば、緩衝剤は、pH6.0−7.5の範囲内の標的pH、例えば、6.5−7.5を提供するように選択することができる。
【0257】
製剤は、水性またはリン脂質担体を含むことができる。特にドライアイ障害の治療では、製剤は、短期緩和を提供する薬剤、例えば、眼を潤滑化し、涙液形成を支援する化合物を含むことができる。例えば、リン脂質担体(1つ以上のリン脂質を含む)を使用して、短期緩和を提供することができる。人工涙液担体として有用な人工涙液組成物の例としては、Tears Naturale(商標)(Alcon Labs、Inc.、TX USA)などの商品が挙げられる。例えば、1mlあたり、製剤は下記を含むことができる:1mgのデキストラン、70および3mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース、および任意で、保存剤、例えばPOLYQUAD(登録商標)(ポリクオタニウム−1)0.001%(m/v)。リン脂質担体製剤の例としては、US4,804,539号、US4,883,658号、US5,075,104号、US5,278,151号、およびUS5,578,586号において開示されているものが挙げられる。
【0258】
製剤はまた、潤滑剤または湿潤剤として機能する他の化合物を含むことができる。これらとしては、下記などの粘性剤が挙げられる:モノマポリオール、例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール;ポリマポリオール、例えばポリエチレングリコール、セルロースファミリーの様々なポリマ:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、デキストラン、例えばデキストラン70;水溶性タンパク質、例えばゼラチン;およびビニルポリマ、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンおよびカルボマー、例えばカルボマー934P、カルボマー941;カルボマー940、カルボマー974P。さらに追加の例としては、多糖、例えばヒアルロン酸およびその塩ならびにコンドロイチン硫酸およびその塩、ならびにアクリル酸ポリマが挙げられる。ある実施形態では、製剤は1〜400cPの粘度を有する。
【0259】
製剤は、単回または複数回投与用途のために例えば、1つの瓶中に関連する点眼器と共に、または、一組の使い捨て点眼器として、パッケージすることができる。製剤は、例えば、使用中の微生物および真菌汚染を防止するために1つ以上の保存剤を含むことができる。例示的な保存剤としては下記が挙げられ:塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、ベンゾドデシニウムブロミド、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、およびポリクオタニウム−1、0.001〜1.0%w/vの濃度で含まれ得る。無菌であり、その上保存剤を含まない、受容体結合剤を含む製剤を提供することも可能である。製剤は、使い捨て用途のために調製することができる。
【0260】
眼用パックは、眼用製剤と眼との長期接触を与えるために使用され得る。綿球を、製剤で飽和させ、その後、上または下円蓋に挿入させる。受容体結合剤はまた、イオン泳動により投与され得る。この手順は、溶液を、電極を有する眼杯中で角膜と接触させたままとする。薬物の拡散は、電位差により引き起こされる。
【0261】
受容体結合剤はまた、注射、例えば、結膜下注射により送達され得る。製剤は、結膜下で注射することができ、単純拡散による眼内への強膜の通過が促進される。製剤はまた、結膜およびその下の、眼のより後部の部分にあるTenon嚢下で注射することができ、毛様体、脈絡膜、および網膜に薬剤を送達させることができる。製剤はまた、眼球後注射により投与され得る。
【0262】
ドライアイおよび他の表面障害に関して、被験体は、下記の1つ以上のアプローチを使用して評価することができる:眼表面疾患指標(OSDI)、角膜および結膜染色、およびSchirmerテスト。
【0263】
眼表面疾患指標(OSDI)は、眼表面炎症性障害、例えばDESと一致する眼刺激の症状、およびそれらの視覚関連機能への影響の迅速評価を提供する12項目質問票である。例えば、Ocul Immunol Inflamm. 2007 Sep-Oct;15(5):389-93を参照されたい。OSDI質問票の12項目は、0〜4のスケールでランク付けされる。スコアは応答に基づき誘導され、0〜100のスケールでOSDIスコアを提供し、スコアが高いほど、大きな障害を表す。ベースラインからの負の変化は、視覚関連機能および眼炎症性障害の改善を示す。
【0264】
角膜および結膜染色:角膜染色は、典型的には眼表面炎症性障害、例えばドライアイで見られる、上皮疾患、または眼表面の上皮バリアの破壊の尺度である。重篤な眼瞼疾患、例えば後部眼瞼炎が存在する場合、臨床的に明らかなドライアイがなくても角膜染色が存在し得る。角膜染色は、多くの、全てではない患者において、眼不快と高度に相関する;一般に角膜染色は、上記で記載されるOSDIの高いスコアと関連する。角膜フルオレセイン染色では、生理食塩水で湿らせたフルオレセインストリップまたは1%ナトリウムフルオレセイン溶液を使用して、涙膜を染色する。角膜全体をその後、イエローバリアフィルタ(#12Wratten)およびコバルトブルー照明を備えた細隙灯評価を用いて検査する。染色は、Oxford Schemaに従いランク付けする。結膜染色は同様に、上皮疾患、または眼表面の上皮バリアの破壊の尺度である。結膜染色は、細隙灯下、リサミングリーンを用いて実施する。生理食塩水で湿らせたストリップまたは1%リサミングリーン溶液を使用して、涙膜を染色し、眼瞼間結膜染色を、30秒を超えるが2分未満の後、評価する。中程度の強度の白色光を用いて、鼻および一時的な結膜染色の眼瞼間領域のみをOxford Schemaを用いてランク付けする。
【0265】
Schirmerテスト:Schirmerテストは、麻酔ありおよびなしで、狭い濾紙ストリップ(Whatman #41濾紙の5x35mmストリップ)を下結膜嚢内に置くことにより実施される。このテストは薄暗い部屋で実施される。患者は、5分経過するまで彼の/彼女の眼を優しく閉じ、ストリップが除去される。涙の端は、眼から除去された後数mm進み続けるので、涙の端を正確に5分でボールペンによりマーキングする。水性涙産生は、ストリップが5分間に濡れたmmの長さにより測定される。麻酔なしのSchirmerテストの10mm未満および麻酔ありのSchirmerテストの5mm未満の結果は、異常と考えられる。ベースラインからの正の変化は、本明細書で記載される眼炎症性障害の1つ以上の症状の改善を示す。
【0266】
肺送達のための製剤および方法
受容体結合剤は吸入または他の肺送達様式のため、例えば、薬剤を気道、例えば、上および下気道の組織へ投与するために製剤化することができる。薬剤を肺気道へ局所的に送達するのに使用することができる3つの普通の系としては、乾燥粉末吸入器(DPI)、定量噴霧式吸入器(MDI)およびネブライザーが挙げられる。MDIは、受容体結合剤を可溶化形態で、または分散物として送達するために使用され得る。典型的にはMDIは、フレオンまたは他の比較的高い蒸気圧噴霧剤を含み、これが、装置活性化時にエアロゾル化された薬物を気道に押し入れる。対照的にDPIは一般に、乾燥粉末形態の薬物を肺に導入するために、患者の吸気効果に依存する。ネブライザーは、液体溶液にエネルギーを付与することにより吸入される薬物エアロゾルを形成させる。薬剤は、凍結乾燥形態(例えば、室温)で貯蔵され、吸入前に溶液中で再構築され得る。フルオロケミカル媒質を用いる液体換気または肺洗浄中の薬物の直接肺送達もまた、可能な送達方法である。これらのおよび他の方法を使用して、受容体結合剤を送達することができる。例えば、薬剤は少なくとも約0.02、0.1、0.5、1、1.5、2、5、10、20、40、または50mg/パフ以上の投与単位形態で送達される。
【0267】
受容体結合剤は、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧提示形態で、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジエリロロテトラフルオロクトリアン、二酸化炭素または他の好適なガスの使用により、都合良く送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するためにバルブを提供することにより、決定され得る。吸入器または吸入具において使用するためのカプセルおよびカートリッジは、粒子が製剤化粒子である場合、受容体結合剤および好適な粉末ベース、例えばラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含むように製剤化され得る。製剤化された、または製剤化されていない受容体結合剤に加えて、他の材料、例えば100%DPPCまたは他の界面活性剤を共に混合し、製剤化された、または製剤化されていない受容体結合剤の送達および分散を促進することができる。粒子サイズはまた、送達が下または上気道へのものかを制御するために変動され得る。例えば、1−5μmまたは10−50μmのサイズ範囲の粒子がそれぞれ、下および上気道のために使用され得る。
【0268】
送達エンハンサー、例えば界面活性剤が、肺送達をさらに増強するために使用され得る。界面活性剤は、一般に親水性および親油性部分を有する化合物であり、これは、2つの非混和性相の間の界面と相互作用することにより、薬物の吸収を促進する。界面活性剤は、いくつかの理由、例えば、粒子凝集の減少およびマクロファージ食作用の減少のために乾燥粒子において有用である。界面活性剤は当技術分野においてよく知られており、ホスホグリセリド、例えば、ホスファチジルコリン、L−α−ホスファチジルコリンジパルミトイル(DPPC)およびジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサデカノール;脂肪酸;ポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシエチレン−9−;アウリルエーテル;パルミチン酸;オレイン酸;ソルビタントリオレアート(Span85);グリココール酸;スルファクチン;ポロキサマー;ソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタントリオレアート;チロキサポール;およびリン脂質を含む。
【0269】
本明細書では、特異的に本明細書で記載されるキメラサイトカインドメインを認識する抗体もまた特徴とする。例えば、そのような抗体は任意の親サイトカインドメインに対し優先的にキメラドメインに結合する。例えば、特異抗体は第1の親サイトカインおよび第2の親サイトカイン由来のセグメント間の接合部を含むエピトープに結合することができる。
【0270】
核酸送達
受容体結合剤は、受容体結合剤をコードし、発現することができる核酸を送達することにより、被験体に提供することができる。例えば、受容体結合剤をコードする核酸配列を、転写制御配列の制御下に置き、遺伝子送達のための核酸ベクター、例えば、ウイルスベクター中に配置することができる。例示的なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、またはアデノ関連ウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、プラスミドまたは線形分子、例えば、線形二本鎖DNAの形態をとることができる。送達された核酸は、標的細胞のゲノムに組み込まれるように、例えば、標的細胞のゲノムに一体化するように設計され得る。また、送達された核酸は、送達後、細胞内に自律的に存在するように設計され得る。
【0271】
転写制御配列は一過性または恒常的発現を提供するように操作することができる。一過性制御は、例えば、外因性の要因(例えば、ステロイドホルモンまたはFK506)または環境シグナルに応答する転写因子に対する転写応答要素を使用することにより、外因性の要因により調節される制御を含むことができる。
【0272】
送達された核酸上で提供される遺伝子の発現は、例えば、遺伝子によりコードされたタンパク質の検出(例えば、抗体を使用する)により、またはmRNAの検出(例えば、PCRまたはNorthernハイブリダイぜーションを使用する)により評価することができる。送達された核酸は、転写および翻訳制御DNAが受容体結合剤のためのコード配列に対し適切に配置され、よって転写が開始され、タンパク質が得られたメッセージから翻訳されるように、一般に操作される。核酸は、哺乳類細胞、特にヒト由来の転写および翻訳制御核酸配列を含むことができる。そのような配列としては、例えば、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、およびエンハンサーまたはアクチベータ配列が挙げられる。
【0273】
さらに、発現ベクターは追加の要素を含み得る。例えば、発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムに相同な少なくとも1つのまたは2つの配列(例えば、発現コンストラクト隣接する)を含むことができる。組み込みベクターは、ベクターに包含させるための適切な相同配列を選択することにより、宿主細胞内の特定座位に誘導され得る。ベクターを組み込むためのコンストラクトは、当技術分野においてよく知られている。
【0274】
例示的なアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスの修飾バージョン、例えばAd2またはAd5を含み、この場合、ウイルスがインビボで複製するのに必要な遺伝的要素が除去されている。例えば、E1領域を除去することができ、ゲノムは、受容体結合剤をコードする発現カセットを受容するようにさらに修飾することができる。
【0275】
例示的なレトロウイルスベクターとしては、LNL6、LXSN、LNCX、およびレンチウイルスベクターが挙げられる。特定のレンチウイルスベクターはPawliuk et al. (2001) Science 294:2368 and Imren et al. (2002) PNAS 99:14380により記載されており、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に限定して含む。これらのベクターは、例えば、必須遺伝子(例えば、gagおよびpol)を別々のベクター上に分離し、レトロウイルス複製を欠損にすることにより、安全であるように構築し、操作することができる。複製欠損レトロウイルスはその後、ヘルパーウイルスまたはパッケージング細胞系の使用を介して、標準技術によりビリオン中にパッケージされる。組換えレトロウイルスを生成するため、および細胞をインビトロまたはインビボでそのようなウイルスに感染させるためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989), Sections 9.10-9.14および他の標準研究室マニュアルにおいて見いだすことができる。レトロウイルスベクターは、受容体結合剤を発現するための配列の他に、左(5’)レトロウイルスLTR;レトロウイルス排出要素、任意で逆応答要素(RRE);プロモーター、および遺伝子座調節領域(LCR)または他の転写インスレーター配列および右(3’)レトロウイルスLTRを含むことができる。レトロウイルスベクターはさらにウイルス価および導入効率を増加させるために一定のポリプリントラクト(cPPT)またはDNAフラップを含み得る。
【0276】
受容体結合剤をコードする配列を含む核酸は、適切な標的細胞へ、例えば、エクスビボインビボで送達させることができる。例示的な標的細胞としては、滑膜細胞、造血細胞、皮膚細胞、などが挙げられる。核酸は、眼と関連する標的細胞、例えば、角膜上皮細胞に送達させることができる。送達は、上皮の基底層を露出させるために、デブリードマン、または角膜上皮の擦過を含み得る。送達のための核酸はその後添加される。別の実施形態では、核酸は、角膜内皮細胞、角膜周囲の真下の線維柱帯網の細胞、眼の脈絡膜層の細胞、網膜、強膜または毛様体の細胞、網膜または眼脈管構造の細胞、または硝子体の細胞またはレンズの細胞、例えばレンズ上皮に送達される。
【0277】
送達方法としては、例えば、レトロウイルス感染、アデノウイルス感染、プラスミドによる形質転換、外因性核酸を含むリポソームによる形質転換、微粒子銃核酸送達(例えば、核酸を金または他の金属粒子上にロードし、細胞中に撃ち込むまたは注射する)、アデノ関連ウイルス感染およびEpstein−Barrウイルス感染が挙げられる。送達は、細胞または組織中に、任意の方法、例えば針注射、皮下注射器、電子穿孔、または遺伝子銃により実施することができる。
【0278】
遺伝子送達のための他の方法は、例えば、Kay, M. A. (1997) Chest 111(6 Supp.):138S-142S; Ferry, N. and Heard, J. M. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1975-81; Shiratory, Y. et al. (1999) Liver 19:265-74; Oka, K. et al. (2000) Curr. Opin. Lipidol. 11:179-86; Thule, P. M. and Liu, J. M. (2000) Gene Ther. 7:1744-52; Yang, N. S. (1992) Crit. Rev. Biotechnol. 12:335-56; Alt, M. (1995) J. Hepatol. 23:746-58; Brody, S. L. and Crystal, R. G. (1994) Ann. N.Y. Acad. Sci. 716:90-101; Strayer, D. S. (1999) Expert Opin. Investig. Drugs 8:2159-2172; Smith-Arica, J. R. and Bartlett, J. S. (2001) Curr. Cardiol. Rep. 3:43-49; and Lee, H. C. et al. (2000) Nature 408:483-8において見いだすことができる。
【0279】
例示的な第2の薬剤
本明細書で記載される受容体結合剤は、第2の薬剤と共に投与することができる。2つの薬剤は、同時投与することができ、または、例えば異なるレジームを用いて別々に投与することができる。例示的な第2の薬剤としては、抗炎症薬が挙げられる。1つの実施形態では、第2の薬剤はIL−17アンタゴニスト(全てのIL−17ファミリーメンバーのアンタゴニストを含む、例えば、IL−17A、IL−17F、IL−17B、IL−17C、IL−17D、およびIL−17Eのアンタゴニスト)である。例示的なIL−17アンタゴニストとしては下記が挙げられる:IL−17(IL−17A、IL−17F、IL−17B、IL−17C、IL−17D、およびIL−17E)に結合し、IL−17媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば、抗体および他の結合タンパク質);IL−17のための1つ以上の受容体、例えばIL−17RAおよびIL−17RCに結合し、IL−17媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば、抗体および他の結合タンパク質);IL−17および少なくとも1つの受容体サブユニットを含む複合体、例えば、IL−17およびIl−17RA、またはIL−17、IL−17RA、およびIL−17RCに結合し、IL−17媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);およびIL−17RAおよびIL−17RCの1つ以上の可溶性細胞外ドメインを含み、IL−17媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤、例えば可溶性受容体。
【0280】
別の実施形態では、第2の薬剤はIL−12アンタゴニストである。例示的なIL−12アンタゴニストとしては下記が挙げられる:IL−12(p35およびp40を含む)に結合し、IL−12媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);IL−12に対する1つ以上の受容体、例えばIL−12Rβ1またはIL−12Rβ2に結合し、IL−12媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);p35、p40および少なくとも1つの受容体サブユニット、例えば、IL−12Rβ1またはIL−12Rβ2を含む複合体に結合し、IL−12媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);およびIL−12Rβ1またはIL−12Rβ2の1つ以上の可溶性細胞外ドメインを含み、IL−12媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤、例えば可溶性受容体。
【0281】
別の実施形態では、第2の薬剤はIL−23アンタゴニストである。例示的なIL−23アンタゴニストとしては下記が挙げられる:IL−23(p19およびp40を含む)に結合し、IL−23媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);IL−23のための1つ以上の受容体、例えばIL−12Rβ1またはIL−23Rに結合し、IL−23媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);p19、p40および少なくとも1つの受容体サブユニット、例えば、IL−12Rβ1またはIL−23Rを含む複合体に結合し、IL−23媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤(例えば抗体および他の結合タンパク質);およびIL−12Rβ1またはIL−23Rの1つ以上の可溶性細胞外ドメインを含み、IL−23媒介シグナル伝達に拮抗する薬剤、例えば可溶性受容体。
【0282】
IL−23に対する例示的な抗体は記載されている。例えば、Beyer et al., J. Mol. Biol. (2008), doi:10.1016/j.jmb.2008.08.001を参照されたい。
【0283】
動物モデル
受容体結合剤は、動物モデルにおいて、ヒト疾患、例えば、ヒト自己免疫および/またはヒト炎症性疾患に対し評価することができる。薬剤は、動物体内の対応する標的タンパク質に対し特異性を有し得る。
【0284】
関節リウマチモデル.受容体結合剤は、関節リウマチの動物モデル、例えば、コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおいて評価することができる。例えば、McIndoe et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:2210-2214; Issekutz, A. C. et al., Immunology (1996) 88:569;およびCurrent Protocols in Immunology, Unit 15.5, Coligan et al. (eds.), John Wiley & Sons, Incを参照されたい。モデルは、ラット/マウスの感受性株の天然II型コラーゲンによる免疫化により生成される。コラーゲンは、フロイント完全アジュバント(CFA)中で乳化させ、尾基部に皮内注射する(100μgコラーゲン:100μgCFA/マウス)。対照マウスには、0.05mlの蒸留水/CFAエマルジョンを皮内注射する。完全アジュバント中のコラーゲンのブースター注射を、最初の免疫化後21日に与える。疾患は、コラーゲンによる免疫化で誘導された自己免疫応答による。
【0285】
関節は、関節炎、炎症、パンヌス、軟骨障害および骨吸収に対し、規定されたスケールを用いてスコア化することができる。例えば、関節炎の重症度は下記の通りスコア化することができる:0=関節炎の目に見える効果なし;1=1つの指または関節の浮腫および紅斑;2=2つの関節の浮腫および紅斑;3=2を超える関節の浮腫および紅斑;4=全ての足および指の重篤な関節炎、足首の強直および肢の変形を伴う。各肢に対するスコアを合計し、各個々の動物に対する関節炎指標(AI)として記録する。他のスコア化スキームもまた、これらのおよび他の基準に対し使用することができる。
【0286】
多発性硬化症.実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症に対する有用なマウスモデルである。受容体結合剤は、EAEモデルにおいて評価することができる。EAEは、T細胞および単核細胞炎症ならびにその後の、中枢神経系における軸索の脱髄により特徴づけられるT細胞媒介自己免疫障害である(例えば、Bolton, C., 1995, Multiple Sclerosis, 143を参照されたい)。例示的なプロトコルは、Current Protocols in Immunology, Unit 15.1 and 15.2; Coligan et al. (eds.), John Wiley & Sons, Incにおいて見いだすことができる。モデルはまた、ミエリン疾患に有効であり、この場合、例えば、Duncan et al., 1997, Molec. Med. Today, 554-561で記載されるように、オリゴデンドロサイトまたはSchwann細胞が中枢神経系中にグラフトされる。
【0287】
同種移植片.受容体結合剤は、動物モデルにおいて皮膚同種移植片拒絶に対し、例えば、マウス尾部−皮膚グラフトを用いて評価することができる。皮膚同種移植片拒絶はT細胞、ヘルパーT細胞およびキラー−エフェクターT細胞により媒介される。例えば、 Current Protocols in Immunology, Unit 4.4; Coligan et al. (eds.), 1995, John Wiley & Sons, Incを参照されたい。他の移植片拒絶モデルもまた使用することができる。例えば、Tinubu et al., 1994, J. Immunol., 4330-4338を参照されたい。
【0288】
IBDおよび大腸炎モデル.炎症性腸疾患に対する例示的なモデルは、SCIDマウスに移植されたCD4+CD45Rb−高細胞の使用である。例えば、 Hirano et al., J Pharmacol Sci. 2009 Jun;110(2):169-81を参照されたい。および、トランスジェニックIL−10欠損マウスの使用である。例えば、Inaba et al., Inflamm Bowel Dis., DOI: 10.1002/ibd.21253 (2010)を参照されたい。さらに別の例示的な大腸炎モデルはデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を使用して、急性大腸炎を誘発する。例えば、大腸炎はマウスにおいて、5%(wt/vol)のDSS(分子量30−40kDa;ICNBiomedicals,Aurora,OH)を含む飲料水を自由に投与することにより誘発することができる。この処置に起因する症状は、血性下痢、体重減少、結腸短縮および好中球浸潤による粘膜潰瘍である。DSS誘発大腸炎は、炎症性細胞の固有層への浸潤(リンパ球過形成、限局性陰窩損傷、および上皮潰瘍を伴う)により組織学的に特徴付けられる。これらの変化は、DSSの上皮への毒性効果により、および固有層細胞の食作用ならびにTNF−αおよびIFN−γの産生により現れると考えられる。例えば、Hassan et al. PLoS One. 2010 Jan 25;5(1):e8868を参照されたい。
【0289】
ドライアイ疾患モデル.受容体結合剤は、ドライアイ疾患に対するマウスモデルで評価することができる。ドライアイはマウスにおいて、スコポラミンを皮下注射し、その後、マウスを環境制御チャンバに入れることにより誘発することができる。具体例として、正常で健康な6〜10週齢の雌C57BL/6マウスを、環境制御チャンバ内で乾燥環境に連続して暴露させることにより、ドライアイを有するように誘発することができる。チャンバは、30%未満(一般に約19%)の低い相対湿度、高い空気流(15リットル/分)および一定温度(約22℃)を有する。チャンバ内に置かれたマウスはまた、スコポラミンで処置され、涙分泌が阻害される。持続放出経皮スコポラミンパッチはNovartis(Summit、N.J.)から入手可能である。パッチの4分の1が脱毛されたマウスの中尾部に48時間毎に適用される。環境制御チャンバおよびスコポラミンの組み合わせにより重篤なドライアイが比較的短い期間(約2−4日)で生じる。環境制御チャンバは、 Barbino et al., Invest. Ophthal. Vis. Sci., 46: 2766-2711 (2005)に記載されるように準備することができ、空気流、湿度、および温度の制御が可能である。
【0290】
マウスは、ドライアイの徴候について、例えば、下記を実行することにモニタすることができる:a)涙液産生を測定するためのコットンスレッドテスト(これは、一般にドライアイ患者では減少する);b)角膜フルオレセイン染色(これは角膜表面損傷のマーカーである);および一般的な眼検査。
【0291】
コットンスレッドテスト:涙液産生は、フェノールレッドが含浸されたコットンスレッドテストにより測定することができる(Zone−Quick、Lacrimedics、Eastsound、Wash)。拡大蛍光ランプの下、糸を宝石ピンセットで保持し、30または60秒間右眼の結膜円蓋の側方の眼角内に入れる。涙の距離を顕微鏡下、血球計のスケールを使用してmmで読み取る。
【0292】
角膜フルオレセイン染色:角膜フルオレセイン染色は、マイクロピペットにより眼の下結膜嚢中に、1.0μlの5%フルオレセインを適用することにより評価することができる。角膜は、細隙灯生物顕微鏡により、フルオレセイン滴下後3分でコバルトブルー光を用い検査される。点状染色を、角膜表面が分割された5つの領域の各々に対し、0−3の標準化National Eye Institute(NEI)グレーディングシステムを使用してマスキング様式で記録する。
【0293】
診断および他の用途
本明細書で記載される受容体結合剤は、試料中のIL−1R1、またはそのような受容体を発現する細胞を検出するために使用することができる。例えば、薬剤は、標識である、またはシグナルを生成する部分、例えば酵素、放射標識、エピトープ、または蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)で直接または間接的に標識することができる。薬剤は、試料または細胞と接触させることができ、例えば、標準免疫ブロット、免疫蛍光、酵素免疫測定(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光エネルギー移動、Westernブロット、および他の診断および検出技術を用いて、受容体が試料中または細胞上に存在するかが決定される。
【0294】
受容体結合剤はまた、インビボ検出のために標識し、被験体に投与することができる。被験体は、例えば、NMRまたは他の断層撮影手段により画像化することができる。例えば、結合剤は、放射標識、例えば131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14C、および188Rh、蛍光標識、例えばフルオレセインおよびローダミン、核磁気共鳴活性標識、ポジトロン放出断層撮影(「PET」)スキャナにより検出することができるポジトロン放出同位体、ケミルミネサー例えばルシフェリン、および酵素マーカー、例えばペルオキシダーゼまたはホスファターゼで標識することができる。薬剤は、コントラスト剤、例えば常磁性剤および強磁性または超常磁性(これらは主にT2応答を変化させる)で標識することができる。
【0295】
受容体結合剤はまた、結合する受容体を発現する細胞を精製するために使用することができる。例えば、受容体結合剤は、固定されたサポート(例えば、磁性ビーズまたはカラムマトリクス)に結合され、受容体を発現し得る細胞に接触され得る。サポートは例えば、生理的緩衝液で洗浄することができ、細胞はサポートから回収することができる。
【0296】
受容体結合剤はまた、それが結合する受容体の可溶性形態を精製するために使用することができる。例えば、可溶性受容体を含む試料は、固定された受容体結合剤に接触させられ、その後、例えば、洗浄後、固定された薬剤から回収することができる。
【0297】
下記非制限的実施例は、本明細書で記載される本発明の実施形態をさらに説明する。
【実施例】
【0298】
実施例1
表4(下記)に列挙されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸を、T7プロモーターおよびアンピシリン(pET31シリーズ)またはカナマイシン抵抗性遺伝子(pET28シリーズ)を含むpETベクターにおいて構築し(EMD Chemicals,Gibbstown NJ,USA)、発現させた。発現のために使用することができるコード配列の例を表5で提供する。
【表5】
上記タンパク質をコードする例示的な核酸配列は表5に列挙される。いくつかの実施形態では、核酸配列はさらに、下記で列挙される第1のヌクレオチドの前にATGを含む。いくつかの実施形態では、核酸配列はさらに、下記で列挙される最後のヌクレオチドの後に終止コドン(例えばTAA、TAG、またはTGA)を含む。
【表6】
タンパク質は、下記で示されるようにIL−1βおよびIL−1Ra由来の異なる残基の範囲を含むことができる。例P01、P02、P03、P04、およびP05の間で、サイトカインドメインは、IL−1β由来の48−70%残基およびIL−1Ra由来の55−78%残基を有することができる。(多くのアミノ酸残基が2つのタンパク質間で保存されているので、IL−1βおよびIL−1Raに対するパーセンテージ同一性の和は、100%を超える可能性がある)。
【表7】
【0299】
実施例2
ヘキサヒスチジンタグを含むタンパク質を、大腸菌細胞BL21(DES)株中で、1mM IPTGを用いて37℃で3時間、LBブロス培地において誘導することにより、発現させた。細胞を、20−50mM Tris、0.5M NaCl、2.5mM EDTA、0.1% Triton X−100、pH8.0中で溶解させた。ライセートをHiTrap(登録商標)プレパックドカラム(GE Healthcare、Piscataway NJ、USA)を用いるIMAC クロマトグラフィーに供した。タンパク質を20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl 10mMイミダゾール、pH7.4緩衝剤中にロードした。200mMイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl pH7.4緩衝剤を用いて溶離させた。溶離させたタンパク質を、PBS、0.1%ポリソルベート80、pH7.4に対して広く透析し、Amicon Ultra(登録商標)(10K)フィルタを用いて濃縮し、4°または−80℃で貯蔵した。
【0300】
ヘキサヒスチジンタグを欠くタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。P05タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。発現細胞由来のライセートをGigaCapS(商標)カラム(Tosoh Bioscience LLC、King of Prussia、PA、USA)に、低pH(およそpH5.5)で、塩なしで(伝導率およそ1mS/cm)適用した。カラムをその後、pH勾配(緩衝剤A=10mM酢酸、pH5.5;緩衝剤B=20mM Tris pH8)により溶離した。溶離タンパク質を含む5ml画分をその後、5mlのHOおよび5mlの20mM Tris pH8)で希釈し、その後、CaptoQ(商標)樹脂(GE Healthcare、Piscataway NJ、USA)に適用し、0mM〜250mMのNaCl勾配を含む20mM Tris pH8.0で溶離した。溶離タンパク質を、1.25X PBS 0.1%TWEEN(登録商標)80または1.25X PBSがないTWEEN(登録商標)に対して広く透析し、貯蔵した。図6を参照されたい。P03およびP04タンパク質を、同様の方法を用いて精製した。
【0301】
P05を発現する細胞もまた、10g/Lグルコース、10mM MgSO、微量要素(1mg/ml TEKNOVA(商標)1000X微量要素、#T1001)、Sartorius 2L BIOSTAT(商標)A+中の抗生物質が補充された、動物質を含まないソイトーン (#T7660)を有するTEKNOVA(商標) Terrific Broth中で増殖させ、OD35−40で、1mM IPTGと共に約6時間誘導した。細胞を37℃で、30%溶解酸素と共に、pH7.0で増殖させ、200−800rpmで撹拌させ、2L/分で酸素散布した。pH増加により検出されるようにグルコースが欠乏した場合、細胞に9gグルコース/L/hrを供給する。pHが減少した場合(誘導後約2.5時間)、供給を6gグルコース/L/hrに減少させる。
【0302】
細胞を収集し、溶解緩衝剤(20mM Tris、10mM EDTA、0.1% Triton、pH8.0;20mM Tris、10mM EDTA、0.1% Triton、pH7.0;50mM MOPS、10mM EDTA、0.1% Triton、pH6.5;または50mM MOPS、10mM EDTA、0.1% Triton、pH6.0)中に溶解した。ライセートをPoros XS(登録商標)カチオンイオン交換培地(Life Technologies Corp.、Carlsbad CA USA)上に、pH5.3で、3mS/cm(35mg生成物/mlカラム樹脂)でロードする。
【0303】
例示的な手順では、P05タンパク質は、100mM MOPS 25mM NaCl pH7.0を含む緩衝剤を使用して、pH7.0まで1ステップにより溶離する。第1の溶離ピークを廃棄し、第2の溶離ピークをプールに収集し、これはP05タンパク質を含んだ。初期プールは、des−Ala種に対し、無傷なP05タンパク質に富む。この溶離された材料をその後、CaptoQ(商標)アニオン交換樹脂上に流す。無傷なP05タンパク質を含むフロースルーを収集する。
【0304】
別の例示的な手順では、培地を、100mM MOPS 20mM NaCl pH6.0で洗浄する。P05タンパク質を100mM MOPS 50−58mM NaCl pH6.0を含む緩衝剤を使用してpH 6.0まで1ステップにより溶離する。第1溶離ピークをその後のピークから分離し、無傷なP05タンパク質を含んだ。この溶離された材料をその後、CaptoQ(商標)アニオン交換樹脂上に流す。無傷なP05タンパク質を含むフロースルーを収集する。
【0305】
実施例3
タンパク質またはタンパク質を含む上清を細胞ベースアッセイにおいてIL−1活性に対し評価した。HEK−Blue(商標)IL−1β応答性細胞を使用して、IL−1β活性をモニタした(InvivoGen Inc.,San Diego CA,USAから入手可能)。これらの細胞は、5つのNF−κBおよび5つのAP−1結合部位に融合されたIFN−βミニマルプロモーターの制御下、SEAPレポーター遺伝子を含む。細胞表面上のIL−1受容体のIL−1β結合は、NF−κB活性化およびSEAP生成を引き起こす。SEAPレポートは、例えば、QUANTI−Blue(商標)(InvivoGen Inc.、San Diego CA、USA)および分光光度分析を用いて検出することができる。HEK−Blue IL−1β細胞懸濁液を、70−80%コンフルエンスまで培養した細胞から調製した。再懸濁させた細胞を、新鮮な増殖培地(DMEM、4.5g/lグルコース、2mM L−グルタミン、10%(v/v)熱不活性化胎仔ウシ血清(56℃で30分)、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、100μg/ml NormocinT)中、約330,000細胞/mlに調節した。
【0306】
下記試薬を平底96ウェル細胞培養プレートのウェルに50μlの最終体積まで添加した:10μlのIL−1β(20ng/ml)、1μlの対象の薬剤および30μlの細胞培地。陽性および陰性対照試料を、同時に調製した。その後、150μlのHEK−Blue IL−1β細胞懸濁液(約50,000細胞)を各ウェルに添加し、プレートを一晩中37℃で、5%CO組織培養インキュベーターにおいて培養した。一般に、最終IL−1β濃度(200μl最終体積中)は0.1ng/mlであった。IL−1β活性を次の日評価した(12−15時間後)。定量化前、QUANTI−Blue(商標)試薬を、製造者の指示に従い調製した。平底96−ウェルアッセイプレートを調製した。この場合、150μlのQUANTI−Blue(商標)溶液を各ウェルに添加した。96ウェル組織培養プレートのウェルからの50μlの馴化培地を、アッセイプレートの各ウェルに添加した。プレートを、37℃でおよそ15−20分間インキュベートした。SEAPレベルをその後、分光光度計を用いて620−655nmで測定した。
【0307】
結果.図7Aに示されるように、このアッセイでは、P06タンパク質はIL−1RIアゴニストとして挙動し、P07タンパク質は、部分アゴニストとして挙動し、P01タンパク質は、刺激することができなかった。実際、P01タンパク質は、IL−1βの存在下でアッセイすると、アンタゴニストとして挙動した。図7Bはある範囲のIL−1βタンパク質濃度での、上記HEKBlue(商標)細胞アッセイを使用した、P01によるIL−1β活性の拮抗作用を示す。拮抗作用は、P01量の増加に伴い増加した(x軸は、P01を含む上清のマイクロリットルを反映する)。
【0308】
タンパク質P01、P02、P03、P04、およびP05はそれぞれ、IL−1β活性に拮抗した。例えば、8Aおよび8Bを参照されたい。P05のIC50は、約5ng/ml未満であった。P05はこのアッセイにおいてIL−1RIを刺激する能力に対し試験したが、試験した最高濃度、1mg/mlでも、検出可能なアゴニスト活性を有することは観察されなかった。P01、P02、P03、P04、およびP05はまた、MG−63細胞、IL−1βに応答するヒト骨肉腫細胞系において、IL−1β誘導IL−6発現を阻害した。ドライアイ疾患のマウスモデルでは、ヘキサヒスチジンタグが付けられたP05は、生物活性を有することが観察された。タグが付けられていないP05については、下記実施例8も参照されたい。
【0309】
実施例4
可溶性組換えヒトIL−1RIに対するタンパク質の結合特性(IL−1RIの細胞外ドメインに対応する)を、表面プラズモン共鳴を用い、Reichert SR7000DC Dual Channel SPRシステムにより評価した。結合は、0.005%Tween20を有するリン酸緩衝生理食塩水中で評価した。IL−1βは、8−9nMのKおよび2−3×10−3−1の解離定数(K)を有することが観察され、別の実験では、約2nMのK、1.3−1.5×10−1−1の会合定数および約2.9−3.0×10−3−1の解離定数(K)であった。図9Aを参照されたい。P01タンパク質は、IL−1βと同様の結合動力学で結合したが、結合実験の解離相中解離しなかった(約180秒)。よって、P01タンパク質はIL−1RIに、同様の条件下では、IL−1βよりも大きな親和性で結合した。
【0310】
IL−1Raの結合は、約0.33nMのK、約2×10−1−1の会合定数(K)、および約6.6×10−5−1の解離定数(K)を有することが観察された。図9Bを参照されたい。キメラサイトカインドメインP01、P02、P03、P04、およびP05は、約12−1700pMの範囲のK、約3×10−1−1〜3×10−1−1の範囲の会合定数(K)および約2×10−5〜1×10−3−1の範囲の解離定数(K)を有することが観察された。例えば図9Cおよび9Dならびに下記表7を参照されたい。
【表8】
【0311】
実施例5
追加の例示的なキメラIL−1ファミリータンパク質はまた、下記を含む:
【表9】
【0312】
下記ポリペプチドは、IL−1α由来の少なくとも2つのセグメントおよびIL−1Ra由来の少なくとも2つのセグメントを含むキメラドメインである。
【表10】
【0313】
実施例6
循環置換IL−1キメラドメインは、分子のN−末端をC末端に、リンカー配列を用いて結合させ、末端の各々に対し新しい場所を選択することにより構築することができる。IL−1β由来の末端を有するタンパク質では、リンカー長は、5〜10、例えば、約7アミノ酸とすることができる。新規末端の好ましい場所は、受容体から外方にあるループ、例えばβ6−β7ループ(例えば、SEQ ID NO:1の71−80に対応するアミノ酸)またはβ7−β8ループ(例えば、SEQ ID NO:1の84−99に対応するアミノ酸)内にある。
【0314】
そのような循環置換されたIL−1キメラドメインの例としては下記が挙げられる:
DKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYMQFVSSGGSGGGSAPVRSLNCRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKD (SEQ ID NO:40)
および
NYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYMQFVSSGGSGGGSAPVRSLNCRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPK (SEQ ID NO:41)。
【0315】
実施例7
タンパク質P03、P04、P05、mIL−1Ra(メチオニルIL−1Ra)、およびIL−1βをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4中、0.5mg/mlで調製した。タンパク質をSYPROオレンジ染料(Invitrogen、CA)と、ストック濃度の1:500希釈で合わせ、示差走査蛍光定量に供した。例えば、He et al. (2010) J. Pharm. Sciences, 99 1707-1720を参照されたい。蛍光測定値をAgilent Mx3005 QPCR機器を用いてモニタしながら、温度を25℃から95℃まで、1℃/分で増加させた。融解温度(T)値を、蛍光遷移の一次導関数の最大値から誘導した。タンパク質P03、P04、およびP05は、50℃超の、および59℃もの高さのアンフォールディングの開始、ならびに59、60、62、および64℃超のTを有することが観察された。結果を下記表8および図10A&10Bに示す:
【表11】
【0316】
P04は、mIL−1RaおよびIL−1βよりも約4度高いTを有し、mIL−1Raよりも約3度高いおよびtIL−1βよりも約10度高いアンフォールディングの開始を示す。P03およびP05は、mIL−1RaおよびIL−1βよりも約9度高いTを有し、mIL−1Raよりも約11度高いおよびIL−1βよりも約18度高いアンフォールディングの開始を示す。
【0317】
実施例8
精製P05(ヘキサヒスチジンタグを欠く)を1.25xPBS中で調製し、ドライアイ疾患のマウスモデルで試験した。このモデルでは、Jackson Laboratoriesからの6〜10週齢雌C57BL/6マウス(≧30%相対湿度、ヒドロゲル栄養補助食品、および乾燥(envirodry)環境強化を有する動物保持室中で1〜2週間順化させた)を、フルオレセイン染色に対し0日にプレスクリーニングした。フルオレセイン染色では、WFI HO中、10mg/mLで希釈した、新たに作製したフルオレセインを0.4μLで各眼に投与した。投与のおよそ8−13分後、眼をOlympus蛍光手術用顕微鏡を用いてスコア化した。点状染色を0−3の標準化National Eye Institute(NEI)グレーディングシステムを用いて、角膜表面が分割された5つの領域の各々に対して記録した(スコア範囲0−15/眼)。ティーチングブリッジを使用して、二人のマスキングされた得点係が、マウスを同時に評価し、各眼に対し単一の集団スコアを与えた。
【0318】
各眼に対しスコア≦7(15の最大スコアから)を有するマウスをドライアイチャンバ(20%±2%湿度および一定空気流約21L/min/ケージ)に1日に置き、このチャンバ内で実験の過程中(検査を除き)維持した。3日に、マウスを再びスコア化し、ランダムに8〜10マウス/群の治療群とした。マウスは、4〜5マウスの各ケージが大体同じ平均疾患スコアを有するようにランダム化した。3日に開始し、ランダム化後、マウスに、P05またはビヒクル(1.25XPBS)を点眼薬において3μL/眼BID頻度で局所投与した。マウスを7、9、および11日に、角膜フルオレセイン染色に対し、上記で記載したように検査し、スコア化した。得点係は実験の過程中、治療群について知らされなかった。
【0319】
図11Aは下記bid治療下の2つの同一実験のマウスに対する0、3、7、9、および11日での平均角膜染色スコア±SEMの棒グラフである:処置なし、ビヒクル(1.25XPBS)、および10mg/ml(1%)P05。10mg/ml P05は実験の7、9、および11日に著しく角膜染色を減少させた。角膜染色の減少により評価される有効性はまた、0.1mg/ml P05という少ない用量でも観察された。大腸菌中で生成される組換えIL−1Raもまた、動物モデルにおいて角膜染色を中程度に減少させた。
【0320】
図11Bに示されるように、10mg/ml P05の効果は、同じビヒクル中の10mg/mlマウス血清アルブミンとの比較に基づき特異的であった。ビヒクルに対し、10mg/mlマウス血清アルブミン(MSA)では、効果は見られず、10mg/ml P05の効果は、10mg/mlマウス血清アルブミンに対し統計学的に有意であった。図11Cに示されるように、10mg/ml P05をまた、眼用エマルジョン中の0.05%シクロスポリン(Restasis(登録商標))と比較した。約1週間のbid投与後では、P05は角膜染色を減少させたが、0.05%シクロスポリン眼用エマルジョンでは効果は観察されなかった。
【0321】
実施例9
捕獲ステップが、BLR(DE3)大腸菌細胞における発酵により生成されたP05の精製のために開発されている。溶離条件は、1mLカラム上での実験アプローチ(DOE)の統計学的設計により規定した。最適条件を、中間規模(10mLカラム)で実施した。
【0322】
生成物を、10mM EDTAが添加された20mM Tris、pH7.0からなる溶解緩衝剤中でのマイクロフルイダイゼーションにより抽出させる。澄んだライセートを、pH 5.3および3mS/cmの伝導率に調整する。調整済みライセートを、PorosXS(強カチオン交換樹脂)に、2分の滞留時間で、25−30mg P05/mLカラムの容量まで、ロードする。カラムを平衡緩衝剤で洗浄し、未結合種を除去する。pH6.0および3mS/cmでの第2の洗浄を実施し、不純物集団を除去する。生成物を、pH6.0および6.6mS/cmで溶離する。生成物関連種を、pH6.0および12.4mS/cmで溶離する。カラムを高塩濃度緩衝剤およびNaOHで清浄にする。
【0323】
P05は17kDaタンパク質であり、pIは6.58.である。des−ALA種のpIは6.8であり、分析用弱カチオン交換クロマトグラフィーにより容易に分離される。この種は、大腸菌内で見いだされるアミノペプチダーゼP活性の生成物である可能性がある。種は質量分析、ペプチドマッピング、およびHPLC方法により同定することができる。
【0324】
クロマトグラフィー材料.PorosXSは、公称50μm粒子サイズを有する架橋ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)ビーズに基づく。クロマトグラフィーマトリクスは、スルホプロピル表面化学を有し、結合中の塩の上昇レベルを許容するように設計された。PorosXS(CN 4404339、Life Technologies)材料を、バルクスラリーとして獲得し、5×50mm Tricornカラム(CN28−4064−09、GE Healthcare)に充填し、最終カラム体積は1mL(5cm床高さ)とし、または10×150mm Tricornカラム(CN28−4064−16、GE Healthcare)に充填し、最終体積10.5mL(13.4cm床高さ)とした。
【0325】
緩衝剤.全ての緩衝剤を、容量的にMilliQ水を用いて調製した。所望のpHを達成するために、10N HClまたは1M NaOH(10m NaOHのストック溶液から生成)を添加して、緩衝剤を滴定した。沈殿後、全ての緩衝剤を0.2μmPESボトルトップフィルタを通して濾過した。全てのpHおよび伝導率測定は、室温(約20−25℃)で実施した。
【0326】
PorosXS緩衝剤:CEX平衡緩衝剤−1Lの緩衝剤あたり、0.57mLの氷酢酸および2.44gのNaClを添加することにより作製した21mM NaClを有する10mM酢酸(HoAC)。最終pHは5.3であり、最終伝導率は3mS/cmであった。
【0327】
CEX洗浄緩衝剤−1Lの緩衝剤あたり、19.5gのMOPS遊離酸、1.5gのMOPSナトリウム塩、および1.28gのNaClを添加することにより作製した、22mM NaClを有する100mM MOPS。最終pHは5.7−6.6(要望通り)であり、最終伝導率は3mS/cmであった。
【0328】
CEX溶離緩衝剤−1Lの緩衝剤あたり、19.5gのMOPS遊離酸、1.5gのMOPSナトリウム塩、および6.93gのNaClを添加することにより作製した、118mMのNaClを有する100mM MOPS。最終pHは5.7−6.6(要望通り)であり、最終伝導率は12.4mS/cmであった。
【0329】
CEXストリップ緩衝剤−1Lの緩衝剤あたり、0.57mLの氷酢酸および175gのNaClを添加することにより作製された、3M NaClを有する10mM酢酸。最終pHは5.3であり、最終伝導率は188mS/cmであった。
【0330】
ライセート調製.ライセートのpHを、1Lの緩衝剤あたり11.5mLの氷酢酸を混合することにより作製した、pH4.5の200mM酢酸を使用して調整した。1M NaOHを使用して溶液を滴定して、4.5の最終pHとした。この溶液を、濃または強酸の低pHによる局所沈殿を回避するために使用した。
【0331】
これらの実験のためのロード材料は、2L流加バイオリアクター運転からの抽出物とした。細胞ペレットからの生成物の抽出は、20mM Tris、pH7.0(10mM EDTAが添加されている)を用いて実施した。新しい抽出物をMilliQ水(典型的には1:1−1.5希釈)で希釈し、3mS/cmの伝導率とした。希釈された抽出物を、−20℃で41mLアリコート中凍結させた。ロードを調製するために、アリコートを室温で解凍し、pH5.3まで、pH4.5の200mMの酢酸を用いて滴定した。滴定後、必要に応じてMilliQ水の添加により、小さな伝導率の調節を実施した。最終的に、CEX平衡緩衝剤を使用してロードを2.5×希釈し、約1.7g/Lの濃度とした。ロードを、0.8/0.2μmフィルタを通して無菌濾過した。調整したロードを、調製した同じ日に使用した。
【0332】
宿主細胞タンパク質決定.宿主細胞タンパク質(HCP)レベルを、大腸菌発現系に特異的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(CN F410、Cygnus Technologies)により決定した。キットと共に供給されたプロトコルに正確に従った。HCPレベルに対してアッセイされる試料を、試料希釈剤(CN I028、Cygnus Technologies)を用いて10×の最小希釈で希釈した。試料は典型的には2回希釈で実施し、各希釈に対し2組でプレーティングする。HCPレベルは、百万分率(ppm)またはng−HCP/mg−生成物の観点で表される。
【0333】
SDS−PAGE分析.ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による純度分析では、1mm×10ウェルまたは1mm×15ウェルNuPAGE4−12%BisTrisゲル(それぞれ、CN NP0322BoxおよびNP0323Box、Invitrogen)のいずれかを使用する。泳動用緩衝剤は20×濃度から調製した1×MES SDS泳動用緩衝剤である(CN NP0002、Invitrogen)。Novex鋭着色タンパク質標準(CN57318、Invitrogen)を分子量指標として使用する。分析のための試料を、MilliQ水による希釈により調製し、最終体積30μLとし、10μLの4×ドデシル硫酸リチウム(LDS)(CN NP0008、Invitrogen)を添加し、1×の最終濃度とした。試料をボルテックスにより5秒間混合した。A280/A320測定から得られた計算タンパク質濃度を基に、3μg/ウェルの標的をロードした。
【0334】
wCEX.P05を弱カチオン交換クロマトグラフィー(wCEX)により、Dionex ProPac(登録商標)WCX−10 4x250mmカラム(製品番号054993)を用いて、1.2mL/minの流速で、10mM酢酸ナトリウムpH5.5(緩衝剤A)および10mM酢酸ナトリウムpH5.5、250mM NaCl(緩衝剤B)の移動相溶液を用いて評価した。勾配は20分にわたる10%B〜25%Bである。無傷なP05は、des−Ala種の前およそ1.5〜2.5分に、勾配の後期で溶離する。
【0335】
カチオン交換捕獲クロマトグラフィー.クロマトグラフィーを、AKTA Explorer 100クロマトグラフィーシステム上で実施した。10mLのPorosXSカラムを充填した。材料を、40mgのP05/mlでロードし、または25−30mgのP05/mlでロードすることができる。クロマトグラフィー方法を表9でまとめて示す。滞留時間をローディングおよび溶離ステップ中2分で一定に維持した。ニセの溶離プールを作製し、生成物回収、HCPレベル、および%無傷なタンパク質に対しアッセイした。合計2回の実行を10mLカラム上、30%および35%の%B、pH6.0を用いて完了した。
【表12】
【0336】
洗浄#2は、主に不純物からなるピークとなる。30%および35%Bによる溶離#1は、SDS−PAGE分析により>95%純粋生成物となる。洗浄#2の塩濃度は、少量だけ増加させることができ、溶離ピーク上の肩が除去される。
【0337】
実施例10
P04を精製し、回折品質結晶を25%PEG1500、0.1M PCB(pH4.0)中、20℃で成長させた。タンパク質は、空間群P2で結晶化し、典型的な単位セル寸法は、a=44.5、b=46.4、c=64.8であった。結晶は高分解能まで回折し、1.47Åまで拡張するデータベースをAdvanced Photon Source、ビームラインLS−CAT 21ID−F(Chicago IL、USA)で収集した。P04のX線構造を、分子置換によりPDB構造1ITBおよび1IRA由来の知られているIL−1βおよびIL−1Ra構造の関連部分を組み込むモデルを使用して解明した(Vigers et al., (1997) Nature 386: 190-194 and Schreuder et al., (1997) Nature 386: 194-200)。最終モデルを17.6%/20.4%のRwork/Rfreeに精密化し、これは1のP04分子(140残基)および98の水分子を含む(表10)。P04残基1−2、48−49および85−93は、電子密度では見えず、最終モデルでは欠けている。
【表13】
【0338】
P04結晶構造は、モデリングにより予測されるものと同様の折り畳みを有する。この構造の図を図1に示す。2つの構造のオーバーレイを図12Aに示す。バックボーン炭素に対するRMSDは、それぞれの親分子上の同じ残基と対比して、IL−1βおよびIL−1Raセグメントでは1.41Åおよび1.09Åであった。P04は、IL−1β由来の残基とIL−1Ra由来の対応物の間の相互作用に関与する少なくとも1つの独特な塩橋および2つの独特な水素結合を有する:(i)Glu39−Lys64(IL−1RA由来のGlu39;IL−1β由来のLys64)(図12Bに示される)、(ii)Arg9−Gln149(IL−1RA由来のArg9;IL−1β由来のGln149)(図12Cに示される)、および(iii)Ser152−Lys40(IL−1RA由来のSer152;IL−1β由来のLys50)(図12Cに示される)。これらの独特な相互作用は、P04の増加した熱安定性を説明することができる、というのも、これらの相互作用はIL−1βおよびIL−1Ra構造には存在しないからである。これらの相互作用に関与する残基はまた、P03およびP05、同様に増加した熱安定性を有するタンパク質においても存在する。
【0339】
他の実施形態は下記特許請求の範囲内にある。
【0340】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9-1】
図9-2】
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]