特許第6030667号(P6030667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6030667-非線形軸方向支柱を備える制限構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030667
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】非線形軸方向支柱を備える制限構造
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20161114BHJP
【FI】
   A61M25/10 540
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-555862(P2014-555862)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-505514(P2015-505514A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】US2013025032
(87)【国際公開番号】WO2013119735
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年7月30日
(31)【優先権主張番号】61/596,618
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512237246
【氏名又は名称】クアトロ・ヴァスキュラー・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】タヌム・フェルド
(72)【発明者】
【氏名】エイタン・コンスタンティーノ
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/112863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長の管状体と、
該管状体の遠位端部におけるインフレータブルバルーンと、
該バルーンに配置された制限構造であって、該制限構造は長手方向の支柱によって接続された、複数の正弦波形状の半径方向のリングを備え、前記長手方向の支柱は、第一長手方向支柱および第二長手方向支柱と、前記制限構造の遠位端部に取り付けられた前記第一長手方向支柱の第一端部および前記正弦波形状の半径方向のリングの近位端部の半径方向のリングに取り付けられた第一長手方向支柱の第二端部と、前記制限構造の近位端部に取り付けられた前記第二長手方向支柱の第一端部および前記正弦波形状の半径方向のリングの遠位端部の半径方向のリングに取り付けられた第二長手方向支柱の第二端部と、を具備し、前記第一長手方向支柱および前記第二長手方向支柱は、交互となる構造で取り付けられており、該制限構造の膨張した場合の直径は、該バルーンの膨張径よりも小さい膨張径を有し、さらに、前記第一長手方向支柱および第二長手方向支柱は、前記制限構造の膨張の際に、長手方向において互いに反対に移動する、制限構造と
を備える、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記制限構造が、前記バルーンの遠位端部及び/又は近位端部の、前記カテーテルに取り付けられる、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記制限構造の拡張時の直径が、前記バルーンの拡張時の直径よりも約0.15〜0.3mm小さい、請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンが、膨張時の前記制限構造を通って突出するピローを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
制限構造であって、該制限構造は、
該制限構造の長さに沿って間隔を空けて配置された複数の半径方向のリングと、
該制限構造の円周に沿って間隔を空けて配置された複数の長手方向の支柱であって、該複数の長手方向の支柱は、第一長手方向支柱および第二長手方向支柱と、前記制限構造の遠位端部に取り付けられた前記第一長手方向支柱の第一端部および前記複数の半径方向のリングの近位端部の半径方向のリングに取り付けられた第一長手方向支柱の第二端部と、前記制限構造の近位端部に取り付けられた前記第二長手方向支柱の第一端部および前記複数の半径方向のリングの遠位端部の半径方向のリングに取り付けられた第二長手方向支柱の第二端部と、を具備し、前記第一長手方向支柱および前記第二長手方向支柱は、交互となる構造で取り付けられており、さらに、前記第一長手方向支柱および第二長手方向支柱は、前記制限構造の膨張の際に、長手方向において互いに反対に移動する、複数の長手方向の支柱と、を備え、
該制限構造は、バルーンカテーテルを覆うように配置されるよう構成され、拡張状態と萎んだ状態を有する、制限構造。
【請求項6】
前記半径方向のリングが、前記制限構造の近位端部に向かって延びる一以上の第一ピークと、前記制限構造の遠位端部に向かって延びる一以上の第二ピークを備える、請求項5に記載の制限構造。
【請求項7】
前記長手方向の支柱が、前記制限構造の一端部から、前記制限構造の反対の端部の最も近くに位置する半径方向のリングに向かって延びる、請求項6に記載の制限構造。
【請求項8】
各長手方向支柱が、前記半径方向のリングの第一または第二ピークに取り付けられる、請求項7に記載の制限構造。
【請求項9】
前記リングが、一以上の正弦状の曲線を備える、請求項5〜8のいずれか一項に記載の制限構造。
【請求項10】
前記支柱の数が、前記リングの正弦状の曲線の数の2倍である、請求項9に記載の制限構造。
【請求項11】
前記長手方向の支柱が、波状曲線の支柱である、請求項5〜10のいずれか一項に記載の制限構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成手術のためのバルーンカテーテルであって、該バルーンカテーテルは、バルーンを覆うように取り付けられた弾性制限構造を備え、該構造は、バルーン膨張を制御する拡張メカニズムを有する。
【背景技術】
【0002】
従来の血管形成バルーンは、動脈病変内、少なくとも該病変の抵抗領域内で拡張するものであって、病変の両端部で「ドッグボーン現象」と、より柔らかな領域内での過拡張とを引き起こし、このため血管壁に損傷が生じる。従来の血管形成術は、血管変位と関係し、その主要な作用機構はプラーク圧縮であり、このプラーク圧縮は、反動が起きるまで血管が著しく変位させられる、あるいは「外側に押される」ことで起こる。この過程において、該バルーンは(半径方向に加えて)軸方向に拡張する可能性があり、これは血管壁の「クラック」(切離)の伝搬を加速させる現象である。このような伸長は、該バルーンが、該病変および血管壁と係合した後も継続し、長手方向の伸びの原因となるものである。
【0003】
この作用機構により、血管損傷が原因である機能不全を高い確率で引き起こしてしまう(脚の動脈に関する無作為研究は、年間で40%にも上る急性不全率と、20〜40%の開存性を伴う良好でない長期的結果を示している)。この作用機構を修正するための数々の試みは主に、血管壁の中を貫通することができ、事前に定められた切離プランを作り出すことのできる、カッティングブレード、ワイヤ、またはスコアリング要素を加えることによって、局所的力を向上させることを目的としている。これらのデバイスは、従来のバルーンではクラック開口することが困難な抵抗病変に遭遇した際に使用されるものである。これらの技術はいずれも、バルーン拡張中の血管変位を最小化し、半径方向の力を減少させることにより、より緩やかな拡張をもたらすことができる、代わりとなるメカニズムを提供するようには設計されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、プラーク押出を容易にし、血管損傷を最小にするために、均一的な膨張を提供し、長手方向の力を除去するための血管形成バルーンの特性を修正するデバイスに関する。本書において提示する該デバイスにおいて、バルーンの作用長さに沿って、間隔を空けて位置する制限リングを用いる新しい制限構造が、非円筒形の拡張を防止する。この制限構造によって、プラーク押出を容易にする溝によって区分けされた、小さいバルーンセグメント(ピロー)が作られる。この制限構造はまた、拡張時に短縮し、長手方向と半径方向に両方向において該バルーンを制限する構造をしているため、バルーンの長手方向の伸長を防止するものである。
【0005】
コンピュータシミュレーションによれば、該制限構造を備えるバルーンを使うことで、半径方向の力が減少することが明らかにされている。該制限構造は、バルーンピローの配列を形成することによって、血管切離および血管穿孔の割合を減ずるものであり、これにより、血管壁との緩やかな接触がもたらされ、ピロー間の経路を形成することによって、プラークの移動を可能にし、血管壁内の張力緩和領域を形成する。
【0006】
従来のバルーン血管形成術では、血管壁に対する張力緩和はもたらされず、高い確率での切離に悩まされていた。
【0007】
その他のデバイス、例えばカッティングバルーンやスコアリングデバイス(例えば米国特許第7,691,119、Farnan)は、血管壁の内部で、切り取る、あるいは切り込むことができる要素を加えることによって抵抗病変に対処するため、および、有意には局所的力(「焦点力血管形成」)を増大させるために作られているが、張力緩和や血管壁との緩やかな接触をもたらすことはない。反対に、これらのデバイスは、固いプラークを破壊するために作られた、侵襲性の強い金属構成部品を含み、血管壁に該デバイスの金属痕を残すものである。
【0008】
本発明の制限構造は、バルーンをピロー形状にすることによって、該バルーンの過剰な長さを立体形状に向かわせ、該バルーンの表面積が増大するという事実を利用するものである。このメカニズムにより、膨張時の楕円形バルーンの長さが短縮されて、長手方向の血管伸長が最小化される。その他のデバイス、例えばバルーンを覆う構造を有しているステントまたはスコアリングケージは、該バルーンを、ステントまたはスコアリングステントの直径を増大させるように設計された「起動部材」または拡張シェルとして用い、これにより、該バルーンが半径方向及び長手方向に限度いっぱいまで膨張するものであり、そのためこれらその他のデバイスは、膨張したバルーンと同じ大きさまで拡張するように設計されている。一方で、本書において提示する設計は、膨張したバルーンよりも小さくなるようにされており、特に、バルーンの膨張した形状及びサイズを修正し、制限、制御することを目的としている。
【0009】
本書に記載するデバイスの利点の組合せにより、制御された非侵襲性かつ予測可能な病変拡張がもたらされ、これにより健康に関わる重大な懸案に取り組むものである。
【0010】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許文書、及び特許出願は、各刊行物、各特許文書、または各特許出願が、参照することにより組み込まれることを特定的および個別に指摘された場合と同様に、参照することにより本書に組み込まれるものである。
【0011】
本発明の新規な特徴は、添付された特許請求の範囲に詳細に記される。本発明の特徴と利点は、本発明の原理が利用されている例示的実施例を示す以下の詳細な記載と、以下に説明する添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、バルーンの図解に隣接させた制限構造の設計のレイアウトであって、該制限構造の遠位端部と近位端部はバルーン脚部を覆うよう配置され、制限リングはバルーン作用長さを覆うバルーン長さに沿って間隔を空けて配置され、長手方向の波状曲線の軸の配列は、制限リングと両端部の間で、相互に連結されていることを示している。
図2図2は、経路とピローの円周方向及び長手方向のパターンを備えた、膨張したデバイスの図解を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
バルーンカテーテルは、カテーテルシャフトと、該バルーンカテーテルの遠位端にあるインフレータブルバルーンを備えており、弾性制限構造が該バルーンを覆うように取り付けられている。この制限構造は、例えばニチノール、弾性ポリマー、または高強度の繊維またはメッシュといった、弾性材料から作られている。
【0014】
該デバイスの自然な状態での形状は、萎んだ状態である。自己拡張型ステントと異なり、該デバイスは「自己拡張型」ではなく、反対に「自己閉鎖型」である。つまり、制限構造は、拡張前では、折り畳まれた状態のバルーンに密接している。該バルーンが膨張すると、該制限構造は、このバルーンによって拡張し、バルーンは、制限なしに膨張した場合のバルーン直径よりも小さい直径になる。この制限構造は、該バルーンが収縮すると、もとの小さな直径まで自己圧縮する。通常、この制限構造の遠位端部と近位端部とは、カテーテルから外れることを防止するため、バルーンの両端部におけるカテーテルに固定的に取り付けられている。取り付けは、接着剤または熱接合、またはこの分野で知られるその他の方法によってなされる。
【0015】
該制限構造は、バルーン作用長さに沿って間隔を空けて位置する正弦波形状の制限リングの配列を備える。各リングは、完全にせばまったときには、リングの長さによって定められた洞状曲線長を有する。各リングについて、この洞状曲線長は、バルーン拡張時の円周よりも小さい。該リングは、拡張時には、その最大拡張まで拡張し、ほぼ円形のリング形状になり、このリング形状は、バルーン直径よりも小さな直径であり、バルーン外側表面の周囲に、ほぼ円形の経路を作るものである。
【0016】
該制限リングが拡張することにより、バルーン長さに沿って経路の配列ができ、また該バルーンが短縮される。もし該リングが膨張したバルーンから取り外されれば、該バルーンは伸長することは自明であるから、この短縮が該リングによって起きていることを理解するのは容易である。
【0017】
該制限構造の最大拡張径は、主に洞状曲線リングの長さによって制御される。該最大拡張径は、制限なしに膨張したバルーン直径よりも0.15mm〜0.3mm小さくすることができるが、0.1mm〜0.5mmの範囲内で小さくしてもよく、または素材の選択及び設計の詳細に応じてこの範囲を超えるものであってもよい。例えば、3mmのバルーンであれば、ニチノールで作られた該制限構造の最大拡張径は2.6mm〜2.85mmの範囲内である。仮に、最大拡張径が望ましい範囲を超えると、該デバイスは機能することができない。例えば、もし最大拡張径が、制限なしに膨張したバルーン直径と同程度か、またはこれより大きいと、該制限構造はバルーンの自由拡張を制限することができなくなり、ピローが形成されない。仮に、該制限構造が小さ過ぎると、該バルーンから加えられる力が、該制限構造を破壊し、該デバイスは機能しなくなり、患者の安全を脅かすことになる。
【0018】
該制限リングは、組み合わさった長手方向の波状曲線支柱の円周配列によって、相互に接続されている。支柱の数は通常、該制限リングの正弦状の曲線の数の2倍である。例えば、該制限構造の図解には、二つの波状曲線を有する正弦リングがあり、よって4本の長手方向の波状曲線の支柱が示されている。各支柱は該制限構造の一端の近くから始まり、反対端の近くの最後の制限リングで終わる。各支柱は、適切な機能性と拡張を可能にするため、反対端の最後までは延びていない。次に続く支柱は、該制限構造の反対端の近くから始まり、バルーンの最初の端部の近くの最後の制限リングで終わり、制限構造の対向する両末端部が、長手方向の波状曲線の支柱と相互接続しないようになされている。
【0019】
この構造により、最後のリングは半分の数の支柱のみで、それぞれ末端に接続されるようになっている。仮に、該支柱が対抗する端部の最後まで延びていると、最初のリングがバルーン全体に亘って、中間リングが拡張するのと同様に均一的に拡張するのを制限してしまう。
【0020】
該支柱は、該リングの外側のピークで、最初の制限リングに接続し、これにより拡張時でも短縮している構造を形成する。仮に、該支柱がリングの内側のピークで最初の制限リングに接続されていると、この構造は、拡張時に延伸してしまう。
【0021】
特に重要なのは、該バルーンの近位端部と遠位端部両方に接続された「背骨」または支柱を備えないことである。図1の現在の構造は、二本(又はそれ以上)の長手方向の支柱がバルーンの遠位端部に接続され、二本(又はそれ以上)のその他の組み合わされた支柱がバルーンの近位端部に接続されており、この構造により、膨張時の「プッシュプル」力を生み出しており、膨張時に長手方向の支柱が対向する方向に動いて、バルーンに圧縮力を加え、バルーンが短縮できるようになる。この「偏向」機能は、より低い圧でピローが拡張するのを助けるものである。長手方向の波状曲線支柱は、バルーン外側表面全体に亘って長手方向の経路を形成し、リングによって形成された円形の経路と一緒になって、ほぼ四角のパターンの経路(「ウィンドウ」)と、このウィンドウから突出するバルーンピローとを形成するものである。
図1
図2