(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030766
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】液体分配弁
(51)【国際特許分類】
F16K 21/00 20060101AFI20161114BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20161114BHJP
F16K 15/14 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F16K21/00 B
F16K11/044 C
F16K15/14 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-530274(P2015-530274)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公表番号】特表2015-529313(P2015-529313A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】CN2013079783
(87)【国際公開番号】WO2014036860
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】201210332420.0
(32)【優先日】2012年9月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515060492
【氏名又は名称】オートル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ダピン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジアンフア
(72)【発明者】
【氏名】シ ヤンカイ
(72)【発明者】
【氏名】マ リフェン
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−25175(JP,A)
【文献】
特開2012−26505(JP,A)
【文献】
実開昭48−13678(JP,U)
【文献】
特開2000−199598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのケース(1)、油供給通路(2)、及び前記ケース(1)の各チャンバを貯留体とする少なくとも1つの油貯留弁及び少なくとも1つの二位置三方弁を備え、前記各油貯留弁はそれぞれ1つの二位置三方弁に対応し、前記油貯留弁の弁室(3)はピストン(4)により貯油チャンバ(31)及び圧油チャンバ(32)に仕切られ、前記貯油チャンバ(31)は油排出口(61)に連通され且つ前記ピストン(4)を押圧するバネ(5)を有する液体分配弁において、
前記油供給通路(2)は前記ケース(1)内に設けられ、前記二位置三方弁は弁体チャンバ(7)、弁体(8)及び弁座(9)を有し、前記弁体チャンバ(7)は油切換通路(10)を介して前記圧油チャンバ(32)に連通され、前記弁体チャンバ(7)の油注入口(62)は前記油供給通路(2)に連通され、前記弁座(9)の弁体用穴(91)は油バイパス通路(11)を介して前記貯油チャンバ(31)に連通され、前記弁体(8)は、軸方向流体通路(71)を有するガイドホールダー(82)、弾性傘状縁部(84)を有する密閉部材及び押付栓(83)を備え、前記ガイドホールダー(82)、前記密閉部材及び前記押付栓(83)は、軸方向において順次に一体に接続され、前記ガイドホールダー(82)及び前記弾性傘状縁部(84)は、ともに前記弁体チャンバ(7)の外周に取り合わせることが可能であり、
前記弁体(8)が第1の位置にある場合、前記弾性傘状縁部(84)は径方向に外側へ拡張して軸方向において前記弁体チャンバ(7)が密閉され、前記圧油チャンバ(32)は前記油切換通路(10)、前記弁体チャンバ(7)、前記弁体用穴(91)及び前記油バイパス通路(11)を介して前記貯油チャンバ(31)に連通される一方、
前記弁体(8)が第2の位置にある場合、前記弾性傘状縁部(84)が径方向に収縮することにより前記弁体用穴(91)が前記密閉部材及び前記押付栓(83)により塞がれ、前記油注入口(62)は前記弁体チャンバ(7)及び前記油切換通路(10)を介して前記圧油チャンバ(32)に連通されることを特徴とする液体分配弁。
【請求項2】
前記油排出口(61)は逆止弁を有することを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項3】
前記弁座(9)の弁体用穴(91)は弾性シールリングを有することを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項4】
前記油バイパス通路(11)は前記ケース(1)内にあることを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項5】
前記油排出口(61)は前記貯油チャンバ(31)にあることを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項6】
前記油排出口(61)は前記油バイパス通路(11)又は前記弁体用穴(91)にあることを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項7】
前記ピストン(4)には、前記貯油チャンバ(31)を貫通し、且つ端部が前記ケース(1)の外側にある指示ロッドが固定されていることを特徴とする請求項6に記載の液体分配弁。
【請求項8】
前記ケース(1)は、少なくとも2つの前記油貯留弁を有し、少なくとも2つの前記貯油チャンバ(31)は連通され、連通された貯油チャンバ(31)の油排出口(61)のうちの一方を保留しながら、連通された貯油チャンバ(31)の他方の油排出口(61)が塞がれることを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【請求項9】
前記液体分配弁は少なくとも2つの前記ケース(1)を有し、各前記ケース(1)の油供給通路(2)は連通されていることを特徴とする請求項1に記載の液体分配弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年9月10日付に中国特許局に提出した、出願番号が201210332420.0で、発明名称が「液体分配弁」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全てを援用によって本出願に取り入れる。
【0002】
本発明は潤滑技術の分野に関し、特に液体分配弁に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、比較的先進的な産業用機械設備の一部は、集中潤滑装置によって、その各潤滑箇所に対して、定時・定量で潤滑を一括に行うようになっている。このような潤滑設備は、通常、漸進型分配器及び圧力除去型分配器を含む。漸進型分配器は、構造がコンパクトであり、通常、粘性のあるグリースを必要とする場合に用いられるが、その構造が複雑であり、製造コストが高く、故障率が高く、メンテナンスが困難であるため、顧客満足度が低い。現在市場に投入される圧力除去型分配器は、構造が簡単であるが、工作機械などにおいて低圧希薄グリースで潤滑する場合にしか適用されない。
【0004】
これに鑑み、上述した技術的課題に対して、様々な機械設備への潤滑要求を満たせるように、信頼性が高く、メンテナンスが便利であり、様々な潤滑要求に適する液体分配弁群を設計することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、信頼性が高く、メンテナンスが便利であり、様々な機械設備の潤滑要求に適する液体分配弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術的目的を達成するために、液体分配弁を提供する。当該液体分配弁は、少なくとも1つのケース、油供給通路、及び前記ケースの各チャンバを貯留体とする少なくとも1つの油貯留弁と少なくとも1つの二位置三方弁を備え、前記各油貯留弁がそれぞれ1つの二位置三方弁に対応し、前記油貯留弁の弁室はピストンにより貯油チャンバ及び圧油チャンバに仕切られ、前記貯油チャンバは油排出口に連通され、且つ前記ピストンを押圧するバネを有し、前記油供給通路は、前記ケース内に設けられており、前記二位置三方弁は、弁体チャンバ、弁体及び弁座を有し、前記弁体チャンバは、油切換通路を介して前記圧油チャンバに連通され、前記弁体チャンバの油注入口は前記油供給通路に連通され、前記弁座の弁体用穴は油バイパス通路を介して前記貯油チャンバに連通され、前記弁体が第1の位置にある場合、前記油注入口は前記弁体により塞がれ、前記圧油チャンバは前記油切換通路、前記弁体チャンバ、前記弁体用穴及び前記油バイパス通路を介して前記貯油チャンバに連通される一方、前記弁体が第2の位置にある場合、前記弁体用穴が前記弁体により塞がれ、前記油注入口は前記弁体チャンバ及び前記油切換通路を介して前記圧油チャンバに連通される。
【0007】
前記弁体は傘状縁部を有する弾性部材であり、前記傘状縁部は前記弁体チャンバの外周に取り合わせることが可能であり、前記弁体が第1の位置にある場合、前記傘状縁部は径方向に外側へ拡張して軸方向において前記弁体チャンバが密閉される一方、前記弁体が第2の位置にある場合、前記傘状縁部が径方向に収縮して前記弁体用穴が前記弁体の芯部により塞がれることが好ましい。
【0008】
前記弁体は、軸方向流体通路を有するガイドホールダー、弾性傘状縁部を有する密閉部材及び押付栓を備え、前記ガイドホールダー、前記密閉部材及び前記押付栓は、軸方向に順次に一体に接続され、前記ガイドホールダー及び前記弾性傘状縁部は、ともに前記弁体チャンバの外周に取り合わせることが可能であり、前記弁体が第1の位置にある場合、前記弾性傘状縁部は径方向に外側へ拡張して軸方向において前記弁体チャンバが密閉される一方、前記弁体が第2の位置にある場合、前記弾性傘状縁部は径方向に収縮して前記弁体用穴が前記弁体により塞がれることが好ましい。
【0009】
前記油排出口は逆止弁を有することが好ましい。
【0010】
前記弁座の弁体用穴は弾性シールリングを有することが好ましい。
【0011】
前記油バイパス通路は前記ケース内にあることが好ましい。
【0012】
前記油排出口は前記貯油チャンバにあることが好ましい。
【0013】
前記油排出口は前記油バイパス通路又は前記弁体用穴にあることが好ましい。
【0014】
前記ピストンには、前記貯油チャンバを貫通し、且つ端部が前記ケースの外側にある指示ロッドが固定されていることが好ましい。
【0015】
前記ケースは、少なくとも2つの前記油貯留弁を有し、少なくとも2つの前記貯油チャンバが連通されており、連通された貯油チャンバの油排出口のうちの一方が保留されるのに対して、連通された貯油チャンバの他方の油排出口が塞がれることが好ましい。
【0016】
前記液体分配弁は、少なくとも2つの前記ケースを有し、各前記ケースの油供給通路が連通されることが好ましい。
【0017】
本発明に係る液体分配弁は、少なくとも1つのケース、油供給通路、及びケースの各チャンバを貯留体とする少なくとも1つの油貯留弁及び少なくとも1つの二位置三方弁を備え、各油貯留弁は1つの二位置三方弁に対応し、油貯留弁の弁室はピストンにより貯油チャンバ及び圧油チャンバに仕切られ、貯油チャンバは油排出口に連通され、且つピストンを押圧するバネを有し、油供給通路はケース内に設けられており、二位置三方弁は、弁体チャンバ、弁体及び弁座を有し、弁体チャンバは、油切換通路を介して圧油チャンバに連通され、弁体チャンバの油注入口は油供給通路に連通され、弁座の弁体用穴は油バイパス通路を介して貯油チャンバに連通され、弁体が第1の位置にある場合、油注入口は弁体により塞がれ、圧油チャンバは油切換通路、弁体チャンバ、弁体用穴及び油バイパス通路を介して貯油チャンバに連通される一方、弁体が第2の位置にある場合、弁体用穴は弁体により塞がれ、油注入口は弁体チャンバ及び油切換通路を介して圧油チャンバに連通される。
【0018】
油供給通路における潤滑剤が加圧されると、潤滑剤は油供給通路に連通する弁体チャンバに入る。潤滑剤は、まず油注入口を通過し、二位置三方弁を第2の位置にあるように押圧し、更に弁体チャンバ及び油切換通路を介して圧油チャンバに入る同時に、二位置三方弁により潤滑剤が弁体用穴に入ってしまうことが避けられる。潤滑剤は、圧油チャンバに入る過程において、ピストンを押すと共にバネを圧縮する。この場合、圧油チャンバの容積は大きくなり、貯油チャンバの容積は小さくなる。油供給通路に加圧する前に、貯油チャンバ内には潤滑剤が既に存在していると、貯油チャンバにおける潤滑剤は、油排出口から排出され、且つ油排出口に接続されるパイプラインを介して所定の潤滑箇所に搬送される。
【0019】
油供給通路の加圧が停止されると、バネの付勢によりピストンは押され、貯油チャンバの容積は大きくなり、圧油チャンバの容積は小さくなり、圧油チャンバ内の潤滑剤は、油切換通路を介して弁体チャンバに入ると共に、二位置三方弁を第1の位置にあるように押すと、潤滑剤は弁体用穴及び油バイパス通路を介して容積が大きくなった貯油チャンバに入り、二位置三方弁により潤滑剤が油供給通路に還流することが防止される。油供給通路に再び加圧すると、前回の加圧時にケースに入った潤滑剤は貯油チャンバにあるので、今回の加圧により前回の加圧時にケースに入った潤滑剤は所定の潤滑箇所に搬送されることができる。
【0020】
この液体分配弁は様々な圧力、粘度及び用量のグリースによる潤滑要求に適することができるだけでなく、構造がコンパクトで、信頼性が高く、メンテナンスが便利で、適用範囲が広く、機械設備の様々な環境条件での潤滑要求を満たせるとともに、流体の精確な分配にも用いられることができる。また、液体分配弁の作動中に、遅延せずにリアルタイム的に潤滑することができ、主油路に加圧する同時に、潤滑剤は油排出口から排出される。
【0021】
1つの形態では、弁体が傘状縁部を有する弾性部材であり、傘状縁部が弁体チャンバの円周に取り合わせることが可能であり、弁体が第1の位置にある場合、傘状縁部は径方向に外側へ拡張して軸方向において弁体チャンバは密閉される一方、弁体が第2の位置にある場合、傘状縁部は径方向に収縮して弁体用穴は弁体の芯部により塞がれる。
【0022】
他の形態では、弁体は軸方向流体通路を有するガイドホールダー、弾性傘状縁部を有する密閉部材及び押付栓を備え、ガイドホールダー、密閉部材及び押付栓は軸方向に順次に一体に接続され、ガイドホールダー及び弾性傘状縁部はともに弁体チャンバの円周に取り合わせることが可能であり、弁体が第1の位置にある場合、弾性傘状縁部は径方向に外側へ拡張して軸方向において弁体チャンバは密閉される一方、弁体が第2の位置にある場合、弾性傘状縁部は径方向に収縮して弁体用穴は弁体により塞がれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る液体分配弁の1つの具体的な実施形態の構造模式図である。
【
図2】本発明に係る液体分配弁の二位置三方弁の1つの具体的な実施形態の構造模式図である。
【
図3】
図2に示す二位置三方弁のガイドホールダーの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の核心は、信頼性が高く、メンテナンスが便利で、様々な機械設備の潤滑要求に適する液体分配弁を提供することにある。
【0025】
以下、当業者が本発明の技術案を更によく理解できるように、図面及び具体的な実施形態に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
図1を参照し、
図1は、本発明に係る液体分配弁の1つの具体的な実施形態の構造模式図である。
【0027】
1つの具体的な実施形態では、本発明に係る液体分配弁は、少なくとも1つのケース1、油供給通路2、及びケース1の各チャンバを貯留体とする少なくとも1つの油貯留弁と少なくとも1つの二位置三方弁を備え、各油貯留弁はそれぞれ1つの二位置三方弁に対応し、油貯留弁の弁室3はピストン4により貯油チャンバ31及び圧油チャンバ32に仕切られ、貯油チャンバ31は油排出口61に連通されるとともにピストン4を押圧するバネ5を有し、油供給通路2がケース1内に設けられ、二位置三方弁は、弁体チャンバ7、弁体8及び弁座9を有し、弁体チャンバ7は油切換通路10を介して圧油チャンバ32に連通され、弁体チャンバ7の油注入口62は油供給通路2に連通され、弁座9の弁体用穴91は油バイパス通路11を介して貯油チャンバ31に連通され、弁体8が第1の位置にある場合、油注入口62は塞がれ、圧油チャンバ32は油切換通路10、弁体チャンバ7、弁体用穴91及び油バイパス通路11を介して貯油チャンバ31に連通される一方、弁体8が第2の位置にある場合、弁体用穴91は塞がれ、油注入口62は弁体チャンバ7及び油切換通路10を介して圧油チャンバ32に連通される。
【0028】
油供給通路2における潤滑剤が加圧されると、潤滑剤は油供給通路2に連通する弁体チャンバ7に入る。潤滑剤は、まず油注入口62を通過して、その後二位置三方弁を第2の位置に位置するように押圧することによって、弁体チャンバ7及び油切換通路10を経由して圧油チャンバ32に入ると同時に、二位置三方弁により、潤滑剤が弁体用穴91に入ることが避けられる。
【0029】
潤滑剤は、圧油チャンバ32に入る過程において、ピストン4が押されるとともにバネ5が圧縮される。この場合、圧油チャンバ32の容積は大きくなり、貯油チャンバ31の容積は小さくなる。油供給通路2に加圧する前に貯油チャンバ31内に潤滑剤が既に存在していると、貯油チャンバ31内の潤滑剤は、油排出口61から排出され、且つ油排出口61に連通するパイプラインを介して所定の潤滑箇所に搬送される。
【0030】
油供給通路2の加圧が停止されると、バネ5の付勢によりピストン4は押され、貯油チャンバ31の容積は大きくなり、圧油チャンバ32の容積は小さくなる。圧油チャンバ32内の潤滑剤は、油切換通路10を介して弁体チャンバ7に入ると共に、二位置三方弁が第1の位置にあるように押されると、潤滑剤は弁体用穴91、油バイパス通路11を介して容積が大きくなった貯油チャンバ31に入り、二位置三方弁により、潤滑剤が油供給通路2へ還流することを防止することができる。
【0031】
油供給通路2に再び加圧すると、前回の加圧時にケース1に入った潤滑剤が貯油チャンバ31にあるので、今回の加圧により、前回の加圧時にケース1に入った潤滑剤が所定の潤滑箇所に搬送されることができる。
【0032】
油供給通路2がケース1内に設けられるので、様々な潤滑量の要求を満たすように各ケース1の貯油チャンバ31を接続することに寄与することができる。
【0033】
弁座9の弁体用穴91は油バイパス通路11に接続され、それらは共に弁体チャンバ7及び貯油チャンバ31を連通する。弁座9は、ケース1に取り合わせることが可能な別体部材であり、弁座9における弁体8に接触する端部には、段差通路がある。油供給通路2の加圧が停止される場合、潤滑剤は、油切換通路10を介して弁体チャンバ7に入ったら段差通路にあり、その後、弁体8が第1の位置に移動するように押圧される。ケース1を加工する際に、主に弁室3及び弁体チャンバ7を加工すればよい。弁座9を加工するなら、主に弁体用穴91を加工すればよい。この構造により、ケース1の加工が便利になるとともに、弁座9の加工も便利になる。
【0034】
この液体分配弁は、様々な圧力、粘度及び用量の潤滑油による潤滑要求に適するだけでなく、その構造がコンパクトで、信頼性が高く、メンテナンスが便利で、適用範囲が広く、機械設備の様々な環境条件での潤滑要求を満たせるとともに、流体の精確な分配にも用いられることができる。また、液体分配弁の作動中に、潤滑箇所を遅延せずにリアルタイム的に潤滑することができる。つまり、主油路に加圧するとともに、潤滑剤が油排出口から排出され且つ所定の潤滑箇所に搬送される。
【0035】
好ましい具体的な実施形態としては、弁体8が傘状縁部81を有する弾性部材であり、傘状縁部81が弁体チャンバ7の外周に取り合わせることが可能である。弁体8が第1の位置にある場合、傘状縁部81は径方向に外側へ拡張して軸方向において弁体チャンバ7は密閉される一方、弁体8が第2の位置にある場合、傘状縁部81は径方向に収縮して弁体用穴91は弁体8の芯部により塞がれる。
【0036】
傘状縁部81の傘状外側が液体圧力を受ける場合、弁体8は第2の位置に移動して弁座9に接触して弁体用穴91に押し付けられる。傘状縁部81は液体圧力の付勢により径方向に収縮して、潤滑剤は、油注入口62、弁体チャンバ7及び油切換通路10を介して圧油チャンバ32に入る。
【0037】
傘状縁部81の傘状内側が液体圧力を受ける場合、弁体8は第1の位置に移動して油注入口62は塞がれ、傘状縁部81は液体圧力の付勢により径方向にて拡張して、圧油チャンバ32内の潤滑剤は油切換通路10、弁体チャンバ7、弁体用穴91及び油バイパス通路11を介して貯油チャンバ31に入る。
【0038】
図2及び
図3を参照し、
図2は本発明に係る液体分配弁の二位置三方弁の1つの具体的な実施形態の構造模式図であり、
図3は
図2に示す二位置三方弁のガイドホールダーの側面断面図である。
【0039】
他の好ましい具体的な実施形態としては、弁体8は、軸方向流体通路71を有するガイドホールダー82と、弾性傘状縁部84を有する密閉部材及び押付栓83とを有し、ガイドホールダー82、密閉部材及び押付栓83は軸方向に順次に一体に接続され、ガイドホールダー82及び弾性傘状縁部84はともに弁体チャンバ7の外周に取り合わせることが可能である。弁体8が第1の位置にある場合、弾性傘状縁部84は、径方向に外側へ拡張して軸方向に弁体チャンバ7は密閉される一方、弁体8が第2の位置にある場合、弾性傘状縁部84は径方向に収縮して、弁体用穴91は弁体8の押付栓83により塞がれる。
【0040】
この構造の二位置三方弁は上記実施例の機能を同様に実現することができる。また、この構造の二位置三方弁は圧力が高い場合にも適用できる。潤滑剤の圧力が高い場合、ガイドホールダー82のガイド作用により、二位置三方弁は偏らずに依然として正常に作動することができる。二位置三方弁が第2の位置にある場合、押付栓83が弁体用穴91に押付される。
【0041】
上記実施形態では、油排出口61に逆止弁を設けてもよい。この液体分配弁は、作動時に、潤滑剤の還流を防止することができる。
【0042】
具体的には、弁座9の弁体用穴91に弾性シールリングを設けてもよい。二位置三方弁は、第2の位置にある場合、この弾性シールリングが押付されるので、弁体用穴91の閉塞に利する。
【0043】
さらに、油バイパス通路11は、ケース1のめくら穴構造であり、ケース1内に位置してもよい。
【0044】
1つの具体的な実施形態としては、油排出口61は、貯油チャンバ31に設けられてもよいが、当然ながら、油バイパス通路11又は弁体用穴91に設けられてもよい。明らかなように、油排出口61は貯油チャンバ31に連通するチャンバに設けられてもよい。貯油チャンバ31の体積が小さくなると、貯油チャンバ31に連通するチャンバの体積も小さくなるので、潤滑剤は油排出口61から排出されることができる。
【0045】
具体的に、油排出口61が貯油チャンバ31に設けられていないと、貯油チャンバ31を貫通し、且つ端部がケース1の外側にある指示ロッドがピストン4に取り付けられてもよい。この場合、指示ロッドを観察することでピストン4の位置及び移動状況を特定することができる。
【0046】
注意すべきこととして、ピストンロッドの出口の密閉を維持する必要がある。これにより、ピストンロッドが自由に移動することだけでなく、潤滑剤が漏洩しないことも確保することができる。
【0047】
上記各実施形態では、ケース1は、少なくとも2つの貯油弁を有してもよい。この場合、1つの貯油弁の貯油チャンバ31の容積が潤滑箇所に要求される潤滑量に及ばないと、必要に応じて、少なくとも2つの貯油チャンバ31を連通し、連通された貯油チャンバ31の油排出口61のうちの一方を保留しながら、連通された貯油チャンバ31の他方の油排出口61を塞いでもよい。
【0048】
この場合、液体分配弁の作動時に、幾つかの連通された貯油チャンバ31内の潤滑剤はいずれも保留された油排出口61から排出され、且つ所定の潤滑箇所に搬送される。これにより、潤滑量が大きい要求が満たされる。
【0049】
当然ながら、油排出口61に接続するパイプラインを設置することで上記要求を満たせてもよい。油排出口61に接続される幾つかのパイプラインを連通し、共通の1つのパイプラインを介して潤滑剤を潤滑箇所に搬送してもよい。
【0050】
液体分配弁は、少なくとも2つのケース1をさらに備えてもよい。この場合、各ケース1の油供給通路2が連通され、油供給通路2により各ケース1が直列に接続される。
【0051】
以上のように本発明に係る液体分配弁を詳しく説明した。本明細書は、具体的な実施例を挙げて本発明の原理及び実施形態を説明した。上記の実施例への説明は本発明の方法及びその趣旨を理解するに寄与するものに過ぎない。留意すべきこととして、当業者にとって、本発明の原理から逸脱しない前提で、本発明に対して若干改善及び修飾を加えることができる。これらの改善及び修飾も本発明の請求項によって保護しようとする範囲内に該当する。
【符号の説明】
【0052】
1 ケース、2 油供給通路、3 弁室、31 貯油チャンバ、32 圧油チャンバ、4 ピストン、5 バネ、61 油排出口、62 油注入口、7 弁体チャンバ、71 軸方向流体通路、8 弁体、81 傘状縁部、82 ガイドホールダー、83 押付栓、84 弾性傘状縁部、9 弁座、91 弁体用穴、10 油切換通路、11 油バイパス通路