(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030775
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】内燃機関のためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20161114BHJP
F02D 41/06 20060101ALI20161114BHJP
F02D 41/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F02D45/00 368S
F02D45/00 362A
F02D41/06 325
F02D41/08 375
F02D45/00 312E
F02D45/00 312F
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-546032(P2015-546032)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-536417(P2015-536417A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013075811
(87)【国際公開番号】WO2014086980
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・クナフル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ヘンシェン
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ハーグル
(72)【発明者】
【氏名】ハイディ・グルーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・バオアー
【審査官】
山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−026966(JP,A)
【文献】
特開2011−117399(JP,A)
【文献】
特開2008−157242(JP,A)
【文献】
特開2005−351148(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0087256(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0229814(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0249677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 41/06
F02D 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための方法であって、以下のステップ、すなわち
クランク軸角度を測定技術的に検出するステップと、
シリンダ圧力を測定技術的に検出するステップと、
前記クランク軸角度に応じてシリンダ容積を計算するステップと、
前記クランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積に対する対数表示シリンダ圧力のための曲線形を求めるステップと、
当該曲線形を分析し、時間的に正確なシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するために、前記クランク軸角度に対するオフセット値を求めるステップと、
を含み、
前記曲線形は、変曲点を表す死点において先鋭的に収束する2つの曲線線分を有し、
前記曲線形は、シリンダの死点領域において、前記オフセット値を求めるために分析される方法において、
前記シリンダの死点領域において、前記曲線形の前記曲線線分が互いに交差することが検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が後に移動されていることが推論され、当該移動を補償するためのオフセット値は、前記シリンダの死点領域における前記曲線線分同士の間の面積に応じて求められることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記内燃機関のための前記シリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定することは、前記内燃機関の燃料供給型の動作において自動的に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内燃機関のための前記シリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定することは、前記内燃機関の被牽引型の動作において自動的に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記曲線形は、シリンダの下死点領域において前記オフセット値を求めるために分析されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記曲線形は、シリンダの上死点領域において前記オフセット値を求めるために分析されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリンダの死点領域において、前記曲線形の曲線線分が互いに交差しないことが検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が前に移動されていることが推論され、当該移動を補償するためのオフセット値は、前記シリンダの死点領域における前記曲線線分同士の間の面積に応じて求められることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のための、シリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の動作を制御するために、クランク軸位置もしくはクランク軸角度に対するシリンダ圧力の正確な時間的配分を知ることは有利である。従来、このようなシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の点に鑑み、本発明は内燃機関のためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための新式の方法を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、請求項1に記載の内燃機関のためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための方法によって解決される。
【0005】
前記の方法は以下のステップを含む。すなわち、クランク軸角度を測定技術的に検出するステップと、シリンダ圧力を測定技術的に検出するステップと、クランク軸角度に応じてシリンダ容積を計算するステップと、クランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積に対する対数表示シリンダ圧力のための曲線形を求めるステップと、当該曲線形を分析し、時間的に正確なシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するために、クランク軸角度に対するオフセット値を求めるステップと、を含む。
【0006】
本発明に係る方法は、内燃機関のシリンダのためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を、簡単な手段により、高度な正確性を有して自動的に決定させる。本発明に係る方法は内燃機関において自動的に、しかも内燃機関の燃料供給型の動作でも燃料を供給されない、被牽引型の動作でも実施可能である。本発明により、クランク軸角度およびシリンダ圧力は測定技術的に検出される。クランク軸角度からシリンダ容積が計算され、計算されたシリンダ容積と、測定されたクランク軸角度と、測定されたシリンダ圧力と、から、クランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積に対する対数表示シリンダ圧力のための曲線形が求められる。当該曲線形は分析され、当該分析に応じて、時間的に正確なシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するために、クランク軸角度に対するオフセット値が求められる。
【0007】
好適に曲線形は、シリンダの死点領域において、オフセット値を求めるために分析される。このとき曲線形は、シリンダの下死点領域において、あるいはシリンダの上死点領域において、オフセット値を求めるために分析され得る。シリンダの死点領域における曲線形の分析は特に有利である。
【0008】
シリンダの死点領域において、曲線形の曲線線分が互いに交差することが検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が後に移動されていることが推論され、当該移動を補償するためのオフセット値は、シリンダの死点領域における曲線形の曲線線分同士の間の面積に応じて求められる。これに対してシリンダの死点領域において、曲線形の曲線線分が互いに交差しないことが検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が前に移動されていることが推論され、当該移動を補償するためのオフセット値は、シリンダの死点領域における曲線線分同士の間の面積に応じて求められる。
【0009】
本発明の好適なさらなる構成は従属請求項と以下の詳細な説明に記載されている。本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳細に説明するが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。図面に示すのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】時間的に正確なシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するために、クランク軸角度に対するオフセット値を求めるための曲線形を示す図である。
【
図2a】
図1の曲線形の代替的な詳細を示す図である。
【
図2b】
図1の曲線形の代替的な詳細を示す図である。
【
図2c】
図1の曲線形の代替的な詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、内燃機関のシリンダのためのシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を自動的に決定するための方法に関する。本発明に係る方法は、内燃機関の燃料供給型の動作でも内燃機関の燃料を供給されない、被牽引型の動作でも自動的に実施可能である。
【0012】
本発明に係る方法を自動的に実施するために、例えばロータリーエンコーダを用いてクランク軸角度が持続的に計測技術により検出される。さらに、圧力センサを用いてシリンダ圧力が自動的に、特にクランク軸角度に応じて検出される。計測技術的に検出されたクランク軸角度から、内燃機関の個々のシリンダのシリンダ容積が決定される。
【0013】
計測技術的に検出されたシリンダ圧力と、計測技術的に検出されたクランク軸角度から計算されたシリンダ容積とから、クランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積に対する対数表示シリンダ圧力のための曲線形が求められる。
【0014】
前記曲線形は分析され、このとき当該曲線形から、時間的に正確なシリンダ圧力・クランク軸位置の配分を決定するための、クランク軸角度に対するオフセット値が求められる。
【0015】
本発明に係る方法の上記のステップは全自動で行われ、クランク軸角度およびシリンダ圧力の測定値はエンジン制御装置の対応するセンサによって提供され、当該エンジン制御装置はその後、シリンダ容積を計算し、曲線形を決定し、オフセット値を求めるために当該曲線形を自動的に分析する。
【0016】
曲線形、すなわちクランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積に対する対数表示シリンダ圧力の曲線形の分析は好ましくはシリンダの死点領域、すなわち、内燃機関の個々のシリンダのシリンダピストン移動の、シリンダの下方の死点領域もしくは下死点領域において、あるいはシリンダの上方の死点領域もしくは上死点領域において、行われる。
【0017】
図1は前記の方法を自動的に実施する際、クランク軸角度に応じた対数表示シリンダ容積log Vに対する対数表示シリンダ圧力log pに対して求められた曲線形を、極めて概略的に示しており、
図1において、対数表示シリンダ容積log Vに対する対数表示シリンダ圧力log pは、クランク軸の完全な2回転について、すなわちクランク軸角度の720°にわたって表示されている。従って
図1の線図は、内燃機関の個々のシリンダにおける燃焼行程と負荷変動とを含んでいる。
図2a,
図2b,および
図2cは
図1の線図の異なる代替的な細部を、個々のシリンダのシリンダピストン移動の下方の死点領域もしくは下死点領域において示している。
【0018】
個々のシリンダのシリンダピストン移動の下方の死点領域もしくは下死点領域において、
図1または
図2a、
図2b、もしくは
図2cの曲線形は、先鋭的に収束する曲線線分11および12によって表されており、当該曲線線分は点13において鋭く収束し、当該点は対応する曲線形における変曲点を表している。
【0019】
本発明によれば、こうして曲線形は当該死点13の領域において分析され、すなわちそれにより、シリンダの死点13の領域において、曲線線分11および12が互いに交差する曲線形(
図2b参照)が検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が後に移動されていることが推論され、これに対してシリンダの死点13の領域において、曲線線分11および12が互いに交差しない曲線形(
図2c参照)が検出されるとき、クランク軸角度信号に対してシリンダ圧力信号が前に移動されていることが推論される。
【0020】
さらに死点13の領域において、曲線形の曲線線分11および12の間の面積が求められ、当該面積に応じて、シリンダ圧力信号とクランク軸角度信号の間の確定された時間的な移動を補償するためのオフセット値が求められる。当該面積が大きいほど、オフセット値は大きくなる。オフセット値は好適に反復的に求められ、それにより曲線形の曲線線分11および12の間の面積は、シリンダの死点領域において最小となる。例えば
図2aの線図がこれに当たる。
【0021】
当該方法全体は、内燃機関の燃料供給型動作または被牽引型動作の間、持続的かつ自動的に実施され得る。従って動作時に、クランク軸角度に対するシリンダ圧力の正確な時間的配分が全自動で求められ得、それにより当該時間的配分に応じて内燃機関の動作の開ループ制御または閉ループ制御を行う。
【符号の説明】
【0022】
11 曲線線分
12 曲線線分
13 死点
log p 対数表示シリンダ圧力
log V 対数表示シリンダ容積