(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6030817
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】バッテリ状態監視回路およびバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20161114BHJP
G01R 31/36 20060101ALI20161114BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20161114BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
H02J7/02 H
G01R31/36 A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-129030(P2010-129030)
(22)【出願日】2010年6月4日
(65)【公開番号】特開2011-259520(P2011-259520A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年4月3日
【審判番号】不服2015-11202(P2015-11202/J1)
【審判請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】佐野 和亮
【合議体】
【審判長】
中川 真一
【審判官】
堀川 一郎
【審判官】
矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−156567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の二次電池の状態を検出および制御するバッテリ状態監視回路であって、
前記複数の二次電池の各々に設けられ、前記二次電池の過充電を検出する複数の過充電検出回路と、
前記複数の過充電検出回路の各々に設けられた電流バイパス回路と、を備え
前記過充電検出回路は、
前記二次電池の両端に接続された分圧回路と、VDD端子に接続された定電流回路と、前記分圧回路の出力端子にゲートが接続され、前記定電流回路にドレインが接続され、前記二次電池の負極にソースが接続され、オンオフすることによって前記二次電池の過充電の検出結果を出力する第一のNMOSトランジスタと、を備え、
前記電流バイパス回路は、
前記二次電池の負極にソースが接続され、前記過充電検出回路の前記第一のNMOSトランジスタの流す電流に比例した電流を流す第二のNMOSトランジスタと、
前記第二のNMOSトランジスタのドレインと前記VDD端子に接続された第一のカレントミラー回路と、
前記第一のカレントミラー回路とグラウンド端子と前記二次電池の負極に接続され、前記二次電池の負極にドレインが接続された第三のNMOSトランジスタを有する第二のカレントミラー回路と、を備え、
前記第三のNMOSトランジスタは、前記第一のNMOSトランジスタの流す電流をグラウンド端子に流す
ことを特徴とするバッテリ状態監視回路。
【請求項2】
直列に接続された複数の二次電池の状態を検出および制御するバッテリ状態監視回路であって、
前記複数の二次電池の各々に設けられ、前記二次電池の過放電を検出する複数の過放電検出回路と、
前記複数の過放電検出回路の各々に設けられた電流バイパス回路と、を備え
前記過放電検出回路は、
前記二次電池の両端に接続された分圧回路と、前記二次電池の負極に接続された定電流回路と、前記分圧回路の出力端子にゲートが接続され、前記定電流回路にドレインが接続され、VDD端子にソースが接続され、オンオフすることによって前記二次電池の過放電の検出結果を出力する第一のPMOSトランジスタと、を備え、
前記電流バイパス回路は、
前記VDD端子にソースが接続され、前記過放電検出回路の前記第一のPMOSトランジスタの流す電流に比例した電流を流す第二のPMOSトランジスタと
前記第二のPMOSトランジスタのドレインと前記二次電池の負極に接続された第一のカレントミラー回路と、
前記第一のカレントミラー回路とVDD端子に接続された第二のカレントミラー回路と、
前記第二のカレントミラー回路とグラウンド端子と前記二次電池の負極に接続され、前記二次電池の負極にドレインが接続された第一のNMOSトランジスタを有する第三のカレントミラー回路と、を備え、
前記第一のNMOSトランジスタは、前記第一のPMOSトランジスタの流す電流をグラウンド端子に流す
ことを特徴とするバッテリ状態監視回路。
【請求項3】
複数の二次電池と、
前記二次電池の充放電経路に設けられた充放電制御スイッチと、
前記複数の二次電池の電圧を監視し、前記充放電制御スイッチを開閉することによって前記複数の二次電池の充放電を制御する請求項1または2に記載のバッテリ状態監視回路と、
を備えたバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池の充放電を制御するバッテリ状態監視回路及びバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、従来のバッテリ装置の回路図を示す。従来のバッテリ装置は、2次電池として2本の電池301と302がバッテリ状態監視回路の電源端子+VBと−VBとの間に直列に挿入されている。また、2本の電池の接続点はバッテリ状態監視回路のVI端子に接続されている。電池301の電圧は電圧分割回路304により分割され、その分割電圧を電圧検出回路305で検出している。電圧検出回路305の出力は制御回路308に入力されている。制御回路308は、各々の電池が過充電状態または過放電状態の時に、2次電池と電源の外部端子との間のスイッチ(図示しない)をOFFする信号Vsを出力する。従って、制御回路308は論理回路のみで構成されている。また、電池302に対しても、同様に電圧分割回路306と電圧検出回路307により過充電状態及び過放電状態を検出する構成になっている。この検出結果は、ディジタル信号で制御回路308に同様に入力されている。従って、制御回路308は電池301及び302のいずれか1つの電池が過充電状態または過放電状態になると電池と外部電源をきって、過充電及び過放電の進行を止める事ができる。2つの電池の充電特性及び放電特性は全く同じではないので、別々に過放電・過充電を検出制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−308115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術では、二次電池301のみが過充電状態または過放電状態になった場合、電圧検出回路305によって二次電池301のみの電力を消費され、二次電池間の電圧がアンバランスになるという課題があった。アンバランスになった状態で充電すると、他の電池の充電がまだ不十分であっても、一番高い電圧の二次電池が過充電状態になった時に充電を止める。そして放電時は、他の電池の電圧がまだ高い状態であっても、一番低い電圧の二次電池が過放電状態になった時に放電を止めるため、バッテリ装置の寿命が短くなるという課題があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、1つの二次電池が過充電状態または過放電状態になった時、電圧検出回路が動作しても1つの二次電池のみの電力を消費することのないバッテリ状態監視回路及びバッテリ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の課題を解決するために、本発明のバッテリ状態監視回路およびバッテリ装置は以下のような構成とした。
【0007】
複数の二次電池の状態を検出および制御するバッテリ状態監視回路であって、複数の二次電池の各々に設けられ、二次電池の電圧を検出する複数の電圧検出回路と、複数の電圧検出回路の各々に設けられ、電圧検出回路の動作電流をグラウンド端子に流す電流バイパス回路と、を備えたことを特徴とするバッテリ状態監視回路とした。
【0008】
さらに、そのバッテリ状態監視回路を備えたバッテリ装置とした。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態のバッテリ装置によれば、二次電池に過充電や過放電の検出によって1つの二次電池のみの電力を消費することなく、二次電池間の電圧がアンバランスになる事を防ぎ、バッテリ装置の寿命が短くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一の実施形態のバッテリ状態監視回路の回路図である。
【
図2】第二の実施形態のバッテリ状態監視回路の回路図である。
【
図3】本発明のバッテリ状態監視回路を備えたバッテリ装置の回路図である。
【
図4】従来のバッテリ状態監視回路を備えたバッテリ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3は、本発明のバッテリ状態監視回路を備えたバッテリ装置の回路図である。
バッテリ装置は、バッテリ状態監視回路1と、直列接続されたn個の二次電池101〜101nと、バッテリ状態監視回路1で制御されるスイッチ2と、を備えている。
以下、本実施形態のバッテリ装置について図面を参照して説明する。
【0012】
[第一の実施形態]
図1は、第一の実施形態のバッテリ状態監視回路の回路図である。
第一の実施形態のバッテリ状態監視回路は、直列接続されたn個の二次電池101〜101nに対応して個別に設けられたn個の電圧検出部121〜121nを備えている。
【0013】
電圧検出部121は、定電流回路104とNMOSトランジスタ107とからなる電圧検出回路と、NMOSトランジスタ108、109、110と、PMOSトランジスタ105、106からなる電流バイパス回路と、備えている。
他の電圧検出部121a〜121nは電圧検出部121と同じ構成要素で構成されている。
【0014】
電圧検出部121の接続としては、抵抗102は一方が二次電池101の正極端子(以下VDD端子)に接続され、もう一方がNMOSトランジスタ107と108のゲートに接続される。抵抗103は一方が二次電池101の負極端子に接続され、もう一方がNMOSトランジスタ107と108のゲートに接続される。NMOSトランジスタ107は、ドレインは出力端子120に接続され、ソースは二次電池101の負極端子に接続される。定電流回路104は一方がVDD端子に接続され、もう一方が出力端子120に接続される。NMOSトランジスタ108は、ドレインはPMOSトランジスタ105のゲート及びドレインに接続され、ソースは二次電池101の負極端子に接続される。PMOSトランジスタ105は、ソースはVDD端子に接続される。PMOSトランジスタ106は、ゲートはPMOSトランジスタ105のゲートに接続され、ドレインはNMOSトランジスタ110のドレインおよびゲートに接続され、ソースはVDD端子に接続される。NMOSトランジスタ110は、ソースは二次電池101nの負極端子(以下グラウンド端子)に接続される。NMOSトランジスタ109は、ゲートはNMOSトランジスタ110のゲートに接続され、ドレインは二次電池101の負極端子に接続され、ソースはグラウンド端子に接続される。
【0015】
電圧検出部121aの接続として電圧検出部121との違いは、抵抗102aの一方の接続を二次電池101aの正極端子へ、二次電池101の負極端子を二次電池101aの負極端子変更した点である。また、電圧検出部121nの接続として電圧検出部121との違いは、抵抗102nの一方の接続を二次電池101nの正極端子へ、二次電池101の負極端子を二次電池101nの負極端子変更した点である。
【0016】
次に、第一の実施形態のバッテリ装置の動作について説明する。
二次電池101の電圧が上昇し過充電状態になると、過充電検出回路を構成する抵抗102、103および定電流回路104、NMOSトランジスタ107において、抵抗102と抵抗103で分圧されたNMOSトランジスタ107のゲート電圧が上昇する。そして、NMOSトランジスタ107がオンして出力端子120の信号がHからLに反転する。図示はしないが、この信号を制御回路に入力し、制御回路から二次電池と外部端子の間のスイッチをオフする信号を出力する。こうして過充電保護をかける。NMOSトランジスタ108のゲートは、抵抗102と103の接続点に接続されているためNMOSトランジスタ107と同時にオンする。するとカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ105から106へ電流が流れ、同様にカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ110から109へ電流が流れる。こうして、NMOSトランジスタ107に流れる電流の経路ができ、NMOSトランジスタ107からNMOSトランジスタ109を介してグラウンド端子へ流れていく。この電流経路によってNMOSトランジスタ107を流れる電流は二次電池101の負極端子へ流れなくなり、二次電池101の電力だけ消費することがなくなる。そして、直列接続した二次電池すべての電力を消費するようになる。
【0017】
二次電池101aの電圧が上昇し過充電状態になった場合も同様である。NMOSトランジスタ107aがオンして出力端子にLの信号を出力し、NMOSトランジスタ108aをオンして電流を流す。この電流はカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ105aから106aへ電流が流れ、同様にカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ110aから109aへ電流が流れる。こうして、NMOSトランジスタ107aに流れる電流の経路ができ、NMOSトランジスタ107aからNMOSトランジスタ109aを介してグラウンド端子へ流れていく。この電流経路によってNMOSトランジスタ107aを流れる電流は二次電池101aの負極端子へ流れなくなり、二次電池101aの電力だけ消費することがなくなる。そして、直列接続した二次電池すべての電力を消費するようになる。この他、全ての二次電池101〜101nに接続した電圧検出部121〜121nにおいて同様の動作をする。
【0018】
以上説明したように、1つの二次電池が過充電状態を検出しても、一つの二次電池のみの電力を消費するのではなく、直列に接続された全ての二次電池の電力を消費するため、二次電池間の電圧がアンバランスになることなく動作させることができる。そして、バッテリ装置の寿命が短くなることなく動作させることができる。
【0019】
[第二の実施形態]
図2は、第二の実施形態のバッテリ状態監視回路の回路図である。
図1との違いはNMOSトランジスタ107、108、107a、108a、107n、108nをPMOSトランジスタに変更し、NMOSトランジスタ209、210、209a、210a、209n、210nを追加した点である。
【0020】
電圧検出部221の接続としては、PMOSトランジスタ207は、ゲートは抵抗102と103の接続点およびPMOSトランジスタ208のゲートに接続され、ドレインは出力端子120に接続され、ソースはVDD端子に接続される。PMOSトランジスタ208は、ドレインはNMOSトランジスタ209のドレイン及びゲートに接続され、ソースはVDD端子に接続される。定電流回路204は一方が出力端子120に接続され、もう一方が二次電池101の負極端子に接続される。NMOSトランジスタ209は、ソースは二次電池101の負極端子に接続される。NMOSトランジスタ210は、ゲートはNMOSトランジスタ209のゲートに接続され、ソースは二次電池101の負極端子に接続され、ドレインはPMOSトランジスタ105のゲート及びドレインに接続される。他の接続に関しては
図1と同様である。
【0021】
電圧検出部221aの接続としては、電圧検出部221との違いは二次電池101の正極端子を二次電池101aの正極端子へ、二次電池101の負極端子を二次電池101aの負極端子変更した点である。また、電圧検出部221nの接続としては、電圧検出部221との違いは二次電池101の正極端子を二次電池101nの正極端子へ、二次電池101の負極端子を二次電池101nの負極端子変更した点である。
【0022】
次に、第二の実施形態のバッテリ装置の動作について説明する。
二次電池101の電圧が下降し過放電状態になると、過放電検出回路を構成する抵抗102、103および定電流回路104、PMOSトランジスタ207において、抵抗102と抵抗103で分圧されたPMOSトランジスタ207のゲート電圧が下降する。そして、PMOSトランジスタ207がオンして出力端子120の信号がLからHに反転する。図示はしないが、この信号を制御回路に入力し、制御回路から二次電池と外部端子の間のスイッチをオフする信号を出力する。こうして過放電保護をかける。PMOSトランジスタ208のゲートは、抵抗102と103の接続点に接続されているためPMOSトランジスタ207と同時にオンする。するとカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ209から210へ電流が流れ、同様にカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ105から106へ電流が流れる。そして、カレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ110から109へ電流が流れる。こうして、PMOSトランジスタ207に流れる電流の経路ができ、PMOSトランジスタ207からNMOSトランジスタ109を介してグラウンド端子へ流れていく。この電流経路によってPMOSトランジスタ207を流れる電流は二次電池101の負極端子へ流れなくなり、二次電池101の電力だけ消費することがなくなる。そして、直列接続した二次電池すべての電力を消費するようになる。
【0023】
二次電池101aの電圧が下降し過放電状態になった場合も同様である。PMOSトランジスタ207aがオンして出力端子にHの信号を出力し、PMOSトランジスタ208aをオンして電流を流す。この電流はカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ209aから210aへ電流が流れ、同様にカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ105aから106aへ電流が流れる。そして、カレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ110aから109aへ電流が流れる。こうして、PMOSトランジスタ207aに流れる電流の経路ができ、PMOSトランジスタ207aからNMOSトランジスタ109aを介してグラウンド端子へ流れていく。この電流経路によってPMOSトランジスタ207aを流れる電流は二次電池101aの負極端子へ流れなくなり、二次電池101aの電力だけ消費することがなくなる。そして、直列接続した二次電池すべての電力を消費するようになる。この他、全ての二次電池101〜101nに接続した電圧検出部221〜221nにおいて同様の動作をする。
【0024】
以上説明したように、1つの二次電池が過放電状態を検出しても、一つの二次電池のみの電力を消費するのではなく、直列に接続された全ての二次電池の電力を消費するため、二次電池間の電圧がアンバランスになることなく動作させることができる。そして、バッテリ装置の寿命が短くなることなく動作させることができる。
【符号の説明】
【0025】
101、101a、101n、301、302 二次電池
104、104a、104n、204、204a、204n 定電流回路
120、120a、120n 出力端子
303 定電流回路
304、306 電圧分割回路
305、307 電圧検出回路
308 制御回路