特許第6030600号(P6030600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6030600無線通信装置、無線LANシステム、及び通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030600
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線LANシステム、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/02 20090101AFI20161114BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20161114BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20161114BHJP
   H04L 29/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H04W76/02
   H04W84/12
   H04W84/10 110
   H04L13/00 307A
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-90797(P2014-90797)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-211298(P2015-211298A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 章
【審査官】 阿部 圭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−214801(JP,A)
【文献】 特開2002−351766(JP,A)
【文献】 特開2004−336538(JP,A)
【文献】 特開2013−176137(JP,A)
【文献】 特開2006−042087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置から無線LANアクセスポイントとの無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な前記無線接続に必要な識別信号が入力された場合には前記識別信号を前記他の無線通信装置に送信する近距離通信手段と、
前記要求信号に対応し無線接続許否を前記無線LANアクセスポイントに照会する照会信号を送信し、これに対し前記無線LANアクセスポイントから前記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を前記近距離通信手段に供給する無線LAN通信手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記他の無線通信装置との近距離通信を確立した後で、前記他の無線通信装置が前記一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立し、
その後、前記他の無線通信装置との前記近距離通信を切断する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線LANアクセスポイントに対して前記一時的な無線接続に必要な識別信号の停止要求を送信し、前記無線LANアクセスポイントの前記一時的な無線接続に必要な識別信号を停止させる、請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された無線通信装置と、
前記無線LANアクセスポイントと、
前記他の無線通信装置と、
を備えていることを特徴とする無線LANシステム。
【請求項5】
前記無線LANアクセスポイントは、前記無線通信装置から受け取った、他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを登録し、
前記他の無線通信装置は、受け取った前記一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて、前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立する、請求項4に記載の無線LANシステム。
【請求項6】
前記無線通信装置は、前記他の無線通信装置が前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立した後で、前記他の無線通信装置との近距離通信を切断する、請求項5に記載の無線LANシステム。
【請求項7】
前記無線通信装置は、前記一時的な無線接続に必要な識別信号の停止要求を前記無線LANアクセスポイントに対して送信し、これを受けて前記無線LANアクセスポイントは前記一時的な無線接続に必要な識別信号を停止する、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線LANシステム。
【請求項8】
一時的な用途で無線LANアクセスポイントに接続したい他の無線通信装置に対して、前記無線LANアクセスポイントへの一時的なアクセス権を前記無線LANアクセスポイントに既に接続している無線通信装置が与えるために、
前記無線LANアクセスポイントに接続している前記無線通信装置との近距離通信を経由して、前記無線LANアクセスポイントに接続している前記無線通信装置は、前記無線LANアクセスポイントに一時的な無線接続先の作成を命令し、
その無線接続先に接続するための接続情報を、前記他の無線通信装置は前記無線通信装置を経由して入手し一時的に無線LANアクセスポイントへ接続する、通信方法。
【請求項9】
前記無線通信装置は、
前記他の無線通信装置が前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を望むときは、前記他の無線通信装置との近距離通信を確立した後、
前記無線LANアクセスポイントに対して一時的な無線接続に必要な識別信号を作成可能かどうか確認を取り、一時的な無線接続に必要な識別信号を作成可能であった場合には、その旨の回答を前記他の無線通信装置に行い、
他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを付加した情報を前記他の無線通信装置から受け取って前記無線LANアクセスポイントに送信し、前記無線LANアクセスポイントに対して一時的な無線接続に必要な識別信号の作成を依頼し、
前記無線LANアクセスポイントから前記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信して、前記他の無線通信装置に送信する、請求項8に記載の通信方法。
【請求項10】
前記無線LANアクセスポイントは、前記無線通信装置から受け取った、他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを登録し、
前記他の無線通信装置は、受け取った一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて、前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立する、請求項9に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線LAN(Local Area Network)システム、及び通信方法に関し、特に無線LANアクセスポイントに接続するために必要となる接続情報の受渡しに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、情報端末を無線通信を使用してネットワークに接続するための方式として、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)で規格されたIEEE802.11a/b/g/nという通信方式があり、本方式を総じて「無線LAN」と呼称している。無線LANは装置として無線LAN親機・無線LAN子機の2つに動作が分かれており、特殊な場合を除いて子機は親機に対して帰属(接続)したうえで、親機に接続されている情報端末同士で通信が可能である。一般的に、無線LAN親機をアクセスポイント(AP:Access Point)と呼び、無線LAN子機をステーション(STA:Station)と呼ぶ。
【0003】
無線LANで通信を行う場合、子機が親機を識別するためにBSSID(Basic Service Set IDentifier)という識別子が利用される。BSSIDは各無線LAN親機に対して一意に設定される48Bit数列であり、一般的にMAC(Media Access Control)アドレスが利用される。また、無線LANで構成された1つのネットワークを仕切るためにESSID(Enhanced Service Set ID)という識別子が利用される。ESSIDは32文字以下の英数字が利用され、親機管理者が親機に対して自由に設定できる。無線LANに接続する場合、利用者はESSIDを指定して、特定の無線ネットワークに対して接続を試みる。ESSIDは親機が常に発出しているビーコン信号から得ることができ、子機はサーチによって周辺親機のESSIDを知ることができるが、秘匿性を重視してビーコンにESSIDを乗せずに送信する親機も存在できる。
【0004】
また、無線LANは通信をする際に、WEP(Wired Equivalent Privacy)、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)、AES(Advanced Encryption Standard)などIEEE802.11で規定された暗号方式によって通信を暗号化することができる。暗号化を使用している無線LAN親機に接続する際には各親機に設定された暗号化方式と、暗号に使用している暗号化キーを事前に知っておく必要がある。
【0005】
これまで無線LANアクセスポイントは主にパーソナルコンピュータ(PC)等の端末を、インターネット・社内ネットワーク・ホームネットワーク等に対してケーブル等物理的な接続をすることなく通信するための手段として広く使用されてきた。
【0006】
近年、ユビキタス化に伴い、場所を選ばず必要な情報にアクセスすることのできるクラウドサービスなどが増加している。出先であっても必要なサービスを受けるために、モバイルPC、ネットブック、スマートフォン、タブレット端末など、小型で携帯しやすい情報端末が普及してきている。中でもスマートフォンやタブレット端末等の小型で気軽に持ち運ぶことのできる情報端末は、無線LAN子機としての機能はもとより、近距離通信に使用可能な通信機能を多彩に搭載しているものも多い。近距離通信としては、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、IrDA(Infrared Data Association)(登録商標)等が挙げられる。
【0007】
可搬型の情報端末はインターネットに接続するための手段として無線LANへの接続が常態化してきており、出先では現地に設置されている無線LANアクセスポイントに一時的に接続してインターネットにアクセスすることが往々にある。
【0008】
情報端末を、無線LANアクセスポイント(AP)を通してネットワークに接続するには、APへの接続に必要なBSSID、暗号化方式、暗号に使用する暗号化キーの情報が必要である。これまで、これらの情報を端末に対して入力するのは、基本的には人の手で1つずつ入力するのが基本であるが、これは非常に手間である。
【0009】
この接続情報の受渡しを簡単・簡潔に行うことを目的とした手法が数々開発されている。今までに利用されている主な手法は、プッシュボタン方式、PIN(Personal Identification Number)コード方式、やNFC方式があげられる。
【0010】
プッシュボタン方式は、予め端末側の無線LAN制御装置をサーチ状態にしたうえで、APに搭載されている特定のプッシュスイッチを押すことでAP側から識別信号を発し、端末側はその識別信号に応じてAPと安全に接続情報の受渡を行うというものである。この方式は、APとの接続をするうえで必要な暗号方式及び暗号化キーを利用者が意識することなく接続性を確保することができる。しかしながら、利用者はAPの設置場所にわざわざ赴き、プッシュボタンを押す必要がある。もしAPが天井等に設置されている場合、この方式は困難が伴う。
【0011】
PINコード方式は、予め親機又は子機側を識別することが可能な数桁の数字列を接続先に対して入力することで相手側を特定し、安全に接続情報の受渡を行うというものである。この方式は、予め相手側を特定するための情報を利用者は知っておく必要があり、暗号化キーを手で入力するのと大差ない。
【0012】
NFC方式は、APに搭載されたNFC制御装置やNFCタグと直接通信することで、安全に接続情報を取得するというものである。この方式は、NFC通信が可能な範囲に端末を近接させる必要がある。APは基本的に定位置に固定で設置するため、端末を特定の1地点に移動させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した、プッシュボタン方式、PINコード方式、やNFC方式に関しても、一度接続情報の受渡しを行うと、一般的に、無線LAN端末側には一度接続したAPの接続情報は記録されてしまう。無線LAN端末側に接続情報が記録されてしまうと、無線LAN端末はアクセスポイント管理者に把握されない状態で、APに接続可能となってしまう。これらの方式は、APへの接続権を提供する管理者が一時的に接続許可したいというニーズに応えることができない。また、ネットワークの機密性を低下させるリスクがあり、管理者による一時的な接続許可という用途には向かない。
【0014】
また、プッシュボタン方式、PINコード方式、やNFC方式で新たにAPに接続しようとすると、APの存在や位置、接続情報を利用者が意識しなければならない。言い換えると、これらの方式でAPに新たに接続しようとすると、一時的なアクセスによる利用者に対してAPの存在や位置、接続情報を意識させてしまう。このため、一時的なアクセスによる利用者が、仮にAPの接続情報を悪用しようと考えた場合にも一時的なアクセスの提供者は止めることができない、という課題がある。
【0015】
本発明の目的は、無線LAN端末の利用者にAPの存在や位置、接続情報を意識させないで、通信ネットワークへの一時的なアクセスを提供する、無線通信装置、無線LANシステム、及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る無線通信装置は、
他の無線通信装置から無線LANアクセスポイントとの無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な上記無線接続に必要な識別信号が入力された場合には上記識別信号を上記他の無線通信装置に送信する近距離通信手段と、
上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイントに照会する照会信号を送信し、これに対し上記無線LANアクセスポイントから上記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を上記近距離通信手段に供給する無線LAN通信手段と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る無線LANシステムは、
他の無線通信装置から無線LANアクセスポイントとの無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な上記無線接続に必要な識別信号が入力された場合には上記識別信号を上記他の無線通信装置に送信する近距離通信手段、及び上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイントに照会する照会信号を送信し、これに対し上記無線LANアクセスポイントから上記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を上記近距離通信手段に供給する無線LAN通信手段、を備えた無線通信装置と、
上記無線LANアクセスポイントと、
上記他の無線通信装置と、
を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る通信方法は、
一時的な用途で無線LANアクセスポイントに接続したい他の無線通信装置に対して、上記無線LANアクセスポイントへの一時的なアクセス権を与えるために、
既に上記無線LANアクセスポイントに接続している無線通信装置との近距離通信を経由して、上記無線LANアクセスポイントに一時的な無線接続先の作成を命令し、
その無線接続先に接続するための接続情報を、上記他の無線通信装置は上記無線通信装置を経由して入手し一時的に無線LANアクセスポイントへ接続する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の無線通信装置、無線LANシステム、及び通信方法によれば、一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない他の無線通信装置に対しては、利用者に無線LANアクセスポイントの存在や位置、接続情報を意識させないで、一時的なアクセスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の最上位概念に対応する実施形態の無線通信装置及び無線LANシステムのブロック図である。
図2A】本発明の第1実施形態による無線LANシステムの構成図である。
図2B図2Aの無線LANシステムの詳細構成を示すシステム図である。
図3】本発明の第1実施形態による無線LANシステムのシステムフローを示すシーケンスチャートである。
図4】無線LAN端末103の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】(a)は無線LAN端末102の動作を説明するためのフローチャートであり、(b)は(a)のアクセスポイントの状態確認処理をより詳細に示すフローチャートである。
図6】無線LAN端末102の動作を説明するための第2のフローチャートである。
図7】(a)は無線LANアクセスポイント装置101の動作を説明するための第1のフローチャートであり、(b)は(a)の制御・通信監視処理をより詳細に示すフローチャートである。
図8】無線LANアクセスポイント装置101の動作を説明するための第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一時的に接続したい無線LANアクセスポイントの接続情報を、既に恒久的に無線LANアクセスポイントに接続可能な端末Aを経由して、得るものである。その際、一時的に無線LANアクセスポイントに接続したい端末Bに対して、端末同士が有する近距離通信を利用して、接続情報の受渡を行うものである。端末同士を近接させれば、端末Bに対してアクセス性を提供することが可能である。
【0022】
また、既に無線LANアクセスポイントと恒久的に接続が可能になっている端末Aを主体として、一時的な接続のためのアクセス管理を行う。これにより、一時的に接続した端末Bの接続性を一元的に管理することが可能である。
【0023】
図1は、本発明の最上位概念に対応する実施形態の無線通信装置及び無線LANシステムのブロック図である。
【0024】
最上位概念に対応する実施形態の無線通信装置は図1では、無線LAN端末2である。無線LAN端末2は、無線LAN通信手段2a及び近距離通信手段2bを備える。近距離通信手段2bは、他の無線通信装置から無線LANアクセスポイント1との無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な無線接続に必要な識別信号が入力された場合には上記識別信号を上記他の無線通信装置に送信する。図1では、他の無線通信装置の一例として、他の無線LAN端末3を示す。無線LAN通信手段2aは、上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイント1に照会する照会信号を送信する。この照会信号の送信に対し、無線LAN通信手段2aが上記無線LANアクセスポイント1から上記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を上記近距離通信手段2bに供給する。
【0025】
無線LAN端末2は無線LAN通信手段2aで、無線LANアクセスポイント1の無線LAN通信手段1aと無線接続を確立した状態にあるものとする。無線LAN端末2は、他の無線LAN端末3から無線LANアクセスポイント1との無線接続を要求する要求信号を受信したときには、上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイント1に照会する照会信号を送信する。これに対し上記無線LANアクセスポイント1から上記一時的な無線接続に必要な識別信号を無線LAN端末2が受信した場合、上記一時的な無線接続に必要な識別信号を上記他の無線LAN端末3に送信する。その後、他の無線LAN端末3は、受信した一時的な無線接続に必要な識別信号を使って、無線LANアクセスポイント1と無線接続を確立する。
【0026】
最上位概念に対応する実施形態の無線LANシステムは図1に示すように、無線通信装置と、無線LANアクセスポイント1と、他の無線通信装置と、を備える。本実施形態の無線通信装置は図1では、無線LAN端末2である。無線LAN端末2は、無線LAN通信手段2a及び近距離通信手段2bを備える。無線LAN端末2の近距離通信手段2bは、他の無線通信装置から無線LANアクセスポイント1との無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な無線接続に必要な識別信号が入力された場合には上記識別信号を上記他の無線通信装置に送信する。
【0027】
本実施形態の他の無線通信装置は図1では、無線LAN端末3である。無線LAN端末3は、無線LAN通信手段3a及び近距離通信手段3bを備える。無線LAN端末2の無線LAN通信手段2aは、上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイント1に照会する照会信号を送信する。無線LAN端末2の無線LAN通信手段2aは、この照会信号の送信に対し上記無線LANアクセスポイント1から上記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を上記近距離通信手段2bに供給する。
【0028】
無線LAN端末2は無線LAN通信手段2aで、無線LANアクセスポイント1の無線LAN通信手段1aと無線接続を確立した状態にあるものとする。無線LAN端末2は、他の無線LAN端末3から無線LANアクセスポイント1との無線接続を要求する要求信号を受信したときには、上記要求信号に対応し無線接続許否を上記無線LANアクセスポイント1に照会する照会信号を送信する。これに対し上記無線LANアクセスポイント1から上記一時的な無線接続に必要な識別信号を無線LAN端末2が受信した場合、上記一時的な無線接続に必要な識別信号を上記他の無線LAN端末3に送信する。その後、他の無線LAN端末3は、受信した一時的な無線接続に必要な識別信号を使って、無線LANアクセスポイント1と無線接続を確立する。
【0029】
最上位概念に対応する実施形態の通信方法は、一時的な用途で無線LANアクセスポイント1に接続したい他の無線LAN端末に対して、上記無線LANアクセスポイント1への一時的なアクセス権を与えるものである。図1では、他の無線通信装置の一例として無線LAN端末3を示す。本実施形態の通信方法では、既に上記無線LANアクセスポイント1に接続している無線通信装置との近距離通信を経由して、上記無線LANアクセスポイント1に一時的な無線接続に必要な識別信号の作成を命令する。図1では、無線通信装置の一例として無線LAN端末2を示す。そして、その無線接続先に接続するための接続情報を、無線LAN端末3は無線LAN端末2を経由して入手し、無線LANアクセスポイント1へ接続する。
【0030】
これら実施形態によれば、一時的にしか通信ネットワークにつなぐ必要のない無線通信装置に対しては、無線通信装置の利用者に無線LANアクセスポイント1の存在や位置、接続情報を意識させないで、一時的なアクセスを提供できる。他の無線LAN端末3の利用者は、無線LAN端末2と近距離通信を行っていることは認識できても、無線LANアクセスポイント1の存在や位置を意識することはない。その結果、無線LAN端末2や無線LANアクセスポイント1の管理者は、無線LAN端末3の利用者に対して無線LANアクセスポイント1の存在や位置、接続情報を意識させないで、一時的なアクセスを提供できる。これにより、無線LANアクセスポイント1や無線LANアクセスポイント1への無線接続に関し、セキュリティが向上する。さらに、無線LANアクセスポイント1の接続情報を一定時間のみ有効となるように構成することにより、一時的なアクセスの利用者による接続情報の悪用を防止することができる。以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による無線通信装置、無線LANシステム、及び通信方法について、説明する。図2Aは、本発明の第1実施形態による無線LANシステムの構成図である。図2Bは、図2Aの無線LANシステムの詳細構成を示すシステム図である。
【0032】
本発明の本実施形態に係る無線通信装置は、無線接続機能を有し、子機となる無線LAN端末の一例としての無線LAN端末102である。無線LAN端末102は、親機となる無線LANアクセスポイントの一例との無線LANアクセスポイント装置101との無線LAN接続を確立する。この状態で、子機となる他の無線LAN端末の一例としての無線LAN端末103が無線LANアクセスポイント装置101への無線接続を望むときには、次の動作を行う。無線LAN端末102は、無線LAN端末103との近距離無線通信を確立する。さらに、無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101に対して一時的に接続可能な識別情報を作成可能かどうか、確認を取る。一時的に接続可能な識別情報を作成可能であった場合には、その旨の回答を無線LAN端末102は無線LAN端末103に行う。さらに、無線LAN端末103から、上記無線LAN端末103が有し接続する無線LANインターフェースに設定されたMACアドレスを付加した情報を受け取って、無線LANアクセスポイント装置101に送信する。さらに、無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101に対して一時的に接続可能な識別情報の作成を依頼する。さらに、無線LANアクセスポイント装置101から上記一時的に接続可能な識別情報を受信して、無線LAN端末103に送信する。
【0033】
本発明の本実施形態に係る無線LANシステムは、図2Aに示すように無線LANアクセスポイントの一例としての無線LANアクセスポイント装置101を有する。さらに本実施形態に係る無線LANシステムは、無線LANアクセスポイント装置101へ無線接続する無線通信装置の一例としての無線LAN端末102を有する。さらに本実施形態に係る無線LANシステムは、無線LANアクセスポイント装置101へ無線接続する他の無線LAN端末の一例としての無線LAN端末103を有する。
【0034】
無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101との無線LAN接続を確立した状態で、無線LAN端末103が無線LANアクセスポイント装置101への無線接続を望むときには、次の動作を行う。無線LAN端末102は、無線LAN端末103との近距離無線通信を確立する。さらに、無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101に対して一時的に接続可能な識別情報を作成可能かどうか、確認を取る。一時的に接続可能な識別情報を作成可能であった場合には、その旨の回答を無線LAN端末102は無線LAN端末103に行う。さらに、無線LAN端末103から、上記無線LAN端末103が有し接続する無線LANインターフェースに設定されたMACアドレスを付加した情報を受け取って、無線LANアクセスポイント装置101に送信する。さらに、無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101に対して一時的に接続可能な識別情報の作成を依頼する。さらに、無線LANアクセスポイント装置101から上記一時的に接続可能な識別情報を受信して、無線LAN端末103に送信する。
【0035】
さらに、本発明の本実施形態に係る通信方法は、一時的な用途で無線LANアクセスポイントに接続したい他の無線LAN端末に対して、上記無線LANアクセスポイントへの一時的なアクセス権を与えるものである。本実施形態に係る通信方法では、既に上記無線LANアクセスポイントに接続している無線通信装置との近距離無線通信を経由して、上記無線LANアクセスポイントに一時的な無線接続先の作成を命令する。さらに、本実施形態に係る通信方法では、その無線接続先に接続するための接続情報を、上記他の無線LAN端末は上記無線通信装置を経由して入手し、上記他の無線LAN端末は一時的に無線LANアクセスポイントへ接続する。
【0036】
以下に、より具体的に説明する。本実施形態の無線LANシステムは、無線LANアクセスポイント装置101と、無線LANに接続可能で且つ近距離無線通信が可能なインターフェースを持つ無線LAN端末102とを有する。さらに、本実施形態の無線LANシステムは、無線LAN端末102と同様の近距離無線通信が可能なインターフェースを持つ無線LAN端末103を有する。本発明の実施形態として、本発明を利用して上位ネットワークと通信を試みる無線LAN子機のシステム構成図を図2Bに示す。
【0037】
親機である無線LANアクセスポイント装置101は、複数の識別情報ESSIDを設定でき、それぞれの識別情報ESSIDを使って各無線LAN子機と同時に通信が可能な機能を持つ。無線LANアクセスポイント装置101は、IEEE802.11に規定された無線LAN通信規格に則って無線LAN親機としての機能を有する無線LAN制御部101aを有する。無線LANアクセスポイント装置101の無線LAN制御部101aは、複数の無線LANネットワークの親機として動作するため、それぞれで別の識別情報ESSIDを設定して動作可能な無線LAN通信インターフェース104、105、106を有する。
【0038】
無線LANアクセスポイント装置101は、無線LAN通信インターフェース104及び無線LAN通信インターフェース105を用いて、恒久的に識別信号ESSID1と識別信号ESSID2を送出している。残り1つの無線LAN通信インターフェース106は、ESSID、暗号方式、暗号化キー、動作のオン/オフ等の設定を随時自由に設定可能である。また無線LANアクセスポイント装置101は、無線LAN通信インターフェース104に接続された端末からのみ使用できる通信コマンドを有する。さらに、無線LAN通信インターフェース104に接続された端末からの指示により、無線LAN通信インターフェース106のオン/オフ、ESSID、通信方式や暗号化キーの設定が可能である。
【0039】
子機である無線LAN端末102は、IEEE802.11に規定された無線LAN通信規格に則って無線LAN子機としての機能を有する無線LAN通信インターフェース102aを有する。さらに、ISO/IEC 18092に規定されたNFC通信規格に則って通信を行うNFC通信インターフェース102bを有する。図2Bの無線LAN端末102は、既に無線LANで無線LANアクセスポイント装置101と接続可能な状態にあるものとする。図2Aでは、無線LAN端末102としてSTA1及びSTA2の二つの端末が示されている。
【0040】
無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101が送出する識別信号ESSID1のインターフェースに接続するための情報を有し、無線LANアクセスポイント装置101とは通信可能な状態にある。
【0041】
無線LAN端末102は、NFC通信インターフェース102bを用いて、同等の近距離無線通信を行うためのNFC通信インターフェースを有する無線LAN端末103と近接しており、NFC通信を使って通信可能な状態にある。
【0042】
子機である無線LAN端末103は、IEEE802.11に規定された無線LAN通信規格に則って無線LAN子機としての機能を有する無線LAN通信インターフェース103aを有する。さらに、無線LAN端末102と同等の近距離無線通信を行うためのNFC通信インターフェース103bを有する。無線LAN端末103は、無線LANアクセスポイント装置101の接続情報ESSID1、接続情報ESSID2のどちらも有していない。図2Aでは、無線LAN端末103としてSTA3及びSTA4の二つの端末が示されている。
【0043】
図2Bは無線LAN端末103に、親機である無線LANアクセスポイント装置101への接続に必要な情報(ESSID、暗号化方式、や暗号化キー等)を無線LAN端末103に受け渡す方法を示すものである。これは無線LAN端末103へ、無線LANアクセスポイント装置101に対する一時的なアクセス権を提供するためのものである。
【0044】
次に、本実施形態の動作について説明する。一時的にアクセスポイントに接続したい無線LAN端末103が、無線LANアクセスポイント装置101に一時的に接続可能になるまでの全体的なシステムフローを図3に示す。図3は、本実施形態の基本的な流れを示している。
【0045】
まず、一時的にアクセスポイントに接続したい無線LAN端末103は、無線LAN端末102とのNFC通信接続を確立する(シーケンス301)。これは、既に無線LANアクセスポイント装置101に接続している無線LAN端末102に対して、NFCインターフェースを通して通信できるようにするためのものである。この時、無線LAN端末102は既に無線LANアクセスポイント装置101との間で、一時的な無線LAN通信インターフェースを制御するための通信セッションを確立しているものとする。この通信セッションに関しては後述する。
【0046】
無線LAN端末103は無線LAN端末102に対して、一時的な無線LAN接続先の作成が可能かどうかの是非を確認する(シーケンス302)。無線LAN端末102はそれを受けて先に説明した通信セッションを使用して無線LANアクセスポイント装置101に対して、一時的に接続可能な識別情報ESSIDを作成することか可能か確認を取る(シーケンス303)。以下では、一時的に接続可能な識別情報ESSIDを、ワンタイムESSIDと呼ぶことにする。親機である無線LANアクセスポイント装置101は無線LAN端末102からの確認を受けて自らの無線LAN通信インターフェースの動作状況を確認し、ワンタイムESSIDを作成するうえで使用できるインターフェースの数を回答する(シーケンス304)。図3では、”1”と作成可能数を返答した場合を示している。無線LAN端末102は無線LANアクセスポイント装置101の回答が”0”でなかった場合に、無線LAN端末103に対し作成可能(OK)である旨を伝える(シーケンス305)。
【0047】
無線LAN端末103は無線LAN端末102からのOKの返答を受け、無線LAN端末102に対して接続先の作成依頼を要望する(シーケンス306)。この時、無線LAN端末103は、自らが有し接続する無線LANインターフェースに設定されたMACアドレスを付加して無線LAN端末102に対して送信する。
【0048】
無線LAN端末102は接続先の作成依頼を受けて、無線LANアクセスポイント装置101に対してワンタイムESSIDの作成を依頼する(シーケンス307)。無線LANアクセスポイント装置101はそれを受けてワンタイムESSIDの起動を行う。
【0049】
この時に用いる暗号方式の設定は、無線LANアクセスポイント装置101既定のものを利用する。また、ESSID名、暗号化キーについては無線LANアクセスポイント装置101内で規定された法則に沿って、自動生成し用いる。例えば、無線LANアクセスポイント装置101に設定された一意的なパラメータを用いて乱数を発生させ、世の中の無線LANアクセスポイント装置として一意となるであろう値をESSID、暗号化キーに用いる方法などが挙げられる。
【0050】
さらに、ワンタイムESSIDの動作する通信インターフェースが起動後、無線LANアクセスポイント装置101は無線LAN端末102に対して、作成したワンタイムESSIDに接続するために必要な接続情報一式を送信する。接続情報一式として、ESSID、keyを貸与する(シーケンス308)。無線LAN端末102は、無線LANアクセスポイント装置101に対して無線LAN端末103のMACアドレス登録を要請する(シーケンス309)。無線LANアクセスポイント装置101はACK信号を出力する(シーケンス310)。さらに、無線LAN端末102は受け取った端末情報(ESSID、key)を無線LAN端末103に転送する(シーケンス311)。
【0051】
無線LAN端末103は無線LAN端末102から受け取ったワンタイムESSIDの接続情報を用いて、無線LANアクセスポイント装置101との無線LAN接続を確立する(シーケンス312)。これにより、無線LAN端末103は無線LANアクセスポイント装置101への無線LAN接続が可能となる。無線LAN端末103が無線LANアクセスポイント装置101への無線LAN接続を確立した後に、無線LAN端末102と無線LAN端末103との間のNFC通信接続を切断する(シーケンス313)。
【0052】
本実施形態では無線LAN端末102が、無線LAN端末103の無線LANアクセスポイント装置101への無線LAN接続を終了させたい場合には、無線LANアクセスポイント装置101へワンタイムESSIDの停止要求を送信する。このワンタイムESSIDの停止要求を受けて、無線LANアクセスポイント装置101はワンタイムESSIDを停止する。こうして、無線LANアクセスポイント装置101による無線LAN端末103へのアクセス提供が終了する。
【0053】
参考に、無線LANアクセスポイント装置101、無線LAN端末102、及び無線LAN端末103がそれぞれでどのような処理をしているのかについて、フローチャートを示す。
【0054】
図4に、無線LAN端末103が上記システムフローを遂行するうえで行う処理のフローチャートを示す。図5及び図6に、無線LAN端末102が行う処理のフローチャートを示す。図7及び図8に、無線LANアクセスポイント装置101が行う処理のフローチャートを示す。このフローチャートは、本システムの流れを説明するうえで最低限必要な流れを簡易的に書いたものである。
【0055】
図4では、無線LAN端末103は、無線LAN接続済みである無線LAN端末102とNFC通信接続を確立する(ステップS1)。接続確認し(ステップS2)、OKであれば接続先作成可否を確認する(ステップS3)。さらに、無線LAN端末102からのレスポンスを確認し(ステップS4)、OKであれば接続先作成を依頼する(ステップS5)。さらに、無線LAN端末102からのレスポンスを確認し(ステップS6)、OKであれば入手した接続情報で無線LANアクセスポイント装置101に接続を試みる(ステップS7)。無線LAN端末103が無線LANアクセスポイント装置101への無線LAN接続を確立した後に、無線LAN端末102との間のNFC通信接続を切断する(ステップS8)。
【0056】
図5(a)では、無線LAN端末102は、ワンタイムESSID機能を持つ無線LANアクセスポイント装置101と通信セッションを確立する(ステップS11)。次に、無線LANアクセスポイント装置101の状態確認処理を行う(ステップS12)。次に、無線LAN端末102と無線LAN端末103との、端末間の通信処理を行う(ステップS13)。さらに、セッション終了を判断し(ステップS14)、セッション終了の場合には、無線LANアクセスポイント装置101との通信セッションを切断する(ステップS15)。
【0057】
図5(a)の無線LANアクセスポイント装置101の状態確認処理は、図5(b)に示すように、タイマーの満了を判断し(ステップS16)、満了していればワンタイムESSIDの動作状況を確認する(ステップS17)。さらに、タイマーをリセットして(ステップS18)、無線LANアクセスポイント装置101の状態確認処理を終了する。
【0058】
図6では、接続端末の有無を判断し(ステップS21)、接続端末があるときはコマンド受信の有無を判断する(ステップS22)。コマンド受信があるときは、作成可否を確認する(ステップS23)。YESの場合は、無線LANアクセスポイント装置101に作成可否を確認する(ステップS24)。さらに、無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスを判断する(ステップS25)。無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスが”0”の場合には、無線LAN端末103にNGを回答する(ステップS27)。無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスが”0”以外の場合には、無線LAN端末103にOKを回答する(ステップS26)。
【0059】
ステップS23でNOのときは、作成依頼を判断する(ステップS28)。YESの場合は、無線LANアクセスポイント装置101にワンタイムESSID作成を依頼する(ステップS29)。さらに、無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスを判断する(ステップS30)。無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスがOKのときには、無線LANアクセスポイント装置101から取得した接続情報を無線LAN端末103に回答する(ステップS31)。無線LANアクセスポイント装置101からのレスポンスがNGの場合は、無線LAN端末103にNGを回答する(ステップS32)。
【0060】
図7(a)では、無線LANアクセスポイント装置101は、無線LAN接続済みの無線LAN端末と通信セッションを確立する(ステップS41)。制御タイマーを開始する(ステップS42)。無線LANアクセスポイント装置101と端末間の通信処理を行う(ステップS43)。制御・通信監視処理を行う(ステップS44)。セッション終了を判断し(ステップS45)、セッション終了のときは制御タイマーを開始する(ステップS46)。無線LAN端末との通信セッションを切断する(ステップS47)。
【0061】
図7(a)の制御・通信監視処理の詳細フローを、図7(b)を参照して説明する。図7(b)に示すように、制御タイマーの満了を判断する(ステップS48)。満了のときには、ワンタイムESSIDが起動中か判断する(ステップS49)。ワンタイムESSIDが起動中のときは、ワンタイムESSIDを停止させ、通信タイマーを停止させる(ステップS50)。ワンタイムESSIDが起動中でないときは、セッション終了フラグを立てる(ステップS51)。ステップS51又はステップS48でNOの場合には、通信タイマーの満了を判断する(ステップS52)。通信タイマーの満了のときには、ワンタイムESSIDを停止させ、通信タイマーを停止させる(ステップS53)。
【0062】
図8では、無線LANアクセスポイント装置101と端末間の通信処理を示し、コマンド受信の有無を判断し(ステップS61)、有りのときは作成可否を確認する(ステップS62)。ステップS62でYESのときは、使用可能なインターフェース数を回答する(ステップS70)。ステップS62でNOのときは、作成依頼を判断する(ステップS63)。ステップS63でYESのときは、ワンタイムESSIDを起動し接続を回答し(ステップS68)、通信タイマーを開始する(ステップS69)。ステップS63でNOのときは、MACアドレスの有無を確認する(ステップS64)。ステップS64でYESのときは、受け取ったMACアドレスに対しアクセス権を付与し接続を回答する(ステップS67)。ステップS64でNOのときは、状態確認を判断し(ステップS65)、YESのときはワンタイムESSIDの作成状況などを回答する(ステップS66)。ステップS65でNOのときは終了する。ステップS70、ステップS69、ステップS67及びステップS66の各処理の後は、制御タイマーをリセットし(ステップS71)、終了する。
【0063】
本発明の本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0064】
第1の効果は、一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない無線LAN端末の利用者に対しては、無線LANアクセスポイント装置101の存在、位置や接続情報を意識させないで、一時的なアクセスを提供できることである。無線LAN端末103の利用者は、無線LAN端末102との近距離無線通信によって無線通信ネットワークに接続できるので、無線LANアクセスポイント装置101の存在、位置や接続情報を意識させる場面がないためである。一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない無線LAN端末の利用者に対しては、無線LANアクセスポイント装置101の存在、位置や接続情報を意識させる場面がない。これにより、無線LANアクセスポイント装置101及び無線LANアクセスポイント装置101への無線接続に関し、セキュリティが向上する。
【0065】
第2の効果は、一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない端末に対しては、完全に一時的(ワンタイム)なアクセス性を提供するので、意図しないアクセス権の継続を防止できることである。一時的に接続可能な識別情報ESSIDを作成し提供するといった、無線LANアクセスポイント1の接続情報を一定時間のみ有効となるように構成することにより、一時的なアクセスの利用者による接続情報の悪用を防止することができる。また、一意的なパラメータを用いて乱数を発生させて一時的に接続可能な識別情報ESSIDを作成することにより、一時的に接続可能な識別情報ESSIDを推測できにくくすることができ、意図しないアクセスを防止できる。
【0066】
第3の効果は、一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない無線LAN端末の利用者はESSID、暗号化キー等を意識せずに無線LANに接続できるため、利用者の利便性が向上することである。一時的にしかネットワークにつなぐ必要のない無線LAN端末の利用者が、ESSID、暗号化キーを入手し、無線LAN端末に設定する場面がないためである。無線LAN端末103の利用者は、無線LAN端末102との近距離無線通信によって無線通信ネットワークに接続できる。
【0067】
第4の効果は、上記理由をネットワーク管理者側から見て、利用者に対してESSID、暗号化キー等を意識させずに接続性を提供できるので、ネットワーク情報の秘匿性が向上することである。
【0068】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、無線LANアクセスポイント装置101のワンタイムESSIDに接続したのは1台だが、これはワンタイムESSIDに接続できるのが最大1台という制限をかけるものではない。他のESSIDと同じように、複数の子機を接続することも可能である。
【0069】
上述した実施形態では、無線LANアクセスポイント装置101はESSIDを指定できる無線LAN通信インターフェースを最大3個のものを例に説明したため、ワンタイムESSIDに使用できる通信インターフェースは1つのように説明した。これは個数を制限するものではない。これは恒久的なESSIDも同様である。アクセスポイントがさらに多くの無線LAN通信インターフェースを有するのであれば、ワンタイムESSIDの数を増やして、一時的に接続要求をしてきた端末ごとにESSIDを別にして作成することも可能である。
【0070】
さらに上述した実施形態では、無線LAN端末102と無線LAN端末103の間で通信するためにNFC通信を利用したが、これは通信方式をNFCに限定するものではない。IrDAなどの赤外線通信、Bluetooth等、2端末間でセキュアに通信できる通信インターフェースであれば同様に実現可能である。
【0071】
上述した実施形態では、無線LAN端末102からのワンタイムESSID停止要求を受けて、無線LANアクセスポイント装置101がワンタイムESSIDを停止する動作を説明した。しかしながら、ワンタイムESSIDを停止するトリガーを、このタイミングや手法に限定するものではない。
【0072】
例えば、無線LAN端末102からの一時的なESSID作成要求を受けてから指定時間後に、無線LANアクセスポイント装置101が強制的にワンタイムESSIDを停止することが考えられる。また、近距離無線通信にBluetoothを使用していたとして、Bluetoothの通信が切れた場合は、強制的にワンタイムESSIDを停止する等、利用者に対して利用制限を設けることも可能である。例えば、無線LAN端末103が無線LAN端末102の近くにいなくなった等の理由で、このようなワンタイムESSIDを強制的に停止する場合が考えられる。このように一時的なアクセスの提供、言い換えると提供期間が終了したときの無線接続を終了させるトリガー、タイミングや手法は、様々なやり方が考えられる。無線接続を終了させるトリガー、タイミングや手法は、以上例示したやり方には限られない。
【0073】
特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0074】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)他の無線通信装置から無線LANアクセスポイントとの無線接続を要求する要求信号を受信し、その後一時的な前記無線接続に必要な識別信号が入力された場合には前記識別信号を前記他の無線通信装置に送信する近距離通信手段と、
前記要求信号に対応し無線接続許否を前記無線LANアクセスポイントに照会する照会信号を送信し、これに対し前記無線LANアクセスポイントから前記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信した場合、該識別信号を前記近距離通信手段に供給する無線LAN通信手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
(付記2)前記他の無線通信装置との近距離通信を確立した後で、前記他の無線通信装置が前記一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立し、
その後、前記他の無線通信装置との前記近距離通信を切断する、付記1に記載の無線通信装置。
(付記3)前記無線LANアクセスポイントに対して前記一時的な無線接続に必要な識別信号の停止要求を送信し、前記無線LANアクセスポイントの前記一時的な前記無線接続に必要な識別信号を停止させる、付記1又は付記2に記載の無線通信装置。
(付記4)付記1乃至付記3のいずれか一つに記載された無線通信装置と、
前記無線LANアクセスポイントと、
前記他の無線通信装置と、
を備える無線LANシステム。
(付記5)前記無線LANアクセスポイントは、前記無線通信装置から受け取った、他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを登録し、
前記他の無線通信装置は、受け取った前記一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて、前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立する、付記4に記載の無線LANシステム。
(付記6)前記無線通信装置は、前記他の無線通信装置が前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立した後で、前記他の無線通信装置との近距離通信を切断する、付記5に記載の無線LANシステム。
(付記7)前記無線通信装置は、前記一時的な無線接続に必要な識別信号の停止要求を前記無線LANアクセスポイントに対して送信し、これを受けて前記無線LANアクセスポイントは前記一時的な無線接続に必要な識別信号を停止する、付記4乃至付記6のいずれか一つに記載の無線LANシステム。
(付記8)一時的な用途で無線LANアクセスポイントに接続したい他の無線通信装置に対して、前記無線LANアクセスポイントへの一時的なアクセス権を与えるために、
既に前記無線LANアクセスポイントに接続している無線通信装置との近距離通信を経由して、前記無線LANアクセスポイントに一時的な無線接続先の作成を命令し、
その無線接続先に接続するための接続情報を、前記他の無線通信装置は前記無線通信装置を経由して入手し一時的に無線LANアクセスポイントへ接続する、通信方法。
(付記9)前記無線通信装置は、
前記他の無線通信装置が前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を望むときは、前記他の無線通信装置との近距離通信を確立した後、
前記無線LANアクセスポイントに対して一時的な無線接続に必要な識別信号を作成可能かどうか確認を取り、一時的な無線接続に必要な識別信号を作成可能であった場合には、その旨の回答を前記他の無線通信装置に行い、
他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを付加した情報を前記他の無線通信装置から受け取って前記無線LANアクセスポイントに送信し、前記無線LANアクセスポイントに対して一時的な無線接続に必要な識別信号の作成を依頼し、
前記無線LANアクセスポイントから前記一時的な無線接続に必要な識別信号を受信して、前記他の無線通信装置に送信する、付記8に記載の通信方法。
(付記10)前記無線LANアクセスポイントは、前記無線通信装置から受け取った、他の無線通信装置が有する無線LAN通信手段に設定されたMACアドレスを登録し、
前記他の無線通信装置は、受け取った一時的な無線接続に必要な識別信号を用いて、前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立する、付記9に記載の通信方法。
(付記11)前記無線通信装置は、前記他の無線通信装置が前記無線LANアクセスポイントへの無線接続を確立した後で、前記他の無線通信装置との近距離通信を切断する、付記10に記載の通信方法。
(付記12)前記無線通信装置は、一時的な無線接続に必要な識別信号の停止要求を前記無線LANアクセスポイントに対して送信し、これを受けて前記無線LANアクセスポイントは一時的な無線接続に必要な識別信号を停止する、付記9乃至付記11のいずれか一つに記載の通信方法。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の活用例として、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなど、1つの端末に無線LANの接続装置とともに他の近距離通信機能を有した情報端末装置が考えられる。
【符号の説明】
【0076】
1 無線LANアクセスポイント
1a、2a、3a 無線LAN通信手段
2、3 無線LAN端末
2b、3b 近距離通信手段
101 無線LANアクセスポイント装置
101a 無線LAN制御部
102、103 無線LAN端末
102a、103a、104、105、106 無線LAN通信インターフェース
102b、103b NFC通信インターフェース
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8