【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、請求項1の特徴に係る投与装置、および請求項5の特徴に係る還元剤を投与するための方法により達成される。本発明のさらに有益な実施形態は従属請求項において規定される。請求項に別々に記載した特徴は、任意の技術的に有用な方式で互いに組み合わされてもよく、詳細な説明からの例示的な事柄により補足されてもよく、本発明のさらなる改変が示される。
【0006】
本発明は、還元剤を排気ガス処理装置に供給するための注入器を含み、温度センサが注入器に取り付けられる、還元剤のための投与装置に関する。
【0007】
本発明は特に、還元剤タンクと、還元剤を排気ガス処理装置に供給するための注入器とを、還元剤タンクから注入器まで還元剤を送達するための送達装置と共に備え、温度センサが注入器に取り付けられる、還元剤のための投与装置に関する。この場合特に、液体尿素水溶液が保存され、注入器により投与される。
【0008】
温度センサは、注入器の(一体化)コンポーネントであってもよい。温度センサを注入器にすぐ近接して配置することも可能である。好ましくは、還元剤が注入器から出現する点と、温度センサとの間の距離は、100mm[ミリメートル]未満、好ましくは50mm[ミリメートル]未満、特に好ましくはさらに20mm[ミリメートル]未満である。
【0009】
温度センサは、少なくとも部分的に還元剤と直接接触してもよい。しかしながら、温度センサを還元剤から離間して配置し、熱伝導性要素を介して還元剤と接触させることも可能である。この熱伝導性要素は、例えば注入器のハウジングおよび/または還元剤ラインであってもよい。この場合、熱伝導性要素は好ましくは温度感受性(例えば高熱伝導性を有する薄壁など)であり、実際の温度を温度センサに急速かつ正確に伝える。好ましくは、還元剤から注入器までの距離は10mm[ミリメートル]未満、好ましくは2mm[ミリメートル]未満、特に好ましくは1mm[ミリメートル]未満である。
【0010】
特に、還元剤(特に尿素水溶液)の流動特性および/または粘性は、かなりの程度、還元剤の温度に依存する。注入器における還元剤の温度は実質的に注入器自体の温度に対応するので、一部の場合、還元剤タンク内または還元剤ラインの離れた領域内の還元剤の温度から顕著に外れる。注入器は通常、排気ガス処理装置に直接配置されるので、それ自体、異なる排気ガス温度のために、作動時にかなりの変動温度を有する。したがって、注入器における還元剤の温度を決定し、測定した温度を参照して、および/または測定した温度を考慮しながら、注入器の開口時間を適応させることは有益である。供給される還元剤の量は、かなりの程度、注入器の開口時間により決定される。好ましくは、測定した温度を使用して、還元剤の流動性、流動作用、粘度および/またはせん断抵抗がパラメータとして決定されるか、または算出される。次いでこのパラメータは、注入器の開口時間を決定する際に考慮に入れられる。
【0011】
本発明に係る投与装置は、少なくとも20cm[センチメートル]、好ましくは少なくとも50cm[センチメートル]、特に好ましくは少なくとも100cm[センチメートル]の長さを有する還元剤ラインが、送達装置と注入器との間に配置される場合、特に有益である。このような長い還元剤ラインにより、送達装置における還元剤の温度が、注入器における還元剤の温度からかなり外れることが定期的に起こり得る。したがって特に、このような長い送達ラインにより、注入器に(もまた)温度センサを設けることが有益である。必要に応じて、注入器における温度センサは投与装置に設けられる唯一の温度センサであってもよい。
【0012】
注入器が、少なくとも以下の機能:
注入器の電磁開口、および
コイルの電気抵抗を測定することにより温度を確定すること
を実施するように設定される電気コイルを有する場合、さらに有益である。
【0013】
注入器を開口するための電気コイルの電気抵抗は通常、特定の温度依存性である。電気コイルの導電性トラックに関して、少なくとも0.2%/ケルビン、好ましくは少なくとも1%/ケルビンおよび特に好ましくは少なくとも3%/ケルビンの温度依存性の電気抵抗を有する材料も必要に応じて使用されてもよい。これにより、温度変化の事象において、顕著なコイルの抵抗の測定可能な変化が生じることが確保される。
【0014】
さらに、本発明に係る投与装置は、圧力センサが注入器にさらに設けられる場合、有益である。この場合、温度センサおよび圧力センサの両方が注入器に設けられる。好ましくは、温度センサは同時に圧力センサである。例えば、圧力センサは、圧力の変化の下で変形する導電性トラックとして実現されてもよく、それにより、その電気抵抗が変化し、圧力変化が検出され得る。この導電性トラックは同時に温度センサとして利用されてもよい。次いで基準センサが、圧力センサにおける温度の交差影響(cross−influence)を決定するためにさらに必要とされる。この基準センサは、圧力変化の事象において変形しない第2の導電性トラックの形態で実装されてもよい。
【0015】
さらなる実施形態において、温度センサは、さらに機能しない導電性トラックまたはコイルを備える。この導電性トラックまたはコイルは、特に小さく設計されてもよい。例えば、コイルは、80オーム超、好ましくは400オーム超、特に好ましくは2500オーム超の抵抗を有する白金抵抗ワイヤであってもよい。このような抵抗ワイヤは非常に低い熱容量を有するので、温度変化に非常に迅速に反応する。
【0016】
さらなる実施形態において、温度センサは熱電対であってもよい。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、還元剤を排気ガス処理装置に投与するための方法であって、投与は注入器により行われ、前記方法は少なくとも以下の工程:
a)注入器付近の還元剤の温度を決定する工程と、
b)温度の関数として還元剤の流動作用を決定する工程と、
c)流動作用の関数として注入器の開口時間を決定する工程と、
d)特定の開口時間の間、注入器を開口する工程と
を含む、方法が提案されている。
【0018】
工程a)における(現在の)温度の決定または測定は、例えば注入器に直接配置される温度センサを使用して行われてもよい。この場合、還元剤の温度は、温度感受性熱導体を介して直接または間接的に決定されてもよい。
【0019】
工程b)における「流動作用」という用語はまた、特に還元剤のせん断抵抗および/または粘度を含む。工程b)における流動作用の決定は、例えば、制御装置に保存された式を使用する計算により行われてもよく、工程a)において決定された温度が式に考慮に入れられる。同様に、限界値、入力−出力マップなども制御装置に保存されてもよく、保存された情報を用いる、決定された温度の比較により、その後の工程についての特性値が得られる。
【0020】
工程c)において、制御装置に保存される式および/または入力−出力マップは同様に、注入器の開口時間を算出するために使用されてもよい。この式はまた、工程b)において算出された流動作用も考慮に入れられる。
【0021】
還元剤の排気ガス処理装置への供給は、工程d)において注入器を開口することにより行われる。
【0022】
本発明に係る方法は、以下の影響パラメータ:
注入器における還元剤の圧力、
還元剤の少なくとも1つの化学特性、
還元剤の少なくとも1つの物理特性、および
還元剤の必要量
のうちの少なくとも1つもまた、少なくとも工程b)における流動作用を決定する際に、または工程c)における開口時間を決定する際に考慮に入れられる場合、特に有益である。
【0023】
明確化のために、特に影響パラメータは、工程b)およびc)の両方において考慮に入れられてもよく、異なる影響パラメータがそれらの工程において考慮に入れられてもよいことが指摘されるべきである。
【0024】
還元剤のせん断抵抗または流動作用または粘度はまた、さらに還元剤の圧力に依存するので、工程b)において流動作用を決定する際にこの圧力を考慮に入れることも有益である。注入器の所定の開口時間の間、注入器を通る還元剤の量は、かなりの程度まで、注入器における(注入器の前および/または注入器内の)還元剤の圧力に依存する。したがって、工程c)において開口時間を算出するときに圧力を考慮に入れる場合、有益である。
【0025】
(工程b)において)流動作用を算出する際に、および/または(工程c)において)注入器の開口時間を算出する際に考慮に入れられ得る還元剤の化学特性として、例えば還元剤の化学組成が使用されてもよい。例えば、還元剤の尿素の濃度および/または還元剤中の特定の添加物の存在がここで考慮に入れられてもよい。
【0026】
物理特性として、例えば、還元剤の密度、熱電導率、電気伝導率、表面張力および/または凝集条件が考慮に入れられてもよい。一部の場合、還元剤の流動作用または粘度についての情報は、本発明に係る方法を実施する前に既に利用可能であってもよく、その情報は後で本発明に係る方法の過程においてのみ補正される。流動作用または粘度についてのこの既存の情報は、例えば、比較粘度と称され得る。還元剤のこのような比較粘度は、例えば制御装置に保存されてもよい。タンク内の還元剤の量および/または温度を定期的に測定してもよく、それらから比較粘度を決定してもよい。次いでこの比較粘度も本発明に係る方法の工程b)において考慮に入れられてもよい。例えば、工程b)において決定される流動作用または粘度は、規定値以下で比較粘度から外れることが確実にされ得る。工程b)において、比較粘度は、流動作用または粘度を算出する際に、10%超、好ましくは50%超の重み付けで含まれてもよい。
【0027】
さらに、流動作用を決定する際に、および/または開口時間を決定する際に還元剤の必要量を考慮に入れることも有益である。還元剤の必要量は、工程c)において決定される注入器の開口時間に重要な影響を与える。工程b)において還元剤の必要量は、流動作用の決定において交差影響を形成し得る。
【0028】
さらに、提案される方法は、この方法の工程d)の第1の実施と、後のこの方法の工程a)の実施との間で最小の時間間隔を経過させて複数回反復される場合、特に有益である。この方法の複数回反復はまた、反復方法の実施と称される場合もある。また、この方法の工程a)〜d)の各々の個々の実施は、方法の反復と称される場合もある。第1の方法の反復の後の方法の実施は好ましくは、第1の方法の実施の直接後、または方法の反復の直接後の方法の実施である。
【0029】
工程a)および工程b)は工程c)および工程d)より短い反復速度で実施されてもよい。その場合、還元剤の温度の決定および流動作用の決定は、例えば、各々5回未満、好ましくは各々10回未満、特に好ましくは各々15回未満の注入器の開口プロセスで実施される。工程d)の第1の方法の実施と、その後の工程a)の方法の実施との間の最小時間間隔は、例えば、少なくとも5s[秒]、好ましくは少なくとも10s[秒]、特に好ましくは少なくとも1分であってもよい。注入器が開口すると、電流が流れる結果としてさらなる熱が生成される。この熱は、温度センサにより測定される温度を改ざんする。したがって、記載した最小時間間隔を経過させることが有益である。特定の最小時間間隔を経過させる結果として、還元剤および注入器の温度の平衡が起こる。注入器は必要に応じて本明細書に表されている特定の熱容量を有する。
【0030】
また、本発明に係る方法は、排気ガス処理装置に接続された内燃エンジンが、内燃エンジンの全負荷の少なくとも90%で作動する場合、中断されることが有益であり得る。好ましくは、本発明に係る方法は、内燃エンジンが全負荷の80%超、特に好ましくは50%超で作動している場合、既に中断されている。このような負荷状況下で、非常に多量の還元剤が排気ガス処理装置内に投与されなければならない。この目的のために、注入器は非常に頻繁に開口されなければならず、この場合、計算はタイムクリティカル(最優先で実行される)でなければならず、さらに、これらの時間の間、温度ストレスは実質的に高いままである。
【0031】
本発明に係る方法に関して記載されている利点および実施形態の特徴は、本発明に係る投与装置に同様に移転可能である。同様のものが、本発明に係る投与装置について記載されている特別な利点および実施形態の特徴に適用される。したがって、本発明に係る方法は、特に本発明に係る投与装置の実施形態を使用して実施されてもよい。
【0032】
内燃エンジンと、該内燃エンジンの排気ガスを浄化するための排気ガス処理装置と、本発明に係る投与装置と、還元剤の排気ガス処理装置への供給を制御するための制御装置とを有する自動車が、本発明の出願の好ましい分野とみなされ、制御装置が本発明に係る方法を実施するように設定される。
【0033】
本発明および関連する技術分野は、図面を参照して以下により詳細に説明される。図面は特に好ましい例示的な実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されない。特に図面、および特に示される寸法関係は単なる概略であることが指摘されるべきである。